JP5504552B2 - 非対称型電解質膜ならびにそれを用いた膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池 - Google Patents

非対称型電解質膜ならびにそれを用いた膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、高分子電解質型燃料電池に用いたときに高出力、高エネルギー容量を達成することが可能な電解質膜に関し、詳しくは非対称型電解質膜に関するものである。また、非対称型電解質膜および膜電極複合体ならびに高分子電解質型燃料電池に関するものである。
燃料電池は、排出物が少なく、かつエネルギー効率が高く、環境への負担の低い発電装置である。このため、近年の地球環境保護への高まりの中で再び脚光を浴びている。従来の大規模発電施設に比べ、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として、将来的にも期待されている発電装置である。また、小型移動機器、携帯機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、携帯電話やパソコンなどへの搭載が期待されている。
高分子電解質型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell)においては、水素ガスを燃料とする従来の高分子電解質型燃料電池(以下、PEFCと記載する場合がある)に加えて、メタノールなどの燃料を直接供給する直接型燃料電池も注目されている。
直接型燃料電池は、従来のPEFCに比べて出力が低いものの、燃料が液体で改質器を用いないために、エネルギー密度が高くなり、一充填あたりの携帯機器の使用時間が長時間になるという利点がある。高分子電解質型燃料電池は通常、発電を担う反応の起こるアノードとカソードの電極と、アノードとカソードとの間でプロトン伝導体となる高分子電解質膜とが、膜電極複合体(MEA)を構成し、このMEAがセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。ここで、電極は、ガス拡散の促進と集(給)電を行う電極基材(ガス拡散電極あるいは集電体とも云う)と、実際に電気化学的反応場となる電極触媒層とから構成されている。
たとえばPEFCのアノード電極では、水素ガスなどの燃料がアノード電極の触媒層で反応してプロトンと電子を生じ、電子は電極基材に伝導し、プロトンは高分子電解質膜へと伝導する。このため、アノード電極には、ガスの拡散性、電子伝導性、プロトン伝導性が良好なことが要求される。一方、カソード電極では、酸素や空気などの酸化ガスがカソード電極の触媒層で、高分子電解質膜から伝導してきたプロトンと、電極基材から伝導してきた電子とが反応して水を生成する。このため、カソード電極においては、ガス拡散性、電子伝導性、プロトン伝導性とともに、生成した水を効率よく排出することも必要となる。
また、PEFCの中でも、メタノールなどを燃料とする直接型燃料電池においては、水素ガスを燃料とする従来のPEFCとは異なる性能が要求される。すなわち、直接型燃料電池においては、アノード電極ではメタノール水溶液などの燃料がアノード電極の触媒層で反応してプロトン、電子、二酸化炭素を生じ、電子は電極基材に伝導し、プロトンは高分子電解質に伝導し、二酸化炭素は電極基材を通過して系外へ放出される。このため、従来のPEFCのアノード電極の要求特性に加えて、メタノール水溶液などの燃料透過性や二酸化炭素の排出性も要求される。さらに、直接型燃料電池のカソード電極では、従来のPEFCと同様な反応に加えて、電解質膜を透過したメタノールなどの燃料と酸素あるいは空気などの酸化ガスがカソード電極の触媒層で、二酸化炭素と水を生成する反応も起こる。このため、従来のPEFCよりも生成水が多くなるため、さらに効率よく水を排出することが必要となる。従来、高分子電解質膜として“ナフィオン”(登録商標)(デュポン社製)に代表されるパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマー膜が使用されてきた。
しかし、これらのパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマー膜は直接型燃料電池においてはメタノールなどの燃料透過が大きく、電池出力やエネルギー効率が十分でないという問題があった。またパーフルオロ系プロトン伝導性ポリマーは、フッ素を使用するという点から価格も非常に高いものである。
この課題に対して、燃料クロスオーバーを抑制するために多層構成にした電解質膜が種々提案されている(非特許文献1、特許文献1,2)。例えば(非特許文献1)には、ポリベンズイミダゾールからなる層を設けたナフィオン(登録商標)が開示されている。(特許文献1)には、イオン交換膜の一方の表面に弱塩基型アニオン交換基を有するアニオン交換膜を設けた積層型固体電解質膜が開示されている。また、(特許文献2)には高分子電解質膜と超強酸基を有する芳香族系高分子膜との積層膜が開示されている。
ジャーナルオブパワーソーシーズ(Journal of Power Sources), 2002, 104, p79-84 特開平11−144745号公報 特開2004−25793号公報
しかしながら、従来の技術においては、高プロトン伝導度と燃料クロスオーバー抑制を完全には実現できておらず、高プロトン伝導度を実現した場合には燃料クロスオーバー抑制が十分でなく、燃料クロスオーバー抑制が十分な場合にはプロトン伝導度が小さいという問題があった。さらには、積層膜であるがためにソリが激しく膜電極複合体作製工程および膜と電極の密着性に問題があった。本発明は、ナフィオン(登録商標)並の高プロトン伝導度を有し、燃料クロスオーバーを抑制し、かつ、ソリがなく、さらには電極との密着性が良好な非対称型電解質膜を提供することを目的とする。さらに本発明は高出力、高エネルギー容量を達成できる膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池の提供を目的とする。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の非対称型電解質膜は、電解質膜の少なくとも一部に(A),(B),(C)の各層をこの順に有する電解質膜であって、各層のイオン性基密度がそれぞれ異なり、該電解質膜が支持体上に製膜され、(C)層が支持体面側、(A)層が空気面側であり、(A)層および(C)層のイオン性基密度が(B)層のイオン性基密度よりいずれも高く、(A)層の膜厚が(C)層の膜厚の1.0〜1.2倍であることを特徴とするものである。また、本発明の膜電極複合体および高分子電解質型燃料電池は、かかる非対称型電解質膜を用いて構成されていることを特徴とするものである。
本発明により、ナフィオン(登録商標)並の高プロトン伝導度を有し、燃料クロスオーバーを抑制し、かつ、ソリがなく、さらには電極との密着性が良好な電解質膜の提供が可能となり、かかる電解質膜からなる膜電極複合体を用いることによって、高出力、高エネルギー容量を達成する高分子電解質型燃料電池を提供することが可能となる。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
本発明の非対称型電解質膜は、電解質膜の少なくとも一部に(A),(B),(C)の各層をこの順に有する電解質膜であって、各層のイオン性基密度がそれぞれ異なることを特徴とする。
本発明における非対称型電解質膜としては、イオン性基を有した高分子材料を含むことが加工性の観点から好ましく、プロトン伝導度、燃料クロスオーバー抑制の制御が容易となる。かかるイオン性基としては、負電荷を有する原子団が好ましく、プロトン交換能を有するものが好ましい。このような官能基としては、スルホン酸基(−SO2(OH))、硫酸基(−OSO2(OH))、スルホンイミド基(−SO2NHSO2R(Rは有機基を表す。))、ホスホン酸基(−PO(OH)2)、リン酸基(−OPO(OH)2)、カルボン酸基(−CO(OH))、およびこれらの塩等を好ましく採用することができる。
これらのイオン性基は前記高分子材料中に2種類以上含むことができ、組み合わせることにより好ましくなる場合がある。その組み合わせはポリマーの構造などにより適宜決められる。中でも、高プロトン伝導度の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基のいずれかを有することがより好ましく、耐加水分解性の点から少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい。
本発明における高分子材料がスルホン酸基を有する場合、(A),(B),(C)各層のスルホン酸基密度は、プロトン伝導性および燃料クロスオーバー抑制の点から0.1〜5.0mmol/gが好ましく、より好ましくは0.5〜3.5mmol/g、さらに好ましくは1.0〜3.5mmol/gである。スルホン酸基密度を0.1mmol/g以上とすることにより、伝導度すなわち出力性能を維持することができ、また5.0mmol/g以下とすることで、高分子電解質型燃料電池用電解質膜として使用する際に、十分な燃料遮断性および吸水時の機械的強度を得ることができる。
本発明の非対称型電解質膜おいて、該(A)層および(C)層のスルホン酸基密度としては、膜電極複合体の密着性および高分子電解質型燃料電池の発電性能向上のためには1.0〜3.5mmol/gが好ましく、より好ましくは1.5〜3.0mmol/g、さらに好ましくは1.7〜2.5mmol/gである。次に、本発明における該(B)層のスルホン酸基密度としては、高分子電解質型燃料電池の燃料クロスオーバー抑制および発電性能向上のためには0.1〜1.5mmol/gが好ましく、より好ましくは0.3〜1.3mmol/g、さらに好ましくは0.5〜1.0mmol/gである。
また、該(A)層と(C)層とのスルホン酸基密度比としては、電解質膜のソリ防止および高分子電解質型燃料電池の発電性能向上のためには、該非対称型電解質膜が支持体上に製膜され、(C)層が支持体面側、(A)層が空気面側である場合は、(A)層が(C)層の1.05倍以上、3倍以下が好ましく用いられる。さらに、該(A)層および(C)層と(B)層とのスルホン酸基密度比としては、高分子電解質型燃料電池の燃料クロスオーバー抑制および発電性能向上のためには(A)層および(C)層が(B)層の1.5倍以上、5倍以下が好ましく用いられる。
また、スルホン酸基密度が異なる高分子材料は、伝導度や燃料遮断性を制御し、さらに含水率、水膨潤率および燃料膨潤率などの諸性能を制御することができる。通常、燃料クロスオーバーを抑制させるためには高分子材料のスルホン酸基密度を低く設定する、すなわち含水率を少なくすることにより、燃料クロスオーバーを低減できるとともに、余分な水分が少ないため電解質膜全体としてのイオン性基密度が高い状態に保持できる。
本発明の非対称電解質膜は、数式(S1)で表される含水率が5%以上、40%以下であることが好ましく、好ましくは8%以上、35%以下であり、さらに好ましくは10%以上、30%以下である。5%以上であれば、高分子型燃料電池に用いる場合にプロトン伝導度が十分となり高出力が得られる。また、40%以下であれば燃料クロスオーバーが抑制でき、高エネルギー容量化ができる。
含水率(%)=100×(W−D)/W (S1)
尚、前記数式(S1)中のWは電解質膜を25℃の精製中に24時間以上静置した後、表面に付着した精製水をキムワイプで拭き取って秤量した値である。また、DはWを測定した電解質膜を真空乾燥器で40℃で16時間乾燥した後、秤量した値である。
本発明の非対称型電解質膜は、数式(S2)で表される水膨潤率が1.0〜1.1以下であることが好ましく、好ましくは1.0〜1.05以下であり、さらに好ましくは1.0である。1.1以下であれば、高分子型燃料電池電池に用いる場合に寸法変化が小さく工程安定性が向上する。
水膨潤度=L1/L2 (S2)
尚、前記数式(S2)中のL1は電解質膜を25℃の精製中に24時間以上静置した後、表面に付着した精製水をキムワイプで拭き取ってノギスで測長した値である。また、L2はL1を測長した電解質膜を真空乾燥器で40℃で16時間乾燥した後、測長した値である。
本発明の非対称型電解質膜は、数式(S3)で表されるメタノール膨潤度が1.0〜1.3以下であることが好ましく、好ましくは1.0〜1.1以下であり、さらに好ましくは1.0である。1.3以下であれば、高分子型燃料電池に用いる場合に燃料供給による寸法変化が少なく耐久性が向上する。
メタノール膨潤度=L3/L1 (数式3)
尚、前記数式(S3)中のL1は電解質膜を25℃の精製中に24時間以上静置した後、表面に付着した精製水をキムワイプで拭き取ってノギスで測長した値である。また、L3はL1を測長した電解質膜を30%メタノール水溶液に浸漬し、熱風乾燥器で60℃で16時間加温した後、25℃で3時間冷却した後に表面に付着した30%メタノール水溶液をキムワイプで拭き取ってノギスで測長した値である。
ここで、スルホン酸基密度とは、高分子材料の単位乾燥重量当たりに導入されたスルホン酸基のモル量であり、この値が大きいほどスルホン化の度合いが高いことを示す。使用する高分子材料のスルホン酸基密度は、元素分析、中和滴定あるいは核磁気共鳴スペクトル法等により測定が可能である。スルホン酸基密度測定の容易さや精度の点で、元素分析が好ましく、通常はこの方法で分析を行う。ただし、スルホン酸基以外に硫黄源を含む場合など元素分析法では正確なスルホン酸基密度の算出が困難な場合には中和滴定法を用いるものとする。さらに、これらの方法でもスルホン酸基密度の決定が困難な場合においては、核磁気共鳴スペクトル法を用いることが可能である。
本発明における非対称型電解質膜の全体膜厚としては、通常3〜2000μmのものが好適に使用される。実用に耐える膜の強度を得るには3μmより厚い方が好ましく、膜抵抗の低減つまり高分子電解質型燃料電池の発電性能向上のためには2000μmより薄い方が好ましい。膜厚のより好ましい範囲は5〜1000μm、さらに好ましい範囲は10〜500μmである。
本発明における非対称型電解質膜の該(A),(B),(C)の各層の膜厚は、各層に用いられるイオン性基密度によって適宜選択される。該(A)層および(C)層の膜厚としては、電解質膜のソリ防止、膜電極複合体の密着性および高分子電解質型燃料電池の発電性能向上のためには1〜1000μmが好ましく、より好ましくは3〜500μm、さらに好ましくは5〜100μmである。また、該(B)層の膜厚としては、高分子電解質型燃料電池の燃料クロスオーバー抑制および発電性能向上のためには1〜100μm以下が好ましく、より好ましくは1〜70μm、さらに好ましくは1〜50μmである。
さらに該(A)層と(C)層の膜厚は、ソリのない電解質膜が得られれば特に限定されないが、工程安定性などの生産性の点で、該非対称型電解質膜が支持体上に製膜され、(C)層が支持体面側、(A)層が空気面側である場合は、(A)層の膜厚が(C)層の膜厚と実質的に同じかそれ以上が好ましいである。また、該(A)層と(C)層の膜厚比としては、電解質膜のソリ防止および工程安定性などの生産性のためには(A)層が(C)層の1.0〜2.0倍が好ましく、より好ましくは1.0〜1.5倍、さらに好ましくは1.0〜1.2倍である。(A)層の膜厚が(C)層の膜厚と実質的に同じに設定することがより好ましい。
また、該(A)層および(C)層と(B)層の膜厚比としては、高分子電解質型燃料電池の燃料クロスオーバー抑制および発電性能向上のためには(A)層および(C)層が(B)層の1.0〜20.0倍、より好ましくは1.0〜10.0倍、さらに好ましくは1.0〜5.0倍である。尚、本発明の膜厚は乾燥状態におけるものである。
本発明における非対称型電解質膜の作成方法は、例えば複数の高分子塗液により、塗工、乾燥を繰り返すような重ね塗りをしても、2層以上の吐出口のあるマルチスリットダイなどで製膜してもよい。これらの方法は特に限定されるものではなく、使用する高分子材料や目標とする膜性能に応じて適宜選択できる。
本発明における非対称型電解質膜の各層の膜厚は、種々の方法で制御できる。例えば、溶媒キャスト法で製膜する場合は、溶液濃度あるいは支持体上への塗布厚により制御することができるし、また、例えばキャスト重合法で製膜する場合は板間のスペーサー厚みによって調製することもできる。また、マルチスリットダイで製膜する場合は、各々の口金のクリアランス調製および吐出圧力調製により制御することができる。
本発明における各層の膜厚測定は、作製方法によって異なるが例えば電子顕微鏡や後述するEPMA(電子線マイクロアナライザー)が挙げられる。また、非対称型電解質膜の全体膜厚は、ミツトヨ製グラナイトコンパレータスタンドBSG−20にセットしたミツトヨ製ID−C112型を用いて測定することができる。
このようなイオン性基密度が相互に異なる電解質膜中のイオン性基密度の高低については、膜断面の所定の部分を回収して上述した方法でスルホン酸基密度を測定したり、日本電子製 電子線マイクロアナライザー(EPMA)JXA−8621MXにより測定できる。例えば、イオン性基としてスルホン酸基を有する高分子材料を用いた場合、下記条件にて電解質膜断面または電解質面の硫黄元素の分布を、EPMA像を目視で観察することにより判断できる。
二次電子像、反射電子像観察条件
加速電圧 15kV
元素分布分析(波長分散法)
加速電圧 15kV
照射電流 50nA
計測時間 30msec
画素数・画素長 256×256pixel・0.336μm/pixel
分析ビーム径 〜1μmφ
分析X線・分光結晶 SKα(5.373オングストローム)・PET
試料調製 ミクロトームにより断面試料作製後、カーボン蒸着。
本発明における非対称型電解質膜がガラス板、フィルム、ステンレス、CrやTiのコートステンレスなどの支持体に製膜される場合は、イオン性基密度は空気面側が支持体面側よりも高くすることが電解質膜のソリ防止に特に有効である。該(A)層と(C)層とのイオン性基密度比としては、電解質膜のソリ防止および高分子電解質型燃料電池の発電性能向上のためには(A)層が(C)層の1.05倍以上、3倍以下が好ましく用いられる。さらに、該(A)層および(C)層と(B)層とのイオン性基密度比としては、高分子電解質型燃料電池の燃料クロスオーバー抑制および発電性能向上のためには(A)層および(C)層が(B)層の1.5倍以上、5倍以下が好ましく用いられる。
本発明における非対称型電解質膜は高分子電解質型燃料電池用であることが好ましい。
次に非対称型電解質膜を得るにあたっての原料、製造方法についての一例を説明する。
本発明は、非対称型電解質膜であってソリのない電解質膜となり、膜電極複合体作製工程が容易かつ膜と電極の密着性が向上でき、高プロトン伝導性かつ燃料クロスオーバーの抑制された電解質膜を得るための特徴を有するものであり、この構成を満足できれば用いられる材料は特に限定されない。しかし、電解質膜一般においては当該特定物質を得ることは困難であり、また不可能であるが、少なくとも以下に示す、原料および製膜方法によって非対称型電解質膜であってソリのない電解質膜となり、膜電極複合体作製工程が容易かつ膜と電極の密着性が向上でき、高プロトン伝導性かつ燃料クロスオーバーの抑制された電解質膜を製造することができる。
本発明の高分子材料として用いられるポリマーの種類としては特に限定されないが、例えばイオン性基を有し、耐加水分解性に優れるポリマーが好ましい。その具体例としては、イオン性基含有ポリフェニレンオキシド、イオン性基含有ポリエーテルケトン、イオン性基含有ポリエーテルエーテルケトン、イオン性基含有ポリエーテルスルホン、イオン性基含有ポリエーテルエーテルスルホン、イオン性基含有ポリエーテルホスフィンオキシド、イオン性基含有ポリエーテルエーテルホスフィンオキシド、イオン性基含有ポリフェニレンスルフィド、イオン性基含有ポリアミド、イオン性基含有ポリイミド、イオン性基含有ポリエーテルイミド、イオン性基含有ポリイミダゾール、イオン性基含有ポリオキサゾール、イオン性基含有ポリフェニレンなどの、イオン性基を有する芳香族炭化水素系ポリマーが挙げられる。ここで、イオン性基については前述のとおりである。
これらの高分子材料にイオン性基を導入する方法については、重合体にイオン性基を導入してもよいし、イオン性基を有するモノマーを重合してもよい。重合体へのホスホン酸基の導入は、例えば、「ポリマープレプリンツ」(Polymer Preprints), 2002, 51, p750. 等に記載の方法によって可能である。重合体へのリン酸基の導入は、例えば、ヒドロキシル基を有するポリマーのリン酸エステル化によって可能である。重合体へのカルボン酸基の導入は、例えば、アルキル基やヒドロキシアルキル基を有するポリマーを酸化することによって可能である。重合体へのスルホンイミド基の導入は、例えば、スルホン酸基を有するポリマーをアルキルスルホンアミドで処理するによって可能である。重合体への硫酸基の導入は、例えば、ヒドロキシル基を有するポリマーの硫酸エステル化によって可能である。重合体へのスルホン酸基の導入は例えば、重合体をクロロスルホン酸、濃硫酸、発煙硫酸と反応させる方法により行うことができる。
これらの、イオン性基導入方法は、処理時間、濃度、温度などの条件を適宜選択することにより目的とするイオン性基密度に制御できる。また、イオン性基を有するモノマーを重合する方法としては、例えば、「ポリマープレプリンツ」(Polymer Preprints),2000, 41(1), p237. 等に記載の方法によって可能である。この方法により重合体を得る場合には、イオン性基の導入の度合いはイオン酸基を有するモノマーの仕込比率により、容易に制御することができる。また、使用する高分子材料が非架橋構造を有する場合、重量平均分子量は1万〜500万が好ましく、より好ましくは3万〜100万である。重量平均分子量を1万以上とすることで、電解質膜として実用に供しうる機械的強度を得ることができる。一方、500万以下とすることで、十分な溶解性を得ることができ、良好な加工性を維持することができる。尚、該重量平均分子量はGPC法によって測定できる。
高分子電解質型燃料電池としては、前述のようにスルホン酸基を有する高分子材料が最も好ましいが、スルホン酸基を有する高分子材料を使用する一例として、−SO3M基(Mは金属)含有のポリマーを溶液状態より製膜し、その後高温で熱処理し溶媒を除去し、プロトン置換して膜とする方法が挙げられる。前記の金属Mはスルホン酸と塩を形成しうるものであればよいが、価格および環境負荷の点からはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Wなどが好ましく、これらの中でもLi、Na、K、Ca、Sr、Baがより好ましく、Li、Na、Kがさらに好ましい。これらの金属塩の状態で製膜することで高温で熱処理が可能となり、該方法は燃料クロスオーバー抑制の点で特に好適である。
前記熱処理の温度としては、得られる膜の高プロトン伝導性、燃料クロスオーバー抑制点で100〜500℃が好ましく、200〜450℃がより好ましく、250〜400℃がさらに好ましい。100℃以下は、燃料クロスオーバー抑制効果がなく、また、500℃以上は高分子材料の分解する点で好ましくない。また、熱処理時間としてはプロトン伝導性、燃料クロスオーバー抑制および生産性の点で10秒〜24時間が好ましく、30秒〜1時間がより好ましく、45秒〜30分がさらに好ましい。熱処理時間を10秒以上することで、十分な溶媒除去が可能となり、十分な燃料クロスオーバーの抑制効果が得られる。また、24時間以下とすることでポリマーの分解が起こらずプロトン伝導性、燃料クロスオーバー抑制維持することができ、さらには生産性も高くなる。
本発明の非対称型電解質膜の製膜方法は前述の通り、特に制限はないが、例えば、上記−SO3M基密度の異なるポリマーを2種類以上準備し、それぞれ非プロトン性極性溶媒等に溶解して溶液を調製し、まず−SO3M密度の高い方のポリマー溶液をガラス板あるいはフィルム上に適当なコーティング法で塗布し、溶媒を除去し、次にもう一方の−SO3M密度の低いポリマー溶液を該膜上に適当なコーティング法で塗布し、溶媒を除去し、さらにその上に−SO3M密度の高い方のポリマー溶液を適当なコーティング法で塗布し、溶媒を除去し、高温で処理後、酸処理する方法を例示することができる。
コーティング法としては、スプレーコート、刷毛塗り、ディップコート、ダイコート、カーテンコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷などの各種の手法が適用できる。溶媒を用いたコーティング法では、熱による溶媒の乾燥、ポリマーを溶解しない溶媒での湿式凝固法などで製膜でき、無溶媒では光、熱、湿気などで硬化させる方法、ポリマーを加熱溶融させ、膜状に製膜後冷却する方法などが適用できる。製膜に用いる溶媒としては、高分子材料を溶解し、その後に除去し得るものであれば特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはイソプロパノールなどのアルコール系溶媒が好適に用いられる。
また、本発明の非対称型電解質膜は、必要に応じて放射線照射などの手段によって高分子構造全体あるいは一部を架橋せしめることもできる。架橋せしめることにより、燃料クロスオーバーおよび燃料に対する膨潤をさらに抑制する効果が期待でき、機械的強度が向上し、より好ましくなる場合がある。放射線照射の種類としては例えば、電子線照射やγ線照射を挙げることができる。架橋構造を有することにより、水分や燃料の浸入に対する高分子鎖間の広がりを抑えることができる。吸水量を低く抑えることができ、また、燃料に対する膨潤も抑制できることから、結果的に燃料クロスオーバーを低減できる。また、高分子鎖を拘束できるため耐熱性や剛性も付与できる。ここでの架橋は、化学架橋であっても物理架橋であってもよい。この架橋構造は通常公知の方法で形成でき、例えば、多官能単量体の共重合や電子線照射によって形成できる。特に多官能単量体による架橋が経済的観点から好ましく、単官能ビニル単量体と多官能単量体の共重合体やビニル基やアリル基を有する高分子を多官能単量体で架橋したものが挙げられる。ここでの架橋構造とは、熱に対しての流動性が実質的に無い状態か、溶剤に対して実質的に不溶の状態を意味する。
本発明においての架橋構造の判定は、溶剤に対して実質的に不溶であるかどうかで行い、具体的には次の方法で判定できる。検体となる高分子電解質膜(約0.1g)を純水で洗浄した後、40℃で24時間真空乾燥して重量を測定する。高分子電解質膜を100倍重量の溶剤に浸漬し、密閉容器中、撹拌しながら70℃、40時間加熱する。次に、アドバンテック社製濾紙(No.2)を用いて濾過を行う。濾過時に100倍重量の同一溶剤で濾紙と残渣を洗浄し、十分に溶出物を溶剤中に溶出させる。濾液を乾固させ、溶出分の重量を求める。溶出重量が初期重量の10%未満の場合は、その溶剤に対して実質的に不溶と判定する。この試験をトルエン、ヘキサン、N−メチルピロリドン、メタノールおよび水の5種類の溶剤について行い、全ての溶剤で実質的に不溶と判定された場合に、その高分子電解質膜は架橋構造であると判定する。また、本発明の非対称型電解質膜において積層が困難な架橋系の電解質膜等は、例えば、イオン性基を有するモノマーを適当な溶媒に希釈し、表面に含浸処理後、重合することで、表層のイオン性基密度を高めることができる。
本発明の非対称型電解質膜を用いて高出力、高エネルギー容量の高分子電解質型燃料電池を製造するためにはイオン伝導度、および燃料透過量は次に述べる範囲であることが好ましい。例えば、厚み10〜500μmの範囲の非対称型電解質膜を用い、燃料を30重量%メタノール水とした場合、25℃の30重量%メタノール水中のイオン伝導度が1S/cm2以上が好ましい。1S/cm2以上の場合、高出力が得られる。好ましくは、2S/cm2以上、さらに好ましくは3S/cm2以上である。上限としては特に設定しないが、膜がメタノール水などの燃料により溶解や崩壊しない範囲であれば大きいほうが好ましい。ここでのイオン伝導度は、試料を25℃の純水に24時間浸漬した後、25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、次の定電位交流インピーダンス法で抵抗を測定して求めることができる。具体的には、Solartron社製電気化学測定システム(Solartron 1287 Electrochemical Interface および Solartron 1255B Frequency Response Analyzer)を使用し、サンプルをφ2mmおよびφ10mmの2枚の円形電極(ステンレス製)間に加重1kgをかけて挟持する(有効電極面積0.0314cm2)。サンプルと電極の界面には、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)の15%水溶液を塗布する。25℃において、定電位インピーダンス測定(交流振幅は50mV)を行い、膜厚方向のイオン伝導度を求める。
また、25℃の30重量%メタノール水を使用した場合のメタノール透過量が100μmol・分-1・cm-2以下であることが好ましい。100μmol・分-1・cm-2以下の場合、DMFCに使用した場合、出力やエネルギー容量の観点から好ましい。好ましくは50μmol・分-1・cm-2以下、さらに好ましくは25μmol・分-1・cm-2以下で0μmol・分-1・cm-2が最も好ましい。ここでのメタノール透過量は、次の方法で測定することができる。すなわち、H型セル間にサンプル膜を挟み、一方のセルには純水を入れ、他方のセルには30重量%メタノール水溶液を入れ、20℃において両方のセルを撹拌し、1時間、2時間および3時間経過時点で純水中に溶出したメタノール量を島津製作所製ガスクロマトグラフィ(GC−2010)で測定し定量し、グラフの傾きから単位時間、単位体積あたりのメタノール透過量を求めるものである。
また、本発明の非対称型電解質膜中には、イオン伝導性や燃料クロスオーバーの抑制効果を阻害しない範囲内において、機械的強度の向上、イオン性基の熱安定性向上、加工性の向上などの目的のために、ポリマーや金属酸化物からなるネットワークや微粒子を形成させても構わない。
次に、本発明の膜電極複合体は、上述した非対称型電解質膜を用いて構成されるものである。即ち、前述の膜電極複合体(MEA)は、電解質膜、電極触媒層および電極基材からなる電極からなるものである。ここでいう電極触媒層は、電極反応を促進する電極触媒、電子伝導体、イオン伝導体などを含む層である。かかる電極触媒層に含まれる電極触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、金などの貴金属触媒が好ましく用いられる。これらの内の1種類を単独で用いてもよいし、合金、混合物など、2種類以上を併用してもよい。
また、電極触媒層に含まれる電子伝導体(導電材)としては、電子伝導性や化学的な安定性の点から炭素材料、無機導電材料が好ましく用いられる。なかでも、非晶質、結晶質の炭素材料が挙げられる。例えば、チャネルブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが電子伝導性と比表面積の大きさから好ましく用いられる。ファーネスブラックとしては、キャボット社製“バルカン”(登録商標)XC−72、“バルカン”(登録商標)P、“ブラックパールズ”(登録商標)880、“ブラックパールズ”(登録商標)1100、“ブラックパールズ”(登録商標)1300、“ブラックパールズ”(登録商標)2000、“リーガル”(登録商標)400、ケッチェンブラック・インターナショナル社製“ケッチェンブラック”(登録商標)EC、EC600JD、三菱化学社製#3150、#3250などが挙げられ、アセチレンブラックとしては電気化学工業社製“デンカブラック”(登録商標)などが挙げられる。またカーボンブラックのほか、天然の黒鉛、ピッチ、コークス、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人工黒鉛や炭素なども使用することができる。
これらの炭素材料の形態としては、不定形粒子状のほか繊維状、鱗片状、チューブ状、円錐状、メガホン状のものも用いることができる。また、これら炭素材料を後処理加工したものを用いてもよい。また、電子伝導体は、触媒粒子と均一に分散していることが電極性能の点で好ましい。このため、触媒粒子と電子伝導体は予め塗液として良く分散しておくことが好ましい。さらに、電極触媒層として、触媒と電子伝導体とが一体化した触媒担持カーボン等を用いることも好ましい実施態様である。この触媒担持カーボンを用いることにより、触媒の利用効率が向上し、電池性能の向上および低コスト化に寄与できる。ここで、電極触媒層に触媒担持カーボンを用いた場合においても、電子伝導性をさらに高めるために導電剤を添加することも可能である。このような導電剤としては、上述のカーボンブラックが好ましく用いられる。
電極触媒層に用いられるイオン伝導性を有する物質(イオン伝導体)としては、一般的に、種々の有機、無機材料が公知であるが、燃料電池に用いる場合には、イオン伝導性を向上するスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などのイオン性基を有するポリマー(イオン伝導性ポリマー)が好ましく用いられる。なかでも、イオン性基の安定性の観点から、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成されるイオン伝導性を有するポリマー、あるいは本発明の高分子電解質材料が好ましく用いられる。パーフルオロ系イオン伝導性ポリマーとしては、例えばデュポン社製の“ナフィオン”(登録商標)、旭化成社製の“Aciplex”(登録商標)、旭硝子社製“フレミオン”(登録商標)などが好ましく用いられる。これらのイオン伝導性ポリマーは、溶液または分散液の状態で電極触媒層中に設ける。
この際に、ポリマを溶解あるいは分散化する溶媒は特に限定されるものではないが、イオン伝導性ポリマーの溶解性の点から極性溶媒が好ましい。前記、触媒と電子伝導体類は通常粉体であるので、イオン伝導体はこれらを固める役割を担うことが通常である。イオン伝導体は、電極触媒層を作製する際に電極触媒粒子と電子伝導体とを主たる構成物質とする塗液に予め添加し、均一に分散した状態で塗布することが電極性能の点から好ましいものであるが、電極触媒層を塗布した後にイオン伝導体を塗布してもよい。
ここで、電極触媒層にイオン伝導体を塗布する方法としては、スプレーコート、刷毛塗り、ディップコート、ダイコート、カーテンコート、フローコートなどが挙げられ、特に限定されるものではない。電極触媒層に含まれるイオン伝導体の量としては、要求される電極特性や用いられるイオン伝導体の伝導度などに応じて適宜決められるべきものであり、特に限定されるものではないが、重量比で1〜80%の範囲が好ましく、5〜50%の範囲がさらに好ましい。
イオン伝導体は、少な過ぎる場合はイオン伝導度が低く、多過ぎる場合はガス透過性を阻害する点で、いずれも電極性能を低下させることがある。かかる電極触媒層には、上記の触媒、電子伝導体、イオン伝導体の他に、種々の物質を含んでいてもよい。特に、電極触媒層中に含まれる物質の結着性を高めるために、上述のイオン伝導性ポリマー以外のポリマーを含んでもよい。このようなポリマーとしては例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(FEP)およびその共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)およびその共重合体などのフッ素原子を含むポリマー、これらの共重合体、これらのポリマーを構成するモノマ単位とエチレンやスチレンなどの他のモノマーとの共重合体、あるいは、ブレンドポリマーなどを用いることができる。これらポリマーの電極触媒層中の含有量としては、重量比で5〜40%の範囲が好ましい。ポリマー含有量が多すぎる場合、電子およびイオン抵抗が増大し電極性能が低下する傾向がある。
また、電極触媒層は、燃料が液体や気体の場合には、その液体や気体が透過しやすい構造を有していることが好ましく、電極反応に伴う副生成物質の排出も促す構造が好ましい。また、電極基材としては、電気抵抗が低く、集電あるいは給電を行えるものを用いることができる。また、前記電極触媒層を集電体兼用で使用する場合は、特に電極基材を用いなくてもよい。
電極基材の構成材としては、たとえば、炭素質、導電性無機物質が挙げられ、例えば、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛などの炭素材、ステンレススチール、モリブデン、チタンなどが例示される。これらの形態は特に限定されず、たとえば繊維状あるいは粒子状で用いられるが、燃料透過性の点から炭素繊維などの繊維状導電性物質(導電性繊維)が好ましい。導電性繊維を用いた電極基材としては、織布あるいは不織布いずれの構造も使用可能である。たとえば、東レ(株)製カーボンペーパーTGPシリーズ、SOシリーズ、E-TEK社製カーボンクロスなどが用いられる。かかる織布としては、平織、斜文織、朱子織、紋織、綴織など、特に限定されること無く用いられる。また、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、ウォータージェットパンチ法、メルトブロー法によるものなど特に限定されること無く用いられる。また編物であってもよい。
これらの布帛において、特に炭素繊維を用いた場合、耐炎化紡績糸を用いた平織物を炭化あるいは黒鉛化した織布、耐炎化糸をニードルパンチ法やウォータージェットパンチ法などによる不織布加工した後に炭化あるいは黒鉛化した不織布、耐炎化糸あるいは炭化糸あるいは黒鉛化糸を用いた抄紙法によるマット不織布などが好ましく用いられる。特に、薄く強度のある布帛が得られる点から不織布を用いるのが好ましい。かかる電極基材に用いられる炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などがあげられる。また、かかる電極基材には、水の滞留によるガス拡散・透過性の低下を防ぐための撥水処理や、水の排出路を形成するための部分的撥水、親水処理や、抵抗を下げるための炭素粉末の添加等を行うこともできる。
本発明の高分子電解質型燃料電池においては、電極基材と電極触媒層の間に、少なくとも無機導電性物質と疎水性ポリマを含む導電性中間層を設けることが好ましい。特に、電極基材が空隙率の大きい炭素繊維織物や不織布である場合、導電性中間層を設けることで、電極触媒層が電極基材にしみ込むことによる性能低下を抑えることができる。
本発明の電解質膜を使用して、電極触媒層あるいは電極触媒層と電極基材を用いて膜電極複合体(MEA)を作製する方法は、特に限定されるものではない。公知の方法(例えば、「電気化学」1985, 53, 269.記載の化学メッキ法、「ジャーナル オブ エレクトロケミカル サイエンス」(J. Electrochem. Soc.)、エレクトロケミカルサイエンス アンド テクノロジー(Electrochemical Science and Technology), 1988, 135(9), p2209. 記載のガス拡散電極の熱プレス接合法など)を適用することが可能である。熱プレスにより一体化することは好ましい方法であるが、その温度や圧力は、電解質膜の厚さ、水分率、電極触媒層や電極基材により適宜選択すればよい。また、電解質膜が含水した状態でプレスしてもよいし、イオン伝導性を有するポリマーで接着してもよい。
特に、本発明の電解質膜は、含水状態でのプレス工程を有する製法によって得られるMEAに好適であり、電極触媒層と電解質膜の密着性の優れたMEAが作製できる。
本発明の高分子電解質型燃料電池の燃料としては、酸素、水素およびメタン、エタン、プロパン、ブタン、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、グリセリン、エチレングリコール、ギ酸、酢酸、ジメチルエーテル、ハイドロキノン、シクロヘキサンなどの炭素数1〜6の有機化合物およびこれらと水との混合物等が挙げられ、1種または2種以上の混合物でもよい。特に発電効率や電池全体のシステム簡素化の観点から炭素数1〜6の有機化合物を含む燃料が好適に使用され、発電効率の点でとりわけ好ましいのはメタノール水溶液である。
膜電極複合体に供給される燃料中の炭素数1〜6の有機化合物の含有量は20〜70重量%が好ましい。含有量を20重量%以上とすることで実用的な高いエネルギー容量を得ることができ、70重量%以下とすることで発電効率が上がり、実用的な高い出力を得ることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、各物性の測定条件は次の通りである。
(測定方法)
1.スルホン酸基密度
25℃の純水中で24時間以上撹拌洗浄したのち、100℃で24時間真空乾燥した後のポリマーについて、元素分析により測定した。C、H、Nの分析は、全自動元素分析装置varioELで、また、Sの分析はフラスコ燃焼法・酢酸バリウム滴定、Pの分析についてはフラスコ燃焼法・リンバナドモリブデン酸比色法で実施した。それぞれのポリマーの組成比から単位グラムあたりのスルホン酸基密度(mmol/g)を算出した。
2.重量平均分子量
ポリマーの重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型
装置として東ソー製HLC−8022GPCを、またGPCカラムとして東ソー製TSK
gel SuperHM−H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N−メチ
ル−2−ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN−メチル−2−ピ
ロリドン溶媒にて、流量0.2mL/minで測定し、標準ポリスチレン換算により重量
平均分子量を求めた。
3.含水率
電解質膜を約3cm角に切り取り、25℃の精製中に24時間以上静置した後、表面に付着した精製水をキムワイプで拭き取って秤量した値(W)である。該電解質膜を真空乾燥器で40℃で16時間乾燥した後、秤量した値(D)であり、下記算式(S1)にて含水率を測定した。
含水率(%)=100×(W−D)/W (S1)
W:吸水時の電解質膜重量(g)
D:乾燥時の電解質膜重量(g)
4.水膨潤度
電解質膜を約1×5cm角に切り取り、25℃の精製中に24時間以上静置した後、表面に付着した精製水をキムワイプで拭き取ってノギスで測長した値(L1)である。該電解質膜を真空乾燥器で40℃で16時間乾燥した後、測長した値(L2)であり、下記算式(S2)にて水膨潤度を測定した。
水膨潤度=L1/L2 (S2)
L1:吸水時の電解質膜長さ(cm)
L2:乾燥時の電解質膜長さ(cm)
5.メタノール膨潤度
電解質膜を約1×5cm角に切り取り、25℃の精製中に24時間以上静置した後、表面に付着した精製水をキムワイプで拭き取ってノギスで測長した値(L1)である。該電解質膜を30%メタノール水溶液に浸漬し、熱風乾燥器で60℃で16時間加温した後、25℃で3時間冷却した後に表面に付着した30%メタノール水溶液をキムワイプで拭き取ってノギスで測長した値(L3)であり、下記算式(S3)にてメタノール膨潤度を測定した。
メタノール膨潤度=L3/L1 (数式3)
L1:吸水時の電解質膜長さ(cm)
L3:メタノール水溶液浸漬後の電解質膜長さ(cm)
6.膜厚
ミツトヨ製グラナイトコンパレータスタンドBSG−20にセットしたミツトヨ製ID−C112型を用いて測定した。
7.電解質膜のソリ
5cm×5cmの電解質膜を用い、ガラス基板上に置き目視にてソリを観察した。判定基準は、以下の通り行った。
○ :ソリが認められない。
△ :僅かにソリがある。
× :ソリがある。
××:カールする。
8.プロトン伝導度
膜状の試料を25℃の純水に24時間浸漬した後、25℃、相対湿度50〜80%の雰
囲気中に取り出し、できるだけ素早く定電位交流インピーダンス法でプロトン伝導度を測
定した。測定装置としては、Solartron製電気化学測定システム(Solartron 1287 Electrochemical InterfaceおよびSolartron 1255B Frequency Response Analyzer)を使用した。サンプルは、φ2mmおよびφ10mmの2枚の円形電極(ステンレス製)間に加重1kgをかけて挟持した。有効電極面積は0.0314cm2である。サンプルと電極の界面には、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)の15%水溶液を塗布した。25℃において、交流振幅50mVの定電位インピーダンス測定を行い、膜厚方向のプロトン伝導度を求めた。その値は、単位面積当たりのものを記載した。
9.メタノール透過量
膜状の試料を30重量%メタノール水溶液に24時間浸漬した後、20℃において30重量%メタノール水溶液を用いて測定した。 H型セル間にサンプル膜を挟み、一方のセルには純水(60mL)を入れ、他方のセルには30重量%メタノール水溶液(60mL)を入れた。セルの容量は各80mLであった。また、セル間の開口部面積は1.77cm2であった。20℃において両方のセルを撹拌した。1時間、2時間および3時間経過時点で純水中に溶出したメタノール量を島津製作所製ガスクロマトグラフィ(GC−2010)で測定し定量した。グラフの傾きから単位時間あたりのメタノール透過量を求めた。その値は、単位面積当たりのものを記載した。
10.スルホン酸基の分布状態の観察
日本電子製 電子線マイクロアナライザー(EPMA)JXA−8621MXにより下記条件にて膜断面方向の硫黄元素の分布を測定した。膜断面全体が視野に入るように倍率を調節し、硫黄元素の密度によって色を変えたイメージ像として解析した。スルホン酸基密度はEPMA像の極微少な測定ポイントによる色の違いではなく、マクロ的に目視により判断した。
二次電子像、反射電子像観察条件
加速電圧 15kV
元素分布分析(波長分散法)
加速電圧 15kV
照射電流 50nA
計測時間 30msec
画素数・画素長 256×256pixel・0.336μm/pixel
分析ビーム径 〜1μmφ
分析X線・分光結晶 SKα(5.373オングストローム)・PET
試料調製 ミクロトームにより断面試料作製後、カーボン蒸着。
(メタノールを燃料とする膜電極複合体の作製)
2枚の炭素繊維クロス基材に20%四フッ化エチレン撥水処理を行ったのち、四フッ化エチレンを20%含むカーボンブラック分散液を塗工、焼成して電極基材を作製した。1枚の電極基材上に、Pt−Ru担持カーボンとナフィオン(登録商標)溶液からなるアノード電極触媒塗液を塗工、乾燥してアノード電極を、もう1枚の電極基材上に、Pt担持カーボンとナフィオン(登録商標)溶液からなるカソード電極触媒塗液を塗工、乾燥してカソード電極を作製した。
非対称型電解質膜を、先に作製したアノード電極とカソード電極で夾持し100℃、8分間50kgf/cm2の条件で加熱プレスすることで膜電極複合体を作製した。
(水素を燃料とする膜電極複合体の作製)
東レ(株)製カーボンペーパーTGP−H−060)に20%四フッ化エチレン撥水処理を行ったのち、四フッ化エチレンを20%含むカーボンブラック分散液を塗工、焼成して電極基材を作製した。前記電極基材にPt担持カーボンとナフィオン(登録商標)溶液からなる塗液を塗工し、乾燥して電極HEを作製した。
(メタノールを燃料とする高分子電解質型燃料電池の評価)
膜電極複合体(MEA)をエレクトロケム社製セルにセットし高分子電解質型燃料電池とし、アノード側に30%メタノール水溶液、カソード側に空気を流してMEA評価を行った。評価はMEAに定電流を流し、その時の電圧を測定した。電流を順次増加させ電圧が10mV以下になるまで測定を行った。各測定点での電流と電圧の積が出力となるが、その最大値(MEAの単位面積あたり)を出力(mW/cm2)とした。
MEAでのMCOは、カソードからの排出ガスを捕集管でサンプリングした。これを全有機炭素計TOC-VCSH(島津製作所製測定器)、あるいはMeOH透過量測定装置Maicro GC CP-4900(ジ−エルサイエンス製ガスクロマトグラフ)を用い評価した。MCOは、サンプリングガス中のMeOHと二酸化炭素の合計を測定して算出した。
(水素を燃料とする高分子電解質型燃料電池の評価)
膜電極複合体(MEA)をエレクトロケム社製セルにセットし高分子電解質型燃料電池とし、評価温度:60℃、アノード側に水素ガス、カソード側に空気を流し、ガス利用率:アノード70%/カソード40%においてMEAに定電流を流し、その時の電圧を測定した。電流を順次増加させ電圧が10mV以下になるまで測定を行った。各測定点での電流と電圧の積が出力となるが、その最大値(MEAの単位面積あたり)を出力(mW/cm2)とした。
[合成例1]
4,4’−ジフルオロベンゾフェノン109.1gを発煙硫酸(50%SO3)150mL中、100℃で10h反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、ジソジウム3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを得た。
[合成例2]
炭酸カリウム6.9g、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール14.0g、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン5.2g、および上記合成例1で得たジソジウム3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを6.8gを用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、190℃で重合を行った。多量の水で再沈することで精製を行いポリマーAを得た。得られたポリマーAのプロトン置換膜のスルホン酸基密度は、元素分析より1.4mmol/g、重量平均分子量26万であった。
[合成例3]
4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール14.0gを4,4'−ジヒドロキシテトラフェニルメタン14.1gに、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン5.2gを4.4gに、ジソジウム3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン6.8gを8.4gに変更した以外は合成例2と同様に行い、ポリマーBを得た。得られたポリマーBのプロトン置換膜のスルホン酸基密度は、元素分析より1.7mmol/g、重量平均分子量22万であった。
[合成例4]
炭酸カリウム6.9g、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール7.0g、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル4.0g、および4,4'−ジフルオロベンゾフェノン4.4g、および上記合成例1で得たジソジウム3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン8.4gを用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、190℃で重合を行った。多量の水で再沈することで精製を行い、ポリマーCを得た。得られたポリマーCのプロトン置換膜のスルホン酸基密度は、元素分析より1.9mmol/g、重量平均分子量15万であった。
[合成例5]
4,4'−ジフルオロベンゾフェノン4.4gを3.5gに、ジソジウム3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン8.4gを10.1gに変更した以外は合成例4と同様に行い、ポリマーDを得た。得られたポリマーDのプロトン置換膜のスルホン酸基密度は、元素分析より2.2mmol/g、重量平均分子量18万であった。
[合成例6]
4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル4.0gをフェニルハイドロキノン4.2gに変更した以外は合成例4と同様に行った。多量の水で再沈することで精製を行い、ポリマーEを得た。得られたポリマーEのプロトン置換膜のスルホン酸基密度は、元素分析より1.9mmol/g、重量平均分子量20万であった。
[合成例7]
フェニルハイドロキノン4.2gを3.7gに、ジソジウム3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン8.4gを10.1gに変更した以外は合成例6と同様に行い、ポリマーFを得た。得られたポリマーFのプロトン置換膜のスルホン酸基密度は、元素分析より2.2mmol/g、重量平均分子量19万であった。
[実施例1]
ポリマーCを11g、N,N−ジメチルアセトアミド29gに溶解させ27.5%の塗液とした。前記塗液をガラス基板上にアプリケーターを用いて流延塗工し、100℃にて1時間乾燥を行い溶媒を除去して膜厚22(μm)の(c)層を得た。次にポリマーAを8g、N−メチル−2−ピロリドン32gに溶解させ20%の塗液とした。前記塗液を(c)層上に同様な塗工および乾燥行い、(c)層と(b)層からなる膜厚47(μm)の複合膜を得た。次にポリマーDを10g、N,N−ジメチルアセトアミド30gに溶解させ25%の塗液とした。前記塗液を(b)層上に同様な塗工および乾燥を行い、(c)層、(b)層、(a)層からなる膜厚67(μm)の複合膜を得た。さらに、100〜400℃まで40分間昇温し、400℃で10分間加熱する条件で熱処理を行った後に放冷し、精製水中でガラス基板から離型した。その後、1N−塩酸水溶液に1日以上浸漬しプロトン置換を行い、精製水に1日以上浸漬して洗浄を行い非対称型電解質膜を得た。この非対称型電解質膜のソリ状態、プロトン伝導度およびメタノール透過量を表2にまとめた。また、ポリマーC、ポリマーAおよびポリマーDの単層膜のみ同様な塗工および乾燥を行って製膜しプロトン交換した電解質膜の含水率、水膨潤度およびメタノール膨潤度を表1にまとめた。
[実施例2]
ポリマーCを11g、N,N−ジメチルアセトアミド29gに溶解させ27.5%の塗液とした。前記塗液をガラス基板上にアプリケーターを用いて流延塗工し、100℃にて1時間乾燥を行い溶媒を除去して膜厚20(μm)の(c)層を得た。次にポリマーBを4.8g、N−メチル−2−ピロリドン14.4gに溶解させ25%の塗液にポリアミック酸(東レ(株)製“トレニース”(登録商標)#3000)をポリマーB:ポリアミック酸=60:40(重量比)となるように混合し固形分22.7%の塗液とした。前記塗液を(c)層上に同様な塗工および乾燥行い、(c)層と(b)層からなる膜厚30(μm)の複合膜を得た。次にポリマーFを10g、N,N−ジメチルアセトアミド30gに溶解させ25%の塗液とした。前記塗液を(b)層上に同様な塗工および乾燥を行い、(c)層、(b)層、(a)層からなる膜厚50(μm)の複合膜を得た。さらに、100〜400℃まで40分間昇温し、400℃で10分間加熱する条件で熱処理を行った後に放冷し、精製水中でガラス基板から離型した。その後、1N−塩酸水溶液に1日以上浸漬しプロトン置換を行い、精製水に1日以上浸漬して洗浄を行い非対称型電解質膜を得た。この非対称型電解質膜のソリ状態、プロトン伝導度およびメタノール透過量を表2にまとめた。また、ポリマFの単層膜のみ同様な塗工および乾燥を行って製膜しプロトン交換した電解質膜の含水率、水膨潤度およびメタノール膨潤度を表1にまとめた。尚、中心層(b)のスルホン酸基密度は、0.9mmol/gであった。
[実施例3]
ポリマーEを10g、N,N−ジメチルアセトアミド30gに溶解させ25%の塗液とした。前記塗液をガラス基板上にアプリケーターを用いて流延塗工し、100℃にて1時間乾燥を行い溶媒を除去して膜厚15(μm)の(c)層を得た。次にポリマーAを8g、N−メチル−2−ピロリドン32gに溶解させ20%の塗液にポリアミック酸(東レ(株)製“トレニース”(登録商標)#3000)をポリマーB:ポリアミック酸=50:50(重量比)となるように混合し固形分20%の塗液とした。とした。前記塗液を(c)層上に同様な塗工および乾燥行い、(c)層と(b)層からなる膜厚22(μm)の複合膜を得た。次にポリマーFを10g、N,N−ジメチルアセトアミド30gに溶解させ25%の塗液とした。
前記塗液を(b)層上に同様な塗工および乾燥を行い、(c)層、(b)層、(a)層からなる膜厚37(μm)の複合膜を得た。さらに、100〜400℃まで40分間昇温し、400℃で10分間加熱する条件で熱処理を行った後に放冷し、精製水中でガラス基板から離型した。その後、1N−塩酸水溶液に1日以上浸漬しプロトン置換を行い、精製水に1日以上浸漬して洗浄を行い非対称型電解質膜を得た。この非対称型電解質膜のソリ状態、プロトン伝導度およびメタノール透過量を表2にまとめた。また、ポリマーEの単層膜のみ同様な塗工および乾燥を行って製膜しプロトン交換した電解質膜の含水率、水膨潤度およびメタノール膨潤度を表1にまとめた。尚、中心層(b)のスルホン酸基密度は、0.7mmol/gであった。
[比較例1]
ポリマーBを10g、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン30gに溶解させ25%の塗液とした。前記塗液をガラス基板上にアプリケーターを用いて流延塗工し、100℃にて1時間乾燥を行い溶媒を除去して膜厚15(μm)の(c)層を得た。次に前記塗液を(c)層上に同様な塗工および乾燥を行い、(c)層と(b)層からなる膜厚25(μm)の複合膜を得た。次に前記塗液を(b)層上に同様な塗工および乾燥を行い、(c)層、(b)層、(a)層からなる膜厚40(μm)の積層膜を得た。この積層膜のソリ状態、プロトン伝導度およびメタノール透過量を表2にまとめた。また、ポリマーBの単層膜のみ同様な塗工および乾燥を行って製膜しプロトン交換した電解質膜の含水率、水膨潤度およびメタノール膨潤度を表1にまとめた。
[比較例2]
高分子電解質膜“ナフィオン”(登録商標)117(デュポン社製)を95℃熱水にて1時間処理を行った膜の膜厚、ソリ状態、プロトン伝導度およびメタノール透過量を表1にまとめた。
実施例1〜3の膜電極複合体の電極密着性および高分子電解質型燃料電池の評価結果として出力およびメタノール透過量を、比較例2(“ナフィオン”(登録商標)117膜使用)を基準とした比で表したものを表3にまとめた。比較例1は膜電極複合体接合後に僅かに電極剥離が生じた。尚、電極は(メタノールを燃料とする膜電極複合体の作製)のアノード電極およびカソード電極を用いた。
[実施例4]
電極として前記(水素を燃料とする膜電極複合体の作製)の電極HEを2枚使用した以外は、実施例1同様に行い高分子電解質型燃料電池の評価を行った。出力は500mW/cm、限界電量密度は1200mA/cmであった。
限界電流密度について説明する。一般に、電極反応は、その反応の場における反応物の吸着、解離、電荷移動や、この場の近傍における反応物、生成物の移動等、多くの連続した過程からなっているが、各過程の速度は、その過程の平衡状態(電流が0の状態)からのずれの程度(以後非平衡度という)が大きくなるほど速くなり、この非平衡度の程度と速度の大きさの関係は、個々の過程により異なる。定常的に電流が流れている時は全ての過程の速度は同じであるので、容易に進行する過程の非平衡度は僅かであるのに対し、そうでない過程の非平衡度は大きい。ここで電流密度、すなわち電極反応速度を大きくしていくと、特に容易に進行しない過程の非平衡度は非常に大きくなり、ついには物理的限界に達する。すなわちこれ以上の電流密度をとることは不可能となるが、この電流密度がここでの限界電流密度である。
Figure 0005504552
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表1、表2および表3から明らかなように本発明の実施例1〜3の非対称型電解質膜は、従来の積層型電解質膜よりもソリがなく、かつ、膜電極複合体の密着性に優れるので出力(mW/cm)とメタノール透過量抑制に優れており、“ナフィオン”(登録商標)117(デュポン社製)を使用した高分子電解質型燃料電池よりも電池特性において優れていた。
本発明の電解質膜は、種々の電気化学装置(例えば、燃料電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置等)に適用可能である。これら装置の中でも、燃料電池用に好適であり、特にメタノール水溶液を燃料とする燃料電池に好適である。
本発明の高分子電解質型燃料電池の用途としては、特に限定されないが、携帯電話、パソコン、PDA、ビデオカメラ(カムコーダー)、デジタルカメラなどの携帯機器、電動シェーバー、掃除機などの家電、電動工具、玩具類、電動カート、電動車椅子、電動アシスト付き自転車、自動二輪車、乗用車、バス、トラックなどの自動車や船舶、鉄道などの移動体の電力供給源、据え置き型の発電機、二次電池の充電器など従来の一次電池、二次電池、太陽電池の代替もしくはこれらとのハイブリッド電源として好ましく用いられる。

Claims (4)

  1. 電解質膜の少なくとも一部に(A),(B),(C)の各層をこの順に有する電解質膜であって、各層のイオン性基密度がそれぞれ異なり、該電解質膜が支持体上に製膜され、(C)層が支持体面側、(A)層が空気面側であり、(A)層および(C)層のイオン性基密度が(B)層のイオン性基密度よりいずれも高く、(A)層の膜厚が(C)層の膜厚の1.0〜1.2倍であることを特徴とする非対称型電解質膜。
  2. 高分子電解質型燃料電池用である請求項1に記載の非対称型電解質膜。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載の非対称型電解質膜を用いて構成されることを特徴とする膜電極複合体。
  4. 請求項1または2に記載の非対称型電解質膜もしくは請求項3に記載の膜電極複合体を用いて構成されることを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
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