JP5337068B2 - 偏心揺動型の減速機 - Google Patents

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    • F16H2001/323Toothed gearings for conveying rotary motion with gears having orbital motion in which the central axis of the gearing lies inside the periphery of an orbital gear comprising eccentric crankshafts driving or driven by a gearing

Description

本発明は、偏心揺動型の減速機に関する。
特許文献1に、偏心揺動型の減速機が開示されている。この減速機は、外歯歯車と、偏心体を有する偏心体軸と、該外歯歯車と前記偏心体との間に配置される偏心体軸受と、内歯歯車とを有している。
この種の減速機では、入力軸の回転によって偏心体軸を回転させ、偏心体軸の回転によって該偏心体軸の偏心体を介して前記外歯歯車を偏心または撓み揺動させながら前記内歯歯車に内接噛合させる。この内接噛合によって内歯歯車と外歯歯車との間に該内歯歯車と外歯歯車の歯数差に応じた相対回転が発生するため、内歯歯車又は外歯歯車のいずれか側の自転を拘束し、他方側から該相対回転成分を出力するようにしている。
特開2008−267571号公報
この種の偏心揺動型の減速機では、外歯歯車と偏心体との間に配置された軸受の転動体が、(外歯歯車が偏心揺動する際の動的な変動トルクが加わる状況で)偏心体軸上を直接転接する。このため、該偏心体軸は、耐久性上厳しい状態下にあり、該偏心体軸の寿命が減速機全体の寿命を決める大きな要素となっているというのが実情である。
しかしながら、従来、偏心体軸の耐久性に関するメカニズムを詳細に吟味・研究した例は殆どなく、そのため、偏心体軸を製造するに当たっては、後述する図2、図6における従来の硬化処理例Pで示されるような一般的な表面硬化処理がなされているに過ぎないというのが実情であった。
本発明は、このような状況において、偏心体軸の耐久性に関するメカニズムを詳細に探求した結果得られた知見に基づいてなされたものであって、偏心体軸の寿命を大きく伸ばし、もって偏心揺動型の減速機の耐久性をより向上させることをその課題としている。
本発明は、外歯歯車と、偏心体を有する偏心体軸と、該外歯歯車と前記偏心体との間に配置される偏心体軸受と、内歯歯車とを有し、前記偏心体軸の偏心体を介して前記外歯歯車を偏心または撓み揺動させながら前記内歯歯車に内接噛合させる偏心揺動型の減速機において、前記偏心体軸に対して、該偏心体軸の材料特性が変化する熱負荷を付与する前において圧痕の盛り上がり試験を行った結果生じる盛り上がり高さがA1、前記偏心体軸に対して前記熱負荷を付与した後において圧痕の盛り上がり試験を行った結果生じる盛り上がり高さがA2であるときに、前記偏心体軸に対して、A2/A1の比が、1.0以下となる特性を有する硬化処理が施されている構成とすることにより、上記課題を解決したものである。
本発明は、従来、全く検証されていなかった偏心体軸の劣化(損傷・摩耗)のメカニズムを解明した知見に基づいてなされたものである。着目した具体的な課題自体が公知のものでないため、当該具体的な課題とその解決の原理については、後に詳細に説明する。
本発明では、結論としては、偏心体軸に、その材料の特性が変化するような熱負荷を与える前と後に行った圧痕試験での、それぞれの圧痕の盛り上がり高さの大小に着目している。
即ち、本発明は、偏心体軸に対して、該偏心体軸の材料特性が変化する熱負荷を付与する前において圧痕の盛り上がり試験を行った結果生じる盛り上がり高さがA1、前記偏心体軸に対して前記熱負荷を付与した後において圧痕の盛り上がり試験を行った結果生じる盛り上がり高さがA2であるときに、偏心体軸に対して、A2/A1の比が、1.0以下となる特性を有するような硬化処理を施すようにしている。
この結果、使用によって(経時的に)むしろ耐久性が向上するようになるという理想的な定性的特性を得ることができるようになり、偏心体軸の耐久性を飛躍的に伸長させることができる。
また、本発明は、別の観点から、材料特性が変化するような熱負荷を偏心体軸に与える前と後におけるビッカース硬度の変化に着目する。
具体的には、本発明は、外歯歯車と、偏心体を有する偏心体軸と、該外歯歯車と前記偏心体との間に配置される偏心体軸受と、内歯歯車とを有し、前記偏心体軸の偏心体を介して前記外歯歯車を偏心または撓み揺動させながら前記内歯歯車に内接噛合させる偏心揺動型の減速機において、偏心体軸の材料特性が変化する熱負荷を付与する前における前記偏心体軸のビッカース硬度がHV1、前記熱負荷を付与した後における前記偏心体軸のビッカース硬度がHV2であるときに、前記偏心体軸に対して、HV1−HV2の変化が、60HV未満に抑えられている硬化処理が施されていることによっても、上記課題を解決する。
この構成によっても、上記と同様に、偏心体軸の耐久性を飛躍的に伸張させることができる。
また、上記硬化処理に該当する処理のうちの一の硬化処理が施されることにより、本発明の偏心体軸の表層部には、最大粒径4μm未満の粒状炭化物が析出され、これによって偏心体軸の耐久性を飛躍的に伸張させることができる。
本発明によれば、偏心揺動型の減速機の偏心体軸の寿命を大きく伸ばすことができ、もって偏心揺動型の減速機そのものの耐久性を大きく向上させることができる。
(A)試験用熱負荷付与前、及び(B)同付与後における圧痕盛り上がり高さと寿命の関係を示すグラフ 各種硬化処理の性能、諸元等の一覧表(但し、Pは従来) 偏心体軸が損傷・摩耗するメカニズムの一態様(仮説)を示した説明図 本発明の実施形態の一例を示す偏心揺動型の減速機を示す断面図 図4の矢示V−V線に沿う断面図 偏心揺動型の減速機の偏心体軸の製造工程における各種硬化処理の熱負荷の付与態様の例を示すタイムチャート(但し、(P)は従来) マルテンサイトを模式的に示した組織図
[本発明の具体的な課題とその解決原理]
本発明は、従来、全く検証されていなかった偏心体軸の劣化(損傷・摩耗)のメカニズムを解明した知見に基づいてなされたものである。着目した具体的な課題自体が公知のものでないため、実施形態の説明に入る前に、先ず、本発明で着目した具体的な課題とその解決の原理について、詳細に説明する。
発明者らは、偏心体軸の劣化のメカニズム(原因)の1つとして、図3に示されるように、偏心体軸の偏心体Eと偏心体軸受(の転動体)Rとの間に歯車の摩耗粒子D等の異物が混入したときに偏心体Eの表面に小さな圧痕Mが発生し(図3()、この圧痕Mの縁に応力が集中し(図3()、表面剥離Hに発展するというメカニズムを推定した(図3()。この推定が正しければ、圧痕試験(試験荷重30kgfにてビッカース硬さ試験を実施したときの圧痕の盛り上がり高さを調べる試験)を行った際に、圧痕の盛り上がり高さが小さければ小さいほど、(圧痕が生じにくいのであるから)応力集中も生じにくく、寿命は伸びるはずである。
ところが、図1(A)に示されるように、圧痕試験での盛り上がり高さがほぼ同一の偏心体軸でも、寿命に大きな差が生じることがあるという実験結果が得られ、圧痕の盛り上がり高さが「単純に寿命に影響している訳ではない(圧痕の盛り上がり高さが単に低ければよいというものではない)」ことが確認された。
ここで、この試験例(及び後述する実施形態)においては、圧痕の盛り上がり試験として、試験荷重30kgfでのビッカース硬さ試験を行っているが、偏心体軸に圧痕を形成できるのであれば、試験荷重や試験方法はこれに限定されるものではなく、たとえば30kgf以外の試験荷重としてもよいし、ロックウェル硬さ試験を行うようにしてもよい。また、圧痕盛り上がり高さとは、図3に示すように、転走面と盛り上がり部分最頂部との間の距離をいい、より具体的に、この試験例(及び後述する実施形態)においては、対向する2点における盛り上がり高さの平均値を圧痕盛り上がり高さA1、A2としている。ただし、圧痕盛り上がり高さの決定手法は、これに限定されるものではなく、例えばある特定の1点の盛り上がり高さを採用してもよいし、3点以上の平均値を採用してもよい。
一方、発明者らは、偏心体軸の劣化のメカニズムを解明・観察している過程で、この種の減速機の偏心体軸は、一度劣化し始めると、当該劣化の進行速度がより速まるような現象に気づいた。この原因について、発明者らは、以下のような仮説を立ててみた。
即ち、通常、偏心体軸−偏心体軸受の転動体−外歯歯車間のラジアル隙間は、−10μm〜10μm程度に設定される。精度が要求されるロボットの関節等の用途にあっては、−3μm〜3μm程度が求められることもある。更に、近年の産業機械には、作業速度を速める要請が強いことから、偏心体軸の回転速度の高速化も著しい。このため、DmN値、即ち、偏心体軸の回転速度(rpm)×偏心体軸受の転動体のピッチ円径(mm)の値が、10,000以上で使用されることも多く、熱的に非常に厳しい状況下にある(偏心体軸は減速機の運転中、非常に高温となる)。そこで、発明者らは、「新品の減速機の偏心体軸と、使用によって劣化が進行し始めた後の減速機の偏心体軸とでは、(減速機の運転中に発生した熱によって)該偏心体軸の材料の特性に変化があるのではないか」と推測して見たのである。
つまり、発明者らは、減速機の運転によって偏心体軸が非常に高温になり、当該熱負荷によって偏心体軸の材料特性が変化した後の状況、あるいは材料特性が変化する「前」と「後」の状況が、偏心体軸の寿命に大きく関係しているのではないかと推測した。
そして、この仮説を検証するべく、減速機の運転中と同様に、熱負荷によって偏心体軸の材料特性を変化させるため、(新品の偏心体軸に対して)意図的に所定の試験用熱負荷(例えば、300℃に3時間晒すという試験用熱負荷)を与え、当該試験用熱負荷を与える「前」と「後」とで、それぞれ圧痕試験を行ってみた。
すると、図2のP欄に示されるように、従来の減速機の偏心体軸の場合、前記試験用熱負荷を付与する前での圧痕試験では、2.6μmの盛り上がりに過ぎなかったが、該試験用熱負荷を付与した後における圧痕試験では、4.2μmにまで、盛り上がり高さが増大している(軟化している)ことが、確認された。
この実験結果は、発明者らの「一度劣化し始めると、当該劣化の進行速度が速くなるようだ。」という感覚と合致するもので、「新品の偏心体軸と、減速機の使用によって熱による負荷が加えられた後の偏心体軸とでは、材料の特性に変化があるのではないか。」という推測が正しかったことを裏付けるものでもあった。そして、図1(B)に示されるように、試験用熱負荷を与えた後の圧痕試験での盛り上がり高さは、偏心体軸の寿命と明らかに負の相関があることが認められた。
そこで、発明者らは、これと先の図1(A)での「(試験用熱負荷を与えない状態での)圧痕試験での盛り上がり高さは必ずしも寿命と相関関係がない。」ことを組み合わせて考え、新品当初(減速機の使用による熱的負荷が加わる前)の圧痕の盛り上がり高さA1と、該熱的負荷が加わった後における圧痕試験での盛り上がり高さA2の大小が偏心体軸の寿命により大きく影響しているのではないかと新たに推測した。そして、この観点で、更に、これまでこの種の偏心体軸には全く採用されたことのない硬化処理をも含めて多くの硬化処理についても同様の試験を行ってみたところ、「特定の硬化処理」を施した場合には、前記試験用熱負荷付与前での圧痕試験での盛り上がり高さA1より、該試験用熱負荷付与後における圧痕試験での盛り上がり高さA2の方がむしろ小さい(A2/A1≦1)という特性が得られる処理例(例えば、後述する図2、図6の第1〜第5の硬化処理例)があることが確認された。そして、この傾向を有する硬化処理を行ったときには、後述する図2に見られるように、寿命が大きく伸びていることが確認された(従来の1.44〜3.13倍の寿命)。
そこで、本発明では、減速機の運転によって偏心体軸が非常に高温になり、その熱負荷により偏心体軸の材料特性が変化した後の状況に着目する。つまり、偏心体軸の材料特性が変化するほどの試験用熱負荷を与えた後の圧痕試験の結果、より具体的には試験用熱負荷を与える前と後で行った圧痕試験を比較した結果に着目する。すなわち、偏心体軸に対し、単に通常の(特に試験用熱負荷を与えない状態下での)圧痕試験での圧痕の盛り上がり高さA1を低く抑えた硬化処理を施すというスタンスではなく、試験用熱的負荷を与えた後での圧痕の盛り上がり高さA2を低く抑えるというスタンス、より具体的には試験用熱負荷を与えた後に行った圧痕試験での圧痕の盛り上がり高さA2の方が、試験用熱負荷を付与する前での圧痕試験での盛り上がり高さA1より、小さくなるような硬化処理(A2/A1≦1を満足する硬化処理)を行うことを特徴とする。
この(A2/A1≦1)という関係を満足する特性は、要するに、「減速機の使用によって熱的負荷が加えられると、圧痕による盛り上がりがより小さくなる」ということである。使用を続けているとむしろ圧痕が生じ難くなる傾向というのは、減速機の運転中に著しい熱的負荷の掛かる偏心体軸にとって、非常に好ましい定性的傾向と言える。
また、発明者らは、圧痕盛り上がり高さとは別の観点で、熱負荷により偏心体軸の材料特性が変化する前後における、ビッカース硬度(ビッカース硬さ)HVの変化にも着目した。そして、検証のために、偏心体軸に上記と同様の試験用熱負荷を与える「前(HV1)」と「後(HV2)」でのビッカース硬度の変化(HV2−HV1)と寿命との関係を調査した。
すると、図2に示されるように、偏心体軸に特定の硬化処理(硬化処理1〜5)を施した場合には、従来の硬化処理に比べて、試験用熱負荷を与える前後(つまり、偏心体軸の材料特性が変化する前後)におけるビッカース硬度の低下(HV2−HV1)が小さいことが確認された(なお、図2においては、HV2−HV1の数値が記載されているため、マイナスの数値となっている)。そして、この傾向を有する硬化処理を行ったときには、寿命が大きく伸びていることが確認された(従来の1.44〜3.13倍の寿命)。
そこで、本発明では、減速機の運転によって偏心体軸が非常に高温になり、その熱負荷により偏心体軸の材料特性が変化した後の状況、より具体的には、偏心体軸の材料特性が変化するほどの試験用熱負荷を与える前と後における偏心体軸のビッカース硬度の変化に着目する。すなわち、偏心体軸に対し、単に(特に試験用熱負荷を与えない状態下での)硬化処理を施すというスタンスではなく、試験用熱的負荷を与える前と後でのビッカース硬度の低下を抑えるような硬化処理(ビッカース硬度の変化を60Hv未満に抑える硬化処理)を行うことを特徴とする。
[本発明が適用された減速機の例]
以下、本発明のより具体的な実施形態の一例を詳細に説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る偏心揺動型の減速機の一例を示す断面図、図5は図の矢示V−V線に沿う断面図である。
この偏心揺動型の減速機12は、外歯歯車24A、24Bと、偏心体22A、22Bを一体に有する偏心体軸20と、該外歯歯車24A、24Bと前記偏心体22A、22Bとの間に配置されるころ(偏心体軸受)26A、26Bと、内歯歯車28と、を有し、偏心体軸20の偏心体22A、22Bを介して外歯歯車24A、24Bを偏心揺動させながら内歯歯車28に内接噛合させるものである。出力は、外歯歯車24A、24Bの自転成分として第1、第2キャリヤ32、34から取り出される。以下、詳述する。
入力軸14は、図示せぬモータの出力軸と連結可能である。入力軸14の先端には太陽歯車16が一体的に形成されている。太陽歯車16は複数(この例では3個)の伝動歯車18と同時に噛合している。
各伝動歯車18は、複数(この例では3本)設けられた偏心体軸20にそれぞれ組み込まれ、3本の偏心体軸20を同時に且つ同方向に駆動可能である。各偏心体軸20には、それぞれ軸方向に並んで偏心体22A、22Bが120°の位相で一体的に設けられている。また、各軸の軸方向同位置にある偏心体22A同士、及び偏心体22B同士がそれぞれ同位相で同一の方向に回転可能となるように組み込まれている。
外歯歯車24Aと3つの偏心体22Aの間には偏心体軸受を構成するころ(転動体)26Aが配置されている。外歯歯車24Bと3つの偏心体22Bの間にも偏心体軸受を構成するころ(転動体)26Bが配置されている。外歯歯車24A、24Bは、偏心体軸20の偏心体22A、22Bを介して偏心揺動しながら内歯歯車28にそれぞれ内接噛合可能である。
外歯歯車24A、24Bの軸方向両側には、第1、第2キャリヤ32、34が配置されている。第1、第2キャリヤ32、34は、第2キャリヤ34側から圧入により突出形成されたキャリヤピン34A及びボルト40を介して互いに連結され、その全体が軸受36、38を介してケーシング30に回転可能に支持されている。
内歯歯車28は、ケーシング30と一体化されており、「内歯」として、ころ状のピン28Pを備えている。ピン28Pは、外歯歯車24A、24Bとそれぞれ噛合可能である。
次に、当該偏心揺動型の減速機12の作用を説明する。
入力軸14が回転すると、該入力軸14と噛合している伝動歯車18を介して3本の偏心体軸20が同時に減速回転する。この結果、それぞれの偏心体軸20に一体的に装着されている偏心体22A同士、及び22B同士が同位相で回転し、外歯歯車24A、24Bが内歯歯車28に内接しながらそれぞれ120度の位相差を維持しながら揺動回転する。内歯歯車28はケーシング30と一体化され、固定された状態にあるため、偏心体軸20が回転すると偏心体22A、22Bを介して外歯歯車24A、24Bが揺動回転し、該外歯歯車24A、24Bと内歯歯車28の内歯であるピン28Pとの噛合位置が順次移動していく現象が発生する。
このとき、外歯歯車24A、24Bの歯数は、内歯歯車28の歯数よりも僅かだけ少ないため、この噛合位置の移動により、固定状態にある内歯歯車28に対して歯数差に相当する分だけ外歯歯車24A、24Bの位相がずれる(自転する)ことになる。そのため、偏心体軸20が該自転成分に相当する速度で入力軸14の周りを公転し、該偏心体軸20を支持している第1、第2キャリヤ32、34が当該公転速度に相当する速度で回転する。第1、第2キャリヤ32、34は、ボルト40及びキャリヤピン34Aを介して連結されているため、該第1、第2キャリヤ32、34は一体となって(1つの大きな塊となって)ゆっくりと回転し、ボルト孔42を介して連結される図示せぬ相手機械(被駆動機械)を駆動する。
なお、この実施形態のように、ケーシング30(内歯歯車28)が固定されているときには、外歯歯車24A、24Bと内歯歯車28との相対変位を第1、第2キャリヤ32、34側から取り出すことができ、第1、第2キャリヤ32、34の自転が拘束された構成としたときは、外歯歯車24A、24Bの(自転の拘束された)揺動を介してこの相対変位をケーシング30側の回転(枠回転)として取り出すことができる。
ここで、偏心体22A(22B)−偏心体軸受の転動体26A(26B)−外歯歯車24A(24B)間のラジアル隙間(偏心体−転動体間のラジアル隙間と転動体−外歯歯車間のラジアル隙間との合計)は、この実施形態では、−3μm〜3μm程度に設定されており、製造誤差の吸収代が極めて小さい。しかも、偏心体軸は高速で回転しているため、DmN値、即ち、偏心体軸の回転速度(rpm)×偏心体軸受の転動体のピッチ円径(mm)の値が、10,000を超えた状態となっている。この状態下で、偏心体軸20には、偏心体22A、22B及び転動体26A、26Bを介して外歯歯車24A、24Bを揺動回転させる際の「高速に変動する負荷トルク」が常時掛かる。このため、偏心体軸20は、熱的に非常に厳しい状況下にある(非常に高温となる)。
そこで、本実施形態では、偏心体軸20に対して、特定の硬化処理を施すようにしている。理解を容易にするために、先ず、比較の目的で、従来のこの種の偏心体軸の硬化処理例Pから説明する。
図6のPで示されるように、従来、偏心体軸(20)は、次のような方法によって硬化処理されていた。ここで、硬化処理Pが施される偏心体軸の材質は、鉄(Fe)に、C:0.18〜0.23重量%、Si:0.15〜0.35重量%、Mn:0.60〜0.90重量%、P:0.030重量%以下、S:0.030重量%以下、Ni:0.25重量%以下、Cr:0.90〜1.20重量%、Mo:0.15〜0.25重量%、を含有したものである。
[従来の硬化処理例P]
a)偏心体軸を、炭素を含有する材料(木炭のような固体材料でもよいし、天然ガスや石油ガスのような気体材料でもよく、あるいは液体材料でもよい)とともに、1203K(絶対温度:930℃)に8.1k秒(135分)加熱。
b)加熱温度を1103K(830℃)に下げ、この状態を1.8k秒(30分)維持。
c)偏心体軸を油(水でもよい)に入れて急冷(焼き入れ)。
d)再び443K(170℃)の焼き戻し温度にまで加熱して7.2k秒(120分)維持し、焼き戻し。
以上の処理により、偏心体軸の表層部に炭素が侵入・拡散し、表層部の炭素量が0.8〜0.9重量%程度となる。
図2のPと表示されている欄に示されるように、この従来の硬化処理例Pで処理された偏心体軸の硬化処理の処理深さは0.4mm程度であり、硬化処理後の新品の状態(特に試験用熱負荷を掛けない状態)での圧痕試験の盛り上がり高さは2.6μmであった。ここで、硬化処理の処理深さとは、所望の硬度以上に硬化された層の深さ、つまり有効硬化層深さのことであり、本硬化処理例P(硬化処理例1〜5も同様)においてはビッカース硬さ513(Hv)以上の層の偏心体軸表面からの深さとしている。ただし、この「有効硬化層深さ」の指標は、ビッカース硬さ513(Hv)以上に硬化された層の深さに限定されるものではなく、硬化処理の前後で有効に硬化された層を特定するために適宜数値を選択すればよく、また炭素(以下に説明する硬化処理例1,2においては、炭素および窒素)が侵入・拡散された部分の偏心体軸表面からの深さを硬化処理の処理深さとしてもよい。
また、本実施形態においては、各硬化処理(硬化処理P、1〜5)をした後に、偏心体軸表面に研磨処理を施した上で、圧痕盛り上がり試験や図2に示す各種数値の計測を行っている。
また、マルテンサイト幅は5μmであった。なお、ここでいうマルテンサイト幅とは、図7で示すマルテンサイトの模式図において符号W1で示すブロック粒界の幅を意味している。因みに、図7において、太い点線はパケット粒界、太い実線は旧γ粒を示している。
発明者らは、上記硬化処理Pを施した偏心体軸に対し、意図的に偏心体軸の材料特性が変化すると解される300℃に3時間晒すという試験用熱負荷を与え、その後に当該試験用熱負荷の掛けられた偏心体軸に対して圧痕試験を行ってみた。その結果、盛り上がりの高さは、前述したように、実に4.2μmにまで上昇していた。これは、後述するA2/A1が、4.2/2.6=1.61にも上っている状態に相当している。この状態を、ビッカース硬度の「硬度変化」の観点で別途調べた結果で換算してみると、試験用熱負荷を付与する前における偏心体軸のビッカース硬度がHV1、前記試験用熱負荷を付与した後における前記偏心体軸のビッカース硬度がHV2であるときに、偏心体軸に対して、HV1−HV2の変化が、65HVもあった(軟化した)と解することができる状況に相当している(なお、前述したように図2においては、HV2−HV1の数値が記載されているため、マイナスの数値となっている)。このような状況では、損傷や摩耗による劣化がより早くに進行するようになるのは当然である。
一方、この試験研究の過程で、従来偏心体軸に施されたことがないようなさまざまな硬化処理について同様な試験を行ったところ、少なくとも以下の5つの硬化処理例1〜5については、逆の特性、即ち、「試験用熱負荷を付与する前において圧痕の盛り上がり試験を行った結果生じる盛り上がり高さがA1、当該試験用熱負荷を付与した後において圧痕の盛り上がり試験を行った結果生じる盛り上がり高さがA2であるときに、(A2/A1≦1)の関係が成立する特性」を有していることが確認できた。別の観点から言うならば、「試験用熱負荷を付与する前と後における偏心体軸のビッカース硬度の変化が、60HV未満に抑えられている」ことが確認できた。以下、順に説明する。
[本実施形態に係る硬化処理例1]
硬化処理例1では、以下のような処理が行われた。ここで、硬化処理例1が施された偏心体軸の材質は、上記硬化処理例Pが施された偏心体軸と同様である。
1a)偏心体軸を、炭素を含有するガスとNH3ガス(アンモニアガス)を含んだ雰囲気中で、1203K(930℃)に10.8k秒(180分)加熱。
1b)加熱温度を1133K(860℃)に下げ、1.2k秒(20分)維持。
1c)偏心体軸を油(水でもよい)に入れて急冷(焼き入れ)。
1d)553K(280℃)の焼き戻し温度にまで再び加熱して1.8k秒(30分)維持し、焼き戻し。
以上の処理により、偏心体軸の表層部に炭素および窒素が侵入・拡散する。
なお、以上の各硬化処理および以下に説明する各硬化処理における加熱温度や加熱時間は、必ずしも、1℃単位、1分単位に正確である必要はなく、上述した圧痕盛り上がり高さに関する特性(試験用熱負荷を負荷した後の圧痕盛り上がり高さが低く抑えられるという特性、A2/A1≦1の関係が成立する特性)、あるいはビッカース硬度に関する特性(試験用熱負荷を付与する前と後における偏心体軸のビッカース硬度の変化が、60HV未満に抑えられる特性)が得られるのであれば、適宜調整可能である。また、偏心体軸とともに加熱される材料も、上記ガスに限定されるものではない。
この硬化処理例1に依れば、図2に示されるように、(A2/A1=2.7/2.7=1)の特性が得られた。試験用熱負荷付与後の硬度変化は、わずか−29HVであり(つまり試験用熱負荷付与前後におけるビッカース硬度の変化は、29HVであり)、従来の硬化処理Pに対して、1.59倍の寿命が得られた。
[本実施形態に係る硬化処理例2]
硬化処理例2では、以下のような処理が行われた。ここで、硬化処理例2が施される偏心体軸の材質は、鉄(Fe)に、C:0.33〜0.38重量%、Si:0.15〜0.35重量%、Mn:0.60〜0.90重量%、P:0.030重量%以下、S:0.030重量%以下、Ni:0.25重量%以下、Cr:0.90〜1.20重量%、Mo:0.15〜0.3重量%、を含有したものである。
2a)偏心体軸を、炭素を含有するガスとNH3ガスを含んだ雰囲気中で、1213K(930℃)に14.4k秒(240分)加熱。
2b)加熱温度を1133K(860℃)に下げ、1.2k秒(20分)維持。
2c)偏心体軸を油(水でもよい)に入れて急冷(焼き入れ)。
2d)553K(280℃)の焼き戻し温度にまで再び加熱して1.8k秒(30分)維持し、焼き戻し。
以上の処理により、偏心体軸の表層部に炭素および窒素が侵入・拡散する点は、硬化処理例1と同様であるが、本硬化処理例2によると処理深さが硬化処理例1の処理深さ(0.8mm)よりも深い1.6mmとなる。
この硬化処理例2では、図2に示されるように、(A2/A1=2.4/2.5=0.96≦1)の特性が得られた。試験用熱負荷付与後の硬度変化は、−28HVであり(つまり試験用熱負荷付与前後におけるビッカース硬度の変化は、28HVであり)、従来の硬化処理Pに対して、2.10倍の寿命が得られた。また、本硬化処理例2においては、偏心体軸表層部の残留オーステナイトが10体積%を大きく超えて19体積%となっていることも、偏心体軸の寿命向上に寄与している。
[本実施形態に係る硬化処理例3]
硬化処理例3では、以下のような処理が行われた。ここで、硬化処理例3が施された偏心体軸の材質は、上記硬化処理例Pが施された偏心体軸と同様である。
3a)偏心体軸を、炭素を含有する材料(木炭のような固体材料でもよいし、天然ガスや石油ガスのような気体材料でもよく、あるいは液体材料でもよい)とともに、1203K(930℃)に16.2k秒(270分)加熱。
3b)加熱温度を1103K(830℃)に下げ、1、8k秒(30分)維持。
3c)偏心体軸を油(水でもよい)に入れて急冷(焼き入れ)。
3d)443K(170℃)の低温焼き戻し温度にまで再び加熱して7.2k秒(120分)維持し、焼き戻し。
以上の処理により、偏心体軸の表層部に炭素が侵入・拡散する点は、硬化処理例Pと同様であるが、本硬化処理例3によると処理深さが硬化処理例Pの処理深さ(0.4mm)よりも深い0.8〜1.2mm程度となる。ここで、硬化処理例Pの処理深さ(0.4mm)というのは、(各硬化処理の対象となった偏心体軸が使用されるサイズ・荷重条件の減速機において)偏心体軸上を偏心体軸受のころが転動するときの半径方向のせん断応力分布において最大せん断応力が発生している深さとほぼ同等であることから、本硬化処理例3においては、偏心体軸上を偏心体軸受のころが転動するときの半径方向のせん断応力分布において最大せん断応力が発生している深さよりも深い位置まで硬化処理がなされていることになる。より具体的には、最大せん断応力が発生している深さの2倍以上の深さまで硬化処理がなされている。
この硬化処理例3では、図2に示されるように、(A2/A1=3.2/3.3=0.96≦1)の特性が得られた。試験用熱負荷付与後の硬度変化は、−5HVであり(つまり試験用熱負荷付与前後におけるビッカース硬度の変化は、5HVであり)、従来の硬化処理Pに対して、2.21倍の寿命が得られた。また、本硬化処理例3では、偏心体軸表層部のマルテンサイト幅が4μmと小さく、これも偏心体軸の寿命向上に寄与している。つまり、偏心体軸表層部の素材中のマルテンサイト幅を4μm以下とすることでも、寿命の向上が得られる。
[本実施形態に係る硬化処理例4]
硬化処理例4では、以下のような処理が行われた。ここで、硬化処理例4が施された偏心体軸の材質は、上記硬化処理例Pが施された偏心体軸と同様である。
4a)偏心体軸を、炭素を含有する材料(木炭のような固体材料でもよいし、天然ガスや石油ガスのような気体材料でもよく、あるいは液体材料でもよい)とともに、1203K(930℃)に38.4k秒(640分)加熱。
4b)加熱温度を1103K(830℃)に下げ、1.8k秒(30分)維持。
4c)偏心体軸を油(水でもよい)に入れて急冷(焼き入れ)。
4d)443K(170℃)の低温焼き戻し温度にまで再び加熱して7.2k秒(120分)維持し、焼き戻し。
以上の処理により、偏心体軸の表層部に炭素が侵入・拡散する点は、硬化処理例Pと同様であるが、本硬化処理例4によると処理深さが硬化処理例Pの処理深さ(0.4mm)よりも深い1.2〜1.6mm程度となる。つまり、本硬化処理例4においても、偏心体軸上を偏心体軸受のころが転動するときの半径方向のせん断応力分布において最大せん断応力が発生している深さよりも深い位置、具体的には最大せん断応力が発生している深さの3倍以上の深さまで硬化処理がなされていることになる。
この硬化処理例4では、図2に示されるように、(A2/A1=3.2/3.9=0.82≦1)の特性が得られた。試験用熱負荷付与後の硬度変化は、−32HVである(つまり試験用熱負荷付与前後におけるビッカース硬度の変化は、32HVである)。従来の硬化処理Pに対して、1.44倍の寿命が得られた。
[本実施形態に係る硬化処理例5]
硬化処理例5では、以下のような処理が行われた。ここで、硬化処理例5が施された偏心体軸の材質は、上記硬化処理例Pが施された偏心体軸と同様である。
5a)10kPa以下まで減圧された雰囲気において、炭化水素系のガス(例えば、メタン、プロパン、エチレン、アセチレンなど)とともに、偏心体軸を、1223K(950℃)に24.6k秒(410分)加熱。
5b)ガスクーリングにて加熱温度を下げた後、再び1123K(850℃)まで上げ、さらに6.3k秒(105分)維持。
5c)一時的にガスクーリングにて温度を下げた後、加熱温度を再び1123K(850℃)に上昇させ、1.8k秒(30分)維持。
5d)偏心体軸を油(水でもよい)に入れて急冷(焼き入れ)。
5e)443K(170℃)の低温焼き戻し温度にまで再び加熱して7.2k秒(120分)維持し、焼き戻し。
以上の処理により、偏心体軸の表層部に炭素が侵入・拡散するが、本硬化処理例5においては、硬化処理例Pよりも多量の炭素(Acm飽和炭素量以上の炭素)が処理中に供給されるため、表層部の炭素量が1.2〜2.5重量%程度となる。また、本硬化処理例5においては、偏心体軸表層部のマルテンサイト組織中に多量の粒状(具体的な形状は球状)の金属炭化物が析出する。また、偏心体軸の表層部において前記粒状炭化物の占める面積割合は、15〜25%である。なお、偏心体軸を加熱する雰囲気が上記のものに限られない点は、他の硬化処理例で説明したのと同様である。
この硬化処理例5では、図2に示されるように、(A2/A1=2.7/3.1=0.87≦1)の特性が得られた。試験用熱負荷付与後の硬度変化は、−29HVである(つまり試験用熱負荷付与前後におけるビッカース硬度の変化は、29HVである)。従来の硬化処理に対して、3.13倍の寿命が得られた。該硬化処理例5では、処理深さが1.4mmに上っており、上記硬化処理例3や硬化処理例4と同様に、偏心体軸上を偏心体軸受のころが転動するときの半径方向の剪断応力分布において最大剪断応力が発生している深さよりも深い位置まで硬化処理がなされていることも偏心体軸の寿命向上に寄与している。また本硬化処理例5においては、偏心体軸表層部の残量オーステナイトが14%と、10%を超えていることが、上記硬化処理例2と同様に偏心体軸の寿命向上に寄与している。
さらに、本硬化処理例5においては、上述した他の硬化処理例では見られなかった微細な粒状炭化物が偏心体軸の表層部に析出しており、このために他の硬化処理例に比べても大幅な寿命向上が得られている。ここで、粒状炭化物については、その最大粒径が4μm未満であることが好ましく(本硬化処理例5で得られた粒状炭化物の最大粒径は1〜2μmである)、その粒形は球状が好ましく(本硬化処理例5で得られた粒状炭化物の粒形は球状である)、偏心体軸の表層部において粒状炭化物の占める面積割合は15〜25%であるのが好ましい。
発明者らは、以上の5つの硬化処理例1〜5の存在を確認したが、勿論これだけの例に留まらないはずである。しかし、少なくともこの5つの硬化処理例1〜5は、減速機の使用によって偏心体軸に熱的な負荷がかかると、材料特性の変質によって該偏心体軸は、その圧痕盛り上がりがむしろし難くなるような特性が得られる。この結果、図2に示したように、従来の硬化処理によって得られていた寿命時間より遙かに長い寿命が得られている。
なお、本発明において、試験用熱負荷は、減速機の使用中に偏心体軸に負荷される熱負荷を試験的に付与するものであり、ベースとなるべきは、実際の使用態様によって負荷される熱負荷である。但し、その目的は、減速機の使用中と同様に、偏心体軸の材料特性が変化する程度の熱負荷を付与することであるから、必ずしも、当該減速機に実際に負荷される熱負荷とリンクしている必要はない。要するならば、偏心体軸の材料の特性が変化するような熱負荷であれば、上記盛り上がり高さA1、A2の定性的傾向は掴める。むしろ、この試験用熱負荷は、実際の熱負荷よりも厳しい条件、例えば低温焼き戻し温度(150℃〜200℃)より高いという条件とした方が、付与前後の圧痕盛り上がり試験を行ったときの比較が容易になる傾向がある。この意味で、発明者らが採用した、例えば「300℃に3時間晒す」という条件は、定性性的傾向が顕著に現れる適正な熱負荷であると言える。逆に言うならば、そもそも本発明に係る偏心体軸の硬化処理は、「熱処理」による硬化処理に限定されるものではない。要は、結果として上記(A2/A1≦1)の関係が成立する硬化処理、試験用熱負荷を負荷した後の圧痕盛り上がり高さが低く抑えられる硬化処理、試験用熱負荷を付与する前と後における偏心体軸のビッカース硬度の変化が60HV未満に抑えられる硬化処理、あるいは偏心体軸の表層部に微細な粒状炭化物が析出される硬化処理であれば、例えばショットピーニング等の機械的硬化処理、高周波焼き入れ等の電気的硬化処理等を、適宜に組み合わせる硬化処理など、その具体的処理手法は問われない。この意味で、上記用語、即ち、「低温焼き戻し温度」は、当該偏心体軸自体を実際に熱処理したときの焼き戻し温度そのものを意味するものではない。
また、本発明に係る偏心揺動型の減速機の具体的な減速構造も、上記例に限定されず、例えば、偏心体軸を減速機の半径方向中央部に1本のみ有し、該減速機中央に配置された偏心体軸の偏心体を介して外歯歯車を揺動回転する減速構造であっても良い。更には、外歯歯車が撓みながら内歯歯車に内接噛合するいわゆる撓み噛み合いタイプの偏心揺動型の減速機であっても良い。この場合は、外歯歯車を撓ませる偏心体(非円形体)を一体に備えた軸を本発明に係る「偏心体軸」と捉えることができる。
なお、本発明は、さらに別の観点から捉えるならば、外歯歯車と、偏心体を有する偏心体軸と、該外歯歯車と前記偏心体との間に配置される偏心体軸受と、内歯歯車とを有し、前記偏心体軸の偏心体を介して前記外歯歯車を偏心または撓み揺動させながら前記内歯歯車に内接噛合させる偏心揺動型の減速機において、前記偏心体軸に対して熱負荷を付与した後において圧痕の盛り上がり試験を行った結果生じる盛り上がり高さが、従来の硬化処理Pがなされた偏心体軸よりも小さくなるような硬化処理が施されているもの、と捉えることもできる。
12…偏心揺動型の減速機
14…入力軸
16…太陽歯車
18…伝動歯車
20…偏心体軸
22A、22B…偏心体
24A、24B…外歯歯車
26A、26B…ころ(偏心体軸受)
28…内歯歯車

Claims (8)

  1. 外歯歯車と、偏心体を有する偏心体軸と、該外歯歯車と前記偏心体との間に配置される偏心体軸受と、内歯歯車とを有し、前記偏心体軸の偏心体を介して前記外歯歯車を偏心または撓み揺動させながら前記内歯歯車に内接噛合させる偏心揺動型の減速機において、
    前記偏心体軸に対して、該偏心体軸の材料特性が変化する熱負荷を付与する前において圧痕の盛り上がり試験を行った結果生じる盛り上がり高さがA1、前記偏心体軸に対して前記熱負荷を付与した後において圧痕の盛り上がり試験を行った結果生じる盛り上がり高さがA2であるときに、
    前記偏心体軸に対して、A2/A1の比が、1.0以下となる特性を有する硬化処理が施されている
    ことを特徴とする偏心揺動型の減速機。
  2. 外歯歯車と、偏心体を有する偏心体軸と、該外歯歯車と前記偏心体との間に配置される偏心体軸受と、内歯歯車とを有し、前記偏心体軸の偏心体を介して前記外歯歯車を偏心または撓み揺動させながら前記内歯歯車に内接噛合させる偏心揺動型の減速機において、
    偏心体軸の材料特性が変化する熱負荷を付与する前における前記偏心体軸のビッカース硬度がHV1、前記熱負荷を付与した後における前記偏心体軸のビッカース硬度がHV2であるときに、
    前記偏心体軸に対して、HV1−HV2の変化が、60HV未満に抑えられている硬化処理が施されている
    ことを特徴とする偏心揺動型の減速機。
  3. 請求項1または2において、
    前記熱負荷として、低温焼き戻し温度以上の熱負荷が付与される
    ことを特徴とする偏心揺動型の減速機。
  4. 請求項3において、
    前記付与する熱負荷が、前記偏心体軸を300℃以上の状態に3時間以上晒すというものである
    ことを特徴とする偏心揺動型の減速機。
  5. 請求項1〜4のいずれかにおいて、
    前記硬化処理に、前記偏心体軸の素材中のマルテンサイト幅が4μm以下となる処理が含まれる
    ことを特徴とする偏心揺動型の減速機。
  6. 請求項1〜5のいずれかにおいて、
    前記硬化処理に、前記偏心体軸の素材中の残留オーステナイトが10%以上となる処理が含まれる
    ことを特徴とする偏心揺動型の減速機。
  7. 請求項1〜6のいずれかにおいて、
    前記硬化処理が、前記偏心体軸上を前記軸受の転動体が転動するときの半径方向の剪断応力分布において最大剪断応力が発生している深さよりも深い位置にまでなされている
    ことを特徴とする偏心揺動型の減速機。
  8. 請求項1〜のいずれかにおいて、
    前記偏心体軸と偏心体軸受と外歯歯車との間のラジアル方向隙間の合計が、−10μm〜10μmであり、前記偏心体軸の回転速度と偏心体軸受の転動体のピッチ円径との積が、10000rpm・mm以上である
    ことを特徴とする偏心揺動型の減速機。
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