JP5294013B2 - フィルタ、通信モジュール、および通信装置 - Google Patents

フィルタ、通信モジュール、および通信装置 Download PDF

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Description

本発明は、所定の周波数帯域の信号を通過させるフィルタに関する。
近年、携帯電話をはじめとする移動体通信機の市場が拡大するとともに、そのサービスは高機能化している。それに伴い、通信網が利用する周波数帯域は、次第に1GHz以上の高い周波数帯域にシフトし、且つ多チャンネル化する傾向がある。
図1は、従来の高周波可変フィルタの構成を示す回路図である。図1に示す高周波可変フィルタは、複数のチャンネルフィルタ101a〜101cと、スイッチ102a及び102bとを備えている。チャンネルフィルタ101a〜101cは、互いに通過帯域が異なる。入力端子103から入力される高周波信号は、スイッチ102a及び102bにより選択された一つのチャンネルフィルタを介して、出力端子104から出力される。スイッチ102a及び102bを適宜切り替えることで、高周波可変フィルタの通過帯域を変えることができる(特許文献1,2に開示)。しかし、図1に示す構成では、チャンネル数分のフィルタが必要となるため、高周波可変フィルタのサイズが大型化するとともに、コストも増大してしまう。また、各スイッチにおいて、信号の損失が発生する。
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スイッチや可変キャパシタを用いた小型可変フィルタが注目されている。MEMSスイッチなどのMEMSデバイスは、高Q(クオリティファクタ)で、高い周波数帯域の可変フィルタへの適用ができる(非特許文献1,2,3)。また、MEMSデバイスは、小型および低損失のため、CPW分布定数共振器(CPW:Coplanar Waveguide)に用いられていることが多い。
非特許文献3に開示されているフィルタは、三段分布定数線路を複数のMEMS可変キャパシタが跨ぐ構造である。このフィルタにおいて可変キャパシタを変位させて分布定数線路とのギャップを変化させると、静電容量を変化させることができる。キャパシタの静電容量を変えると、フィルタの通過帯域を変化させることができる。また、非特許文献3に開示されているフィルタにおいて、基板材料は石英とガラスである。また、基板上に形成されたグランド線と信号線との間のギャップに、可変キャパシタの駆動電極が配置されている。また、線路の長さは、基板の誘電率によって規定される。
特開平10−335903号公報 特開2007−174438号公報 D. Peroulis et al, "Tunable Lumped Components with Applications to Reconfigurable MEMS Filters", 2001 IEEE MTT-S Digest, p341-344 E. Fourn et al, "MEMS Switchable Interdigital Coplanar Filter", IEEE Trans. Microwave Theory Tech., vol. 51, NO.1 p320-324, January 2003 A. A. Tamijani et al, "Miniature and Tunable Filters Using MEMS Capacitors", IEEE Trans. Microwave Theory Tech., vol. 51, NO.7, p1878-1885, July 2003
上記従来の分布定数フィルタにおいては、周波数帯域が高くなるとサイズが大きくなるという課題がある。一例として、携帯電話をはじめとする主要移動体通信機の使用周波数帯域は、約800MHz〜6GHzに分布している。但し、800MHz〜6GHz周波数帯になると波長が長くなるため、分布定数フィルタのサイズは実用には大き過ぎるサイズとなる。例えば、セラミック基板(誘電率ε=9.4)で、800MHz帯の75Ωマイクロストリップ線でλ/2線路長の線路を作製した場合、物理的な長さは約77mmとなる。この長さ寸法は、実用が困難な程度の長い寸法である。
高誘電体基板を使用することにより、線路の長さをある程度短縮できるが、基板誘電率が大きくなると、特性インピーダンスの高い分布定数線路が形成できなくなり、フィルタ構成上の自由度がなくなる。例えば、誘電率ε=80の基板でマイクロストリップ線を形成する場合,信号線とグランドとの間の距離を600μmに大きくしても、50Ωの信号線の幅は20μmしか取れなく、伝送損失が高くなってしまう。従って、基板誘電率を高めにしてフィルタサイズを縮小するのは限界がある。
本発明は、小型化することができるフィルタ、通信モジュール、通信装置を実現することを目的とする。
本願に開示するフィルタは、基板と、前記基板上に形成され、入力端子と出力端子を両端に有する信号線路と、前記信号線路とグランドとの間に接続された共振線路を少なくとも一対備え、前記一対の共振線路は、同じ接点で前記信号線路に接続されているものである。
本願に開示する通信モジュールは、上記フィルタを備えている。
本願に開示する通信装置は、上記フィルタまたは上記通信モジュールを備えている。
本願の開示によれば、フィルタを小型化することができる。フィルタを小型化することにより、それを備えた通信モジュール、通信装置を小型化することができる。また、フィルタを小型化することにより、通過損失の低減にも寄与できる。
(実施の形態)
〔1.フィルタの構成〕
〔1−1.一対の共振線路を備えたフィルタ〕
図2は、本実施の形態のフィルタの一例である帯域通過フィルタの基本構成を示す回路図である。図2に示すように本実施の形態の帯域通過フィルタは、入力端子1に入力線路2aが接続されている。入力線路2aは、接点3に接続されている。接点3とグランドとの間には、共振線路2bと共振線路2cとが接続されている。すなわち、共振線路2b及び2cは、同じ接点で、かつ入力端子1と出力端子4とを接続する信号線路に対して並列に接続されている。接点3と出力端子4との間には、出力線路2dが接続されている。また、入力線路2a、共振線路2b及び2c、出力線路2dは、分布定数伝送線路よりなる。本実施の形態では、同じ接点で並列に接続された2つの共振線路を「一対の共振線路」と規定する。
なお、図2に示すフィルタの入出力インピーダンスは、例えば50Ωとした。また、共振線路2b及び2cのインピーダンスは、少なくとも入力線路2a及び出力線路2dのインピーダンスよりも低く、本実施の形態では一例として20Ωとした。
共振線路2b及び2cは、(λ/8)×n[nは自然数]の長さを有し、図2に示すフィルタにおいてはλ/4(すなわちn=2)の長さを有する。λは、本実施の形態のフィルタにおいて抽出する信号の周波数(共振線路2b、2cの共振周波数)の、分布定数伝送線路における波長(共振波長)である。また、共振線路2b及び2cは、一端がグランドに接続されている分布定数伝送線路により形成される共振器を意味している。このように共振線路2b及び2cの一端をグランドに接続することにより、入力線路2aを介して共振線路2b及び2cに入力された信号がそれぞれ共振線路2b及び2cの接地端で全反射されてフィルタリングされ、出力端子4から所望の周波数の信号を抽出することができる。
共振線路2b及び2cがグランド接続されている例を説明したが、開放端としても構わない。
上記のように共振線路を信号線路に対して並列に接続し、かつ複数の共振線路を信号線路における同じ位置で接続したことにより、従来技術のようにλ/2の線路長を有する共振器を複数直列接続するフィルタに比べて、入力線路2aと出力線路2dとの間の線路長を短くすることができるので、フィルタの信号線路方向のサイズを小さくすることができる。
また、図2に示すフィルタは、一対の共振線路2b及び2cが、入力端子1および出力端子4間を繋ぐ信号線路を挟んで互いに対向する位置に配置されている。これにより、共振線路を高密度に配置できるため、フィルタの信号線路方向のサイズをさらに小型化することができる。なお、共振線路は、信号線路に対して同じ側(片側)に配されていても、フィルタの信号線路方向のサイズを小型化することができる。
〔1−2.共振線路を複数対備えたフィルタ〕
図3は、共振線路を複数対備えたフィルタの回路図である。図3に示すフィルタは、入力端子1に入力線路12aが接続されている。入力線路12aは、接点13aに接続されている。接点13aとグランドとの間には、共振線路12bと共振線路12cとが接続されている。すなわち、共振線路12b及び12cは、接点13aに対して並列に接続されている。また、共振線路12b及び12cは、信号線路における同じ位置(接点13a)に接続されている。一方、フィルタの出力側には、接点13bと出力端子4との間に出力線路12gが接続されている。接点13bとグランドとの間には、共振線路12eと共振線路12fとが接続されている。すなわち、共振線路12e及び12fは、接点13bに対して並列に接続されている。また、共振線路12e及び12fは、信号線路における同じ位置(接点13b)に接続されている。本実施の形態では、共振線路12b,12c,12e,12fがグランド接続されている例を説明したが、開放端としても構わない。
接点13aと接点13bとの間には、カップリング回路14が接続されている。カップリング回路14は、フィルタにおける接点13aと接点13bとを結合する回路である、カップリング回路14は、例えば接点13a及び13b間に直列接続したキャパシタで実現することができる。
また、図3に示すフィルタにおいて、共振線路12b,12c,12e,12fのインピーダンスは、少なくともフィルタの入出力インピーダンスよりも小さくすることが好ましい。それは、入力端子1から入力された信号(電流)が共振線路12b,12c,12e,12fに流れ込むようにするためである。本実施の形態では、一例として、フィルタの入出力インピーダンスを50Ωとし、共振線路12b,12c,12e,12fのインピーダンスを20Ωとした。
図3に示すフィルタにおいて、入力端子1に入力された信号は、入力線路12aを介して共振線路12b及び12cに入力される。共振線路12b及び12cはそれぞれ一端がグランドに接続されているため、共振線路12b及び12cの共振条件に合う信号は共振線路12b及び12cの接地端で全反射されるが、共振条件に合わない信号はグランドに落ちるか入力端側に反射されて減衰される(フィルタリング)。共振線路12b及び12cの接地端で全反射された信号は、カップリング回路14を介して共振線路12e及び12fに入力される。共振線路12e及び12fでは、上記と同様に信号のフィルタリングが行われ、フィルタリングされた信号が出力線路12gを介して出力端子4から出力される。各共振線路では、所定の周波数帯域の信号のみフィルタリングされるため、出力端子4からは所定の周波数帯域の信号を出力することができる。
以下、カップリング回路14の具体構成について説明する。カップリング回路14は、上述したようにキャパシタのみで実現することもできるが、他にも様々な形態が考えられる。
図4A〜図4Cは、代表的なカップリング回路を示す図である。図4Aに示すカップリング回路は、入力側と出力側とを一つの回路ブロックで接続した回路を示す。例えば、回路ブロックは分布定数素子14aで接続した回路である。分布定数素子14aは、λ/4の線路長を有する。分布定数素子14aのインピーダンスは、フィルタの入出力インピーダンス(例えば50Ω)に近く、共振線路のインピーダンス(例えば20Ω)よりも高い。
図4Bに示すカップリング回路は、π型のカップリング回路の例である。π型のカップリング回路は入力側と出力側とを回路ブロック141を接続し、回路ブロック141の両端とグランドとを回路ブロック142および143で接続している。
図4Cに示すカップリング回路は、T型のカップリング回路の例である。T型のカップリング回路は入力側と出力側とを2つの回路ブロック145および146で接続し、その間とグランドとを回路ブロック147で接続している。これらの回路ブロックは、分布定数素子あるいは集中定数素子で実現する。分布定数素子は例えばマイクロストリップ線路などであり、集中定数素子はインダクタまたはキャパシタなどである。また、回路ブロックは、これらの素子単体あるいはその組合せ回路で実現する。
図4D〜図4Lは、π型のカップリング回路の例である。
図4Dに示すカップリング回路は、入力端子と出力端子とを接続する信号線路に接続されたキャパシタC1と、信号線路とグランド間に接続された2つのインダクタL1及びL2とを備えている。
図4Eに示すカップリング回路は、回路ブロック141が複数の素子を有する回路を示す。このカップリング回路は、信号線路に直列接続された2つの分布定数素子14b及び14c、キャパシタC11と、信号線路とグランド間に接続された2つのインダクタL11及びL12とを備えている。
図4Fに示すカップリング回路は、信号線路に接続された分布定数素子14dと、信号線路とグランドとの間に接続された2つのインダクタL21及びL22とを備えている。
図4Gに示すカップリング回路は、回路ブロック141〜143がそれぞれ並列接続したインダクタとキャパシタとを組にして有する回路を示す。このカップリング回路は、並列接続したインダクタL31とキャパシタC31との組を信号線路に接続し、並列接続したインダクタL32とキャパシタC32との組と、並列接続したインダクタL33とキャパシタC33との組とを信号線路とグランドとの間に接続した回路である。
図4Hに示すカップリング回路は、並列接続したインダクタL41とキャパシタC41との組を信号線路に接続し、2つのキャパシタC42及びC43を信号線路とグランドとの間に接続した回路である。
図4Iに示すカップリング回路は、分布定数素子14eを信号線路に接続し、並列接続されたインダクタL51とキャパシタC51との組と、並列接続されたインダクタL52とキャパシタC52との組とを信号線路とグランドとの間に接続した回路である。
図4Jに示すカップリング回路は、並列接続したインダクタとキャパシタとを組にしてさらに複数接続した回路ブロック141を有する回路を示す。このカップリング回路は、並列接続されたインダクタL60とキャパシタC61と、並列接続されたインダクタL61とキャパシタC62との組とを信号線路に直列に接続し、並列接続されたインダクタL62とキャパシタC63との組と、並列接続されたインダクタL63とキャパシタC64との組とを、信号線路とグランドとの間に接続した回路である。
図4Kに示すカップリング回路は、キャパシタC61と、並列接続されたインダクタL61とキャパシタC62との組とを信号線路に直列に接続し、並列接続されたインダクタL62とキャパシタC63との組と、並列接続されたインダクタL63とキャパシタC64との組とを、信号線路とグランドとの間に接続した回路である。
図4Lに示すカップリング回路は、インダクタL71と、並列接続されたインダクタL71とキャパシタC71との組とを信号線路に接続し、並列接続されたインダクタL73とキャパシタC72との組と、並列接続されたインダクタL74とキャパシタC73との組とを、信号線路とグランドとの間に接続した回路である。
図4M、図4Nは、T型のカップリング回路の例である。図4Mは、並列接続されたキャパシタC91及びインダクタL91の組と、並列接続されたキャパシタC92とインダクタL92との組とを、入力端子と出力端子とを接続する信号線路に直列に接続し、並列接続されたキャパシタC93とインダクタL93との組を信号線路とグランドとの間に接続した回路である。図4Nに示すカップリング回路は、信号線路に直列に接続された分布定数素子14f及び14gと、信号線路とグランドとの間に接続された分布定数素子14hとを備えた回路である。
なお、π型あるいはT型でかつ集中定数素子を含むカップリング回路は、図4E、図4F、図4Iに示すように一部に分布定数素子を接続することができる。
また、π型のカップリング回路は、入力端子と出力端子との間に接続された信号線上に2カ所の接続点を有し、各接続点とグランドとの間には集中定数素子または分布定数素子が接続されている。各接続点とグランドとの間に接続される素子は、対称性を有することが好ましい。例えば、図4Dにおけるa1部とa2部とには、同じ素子を備えることが好ましい。a1部とa2部とに同じ素子を備える構成であれば、図4Dなどに示すようにインダクタを備えてもよいし、図4Hに示すようにキャパシタを備えてもよいし、図4Gなどに示すように複数の集中定数素子を備えてもよい。
図3に示すように、共振線路を信号線路に対して並列に接続し、かつ複数の共振線路を信号線路における同じ位置で接続したことにより、従来技術のようにλ/2の線路長を有する共振器を複数直列接続するフィルタに比べて、入力線路12aと出力線路12dとの間の線路長を短くすることができるので、フィルタの信号線路方向のサイズを小さくすることができる。
また、図3に示すフィルタは、対をなす共振線路12b及び12cと、対をなす共振線路12e及び12fとが、それぞれ入力端子1および出力端子4間を繋ぐ信号線路を挟んで互いに対向する位置に配置されている。このような構成により、線路を高密度に配置できるため、フィルタの信号線路方向のサイズをさらに小型化することができる。
なお、図3に示すフィルタは、共振線路12b,12c,12e,12fの長さが、それぞれλ/4であるが、(λ/8)×n[λは共振波長、nは自然数]とすることができる。例えば、線路長がλ/8の共振線路(すなわちn=1)を用いても、同様の効果を得ることができる。線路長がλ/8の共振線路を接続する場合は、図3に示すようにそれぞれの共振線路12b,12c,12e,12fの一端をグランドに接続する。このように線路長がλ/8の共振線路12b,12c,12e,12fを接続することで、入力端子1から入力された信号が接点13aを介して共振線路12bに入力され、共振線路12bの共振条件に合う信号のみ接地端で全反射され、共振条件に合わない信号はグランドに落ちるか入力側へ反射されて減衰する。共振線路12bの接地端で全反射した信号は、接点13aを介して共振線路12cに入力され、共振線路12cの共振条件に合う信号のみ接地端で全反射され、共振条件に合わない信号はグランドに落ちるか入力側へ反射されて減衰する。共振線路12cの接地端で全反射された信号は、入力端子1から接点13aに入力される信号とλ/2の位相差があり、干渉する。これによって、共振線路12bと12cとを合わせて一つの共振器として機能する。共振された信号は、カップリング回路14を介して共振線路12e及び12fにおいて、上記と同様に再度共振された後、出力線路12gを介して出力端子4から出力される。これにより、出力端子4から所望の周波数帯域の信号を出力することができる。
なお、入力端子1に入力された信号のうち共振線路における共振条件に合わない波長を持つ信号は、グランドに落ちるか、入力端側に反射されるかにより減衰されて、出力端子4から出力することができない。このようにしてフィルタとして機能する。
なお、図3に示すフィルタは、一つのカップリング回路14で入力側の一対の共振線路と出力側の一対の共振線路とを接続している。フィルタに含まれる一対の共振線路の数は、2つに限らず3以上の多数接続することが可能である。対をなす共振線路をさらに多く接続するためには、対をなす共振線路と対をなす共振線路との間の信号をカップリングするカップリング回路で接続し、このような接続構造を繰り返すことで実現できる。これにより、フィルタ全体に含まれる共振器の段数が増え、急峻性の良いフィルタが実現できる。
図5は、フィルタの他の構成例を示す回路図である。図5に示すフィルタは、入力端子1と接点23aとの間に入力線路22aが接続されている。接点23aとグランドとの間には、共振線路22bが接続されている。接点23aと接点23bとの間には、第1のカップリング回路24が接続されている。接点23bとグランドとの間には、共振線路22cと共振線路22dとが接続されている。接点23bと接点23cとの間には、第2のカップリング回路25が接続されている。接点23cとグランドとの間には、共振線路22eが接続されている。接点23cと出力端子4との間には、出力線路22fが接続されている。
第1のカップリング回路24,第2のカップリング回路25には、π型カップリング回路あるいはT型カップリング回路を用いることができる。また、π型カップリング回路あるいはT型カップリング回路には、図4A〜図4Nに示すカップリング回路のうちいずれか一つを採用することができる。また、π型あるいはT型に接続されかつ集中定数素子を含むカップリング回路は、図4E、図4F、図4Iに示すように一部に分布定数素子を接続することができる。
このように、共振線路22c,22dを信号線路における同一箇所において並列に接続したことにより、入力端子1と出力端子4とを結ぶ信号線路の線路長を短くすることができ、フィルタの信号線路方向のサイズを小さくすることができる。
また、図5に示すフィルタでは共振線路22c,22eをグランドに接続する例を説明したが、このグランドに接続した端子を開放端とすることができる。この場合、共振線路22bにおいてフィルタの通過帯域の低周波側の信号レベルを減衰させ、共振線路22eにおいてフィルタの通過帯域の高周波側の信号レベルを減衰させることができるので、フィルタの通過帯域特性の急峻性を向上させることができる。
なお、図5に示すフィルタは、第1のカップリング回路24及び第2のカップリング回路25で入力側の線路と出力側の線路とを接続しているが、カップリング回路の数を増やすことにより、信号線路とグランドとの間に接続されかつ対をなす共振線路をさらに多く接続することができる。
〔1−3.共振線路のグランドの共通化〕
図3及び図5に示す共振線路12b,12c,12e,12fの接地端は、各々独立したグランドに接続してもよいし、互いに同じグランドに接続してもよい。
図6Aは、フィルタの具体構成を示す平面図である。図6Aに示すフィルタにおいて、カップリング回路14は図4Fに示す回路を採用した。図6Aに示す構成要素において、図3及び図4Fに示す各構成要素と同一の構成要素については同一符号を付与した。また、図6Aにおいて、各々独立したグランドに接続した共振線路12b’,12c’,12e’,12f’を破線で図示し、同一グランドに接続した共振線路12b,12c,12e,12fを実線で図示した。共振線路12b,12c,12e,12f,12b’,12c’,12e’,12f’の線路長は、いずれもW1とした。また、共振線路12b,12c,12e,12fおよび分布定数素子14dは、それぞれ共振線路に複数のキャパシタ電極が跨るように懸架されている(キャパシタ電極の説明は後述)。また、共振線路12bと共振線路12eとは、同一のグランドG1に接続されている。また、共振線路12cと共振線路12fとは、同一のグランドG2に接続されている。また、共振線路12b’は、グランドG1’に接続されている。また、共振線路12c’は、グランドG2’に接続されている。また、共振線路12e’は、グランドG3’に接続されている。また、共振線路12f’は、グランドG4’に接続されている。グランドG1’〜G4’は、各々物理的に独立している。
図6A中の破線で示すように、共振線路12b’,12e’を、両端が入出力端子に接続された信号線路に対して直交するように配置し、各々独立したグランドG1’,G3’に接続した場合は、信号線路に対して直交する方向に寸法W2(W2=W1)の配置スペースを要する。同様に、共振線路12c’,12f’を、両端が入出力端子に接続された信号線路に対して直交するように配置し、各々独立したグランドG2’,G4’に接続した場合は、信号線路に対して直交する方向に寸法W2と同じ寸法の配置スペースを要する。したがって、フィルタの縦方向(信号線路に対して直交する方向)のサイズは、W2の約2倍のW4が必要であった。
これに対して図6A中の実線で示すように、共振線路12bと共振線路12eとをグランドG1に接続し、かつ信号線路に対して斜めに配置することにより、共振線路12b及び12eを配置するためのスペースは、信号線路に対して直交する方向に寸法W3(W3<W2)で済む。同様に、共振線路12c及び12fをグランドG2に接続し、かつ信号線路に対して斜めに配置することにより、共振線路12c及び12fを配置するためのスペースは、信号線路に対して直交する方向に寸法W3と同じ寸法で済む。したがって、フィルタの縦方向の寸法W5(W5=W3×2)を寸法W4よりも小さくすることができる。このように、複数の共通線路を同じ接点でグランドに接続することにより、共振線路が配置されるスペースを小さくすることができる。
図6Bは、共振線路を同一グランドに接続したフィルタの他例を示す。図6Bに示すフィルタにおいて、図6Aに示すフィルタと異なるのは、共振線路12b,12c,12e,12fの形状を、円弧状にした点である。各共振線路12b,12c,12e,12fの線路長W11は、図6Aに示す共振線路の線路長W1と同じである。
このように、共振線路12b,12c,12e,12fを円弧状としたことにより、信号線路に対して直交する方向の共振線路の配置スペースの寸法W12を、図6Aに示す寸法W2よりも小さくすることができる。したがって、フィルタの縦方向(信号線路に対して直交する方向)の寸法W13を、図6Aに示す寸法W4よりも小さくすることができる。
また、信号線路に対して直交する方向の共振線路の配置スペースの寸法W12を、図6Aに示す寸法W3よりもさらに小さくすることができる。したがって、フィルタの縦方向(信号線路に対して直交する方向)の寸法W13を、図6Aに示す寸法W5よりもさらに小さくすることができる。
上述した小型化できるフィルタ構成は、損失の低減にも有利である。フィルタの損失は基本的に線路の導体損失に依存する。フィルタを小型化することにより、フィルタの線路長が短縮でき、信号の通過損失を低減させることができる。
また、フィルタを小型化することによって、フィルタ製造時に一枚のウエハに作製することができるフィルタの数(取れ数)を増やすことができ、素子単体のコストを低減させることができる。
本実施形態にかかるフィルタは、例えば、MEMS可変キャパシタを用いた小型GHz帯周波数可変フィルタに用いることができる。
〔2.可変フィルタの構成〕
図3に示す共振線路12b,12c,12e,12fは、基板内に配されたグランド(後述)との間における静電容量は固定値であるため、図3に示すフィルタは通過帯域が固定である。これに対して、図3に示す共振線路12b,12c,12e,12fおよびカップリング回路14に可動キャパシタ電極(後述)を搭載することにより、通過帯域を可変することができる可変フィルタを実現することができる。また、図5に示すフィルタにおける共振線路22b,22c,22d,22eおよびカップリング回路24,25に可動キャパシタ電極を搭載することにより、通過帯域を可変することができる可変フィルタを実現することができる。共振線路に可動キャパシタ電極を搭載することで、線路長を短くすることができ、さらに小型化できると共に、通過帯域を可変することができる。また、カップリング回路に可動キャパシタ電極を搭載することで、共振線路で可変した通過帯域に応じたカップリング回路になるよう、共振線路長を等価的に変化させることができる。なお、これらの可変フィルタは可変キャパシタを有する例を説明したが、可変インダクタで実現してもよい。さらに可変フィルタは、可変キャパシタおよび可変インダクタを適宜組み合わせて実現してもよい。
図4D、図4G、図4H、図4J、図4K、図4L、図4Mに示すように、集中定数素子のみを含むカップリング回路を可変フィルタに備える場合は、カップリング回路に含まれる集中定数素子のうち少なくとも一つの集中定数素子を可変素子に変更すればよい。例えば、図4Dに示すカップリング回路を備えた場合、キャパシタC1を可変キャパシタに変更することにより、通過帯域に応じたカップリング回路を実現することができる。
また、図4E、図4F、図4Iに示すように集中定数素子と分布定数素子とを備えたカップリング回路を可変フィルタに備える場合は、カップリング回路に含まれる集中定数素子に可動キャパシタ電極を備えることにより、通過帯域に応じたカップリング回路を実現することができる。
また、図4Nに示すように複数の分布定数素子を備えたカップリング回路をフィルタに備えた場合は、カップリング回路に含まれる分布定数素子14f,14g,14hのうち少なくとも一つの分布定数素子に可動キャパシタ電極を備えることにより、可変フィルタを実現することができる。
本実施の形態のように共振線路に可変キャパシタ電極を備えることにより、共振線路における静電容量を変化させることができ、共振線路における信号の通過帯域を変化させることができる。このように通過帯域が可変である共振線路をフィルタに備えることにより、可変フィルタを実現することができる。
以下、可動キャパシタ電極を備えた共振線路(以下、可変キャパシタ素子と称する)の具体構成について説明する。
〔2−1.可変キャパシタ素子の構成〕
図7Aは、可変キャパシタ素子の平面図である。図7Bは、図7AにおけるZ−Z部の断面図である。
図7A及び図7Bに示す可変キャパシタ素子は、基板31、信号線32、可動キャパシタ電極33、駆動電極35a及び35b、誘電体ドット36、アンカー部37a及び37b、電極パッド38、パッケージング部材39を備え、特定の高周波数帯域にある電磁波ないし電気信号の通過を許容するフィルタの一部として構成されている。パッケージング部材39は可変キャパシタ素子部のみではなく、フィルタ全体を封止する。
基板31は、多層の内部配線(配線パターン31c)を有するLTCCウェハである(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)。基板31は、複数層(図7Bに示す基板は5層)の絶縁層31aを互いに接合して形成されている。各絶縁層31aは、一方の主面から他方の主面に至るまで形成された貫通孔内に導電部を備えたビア31bが形成されている。また、各絶縁層31aの少なくとも1つの間には、配線パターン31cが挟持されている。また、基板31において最も第1面31e側に位置する配線パターン31cの一部は、グランド接続されたグランド線31dである。グランド線31dは、絶縁層31aを挟んで信号線32に対向し、グランド線31dと信号線32とは間隔CG2を有する。図7Bに示したグランド線31dは、第1面に近い位置に配置する例を記載したが、これに限るものではなく、他の層に配置しても構わない。その場合、グランド線31dは、複数の絶縁層31aを挟んで信号線32に対向する。そのため、グランド線31dと信号線32との間隔CG2は、絶縁層31aを複数重ねた厚みとなる。また、配線パターン31c間、配線パターン31cと電極パッド38との間、は、ビア31bによって接続されている。場合によって、配線パターン31cと信号線32との間はビア31bによって接続されても良い。また、絶縁層31aは、LTCCで実現している。しかしLTCCに限らず、他の誘電体で形成してもよい。
信号線32は、図7Aに示すようにその長手方向の両端に端子部32aおよび端子部32bを備え、端子部32a,32b間を電気信号が通過する導体パターンである。端子部32a,32bは、配線基板上の他の素子に接続するか、開放端とするか、配線基板31内の所定のビア31bおよび配線パターン31cを介して所定の電極パッド38に電気的に接続されている(不図示)。また、信号線32は、インピーダンスが例えば20Ωの分布定数伝送線路であり、例えばCu,Ag,Au,Al,W,Moなどの低抵抗金属材料で形成されている。また、信号線32の厚さは、例えば0.5〜20μmである。
可動キャパシタ電極33は、その両端が基板31の第1面31e上に形成されたアンカー部37a及び37bに固定され、両端を除く主部が空隙を挟んで信号線32、駆動電極35a及び35bに対向している。可動キャパシタ電極33は、信号線32に対向する部分に厚肉部33aが形成されている。厚肉部33aと信号線32とは、ギャップCG1を挟んで対向している。可動キャパシタ電極33は、アンカー部37a及び37b、ビア31b、配線パターン31cを介して、グランドに接続されている。可動キャパシタ電極33は、弾性変形可能な材料で形成され、例えばAu,Cu,Alなどの低抵抗金属より形成することができる。可動キャパシタ電極33が可動して、可動キャパシタ電極33と信号線32との距離が変化することで、容量が変化する可変キャパシタ素子を実現している。また、可動キャパシタ電極33と信号線32との間のギャップCG1は、例えば0.1〜10μmとすることができる。また、可動キャパシタ電極33およびグランド線31dは、本発明おけるグランド配線部の一例である。
駆動電極35a及び35bは、信号線32に隣接して配置され、可動キャパシタ電極33の一部に対向する。駆動電極35a及び35bは、可動キャパシタ電極33との間に静電引力を発生させて、可動キャパシタ電極33を矢印Aに示す方向へ変位させることができる。駆動電極35a及び35bにより、可動キャパシタ電極33が変位することにより、信号線32と可動キャパシタ電極33との間の静電容量が変化する。駆動電極35a及び35bは、例えば、SiCr薄膜などの高抵抗金属薄膜により形成されている。また、駆動電極35a及び35bと可動キャパシタ電極33との間のギャップは、pull-in現象の発生を抑えるため、可動キャパシタ電極33と信号線32との間のギャップCG1の3倍以上にすることが好ましい。
誘電体ドット36は、信号線32上に設けられており、例えばAl23,SiO2,SixNy,SiOCなどの誘電体材料より形成されている。誘電体ドット36は、信号線32と可動キャパシタ電極33とが短絡することを防ぐことができるとともに、信号線32と可動キャパシタ電極33との間のギャップCG1において発生する静電容量を増大させることができる。静電容量を増大することにより、フィルタ周波数可変域を広く確保することができるので、好ましい。
パッケージング部材39は、基板31の第1面31eに接合され、基板31の第1面31e上に形成されているフィルタの諸構造を封止している。
図7A及び図7Bに示す可変キャパシタ素子において、信号線32と基板31内に配されたグランド配線部31dとの間に間隔CG2が形成されていることにより、第1のキャパシタが形成されている。また、信号線32と可動キャパシタ電極33との間にギャップCG1が形成されていることにより、第2のキャパシタが形成されている。このように、2つのキャパシタを形成することにより、静電容量を大きくすることができる。したがって、このキャパシタは、従来のように第1のキャパシタしか備えていないマイクロストリップ線路または分布定数素子に比べて、静電容量を大きくすることができる。すなわちこのキャパシタは、可動キャパシタ電極を備えていないマイクロストリップ線路または分布定数素子に比べて、静電容量を大きくすることができる。静電容量を大きくすることにより、可変可能な分布定数素子を含む共振線路の物理的な信号線路長を短くすることができる。よって、このような可変キャパシタ素子をフィルタに備えることで、共振線路の線路長を短くすることができ、フィルタを小型化することができる。
また、電極パッド38、ビア31b、配線パターン31cを介して駆動電極35a及び35bに電圧を印加することにより、駆動電極35a及び35bと可動キャパシタ電極33との間に静電引力を生じさせ、可動キャパシタ電極33を矢印Aに示す方向へ弾性変位させることができる。可動キャパシタ電極33を変位させることにより、信号線32と可動キャパシタ電極33とのギャップCG1を小さくすることができる。ギャップCG1を小さくすることにより、第2のキャパシタにおける静電容量を増大させることができる。静電容量を増大させることにより、分布定数素子の線路長が等価的ないし実質的に増大し、共振される周波数帯域が低周波側へシフトする。
また、駆動電極35aおよび35bは、可動キャパシタ電極33毎に分割してあると共に、個別に電圧を印加できるようになっている。そして、分割された駆動電極35a,35bに選択的に電圧を印加することで、複数ある可動キャパシタ電極33を選択的に変位させる。可動キャパシタ電極33を選択的に変位させることで、静電容量の変化に大小をつけることができる。
また、駆動電極35a及び35bに印加する電圧を低下させることにより、駆動電極35a及び35bと可動キャパシタ電極33との間に発生する静電引力が低下するので、可動キャパシタ電極33の変位量が減少し矢印Bに示す方向へ復帰させることができる。可動キャパシタ電極33を矢印Bに示す方向へ復帰させることにより、信号線32と可動キャパシタ電極33とのギャップCG1が大きくなり、第2のキャパシタにおける静電容量が低下する。静電容量が低下することにより、分布定数素子の線路長が等価的ないし実質的に低下する。
このように、駆動電極35a及び35bに印加する電圧を調節して、可動キャパシタ電極33を信号線32に近づく方向に変位させることにより、第2のキャパシタを可変キャパシタにすることができ、可変フィルタ素子における信号の通過周波数帯域を変化させることができる。このような可変キャパシタ素子を、例えば図3に示す共振線路12b,12c,12e,12fおよびカップリング回路14や図5に示す共振線路22b,22c,22d,22eおよびカップリング回路24及び25に備えることで、可変フィルタを実現することができる。
また、周知のCPW信号線路は、基板の同一面上に信号線(例えば1本)とグランド線(例えば2本)とを備えており、信号線とグランド線との間に可動キャパシタ電極を駆動させるための駆動電極を配置することになるため、駆動電極の配置スペースに限りがあり、駆動電極の面積を大きくするのには限界がある。これに対して、図7A及び図7Bに示すようにマイクロストリップ線路を用いた可変フィルタ素子は、基板における信号線が形成された面と同一面上にグランド線を備えていないため、基板31上において駆動電極35a及び35bの面積を大きく確保することができる。駆動電極35a及び35bの面積を大きく確保することにより、可動キャパシタ電極33を変位させる際に駆動電極35a及び35bに印加する電圧を低減することができ、可動キャパシタ電極33の可動範囲を大きく確保することができる。また、駆動電圧を低減することにより、消費電力を低減することができる。
また、駆動電極35a及び35bの面積を増大することにより、高周波信号によるSelf-Actuation現象を抑制することが可能と考えられる。すなわち、駆動電極35a及び35bの面積を増大することにより、駆動電極35a及び35bと可動キャパシタ電極33との間に発生する静電引力を大きくすることができるので、硬度が高い弾性体で可動キャパシタ電極33を形成することができる。さらに、駆動電極35a及び35bとキャパシタ部CAPとの面積比が大きい程、キャパシタ部CAPを通る高周波信号により信号線32と可動キャパシタ電極33との間に生じるクーロン力は、駆動電圧により駆動電極35a及び35bと可動キャパシタ電極33との間に発生するクーロン力に比べて無視できるようになる。従って、本実施の形態では、平行平板型可変キャパシタのSelf-Actuation現象の抑制に有利であると考えられる。
〔2−2.可変フィルタ素子の製造方法〕
図8A〜図8Gは、可変フィルタ素子の製造プロセスを示す断面図である。
まず、図8Aに示すように、多層の内部配線を有する基板31の第2面31f上に、電極パッド38を形成する。電極パッド38は、例えば、スパッタリング法により所定の金属材料を基板31の第2面31f上に成膜した後、所定のウェットエッチングまたはドライエッチングにより当該金属膜をパターニングすることによって、形成することができる。或は、電極パッド38の形成においては、無電解めっき法や電気めっき法を採用することができる。次に、基板31の第1面31e上に駆動電極35a及び35bを形成する。駆動電極35a及び35bは、例えば、スパッタリング法により所定の金属材料を基板31上に成膜した後、所定のウェットエッチングまたはドライエッチングにより当該金属膜をパターニングすることによって、形成することができる。駆動電極35a及び35bを形成する工程の後、駆動電極35a及び35bを覆うように絶縁膜を形成する工程を実施してもよい。次に、基板31の第1面31e上に信号線32,アンカー部37a及び37bを形成する。信号線32は、例えば、信号線32,アンカー部37a及び37bに対応する開口部を有するレジストパターンを基板31上にパターン形成した後、めっき法(無電解めっき又は電気めっき)により当該開口部内に所定の金属材料(例えばAu)を堆積成長させることによって、形成することができる。
次に、図8Bに示すように、信号線32上に誘電体ドット36を形成する。誘電体ドット36は、例えば、基板31の第1面31e側に所定の誘電体膜を形成した後、当該誘電体膜をパターンニングすることによって、形成することができる。
次に、図8Cに示すように、犠牲層40を形成する。犠牲層40は、選択的にエッチングできる除去しやすい材料よりなる。
次に、図8Dに示すように、可動キャパシタ電極33を犠牲層40上に形成する。可動キャパシタ電極33は、例えば、スパッタリング法により所定の金属材料を犠牲層40上に成膜した後、所定のウェットエッチングまたはドライエッチングにより当該金属膜をパターニングすることによって、形成することができる。或は、可動キャパシタ電極33は、無電解めっき法や電気めっき法を採用して形成することができる。
次に、図8Eに示すように、可動キャパタ電極33の一部をなす厚肉部33aを形成する。厚肉部33aは、例えば、厚肉部33aに対応する開口部を有するレジストパターンを可動キャパシタ電極33および犠牲層40上にわたってパターン形成した後、めっき法(無電解めっき又は電気めっき)により当該開口部内に所定の金属材料(例えばAu)を堆積成長させることによって、形成することができる。
次に、図8Fに示すように、犠牲層40を除去する。これにより、可動キャパシタ電極33と、信号線32、駆動電極35a及び35b、誘電体ドット36との間に空隙を形成することができる。
次に、図8Gに示すように、基板31の第1面31e側にパッケージング部材39を接合する。パッケージング部材39を基板31に接合する手法としては、例えば、陽極接合法、直接接合法、常温接合法、および共晶接合法が挙げられる。パッケージング部材39は、LTCCを加工して作製されたものであり、基板31の各可変フィルタ形成区画に対応する箇所に予め凹部39aが設けられている。
次に、基板31およびパッケージング部材39を各可変フィルタ毎に切断する。
以上により、可変フィルタが完成する。
バッケージング部材としてLTCCを用いたが、樹脂やセラミックなどの誘電体や高抵抗シリコンを用いることもできる。
〔3.通信モジュールの構成〕
図9は、本実施の形態の帯域通過フィルタを備えた通信モジュールの一例を示す。図9に示すように、デュープレクサ62は、受信フィルタ62aと送信フィルタ62bとを備えている。また、受信フィルタ62aには、例えばバランス出力に対応した受信端子63a及び63bが接続されている。また、送信フィルタ62bは、パワーアンプ64を介して送信端子65に接続している。ここで、受信フィルタ62a及び送信フィルタ62bには、本実施の形態における帯域通過フィルタが含まれている。
受信動作を行う際、受信フィルタ62aは、アンテナ端子61を介して入力される受信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、受信端子63a及び63bから外部へ出力する。また、送信動作を行う際、送信フィルタ62bは、送信端子65から入力されてパワーアンプ64で増幅された送信信号のうち、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、アンテナ端子61から外部へ出力する。
また、図10は、図9に示す通信モジュールにおける受信フィルタ62aに代えて可変受信フィルタ66aを備え、送信フィルタ62bに代えて可変送信フィルタ66bを備えた通信モジュールである。可変受信フィルタ66a及び可変送信フィルタ66bには、本明細書における〔2.可変フィルタの構成〕の欄で説明した可変フィルタを備えている。通過帯域を可変できない受信フィルタ及び送信フィルタでは、周波数帯域が異なる複数の高周波信号を送受信可能なマルチバンド対応の通信モジュールを実現しようとした場合、周波数帯域に対応した受信フィルタ及び送信フィルタと送受信する周波数帯域毎にフィルタを切り替えるスイッチ回路とを備える必要があり、通信モジュールが大型化していた。これに対して、図10に示す通信モジュールによれば、それぞれ一つの可変受信フィルタ66a及び可変送信フィルタ66bを備えたことにより、フィルタの数を削減することができ、マルチバンド対応の通信モジュールを小型化することができる。
以上のように本実施の形態の帯域通過フィルタを、通信モジュールの受信フィルタ62a及び送信フィルタ62bに備えることで、通信モジュールを小型化することができる。すなわち、従来のフィルタでは、複数の共振線路を直列接続する構成を採用していたので信号線路方向のサイズが大型化していたが、本実施の形態では複数の共振線路を同一位置において並列接続する構成を採用しているため、フィルタにおける信号線路方向のサイズを小さくすることができる。したがって、小型化されたフィルタを搭載することにより通信モジュールを小型化することができる。特に、高周波帯域の通信を行う通信モジュールはフィルタの段数が多くなるため、本実施の形態のように信号線路方向のサイズが小さいフィルタを搭載することにより、通信モジュールを小型化することができる。特に、高周波帯域の通信を行う通信モジュールはフィルタの段数が多くなるため、本実施の形態のように信号線路方向のサイズが小さいフィルタを搭載することにより、高周波帯域の通信に対応した通信モジュールを小型化することができる。
また、フィルタを小型化することにより通過損失を低減することができるため、通信特性が優れた通信モジュールを実現することができる。
なお、図9及び図10に示す通信モジュールの構成は一例であり、他の形態の通信モジュールに本発明の帯域通過フィルタを搭載しても、同様の効果が得られる。
〔4.通信装置の構成〕
図11は、本実施の形態の帯域通過フィルタまたは通信モジュールを備えた通信装置の一例として、携帯電話端末のRFブロックを示す。また、図11に示す通信装置は、GSM(Global System for Mobile Communications)通信方式及びW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)通信方式に対応した携帯電話端末を一例として示している。また、本実施の形態におけるGSM通信方式は、850MHz帯、950MHz帯、1.8GHz帯、1.9GHz帯に対応している。また、携帯電話端末は、図11に示す構成以外にマイクロホン、スピーカー、液晶ディスプレイなどを備えているが、本実施の形態における説明では不要であるため図示を省略した。ここで、受信フィルタ73a,77,78,79,80、および送信フィルタ73bには、本実施の形態における帯域通過フィルタが含まれている。
まず、アンテナ71を介して入力される受信信号は、その通信方式がW−CDMAかGSMかによってアンテナスイッチ回路72で、動作の対象とするLSIを選択する。入力される受信信号がW−CDMA通信方式に対応している場合は、受信信号をデュープレクサ73に出力するように切り換える。デュープレクサ73に入力される受信信号は、受信フィルタ73aで所定の周波数帯域に制限されて、バランス型の受信信号がLNA74に出力される。LNA74は、入力される受信信号を増幅し、LSI76に出力する。LSI76では、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御する。
一方、信号を送信する場合は、LSI76は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ75で増幅されて送信フィルタ73bに入力される。送信フィルタ73bは、入力される送信信号のうち所定の周波数帯域の信号のみを通過させる。送信フィルタ73bから出力される送信信号は、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
また、入力される受信信号がGSM通信方式に対応した信号である場合は、アンテナスイッチ回路72は、周波数帯域に応じて受信フィルタ77〜80のうちいずれか一つを選択し、受信信号を出力する。受信フィルタ77〜80のうちいずれか一つで帯域制限された受信信号は、LSI83に入力される。LSI83は、入力される受信信号に基づいて音声信号への復調処理を行ったり、携帯電話端末内の各部を動作制御する。一方、信号を送信する場合は、LSI83は送信信号を生成する。生成された送信信号は、パワーアンプ81または82で増幅されて、アンテナスイッチ回路72を介してアンテナ71から外部に出力される。
また、図12は、図11に示す通信装置における受信フィルタ73aに代えて可変受信フィルタ84を備え、送信フィルタ73bに代えて可変送信フィルタ85を備えた通信装置である。また、受信フィルタ77,78,79,80に代えて可変受信フィルタ86を備えている。可変受信フィルタ84及び86、可変送信フィルタ85には、本明細書における〔2.可変フィルタの構成〕の欄で説明した可変フィルタを備えている。なお、図示は省略するが、可変受信フィルタ84及び86、可変送信フィルタ85における通過帯域は、別途設けられている制御回路により調整される。
以上のように信号線路方向のサイズが小型化されたフィルタを通信装置に備えることにより、通信装置を小型化することができる。すなわち、従来のフィルタでは、複数の共振線路を直列接続する構成を採用していたので信号線路方向のサイズが大型化していたが、本実施の形態では複数の共振線路を同一位置において並列接続する構成を採用しているため、フィルタにおける信号線路方向のサイズを小さくすることができる。したがって、小型化されたフィルタを搭載することにより通信装置を小型化することができる。特に、高周波帯域の通信を行う通信モジュールはフィルタの段数が多くなるため、本実施の形態のように信号線路方向のサイズが小さいフィルタを搭載することにより、高周波帯域の通信に対応した通信装置を小型化することができる。
また、可変フィルタを備えることにより、1つのフィルタで複数の周波数帯域の信号を選択的に送受信することができるので、フィルタの数を削減することができ、通信装置を小型化することができる。また、フィルタを小型化することにより通過損失を低減することができるため、通信特性が優れた通信装置を実現することができる。
本実施の形態の通信装置は、使用周波数帯域が約800MHz〜6GHzの移動体通信装置に有用であり、特に2GHz帯以上の周波数帯域を使用して通信を行う移動体通信装置に有用である。
〔5.実施の形態の効果、他〕
本実施の形態によれば、共振器として機能する共振線路を信号線路とグランド間に接続し、かつ複数の共振線路を信号線路における同一位置において接続したことにより、従来技術のように複数の共振線路を信号線路方向に直列に接続する構成に比べて、信号線路方向の線路長を短くすることができるため、フィルタの信号線路方向のサイズを小型化することができる。
また、共振線路の一端をグランドに接続することにより、共振線路の線路長を短縮することができる。従来技術のように信号線路に対して直列に共振線路を接続する場合は、共振線路の線路長はλ/2であったが、本実施の形態のように信号線路に対して共振線路を並列に接続し、かつ共振線路の一端をグランドに接続することにより、共振条件に合った信号を全反射させることができるので、共振線路の長さをλ/8×n(nは自然数)にすることができる。
また、共振線路を信号線路に対して並列に接続した構成とすることにより、基板上において高密度に実装することができるため、フィルタを小型化することができる。
また、複数の共振線路を共通グランドに接続する構成とすることにより、共振線路を信号線路に対して傾斜して配置することができるため、フィルタの縦方向(信号線路に対して直交する方向)のサイズを小型化することができる。
また、複数の共振線路を共通グランドに接続するとともに、一端が信号線路に接続され他端がグランドに接続された共振線路を略円弧状にしたことにより、フィルタの縦方向(信号線路に対して直交する方向)のサイズを小型化することができる。
また、共振線路にキャパシタ電極を懸架したことにより、共振線路における静電容量を増大することができるので、共振線路の物理的な線路長を短くすることができ、フィルタの縦方向(信号線路に対して直交する方向)のサイズを小型化することができる。
また、共振線路に可動キャパシタ電極を懸架し、可動キャパシタ電極を変位させて共振線路における静電容量を変化させることにより、等価的に線路長を変化させることができるので、可変フィルタを実現することができる。可変フィルタを通信モジュールや通信装置の受信フィルタや送信フィルタに採用することにより、マルチバンド対応の通信モジュールや通信装置において送信フィルタや受信フィルタを通過帯域毎に備える必要がないため、通信モジュール及び通信装置を小型化することができる。
また、フィルタを小型化することにより、フィルタの製造時、1枚のウェハから取得できるフィルタモジュールの数を増やすことができ、製造コストを低減することができる。
(付記1)
基板と、
前記基板上に形成され、入力端子と出力端子を両端に有する信号線路と、
前記信号線路とグランドとの間に接続された共振線路を少なくとも一対備え、
前記一対の共振線路は、同じ接点で前記信号線路に接続されている、フィルタ。
(付記2)
前記共振線路の対を複数対有し、前記複数対の共振線路の間に配置されるカップリング部をさらに備える、付記1記載のフィルタ。
(付記3)
前記カップリング部は、
信号線路に接続された回路ブロックと、当該回路ブロックの両側とグランドとの間にそれぞれ接続された回路ブロックとを有する、π型カップリング回路を備える、付記2に記載のフィルタ。
(付記4)
前記カップリング部は、
信号線路に直列に接続された2つの回路ブロックと、それらの回路ブロック間とグランドとの間に接続された回路ブロックとを有する、T型カップリング回路を備える、付記2記載のフィルタ。
(付記5)
前記一対の共振器線路は、前記信号線路を挟んで互いに対向する位置に接続されている、付記1または2記載のフィルタ。
(付記6)
前記一対の共振線路のそれぞれの長さは、(λ/8)×n[λは共振波長、nは自然数]である、付記1,2,5のうちいずれかに記載のフィルタ。
(付記7)
前記共振線路の特性インピーダンスは、前記信号経路における特性インピーダンスよりも低い、付記2記載のフィルタ。
(付記8)
前記複数の共振線路は、同一のグランドに接続されている、付記1,2,5,6のうちいずれか一項に記載のフィルタ。
(付記9)
前記共振線路は、略円弧状に形成されている、付記7に記載のフィルタ。
(付記10)
前記共振線路の上部に空隙を挟んで配置された可動キャパシタ電極と、
前記可動キャパシタ電極と前記共振線路との距離を変位させる駆動電極とを含む可変キャパシタをさらに備える、付記1〜8のいずれか一項に記載のフィルタ。
(付記11)
前記基板は、多層の内部配線を有する低温同時焼成セラミック基板である、付記1または10記載のフィルタ。
(付記12)
前記カップリング部は、可変キャパシタまたは可変インダクタを備えた、付記2,3,4のうちいずれか一項に記載のフィルタ。
(付記13)
前記共振線路のインピーダンスは、前記信号経路におけるインピーダンスよりも低い、付記2記載のフィルタ。
(付記14)
前記入出力インピーダンスは、50Ωである、付記1または2記載のフィルタ。
(付記15)
付記1〜14のうちいずれか一項に記載のフィルタを備えた、通信モジュール。
(付記16)
付記1〜14のうちいずれか一項に記載のフィルタ、または付記15に記載の通信モジュールを備えた、通信装置。
本発明のフィルタは、通信モジュール、通信装置に応用が可能である。
従来のフィルタの構成を示す回路図 本実施の形態におけるフィルタの基本構成を示す回路図 カップリング回路を接続したフィルタの構成を示す回路図 A〜Nはカップリング回路の回路図 フィルタの他の構成例を示す回路図 共振線路を共通グランドに接続した構成を示す平面図 共振線路を円弧状にした構成を示す平面図 可変フィルタ素子の平面図 図7AにおけるZ−Z部の断面図 A〜Gは可変フィルタ素子の製造工程を示す断面図 通信モジュールの構成を示すブロック図 可変フィルタを備えた通信モジュールの構成を示すブロック図 通信装置の構成を示すブロック図 可変フィルタを備えた通信装置の構成を示すブロック図
符号の説明
2a,2b,2c,2d 共振線路

Claims (10)

  1. 基板と、
    前記基板上に形成され、入力端子と出力端子を両端に有する信号線路と、
    前記信号線路とグランドとの間に接続された共振線路を少なくとも一対備え、
    前記一対の共振線路は、同じ接点で前記信号線路に接続されており、
    前記共振線路の長さは、(λ/8)×n[λは共振波長、nは自然数]であり、
    前記共振線路の対は複数あり、前記複数対の共振線路の間に接続されるカップリング部をさらに備え、
    前記カップリング部を介して互いに隣り合う複数の共振線路は、同一のグランドに接続されており、かつ、前記信号線路に対して斜めに配置される、フィルタ。
  2. 前記カップリング部は、
    信号線路に接続された回路ブロックと、当該回路ブロックの両側とグランドとの間にそれぞれ接続された回路ブロックとを有する、π型カップリング回路を備える、請求項に記載のフィルタ。
  3. 前記カップリング部は、
    信号線路に直列に接続された2つの回路ブロックと、それらの回路ブロック間とグランドとの間に接続された回路ブロックとを有する、T型カップリング回路を備える、請求項に記載のフィルタ。
  4. 前記一対の共振線路は、前記信号線路を挟んで互いに対向する位置に配置される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルタ。
  5. 前記共振線路は、略円弧状に形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルタ。
  6. 前記共振線路の上部に空隙を挟んで配置された可動キャパシタ電極と、
    前記可動キャパシタ電極と前記共振線路との距離を変位させる駆動電極とを含む可変キャパシタをさらに備える、請求項1〜のいずれか一項に記載のフィルタ。
  7. 前記基板は、
    多層の内部配線を有する低温同時焼成セラミック基板である、請求項1記載のフィルタ。
  8. 前記カップリング部は、
    可変キャパシタまたは可変インダクタを備えた、請求項1〜7のうちいずれか1項に記載のフィルタ。
  9. 請求項1〜のうちいずれか一項に記載のフィルタを備えた、通信モジュール。
  10. 請求項1〜のうちいずれか一項に記載のフィルタ、または請求項に記載の通信モジュールを備えた、通信装置。
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