JP5295892B2 - 緩衝器用油圧作動油組成物 - Google Patents
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したがって、各緩衝器が長い配管を接続された新型の緩衝器であっても、配管抵抗が十分に低く、良好な減衰力が得られ、温度による減衰力変化率も少ない緩衝器用油圧作動油が求められていた。
また、一般に粘度が低くなるとシール材のニトリルゴムの膨潤率が高くなる傾向にあり、あまり膨潤率が高すぎるとシール性が低下することも懸念されるため、この影響も抑制された緩衝器用油圧作動油が求められていた。
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物は以下の性状を有する。
(i)40℃の動粘度は4〜8mm2/sであり、 好ましくは5〜7mm2/sである。
動粘度は低いほど配管抵抗が低く、低温下でも良好な減衰力を得ることができるが、4mm2/s未満では高温下での減衰力が低下する傾向にあり、またピストン−シリンダ間の摩耗やシールからの油漏れが懸念される。一方、8mm2/sを超えると、配管抵抗が高くなり全般に減衰力が低下する傾向にあり、特に低温下で良好な減衰力が得づらくなる。
(iii)アニリン点は85〜110℃であり、好ましくは90〜105℃であり、より好ましくは90〜100℃である。アニリン点が110℃を超えるとシール材のゴムの硬化が進み、シール性の低下が懸念される。一方、アニリン点が85℃未満では、シール材のゴムが膨潤し過ぎ、やはりシール性の低下が懸念される。あるいは、より膨潤しづらい高価なシール材への変更が必要となりコストアップとなってしまう場合がある。
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物に用いる基油としては特に制限はなく、鉱油系基油、合成系基油、及びこれらの混合基油などから、本発明の緩衝器用油圧作動油組成物の性状を満たす基油を適宜選択すればよいが、本発明の組成物の性状を得やすいという点では、
(A)40℃の動粘度が10〜15mm2/s、好ましくは10.5〜13.5mm2/s、アニリン点が100〜115℃、好ましくは102〜112℃、かつ、流動点が−40℃以下、好ましくは−50℃以下である炭化水素系基油と、
(B)40℃の動粘度が2.0〜5.0mm2/s、アニリン点が60〜95℃、好ましくは70〜90℃、かつ、流動点が−20〜−50℃、好ましくは−20〜−45℃である炭化水素系基油を、
(A)の基油と(B)の基油の合計量に対する(A)の基油の含有割合が25〜55質量%、好ましくは30〜45質量%となるように混合したものを用いることが好ましい。
なお、(A)成分の炭化水素系基油の流動点の下限値は、上記物性を満たすものであれば、低ければ低いほど好ましいが、上記の40℃動粘度の範囲内で得られるものは、−70℃程度が実質的な下限値である。
上記(B)の基油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られた沸点範囲が150〜200℃のガソリン留分から、その中に含まれる芳香族成分を取り除くことによって得られる鉱油が好ましいものとして挙げられる。
(A)の基油及び(B)の基油は、それぞれ、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物における基油の含有量は、好ましくは90〜97質量%であり、より好ましくは92〜95質量%である。
本発明の組成物は、重量平均分子量が200,000〜600,000であるポリメタクリレート系粘度指数向上剤を組成物の全量に対して0.1〜5.0質量%含有する。なお、本発明における重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定された分子量算定用標準ポリスチレン換算である。
ポリメタクリレート系粘度指数向上剤の重量平均分子量が200,000未満であると所定の粘度指数を得づらい。一方、ポリメタクリレート系粘度指数向上剤の重量平均分子量が600,000を超えると十分なせん断安定性が得られず、長期使用で二次せん断を受けて低粘度化がすすみ、本発明の組成物で必要な所定の動粘度を維持できなくなることが懸念される。
ポリメタクリレート系粘度指数向上剤の配合量は、組成物の全量に対して0.1質量%〜5質量%であり、好ましくは0.5〜3.0質量%である。配合量が0.1質量%未満では所定の粘度指数を得づらい。一方、5.0質量%を超えるとせん断安定性が低下し粘度低下を起こしやすく、本発明の組成物で必要な所定の動粘度を維持できなくなることが懸念される。
本発明の組成物には、酸性リン酸エステルのアミン塩を組成物の全量に対して2.0〜5.0質量%含有する。
酸性リン酸エステルのアミン塩を構成する酸性リン酸エステルは、モノエステル、ジエステルのいずれであってもよく、そのアルコール残基としては、例えば、ブチル、オクチル、ラウリル、ステアリル、オレイル基などの炭素数4〜30のアルキル基、フェニル基などの炭素数6〜30のアリール基、メチルフェニル、オクチルフェニル基などの炭素数7〜30のアルキル置換アリール基などが挙げられる。
本発明の緩衝器用油圧作動油組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて各種公知の添加剤を配合することができる。例えば酸化防止剤、極圧剤、油性剤、清浄分散剤、さび止め剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、泡消剤、抗乳化剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤、アルキル化ジフェニルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、ホスホン酸エステル等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
油性剤としては、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、オレイルアルコール等の高級アルコール、オレイルアミン等のアミン、ブチルステアレート等のエステルが挙げられる。
清浄分散剤としては、アルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸エステル等の無灰系清浄分散剤、アルカリ土類金属系清浄分散剤が挙げられる。
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾ−ルおよびその誘導体、アルキルコハク酸誘導体が挙げられる。
流動点降下剤としては、ポリアルキルメタクリレート、ポリブテン、ポリアルキルスチレン、ポリビニルアセテート、ポリアルキルアクリレート等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン油やエステル系消泡剤等が挙げられる。
抗乳化剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等の抗乳化剤が挙げられる。
これら添加剤は、1種を単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
表1に示す組成により実施例1、比較例1による緩衝器用油圧作動油組成物を調整した。これらの組成物に対し以下に示す(1)減衰力変化率測定試験、(2)摩擦力測定試験、(3)シール材適合試験を実施した。
動粘度@40℃:11.6mm2/s、アニリン点:107℃、流動点:<−50℃
*2 基油A2: 炭化水素系基油で以下の性状を有する3種の鉱油の混合物。
(1)ニュートラル基油; 動粘度@40℃:9.4mm2/s、アニリン点:96℃、流動点:−13℃
(2)ナフテン系基油; 動粘度@40℃:11.6mm2/s、アニリン点:57℃、流動点:<−50℃
(3)ナフテン系基油; 動粘度@40℃:8.6mm2/s、アニリン点:59℃、流動点:<−50℃
(1)動粘度@40℃:2.5mm2/s、アニリン点:78℃、流動点:−45℃、芳香族分0.1質量%、
(2)動粘度@40℃:4.1mm2/s、アニリン点:89℃、流動点:−35℃、芳香族分0.2質量%
*5 ポリメタクリレートA: 非分散型、重量平均分子量:400,000
*6 ポリメタクリレートB: 分散型、重量平均分子量:150,000
*7 酸性リン酸エステルのアミン塩; オレイルアシッドフォスフェートのアミン塩
実施例1及び比較例1に記載した緩衝器用油圧作動油組成物を用いて、台上実機試験を行い、減衰力の温度変化率を測定した。
減衰力変化率は実施例、比較例ともに20℃での測定値を基準にし、以下に示す計算式から算出した。実験は具体的には、試験油を封入した自動車用緩衝器を以下に示す実験条件にて振動させ、末端の緩衝器のピストンが伸びる際にかかる減衰力を測定した。減衰力変化率が低いほど温度変化による減衰力の変化が小さいことを示し、自動車の乗り心地、操縦安定性が維持できていることを意味する。
結果は表2示す。
実施例1計測時の試験条件
温度 :−30℃±3℃、20±3℃、80±3℃
加振波形 :正弦波
ピストン速度:0.05m/s、0.10m/s、0.30m/s
横力 :0N
比較例1計測時の試験条件
温度 :20±3℃、50±3℃、80±3℃
加振波形 :正弦波
ピストン速度:0.05m/s、0.10m/s、0.30m/s
横力 :0N
減衰力変化率(%)={(T℃における減衰力)―(20℃における減衰力)}/(20℃における減衰力)×100
(比較例1の-30℃における減衰力変化率算出式)
減衰力変化率(%) ={比較例1の20℃→-30℃の粘度変化率}/{実施例1の20℃→-30℃の粘度変化率}
×(-30℃における実施例1の減衰力変化率)
減衰力変化率測定試験と同様に、実施例1及び比較例1に記載した緩衝器用油圧作動油組成物を用いて台上実機試験を行い、摩擦力を測定した。
結果は表3に示す。
「摩擦力測定試験条件」
実施例1、比較例1計測時の実験条件
温度 :20±3℃
加振波形 :正弦波
ストローク :±5mm
ピストン速度:0.001m/s
横力 :0N
実施例1及び比較例1に記載した緩衝器用油圧作動油組成物にシール材を浸し体積変化率と重量変化率を測定した。
結果は表4に示す。
「シール材適合性試験条件」
シール材 :ニトリルゴム
試験油温 :100℃
試験時間 :70h
Claims (2)
- 基油に、重量平均分子量が200,000〜600,000であるポリメタクリレート系の粘度指数向上剤及び酸性リン酸エステルのアミン塩を配合してなる油圧作動油組成物であって、該ポリメタクリレート系の粘度指数向上剤の配合割合が該組成物の全量に対して0.1〜5.0質量%であり、該酸性リン酸エステルのアミン塩の配合割合が該組成物の全量に対して2.0〜5.0質量%であり、該組成物の性状として、40℃の動粘度が4〜8mm2/s、−30℃におけるブルックフィールド粘度が1000mPa・s以下、アニリン点が85〜110℃、粘度指数が150以上であることを特徴とする緩衝器用油圧作動油組成物。
- 前記基油が、(A)40℃の動粘度が10〜15mm2/s、アニリン点が100〜115℃、かつ、流動点が−40℃以下である炭化水素系基油と、(B)40℃の動粘度が2.0〜5.0mm2/s、アニリン点が60〜95℃、流動点が−20〜−50℃である炭化水素系基油を、(A)と(B)の合計質量に対して(A)を25〜55質量%の割合で含有する基油である請求項1に記載の緩衝器用油圧作動油組成物。
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