JP5421697B2 - 工業用作動油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、省電力型工業用作動油組成物に関する。
近年、地球規模での温暖化が進行し、温室効果ガスの一つである二酸化炭素排出量削減が急務となっている。わが国でも、2006年にエネルギーの使用の合理化に関する法律、地球温暖化対策の推進に関する法律がそれぞれ改正施行され、工場、輸送事業者等はこれまで以上に電力消費量の削減が求められるようになってきた。
電力消費量削減の一つの方法として、産業機械や輸送機械で使用される潤滑油側からの省電力化が図られている。
省電力化の有効な手段として、動粘度を低くすることが広く知られているが、一方で、特定の添加剤を配合することによる摩擦・摩耗の低減による向上が図られている。例えば、リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩、脂肪酸エステル、カルボン酸アミド、硫化オキシモリブデンジチオホスフェート、硫化オキシモリブデンジチオカーバメートなどの配合技術による対応が試みられている(例えば、特許文献1、2参照)。また、特定の基油を使用することにより、配管等の圧力損失の低減を図った例も挙げられる(特許文献3参照)。
ところで、油圧装置においても省電力化が求められている。最近では油圧装置の高出力化、高圧化、オイルタンクの小型化などにより、高温、高圧、高せん断等、作動油がより過酷な条件にさらされる傾向にある。
工業用油圧装置は、オイルタンク、ベーンポンプやピストンポンプなどの油圧ポンプ、流量、方向、圧力を調整するための制御弁、油圧シリンダーや油圧ポンプなどのアクチュエーター、それらをつなぐ配管から構成される。これらの各部位の内、油圧ポンプ、制御弁、アクチュエーターにおいて、作動油は狭い経路を流れることとなり、高せん断条件にさらされる。
油圧ポンプ、制御弁、アクチュエーターといった、油圧装置を構成するメインの部位での粘度を低くすることは、油圧装置の省電力化の方法の一つとして有効であると考えられ、動粘度だけではなく、高せん断条件下での一時せん断粘度(以下、「高せん断粘度」ということもある)を低くすることは、油圧装置の省電力化によりいっそう寄与することが期待できる。
例えば、射出成形機のように通常タンク油温40℃前後にて運転される油圧装置では、40℃における高せん断粘度を低くすることで、省電力化に寄与できることが期待できる。
高せん断粘度を低くするためには、基油に適切なポリマーを配合することが考えられる。しかしながら、高せん断粘度を低くするために配合されるポリマーは、高せん断下において分子の切断を生じやすいものが多いため、そのようなポリマーが配合された作動油は永久せん断安定性が低下し、せん断力による永久的な粘度低下が起こりやすい傾向にある。その結果、例えば、油圧ポンプやアクチュエーターにおいて、適切な油膜を保持しにくくなることが考えられる。また、作動油がより過酷な状況にさらされる傾向にあると、せん断条件も厳しくなり、よりいっそうの永久せん断安定性が求められることが考えられる。
特開平5−140556号公報 特開2001−040383号公報 特開2004−250504号公報
本発明は、高せん断条件下での一時せん断粘度が低く、永久せん断安定性に優れ、かつ優れた耐摩耗性を有する作動油組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定範囲の40℃動粘度、粘度指数及び15℃密度を有する炭化水素系潤滑油基油、特定の重量平均分子量を有するエチレン/プロピレン共重合体、及び特定量のリン酸エステル系摩耗防止剤を配合し、得られる組成物の40℃における動粘度を特定の範囲にすることで、高せん断条件下での一時せん断粘度が低く、かつ永久せん断安定性に優れ、耐摩耗性にも優れた作動油組成物が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、(A)40℃動粘度が4〜40mm/sであり、粘度指数が100以上であり、15℃密度が0.80〜0.87g/cm である炭化水素系潤滑油基油、(B)重量平均分子量が20,000〜60,000であるエチレン/プロピレン共重合体、及び(C)リン酸エステル系摩耗防止剤0.7〜2.5質量%、を含有する組成物であって、該組成物の40℃における動粘度が19〜51mm/sであることを特徴とする工業用作動油組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記工業用作動油組成物において、前記組成物の40℃における動粘度が24〜51mm /sである工業用作動油組成物を提供するものである。
本発明の工業用作動油組成物は、高せん断条件下での一時せん断粘度が低く、永久せん断安定性に優れ、かつ優れた耐摩耗性を有する。また、本発明の工業用作動油組成物を用いた産業機械や輸送機械の省電力化を図ることができる。なお、「一時せん断粘度」とは、せん断力がかかった条件下で一時的に変化した粘度をいう。一方、作動油は、せん断力がかかることで化学構造の不可逆的な変化が生じ、せん断力を解除した条件に戻しても粘度が元に戻らない、すなわち永久的な粘度低下を起こすことがある。このせん断力による永久的な粘度低下に対する耐性を「永久せん断安定性」という。よって、「高せん断条件下での一時せん断粘度が低く、かつ永久せん断安定性に優れている」ということは、「高せん断力がかかった条件下での粘度は低いが、この高せん断力を取り除いた後の粘度は、高せん断力をかける前の粘度と同じか、またはそれに近い粘度になる」ということを意味する。
(1)基油
本発明の工業用作動油組成物に用いる炭化水素系潤滑油基油の40℃動粘度は、JIS K2283動粘度試験方法において、4〜40mm/sであり、より好ましくは8〜35mm/sであり、さらに好ましくは10〜30mm/sであり、特に好ましくは13〜28mm/sである。40℃動粘度が4mm/s未満であると、適当な油膜厚さが保たれなくなり、十分な摩耗防止性を得づらくなる。40℃動粘度が40mm/sを超えると、作動油として適切な動粘度に調整するために、後述する粘度指数向上剤の配合量を減らす必要が生じ、高せん断粘度が大きくなり、十分な省電力効果を得づらくなる。なお、複数の基油成分を混合した基油を用いる場合には、混合後の基油の40℃動粘度が上記の範囲内であればよく、各基油成分の40℃動粘度が上記範囲内であることがより好ましい。
なお、工業用作動油組成物の粘度グレードは、40℃の動粘度により定められており、各装置、運転条件に適した粘度グレードの作動油を使うことが求められる。例えば粘度グレード(以下VGと記す)が46である作動油は、VG22の作動油よりも、より摩耗防止性が求められる装置、運転条件にて使用されることが考えられる。よって、VG46、すなわち組成物の40℃動粘度が41.4〜50.6mm/sである作動油を調製する場合と、VG32、すなわち組成物の40℃動粘度が28.8〜35.2mm/sである作動油を調製する場合と、VG22、すなわち組成物の40℃動粘度が19.8〜24.2mm/sである作動油を調製する場合とでは、それぞれ使用する基油の好ましい40℃動粘度は異なる。
例えば、本発明においてVG46の作動油を調製する場合、本発明で使用する基油の40℃動粘度は4〜40mm/sであり、好ましくは10〜38mm/sであり、さらに好ましくは13〜35mm/sであり、特に好ましくは14〜28mm/sである。
また、本発明においてVG32の作動油を調製する場合、本発明で使用する基油の動粘度は好ましくは4〜30mm/sであり、さらに好ましくは9〜28mm/sであり、特に好ましくは11〜25mm/sである。
また、本発明においてVG22の作動油を調製する場合、本発明で使用する基油の動粘度は好ましくは4〜20mm/sであり、さらに好ましくは8〜18mm/sであり、特に好ましくは10〜15mm/sである。
本発明の作動油組成物に用いる炭化水素系潤滑油基油のナフテン分(%CN)は特に限定しないが、ASTM D3238環分析方法において、好ましくは20〜31であり、より好ましくは24〜31であり、さらに好ましくは26〜31である。%CNを20以上とすることで、作動油組成物に使用される添加剤の溶解性を向上させ、より良好な貯蔵安定性が得られる。また、後述するリン酸エステル系摩耗防止剤の溶解性を向上させ、より良好な耐摩耗性を得やすくできる傾向にある。%CNを31以下とすることで、良好な熱酸化安定性が得やすくできる傾向にある。なお、複数の基油成分を混合した基油を用いる場合には、混合後の基油の%CNが上記の範囲内であればよく、各基油成分の%CNが上記範囲内であることがより好ましい。
本発明の工業用作動油組成物で用いる炭化水素系潤滑油基油の粘度指数は、JIS K2283動粘度試験方法において、100以上である粘度指数を100以上とすることで、後述する好ましい組成物の粘度指数を得やすくなる。また、組成物の粘度指数は、本発明の成分である粘度指数向上剤の配合量が多いほど、高くすることができるが、基油の粘度指数が高ければ、この配合量を抑制することができる。この観点から、基油の粘度指数は100以上であり、さらに好ましくは103以上である。なお、複数の基油成分を混合した基油を用いる場合には、混合後の基油の粘度指数が上記の範囲内であればよく、各基油成分の粘度指数が上記範囲内であることがより好ましい。
本発明の工業用作動油組成物で用いる炭化水素系潤滑油基油の密度は、JIS K2249密度試験方法(15℃)において0.80〜0.87g/cmである。15℃密度を0.80以上とすることで、添加剤の適度な溶解性を確保しやすい傾向にあるため好ましい。15℃密度を0.87g/cm以下とすることで、配管等の圧力損失を抑制しやすく、より高い省電力効果を得やすい傾向にあるため好ましい。なお、複数の基油成分を混合した基油を用いる場合には、混合後の基油の15℃密度が上記の範囲内であればよく、各基油成分の15℃密度が上記範囲内であることがより好ましい。
本発明の工業用作動油組成物で用いる炭化水素系潤滑油基油のアニリン点は、JIS K2256アニリン点試験方法において100〜130℃である。アニリン点を100℃以上とすることで、高粘度指数基油となりやすい傾向にある。アニリン点を130℃以下とすることで、添加剤の溶解性を確保しやすい傾向にあるため好ましい。なお、複数の基油成分を混合した基油を用いる場合には、混合後の基油のアニリン点が上記の範囲内であればよく、各基油成分のアニリン点が上記範囲内であることがより好ましい。
本発明の作動油組成物に用いられる基油としては、特に制限はなく、鉱油系潤滑油基油や合成系潤滑油基油やその混合物を使用することができる。鉱油系潤滑油基油としては、例えば、原油の潤滑油留分を溶剤精製、水素化精製、水素化分解精製、水素化脱蝋などの精製法を適宜組合せて精製したものが挙げられる。合成系潤滑油基油としては、例えば、α−オレフィンオリゴマーや、メタン等の天然ガス等を原料としてフィッシャー−トロプシュ合成によって得られたワックスを原料として製造される基油等が挙げられる。このうち、%CN、密度やアニリン点を前記の好ましい範囲にし易いという観点からは、溶剤精製や水素化精製、水素化脱蝋で製造された基油を用いることが好ましい。
本発明の工業用作動油組成物には、本発明の効果を損ねない範囲内で、前記基油以外の他の基油を含んでもよいが、前記基油の含有割合は、基油全量に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
本発明の工業用作動油組成物において、基油の含有量は、作動油組成物全量に対して、好ましくは80〜99質量%であり、より好ましくは83〜98質量%であり、さらに好ましくは85〜97質量%である。
(2)エチレン/プロピレン共重合体(粘度指数向上剤)
本発明に用いる(B)成分は粘度指数向上剤として用いられるエチレン/プロピレン共重合体であり、その重量平均分子量は20,000〜60,000であり、好ましくは25,000〜55,000であり、より好ましくは28,000〜50,000であり、特に好ましくは30,000〜45,000である。重量平均分子量を20,000以上とすることで、高せん断条件下での一時せん断粘度の低下が大きくなり、省電力効果をより得やすくできる傾向にある。重量平均分子量を60,000以下とすることで、より良好な永久せん断安定性を得やすい傾向にある。
また、本発明で用いるエチレン/プロピレン共重合体の数平均分子量は特に制限はないが、好ましくは10,000〜35,000であり、より好ましくは14,000〜31,000であり、さらに好ましくは16,000〜28,000であり、特に好ましくは17,000〜26,000である。数平均分子量を10,000以上とすることで、高せん断条件下での一時せん断粘度の低下が大きくなり、省電力効果をより得やすくできる傾向にある。数平均分子量を35,000以下とすることで、より良好な永久せん断安定性を得やすい傾向にある。
ここで、重量平均分子量及び数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーで測定され、ポリスチレン換算による値である。
なお、複数のエチレン/プロピレン共重合体を用いる場合には、混合後のエチレン/プロピレン共重合体の重量平均分子量が上記の範囲であればよいが、ただし永久せん断安定性をより良好なものとするためには、各エチレン/プロピレンの重量平均分子量が上記範囲内であることがより好ましい。
また、複数のエチレン/プロピレン共重合体を用いる場合、混合後のエチレン/プロピレン共重合体の数平均分子量は特に制限はないが、好ましくは上記の範囲内であり、永久せん断安定性をより良好なものとするためには、各エチレン/プロピレンの数平均分子量が上記範囲内であることがより好ましい。
エチレン/プロピレン共重合体のエチレンとエチレン以外のモノマーのモル比は特に制限されないが、好ましくは80:20〜20:80であり、より好ましくは70:30〜30:70であり、さらに好ましくは65:35〜35:65である。エチレンの割合が80を超えると、基油へ溶解しにくくなる傾向にある。
エチレン/プロピレン共重合体は、規則的交互重合体、ランダム重合体、ブロック重合体またはグラフト重合体のいずれであっても良い。
エチレン/プロピレン共重合体は、分散型、非分散型のいずれであってもよいが、熱酸化安定性の観点から、非分散型エチレン/プロピレン共重合体であることが好ましい。
エチレン/プロピレン共重合体の作動油組成物全量に対する配合量は、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは1〜8質量%であり、特に好ましくは1.5〜6質量%である。配合量を0.5質量%以上とすることで、高せん断条件下での一時せん断粘度の低下が大きくなり、省電力効果をより得やすくできる傾向にある。配合量を10質量%以下とすることで、より良好な永久せん断安定性を得やすい傾向にある。
上記のエチレン/プロピレン共重合体は、1種を単独使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。ただし2種以上を併用する場合は、合計量が上記配合量である必要がある。
また、本発明の作動油組成物には、本発明の効果を損ねない範囲内であれば、前記エチレン/プロピレン共重合体以外の他の粘度指数向上剤を含んでもよい。前記エチレン/プロピレン共重合体以外の他の粘度指数向上剤としては、たとえば、スチレン系粘度指数向上剤、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、などが挙げられる。
(3)摩耗防止剤
本発明に用いる(C)成分のリン酸エステル系摩耗防止剤としては、ホスフェート、ホスファイト、及びこれらの誘導体が挙げられる。ホスフェート、ホスファイトは、モノ、ジ、トリエステルのいずれでもよいが、トリエステルが好ましい。また、その各アルコール残基としては、ブチル、オクチル、ラウリル、ステアリル、オレイル基などの炭素数4〜30のアルキル基、フェニル基などの炭素数6〜30のアリール基、メチルフェニル、オクチルフェニル基などの炭素数7〜30のアルキル置換アリール基などが挙げられるが、炭素数7〜30のアルキル置換アリール基が好ましく、炭素数7〜10のアルキル置換アリール基がより好ましい。
上記リン酸エステル系摩耗防止剤の具体的化合物の例としては、トリクレジルフォスフェート、トリブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、モノオレイルホスフェート、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどが挙げられる。これらの誘導体としてはアミン塩があり、ステアリルアミン塩、オレイルアミン塩、ココナッツアミン塩などが挙げられる。
上記(C)成分は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に用いる(C)成分のリン酸エステル系摩耗防止剤の作動油組成物全体に対する配合量は0.7〜2.5質量%であり、より好ましくは1〜2質量%である。配合量が0.7質量%未満であると、十分な耐摩耗性が得にくくなる傾向にある。また、これは例えばベーンポンプの内部漏れ量の増加による油圧装置の効率低下、電力消費量の増加につながることも考えられる。一方、配合量が2.5質量%を超えると、基油への溶解性が低下し、濁りが生じる傾向にある。また、これは例えば油圧装置内のフィルター、制御弁等の詰まりによる圧力損失の発生、電力消費量の増加につながることも考えられる。
上記の(C)成分、リン酸エステル系摩耗防止剤は1種単独を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また2種以上を組み合わせる場合は、合計の配合量が上記配合量である必要がある。
(4)他の添加剤
本発明の工業用作動油組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて各種の公知の添加剤を配合することができる。例えば、酸化防止剤、極圧剤、油性剤、清浄分散剤、さび止め剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、泡消剤、抗乳化剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤、アルキル化ジフェニルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、ホスホン酸エステル等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
極圧剤としては、硫化オレフィン、ポリサルファイド、硫化油脂、ジチオリン酸誘導体等の硫黄系極圧剤、ZnDTP、ZnDTC等の有機金属系極圧剤が挙げられる。特に好ましいものとして、硫化オレフィン、ジチオリン酸誘導体が挙げられる。
ただし、これら硫黄系極圧剤を配合する場合、配合量が多いと良好な熱酸化安定性が得られにくくなる傾向があるため、配合量が0.1%以下であることが好ましい。なお、上記の硫黄系極圧剤は、極圧性能の面だけを考慮すると本発明の(C)成分のリン酸エステル系摩耗防止剤に代えて使用することができるが、摩耗防止性能を考慮すると硫黄系極圧剤のみでは本発明の効果は得られない。なお、硫黄系極圧剤は、多く配合することで、(C)成分を配合しなくても、(C)成分と同程度の摩耗防止剤を確保することもできる場合もあるが、その場合には0.1質量%以上の配合が必要となり、上記のように熱酸化安定性を確保することが難しくなる傾向にある。
油性剤としては、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、オレイルアルコール等の高級アルコール、オレイルアミン等のアミン、ブチルステアレート等のエステルが挙げられる。
清浄分散剤としては、アルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸エステル等の無灰系清浄分散剤、アルカリ土類金属系清浄分散剤が挙げられる。
さび止め剤としては、カルボン酸、金属セッケン、カルボン酸アミン塩、スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分エステル等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾ−ルおよびその誘導体、アルキルコハク酸誘導体が挙げられる。
流動点降下剤としては、ポリアルキルメタクリレート、ポリブテン、ポリアルキルスチレン、ポリビニルアセテート、ポリアルキルアクリレート等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン油やエステル系消泡剤等が挙げられる。
抗乳化剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等の抗乳化剤が挙げられる。
(4)組成物の性状
本発明の工業用作動油組成物の40℃動粘度は、JIS K2283動粘度試験方法において、19〜51mm/sであり、より好ましくは24〜48mm/sであり、さらに好ましくは28〜46mm/sである。40℃動粘度が19mm/s未満であると、適当な油膜厚さが保たれなくなり、十分な摩耗防止性が得にくくなる傾向にある。40℃動粘度が51mm/sを超えると、高せん断粘度が大きくなり、省電力効果を十分に得られなくなる傾向にある。
本発明の工業用作動油組成物の粘度指数は、特に制限はないが、JIS K2283動粘度試験方法において、好ましくは140以上であり、さらに好ましくは145以上であり、さらに好ましくは150以上である。粘度指数を140以上とすることで、低温粘度を抑制しやすいため、低温始動時の電力消費量を抑制しやすく、より高い省電力効果を得やすい傾向にある。
(5)用途
本発明の工業用作動油組成物は、種々の工業用作動油に適用できるが、特に油圧システムに用いる油圧作動油として好ましく用いることができる。さらには、油圧システムのうち、油圧ポンプ、油圧モーター、制御弁等、作動油がせん断状態にさらされる箇所での省電力化を図る際に特に有効である。
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。各実施例、比較例において工業用作動油組成物の調製に用いた基油、添加剤成分は次のとおりである。
(A)基油
(A−1)水素化精製鉱油(炭化水素系潤滑油基油)
40℃動粘度:15.5mm/s、100℃動粘度:3.5mm/s、粘度指数:105、15℃における密度:0.852g/cm、%CN:29、アニリン点:101℃
(A−2)水素化精製鉱油(炭化水素系潤滑油基油)
40℃動粘度:31.6mm/s、100℃動粘度:5.5mm/s、粘度指数:112、15℃における密度:0.860g/cm、%CN:31、アニリン点:113℃
(A−3)水素化精製鉱油(炭化水素系潤滑油基油)
40℃動粘度:81.7mm/s、100℃動粘度:10.0mm/s、粘度指数:101、15℃における密度:0.875g/cm、%CN:30、アニリン点:117℃
(A−4)水素化分解鉱油(炭化水素系潤滑油基油)
40℃動粘度:17.8mm/s、100℃動粘度:4.1mm/s、粘度指数:135、15℃における密度:0.825g/cm、%CN:13、アニリン点:120℃
(A−5)水素化分解鉱油(炭化水素系潤滑油基油)
40℃動粘度:20.1mm/s、100℃動粘度:4.3mm/s、粘度指数:122、15℃における密度:0.834g/cm3、%CN:20、アニリン点:115℃
(A−6)水素化分解鉱油(炭化水素系潤滑油基油)
40℃動粘度:35.1mm/s、100℃動粘度:6.28mm/s、粘度指数:130、15℃における密度:0.842g/cm、%CN:19、アニリン点:123℃
※40℃動粘度、100℃動粘度、粘度指数はJIS
K2283動粘度試験方法、密度はJIS K2249密度試験方法により測定した。%CNはASTM D3238環分析により測定した。算出に必要な屈折率、密度、分子量および硫黄分は、JIS K0062屈折率測定方法、JIS K2249密度試験方法、ASTM D2502分子量試験方法、JIS K2541硫黄分試験方法にて測定した。アニリン点は、JIS K2256アニリン点試験方法にて測定した。
(B)粘度指数向上剤
(B−1)エチレン/プロピレン共重合体
重量平均分子量が33,000、Mw/Mnが1.9である、非分散型エチレン/プロピレン共重合体(希釈油含有量 40質量%)
(B−2)エチレン/プロピレン共重合体
重量平均分子量が16,000、Mw/Mnが2.2である、非分散型エチレン/プロピレン共重合体(希釈油なし)
(B−3)エチレン/プロピレン共重合体
重量平均分子量が100,000、Mw/Mnが2.0である、非分散型エチレン/プロピレン共重合体(希釈油なし)
(B−4)エチレン/プロピレン共重合体
重量平均分子量が125,000、Mw/Mnが2.0である、非分散型エチレン/プロピレン共重合体(希釈油含有量 80質量%)
(B−5)ポリメタクリレート
重量平均分子量が38,000、Mw/Mnが1.9である、ポリメタクリレート系粘度指数向上剤(希釈油含有量 20質量%)
※(B−1)〜(B−5)の重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーにて測定し、ポリスチレン換算にて算出した。ゲル浸透クロマトグラフィーはカラムにShodex
GPC LF−804を3本、移動層にTHF、検出器に示差屈折検出器を用いた。
(C)リン酸エステル系摩耗防止剤
(C−1) トリクレジルフォスフェート
(D)その他
(D−1)酸化防止剤:2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、アルキル化ジフェニルアミン
(D−2)硫黄系極圧剤:硫化オレフィン
(D−3)硫黄系極圧剤:β−ジチオホスホリル化プロピオン酸
(評価方法)
工業用作動油組成物の高せん断条件下における一時せん断粘度(高せん断粘度)、永久せん断安定性、耐摩耗性、熱酸化安定性、貯蔵安定性及び省電力効果について、下記の評価方法により評価した。
<高せん断粘度>
USV(Ultra Shear Viscometer、PCS Instruments製)を用い、温度40℃・せん断速度10−1における高せん断粘度(40℃)を測定した。
<永久せん断安定性試験>
超音波法(JPI−5S−29準拠、高出力法)にて行い、60分超音波照射後の40℃動粘度を測定した。超音波照射前の40℃動粘度を基準として、40℃動粘度低下率(%)を評価した。
<省電力効果>
射出成形機運転時の消費電力を測定、省電力効果を評価した。
日精樹脂工業株式会社製射出成形機FN−1000を用い、原料ポリプロピレンから成形品カラーチップを作成、タンク油温40℃での消費電力を測定した。なお、電力計は日置電機株式会社製 3168クランプオンパワーハイテスタを用いた。
また、試験前の40℃動粘度を基準とし、50時間試験終了後の40℃動粘度低下率(%)を評価した。
<耐摩耗性>
以下の試験条件でシェル四球試験を実施し、摩耗痕径で評価した。
試験条件 テストピース :鋼(固定球)−鋼(回転球)
回転数 :1800
rpm
荷重 :30
kgf
試験時間 :30
min
<熱酸化安定性>
内径2.5cmのガラス製容器に作動油組成物を40mL入れ、160℃、120時間後のスラッジ量(mg、孔径0.8μmのミリポアフィルター)を評価した。
<貯蔵安定性>
容量100mLのガラス製サンプル瓶に作動油組成物を入れ、0℃恒温槽に1週間放置、濁り及び沈殿物の有無を目視にて判断した。
(実施例1〜、比較例1〜6)
表1〜4に記載されている成分を、表1〜4に記載されている配合量で、混合して、作動油組成物を製造した。
Figure 0005421697
Figure 0005421697
*実施例の(B)成分合計の重量平均分子量は22,000である。
実施例の(B)成分合計の重量平均分子量は41,000である。
Figure 0005421697
Figure 0005421697
(実施例、比較例2)
実施例、比較例2の省電力効果を測定した結果を表5に示す。
Figure 0005421697
実施例1〜は、粘度指数向上剤を含まない比較例1、重量平均分子量の低いエチレン/プロピレン共重合体を含む比較例2、ポリメタクリレート系粘度指数向上剤を配合した比較例4よりも40℃における高せん断粘度が低く、重量平均分子量の高い比較例3よりも永久せん断安定性に優れている。
実施例1〜は、リン酸エステル系摩耗防止剤の配合量が少ない比較例5よりも、耐摩耗性に優れている。また硫黄系極圧剤を多量に配合した比較例6よりも熱酸化安定性に優れている。
よって、これら実施例は、高せん断粘度を下げることによる省電力効果が期待できると同時に、優れた耐摩耗性も得られる。
本発明の工業用作動油組成物は、種々の工業用作動油に適用できるが、特に油圧システムに用いる油圧作動油として好ましく用いることができる。さらには、油圧システムのうち、油圧ポンプ、油圧モーター、制御弁等において、作動油がせん断状態にさらされる箇所での省電力化を図る際に特に有効である。

Claims (2)

  1. (A)40℃動粘度が4〜40mm/sであり、粘度指数が100以上であり、15℃密度が0.80〜0.87g/cm である炭化水素系潤滑油基油、(B)重量平均分子量が20,000〜60,000であるエチレン/プロピレン共重合体、及び(C)リン酸エステル系摩耗防止剤0.7〜2.5質量%、を含有する組成物であって、該組成物の40℃における動粘度が19〜51mm/sであることを特徴とする工業用作動油組成物。
  2. 前記組成物の40℃における動粘度が24〜51mm /sである請求項1に記載の工業用作動油組成物。
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