JP5303191B2 - モータ装置およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、ロータに駆動マグネットが保持されたモータ装置およびその製造方法に関するものである。
アクチュエータの駆動源などに使用されるモータ装置、あるいはポンプ装置として用いられるモータ装置のうち、円筒状の駆動マグネットがロータの側に搭載されたタイプのモータ装置では、ロータ部材に対して、駆動マグネットの一方の端面を受ける座部、および座部から起立する筒状のマグネット装着部を形成しておき、駆動マグネットをマグネット装着部に固定した構造が採用される場合がある(特許文献1、2参照)。
このような構造を採用する場合、駆動マグネットをマグネット装着部に固定する方法としては、駆動マグネットをロータ部材と一体成形する方法や、駆動マグネットをマグネット装着部に挿入した後、マグネット装着部の先端部に超音波振動を加えて先端部を駆動マグネットの他方の端面に被さるように変形させる方法が考えられる。
特開2007−97257号公報 特開2008−8222号公報
しかしながら、駆動マグネットをロータ部材に一体成形する方法では、駆動マグネットの抜け止めや周り止めを行なうのにロータ部材の形状が複雑になるため、金型形状が複雑になる分、コストが増大する。
一方、超音波溶着は、材料を超音波振動で軟化、溶融させるため、変形した部分が平滑にならず、見栄えが悪いとともに、表面状態によって仕上がり状態がばらつきやすいという問題点がある。また、超音波溶着は、材料を超音波振動で軟化、溶融させるため、駆動マグネットとして焼結マグネットを用いた場合、超音波振動で駆動マグネットが損傷するという問題点がある。さらに、超音波溶着は、超音波振動によって双方の材料が軟化、溶融する場合には強固に接合できるが、駆動マグネットをマグネット装着部に固定する場合のように、ロータ部材のみが軟化、溶融する場合には十分な接合強度を得ることができないという問題点がある。
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、コストの大幅な増大や駆動マグネットの損傷を招来させることなく、ロータ部材上に駆動マグネットを確実に固定することのできるモータ装置、およびその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明では、駆動コイルが巻回されたステータコアを備えたステータと、前記ステータコアに対向配置された筒状の駆動マグネット、および該駆動マグネットを保持するロータ部材を備えたロータと、前記ステータを覆うハウジングと、を有するモータ装置において、前記ロータ部材は、前記駆動マグネットの一方の端面を受ける座部と、該座部から起立して前記駆動マグネットが外周側に挿着された筒状のマグネット装着部と、を備え、前記マグネット装着部の先端部には、当該先端部に対する加熱および加圧により前記駆動マグネットの他方の端面の少なくとも内周縁部分に被さるように外周側に向けて変形して当該駆動マグネットを前記ロータ部材上に固定する係合部が形成されており、前記マグネット装着部には、該マグネット装着部の内周面と前記先端部との間で傾斜するテーパが形成され、前記駆動マグネットには、該駆動マグネットの内周面と前記他方の端面との間で傾斜するテーパが形成され、前記ハウジングにおいて前記マグネット装着部の先端部に対向する底部側からは、軸穴が形成された突出部が前記マグネット装着部の内側まで突出していることを特徴とする。
本発明では、駆動コイルが巻回されたステータコアを備えたステータと、前記ステータコアに対向配置された筒状の駆動マグネット、および該駆動マグネットが保持されたロータ部材を備えたロータと、前記ステータを覆うハウジングと、を有するモータ装置の製造方法において、前記ロータ部材には、前記駆動マグネットの一方の端面を受ける座部と、該座部から起立する筒状のマグネット装着部と、を形成しておくとともに、前記マグネット装着部には、該マグネット装着部の内周面と当該マグネット装着部の先端部との間で傾斜するテーパを形成しておき、前記駆動マグネットには、該駆動マグネットの内周面と当該駆動マグネットの他方の端面との間で傾斜するテーパを形成しておき、前記ハウジングにおいて前記マグネット装着部の先端部に対向する底部側からは、軸穴が形成された突出部を突出させておき、前記ロータ部材に前記駆動マグネットを保持させるにあたっては、前記駆動マグネットを前記マグネット装着部の外周側に挿入した後、前記駆動マグネットの前記他方の端面から突出した前記マグネット装着部の前記先端部を加熱および加圧することにより、当該先端部を前記駆動マグネットの前記他方の端面の少なくとも内周縁部分に被さるように外周側に向けて変形させて当該駆動マグネットを前記ロータ部材上に固定する係合部を形成する加熱加圧工程を行い、該加熱加圧工程の後、前記突出部が前記マグネット装着部の内側に入るように前記ロータを前記ハウジングの内側に収容した状態とすることを特徴とする。
本発明では、駆動マグネットをロータ部材のマグネット装着部に挿入した後、駆動マグネットの他方の端面から突出したマグネット装着部の先端部に加熱および加圧を行なって、マグネット装着部の先端部を駆動マグネットの他方の端面に被さるように変形させて駆動マグネットをロータ部材上に固定する係合部を形成する。このため、高価な金型を用いなくても、ロータ部材上に駆動マグネットを固定することができる。また、本発明では、超音波溶着と違って、マグネット装着部の先端部を加熱および加圧するため、変形した部分が平滑で見栄えがよいとともに、表面状態にかかわらず、仕上がり状態が安定している。また、本発明によれば、超音波溶着と違って、駆動マグネットに超音波振動が加わることがないので、駆動マグネットとして焼結マグネットを用いた場合でも、超音波振動で駆動マグネットが損傷することがない。さらに、本発明によれば、超音波溶着と違って、マグネット装着部の先端部および駆動マグネットのうち、マグネット装着部の先端部の側のみを軟化、溶融させる場合でも、マグネット装着部の先端部と駆動マグネットとを強固に接合できるので、駆動マグネットをロータ部材上に固定するのに適している。
また、前記マグネット装着部の先端部には、外周側から内周側に向けて下向きに傾斜するテーパ(マグネット装着部の内周面とマグネット装着部の先端部との間で傾斜するテーパ)が形成されているため、加熱加圧工程を行なった際、軟化、溶融したマグネット装着部の先端部が内側に張り出すように変形することがないという利点がある。
また、前記駆動マグネットの前記他方の端面には、少なくとも内周縁に、外周側から内周側に向けて下向きに傾斜するテーパ(駆動マグネットの内周面と駆動マグネットの他方の端面との間で傾斜するテーパ)が形成されているため、駆動マグネットの他方の端面から前記係合部が一切突出しないように構成した場合や、駆動マグネットの他方の端面から前記係合部がわずかしか突出しないように構成した場合でも、係合部が十分な厚さで駆動マグネットの他方の端面のテーパに被さって引っ掛かるので、ロータ部材上に駆動マグネットを十分な強度をもって固定することができる。
本発明において、前記係合部は、前記駆動マグネットの前記他方の端面の全周あるいは略全周にわたって被さり、かつ、当該係合部の端面は、周方向の全体にわたって平滑面になっていることが好ましい。このように構成すると、ロータ部材上に駆動マグネットを十分な強度をもって固定することができるとともに、見栄えよく駆動マグネットをロータ部材上に固定できる。
本発明において、前記駆動マグネットの前記一方の端面、および前記座部のうちの一方には凹部が形成され、他方には当該凹部に嵌って前記駆動マグネットの回り止めを行なう凸部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、簡素な構成で駆動マグネットの回り止めを行なうことができる。
本発明に係るモータ装置をポンプ装置として構成する場合、前記ロータ部材には、前記座部に対して前記マグネット装着部が起立する側とは反対側にインペラが形成され、前記ロータは、前記ステータと隔壁を介して区画形成されたポンプ室に配置されることになる。
かかるモータ装置(ポンプ装置)は、空気などの気体を圧送するポンプ装置や、水などを圧送するポンプ装置として用いられ、後者の場合、前記インペラは、前記ポンプ室に対して液体の吸入および吐出を行なう。
本発明では、マグネット装着部の先端部に加熱および加圧を行なって、マグネット装着部の先端部を駆動マグネットの他方の端面に被さるように変形させて駆動マグネットをロータ部材上に固定する係合部を形成する。このため、高価な金型を用いなくても、ロータ部材上に駆動マグネットを固定することができる。また、本発明によれば、超音波溶着と違って、マグネット装着部の先端部を加熱および加圧するため、変形した部分が平滑で見栄えがよいとともに、表面状態にかかわらず、仕上がり状態が安定している。また、本発明によれば、超音波溶着と違って、駆動マグネットに超音波振動が加わることがないので、駆動マグネットとして焼結マグネットを用いた場合でも、超音波振動で駆動マグネットが損傷することがない。さらに、本発明によれば、超音波溶着と違って、マグネット装着部の先端部のみが軟化、溶融する場合でも強固に接合できるので、駆動マグネットをマグネット装着部に固定するのに適している。それ故、本発明によれば、コストの大幅な増大や駆動マグネットの損傷を招来させることなく、ロータ部材上に駆動マグネットを確実に固定することができる。
以下、本発明の実施の形態として、本発明に係るモータ装置をポンプ装置として構成した例を説明する。
(ポンプ装置の全体構成)
図1および図2は各々、本発明を適用したポンプ装置(モータ装置)の断面構成を示す説明図、およびその分解図である。
図1および図2に示すポンプ装置100は、一般にキャンドポンプと呼ばれるタイプのポンプ装置であり、給電用基板内蔵型ブラシレスモータ(以降、モータ1という)を備えている。本形態に係るポンプ装置100の外郭は、後述するステータ3を覆うカップ状のハウジング51と、ハウジング51の上部を覆うケース53とによって形成されている。ハウジング51は、樹脂ケース51aと、この樹脂ケース51aにモールドされたモールド樹脂体51bとから構成されている。ハウジング51およびケース53には各々、穴511、531が形成されており、これらの穴511、531を利用して共通のボルト15を止めることにより、ハウジング51およびケース53が一体化されている。
ハウジング51とケース53との間には、流体が通るポンプ室6が区画形成されている。すなわち、本形態では、ハウジング51に用いた樹脂ケース51aの壁面自身が、ケース53との間にポンプ室6を区画形成する隔壁面52を構成している。ハウジング51には、その隔壁面52の中央部に、ポンプ室6とは反対側に凹む凹部52eが形成されており、ハウジング51において凹部52eを囲む上端面52gには、凹部52eに対して同心状に溝部52hが形成されている。溝部52hの内部にはOリング12が配置されており、このOリング12によって、ケース53とハウジング51との間の密閉性、すなわちポンプ室6の密閉性が確保されている。
ケース53は、下面が開口するカップ状であり、上方に開口する導入口部55、および側方に開口する排出口部56が形成されている。従って、ポンプ室6内には、熱水などの流体が導入口部55から排出口部56へと到る流路57が形成されており、流路57には、樹脂製の羽根部48aが配置されている。この羽根部48aを高速回転させることによりポンプ室6内は負圧となり、これにより、導入口部55からポンプ室6内へと温水などの流体を吸引し、その流体を排出口部56から排出することができる。
(モータの構成)
本形態のモータ1は、ステータ3とロータ4と給電用基板2a、2bとを備えている。このモータ1では、ハウジング51の凹部52eの底面52aに形成された第1の軸穴52bと、ケース53において第1の軸穴52bに対向する位置に形成された第2の軸穴53aとによって固定軸35の両軸端が支持され、固定軸35は、導入口部55に対して同軸状に配置されている。後述するロータ4は、固定軸35に対して回転可能に支持されており、固定軸35には、ロータ4に対するスラスト軸受37、38が保持されている。
ステータ3は、環状の積層コアからなるステータコア30と、ステータコア30に巻回された駆動コイル33とを備えている。駆動コイル33は、コイル巻線31を樹脂製のコイルボビン32に巻回することにより構成されている。コイルボビン32からモータ軸線方向Lに向けては複数本の端子ピン34が突出しており、駆動コイル33の巻始めおよび巻き終わりの各巻線端部(コイル巻線31の端部)が接続されている。なお、ステータ3の近傍には、駆動コイル33の内側に複数の磁気検出素子95が30°間隔で配置され、これらの磁気検出素子95は、駆動マグネット42の回転位置を検知する。
給電用基板2aには、端子ピン34を貫通させる穴あるいはスリットからなる貫通部が形成されているとともに、複数の配線パターンおよびランド部が形成されている。従って、給電用基板2aをコイルボビン32に対向配置した際、端子ピン34は、給電用基板2aを貫通するので、端子ピン34とランド部とを接続することができる。また、給電用基板2aには、磁気検出素子95から延びたリード線2cを通すための貫通穴や、リード線2cに対するランド部や配線パターンが形成されている。さらに、給電用基板2a上には、ステータ3を駆動制御する駆動回路(図示せず)が実装されているとともに、電源(図示せず)からの電力を受ける電源コネクタ72が実装されている。
このように構成したステータ3および給電用基板2a、2bは、インサート成形により樹脂モールドされてモールド樹脂体51bの内部に封止されており、この状態で、ステータ3は、ハウジング51の凹部52eの周りを囲むように配置される。ここで、ステータ3の内周側には、凹部52eの側面壁52fが位置しているが、かかる側面壁52fは極めて薄い。
ロータ4は、ポンプ室6内に配置されており、固定軸35に対して回転可能に支持されたスリーブ状のラジアル軸受41と、ステータコア30と対向配置された円筒状の駆動マグネット42とを有しており、ラジアル軸受41および駆動マグネット42は、ガラス繊維入りの変性ポリフェニレンエーテルなどといった熱可塑性樹脂からなるロータ部材40に保持されている。駆動マグネット42は、N極およびS極が円周方向で交互に着磁された円筒状の永久磁石であり、ハウジング51の凹部52eの内側において、ステータ3に対して半径方向内側でハウジング51の側面壁52fを介して対向している。駆動マグネット42としては、圧縮成形、樹脂成形、焼結により形成されたマグネットを用いることができ、本形態では、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂ベースの樹脂成形マグネットが用いられている。
ロータ部材40において、ラジアル軸受41および駆動マグネット42が位置する側とは反対側には羽根部48aが構成されている。本形態において、羽根部48aは円盤状のインペラ体48に形成されており、インペラ体48がロータ部材40に連結されることにより、ロータ4において、羽根部48aはロータ部材40と一体に回転する。
(ロータ部材40への駆動マグネット42の固定構造)
図3(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は各々、本発明を適用したポンプ装置100に用いたロータ4からインペラ体48を取り外した状態の底面図、平面図、B1−B1′断面図、B2−B2′断面図および駆動マグネットの端部付近の拡大断面図である。図4(a)、(b)、(c)、(d)は各々、本発明を適用したポンプ装置100のロータ4に用いたロータ部材の底面図、平面図、A1−A1′断面図およびA2−A2′断面図である。図5(a)、(b)、(c)は各々、本発明を適用したポンプ装置100のロータ4に用いた駆動マグネット42の底面図、平面図およびC1−C1′断面図である。なお、図3〜図5では、各部材の上下位置が図1および図2とは反対になっている。すなわち、図1および図2では、「一方側」を上に表し、「他方側」を下に表してあったが、図3〜図6では、「一方側」を下に表し、「他方側」を上に表してある。
図3(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、本発明を適用したポンプ装置100に用いたロータ4は、図4を参照して説明するロータ部材40に対して、図5を参照して説明する駆動マグネット42を固定した構造を有している。
図5(a)、(b)、(c)に示すように、駆動マグネット42は、円筒形状を有しており、一方の端面421および他方の端面422のいずれも平坦面になっている。但し、駆動マグネット42の一方の端面421には、周方向で等角度間隔な4個所に凹部42aが形成されている。かかる凹部42aは、駆動マグネット42の一方の端面421の外周側において軸線方向に対して直交する環状部分421cと、駆動マグネット42の一方の端面421の内周側において軸線方向に対して傾斜する環状部分421dとに跨るように形成されている。但し、凹部42aは、駆動マグネット42の一方の端面421の外周端および内周端に届いていないため、駆動マグネット42の内周側面および外周側面にいずれにも、凹部42aが現れていない。
一方、駆動マグネット42の他方の端面422において、その内周縁には、外周側から内周側に向けて下向きに傾斜するテーパ420が環状に形成されている。
図3(a)、(b)、(c)、(d)および図4(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、ロータ部材40は、全体として円筒形状を有しており、その一方側の端部には、図1および図2に示すインペラ体48が連結される大径のインペラ連結部47が円盤状に形成されている。インペラ連結部47の上端面には、インペラ体48に形成された小突起が嵌る小穴47bが形成されている。図3(b)および図4(b)には、羽根部48aが位置する部分を一点鎖線で示してあり、小穴47bは、羽根部48aと重なる位置に形成されている。
ロータ部材40において、インペラ連結部47に対して他方側で隣接する円筒状胴部46には、相対向する2箇所に空気抜き用の穴46aが形成されている。
ロータ部材40において、円筒状胴部46に対して他方側で隣接する位置には、円盤状の座部45が形成されている。座部45において対向する2箇所には半径方向に延びた凸部45aが形成されている。かかる2つの凸部45aは、駆動マグネット42の一方の端面421に形成された4つの凹部42aのうちのいずれかに嵌って駆動マグネット42が、軸線周りに回転することを防止する。
ロータ部材40において、座部45からは他方側に向けて円筒状のマグネット装着部44が起立しており、その内側にスリーブ状のラジアル軸受41が一体成形されている。マグネット装着部44においてラジアル軸受41を保持している部分は肉厚になっている。また、ロータ部材40において、ラジアル軸受41の両端側では、マグネット装着部44の内周面から半径方向内側に環状の突部448、449が形成されており、かかる突起は、ラジアル軸受41の両端面に形成された段部411、412に被さった状態にある。従って、ラジアル軸受41は、ロータ部材40に強固に固定されている。なお、マグネット装着部44の長さ寸法は、ラジアル軸受41の長さ寸法よりも大きいため、マグネット装着部44の他方側端部の内側にはラジアル軸受41が存在していない。
マグネット装着部44は、駆動マグネット42をロータ部材40上に固定する際、外周側に駆動マグネット42が挿着される箇所であり、マグネット装着部44に駆動マグネット42を挿入すると、駆動マグネット42の一方の端面421が座部45で受けられる。その際、座部45に形成されている2つの凸部45aは、駆動マグネット42の一方の端面421に形成された4つの凹部42aのうちのいずれかに嵌って駆動マグネット42が、軸線周りに回転することを防止する。ここで、マグネット装着部44の内周面と駆動マグネット42の外周面とは隙間なく接するように構成されている。
マグネット装着部44の先端部440は、図4(c)、(d)に示すように、駆動マグネット42がロータ部材40上に固定される前の状態で、外周側から内周側に向けて下向きに傾斜するテーパ441が環状に形成されている。これに対して、図3(c)、(d)、(e)に示すように、駆動マグネット42がロータ部材40上に固定された後の状態で、マグネット装着部44の先端部440には、駆動マグネット42の他方の端面422全体に被さるように変形して駆動マグネット42をロータ部材40上に固定する係合部445が形成されており、マグネット装着部44の先端部440の内周縁にはテーパ441がわずかに残っている程度である。
マグネット装着部44の先端部440に形成された係合部445は、後述するように、マグネット装着部44の先端部440に対する加熱および加圧を行なった際、駆動マグネット42の他方の端面422に被さるように変形した部分であり、駆動マグネット42を座部45との間で保持する。
また、ロータ部材40では、互いに対向する2箇所においてマグネット装着部44の先端部440の内周縁から、マグネット装着部44の内周面に沿って軸線方向に空気抜きの溝44eが延びており、かかる溝44eは、座部45の内径側に形成されているテーパ面465で開口している。
(ポンプ装置の製造方法)
図6(a)、(b)を参照して、本形態のポンプ装置100の製造方法のうち、ロータ部材40に駆動マグネット42を保持させる工程を説明しながら、ロータ部材40への駆動マグネット42の固定構造を詳述する。図6(a)、(b)は各々、本発明を適用したポンプ装置100を製造する際、ロータ部材40のマグネット装着部44に駆動マグネット42を挿入する様子を示すマグネット装着工程の説明図、およびロータ部材40に駆動マグネット42を固定する加熱加圧工程の説明図である。
本形態のポンプ装置100を製造するにあたって、ロータ部材40に駆動マグネット42を固定するには、まず、図3および図4を参照して説明したように、熱可塑性樹脂によって、座部45やマグネット装着部44を備えたロータ部材40を形成しておき、図6(a)に示すマグネット装着工程においては、ロータ部材40のマグネット装着部44に駆動マグネット42を挿入する。その結果、図6(b)に示すように、マグネット装着部44の先端部440は駆動マグネット42の他方の端面422からわずかに突出した状態となる。その際、駆動マグネット42を軸線周りに回転させると、座部45に形成されている2つの凸部45aが、駆動マグネット42の一方の端面421に形成された4つの凹部42aのうちのいずれかに嵌る。
次に、加熱加圧工程では、通電により加熱した円環状の熱溶着用ヘッド90をロータ部材40のマグネット装着部44に押し付け、マグネット装着部44の先端部440を加熱、加圧した後、エアノズル(図示せず)から空気を吹き付けて、マグネット装着部44の先端部440を冷却する。その結果、図3(e)に示すように、マグネット装着部44の先端部440は、駆動マグネット42の他方の端面422に被さるように変形した係合部445が形成される。かかる係合部445は、駆動マグネット42の全周において、他方の端面422の外周縁に沿って被さり、駆動マグネット42の他方の端面422からわずかに突出している。
その結果、駆動マグネット42は、係合部445と座部45との間で固定され、マグネット装着部44から抜けることがない。また、ロータ部材40の座部45に形成されていた凸部45aが、駆動マグネット42の一方の端面421に形成されていた凹部42aに嵌っているので、駆動マグネット42が軸線周りに回転することがない。それ故、簡素な構成で駆動マグネット42の回り止めを行なうことができる。
さらに、係合部445は、駆動マグネット42の他方の端面422の全周にわたって被さり、かつ、係合部445の端面は、周方向の全体にわたって平滑面になっている。このため、ロータ部材40上に駆動マグネット42を十分な強度をもって固定することができるとともに、見栄えよく駆動マグネット42をロータ部材40上に固定できる。
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のポンプ装置100およびその製造方法では、駆動マグネット42をロータ部材40のマグネット装着部44に挿入した後、駆動マグネット42の他方の端面422から突出したマグネット装着部44の先端部440に加熱および加圧を行なって、マグネット装着部44の先端部440を駆動マグネット42の他方の端面422に被さるように変形させて駆動マグネット42をロータ部材40上に固定する係合部445を形成する。このため、高価な金型を用いなくても、ロータ部材40上に駆動マグネット42を固定することができる。また、本形態によれば、超音波溶着と違って、マグネット装着部44の先端部440を加熱および加圧するため、変形した部分が平滑で見栄えがよいとともに、表面状態にかかわらず、仕上がり状態が安定している。また、本形態によれば、超音波溶着と違って、駆動マグネット42に超音波振動が加わることがないので、駆動マグネット42として焼結マグネットを用いた場合でも、超音波振動で駆動マグネット42が損傷することがない。さらに、本形態によれば、超音波溶着と違って、マグネット装着部44の先端部440および駆動マグネット42のうち、マグネット装着部44の先端部440の側のみが軟化、溶融する場合でも、マグネット装着部44の先端部440と駆動マグネット42とを強固に接合できるので、駆動マグネット42をロータ部材40上に固定するのに適している。
特に本形態では、マグネット装着部44の先端部440に駆動マグネット42の他方の端面422に被さる係合部445を形成したため、駆動マグネット42の軸線方向の移動を確実に阻止することができる。また、座部45の凸部45aが駆動マグネット42の一方の端面421に形成された凹部42aに嵌るので、駆動マグネット42が軸線周りに回転することを確実に阻止することができる。それ故、マグネット装着部44と駆動マグネット42とを接着剤で固定しなくてもよいので、熱水や飲料の送液など、接着剤の使用が制限されるような用途にも十分に対応することができる。
また、マグネット装着部44の先端部440には、外周側から内周側に向けて下向きに傾斜するテーパ441が形成されているため、加熱加圧工程を行なった際、マグネット装着部44の先端部440がマグネット装着部44の内側に張り出すように変形することがないという利点がある。
また、駆動マグネット42の他方の端面422において、内周縁には、外周側から内周側に向けて下向きに傾斜するテーパ420が形成されていたため、図3(e)に示すように、駆動マグネット42の他方の端面422から係合部445がわずかしか突出しないように構成した場合でも、係合部445が十分な厚さで駆動マグネット42の他方の端面422のテーパ420に被さって引っ掛かるので、ロータ部材40上に駆動マグネット42を十分な強度をもって固定することができる。
[その他の実施の形態]
上記形態では、図3(e)に示すように、マグネット装着部44の先端部440において、係合部445が駆動マグネット42の他方の端面422の全体に被さって他方の端面422からわずかに突出しているが、係合部445が駆動マグネット42の他方の端面422の一部のみに被さっている構成を採用してもよい。例えば、図7に示すように、係合部445が駆動マグネット42の他方の端面422において外周縁部分に沿って形成されたテーパ420のみに重なり、駆動マグネット42の他方の端面422から突出していないように構成してもよい。このように構成した場合でも、係合部445が十分な厚さで駆動マグネット42のテーパ420に被さって引っ掛かるので、ロータ部材40上に駆動マグネット42を十分な強度をもって固定することができる。
上記実施の形態では、係合部445が駆動マグネット42の他方の端面422に対して全周で被さっていたが、周方向において一部を除いた略全周、あるいは周方向の一部のみに被さっている構成を採用してもよい。
上記形態では、モータ装置としてポンプ装置100を例示したが、アクチュエータの駆動源として用いられるモータ装置に本発明を適用してもよい。
上記形態では、ステータに対して駆動マグネット42が半径方向内側にあるインナーロータ型のモータ装置に本発明を適用した例を説明したが、ステータに対して駆動マグネット42が半径方向外側にあるアウターロータ型のモータ装置に本発明を適用してもよい。かかるアウターロータ型のモータ装置の場合、ロータ部材の円筒状のマグネット装着部の内側に円筒状のマグネットが配置されるので、マグネット装着部の先端部には、この先端部に対する加熱および加圧により駆動マグネットの端面の一部に被さるように内周側に変形して駆動マグネットをロータ部材上に固定する係合部が形成されることになる。かかる場合にも、駆動マグネットの一方の端面を下方とし、他方の面を上方としたとき、マグネット装着部の先端部には、内周側から外周側に向けて下向きに傾斜するテーパが形成され、駆動マグネットの他方の端面には、少なくとも内周縁に、内周側から外周側に向けて下向きに傾斜するテーパが形成されていることが好ましい。
上記形態では、ロータ部材40全体が熱可塑性樹脂により構成されていたが、マグネット装着部が熱可塑性樹脂により構成されているが、ロータ部材の他の部分が熱可塑性樹脂以外の材料で構成されている場合に本発明を適用してもよい。
また、上記形態では、マグネット装着部44への駆動マグネット42の固定に接着剤を一切使用しなかったが、接着剤の使用が許容されるような用途の場合、係合部445と併用して、接着剤を用いてもよい。例えば、マグネット装着部44の内周面と駆動マグネット42の外周面との間に接着剤を塗布してもよい。
本発明を適用したポンプ装置(モータ装置)の断面構成を示す説明図である。 本発明を適用したポンプ装置の断面構成を示す分解図である。 (a)、(b)、(c)、(d)、(e)は各々、本発明を適用したポンプ装置に用いたロータからインペラ体を取り外した状態の底面図、平面図、B1−B1′断面図、B2−B2′断面図および駆動マグネットの端部付近の拡大断面図である。 (a)、(b)、(c)、(d)は各々、本発明を適用したポンプ装置のロータに用いたロータ部材の底面図、平面図、A1−A1′断面図およびA2−A2′断面図である。 (a)、(b)、(c)は各々、本発明を適用したポンプ装置のロータに用いた駆動マグネットの底面図、平面図およびC1−C1′断面図である。 (a)、(b)は各々、本発明を適用したポンプ装置を製造する際、ロータ部材のマグネット装着部に駆動マグネットを挿入する様子を示すマグネット装着工程の説明図、およびロータ部材に駆動マグネットを固定する加熱加圧工程の説明図である。 本発明を適用した別のポンプ装置において駆動マグネットの端部付近の拡大断面図である。
符号の説明
1 モータ
3 ステータ
4 ロータ
6 ポンプ室
100 ポンプ装置(モータ装置)
30 ステータコア
33 駆動コイル
35 固定軸
40 ロータ部材
41 ラジアル軸受
42 駆動マグネット
44 マグネット装着部
45 座部
421 駆動マグネットの一方の端面
422 駆動マグネットの他方の端面
440 マグネット装着部の先端部
445 マグネット装着部の係合部

Claims (6)

  1. 駆動コイルが巻回されたステータコアを備えたステータと、
    前記ステータコアに対向配置された筒状の駆動マグネット、および該駆動マグネットを保持するロータ部材を備えたロータと、
    前記ステータを覆うハウジングと、
    を有するモータ装置において、
    前記ロータ部材は、前記駆動マグネットの一方の端面を受ける座部と、該座部から起立して前記駆動マグネットが外周側に挿着された筒状のマグネット装着部と、を備え、
    前記マグネット装着部の先端部には、当該先端部に対する加熱および加圧により前記駆動マグネットの他方の端面の少なくとも内周縁部分に被さるように外周側に向けて変形して当該駆動マグネットを前記ロータ部材上に固定する係合部が形成されており、
    前記マグネット装着部には、該マグネット装着部の内周面と前記先端部との間で傾斜するテーパが形成され、
    前記駆動マグネットには、該駆動マグネットの内周面と前記他方の端面との間で傾斜するテーパが形成され、
    前記ハウジングにおいて前記マグネット装着部の先端部に対向する底部側からは、軸穴が形成された突出部が前記マグネット装着部の内側まで突出していることを特徴とするモータ装置。
  2. 請求項1に記載のモータ装置において、
    前記係合部は、前記駆動マグネットの前記他方の端面の全周あるいは略全周にわたって被さり、かつ、当該係合部の端面は、周方向の全体にわたって平滑面になっていることを特徴とするモータ装置。
  3. 請求項1または2に記載のモータ装置において、
    前記駆動マグネットの前記一方の端面、および前記座部のうちの一方には凹部が形成され、他方には当該凹部に嵌って前記駆動マグネットの回り止めを行なう凸部が形成されていることを特徴とするモータ装置。
  4. 請求項1乃至3の何れか一項に記載のモータ装置において、
    前記ロータ部材には、前記座部に対して前記マグネット装着部が起立する側とは反対側にインペラが形成され、
    前記ロータは、前記ステータに対して隔壁を介して区画形成されたポンプ室に配置されていることを特徴とするモータ装置。
  5. 請求項4に記載のモータ装置において、
    前記インペラは、前記ポンプ室に対して液体の吸入および吐出を行なうことを特徴とするモータ装置。
  6. 駆動コイルが巻回されたステータコアを備えたステータと、
    前記ステータコアに対向配置された筒状の駆動マグネット、および該駆動マグネットが保持されたロータ部材を備えたロータと、
    前記ステータを覆うハウジングと、
    を有するモータ装置の製造方法において、
    前記ロータ部材には、前記駆動マグネットの一方の端面を受ける座部と、該座部から起立する筒状のマグネット装着部と、を形成しておくとともに、前記マグネット装着部には、該マグネット装着部の内周面と当該マグネット装着部の先端部との間で傾斜するテーパを形成しておき、
    前記駆動マグネットには、該駆動マグネットの内周面と当該駆動マグネットの他方の端面との間で傾斜するテーパを形成しておき、
    前記ハウジングにおいて前記マグネット装着部の先端部に対向する底部側からは、軸穴が形成された突出部を突出させておき、
    前記ロータ部材に前記駆動マグネットを保持させるにあたっては、前記駆動マグネットを前記マグネット装着部の外周側に挿入した後、前記駆動マグネットの前記他方の端面から突出した前記マグネット装着部の前記先端部を加熱および加圧することにより、当該先端部を前記駆動マグネットの前記他方の端面の少なくとも内周縁部分に被さるように外周側に向けて変形させて当該駆動マグネットを前記ロータ部材上に固定する係合部を形成する加熱加圧工程を行い、
    該加熱加圧工程の後、前記突出部が前記マグネット装着部の内側に入るように前記ロータを前記ハウジングの内側に収容した状態とすることを特徴とするモータ装置の製造方法。
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