JP6407681B2 - オイルガータおよびこれを備える変速機 - Google Patents

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Description

本発明は、オイルガータおよびこれを備える変速機に関する。
特開2011−7208号公報(特許文献1)には、リングギヤの接線方向に延在する導入部と、当該導入部に直交してリングギヤの回転軸方向に延在する流路部と、を備え、リングギヤによって掻き上げられた潤滑油を導入部から導入して流路部へ流通させることにより流路部から各ギヤの歯面やシンクロ機構などの潤滑必要箇所に潤滑油を供給するオイルガータが記載されている。
このオイルガータでは、リングギヤによって掻き上げられた潤滑油の飛来方向に対向する位置に、変速機ケースの上方内壁近傍まで延在する縦壁を設けることにより、飛来する潤滑油を縦壁に衝突させて壁面を流下する潤滑油を捕集している。
特開2011−7208号公報
しかしながら、上述したオイルガータでは、リングギヤの回転数が増加するに伴い潤滑油の衝突エネルギーも増加するため、リングギヤの回転数が高回転となった場合には潤滑油が縦壁に衝突後に導入部を逆流してしまい、捕集効率が低下して潤滑性能の低下に繋がる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、潤滑性能の向上を図ることができる技術を提供することを目的とする。
本発明のオイルガータおよびこれを備える変速機は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明に係るオイルガータの好ましい形態によれば、回転部材により掻き上げられる潤滑油を捕集して潤滑必要部位に供給するオイルガータが構成される。当該オイルガータは、導入部と、供給流路部と、を備えている。導入部は、回転部材により掻き上げられる潤滑油の飛散方向に延在して回転部材により掻き上げられた潤滑油が導入されるように構成されている。また、導入部は、仕切壁によって第1導入部と第2導入部とに仕切られているとともに、潤滑油の飛散方向に延在するように構成された通路部を有している。第1導入部は、仕切壁を挟んで飛散方向における前側に配置されると共に、飛散方向とは反対側への潤滑油の流れを抑制する抑制部を有している。通路部は、当該通路部の延在方向の両端が開口するよう構成されていると共に、当該開口のうち一方の開口によって第1導入部と連通するように構成されている。第2導入部は、仕切壁を挟んで飛散方向における後側に配置されると共に、供給流路部に向かって下り傾斜となる底面を有している。また、供給流路部は、導入部の延在方向と交差する方向に延在して導入部に導入された潤滑油を潤滑必要部位に供給するように構成されている。そして、第1導入部に導入された潤滑油を第1開口を介して供給流路部に導入するとともに、第2導入部に導入された潤滑油を第2開口を介して供給流路部に導入するよう構成されており、かつ、第1導入部に導入された潤滑油の一部が一方の開口から流入して他方の開口から流出するように構成されている。
本発明における「飛散方向」とは、典型的には、回転部材の回転軸に垂直な方向が該当し、例えば、回転部材の接線方向がこれに該当する。なお、「回転部材の回転軸に垂直な方向」とは、回転部材の回転軸の方向ベクトルに対して内積が0となる方向ベクトルを有する方向が該当する。また、本発明における「交差する方向」とは、典型的には、直交する方向が該当する。
本発明によれば、回転部材により掻き上げられた潤滑油が導入される導入部が、仕切壁によって第1導入部と第2導入部とに仕切られる構成であるため、回転部材の回転速度が比較的低速のときには飛来する潤滑油を仕切壁に衝突させることにより第1導入部で捕集して第1開口から供給流路部に導入でき、回転部材の回転速度が高速になり潤滑油が仕切壁を乗り越え始めると、第2導入部で当該乗り越えた潤滑油を捕集して第2開口から供給流路部に導入できる。
なお、第1導入部が、潤滑油の飛散方向とは逆方向への流れを抑制する抑制部を有しているため、仕切壁に衝突した潤滑油が第1導入部を逆流することを抑制できる。また、第2導入部の底面が供給流路部に向かって下り傾斜を有するように構成されているため、第2導入部で捕集した潤滑油を速やかに供給流路部に導入することができる。これにより、回転部材の回転速度に依らずに効率的に潤滑油を捕集し得ると共に、潤滑必要部位に速やかに潤滑油を供給することができる。この結果、潤滑性能が向上する。さらに、第1導入部に導入された潤滑油の一部が、一方の開口から通路部に流入して他方の開口から流出されるため、潤滑油の飛散方向において導入部を挟んで回転部材が配置された側とは反対側に配置された潤滑必要部位に対しても良好に潤滑油を供給することができる。これにより、潤滑性能の向上をより一層図ることができる。
本発明に係るオイルガータの更なる形態によれば、仕切壁は、当該仕切壁に衝突する潤滑油を供給流路部側へ誘導するよう構成されている。
本形態によれば、第1導入部内で潤滑油が滞留することを抑制し得て、潤滑油を速やかに供給流路部に導入することができる。これにより、潤滑性能が向上する。
本発明に係るオイルガータの更なる形態によれば、仕切壁は、第2導入部側が凸となる曲面を有するように構成されている。ここで、本発明における「曲面」は、典型的には、円弧形状が該当する。
本形態によれば、潤滑油潤滑油の流れる方向を滑らかに変更できるため、仕切壁が平面の場合に比べて潤滑油をより速やかに供給流路部に誘導することができる。
本発明に係るオイルガータの更なる形態によれば、抑制部は、第1導入部の底面を仕切壁から遠ざかる方向に向かって上り傾斜に形成することにより飛散方向とは反対側への潤滑油の流れを抑制するように構成されている。
本形態によれば、簡易な構成で潤滑油の逆流を抑制することができる。また、当該傾斜によって第1導入部で捕集した潤滑油の供給流路部への導入を促進できる。
本発明に係る変速機の好ましい形態によれば、入力軸と、出力軸と、変速機構と、上述したいずれかの態様の本発明に係るオイルガータと、ケースと、を備える変速機が構成される。変速機構は、変更可能なギヤ比をもって入力軸の回転を出力軸に伝達するように構成されている。また、変速機構は、複数の歯車を有している。ケースは、入力軸,出力軸,変速機構およびオイルガータを収容するように構成されている。そして、当該変速機は、歯車の少なくとも一つが掻き上げた潤滑油をオイルガータで捕集して、捕集した潤滑油を変速機構に供給するよう構成されている。本発明における「変速機構」は、典型的には、駆動歯車、当該駆動歯車と噛合う被駆動歯車およびシンクロ機構がこれに該当する。
本発明によれば、上述したいずれかの態様の本発明に係るオイルガータを備えるから、本発明のオイルガータが奏する効果と同様の効果、例えば、潤滑性能を向上することができる効果などを奏することができる。
本発明に係る変速機の更なる形態によれば、ケースは、第2導入部の上方に対応する位置に突出部を有している。そして、歯車で掻き上げられた潤滑油の一部を突出部に衝突させて当該突出部を伝わせることにより第2導入部に導入するように構成されている。本発明における突出部は、典型的には、ケースに形成されたリブがこれに該当する。
本形態によれば、掻き上げられた潤滑油がオイルガータの上方を超えて飛散する場合においても、当該潤滑油を突出部に衝突させると共に突出部を伝わせて第2導入部で捕集することができる。これにより、より効率的に潤滑油を捕集することができる。この結果、潤滑性能が向上する。
本発明によれば、潤滑性能の向上を図ることができる。
本発明の実施の形態に係るオイルガータ20を備える変速機1の構成の概略を示す概略構成図である。 図1のA−A断面を示す断面図である。 図2のE部を拡大して示す拡大図である。 本発明の実施の形態に係るオイルガータ20の斜視図である。 本発明の実施の形態に係るオイルガータ20の斜視図である。 本発明の実施の形態に係るオイルガータ20の平面図である。 図6のB−B断面を示す断面図である。 図6のC−C断面を示す断面図である。 リングギヤ9によって掻き上げられた潤滑油の流れの様子を示す説明図である。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
本実施の形態に係るオイルガータ20を備える変速機1は、図1に示すように、入力軸2と、主軸4と、入力軸2の回転を変速を伴って主軸4に伝達する変速機構6と、主軸4の回転を図示しない車軸に伝達するディファレンシャル機構8と、本実施形態に係るオイルガータ20と、これらを収容する変速機ケース10と、を備えている。変速機1は、エンジンが横置き(車両の左右方向)に配置される所謂フロントエンジン・フロントドライブ(FF)式の車両に搭載されるFF車用の手動変速機として構成されている。
入力軸2は、図示しないベアリングによって変速機ケース10に回転可能に支持されており、先端部(図1における右側部分)には、図示しないクラッチがスプライン嵌合などにより取り付けられる。入力軸2は、クラッチを介してエンジン(図示せず)からの動力が入力されるように構成されている。
主軸4は、入力軸2に平行に配置されており、図示しないベアリングによって変速機ケース10に回転可能に支持されている。主軸4は、本発明における「出力軸」に対応する実施構成の一例である。
変速機構6は、図1に示すように、入力軸2に固定的ないし回転自在に配置された複数の駆動歯車Gと、主軸4に固定的ないし回転自在に配置された複数の被駆動歯車G’と、リバースアイドラ機構16と、複数のシンクロ機構Sと、を備えている。変速機構6は、本発明における「潤滑必要部位」および「変速機構」に対応する実施構成の一例である。
駆動歯車Gのうち1速,2速駆動歯車G1,G2およびリバース駆動歯車GRは入力軸2に対して固定的に配置されており、3速,4速,5速および6速駆動歯車G3,G4,G5,G6は入力軸2に対して回転自在に配置されている。
被駆動歯車G’のうち1速および2速被駆動歯車G’1,G’2は主軸4に対して回転自在に配置されており、3速,4速,5速,6速被駆動歯車G’3,G’4,G’5,G’6およびリバース被駆動歯車G’Rは主軸4に対して固定的に配置されている。1速,2速,3速,4速,5速および6速被駆動歯車G’1,G’2,G’3,G’4,G’5,G’6は、それぞれ1速,2速,3速,4速,5速および6速駆動歯車G1,G2,G3,G4,G5,G6と噛み合うように構成されている。駆動歯車Gおよび被駆動歯車G’は、本発明における「複数の歯車」に対応する実施構成の一例である。
リバースアイドラ機構16は、図1に示すように、入力軸2および主軸4に平行に配置されたリバースアイドラ軸17と、リバースアイドラ軸17に回転自在に配置された第1および第2リバースアイドラ歯車18,19と、第1および第2リバースアイドラ歯車18,19間に配置されたシンクロ機構SRと、を備えている。
シンクロ機構Sは、3速駆動歯車と4速駆動歯車との間(S34)、5速駆動歯車と6速駆動歯車との間(S56)および1速被駆動歯車と2速被駆動歯車との間(S12)、第1および第2リバースアイドラ歯車18,19の間(SR)にそれぞれ配置されている。シンクロ機構Sは、図示は省略するが、シンクロハブと、カップリングスリーブと、シンクロナイザリングと、クラッチギヤと、を備えている。
また、シンクロ機構Sは、入力軸2の回転数を3速,4速,5速および6速駆動歯車G3,G4,G5,G6の回転数に同期させるように構成されていると共に、1速および2速被駆動歯車G’1,G’2の回転数を主軸4に同期させるように構成されている。なお、第1および第2リバースアイドラ歯車18,19の間に配置されたシンクロ機構SRは、シンクロハブが第1リバースアイドラ歯車18と一体形成されており、第1リバースアイドラ歯車18の回転数を第2リバースアイドラ歯車19に同期させながら第1および第2リバースアイドラ歯車18,19を一体にするように構成されている。
ディファレンシャル機構8は、図示しない左右の車輪に生ずる速度差(回転数差)を吸収しつつ動力を分配して伝達するように構成されており、大径のリングギヤ9を備えている。リングギヤ9は、主軸4に固定的に取り付けられた図示しない出力ギヤと噛み合っている。リングギヤ9は、本発明における「回転部材」に対応する実施構成の一例である。
変速機ケース10は、図1および図2に示すように、入力軸2や主軸4、変速機構6およびオイルガータ20を収容するように構成されたケース本体12と、図示しないクラッチおよびディファレンシャル機構8を収容するように構成されたクラッチハウジング14と、を備えている。変速機ケース10は、本発明における「ケース」に対応する実施構成の一例である。
クラッチハウジング14は、図1および図2に示すように、入力軸2や主軸4を回転可能に支持する図示しないベアリングを取り付けるための取付部14aが形成されていると共に、オイルガータ20を設置するための設置部14bが形成されている。設置部14bは、図2に示すように、クラッチハウジング14のうちディファレンシャル機構8を収容する部分の上方、即ち、リングギヤ9の上部に対応する位置に形成されている。
また、クラッチハウジング14の内壁面のうち設置部14bの上方に位置する部分には、図2および図3に示すように、内側(設置部14bに向かう方向)に突出するリブ14cが一体形成されている。より具体的には、リブ14cは、オイルガータ20が設置部14bに設置された際に、オイルガータ20における後述する第2導入部52が配置される位置の上方に対応する内壁面に、第2導入部52に向かって突出するように形成されている。リブ14cは、本発明における「突出部」に対応する実施構成の一例である。
オイルガータ20は、図4ないし図6に示すように、導入部30と、流路部60とを備えており、平面視略鉤状に構成されている。オイルガータ20は、図1に示すように、長手方向長さが主軸4の全長とほぼ同じ長さとなるように構成されている。流路部60は、本発明における「供給流路部」に対応する実施構成の一例である。
導入部30は、図4ないし6に示すように、側壁32,34と、導入部30を第1導入部42と第2導入部52とに仕切るように構成された仕切壁36と、を備えている。
図7に示すように、側壁32には、仕切壁36を挟んで両側に貫通開口37,38が形成されている。また、側壁32には、図5および図8に示すように、第1および第2導入部42,52とは反対側に向かって突出するように三つの取付突起32aが形成されている。貫通開口37は、本発明における「第1開口」に対応し、貫通開口38は、本発明における「第2開口」に対応する実施構成の一例である。
仕切壁36は、図6に示すように、側壁32,34に交差する方向であって、側壁3側が第1導入部42、側壁2側が第2導入部52に寄るように斜めに延在している。これにより、導入部30が導入部30の延在方向(図6の上下方向)に第1導入部42と第2導入部52とに仕切られる。
仕切壁36は、図4ないし図6に示すように、曲面状に形成されている。具体的には、仕切壁36は、第2導入部52側に膨らむ円弧形状に形成されている。仕切壁36が第2導入部52側に膨らむ円弧形状に形成されている態様は、本発明における「第2導入部側が凸となる曲面を有するように構成されている」態様に該当する。
第1導入部42は、導入部30のうちリングギヤ9により掻き上げられ飛散する潤滑油の飛散方向における前側(図6の上側)に設けられており、図4および図6に示すように、側壁32,34と、仕切壁36と、底面44と、から構成されている。
底面44は、図7に示すように、仕切壁36から遠ざかる方向に向かって上り傾斜となる上り傾斜部44aと、上り傾斜部44aに連続して形成され、上り傾斜部44aの頂部から遠ざかるに伴い下り傾斜となる下り傾斜部44bと、を有している。
上り傾斜部44aは、本発明における「抑制部」に対応する実施構成の一例である。また、「第1導入部42が導入部30のうちリングギヤ9により掻き上げられ飛散する潤滑油の飛散方向における前側(図6の上側)に設けられる」態様は、本発明における「第1導入部は、仕切壁を挟んで飛散方向における前側に配置される」態様に対応する実施構成の一例である。
第2導入部52は、図6に示すように、側壁32と、側壁54と、仕切壁36と、終端壁56と、底面58と、から構成されている。第2導入部52は、箱形状を有している。
側壁54は、図4ないし図6および図8に示すように、側壁34に対して平行に所定距離だけ側壁32側(図5の左側)に離れて配置されており、導入部30の延在方向に沿って延在している。また、側壁54は、仕切壁36の一端に接続されている。これにより、側壁34と側壁54との間には側壁54の延在方向両端(図6の上下方向端部)が開放された通路部39が形成されている。
底面58は、図8に示すように、側壁54側から側壁32側に向かって下り傾斜に形成されている。具体的には、底面58の側壁54側の高さ方向位置は、図8に示すように、底面44の高さ方向位置よりも高い位置に形成され、底面58の側壁32側の高さ方向位置は、底面44の高さ方向位置とほぼ同じ高さ位置に形成されている。
流路部60は、図4ないし図6に示すように、導入部30と直交する方向に沿う長手方向を有しており、二つの側壁62,64と、底面66と、を備え、長手方向に直交する断面形状が略U字状に形成されている。流路部60は、仕切壁36の側壁32に接続された側の端部が流路部60の流路幅方向(長手方向と直交する方向、図6における上下方向)のほぼ中央に配置されるように導入部30に接続されている。これにより、流路部60は、貫通開口37,38を介して第1および第2導入部42,52に連通する。
流路部60は、導入部30に直交するように接続されて導入部30から直線的に延出する直線流路部72と、直線流路部72に対して曲折する曲折流路部74と、から構成されており、平面視略J字状を成している。側壁62が曲がり方向内側の側壁を構成し、側壁64が曲がり方向外側の側壁を構成している。曲折流路部74は、先端部ほど流路幅が狭くなるように構成されており、先端において開放されている。
側壁62には、図4ないし図6に示すように、三つの開口82,84,86が、導入部30側(図6の左側)から当該順序で形成されている。開口82,84は、側壁62のうち直線流路部72に対応する部分に形成され、開口86は、側壁62のうち曲折流路部74に対応する部分に形成されている。なお、開口82は、側壁62から底面66に亘って形成されている。
また、側壁62のうち曲折流路部74に対応する部分の先端部には、図4ないし図6に示すように、曲がり方向内側(図6における下側)に向かって突出するように突出流路88が形成されている。
底面66は、導入部30側(図6における左側)から先端部側(曲折流路部74側、図6における右側)に向かうに伴い下り傾斜となるように構成されている。底面66には、図4および図6に示すように、三つの整流リブ92,94,96が、流路部60の長手方向に延在するように形成されている。整流リブ92,94,96の高さは、側壁62,64よりも低く形成されている。
整流リブ92は、図6に示すように、最も側壁62寄りに形成され、一端が開口82,84間のほぼ中央に対応する位置に配置され、そこから側壁62にほぼ平行に延在し、開口84を超えたところで他端が側壁62に接続されている。
整流リブ94は、図6に示すように、整流リブ92より側壁64側(図6における上側)に形成され、一端が整流リブ92とほぼ同じ位置、即ち、開口82,84間のほぼ中央に対応する位置に配置され、そこから側壁62にほぼ平行に延在し、開口86を超えたところで他端が側壁62に接続されている。
整流リブ96は、最も側壁64側に形成され、一端が整流リブ92,94とほぼ同じ位置、即ち、開口82,84間のほぼ中央に対応する位置において側壁64に接続されており、そこから曲折流路部74における流路幅方向および長手方向それぞれの中央に対応する位置に他端が配置されるように、直線流路部72の長手方向に対して斜め状に延在している。
こうして構成されたオイルガータ20は、図1および図2に示すように、リングギヤ9の上方であって主軸4およびリングギヤ9の回転軸間に対応する位置において、導入部30の延在方向がリングギヤ9の接線方向にほぼ沿う方向となるように設置部14bに設置される。これにより、流路部60は、直線流路部72の長手方向と入力軸2および主軸4の軸線方向とが平行になるように配置されると共に、曲折流路部74の先端部が入力軸2側に向かように配置され、側壁62が入力軸2および主軸4側となるように配置される。
次に、こうして構成された変速機1の動作、特にリングギヤ9によって掻き上げられた潤滑油が変速機構6などの潤滑必要部位に供給される際の動作について説明する。変速機1の作動に伴ってリングギヤ9が回転すると、当該リングギヤ9によって変速機ケース10内に貯留された潤滑油が掻き上げられる。
掻き上げられた潤滑油は、リングギヤ9の接線方向に沿う方向に導入部30の延在方向が向くように配置されたオイルガータ20の導入部30に導入される。ここで、変速機1が1速あるいは2速などのような低速変速段で作動されている場合には、リングギヤ9の回転速度は比較的低速となり、リングギヤ9によって掻き上げられた潤滑油のほとんどは、第1導入部42に導入され仕切壁36に衝突してその向きを変えられる。
即ち、リングギヤ9の回転速度が比較的低速の場合には、リングギヤ9によって掻き上げられた潤滑油のほとんどが第1導入部42で捕集され、第1導入部42から貫通開口37を通って流路部60に流入される。ここで、仕切壁36が第1導入部42に捕集された潤滑油を流路部60に誘導するように傾斜しているため、第1導入部42内で潤滑油が滞留せずに、流路部60に迅速に導入できる。
また、仕切壁36が第2導入部52側に膨らむ円弧形状に形成されているため、潤滑油の流れ方向を貫通開口37側に滑らかに変更できるため、仕切壁36が平面の場合に比べて潤滑油をより速やかに流路部60に誘導することができる。
なお、第1導入部42の底面44が上り傾斜部44aを有しているため、仕切壁36に衝突してその反動で第1導入部42を逆流しようとする(潤滑油の飛散方向とは反対方向に流れようとする)潤滑油の動きを抑制できると共に、流路部60への誘導を促進できる。これにより、効率的かつ迅速に潤滑油を流路部60に誘導できる。なお、第1導入部42の底面44を上り傾斜に形成するのみの構成であるため、構成も簡易である。
流路部60に流入した潤滑油は、図9に示すように、開口84,86、突出流路88および曲折流路部74の先端から流出する。開口84から流出した潤滑油は、3速被駆動歯車G’3上に供給され3速被駆動歯車G’3および3速駆動歯車G3と3速被駆動歯車G’3との噛合い部を潤滑する。開口86から流出した潤滑油は、4速被駆動歯車G’4上に供給され4速被駆動歯車G4および4速駆動歯車G4と4速被駆動歯車G’4との噛合い部を潤滑する。突出流路88から流出した潤滑油は、6速駆動歯車G6上に供給され6速駆動歯車G6および6速駆動歯車G6と6速被駆動歯車G’6との噛合い部、6速クラッチギヤなどを潤滑する。
また、曲折流路部74の先端から流出した潤滑油は、ケース本体12に形成された図示しない流路を通って入力軸2内に形成された軸内油路(図示せず)に供給される。軸内油路(図示せず)に供給された潤滑油は、入力軸2に形成された図示しない径方向孔を介して入力軸2上に配置されたシンクロ機構S等に供給される。
なお、流路部60の底面66は、下流(曲折流路部74側)に向かうに伴って下り傾斜となるように構成されているため、リングギヤ9から遠い位置(曲折流路部74の先端部)まで迅速かつ効果的に潤滑油を供給することができる。また、曲折流路部74が先端に向かうに伴って流路幅が漸次狭くなるように構成されているため、潤滑油の流速を高めることができ、曲折流路部74の先端部(オイルガータ20の先端)まで潤滑油を効果的に流すことができる。
一方、変速機1が3速ないし6速などのような高速変速段で作動されるようになるに伴い、リングギヤ9の回転速度が高速となり、リングギヤ9によって掻き上げられ第1導入部42で捕集された潤滑油の一部が仕切壁36を乗り越えて第2導入部52に流入する。このとき、仕切壁36によって潤滑油の運動エネルギーが低減されるため効果的に第2導入部52で潤滑油を捕集することができる。ここで、第2導入部52の底面58が貫通開口38に向かって下り傾斜となるように構成されているため、第2導入部52で捕集した潤滑油を貫通開口38を介して迅速に流路部60に導入できる。
即ち、リングギヤ9の回転速度が高速の場合には、リングギヤ9によって掻き上げられた潤滑油を第1および第2導入部42,52の両方で捕集して、貫通開口37,38を通して流路部60に導入できるため、リングギヤ9で掻き上げられた潤滑油を無駄なく効率的に捕集できる。なお、この場合においても、第1導入部42における底面44の上り傾斜部44aによって、仕切壁36に衝突してその反動で第1導入部42を逆流しようとする(潤滑油の飛散方向とは反対方向に流れようとする)潤滑油の動きを効果的に抑制できる。これにより、効率的に潤滑油を流路部60に誘導できる。
そして、流路部60に流入した潤滑油は、リングギヤ9の回転速度が低速のときと同様、開口84,86、突出流路88および曲折流路部74の先端から流出して各部(3速被駆動歯車G’3および3速駆動歯車G3と3速被駆動歯車G‘3との噛合い部、4速被駆動歯車G’4および4速駆動歯車G4と4速被駆動歯車G’4との噛合い部、6速駆動歯車G6および6速駆動歯車G6と6速被駆動歯車G’6との噛合い部、6速クラッチギヤ、入力軸2内に形成された軸内油路(図示せず))に供給される。
なお、リングギヤ9で掻き上げられた潤滑油のうち仕切壁36に衝突せずに、仕切壁36の上方を超えた潤滑油は、図3に示すように、クラッチハウジング14の内壁面に形成されたリブ14cに衝突し、リブ14cを伝って流下して第2導入部52により捕集される。これにより、リングギヤ9で掻き上げられる潤滑油をより無駄なく効率的に捕集して潤滑必要部位に供給することができる。
また、リングギヤ9で掻き上げられ導入部30に導入された潤滑油の一部は、図9に示すように、通路部39を介して主軸4に形成された図示しない軸内油路に供給される。軸内油路(図示せず)に供給された潤滑油は、主軸4に形成された図示しない径方向孔を介して主軸4上に配置されたシンクロ機構Sに供給される。
また、本実施の形態に係るオイルガータ20は、リングギヤ9に加えて1速被駆動歯車G’1によって掻き上げられた潤滑油を捕集するように構成されている。1速被駆動歯車G’1によって掻き上げられた潤滑油は、開口82を介して直線流路部72に取り込まれる。これにより、リングギヤ9の回転数が低い低速変速段(例えば、1速や2速)においても十分なオイル供給量を確保することができる。
以上説明した本実施の形態に係る変速機1によれば、オイルガータ20の導入部30を円弧形状で傾斜した仕切壁36によって導入部30の延在方向に第1導入部42と第2導入部52とに仕切り、第1導入部42の底面44に仕切壁36から遠ざかる方向に向かうに伴い上り傾斜となる上り傾斜部44aを形成すると共に、第2導入部52の底面58を側壁54側から側壁32側(貫通開口38側)に向かって下り傾斜に形成する構成であるため、リングギヤ9によって掻き上げられた潤滑油を仕切壁36に衝突させて貫通開口37側に誘導して流路部60に導入できると共に、仕切壁36を超えた潤滑油については第2導入部52に導入して貫通開口38から流路部60に導入できる。
ここで、仕切壁36に衝突して逆流しようとする潤滑油の流れは上り傾斜部44aによって抑制されるとともに、潤滑油の貫通開口37,38側への流れが上り傾斜部44aおよび底面58の下り傾斜によって促進される。これにより、リングギヤ9の回転速度に関わらず、効率的に潤滑油を捕集し得て捕集した潤滑油を潤滑必要部位に迅速かつ効果的に供給することができる。この結果、潤滑性能が向上する。
本実施形態では、仕切壁36を第2導入部52側に膨らむ円弧形状に形成する構成としたが、これに限らない。例えば、仕切壁36を第2導入部52側に膨らむ多角形状に形成する構成、あるいは、平面形状に形成する構成としても構わない。
本実施形態では、リングギヤ9の上方であって主軸4およびリングギヤ9の回転軸間に対応する位置にオイルガータ20を設置する構成としたが、リングギヤ9で掻き上げた潤滑油を導入部30に導入することができれば如何なる位置に配置する構成としても良い。
本実施形態では、リブ14cは、クラッチハウジング14の内壁面に一体形成する構成としたが、リブ14cはクラッチハウジング14とは別体であっても構わない。この場合、リブ14cを溶接やボルト止めなどによってクラッチハウジング14に取り付け固定する構成とすれば良い。
本実施形態では、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)式の車両に搭載されるFF車用の手動変速機に適用したが、フロントエンジン・リヤドライブ(FR)式の車両に搭載されるFR車用の手動変速機に適用しても良い。
(実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係)
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
1 変速機(変速機)
2 入力軸(入力軸)
4 主軸(出力軸)
6 変速機構(潤滑必要部位、変速機構)
8 ディファレンシャル機構
9 リングギヤ(回転部材)
10 変速機ケース(ケース)
12 ケース本体
14 クラッチハウジング
14a 取付部
14b 設置部
14c リブ(突出部)
16 リバースアイドラ機構
17 リバースアイドラ軸
18 第1リバースアイドラ歯車
19 第2リバースアイドラ歯車
20 オイルガータ(オイルガータ)
30 導入部(導入部)
32 側壁
32a 取付突起
34 側壁
36 仕切壁(仕切壁)
37 貫通開口(第1開口)
38 貫通開口(第2開口)
39 通路部(通路部)
42 第1導入部(第1導入部)
44 底面
44a 上り傾斜部(抑制部)
44b 下り傾斜部
46 長孔
48 囲いリブ
52 第2導入部(第2導入部)
54 側壁
56 終端壁
58 底面(底面)
60 流路部(供給流路部)
62 側壁
64 側壁
66 底面
72 直線流路部
74 曲折流路部
82 開口
84 開口
86 開口
88 突出流路
92 整流リブ
94 整流リブ
96 整流リブ
G 駆動歯車(複数の歯車)
G1 1速駆動歯車(複数の歯車)
G2 2速駆動歯車(複数の歯車)
G3 3速駆動歯車(複数の歯車)
G4 4速駆動歯車(複数の歯車)
G5 5速駆動歯車(複数の歯車)
G6 6速駆動歯車(複数の歯車)
GR リバース駆動歯車(複数の歯車)
G’ 被駆動歯車(複数の歯車)
G’1 1速被駆動歯車(複数の歯車)
G’2 2速被駆動歯車(複数の歯車)
G’3 3速被駆動歯車(複数の歯車)
G’4 4速被駆動歯車(複数の歯車)
G’5 5速被駆動歯車(複数の歯車)
G’6 6速被駆動歯車(複数の歯車)
G’R リバース被駆動歯車(複数の歯車)
S シンクロ機構
S12 シンクロ機構
S34 シンクロ機構
S56 シンクロ機構
SR シンクロ機構

Claims (6)

  1. 回転部材により掻き上げられる潤滑油を捕集して潤滑必要部位に供給するオイルガータであって、
    前記回転部材により掻き上げられる潤滑油の飛散方向に延在して前記回転部材により掻き上げられた潤滑油が導入される導入部と、
    該導入部の延在方向と交差する方向に延在して前記導入部に導入された潤滑油を前記潤滑必要部位に供給する供給流路部と、
    を備え、
    前記導入部は、仕切壁によって第1導入部と第2導入部とに仕切られているとともに前記潤滑油の飛散方向に延在するよう構成された通路部を有しており、
    前記第1導入部は、前記仕切壁を挟んで前記飛散方向における前側に配置されると共に、前記飛散方向とは反対側への潤滑油の流れを抑制する抑制部を有しており、
    前記第2導入部は、前記仕切壁を挟んで前記飛散方向における後側に配置されると共に、前記供給流路部に向かって下り傾斜となる底面を有しており、
    前記通路部は、該通路部の延在方向の両端が開口するよう構成されていると共に、該開口のうち一方の開口によって前記第1導入部と連通するよう構成されており、
    前記第1導入部に導入された潤滑油を第1開口を介して前記供給流路部に導入するとともに、前記第2導入部に導入された潤滑油を第2開口を介して前記供給流路部に導入するよう構成されており、かつ、前記第1導入部に導入された潤滑油の一部が前記一方の開口から流入して他方の開口から流出するよう構成されている
    オイルガータ。
  2. 前記仕切壁は、該仕切壁に衝突する潤滑油を前記供給流路部側へ誘導するよう構成されている請求項1に記載のオイルガータ。
  3. 前記仕切壁は、前記第2導入部側が凸となる曲面を有するように構成されている請求項2に記載のオイルガータ。
  4. 前記抑制部は、前記第1導入部の底面を前記仕切壁から遠ざかる方向に向かって上り傾斜に形成することにより前記飛散方向とは反対側への潤滑油の流れを抑制するよう構成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のオイルガータ。
  5. 入力軸と、
    出力軸と、
    前記入力軸の回転を変更可能な変速比をもって前記出力軸に伝達する変速機構と、
    請求項1ないしのいずれか1項に記載のオイルガータと、
    前記入力軸,前記出力軸,前記変速機構および前記オイルガータを収容するケースと、
    を備え、
    前記変速機構は、複数の歯車を有しており、
    該歯車の少なくとも一つが掻き上げた潤滑油を前記オイルガータで捕集して、捕集した潤滑油を前記変速機構に供給するよう構成されている
    変速機。
  6. 前記ケースは、前記第2導入部の上方に対応する位置に突出部を有しており、
    前記歯車で掻き上げられた潤滑油の一部を前記突出部に衝突させて該突出部を伝わせることにより前記第2導入部に導入するよう構成されている請求項に記載の変速機。
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