JP5293759B2 - 溶鋼の脱硫方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄鋼精錬における溶鋼処理において、溶鋼とスラグを収容した取鍋内に不活性ガスを吹き込んで脱硫処理を施すに際し、従来よりもスラグとAlの添加量を低減すると当時に脱硫効率を高位安定させる高効率低排出型の溶鋼の脱硫方法に関する。
鋼中Sは鋼材の耐食性、溶接性など多数の特性に影響を与える。造船や鋼管などに用いられる鋼では鋼中S濃度をより低下することが求められており、近年では10ppm以下まで鋼中S濃度を低減する脱硫技術が確立されており、さらにその精錬効率を高める技術や生産効率を高める方法も多数開発されている。例えば、特許文献1には酸化鉄、CaOおよびAlを含有し高い脱硫力を発揮する脱硫剤が開示され、特許文献2には転炉で脱炭精錬した溶鋼を取鍋に収容して脱硫する技術が開示されている。
さらに、効率を高めるにはRH真空脱ガス装置による脱硫を可能とすればよいため、例えば特許文献3、4には、RH真空脱ガス装置で脱硫する技術が開示されている。さらに、本発明者らは、特許文献5により、RH真空脱ガス装置において、CaOを主体とするフラックスを溶鋼表面に吹き付けて脱硫処理する際に、フラックス吹き付け前の溶鋼にLa、CeおよびNdからなる群から選ばれる一種または二種以上を添加し、CaOを主体としたフラックスの脱硫能力と希土類元素(以下、「REM」という)の能力を適正に組み合わせることによって、脱硫のみならずOやNなどの元素もSと同時に低減する技術を開示した。
これまでの脱硫技術は、Alにより十分に脱酸された溶鋼にCaOを主体としたスラグを用いることを前提としており、溶鋼中Al濃度の高濃度化とスラグ中CaO濃度の高濃度化、さらにCaO多配合によるスラグ量増加とを必然的に伴っていた。
特開2004−204307号公報 特開2002−339014号公報 特開平5−171253号公報 特開2000−297318号公報 特開2009−144221号公報
近年の鋼材に対する要求性能の高まりにより、鋼中Al濃度の低減や鋼中H濃度の上昇抑制やスラグ排出量の削減等の目的を図るために、CaO配合量を低減する必要性が高まっている。しかし、十分なAl脱酸およびCaO多配合を前提とする従来の脱硫方法では、近年のこのような要求に応えることができなくなりつつある。このため、Alによる強脱酸と高CaO濃度スラグに依存しない脱硫方法が求められている。
ところで、脱硫方法としては、上述したようにスラグ中のCaOと溶鋼中Sとを反応させることによって、溶鋼中SをCaSとしてスラグ中に吸収させる方法(以下、この方法を「スラグ脱硫法」という)が一般的である。スラグ脱硫法と異なる脱硫法として、Sと反応性の強いCaやMgを溶鋼に添加することによって溶鋼中にCaSやMgSを生成させ、これら化合物を溶鋼から浮上分離させることによって脱硫する方法(以下、この方法を「金属添加脱硫法」という)がある。もちろん、スラグ脱硫法および金属添加脱硫法を組み合わせて用いる方法や、CaOフラックスを溶鋼に吹き込む方法や、CaOフラックスおよび脱硫金属を混合して溶鋼に吹き込むかあるいは吹き付ける方法等も用いられている。これらは、原理的にはスラグ脱硫法または金属添加脱硫法に大別される。
スラグ脱硫法および金属添加脱硫法のいずれも、利点と欠点を有するが、スラグ脱硫法の欠点は反応速度が遅いため、その速度を補償するために溶鋼中Al濃度やスラグ中CaO濃度を高める必要があることである。一方、金属添加脱硫法では、Mg等の脱硫用金属自体が脱酸力を有するため、Al等の脱酸剤を必須としないが、Mg濃度が低下するとMgSが解離して溶鋼中S濃度が再び増加する復硫現象が起こり易く、特に、蒸気圧が高いCaやMgを用いた場合はこれらの濃度低下速度が速いため復硫が顕著になり易い。これを避けるために、脱硫用金属を大量に添加する必要がある。
このように、従来のスラグ脱硫法では金属添加脱硫法を併用しても、低CaO濃度スラグにより低Al濃度の溶鋼を脱硫することは容易ではなかった。
本発明は、従来の技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、溶鋼中Al濃度が低い場合やスラグ中CaO濃度が低い場合にも、高Al濃度かつ高CaO濃度スラグを用いた脱硫と同等の脱硫力を得ることができ、かつ、溶鋼中Al濃度やスラグ中CaO濃度が従来と同等の場合は従来以上に高い脱硫率を得られる溶鋼の脱硫方法を提供することである。
溶鋼中Al濃度を高めない場合はAlに替わる脱酸剤が必要であり、スラグ中CaO濃度を高めない場合はCaOに替わるS捕捉剤が必要となる。前述したように脱酸剤としてもS捕捉剤としても機能する代表的な元素としてCaやMgが良く知られている。しかし、CaやMgは溶銑脱硫剤として用いられているが、これらの沸点が溶鋼処理温度より低いために溶鋼中のCaやMgの濃度を十分に高めることができない。よって、溶鋼の脱硫にはあまり使用されておらず、さらにCaやMgの蒸発が加速するVODなどの減圧精錬では使用できない。
CaやMgの他にはLa,Ce,NdなどのランタノイドなどのREMが知られている。REMはCaやMgと異なり蒸気圧が低いため、溶鋼温度や減圧下でも高い濃度が得られやすい利点はあるが、脱硫剤として用いる場合、以下の二つの課題があった。
第一の課題は介在物である。溶鋼に添加されたREMは溶鋼中でOやSと反応し、酸化物や硫化物あるいは酸硫化物といった非金属介在物(以下、「介在物」という)が生成する。CaやMgの場合は介在物が溶鋼から浮上分離することで溶鋼の脱硫が進行するが、REMの介在物の比重が溶鋼に近いため、介在物の浮上が速やかに行われない。従って、REM添加によって脱硫はあまり進行しない上に鋼中にREM介在物が多数残留してしまう。
第二の課題は効果の安定性である。REMはその反応性の強さからスラグや耐火物あるいは雰囲気中酸素と反応し、その濃度が徐々に低下する場合がある。このREM濃度の低下に伴って脱酸や脱硫といった反応は逆方向に進行し、REMの介在物から溶鋼にOやSが供給される。この逆反応の原因となるREM濃度の低下は様々な要因によって発生するため、再現性に乏しく、従って制御や経験に基づく予測が困難である。従って、REMを用いて脱硫を行った場合、脱硫処理後の状態が鋳造まで持続できずに復硫する場合があった。
また、介在物が残留しなければ復硫が発生し、復硫が起こらなければ介在物残留が発生する、というように第一の課題と第二の課題は相反する関係にあり、これらを同時に改善することが困難である。このため、REMを溶鋼に添加する脱硫方法は容易ではなかった。
金属添加脱硫法の技術思想に従ってREMを使用すると、課題が発生してしまう。そこで、REM添加による脱硫を起こさずにスラグ脱硫法の欠点である反応速度の低下のみをREM添加で補助することが可能で有れば、スラグ脱硫法と金属添加脱硫法の欠点を相殺できると考察した。この考察の妥当性が不明であることに加え、REM添加量が過小であれば効果は得られず、REM添加量が過大であればREMの金属脱硫添加法と同じ問題を生ずることが予想される。
そこで、スラグ脱硫法とREMを用いた金属添加脱硫法を適正に組み合わせることで低Al濃度低CaO濃度化が図れるという考察の妥当性と適正条件を実験的に検討した。
実験は以下の方法で行った。予めS濃度を0.002〜0.003%(本明細書では濃度または化学組成に関する「%」は「質量%」を意味する)に調整した溶鋼10kgを1873Kに保持し、金属Alを添加することで溶鋼中Al濃度を0.08%または0.008%に調整した。その後、CaO:Al:SiO=54:36:10または40:50:10に調整したフラックス200gを添加し、溶鋼表面にスラグを形成させた。スラグ形成を目視観察で確認した後、所定量のREMを添加した。添加したREMは金属La、金属Ce、金属Ndを質量比で40:40:20に混合したものを添加した。REM添加後溶鋼を保持し、保持中2.5分間隔で溶鋼からサンプルを採取して溶鋼組成を定量した。フラックス添加前の溶鋼中S濃度[S]と15分間保持後の溶鋼中S濃度[S]から(1)式に従い脱硫率を算出した。
脱硫率(%)=([S]−[S])/[S]×100 ・・・・・・・(1)
なお、脱硫率はREM添加5分後以降でほぼ一定となったが、ここではREM添加後に20分間保持して採取したサンプルの分析結果を用いて説明する。
図1に溶鋼中Al濃度を0.08%として測定したREM添加量とスラグ中CaO/Al濃度比(以下、C/A)と脱硫率との関係をグラフで示す。溶鋼中Al濃度0.08%かつC/A=1.5は一般的な高Al濃度高CaOスラグを用いた一般的なスラグ脱硫条件に相当する。実験結果から、スラグ中C/AによらずREM添加により脱硫率は増加する傾向となった。図1のグラフのy切片であるREM未添加ではC/Aを1.5から0.8に減ずると脱硫率も低下するが、REM添加により脱硫率は向上し、REM添加量を0.2kg/ton以上とすることでC/Aが0.8でも高Al濃度高CaOスラグと同等の脱硫率を確保できることが分かった。
一方、REM添加量が0.9kg/tonを超えて大きいと脱硫率がやや低下する傾向が認められる。この現象はREM添加量の増加に伴って溶鋼中に生成したREMの硫化物もしくは酸硫化物介在物の生成によるスラグ脱硫阻害とREM濃度低下に伴う復硫によって生じていると考えられる。よって、REM添加量は0.9kg/ton以下とすることで高い脱硫率を安定して確保できる。
図2に溶鋼中Al濃度とスラグ中C/Aを同時に変化させて測定した結果をグラフで示す。REM添加量の増加に伴って脱硫率が増加し、添加量が0.9kg/tonを超えて多くなると脱硫率がやや低下する傾向は図1と同じである。しかし、REM添加量を0.2kg/ton以上0.9kg/ton以下とすることで、CaOを減じたC/A=0.8のスラグを用い、かつ、溶鋼中Al濃度が0.008%である低Al濃度でも、一般的な高Al濃度高CaOスラグ脱硫と同等の脱硫率が得られることが確認された。
本発明は、REM添加量の調整で脱硫率を向上させることができる。一方、本発明の原理はREMによって直接脱硫を行うのではなく、CaO系スラグと溶鋼中AlとSとの反応を加速するものであるから、厳密には溶鋼中Al濃度とREM添加量、より正確には溶鋼中Al濃度と溶鋼中REM濃度との関係により脱硫率は若干変化する。
そこで、C/A=0.8、REM添加量0.7kg/tonなる条件でAl添加量を制御することで溶鋼中Al濃度を変化させて脱硫率を測定した。実験結果は脱硫反応が終了している保持時間20分後の溶鋼中Al濃度とREM濃度の比(以下、R)を用いて整理した。結果を図3にグラフで示す。
図3から、REM添加量が0.7kg/tonと本発明の適正範囲を満足していることからC/A=0.8でも脱硫率は80%以上を確保できているが、Rが1.2以上20以下の場合に特に高い脱硫率が得られており、REM添加量に加えてAl濃度を調整することでさらに高い脱硫率が得られることが分かる。
Rが1.2未満の条件ではAlに対してREMが相対的に多いため、スラグ中AlがREMと反応するため、溶鋼中Alとスラグとの反応が不安定化するためさらなる脱硫率向上が生じない。一方、Rが20を超えて大きいと、Alに対してREMが相対的に少なくなるため、REMの効果が適正Rより小さくなる。Rが1.2以上20以下の場合はスラグ中AlとREMの反応を抑制すると同時にAlに対してREMが適正な反応促進効果を発揮できることから、REM添加量制御のみ時に比較して一段と脱硫率を向上させることができる。
以上のように本発明において、適正なREM添加量とREM濃度とAl濃度の比を用いることで溶鋼中Al濃度やスラグ中CaO濃度を低めても脱硫が可能となった。溶鋼からの蒸発性の高い物質を用いないため、本発明は大気圧下での不活性ガス吹き込み精錬やVODなどの減圧精錬においても利用できる。本発明による脱硫反応機構は以下の通りである。
REM添加量が少ない場合に脱硫率が高くならないのはREMによる脱酸効果が不足するためである。
REM添加量が適正の場合はREMが溶鋼中で酸素と反応することによってスラグーメタル界面の酸素活量が急速に低下し、これに伴ってスラグによる脱硫も急速に進行する。これは、脱硫反応はCaO+S=CaS+Oで記述されることから理解できる。この脱硫進行の後、溶鋼中REM濃度は徐々に低下するが、復硫が起こらずに脱硫率が維持されるのは次の理由による。CaO−Al系スラグを用いた反応では、スラグーメタル界面酸素活量はスラグ中のAl活量と溶鋼中Al濃度との脱酸平衡によって規定されるが、スラグ中Al活量が低いため界面酸素活量は溶鋼中酸素活量よりも十分低くなる。しかし、スラグ中Alと溶鋼中Alとの反応が平衡に達しないため、通常は界面平衡酸素活量よりも高い酸素活量となっている。平衡酸素活量よりも高い酸素活量であることからS濃度も平衡値より高く、従って脱硫率は平衡値よりも低い。つまり、界面酸素活量を短時間で平衡酸素活量まで低減できれば高い平衡脱硫率を確保することが可能となり、かつ、本来Alによってもたらされるスラグ−メタル間反応平衡脱硫値とするのであるから、REMが低下しても脱硫率が変化することもない。つまり、REMはREMが存在しないスラグ−メタル間反応において、反応を加速させる剤として用いる。
ただし、REM添加量が過剰になると、Alによって得られる筈の本来の平衡値よりも低い酸素活量となるため、一時的にスラグ脱硫による脱硫値が高まるが、REM低下と共に脱硫率は本来の脱硫率まで低下する。従って、一時的に高い脱硫率を示すためのREMは無意味となる。また、本来の平衡値よりも低い酸素活量となることは、REMの酸硫化物や硫化物といった介在物の生成を促すため、脱硫率を結果的に低下させる。
このような生産設備での精錬では本発明による脱硫の他に溶鋼温度調整が行われる場合が多い。そこで、この溶鋼温度調整処理と本発明との関係を説明する。
溶鋼の温度調整は溶鋼にAlあるいはSiもしくは両方を添加し、酸素ガスなどの酸化性ガスを溶鋼に吹き付けもしくは吹き込むことで発生するAlやSiの酸化熱により行われる。この処理で生成するAlやSiOによってスラグ組成が変化する。このスラグ組成変化はスラグの脱硫能力を低下させるため復硫が起こる。
本発明ではREMによって平衡脱硫値まで脱硫率を高めているため、スラグ組成が変化すると一般的なスラグ脱硫よりも復硫が起こりやすい。従って、本発明と溶鋼温度調整を行う場合は、酸化性ガスを溶鋼に吹き込みまたは吹き付けて溶鋼中のSiまたはAlとを反応させる溶鋼温度上昇処理を行った後に引き続いて溶鋼にLa,Ce,Ndなどの希土類金属を1種類以上添加することが有効である。また、先行して実施した溶鋼温度上昇処理によって生成するAl等をスラグに十分吸収させてスラグを混合することが有効であるため、撹拌ガスによる混合を5分間以上行うことが好ましい。一方、15分間超の撹拌を行っても効果が飽和するため15分間以下とすることが好ましい。
従来の脱硫条件とは異なる条件、すなわち多量のAlあるいはCaOを用いることなく溶鋼の脱硫が可能となる。これにより、既存鋼とは異なる新たな性質を有する鋼材の製造と環境負荷の低減とを図ることができる。
図1は、溶鋼中Al濃度を0.08%として測定したREM添加量とスラグ中CaO/Al濃度比(以下、C/A)と脱硫率との関係を示すグラフである。 図2は、溶鋼中Al濃度とスラグ中C/Aを同時に変化させて測定した結果を示すグラフである。 図3は、脱硫後の溶鋼中Al濃度と溶鋼中REM濃度との比と脱硫率との関係を示すグラフである。(C/A=0.8,REM添加量0.7kg/ton)
本発明を実施するための形態を説明する。以降の説明では、転炉と大気圧下不活性ガス吹き込み精錬装置を用いて実施する場合を例にとる。なお、本発明は減圧精錬でも実施可能であり、形態は大気圧精錬と同じであるが減圧精錬特有の条件が存在する場合は適宜説明する。
転炉で脱炭した溶鋼を取鍋内へ出鋼し、大気圧下不活性ガス吹き込み精錬装置へ取鍋を移送する。出鋼時に取鍋内へ生石灰やけい砂などの媒溶剤を添加し、スラグを形成させる。また、必要に応じてAlやSiなどの脱酸剤を添加してよいが、脱酸で生成するAlやSiOの量を考慮して媒溶剤添加量を調整することで、スラグ組成とスラグ量を調整できる。なお、大気圧不活性ガス吹き込み精錬の前にRHなどの真空脱ガス精錬を行ってもよい。
これまでに説明した通り、本発明はCaO濃度の低いスラグを対象にスラグ−メタル間界面反応とその平衡および平衡までの反応速度をREMとAlとを適正に併用することで制御する技術であるため、界面反応に影響を与えるスラグ主成分と撹拌条件をさらに制御することでより安定した効果を得ることができる。以下、詳細を説明する。
本発明はCaO−Al−SiO系スラグを対象になされた技術であり、また、スラグ中CaO濃度が低い場合に効果が顕著となるため、スラグ中のAl、SiO、CaOの濃度が合計で75%以上であり、スラグ中のCaOとAlとの重量比CaO/Alが0.6以上1.0以下といった、従来の脱硫処理条件よりも厳しいスラグ組成でも高い効果を得ることができる。ただし、スラグ組成は以下の条件を満足することが好ましい。
スラグ組成はCaO、AlならびにSiOの合計濃度が75%以上でC/Aが0.6以上1.5以下であることが好ましい。C/Aが0.6未満もしくは1.5を超えて大きい場合は、スラグの液相率が低くなり、処理時間が長くなる場合がある。なお、本発明はC/Aが1以下において既存技術に対して高い優位性を示すため、C/A≦1で使用することが好ましい。さらに好ましいスラグ組成はスラグ中SiO濃度10%以下、MgO濃度10%以下、FeOとMnOの合計濃度が5%以下である。スラグ中SiO濃度が10%を超えて高いとSiO活量が高くなり、溶鋼中のAlや添加されたREMと反応することで効果を低下させる場合がある。また、MgO濃度が10%を超えて高いとスラグの流動性が低下し、スラグーメタル界面反応速度を低下させる場合がある。FeOとMnO濃度が合計で5%を超えて高いとSiO同様にAlやREMと反応し効果を低下させる場合がある。
スラグ量は15kg/ton以上25kg/ton以下であることが好ましい。スラグ量が15kg/ton未満の場合、スラグのS吸収量が少なくなるため処理前S濃度が20ppm以上の場合は物質収支的にスラグ量が不足する。一方、スラグ量が25kg/tonを超えて多いとスラグ撹拌が十分行えない場合がある。ただし、本発明をVODなどの減圧精錬装置を用いて実施する場合、スラグ量は40kg/tonまで許容される。これは減圧精錬ではガス膨張により大気圧精錬よりもガス撹拌が強くなるので、大気圧精錬処理よりもスラグ量を増加できる。
溶鋼温度上昇処理が必要な場合は、REMを添加する前に実施する。溶鋼を不活性ガスで撹拌しつつ、溶鋼にAlまたはSiあるいは両方を添加した後に上吹きランスを介して溶鋼もしくはスラグ上に酸素ガスを吹き付ける。このときの不活性ガス流量は、溶鋼1トン当たり8Nl/min以上12Nl/min以下が好ましい。8Nl/min未満では溶鋼の撹拌が不充分となり、混合に長時間を要する。12Nl/minを超えて多いとスラグの溶鋼中への巻き込みが発生する場合がある。なお、この処理によりスラグ中のAl濃度やSiO濃度が増加するが、この増加にともなってスラグ組成、特にC/Aが変化しないように生石灰などを添加することが好ましい。また、生石灰などの添加時期は酸化性ガス供給前が好ましい。酸化性ガス供給後に生石灰添加を行うとREM添加前にスラグ組成を均一化させるための撹拌時間を要するため、酸化性ガス供給前に添加することで処理時間を短縮できる。
溶鋼温度の調整が完了した後、引き続き溶鋼を不活性ガスで撹拌しながら溶鋼にREMを添加する。本発明ではAl濃度とREM濃度を調整する必要があるため、REM添加前にAl濃度を測定しておくことで、より[Al]/[REM]の制御精度を高めることができる。Al濃度を測定する方法としては溶鋼サンプルを採取して発光分析に供する方法が知られている。また、固体電解質酸素センサを溶鋼に浸漬して溶鋼中酸素活量を測定し、得られた酸素活量からAl濃度を算出する方法でもよい。本発明は、脱酸が重要であることからREM添加前に固体電解質酸素センサで測定を行うことが望ましい。
なお、本発明は前述したように溶鋼中Al濃度を高めることなく低Al濃度で高い脱硫率が得られるが、ここでは低Al濃度とは0.01%未満を意味する。先に図2にてAl濃度0.008%で効果を説明したように、Al濃度が0.01%未満でも効果が得られる。よって、本発明ではAl濃度を0.01%未満としてREM添加を行うことでAl添加量削減や低Al鋼製造時のAl濃度低減処理を省略できる。また、Al濃度は0.003%以上であることが望ましく、さらに望ましくは0.005%以上である。Al濃度が0.003%未満ではスラグ中のFeOやMnOを十分低減することが困難となり、0.005%未満ではFeOとMnOの低減に要する処理時間が長くなる。
添加するREMは金属Laや金属Ceといった希土類金属の単体金属の他、これらの混合物あるいは合金でもよい。ただし、本発明はこれらの総添加量を用いて制御を行うため、原子量が比較的近い原子番号57から原子番号60までのランタノイド(La,Ce,Pr,Nd)が合計で90%以上であることが好ましい。
添加するREMの形態は大きさ5mmから15cmまでの塊状であることが好ましい。これは、溶鋼へ確実に投入され溶鋼内へ沈降させるためである。5mmより細かい粉状の場合、排気系へ散逸したり、スラグ表面上で速やかに酸化されてしまう場合がある。15cmを超えて大きいとREM自体の溶解に時間を要するため処理時間を長くする必要がある。
添加するREM量は、請求項1記載の通りの0.2kg/ton以上0.9kg/ton以下であるが、好ましくは0.3kg/ton以上0.7kg/ton以下である。0.3kg/ton未満ではREM添加時の酸化ロスなどの影響を受ける場合があり、0.7kg/tonを超えて多いとスラグ中REM酸化物濃度が増加してスラグ流動性が低下する場合がある。同様の理由により更に好ましくは0.5kg/ton以上0.7kg/ton以下である。
REM添加後、溶鋼を不活性ガスで撹拌する。既に述べたように撹拌時間は5分間以上15分間以下であるが、さらに好ましくは撹拌時間は7分間以上である。7分間以上とすると脱硫率がより安定する。
また、スラグーメタル間反応速度に影響する撹拌条件として溶鋼に吹き込む不活性ガス流量が溶鋼1ton当たり10Nl/min以上20Nl/min以下とすることが好ましい。10Nl/min未満では溶鋼とスラグとの撹拌が不充分となり、添加されたREMがスラグーメタル界面に迅速に供給されない場合がある。また、20Nl/minを超えて大きくするとREMとスラグとの反応速度が過剰に加速されて溶鋼中REM濃度が短時間で低下してしまう場合があり、この場合はREMの効果が小さくなる場合がある。
一般的なREM添加鋼の溶製では固溶REM濃度の確保あるいは溶鋼中にREM系介在物を残留させることを目的とするため、REM添加後の溶鋼撹拌時間を3〜5分間と短くしたり、REM添加後はその他の処理を行わず鋳造される。これに対し、本発明は脱硫を目的としているため、REM添加後にスラグーメタル間脱硫反応に必要な撹拌力と時間が必要となる。よって、上記条件での撹拌を行うことが好ましい。
なお、REM添加後から行う不活性ガス吹き込み中は、溶鋼にその他の合金を添加しないことが好ましい。これは、添加される合金が微量に含有するSやOによる脱硫阻害を回避するためである。さらに好ましくはREM添加前に必要な合金元素を添加しておくことである。
REM添加時の溶鋼中Al濃度は、固体電解質センサによって測定することも可能であるが、操業実績を基に決定することができる。REM添加直後のREM濃度を知る必要はないが、添加するREMがランタノイドを主体とする場合の歩留まりは45〜55%である。脱硫処理後、すなわちREM添加後から不活性ガス撹拌終了までのREM濃度低下速度とAl濃度低下速度は安定した再現性を示すので、REM添加量およびAl添加量と不活性ガス吹き込み撹拌時間との関係から、脱硫処理後の各濃度は容易に推定できる。この関係から、請求項1を満足するようにREM添加前のAl濃度を決定し、これに応じてAl添加量を決定して添加すればよい。
また、脱硫処理後の溶鋼中REM濃度は0.002%以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.002%以上0.02%以下である。0.002%未満では僅かな大気と溶鋼との接触でもREMが消失する恐れがあるため、大気と接触の可能性がある大気圧下精錬では0.002%以上が好ましい。一方、0.02%を超えて高くなると、介在物がREM−Al−O系もしくはREM−Si−O系あるいはAl−Si−REM−O系となり、介在物が変化する場合がある。ただし、REM濃度に対する製品成分規格やREM系介在物残留に対する制約がない場合は、REM濃度の上限は特に規定されない。
なお、REM添加によりOとSが低下するため、REM添加後の不活性ガス撹拌中の吸窒が起こりやすくなる。このため、雰囲気を大気から遮断して内部雰囲気を調整できる装置を用いることが好ましい。
以上が転炉と大気圧下不活性ガス吹き込み精錬装置を用いた例であるが、転炉と部分減圧精錬装置もしくは電気炉とVODを用いる場合も同様である。つまり、本発明はVODや直胴式減圧精錬装置などスラグ−メタル間反応が進行する減圧精錬装置で実施することができる。なお、VOD処理後に大気圧不活性ガス吹き込み精錬装置に取鍋を移送し、本発明を実施してもよい。
本脱硫処理後に取鍋を速やかに連続鋳造装置等に移送して鋳造してもよいし、RHにて真空脱ガス精錬を行い、その後に鋳造してもよい。RHは取鍋スラグと溶鋼との反応速度が非常に小さいため、復硫が発生しにくいため、本発明実施後にRH処理を実施できる。また、RH処理中あるいはRH処理後、取鍋さらにはタンディッシュなどにて介在物形態制御等を目的としたCa処理を施してもよい。
溶鋼250tonを転炉で脱炭処理を行い、取鍋内に出鋼した。出鋼時に取鍋内に生石灰およびAl,Si,Mnを添加した。その後、取鍋を大気圧下不活性ガス吹き込み精錬装置に移送し、直ちにArガスの吹き込み処理を開始した。Arガスは溶鋼に浸漬した吹き込みランスを用い、吹き込み深さは溶鋼表面から溶鋼深さの70〜85%(平均80%)の深さとし、ガス流量は3800Nl/minとした。
処理開始後、溶鋼温度の調整が必要な場合は溶鋼にAlを、スラグにCaOを添加した後に上吹きランスを介して酸素ガスを吹き付けた。酸素ガス量は50〜150Nl/minである。
必要に応じて酸素上吹きを行った後に、REMを添加して引き続きArガス吹き込み撹拌を行った。REM添加量、撹拌時間、温度上昇処理の有無、C/Aを表1に示す。
試験番号1は少量のREMを添加した比較例、試験番号2は請求項1を満足する本発明例、試験番号3〜8は請求項1および2を満足する本発明例、試験番号9〜12はREMを添加しなかった比較例である。
脱硫率に着目すると本発明例は比較例に対し高い脱硫率が得られており、本発明に従い低Al濃度でも低C/Aでも高い脱硫率が得られることが分かる。また、請求項2の条件を満足することでさらに高い脱硫率が得られることが分かる。
また、処理前S濃度が6ppmと低い本発明例である試験番号8と、処理前S濃度が7ppmと低い比較例である試験番号10とに着目すると、REMを添加しない試験番号10では全く脱硫しないのに対し、試験番号8では処理前S濃度が低いことから脱硫率自体は低いものの、極低硫域での脱硫も可能であることが分かる。これにより、本発明により極低硫鋼の製造も可能であることが分かる。
Figure 0005293759

Claims (2)

  1. 取鍋内の溶鋼および溶鋼表面上のスラグを不活性ガスで撹拌する精錬処理に際し、溶鋼に希土類金属を1種類以上添加した後にガス撹拌を行う脱硫方法であって、添加する希土類金属の合計質量が前記溶鋼の質量(ton)当り0.2kg以上0.9kg以下であって、かつ、溶鋼脱硫処理後の溶鋼中Alの濃度[Al](質量%)と該溶鋼中の希土類元素の合計濃度[REM](質量%)との比[Al]/[REM]が1.2以上20以下となるように、REM添加前のAl添加量を調整することを特徴とする溶鋼の脱硫方法。
  2. 酸化性ガスを溶鋼に吹き込みまたは吹き付けて溶鋼中のSiおよびAlのいずれか一方または両方と反応させる溶鋼温度上昇処理を行った後、引き続き溶鋼に前記希土類金属を1種類以上添加し、さらにガス撹拌を5分間以上15分間以下行うことを特徴とする請求項1記載の溶鋼の脱硫方法。
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