JP5309803B2 - 水素燃料電池用膜電極複合体 - Google Patents

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Description

本発明は、発電時および開回路電圧(OCV)時の電解質膜の劣化を低減した水素燃料電池用膜電極複合体に関するものである。
燃料電池は、排出物が少なく、かつエネルギー効率が高く、環境への負担の低い発電装置である。このため、近年の地球環境保護への高まりの中で再び脚光を浴びている。従来の大規模発電施設に比べ、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として、将来的にも期待されている発電装置である。また、小型移動機器、携帯機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池の代替として、あるいは二次電池の充電器として、またあるいは二次電池との併用(ハイブリッド)により、携帯電話などの携帯機器やパソコンなどへの搭載が期待されている。
高分子電解質型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell)においては、水素ガスを燃料とする高分子電解質型燃料電池(以下、PEFCと記載する場合がある)および、メタノールなどの燃料を直接供給する直接型燃料電池も注目されている。
高分子電解質型燃料電池は通常、発電を担う反応の起こるアノードとカソードの電極と、アノードとカソードとの間でプロトン伝導体となる高分子電解質膜とが、膜電極複合体(MEA)を構成し、このMEAがセパレーターによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。ここで、電極は、ガス拡散の促進と集(給)電を行う電極基材(ガス拡散電極あるいは集電体とも云う)と、実際に電気化学的反応場となる触媒層とから構成されている。たとえばPEFCのアノード電極では、水素ガスなどの燃料がアノード電極の触媒層で反応してプロトンと電子を生じ、電子は電極基材に伝導し、プロトンは高分子電解質膜へと伝導する。このため、アノード電極には、ガスの拡散性、電子伝導性、プロトン伝導性が良好なことが要求される。一方、カソード電極では、酸素や空気などの酸化ガスがカソード電極の触媒層で、高分子電解質膜から伝導してきたプロトンと、電極基材から伝導してきた電子とが反応して水を生成する。
従来、このようなMEAの高分子電解質膜としてフッ素原子を含む高分子電解質膜、例えば、ナフィオン(登録商標)(デュポン社製)、フレミオン(登録商標)(旭硝子社製)等に代表されるパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマー膜が使用されてきた。
しかし、これらのフッ素原子を含む高分子電解質膜を使用した水素燃料電池では、自動車用途、定置用途での連続発電評価において、高分子電解質膜中に触媒が析出しやすく、Ptバンドが形成され、電解質膜劣化の引き金になることが明らかとなってきた。(非特許文献1)
このような高分子電解質膜の劣化に対して、特許文献1〜3に記載されている過酸化水素やラジカル生成を抑制する方法、特許文献4に記載されている燃料クロスオーバーを低減する方法が提案されている。
特許文献1〜3では活性炭を有する中間層を触媒層とガス拡散層基材の間に設けたり、特定の金属イオンを含んだ多孔質体の連通孔にプロトン伝導性材料を充填した層を電解質膜の内部に設けたり、MEAにTi(SO4)2などの過酸化水素と錯体を形成しうる錯体形成性化合物を分散させる方法が提案されている。
しかしながらこれらの方法では、添加剤による内部抵抗や反応抵抗の増大による発電性能の低下が起こりやすく、耐久性についても初期効果があったとしても長期間の評価ではMEAの劣化を抑制する事ができず実用的ではなかった。
特許文献4はカーボンナノチューブ内に金属触媒を担持させた触媒部材を電解質に分散した層を電解質膜内に設け、水素ガスのクロスオーバーを低減させる提案であるが、この方法では電解質内部に触媒が析出した場合と同様に、起動と停止を繰り返した発電評価を行った場合、電解質膜の劣化が発生し、クロスオーバーの低減効果が不十分であった。
第47回電池討論会講演要旨集,p.60,2006 特開2005−339962号公報 特開2007−12375号公報 特開2007−115415号公報 特開2004−199943号公報
本発明は、かかる背景技術に鑑み、特に、発電・停止を繰り返した場合やOCV状態で長時間放置された場合でもフッ素原子を含む高分子電解質膜の劣化を低減できる水素燃料電池用膜電極複合体を提供せんとするものである。
上記目的を達成するための本発明は、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の水素燃料電池用膜電極複合体は、フッ素原子を含む高分子電解質膜の一方の面側に燃料極、逆側に酸化極を設けた水素燃料電池用膜電極複合体において、該高分子電解質膜と両側の電極の間に、炭化水素系電解質層を有することを特徴とする。
そして本発明によれば、発電・停止を繰り返した場合やOCV状態で長時間放置された場合でも、高分子電解質膜中への触媒析出が低減でき、高分子電解質膜の劣化を長時間にわたって低減できることから、水素燃料電池用膜電極複合体の耐久性を向上できる。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
本発明の水素燃料電池用膜電極複合体は、フッ素原子を含む高分子電解質膜の一方の面に燃料極、他方の面に酸化極を設けた水素燃料電池用膜電極複合体において、該高分子電解質膜と少なくとも何れか一方の電極の間に、炭化水素系電解質層を有することを特徴とする。
水素燃料電池用膜電極複合体とは燃料極に水素ガスを供給する方式の燃料電池に使用する膜電極複合体のことであり、自動車用、家庭用、携帯機器用など高出力を要求される用途に好適である。
フッ素原子を含む高分子電解質膜は化学的な安定性、破れにくい、保水力が高い、燃焼しにくいことから水素燃料電池用膜電極複合体の構成成分として必須であるが、一方で、燃料ガスのクロスリークが大きい上に触媒金属イオンが電解質膜中に侵入しやすく、発電や停止を繰り返すと触媒金属層が膜中に析出し、その部分が引き金となって電解質膜を劣化させるため、フッ素原子を含む高分子電解質膜単独で使用した水素燃料電池用膜電極複合体の劣化を低減できなかった。
我々は鋭意検討の結果、フッ素原子を含む高分子電解質膜と少なくとも何れか一方の電極の間に、炭化水素系電解質層を有することで、触媒金属の析出が大幅に低減でき、電解質膜の劣化を低減し水素燃料電池用膜電極複合体の耐久性を向上することができることを見出した。
その機構の解明はまだ十分ではないが、炭化水素系電解質層を電極とフッ素原子を含む高分子電解質膜に設ける事により、酸素、水素などの燃料ガスのクローオーバーが低減され、過酸化水素の発生量が低減されるためか、、炭化水素系電解質層に触媒金属イオンが侵入しにくいためか、その両者の相乗効果と推定している。
電解質膜を透過する水素透過量は、カソード側に窒素ガスを供給し、アノード側に水素を供給した状態で、電圧を掃印し、電解質膜を透過する水素により、流れる電流値で測定することができる。この方法において、0.2〜0.7V間の水素透過電流が、1.5mA/cm以下であることが好ましい。1.5mA/cm以下であれば、水素透過が原因の膜劣化を低減できる。1.2mA/cm以下がより好ましく、1.0mA/cm以下がさらに好ましい。
本発明のフッ素原子を含む高分子電解質膜とは、炭素と結合しているフッ素原子数をA、水素原子数をBとするとA/B>0.1以上の重合体または共重合体からなる膜である。一方、炭化水素系電解質層はA/B<0.1未満の重合体または共重合体からなる層であり、A/B=0がさらに好ましい。
炭化水素系電解質層の厚みは特に制限はないが、0.5μm以上、100μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上、50μm以下、さらに好ましくは3μm以上、30μm以下である。0.5μm以上以下では金属バンドの発生が十分に低減出来ず、耐久性向上効果が不十分となる場合がある。100μmを越えると、発電時のプロトン伝導性が低下し発電性能の低下を招く場合がある。

炭化水素系電解質層は少なくとも一方の電極とフッ素原子を含む高分子電解質膜の間に設ける必要があるが、フッ素原子を含む高分子電解質膜を挟む様に設けてもよい。さらに、炭化水素系電解質層とフッ素原子を含む高分子電解質膜が複数層に積層されていてもよいし、炭化水素系電解質層は各槽によって組成や構造、厚みなどが異なっていても差し支えない。
本発明の炭化水素系電解質層は、イオン性基を有した高分子材料を含むことが、好ましい。係るイオン性基としては、負電荷を有する原子団が好ましく、プロトン交換能を有するものが好ましい。このような官能基としては、スルホン酸基(−SO(OH))、硫酸基(−OSO(OH))、スルホンイミド基(−SONHSOR(Rは有機基を表す。))、ホスホン酸基(−PO(OH))、リン酸基(−OPO(OH))、カルボン酸基(−CO(OH))、およびこれらの塩等を好ましく採用することができる。これらのイオン性基は前記高分子材料中に2種類以上含むことができ、組み合わせることにより好ましくなる場合がある。組み合わせはポリマーの構造などにより適宜決められる。中でも、高プロトン伝導度の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基のいずれかを有することがより好ましく、耐加水分解性の点から少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい。スルホン酸基を有する場合、そのスルホン酸基密度は、プロトン伝導性の点から0.1〜5.0mmol/gが好ましく、より好ましくは0.5〜3.5mmol/g、さらに好ましくは1.0〜3.5mmol/gである。スルホン酸基密度を0.1mmol/g以上とすることにより、イオン伝導度を維持することができ、また5.0mmol/g以下とすることで、たとえば、直接メタノール型燃料電池など液体燃料が直接接触するような燃料電池に使用する際に、炭化水素系電解質層が燃料により過度に膨潤し溶出したり流出したりするのを防ぐことができる。
ここで、スルホン酸基密度とは、高分子材料の単位乾燥重量当たりに導入されたスルホン酸基のモル量であり、この値が大きいほどスルホン化の度合いが高いことを示す。使用する高分子材料のスルホン酸基密度は、元素分析、中和滴定あるいは核磁気共鳴スペクトル法等により測定が可能である。スルホン酸基密度測定の容易さや精度の点で、元素分析が好ましく、通常はこの方法で分析を行う。ただし、スルホン酸基以外に硫黄源を含む場合など元素分析法では正確なスルホン酸基密度の算出が困難な場合には中和滴定法を用いるものとする。さらに、これらの方法でもスルホン酸基密度の決定が困難な場合においては、核磁気共鳴スペクトル法を用いることが可能である。
イオン性基を有した高分子材料の具体例としては、特に制限はなく、イオン性基含有ポリオレフィンなども使用可能であるが、炭化水素系電解質層の機械的強度、燃料耐久性、耐熱性などの観点から、主鎖に芳香環を有する高分子電解質材料が好ましく、イオン性基含有ポリフェニレンオキシド、イオン性基含有ポリエーテルケトン、イオン性基含有ポリエーテルエーテルケトン、イオン性基含有ポリエーテルスルホン、イオン性基含有ポリエーテルエーテルスルホン、イオン性基含有ポリエーテルホスフィンオキシド、イオン性基含有ポリエーテルエーテルホスフィンオキシド、イオン性基含有ポリフェニレンスルフィド、イオン性基含有ポリアミド、イオン性基含有ポリイミド、イオン性基含有ポリエーテルイミド、イオン性基含有ポリイミダゾール、イオン性基含有ポリオキサゾール、イオン性基含有ポリフェニレンなどの、イオン性基を有する芳香族炭化水素系ポリマーが挙げられる。
これらの高分子材料にイオン性基を導入する方法については、重合体にイオン性基を導入してもよいし、イオン性基を有するモノマーを重合してもよい。重合体へのホスホン酸基の導入は、例えば、「ポリマー プレプリンツジャパン」(Polymer Preprints, Japan ), 51, 750 (2002). 等に記載の方法によって可能である。重合体へのリン酸基の導入は、例えば、ヒドロキシル基を有するポリマーのリン酸エステル化によって可能である。重合体へのカルボン酸基の導入は、例えば、アルキル基やヒドロキシアルキル基を有するポリマーを酸化することによって可能である。重合体へのスルホンイミド基の導入は、例えば、スルホン酸基を有するポリマーをアルキルスルホンアミドで処理するによって可能である。重合体への硫酸基の導入は、例えば、ヒドロキシル基を有するポリマーの硫酸エステル化によって可能である。重合体へのスルホン酸基の導入は例えば、重合体をクロロスルホン酸、濃硫酸、発煙硫酸と反応させる方法により行うことができる。これらの、イオン性基導入方法は、処理時間、濃度、温度などの条件を適宜選択することにより目的とするイオン性基密度に制御できる。
また、イオン性基を有するモノマーを重合する方法としては、例えば、「ポリマー プレプリンツ」(Polymer Preprints), 41(1) (2000) 237. 等に記載の方法によって可能である。この方法により重合体を得る場合には、イオン性基の導入の度合いはイオン酸基を有するモノマーの仕込み比率により、容易に制御することができる。
また使用するイオン性基を有した高分子材料が非架橋構造を有する場合、重量平均分子量は1万〜500万が好ましく、より好ましくは3万〜100万である。重量平均分子量を1万以上とすることで、低界面抵抗層として実用に供しうる機械的強度を得ることができる。一方、500万以下とすることで、取り扱いの容易な界面抵抗低減性組成物を得ることができ、良好な加工性を維持することができる。該重量平均分子量はGPC法によって測定できる。
本発明の炭化水素系電解質を形成する高分子材料は単独、あるいは二種以上併用して使用でき、ポリマーブレンド、ポリマーアロイ、また二層以上の積層膜として使用できる。特にイオン性基としては、前述のようにスルホン酸基を有する高分子材料が最も好ましいが、スルホン酸基を有する高分子材料を使用する一例として、−SO3M基(Mは金属)含有のポリマーを溶液状態より製膜し、その後高温で熱処理し溶媒を除去し、プロトン置換して膜とする方法が挙げられる。前記の金属Mはスルホン酸と塩を形成しうるものであればよいが、価格および環境負荷の点からはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、M
o、Wなどが好ましく、これらの中でもLi、Na、K、Ca、Sr、Baがより好ましく、Li、Na、Kがさらに好ましい。これらの金属塩の状態で製膜することで高温での熱処理が可能となり、該方法は高ガラス転移点、低吸水率が得られる高分子材料系には好適である。
本発明の炭化水素系電解質層を電極とフッ素原子を含む高分子電解質膜間に設ける方法としては特に限定されない。例えば、炭化水素系電解質層をフッ素原子を含む高分子電解質膜上に設け、その後、電極を貼り合わせる、または炭化水素系電解質層を設けた電極とフッ素原子を含む高分子電解質膜を貼り合わせる、または炭化水素系電解質層を設けたフッ素原子を含む高分子電解質膜と炭化水素系電解質層を設けた電極を貼り合わせることなどが例として挙げられる。また、炭化水素系電解質層を別の基材上に形成しフッ素原子を含む高分子電解質膜原料をコーティングしたり、フッ素原子を含む高分子電解質膜原料と炭化水素系電解質膜層原料を積層コーティングし多層膜としたり、押し出し機などで積層したりする方法もあげられる。さらに炭化水素系電解質層の薄膜でフッ素原子を含む高分子電解質膜上を挟み込み、加熱プレスで一体化させる方法も挙げられる。
作業性や再現性などの工業的な製造の観点からは、炭化水素系電解質層を電極上および/またはフッ素原子を含む高分子電解質膜上に設けて貼り合わせる工程が好ましい。
炭化水素系電解質層を電極上やフッ素原子を含む高分子電解質膜上に設ける方法としては、国際公開第06/061993号パンフレットに記載の電極の触媒面上や電解質膜上に直接塗工する方法や、炭化水素系電解質層を別の基材に塗布後、電極やフッ素原子を含む高分子電解質膜と貼り合わせて基材を取り除く方法などが挙げられる。炭化水素系電解質層を塗工する場合は、後述するが炭化水素系電解質を溶媒で溶解したり、可塑剤を加えたりし適宜実験的に塗工方法に適した組成物として利用できる。この場合の溶剤や可能剤は、加熱や洗浄によって除去できることが好ましい。
塗工法としては、スプレーコート、刷毛塗り、ディップコート、ダイコート、カーテンコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷などの手法が適用できる。溶媒を用い塗工法では、熱による溶媒の乾燥、ポリマーを溶解しない溶媒での湿式凝固法などで炭化水素系電解質層が形成でき、無溶媒では光、熱、湿気などで硬化させる方法、炭化水素系電解質を加熱溶融させ、膜状に製膜後冷却する方法などが適用できる。
また、加熱しても炭化水素系電解質が溶融しないものの場合、炭化水素系電解質を溶解可能な溶剤と可塑剤と組み合わせた組成物を加熱塗工後、冷却する、ホットメルトコーティング方法などが適用できる。このような用途に使用する可塑剤としては、保存安定性や作業性の観点からはグリセリンなどの多価アルコールを用いることが好ましい。
炭化水素系電解質層の形成に用いる溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはイソプロパノールなどのアルコール系溶媒が好適に用いられる。
炭化水素系電解質層の厚みは、種々の方法で制御できる。例えば、溶媒キャスト法で形成する場合は、溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御することができる。
また、本発明の炭化水素系電解質層は、必要に応じて放射線照射などの手段によって高分子構造全体あるいは一部を架橋せしめることもできる。架橋せしめることにより、燃料クロスオーバーおよび触媒金属の進入をさらに低減する効果が期待でき、機械的強度が向上し、より好ましくなる場合がある。ここでの架橋構造とは、熱に対しての流動性が実質的に無い状態か、溶剤に対して実質的に不溶の状態を意味する。
また、本発明の炭化水素系電解質層およびフッ素原子を含む高分子電解質膜には、イオン伝導性や燃料クロスオーバーの抑制効果を阻害しない範囲内において、機械的強度の向上、イオン性基の熱安定性向上、加工性の向上などの目的のために、フィラーや無機微粒子を含有しても、ポリマーや金属酸化物からなるネットワークや微粒子を形成させても構わないし、支持体などに含浸したものでも差し支えない。
次に、本発明の水素燃料電池用膜電極複合体に好適な電極の例を説明する。かかる電極は、触媒層および電極基材からなるものである。
ここでいう触媒層は、電極反応を促進する触媒、電子伝導体、イオン伝導体などを含む層である。
かかる触媒層に含まれる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、金などの貴金属触媒が好ましく用いられる。これらの内の1種類を単独で用いてもよいし、合金、混合物など、2種類以上を併用してもよい。
また、触媒層に電子伝導体(導電材)を使用する場合は、電子伝導性や化学的な安定性の点から炭素材料、無機導電材料が好ましく用いられる。なかでも、非晶質、結晶質の炭素材料が挙げられる。例えば、チャネルブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが電子伝導性と比表面積の大きさから好ましく用いられる。ファーネスブラックとしては、キャボット社製“バルカン(登録商標)XC−72”、“バルカン(登録商標)P”、“ブラックパールズ(登録商標)880”、“ブラックパールズ(登録商標)1100”、“ブラックパールズ(登録商標)1300”、“ブラックパールズ(登録商標)2000”、“リーガル(登録商標)400”、ケッチェンブラック・インターナショナル社製“ケッチェンブラック(登録商標)”EC、EC600JD、三菱化学社製#3150、#3250などが挙げられ、アセチレンブラックとしては電気化学工業社製“デンカブラック(登録商標)”などが挙げられる。またカーボンブラックのほか、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素なども使用することができる。これらの炭素材料の形態としては、不定形粒子状のほか繊維状、鱗片状、チューブ状、円錐状、メガホン状のものも用いることができる。また、これら炭素材料を後処理加工したものを用いてもよい。
また、電子伝導体を使用する場合は、触媒粒子と均一に分散していることが電極性能の点で好ましい。このため、触媒粒子と電子伝導体は予め塗液として良く分散しておくことが好ましい。さらに、触媒層として、触媒と電子伝導体とが一体化した触媒担持カーボン等を用いることも好ましい実施態様である。この触媒担持カーボンを用いることにより、触媒の利用効率が向上し、電池性能の向上および低コスト化に寄与できる。ここで、触媒層に触媒担持カーボンを用いた場合においても、電子伝導性をさらに高めるために導電剤を添加することも可能である。このような導電剤としては、上述のカーボンブラックが好ましく用いられる。
触媒層に用いられるイオン伝導性を有する物質(イオン伝導体)としては、一般的に、種々の有機、無機材料が公知であるが、燃料電池に用いる場合には、イオン伝導性を向上するスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などのイオン性基を有するポリマー(イオン伝導性ポリマー)が好ましく用いられる。なかでも、イオン性基の安定性の観点から、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成されるイオン伝導性を有するポリマー、あるいは本発明の高分子電解質材料が好ましく用いられる。パーフルオロ系イオン伝導性ポリマーとしては、例えばデュポン社製の“ナフィオン(登録商標)”、旭化成社製の“Aciplex(登録商標)”、旭硝子社製“フレミオン(登録商標)”などが好ましく用いられる。これらのイオン伝導性ポリマーは、溶液または分散液の状態で触媒層中に設ける。この際に、ポリマーを溶解あるいは分散化する溶媒は特に限定されるものではないが、イオン伝導性ポリマーの溶解性の点から極性溶媒が好ましい。
また、前述した炭化水素系電解質も、触媒層中のイオン伝導性を有する物質(イオン伝導体)に好適に使用できる。
前記、触媒と電子伝導体類は通常粉体であるので、イオン伝導体はこれらを固める役割を担うことが通常である。イオン伝導体は、触媒層を作製する際に触媒粒子と電子伝導体とを主たる構成物質とする塗液に予め添加し、均一に分散した状態で塗布することが電極性能の点から好ましいものである。触媒層に含まれるイオン伝導体の量としては、要求される電極特性や用いられるイオン伝導体の伝導度などに応じて適宜決められるべきものであり、特に限定されるものではないが、重量比で1〜80%の範囲が好ましく、5〜50%の範囲がさらに好ましい。イオン伝導体は、少な過ぎる場合はイオン伝導度が低く、多過ぎる場合はガス透過性を阻害する点で、いずれも電極性能を低下させることがある。
かかる触媒層には、上記の触媒、電子伝導体、イオン伝導体の他に、種々の物質を含んでいてもよい。特に、触媒層中に含まれる物質の結着性を高めるために、上述のイオン伝導性ポリマー以外のポリマーを含んでもよい。このようなポリマーとしては例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)などのフッ素原子を含むポリマー、これらの共重合体、これらのポリマーを構成するモノマー単位とエチレンやスチレンなどの他のモノマーとの共重合体、あるいは、ブレンドポリマーなどを用いることができる。これらポリマーの触媒層中の含有量としては、重量比で5〜40%の範囲が好ましい。ポリマー含有量が多すぎる場合、電子およびイオン抵抗が増大し電極性能が低下する傾向がある。
また、触媒層は、燃料が液体や気体の場合には、その液体や気体が透過しやすい構造を有していることが好ましく、電極反応に伴う副生成物質の排出も促す構造が好ましい。
また、電極基材としては、電気抵抗が低く、集電あるいは給電を行えるものを用いることができる。また、前記触媒層を集電体兼用で使用する場合は、特に電極基材を用いなくてもよい。電極基材の構成材としては、たとえば、炭素質、導電性無機物質が挙げられ、例えば、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛などの炭素材、ステンレススチール、モリブデン、チタンなどが例示される。これらの、形態は特に限定されず、たとえば繊維状あるいは粒子状で用いられるが、燃料透過性の点から炭素繊維などの繊維状導電性物質(導電性繊維)が好ましい。導電性繊維を用いた電極基材としては、織布あるいは不織布いずれの構造も使用可能である。たとえば、東レ(株)製カーボンペーパーTGPシリーズ、SOシリーズ、E-TEK社製カーボンクロスなどが用いられる。かかる織布としては、平織、斜文織、朱子織、紋織、綴織など、特に限定されること無く用いられる。また、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、ウォータージェットパンチ法、メルトブロー法によるものなど特に限定されること無く用いられる。また編物であってもよい。これらの布帛において、特に炭素繊維を用いた場合、耐炎化紡績糸を用いた平織物を炭化あるいは黒鉛化した織布、耐炎化糸をニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法などによる不織布加工した後に炭化あるいは黒鉛化した不織布、耐炎化糸あるいは炭化糸あるいは黒鉛化糸を用いた抄紙法によるマット不織布などが好ましく用いられる。特に、薄く強度のある布帛が得られる点から不織布、やクロスを用いるのが好ましい。
かかる電極基材に用いられる炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などがあげられる。
また、かかる電極基材には、水の滞留によるガス拡散・透過性の低下を防ぐための撥水処理や、水の排出路を形成するための部分的撥水、親水処理や、抵抗を下げるための炭素粉末の添加等を行うこともできる。また、電極基材と触媒層の間に、少なくとも無機導電性物質と疎水性ポリマーを含む導電性中間層を設けることもできる。特に、電極基材が空隙率の大きい炭素繊維織物や不織布である場合、導電性中間層を設けることで、触媒層が電極基材にしみ込むことによる性能低下を抑えることができる。
本発明の水素燃料電池用膜電極複合体は複数枚のスタック状で使用しても並べた状態で使用してもよい。また、燃料電池は使用する機器に内蔵してもよいし、外付けのユニットとして使用してもよい。また、メンテナンスの観点から、燃料電池セルから膜電極複合体が脱着可能な構成であることも好ましい。
本発明の水素燃料電池用膜電極複合体の用途としては、移動体の電力供給源が好ましいものである。特に、携帯電話、パソコン、PDA、ビデオカメラ(カムコーダー)、デジタルカメラ、ハンディターミナル、PFIDリーダー、各種ディスプレー類などの携帯機器、電動シェーバー、掃除機等の家電、電動工具、家庭用電力供給機、乗用車、バスおよびトラックなどの自動車、二輪車、電動アシスト付自転車、電動カート、電動車椅子や船舶および鉄道などの移動体の電力供給源として好ましく用いられる。特に携帯用機器では、電力供給源だけではなく、携帯機器に搭載した二次電池の充電用にも使用され、さらには二次電池や太陽電池と併用するハイブリッド型電力供給源としても好適に利用できる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
[測定方法]
実施例中の物性は下記に示す方法で測定した。
(1)スルホン酸基密度
25℃の純水中で24時間以上撹拌洗浄したのち、100℃で24時間真空乾燥した後精製、乾燥後の炭化水素系電解質について、元素分析により測定した。C、H、Nの分析は、全自動元素分析装置varioELで、また、Sの分析はフラスコ燃焼法・酢酸バリウム滴定、Pの分析についてはフラスコ燃焼法・リンバナドモリブデン酸比色法で実施した。それぞれの炭化水素系電解質の組成比から単位グラムあたりのスルホン酸基密度(mmol/g)を算出した。
(2)重量平均分子量
炭化水素系電解質の重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー製HLC-8022GPCを、またGPCカラムとして東ソー製TSK gel SuperHM-H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N−メチル−2−ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN−メチル−2−ピロリドン溶媒)にて、流量0.2mL/minで測定し、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を求めた。
(3)膜電極複合体の性能評価
A.開回路電圧(OCV)保持試験
膜電極複合体を英和(株)製 JARI標準セル“Ex−1”(電極面積25cm)にセットし燃料ガス:水素、酸化ガス:空気をそれぞれ10ml/cm/min、40ml/cm/minの条件で供給した。セル温度は90℃、ガス加湿条件は30%とし、開回路状態で1週間連続的に燃料を供給し、OCVの保持率を調べた。
B.起動停止試験
膜電極複合体を英和(株)製 JARI標準セル“Ex−1”(電極面積25cm)にセットし、セル温度:80℃、燃料ガス:水素、酸化ガス:空気、ガス利用率:水素70%/酸素40%、加湿条件:水素ガス60%RH、空気:50%RHの条件で試験を行った。OCVで1分間保持し、1A/cmの電流密度で2分間発電し、最後に水素ガスおよび空気の供給を停止して2分間発電を停止し、これを1サイクルとして起動停止を繰り返した。3000サイクル後の1A/cmでの電圧保持率を調べた。負荷変動は菊水電子工業社製の電子負荷装置“PLZ664WA”を使用して行った。
C.水素透過電流の測定
膜電極複合体を英和(株)製 JARI標準セル“Ex−1”(電極面積25cm)にセットし、セル温度:80℃、燃料ガス:水素、カソードに窒素ガスを供給し、加湿条件:水素ガス90%RH、窒素ガス:90%RHで試験を行った。OCVで0.2V以下になるまで保持し、0.2〜0.7Vまで1mV/secで電圧を掃引し電流値の変化を調べた。本実施例においては0.6V時の値で示し、水素透過量が多いほどこの値は大きくなる。また、この評価はSolartron製電気化学測定システム(Solartron 1480 Electrochemical InterfaceおよびSolartron 1255B Frequency ResponseAnalyzer)を使用した。 (4)電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いた元素分布分析
EPMA 分析は、膜電極複合体の断面試料にカーボン蒸着して行った。分析条件を以下に示す。
元素分布分析(波長分散法:検出可能元素 5B〜92U)
a)装置:島津製作所 電子線マイクロアナライザー(EPMA) EPMA-1610
b)条件:
・加速電圧 15.0 kV
・照射電流 30 nA
・計測時間 15 msec
・ビームサイズ 1 μm
・データポイント 230×230 point
・エリアサイズ 115×115 μm
・分析X線・分光結晶ii PtMα (6.0470 [A])・PET
(5)レーザーラマン分光法による電解質膜の分析
膜電極複合体の断面試料についてラマンスペクトルの分析を行った。分析条件を以下に示す。
a)装置: PDP-320 (Photon Design)
b)条件:
・測定モード ;顕微ラマン
・対物レンズ ;×100
・ビーム径 ;1μm
・クロススリット;200μm/400μm
・光源 ;Ar+レーザー/514.5nm、YAG レーザー/1064nm
・レーザーパワー;30mW、800mW
・回折格子 ;Spectrograph 1800gr/mm、300 および900gr/mm
・スリット ;100μm
・検出器 ;CCD(Roper Scientific)、InGaAs(Roper Scientific)
[炭化水素系電解質の合成例]
(1)合成例1
4,4’−ジフルオロベンゾフェノン109.1gを発煙硫酸(50%SO3)150mL中、100℃で10h反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、ジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを得た。(収量181g、収率86%)。炭酸カリウムを6.9g、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノールを14g、および4,4'−ジフルオロベンゾフェノンを2.6g、および前記ジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン12gを用いて、N−メチル−2−ピロリドン中、190℃で重合を行った。多量の水で再沈することで精製を行い、
500gの1N塩酸に8h浸漬し、洗浄液が中性となるまで水洗、乾燥し炭化水素系電解質Aを得た。得られた炭化水素系電解質Aのプロトン置換膜のスルホン酸基密度は、元素分析より2.4mmol/g、重量平均分子量24万であった。
(2)合成例2
炭酸カリウムを6.9g、4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタンを14g、および4,4'−ジフルオロベンゾフェノンを7g、および前記合成例1のジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン5gを用いて、N−メチル−2−ピロリドン中、190℃で重合を行った。多量の水で再沈することで精製を行い、500gの1N塩酸に8h浸漬し、洗浄液が中性となるまで水洗、乾燥し炭化水素系電解質Bを得た。得られた炭化水素系電解質Bのプロトン置換膜のスルホン酸基密度は、元素分析より1.8mmol/g、重量平均分子量18万であった。
実施例1
プロトン置換した炭化水素系電解質AをN−メチル−2−ピロリドンに溶解し固形分22%の塗液とした。8cm角のフッ素を含む電解質膜、デュポン社製“ナフィオン(登録商標)112”の片面に当該塗液を厚みが10μmとなるようにスプレー塗工し、100℃で乾燥した。その後、反対面も同様に塗工し炭化水素系電解質層を設けた“ナフィオン(登録商標)112”を得た。
これに市販の電極、BASF社製燃料電池用ガス拡散電極“ELAT(登録商標)LT120ENSI”5g/mPtを5cm角にカットしたものを1対準備し、燃料極、酸化極として上記炭化水素系電解質層を設けたフッ素原子を含む電解質膜電解質膜を挟むように重ね合わせ、150℃、5MPaで3分間加熱プレスを行い、水素燃料電池用膜電極複合体Aを得た。
水素燃料電池用膜電極複合体Aを使用した燃料電池のOCV試験後の保持率は95%、および起動停止試験保持率は98%であった。また、水素透過電流は0.4mA/cmであった。
また、OCV試験後および起動停止試験後の水素燃料電池用膜電極複合体Aの断面のEPMA分析の結果、電解質膜へのPtバンドの析出は見られず、レーザーラマン分光法でも電解質膜の劣化は観察されなかった。
実施例2
プロトン置換した炭化水素系電解質Bを10g、可塑剤としてN−メチル−2−ピロリドン60g、グリセリン40gを容器にとり、均一になるまで撹拌した。これを実施例1の電極に2mg/cm(5μm)となるように塗工し、100℃で1分間熱処理した後、水洗し残存した可塑剤を除去し、電極面積5cmとなるようにカットした。この電極1対を燃料極、酸化極として準備し、デュポン社製“ナフィオン(登録商標)112”の両面に配置し、150℃、5MPaで3分間加熱プレスを行い、水素燃料電池用膜電極複合体Bを得た。
水素燃料電池用膜電極複合体Bを使用した燃料電池のOCV試験後の保持率は96%、および起動停止試験保持率は99%であった。また、水素透過電流は0.3mA/cmであった。
また、OCV試験後および起動停止試験後の水素燃料電池用膜電極複合体Bの断面のEPMA分析の結果、電解質膜へのPtバンドの析出は見られず、レーザーラマン分光法でも電解質膜の劣化は観察されなかった。
実施例3
炭酸カリウム3.5g、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキサン6.1g、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン1.1g、およびジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン6.3gを用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、190℃で重合を行った。多量の水で再沈することで精製を行い、炭化水素系電解質Cを得た。得られた炭化水素系電解質Cのプロトン置換膜のスルホン酸基密度は、元素分析より2.5mmol/g、重量平均分子量は23万であった。
高分子電解質Cを溶解させた25重量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液をガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4h乾燥後、窒素下200℃で10分間熱処理し、膜厚7μmの炭化水素系電解質膜を得た。さらに、60℃で1M硫酸に1時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄し、乾燥した。
この炭化水素系電解質膜2枚をデュポン社製“ナフィオン(登録商標)NRE211−CS”を挟むように積層し、さらに両側面にBASF社製燃料電池用ガス拡散電極“ELAT(登録商標)LT120ENSI”5g/mPtを5cm角にカットしたものを互いが対向するようにセットし、160℃、5MPaで5分間プレスし水素燃料電池用膜電極複合体Cを得た。
水素燃料電池用膜電極複合体Cを使用した燃料電池のOCV試験後の保持率は97%、および起動停止試験保持率は99%であった。また、水素透過電流は0.3mA/cmであった。
また、OCV試験後および起動停止試験後の水素燃料電池用膜電極複合体Cの断面のEPMA分析の結果、電解質膜へのPtバンドの析出は見られず、レーザーラマン分光法でも電解質膜の劣化は観察されなかった。 比較例1
実施例1において炭化水素系電解質層を設けなかった以外は同様に水素燃料電池用膜電極複合体Cを得た。
水素燃料電池用膜電極複合体Cを使用した燃料電池のOCV試験後の保持率は75%、および起動停止試験保持率は85%であった。また、水素透過電流は2.4mA/cmであり大きい値を示した。 OCV試験後の水素燃料電池用膜電極複合体Cの断面のEPMA分析の結果、電解質膜の膜厚が約半分まで減少し、膜の分解が進行していた。また、レーザーラマン分光法でも劣化が確認された。また、起動停止試験後の水素燃料電池用膜電極複合体Cの断面のEPMA分析の結果、Ptバンドの析出が見られ、レーザーラマン分光法でその周囲を測定したところ電解質膜の劣化が観察された。
水素燃料電池用膜電極複合体は耐久性に優れることから、携帯電話、パソコン、PDA、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯テレビ、デジタルオーディオプレーヤー、ハードディスクプレイヤーなどの携帯機器、コードレス掃除機等の家電、玩具類、電動自転車、電動車椅子、自動二輪、自動車、バス、トラックなどの車両や船舶、鉄道などの移動体、ロボットやサイボーグの電力供給源、据え置き型の発電機など、従来の一次電池、二次電池の代替、もしくはこれらや太陽電池とのハイブリッド電源、もしくは充電用として好ましく用いられる。

Claims (3)

  1. フッ素原子を含む高分子電解質膜の一方の面側に燃料極、逆側に酸化極を設けた水素燃料電池用膜電極複合体において、該高分子電解質膜と両側の電極の間に、炭化水素系電解質層を有することを特徴とする水素燃料電池用膜電極複合体。
  2. 該炭化水素系電解質層が主鎖に芳香環を有するポリマーを含む請求項1記載の水素燃料用膜電極複合体。
  3. カソード側に窒素ガスを供給し、アノード側に水素を供給した状態で、電圧を掃印し、電解質膜を透過する水素により、流れる電流値を測定する方法において、0.2〜0.7V間の水素透過電流が、1.5mA/cm以下である請求項1または2記載の水素燃料用膜電極複合体。
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