JP5312622B2 - 変速機 - Google Patents
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Description
しかし、この変速機では、ギヤの回転速度によっては潤滑油がギヤの噛み合い領域に導かれない場合がある。例えば、ギヤの回転速度が速い場合には、リブにより潤滑油がギヤの噛み合い領域に導かれたとしても、ギヤの回転速度が遅い場合には潤滑油が飛散する距離が短くなり、リブにより潤滑油がギヤの噛み合い領域に導かれないおそれがある。
本発明の課題は、変速機において潤滑性能の安定化を図ることにある。
この変速機では、例えば、第1ギヤの回転速度が比較的速い場合、潤滑油が飛散する速度が速いため、飛散する潤滑油が反射部により給油有効領域に向けて反射される。第1ギヤの回転速度が比較的遅い場合、潤滑油が飛散する速度が遅いため、飛散する潤滑油は反射部により反射されないが誘導部により捕集され給油有効領域に導かれる。
<変速機の全体構成>
図1および図2を用いて変速機1について説明する。図1は変速機1の概略構成図である。図2は図1のV−V断面図である。図1ではギヤの配列が分かりやすいように各シャフトの配置を2次元的に表現している。
ケース2は、第1ケース21と、第1ケース21に固定された第2ケース29と、を有している。第1ケース21と第2ケース29とによりギヤ室28が形成されている。図2に示すように、ギヤ室28の下部には潤滑油が溜められている。
リバースシャフト7は、後進用の第1後進ギヤG8および第2後進ギヤG9を、回転軸A4を中心に回転可能なように支持している。第1後進ギヤG8には第4シンクロ機構S4が設けられている。第4シンクロ機構S4は第1後進ギヤG8と第2後進ギヤG9とを連結可能である。第2後進ギヤG9はメインシャフト4に固定された第3後進ギヤG10と噛み合っている。
<ケースの詳細構成>
ケース2には、潤滑性能の安定化を考慮した構造が採用されている。ここでは、図2〜図5を用いてディファレンシャルギヤG18を例に、この構造について説明する。図3および図4は図2の部分拡大図である。図5は図2のX−X断面図である。図2および図3において、線OL1は潤滑油の静的油面(第7メインギヤG17およびディファレンシャルギヤG18が回転していない停止状態での油面)を示している。図2および図3において、線OL2は潤滑油の動的油面(第7メインギヤG17およびディファレンシャルギヤG18が回転している運転状態での油面)を示している。図3はディファレンシャルギヤG18の回転速度が速い状態を示している。図4はディファレンシャルギヤG18の回転速度が遅い状態を示している。
図2に示すように、第2ケース29は、第2ケース本体29aと、第2ケース本体29a内に設けられた誘導部材としての誘導板22と、を有している。誘導板22は、ギヤ室28内に設けられており、飛散する潤滑油をディファレンシャルギヤG18および第7メインギヤG17の給油有効領域L2に導くための部分である。誘導板22は給油有効領域L2の概ね上方(より詳細には、ディファレンシャルギヤG18および第7メインギヤG17の噛み合い領域Eの概ね上方)に配置されている。
ここで、図3を用いて給油有効領域L2について説明する。給油有効領域L2とは、第7メインギヤG17およびディファレンシャルギヤG18の噛み合い領域Eを含む領域であって、潤滑油が供給されると第7メインギヤG17およびディファレンシャルギヤG18が潤滑され得る領域である。
(3)誘導板の詳細構成
ここで、誘導板22の形状および配置について詳細に説明する。
図3および図4に示すように、誘導板22は、第2ケース本体29aと一体成形されており、第2ケース本体29aの上部内壁面29bから下方に向かって傾斜するように延びている。誘導板22は、ディファレンシャルギヤG18の回転により飛散する潤滑油の飛散領域Bを概ね覆うように形成された板状の部材である。
図5に示すように、誘導板22は、第2ケース本体29aの側方内壁面29fからディファレンシャルギヤG18の軸方向に延びている。誘導板22の軸方向の端部は、ディファレンシャルギヤG18よりも軸方向のケース2側に突出している。
図3および図4に示すように、誘導板22に接触した潤滑油が給油有効領域L2に確実に導かれるように、誘導板22は、平板状の反射部22aと湾曲する誘導部22bとを有している。反射部22aは、上部内壁面29bから給油有効領域L2に近づくように延びている。誘導部22bは、反射部22aの先端部からさらに給油有効領域L2に近づくように延びている。
反射面22cは、噴射点P付近から噴き出す潤滑油が給油有効領域L2に向かって反射可能なように、水平方向に対して角度αだけ傾斜している。噴射点Pから噴き出す潤滑油の噴射角度βがディファレンシャルギヤG18の回転速度に応じて若干変化するため、反射面22cは噴射角度βの変化を考慮した範囲に形成されている。例えば、図3に示すように、潤滑油の噴射方向が方向D1や方向D2の場合でも反射面22cにより給油有効領域L2内に潤滑油が導かれるように、反射面22cは上部内壁面29bから誘導部22b側まで延びている。
第2ケース29は、ディファレンシャルギヤG18との半径方向間の隙間が部分的に狭くなるように形成されている。具体的には図3に示すように、第2ケース29は、第1部分としての第1壁部29cと、第2部分としての第2壁部29dと、第3部分としての第3壁部29eと、を有している。第1〜第3壁部29a,29c,29dはディファレンシャルギヤG18と半径方向に対向して配置されている。
<変速機の動作>
変速機1の動作について説明する。
例えば、第1速走行時では、第1シンクロ機構S1により第1入力ギヤG1と入力シャフト3とが連結されている。このとき、第1入力ギヤG1および第1メインギヤG11のギヤ比に応じた回転速度でメインシャフト4が回転する。この結果、第7メインギヤG17およびディファレンシャルギヤG18のギヤ比に応じた回転速度でディファレンシャルギヤG18が回転する。第2〜第6速の場合も第1速と同様に第1〜第3シンクロ機構S1〜S3により使用するギヤが切り換えられる。このように、第1〜第3シンクロ機構S1〜S3を切り換えることで、6段変速が可能となる。
図2および図3に示すように、ディファレンシャルギヤG18の一部は、ギヤ室28の下部に溜まっている潤滑油に浸漬されている。このため、ディファレンシャルギヤG18が回転すると、ディファレンシャルギヤG18の歯(図示せず)により潤滑油が掻き上げられる。このとき、第2壁部29dとディファレンシャルギヤG18との間の第2隙間C2が小さいため、ディファレンシャルギヤG18により掻き上げられた潤滑油は、噴射点P付近から誘導板22に向かって噴出する。
<特徴>
変速機1の特徴は以下の通りである。
以上に説明したように、この変速機1では、ディファレンシャルギヤG18の回転速度が比較的速い場合、ディファレンシャルギヤG18の回転により飛散した潤滑油が反射面22cで反射され給油有効領域L2へ導かれる。
ディファレンシャルギヤG18の回転速度が比較的遅い場合、潤滑油は反射部22aあるいは誘導板22に付着し捕集される。この結果、誘導部22bにより潤滑油が給油有効領域L2に滴下される。
(2)
この変速機1では、飛散領域Bを概ね覆うように誘導板22が形成されているため、給油有効領域L2へより確実に潤滑油を導くことができる。
この変速機1では、給油有効領域L2に近づくように水平方向に対して傾斜する反射面22cを反射部22aが有しているため、反射せずに反射面22cに付着した潤滑油が反射面22cに沿って給油有効領域L2に向かって流れやすくなる。これにより、誘導面22dだけでなく反射面22cに付着した潤滑油も給油有効領域L2に導かれやすくなり、潤滑性能の安定化を確実に図ることができる。
この変速機1では、給油有効領域L2に近づくように湾曲する誘導面22dを誘導部22bが有しているため、捕集された潤滑油が給油有効領域L2に向かって落下しやすくなる。さらに、反射面22cおよび誘導面22dに沿って勢いよく潤滑油が流れても、給油有効領域L2に向かって潤滑油が流れやすくなる。
この変速機1では、誘導面22dが反射面22cと連続して形成されているため、反射面22cから誘導面22dへ潤滑油が流れやすくなる。
(6)
この変速機1では、第2隙間C2が第1および第3隙間C1,C3よりも小さいため、ディファレンシャルギヤG18により掻き上げられた潤滑油が噴射点P付近まで運ばれ、噴射点P付近から噴き出す。これにより、潤滑油を誘導板22へ確実に接触させることができる。
この変速機1では、誘導板22が第1ケース21と一体成形されているため、誘導板22により製造コストが増大するのを抑制できる。
(8)
この変速機1では、比較的直径の大きいディファレンシャルギヤG18を潤滑油の噴射用として利用しているため、潤滑油が飛散する速度が速くなり、誘導板22へ潤滑油が付着しやすくなる、あるいは反射部22aにより潤滑油が反射されやすくなる。これにより、潤滑性能をより高めることができる。
本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
(A)
前述の実施形態では、誘導板22がディファレンシャルギヤG18および第7メインギヤG17の噛み合い領域Eに対して設けられているが、誘導板22は他のギヤの噛み合い領域に対して設けられていてもよい。
具体的には、誘導板122は、飛散領域B12を概ね覆うように形成された板状の部分であり、反射部122aと、誘導部122bと、を有している。反射部122aは概ね平面である反射面122cを有している。誘導部122bは、下方へ向かって湾曲した部分であり、反射部122aの端部から噛み合い領域E12へ向かって延びている。反射面122cで反射した潤滑油が噛み合い領域E12に導かれるように、水平方向に対する反射面122cの角度α2は設定されている。誘導面122dは曲率半径r2を有する曲面である。
なお、誘導板122により潤滑油が最大給油有効領域L11に導かれれば、潤滑性能の安定化が期待できる。
誘導板22の形状および配置は前述の実施形態に限定されない。例えば、反射部22aは曲面であってもよい。この場合、誘導部22bの曲率半径rよりも反射部22aの曲率半径が小さいと、反射部22aにおいて潤滑油が反射されやすい状態を維持できる。前述の誘導板122についても同様である。
(C)
誘導板22は、第2ケース本体29aと別体の部材であってもよい。また、誘導板22は、第1ケース21側に設けられていてもよい。
誘導板22は、FF車用の手動変速機だけでなく、FR(Front Engine Rear Drive)車用の手動変速機にも適用可能である。
2 ケース
21 第1ケース(ケース本体)
22 誘導板(誘導部材)
22a 反射部
22b 誘導部
22c 反射面
22d 誘導面
29 第2ケース(ケース)
29a 第2ケース本体(ケース本体)
29b 上部内壁面
29c 第1壁部(第1部分)
29d 第2壁部(第2部分)
29e 第3壁部(第3部分)
3 入力シャフト
4 メインシャフト
5 ディファレンシャル
B 飛散領域
P 噴射点
L1 最大給油有効領域
L2 給油有効領域
G9 第2後進ギヤ(第1ギヤ)
G10 第3後進ギヤ(第2ギヤ)
G17 第7メインギヤ(第2ギヤ)
G18 ディファレンシャルギヤ(第1ギヤ)
Claims (9)
- 第1ギヤと、
前記第1ギヤと噛み合う第2ギヤと、
前記第1および第2ギヤを回転可能に収容するケース本体と、前記ケース本体内に設けられ前記第1ギヤにより掻き上げられた潤滑油を前記第1および第2ギヤの噛み合い領域を含む給油有効領域に導く誘導部材と、を有するケースと、を備え、
前記誘導部材は、前記第1ギヤによって掻き上げられた潤滑油を反射して前記給油有効領域に供給可能な反射部と、前記給油有効領域に近づくように下方に向かって延びると共に前記第1ギヤによって掻き上げられた潤滑油が前記反射部に衝突しても該潤滑油が前記反射部によって反射せず該反射部に付着する程度の勢いで潤滑油が前記第1ギヤにより掻き上げられた場合でも掻き上げられた前記潤滑油を付着して自重により前記給油有効領域に供給可能な誘導部と、を有している、
変速機。 - 前記誘導部材は、前記潤滑油の飛散領域を概ね覆うように形成されている、
請求項1に記載の変速機。 - 前記反射部は、前記給油有効領域に近づくように水平方向に対して傾斜する反射面を有している、
請求項1または2に記載の変速機。 - 前記誘導部は、前記給油有効領域に近づくように湾曲する誘導面を有している、
請求項1から3のいずれかに記載の変速機。 - 前記誘導面は、前記反射面と連続して形成されている、
請求項4に記載の変速機。 - 前記ケース本体は、前記第1ギヤと半径方向に第1隙間を介して設けられた第1部分と、前記第1部分よりも前記第1ギヤの回転方向前方側に配置され前記第1ギヤと半径方向に第2隙間を介して設けられた第2部分と、前記第2部分よりも前記第1ギヤの回転方向前方側に配置され前記第1ギヤと半径方向に第3隙間を介して設けられた第3部分と、を有しており、
前記第2隙間は、前記第1および第3隙間よりも小さい、
請求項1から5のいずれかに記載の変速機。 - 前記反射部は、前記給油有効領域に近づくように水平方向に対して傾斜する反射面を有しており、
前記反射面は、前記第2隙間から前記第3隙間へと噴出する前記潤滑油が直接衝突できるように、前記第2隙間から前記第3隙間へと前記潤滑油が噴出する噴出点に対向して設けられている、請求項6記載の変速機。 - 前記誘導部材は、前記ケース本体と一体成形されている、
請求項1から7のいずれかに記載の変速機。 - 前記第1ギヤは、ディファレンシャルギヤである、
請求項1から8のいずれかに記載の変速機。
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