JP5317005B2 - ポリウレタンフィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリウレタンフィルム及びその製造方法に関する。更に詳しくは、強度と柔軟性のバランスに優れ、生産時の環境に優しい、ポリウレタンフィルム及びその製造方法に関する。
ポリウレタン樹脂は、耐摩耗性及び耐油性に優れる等の多くの特徴を有するため、ゴムやプラスチックの代替材料として注目されており、通常のプラスチック成形加工法が適用できる成形材料として広範囲な用途で使用されている。
ポリウレタン樹脂のこのような性質を利用したポリウレタン樹脂製のフィルムは、柔軟性、弾性回復性、力学的強度等に優れているので、例えば、特許文献1記載のポリウレタン樹脂は、紙おむつ用、生理ナプキン用、目止め用、防塵用等に用いられる伸縮性フィルム用途;一般用コンベアベルト、各種キーボードシート、ラミネート品等のシート用途等の種々の用途に使用することができるとある。
特開2003−171434号公報
本発明は、強度と柔軟性のバランスに優れ、生産時の環境に優しい、ポリウレタンフィルム及びその製造方法の提供を目的とする。
すなわち本発明は、以下の(1)〜(3)に示されるものである。
(1)ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を触媒(C)の存在下に反応させて得られるポリウレタンフィルムにおいて、ポリオール(A)が、1,6−ヘキサンジオールとエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートの何れか一種類から選ばれたカーボネートから得られるポリカーボネートジオールであり、ポリイソシアネート(B)が、数平均分子量350〜500、平均官能基数(f)が2≦f<3であるヘキサメチレンジイソシアネートの変性ポリイソシアネート(B1)と、f≧3であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(B2)からなるものであって、(B1):(B2)=50:50〜95:5(質量比)であり、ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)の両方に有機溶剤を含まないことを特徴とする、ポリウレタンフィルム。
(2)(B1)が、モノオールとヘキサメチレンジイソシアネートから得られるアロファネート変性イソシアネートであることを特徴とする、前記(1)のポリウレタンフィルム。
(3)前記(1)、(2)のポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を配合した液において、当該配合液におけるイソシアネート基と水酸基の当量比(イソシアネート基/水酸基)が、1.0以上1.1以下とすることを特徴とする、前記(1)、(2)のポリウレタンフィルムの製造方法。
本発明により、強度と柔軟性のバランスに優れ、生産時の環境に優しい、ポリウレタンフィルム及びその製造方法提供が可能となった。
本発明は、ポリオール(A)が特定のポリカーボネートジオール(以後、PCDと略称する)であり、ポリイソシアネート(B)が数平均分子量350〜500、低官能基数であるヘキサメチレンジイソシアネート(以後、HDIと略称する)の変性ポリイソシアネート(B1)と、HDIのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(B2)を触媒(C)の存在下に反応させて得られるポリウレタンフィルムである。
本発明に用いられるポリオール(A)におけるPCDは、1,6−ヘキサンジオール(以後1,6−HDと略称する)とエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートの何れか一種類から選ばれたカーボネートとを、脱アルコール反応や脱フェノール反応により得られるPCDである。このPCDの好ましい数平均分子量は500〜5,000であり、更に好ましくは1,000〜3,000である。数平均分子量が低すぎる場合は、得られるポリウレタンフィルムの柔軟性が低下し、伸びや弾性が低下することになる。一方数平均分子量が高すぎる場合は、フィルム強度が不十分となりやすい。
なお、鎖延長剤の使用は、主剤と硬化剤の配合直前に混合して使用する分には問題ないが、あらかじめポリオールプレミックスとすると、貯蔵時にエステル交換反応が起こるため、好ましくない。
本発明におけるポリイソシアネート(B)は、数平均分子量350〜500、低官能基数であるHDIの変性ポリイソシアネート(B1)と、HDIのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(B2)からなるものである。
数平均分子量350〜500、低官能基数であるHDIの変性ポリイソシアネート(B1)は、フィルムに柔軟性や弾性を付与し、また、フィルム製造時における作業性を向上させる効果をもたらすものである。
(B1)の数平均分子量が下限未満の場合は、フィルム製造時において、臭気の問題が生じる場合がある。上限を越える場合は、粘度が高くなるので、フィルム製造時の生産性が低下する。
(B1)の平均官能基数(f)は、2≦f<3である。fが下限未満の場合は、架橋効果が不十分となり、被膜物性が低下する。上限以上では被膜の柔軟性が低下する。
(B1)の具体的なものとしては、グリコール(分子量62〜164)とHDIとの1:2(モル比)付加物、モノオール(分子量32〜164)とHDIとの1:2(モル比)のアロファネート変性体等が挙げられる。本発明においては、低粘度となるモノオールとHDIとの1:2(モル比)のアロファネート変性体が好ましい。
ノオールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール(各種異性体を含む)、ブタノール(各種異性体を含む)、ペンタノール(各種異性体を含む)、ヘキサノール(各種異性体を含む)、ヘプタノール(各種異性体を含む)、オクタノール(各種異性体を含む)、ノナノール(各種異性体を含む)等の飽和脂肪族モノオール、炭素数2〜9の不飽和脂肪族モノオール等が挙げられる。本発明で好ましいモノオールは、分子量が小さく、遮蔽効果の高いイソプロパノールである。
具体的なHDIのアロファネート変性体の製造方法は、水酸基に対して2倍モル当量以上のHDIと、モノオールとを、アロファネート化触媒の存在下、アロファネート化反応させた後、触媒毒を添加して、未反応のHDIを除去するという製造方法である。
HDIのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(B2)は、HDI又はHDIの部分ウレタンプレポリマーを、イソシアヌレート化反応を経て、未反応のHDIを除去することで得られるものである。ここでHDIの部分ウレタンプレポリマーとは、水酸基対して過剰量のHDIと、グリコールをウレタン化反応させて得られるものであり、その仕込みモル比は、HDI:グリコール=5:1〜100:1が好ましい。また、グリコールは、得られるポリイソシアネートの相溶性や求めるポリイソシアネートのイソシアネート含量を考慮すると、1,3−ブタンジオールが好ましい。
このようにして得られたポリイソシアネート(B)のイソシアネート含量は10〜25質量%が好ましく、特に13〜22質量%が好ましい。イソシアネート含量が高すぎる場合は、遊離イソシアネート含量が多いため、フィルム製造時に臭気等の問題がある。また、低すぎる場合は、架橋密度が低下するため、形成されたポリウレタンフィルムの強度や耐久性が不十分となりやすい。
ポリオール(A)/ポリイソシアネート(B)の配合の際、硬化工程の短縮や反応率の向上を目的として、触媒(C)を用いる。触媒(C)は、ウレタン化反応触媒としてはトリエチルアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン等の第3級アミン触媒、又は、スタナスオクトエート、スタナスオレート、ジブチル錫ジラウレートのような錫系触媒に代表される金属触媒が挙げられ、これらは各々単独で、あるいは混合して使用される。触媒(C)の使用量は、ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を配合した配合液に対して、0.01〜1.0質量%が好ましい。
本発明では、ポリオール(A)又はポリイソシアネート(B)、もしくは両方に添加剤を用いることができる。添加剤としては、可塑剤、充填剤、着色剤、難燃剤、有機又は無機の充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料・染料、抗菌剤・抗カビ剤等が挙げられる。
本発明のポリウレタンフィルムは、前述のポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を配合した液を、Tダイ等を用いた押出成形法や、離型性支持体上又はコンベア上に塗布して成型するキャスト法等が挙げられる。
本発明のポリウレタンフィルムの膜厚は、樹脂固形分として1〜200μmが好ましく、更に好ましくは5〜100μmである。
ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とを配合する際の、当該配合液におけるイソシアネート基と水酸基の当量比(イソシアネート基/水酸基)は、1.0以上1.1以下として成形し、その後加熱して硬化させることが好ましい。水酸基とイソシアネート基の当量比が、この比率から外れる場合は、強度や復元性が不十分となりやすい。
硬化時の加熱温度は50〜150℃が好ましい。加熱時間は2分〜2時間が好ましい。温度が低すぎる場合や時間が短すぎる場合は、硬化が不十分となる。一方、温度が高すぎる場合や時間が長すぎる場合は、被膜や基材に不必要な熱履歴をかけることになる。
本発明のポリウレタンフィルムは、紙おむつ用、生理ナプキン用、目止め用、防塵用等に用いられる伸縮性フィルム用途;一般用コンベアベルト、各種キーボードシート、ラミネート品等のシート用途等の種々の用途に使用することができるとある。また、フィルム状のホットメルト接着剤としても利用可能である。更に、合成皮革や人工皮革にも利用可能である。
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中において、「%」は「質量%」を示す。
〔HDIの変性ポリイソシアネートの製造〕
製造例1
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量:1Lの反応器に、HDIを950g、イソプロパノールを50g仕込み、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次に2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.2g仕込み、90℃にて3時間反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.1g仕込み50℃で1時間停止反応を行った。停止反応後の反応生成物のイソシアネート含量は42.1%であった。この反応生成物を130℃・0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、遊離HDIを除去して、イソシアネート含量が19.4%、25℃の粘度が100mPa・s、遊離のHDI含有量が0.1%、色数が10APHAのポリイソシアネートP−1を得た。P−1をFT−IR、13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基はその存在が認められず、アロファネート基の存在が確認された。また、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基は痕跡程度認められた。P−1の数平均分子量を求めたところ433であり、この数平均分子量とイソシアネート含量から算出される平均官能基数2.0であった。
製造例2
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量:1Lの反応器に、HDIを600部、1,3−ブタンジオールを5部、触媒としてカプリン酸カリウム0.1部、助触媒としてフェノール0.6部を加え、フラスコ中の空気を窒素で置換し、攪拌しながら反応温度70℃に加温し、同温度で4時間反応を行なった。この反応液に停止剤としてリン酸を0.2部加え、反応温度で1時間攪拌後、この反応生成物を130℃・0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、遊離HDIを除去して、イソシアネート含量が20.8%、25℃の粘度が2,500mPa・s、遊離のHDI含有量が0.3%、色数が20APHAのポリイソシアネートP−2を得た。P−2をFT−IR、13C−NMRにて分析したところ、イソシアヌレート基は確認されたが、アロファネート基、ウレトジオン基は痕跡程度認められた。P−2の数平均分子量を求めたところ747であり、この数平均分子量とイソシアネート含量から算出される平均官能基数3.7であった。
〔フィルム評価〕
実施例1〜13、比較例1〜4
表1〜3に示す組み合わせ、及び主剤/硬化剤の配合におけるイソシアネート基と水酸基が比率にて、60℃に加熱・溶解させたポリオールとポリイソシアネートを配合し、厚さ100μmになるようにバーコーターにて離型紙に塗布し、60℃にて30分加熱した後、120℃で1時間加熱して硬化させた。その後、室温にて24時間静置し、その後各種物性評価を行った。結果を表1〜3に示す。
Figure 0005317005
Figure 0005317005
Figure 0005317005
表1〜3において
PCD−1000:ジエチルカーボネートと1,6−HDを反応させて得られるPCD
数平均分子量=1,000
PCD−2000:ジエチルカーボネートと1,6−HDを反応させて得られるPCD
数平均分子量=2,000
PCD−3000:ジエチルカーボネートと1,6−HDを反応させて得られるPCD
数平均分子量=3,000
物性評価試験方法
引張物性(各種モジュラス、破断時強度、破断時伸び)
4号ダンベルカッターにてサンプルを打ち抜き、これをJIS K7311に準じて測定した。引張速度は200mm/分、測定温度は23℃とした。
ヒステリシスロス
4号ダンベルカッターにてサンプルを打ち抜き、引張速度は200mm/分、測定温度は23℃にて、伸びが300%となるまで引っ張り、その後荷重を除去して、測定した。
表1、2に示されるように、本発明の繊維積層体用表層材形成性組成物から形成されたフィルムは強度と柔軟性のバランスに優れたものであった。一方、比較例1、3は、柔軟性に欠け、また強度も小さく、物性的に粘りのないフィルムであった。比較例2、4は、強度こそ十分であったが、ヒステリシスロスが大きく、弾性に欠けるものであった。なお、全てのフィルム作成の際の異臭はなく、作業性は良好であった。
表に示されるように、主剤/硬化剤の配合におけるイソシアネート基と水酸基の比率では、実施例10、11と実施例3、12、13の2つのグループが生じた。前者(実施例10、11)は、モジュラスは大きいが、ヒステリシスロスも大きいものであった。一方、後者(実施例3、12、13)では、モジュラスは前者より小さいものの、破断時強度では前者と遜色なく、また、ヒステリシスロスは前者より小さくなっている。すなわち、後者は前者より、変形しやすいが強度的に劣るものではなく回復性が大きいということが言える。特に実施例3、12がバランスが取れている。

Claims (3)

  1. ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を触媒(C)の存在下に反応させて得られるポリウレタンフィルムにおいて、ポリオール(A)が、1,6−ヘキサンジオールとエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートの何れか一種類から選ばれたカーボネートから得られるポリカーボネートジオールであり、ポリイソシアネート(B)が、数平均分子量350〜500、平均官能基数(f)が2≦f<3であるヘキサメチレンジイソシアネートの変性ポリイソシアネート(B1)と、f≧3であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(B2)からなるものであって、(B1):(B2)=50:50〜95:5(質量比)であり、ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)の両方に有機溶剤を含まないことを特徴とする、ポリウレタンフィルム。
  2. (B1)が、モノオールとヘキサメチレンジイソシアネートから得られるアロファネート変性イソシアネートであることを特徴とする、請求項1記載のポリウレタンフィルム。
  3. 請求項1又は2に記載のポリオール(A)とポリイソシアネート(B)を配合した液において、当該配合液の水酸基とイソシアネート基のモル比を、水酸基/イソシアネート基=95/100〜115/100の割合とすることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリウレタンフィルムの製造方法。
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