JP5324063B2 - ポリウレタン樹脂水分散体を含有する水性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリウレタン樹脂水分散体を含有する水性樹脂組成物に関し、更に詳細には、ポリオレフィン系樹脂に対するプライマー、コ−ティング組成物等として使用し得る低公害型又は無公害型の水性樹脂組成物に関するものである。
一般に、ポリオレフィン系樹脂は比較的安価であり、耐薬品性、耐水性、耐熱性等の優れた性能を有するため、自動車部品、電気部品、建築資材、包装用フィルムなどの材料として広い分野で使用されている。しかしながら、ポリオレフィン系樹脂は、結晶性で且つ非極性であるが故に、これに塗装や接着を施すことが困難であるという特性を有している。このような難接着性のポリオレフィン系樹脂の塗装や接着には、ポリオレフィン系樹脂に対して強い付着力を有する塩素化ポリオレフィンが、従来よりバインダー樹脂として使用されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、塩素化ポリオレフィン系バインダー組成物は、そのほとんどがトルエン、キシレンなどの有機溶剤に溶解した形で使用されているため、塗装に際して大量の有機溶剤が大気中に放出されることとなる。従って、塩素化ポリオレフィン系バインダー組成物の使用は、環境面や衛生面等の観点から問題視されている。即ち、近年の地球環境保護の点からVOC(揮発性有機化合物(volatile organic compounds))、PRTR(環境汚染物質排出移動登録、Pollutant Release and Transfer Register)、炭酸ガスの排出基準等の法律規制が設けられ、またオゾン破壊、光化学スモッグ等の観点から溶剤の使用が見直されている。更に、塗料製造時及び使用時における火災の発生の危険性や溶剤の吸引による人体への影響等、労働安全衛生の面からも溶剤使用には問題が多くある。加えて、これらのバインダー組成物は塩素原子を含有しているため、焼却に伴って有害物質を発生する等の問題もあり、公害防止の観点からも好ましくない。更に、このような問題の解決と並んで、ポリオレフィン系樹脂への密着性、耐溶剤性をはじめ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐磨耗性、滑性、非固着性等の多くの性能の改善が要求されている。
特開平10−298233号公報(特許請求の範囲)
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために為されたものであり、本発明の目的は、ポリオレフィン系樹脂への密着性、耐溶剤性に優れた、ポリウレタン樹脂水分散体を含有する水性樹脂組成物を提供することである。
本発明の水性樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂水分散体(A)と、ポリオレフィン水分散体(B)と、水溶性エポキシ樹脂(C)とを含有し、ポリウレタン樹脂水分散体(A)におけるポリウレタン樹脂は、1,6−ヘキサンジオールを用いたポリカーボネートポリオールと有機ポリイソシアネートとの反応により得られ、ポリオレフィン水分散体(B)として、非塩素系の水系ポリオレフィン系樹脂が用いられ、前記ポリウレタン樹脂水分散体(A)の固形分の酸価が5〜50mgKOH/gであることを特徴とする。
このように、ポリウレタン樹脂水分散体(A)に加えて、ポリオレフィン水分散体(B)及び水溶性エポキシ樹脂(C)を配合し、これを水性樹脂組成物をコーティング剤として用いることにより、難接着性のポリオレフィン系樹脂への密着性が、ウレタン樹脂水分散体のみを用いた場合と比較して、大幅に向上することが確認された。また、塗膜の耐溶剤性が向上することも確認された。
本発明のポリウレタン樹脂水分散体を含有する水性樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂水分散体(A)と、ポリオレフィン水分散体(B)と、水溶性エポキシ樹脂(C)との3成分を含有しているので、難接着性のポリオレフィン系樹脂への密着性が良好となり、しかもトルエン、エタノールなどの溶媒に対して安定な塗膜を形成する。
本発明の実施形態について以下に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
本発明の水性樹脂組成物に使用し得るポリウレタン樹脂水分散体(A)は、分子内に水溶性官能基を有する自己乳化型ポリウレタンを分散させた水分散体、又は界面活性剤を併用して強力な機械剪断力の下で乳化した強制乳化型ポリウレタンの水分散体である。上記水分散体におけるポリウレタン樹脂は、ポリオールと有機ポリイソシアネートとの反応により得られるものである。
ポリウレタン樹脂水分散体(A)の調製に使用し得るポリオールとして、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオールの何れも使用することができる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−及び1,4−ブタンジオール、3−メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール等の低分子ポリオールと、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフラン酸、エンドメチンテトラヒドロフラン酸、ヘキサヒドロフタル酸などの多価カルボン酸との縮合物を挙げることができる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンポリテトレメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのような各種のポリエーテルポリオールを挙げることができる。
ポリカーボネートポリオールとしては、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート又はホスゲン等の炭酸誘導体と、ジオールとの反応により得ることができる。そのようなジオールの適当な例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−及び1,4−ブタンジオール、3−メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノールを挙げることができる。これらのうちで、1,6−ヘキサンジオールを用いたポリカーボネートポリオールが、耐候性及び耐溶剤性の観点から好ましい。
また、ポリウレタン樹脂水分散体(A)の調製に使用し得る有機ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートを挙げることができる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等を挙げることができる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
また、これらの有機ポリイソシアネートの2量体、3量体やビュレット化イソシアネート等の変性体を挙げることができる。尚、これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることもできる。
尚、有機ポリイソシアネートとしては、耐候性の面から脂肪族及び脂環族ポリイソシアネートが好ましく、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。これらの化合物のうち、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネートであるイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが耐候性の点から特に好ましい。
ポリウレタン樹脂水分散体(A)の調製に際しては、ポリウレタン樹脂に水への分散性を付与するためのアニオン性官能基又はカチオン性官能基を導入するために、水溶性官能基材料を添加してもよい。このような水溶性官能基材料としては、(1)モノ若しくはジアルカノールカルボン酸又はモノ若しくはジスルホン酸の3級アミン又はアルカリ金属による中和物、(2)ポリエチレンオキサイド若しくはメトキシポリエチレンオキサイド、(3)モノ若しくはジアルカノールアミンの有機若しくは無機酸中和物又はそのハロゲン化アルキル、ジアルキル硫酸等との反応による第4級アンモニウム塩、などを例示することができる。これらのうち、乳化の容易性の観点から、(1)モノ又はジアルカノールカルボン酸又はスルホン酸の中和物、及び(3)モノ若しくはジアルカノールアミンの有機若しくは無機酸中和物又は第4級アンモニウム塩、が好ましい。
上記のアニオン性又はカチオン性の官能基は、以下の化合物により導入することができる。即ち、アニオン性官能基導入のためのカルボン酸は、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、乳酸、グリシン等により導入することができる。また、スルホン酸基は、タウリン、スルホイソフタル酸とジオールからなるポリエステルジオール等により導入することができる。次に、中和塩基の場合は、これらをトリエチルアミン、NaOH、ジメチルアミノエタノールなどの3級アルカノールアミンにより中和することにより、第4級アンモニウム塩の場合は、上述のようにハロゲン化アルキル、ジアルキル硫酸との反応により4級化することにより導入される。上記のうち、乳化の容易性の観点から、好ましいものは、ジメチロールプロピオン酸とトリエチルアミンとの組み合わせである。
カチオン性官能基導入のためには、まず、ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミンが導入される。次に、中和塩基を導入する場合は、ギ酸、酢酸などの有機カルボン酸、塩酸、硫酸などの無機酸が加えられ、第4級アンモニウム塩を導入する場合は、4級化試薬として塩化メチル、臭化メチルなどのハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸などのジアルキル硫酸が使用される。上記のうち、乳化の容易性の観点から、好ましいものは、メチルジエタノールアミンと有機カルボン酸との組み合わせ、又はメチルジエタノールアミンとジメチル硫酸との組合せである。
ポリウレタン樹脂水分散体(A)の調製に際しては、分子内でウレタン結合を局在化させるために、エチレングリコール、1,4ブタンジオールなどの単鎖の低分子量ジオールを添加してもよい。また、分子内に分岐構造を導入するために、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの単鎖ポリオールを添加してもよい。これらの単鎖ポリオールの添加により、ウレタン結合が局在化され又は分岐構造が導入されるため、得られるウレタン樹脂水分散体の耐水性が向上するという効果が得られるので好ましい。
ポリウレタン樹脂水分散体(A)の調製に際しては、ポリウレタン樹脂の分子量を増大させて耐水性、耐候性の向上を図るために、鎖伸長剤を添加してもよい。鎖伸長剤としては、ジアミンや、内部架橋構造を導入するた機能をも果たすポリアミンが使用される。ジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミンなどを例示することができ、ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミンを例示することができる。
ポリウレタン樹脂水分散体(A)の調製に際し、ポリウレタン樹脂を分散させるために、界面活性剤を使用してもよい。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤が好適に使用される。
ポリウレタン樹脂水分散体(A)におけるポリウレタン樹脂の分子量は、分岐構造や内部架橋構造を導入して可能な限り大きくすることが好ましく、分子量50,000〜10,000,000であることが好ましい。分子量を大きくして溶剤に不溶とした方が、耐候性、耐水性に優れた塗膜が得られるからである。
ポリウレタン樹脂水分散体(A)の製造方法は、特に限定されるものではないが、一般的には、ポリオール、水溶性官能基導入材料、単鎖ポリオール及び鎖伸長剤に含まれるイソシアネート基との反応性を有する官能基の合計より、化学量論的に過剰のポリイソシアネート(イソシアネート基と反応性官能基との当量比1:0.85〜1.1)を溶剤なしに、又は活性水素を有しない有機溶媒中で反応させてイソシアネート末端のウレタンプレポリマーを合成した後、水溶性官能基を中和して水中に分散乳化を行う。その後、残存するイソアネート基より少ない当量の鎖伸長剤(イソシアネート基と鎖伸長剤との当量比1:0.5〜0.9)を加えて乳化ミセル中のイソシアシネート基と鎖伸長剤のポリアミンを界面重合反応させてウレア結合を生成させる。これにより乳化ミセル内の架橋密度が向上し、三次元架橋構造が形成される。このように三次元架橋構造の形成により、優れた耐水性、耐候性を示す塗膜が得られる。その後、必要に応じて使用した溶剤を除去することにより、ポリウレタン樹脂水分散体(A)を得ることができる。
本発明において使用されるポリウレタン水分散体(A)は、そのカルボキシル基含有量を表す酸価が5〜50mgKOH/gであることが好ましく、5〜30mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が3mgKOH/g未満の場合には、水への分散性が困難になるという問題がある。また、酸価が50mgKOH/gを超える場合には、耐水性が低下するという問題がある。酸価は、JISK0070−1992に準拠して、ポリウレタン水分散体の固形分1g中に含まれる遊離カルボキシル基を中和するのに要するKOHのmg数より求めた。
本発明において使用されるポリオレフィン水分散体(B)としては、例えば、塩素系の水系ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン及びプロピレン−α−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種に対し、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物から選ばれる少なくとも1種をグラフト共重合して酸変性ポリオレフィンを得、これに塩素化反応を行って得られるものを挙げることができる。また、非塩素系の水系ポリオレフィン系樹脂として、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンプロピレン共重合体等からなる分子量2,000〜500,000程度のアモルファスポリオレフィンの末端又は側鎖に、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸及びこれらの無水物に代表されるα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト反応させることにより付加したタイプ、アクリル酸、スチレン等のモノマーによるグラフト重合変性物を用いることができ、通常、これらはトルエン、メチルシクロヘキサン等の有機溶剤溶液中に溶解した後、界面活性剤、塩基性物質を用いた強制乳化により水系化し、更に溶剤を除去することにより得られるものである。市販品のポリオレフィン水分散体(B)として、スーパークロン(日本製紙(株)製、塩素化ポリオレフィン)、アウローレン(日本製紙(株)製、非塩素系ポリオレフィン)、ハードレン(東洋化成工業(株)製、非塩素系ポリオレフィン)などがあり、環境保護の観点から、非塩素系ポリオレフィンが好ましい。
本発明において使用される水溶性エポキシ樹脂(C)としては、ソルビトールやペンタエリスリトールやグリセリンなどのポリオールにエピクロヒドリンを付加したアルキルタイプのエポキシ樹脂を挙げることができ、市販品としては、デナコールEX−611、EX−614、EX−411、EX−313(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。本発明に使用される水溶性エポキシ樹脂(C)としては、3官能のものが好ましい。
更に、場合によっては、密着性を害しない架橋剤として、カルボジイミド、シランカップリング剤などを併用してもよい。
本発明の水性樹脂組成物におけるポリオレフィン水分散体(B)の好ましい配合比率は、ポリウレタン樹脂水分散体(A)の固形分100重量部に対し、ポリオレフィン水分散体(B)の固形分が5〜150重量部となる範囲が好ましく、10〜100重量部の範囲がより好ましい。ポリオレフィン水分散体(B)の固形分の配合比率が多くなると、ウレタンの比率が小さくなり、耐溶剤性が低下する傾向となる場合がある。また、この配合比率が少なくなると、ポリオレフィン系樹脂に対する密着性が低下する場合がある。
また、本発明の水性樹脂組成物における水溶性エポキシ樹脂(C)の好ましい配合比率は、ポリウレタン樹脂水分散体(A)の固形分100重量部に対し、水溶性エポキシ樹脂(C)の固形分が2〜50重量部となる範囲が好ましく、5〜45重量部の範囲がより好ましい。水溶性エポキシ樹脂(C)の固形分の配合比率が多くなると、ポリウレタン樹脂水分散体(A)及びポリオレフィン水分散体(B)の比率が小さくなることにより、未反応の水溶性エポキシ樹脂が多量に残り、耐溶剤性及び密着性の両方が低下する場合がある。また、この配合比率が少なくなった場合も、耐溶剤性及び密着性が低下する場合がある。
本発明の水性樹脂組成物の調合は、ポリウレタン樹脂水分散体(A)とポリオレフィン水分散体(B)とを配合した後、コーティングする直前に水溶性エポキシ樹脂を混合することが好ましい。これは、水溶性エポキシ樹脂(C)とポリウレタン樹脂水分散体(A)又はポリオレフィン水分散体(B)との硬化反応が進行してしまうのを避けるためである。
以下、実施例に基づいて、本発明の水性樹脂組成物について詳細に説明する。なお、本明細書中に於ける「部」、「%」は、特に明示した場合を除き、「重量部」、「重量%」をそれぞれ表している。
<ポリウレタン樹脂水分散体(A)の調製>
表1に示す配合比率で、以下に示すようにしてポリウレタン樹脂水分散体(A)を調製した。
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリカーボネートポリオール(UH CARB−100、宇部興産(株)製、Mw=1,000)を651重量部、ジメチロールプロピオン酸60重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート289重量部、メチルエチルケトン800重量部を加え、75℃で4時間反応させ、不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量が3.0重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを45重量部加えて中和した後、水2700重量部を徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、ジエチレントリアミン8重量部を水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間撹拌を継続した。これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、不揮発分約35重量%のポリウレタン水分散体1を得た。
(合成例2)
撹拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリカーボネートポリオール(UH CARB−100、宇部興産(株)製、Mw=1,000)を684重量部、ジメチロールプロピオン酸60重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート236重量部、メチルエチルケトン800重量部を加え、75℃で4時間反応させ、不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量が3.0重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを45重量部加えて中和した後、水2700重量部を徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、ジエチレントリアミン16重量部を水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間撹拌を継続した。これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、不揮発分約35重量%のポリウレタン水分散体2を得た。
(合成例3)
撹拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリカーボネートポリオール(UH CARB−100、宇部興産(株)製、Mw=1,000)を321重量部、ポリエステルポリオール(クラレポリオールP−1020、(株)クラレ社製Mw=1000)を330重量部、ジメチロールプロピオン酸60重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート289重量部、メチルエチルケトン800重量部を加え、75℃で4時間反応させ、不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量が3.0重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを45重量部加えて中和した後、水2700重量部を徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、ジエチレントリアミン16重量部を水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間撹拌を継続した。これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、不揮発分約35重量%のポリウレタン水分散体3を得た。
(合成例4)
撹拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリカーボネートポリオール(UH CARB−100、宇部興産(株)製、Mw=1,000)を353重量部、ポリエステルポリオール(クラレポリオールP−2013、(株)クラレ製、Mw=2000)を298重量部、ジメチロールプロピオン酸60重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート289重量部、メチルエチルケトン800重量部を加え、75℃で4時間反応させ、不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量が3.0重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを45重量部加えて中和した後、水2700重量部を徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、ジエチレントリアミン16重量部を水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間撹拌を継続した。これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、不揮発分約35重量%のポリウレタン水分散体4を得た。
(合成例5)
撹拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリエステルポリオール(クラレポリオールP−2013、(株)クラレ製、Mw=2000)を322重量部、ポリエーテルポリオール(PolyTHF1000、BASF社製、Mw=1000)を296重量部、ジメチロールプロピオン酸60重量部、イソホロンジイソシアネート322重量部、メチルエチルケトン800重量部を加え、75℃で4時間反応させ、不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量が5.0重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを45重量部加えて中和した後、水2700重量部を徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、イソホロンジアミン27重量部を水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間撹拌を継続した。これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、不揮発分約35重量%のポリウレタン水分散体5を得た。
(合成例6)
撹拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリカーボネートポリオール(UH CARB−100、宇部興産(株)製、Mw=1,000)を696重量部、ジメチロールプロピオン酸15重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート289重量部、メチルエチルケトン800重量部を加え、75℃で4時間反応させ、不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量が3.0重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを45重量部加えて中和した後、水2700重量部を徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、ジエチレントリアミン8重量部を水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間撹拌を継続した。これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、不揮発分約35重量%のポリウレタン水分散体6を得た。
(合成例7)
撹拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリカーボネートポリオール(UH CARB−100、宇部興産(株)製、Mw=1,000)を626重量部、ジメチロールプロピオン酸115重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート259重量部、メチルエチルケトン800重量部を加え、75℃で4時間反応させ、不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量が3.0重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを45重量部加えて中和した後、水2700重量部を徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、ジエチレントリアミン8重量部を水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間撹拌を継続した。これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、不揮発分約35重量%のポリウレタン水分散体7を得た。
(合成例8)
撹拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリエステルポリオール(クラレポリオールP−2013、(株)クラレ製、Mw=2000)を589重量部、ジメチロールプロピオン酸60重量部、ヘキサメチレンジイソシアネート351重量部、メチルエチルケトン800重量部を加え、75℃で4時間反応させ、不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量が3.0重量%であるウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。この溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミンを45重量部加えて中和した後、水2700重量部を徐々に加えてホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。その後、ジエチレントリアミ20重量部を水100gに溶解した水溶液を添加し、1時間撹拌を継続した。これを減圧下、50℃で脱溶剤を行い、不揮発分約35重量%のポリウレタン水分散体8を得た(酸価25mgKOH/g)。
Figure 0005324063
<水性樹脂組成物の調製>
(実施例1〜14)
表2に示す配合量で、合成例1〜8で得られたポリウレタン樹脂水分散体1〜4、6〜8と、ポリオレフィン水分散体としてハードレンNA−1001又はハードレンEW−5313(東洋化成工業(株)製)と、水溶性エポキシ樹脂としてデナコールEX−614B又はデナコールEX−313(ナガセケムテックス(株)製)とを用い、これらを水に分散した水性樹脂組成物を調製した。
(比較例1〜6)
表3に示す配合量で、実施例1〜14と同様にして、比較例1〜6の水性樹脂組成物を調製した。
Figure 0005324063
Figure 0005324063
<評価試験>
上記各実施例及び比較例の水性樹脂組成物を用いて作成した塗膜のポリプロピレン(PP)板に対する密着性、耐トルエン性及び耐エタノール性について試験を行った。その結果を表2及び表3に併せて示した。
(試験片の作成)
ポリプロピレン板(PP板、日本テストパネル(株)製)に対し、上記各実施例及び比較例の水性樹脂組成物を、燥膜厚30μmの塗膜が形成されるようにバーコーターを用いて塗布し、90℃で30分間乾燥させることにより、試験片を作成した。
(試験方法及び評価方法)
(1)PP板密着性試験
上記の塗膜を形成した各試験片を25℃で24時間養生し、次に、各試験片の表面をカッターナイフで1mm幅に切り目を入れて100個のマス目を作った。この試験片に粘着テープ(ニチバン製、商品名:セロテープ(R))を貼付し、これを急速に剥がし、マス目の剥がれを調べた。評価基準は以下のとおりである。
○:塗膜の残存率100%
△:塗膜の残存率50〜99%
×:塗膜の残存率50%未満。
(2)耐トルエン性試験
塗膜を形成した試験片を25℃で24時間養生し、次に、各試験片の表面をトルエンを浸み込ませたガーゼで往復10回摩擦し、各試験片の表面の状態を観察した。評価基準は以下のとおりである。
○:塗膜が全く剥がれなかった
×:塗膜が剥がれた。
(3)耐エタノール性試験
塗膜を形成した試験片を25℃で24時間養生し、各試験片の表面をエタノールを浸み込ませたガーゼで往復30回摩擦し、各試験片の表面の状態を観察した。評価基準は以下のとおりである。
○:塗膜が全く剥がれなかった
×:塗膜が剥がれた。
(試験結果)
表2及び表3に示すように、ポリウレタン樹脂水分散体と、ポリオレフィン水分散体と、水溶性エポキシ樹脂との3成分を含有する実施例1〜14の水性樹脂組成物は、PP板密着性試験、耐トルエン性試験及び耐エタノール性試験の何れにおいても、良好な結果を示した。これに対して、比較例1〜6の水性樹脂組成物は、上記3成分のうちの何れかが配合されていないため、PP板密着性試験の結果は、上記各実施例と同レベルかそれ以下であり、耐トルエン性試験及び耐エタノール性試験の結果は、全ての比較例において塗膜の剥がれが見られた。
ポリオレフィン系の基材に対する密着性に優れ、耐トルエン性試験及び耐エタノール性試験も良好なので、接着剤、プライマー、塗料やインキのバインダー等の分野で利用可能である。

Claims (3)

  1. ポリウレタン樹脂水分散体(A)と、ポリオレフィン水分散体(B)と、水溶性エポキシ樹脂(C)とを含有し、
    ポリウレタン樹脂水分散体(A)におけるポリウレタン樹脂は、1,6−ヘキサンジオールを用いたポリカーボネートポリオールと有機ポリイソシアネートとの反応により得られ、
    ポリオレフィン水分散体(B)として、非塩素系の水系ポリオレフィン系樹脂が用いられ
    前記ポリウレタン樹脂水分散体(A)の固形分の酸価が5〜50mgKOH/gであることを特徴とする水性樹脂組成物。
  2. 前記ポリウレタン樹脂水分散体(A)の固形分100重量部に対し、前記ポリオレフィン水分散体(B)の固形分が5〜150重量部であることを特徴とする請求項1記載の水性樹脂組成物。
  3. 前記ポリウレタン樹脂水分散体(A)の固形分100重量部に対し、前記水溶性エポキシ樹脂(C)の固形分が2〜50重量部であることを特徴とする請求項1又は2記載の水性樹脂組成物。
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