JP3450777B2 - 希土類元素含有ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents

希土類元素含有ステンレス鋼の製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、希土類元素(以
下、REMという)含有ステンレス鋼の製造方法に関
し、とくに連続鋳造時における浸漬ノズルの閉塞を確実
に防止して高清浄のオーステナイト系ステンレス鋼のス
ラブを製造する技術について提案する。
【0002】
【従来の技術】連続鋳造における浸漬ノズルの閉塞は、
鋳造速度の低下を招いて生産効率の低下を招くのみなら
ず、鋳造中に閉塞物が剥離し、その閉塞物が溶鋼中ひい
ては鋳片内に混入し、鋳片品質に著しい悪影響を与える
場合があり、その改善が求められている。
【0003】とりわけステンレス鋼の熱間加工性の向上
を目的として開発されたステンレス鋼の場合、連続鋳造
工程前の二次精錬、例えば、AOD炉、VOD炉あるい
は取鍋精錬の時に、REMが添加されている。そのRE
Mの添加は、強力な酸化力によって、Al介在物
を還元し、REM酸化物に変えることがよく知られてい
る。
【0004】このREM酸化物は、連続鋳造時に浸漬ノ
ズルの内壁に付着して、地金の成長を促進しやすく、ノ
ズル閉塞につながりやすい。その上、比重が大きいた
め、浮上分離が困難であり、鋳片の清浄度の悪化をもた
らす原因の1つである。
【0005】このような問題に対し、従来、特開平6-34
4093号公報では、連続鋳造機のモールド内にREM含有
ワイヤを直接添加する方法を提案している。しかし、こ
の方法ではモールド内でREMを均一に混合することが
難しく、安定した品質を得ることができないという問題
があった。また、この方法を実施するには、新たな設備
投資が必要であり、コストがかかるという問題もある。
【0006】これに対し、特開平9-111329号公報では、
鋼中Alを0.03wt%以上に調整した後、REMを0.01wt
%以上として、REM酸化物の生成を防止する方法を提
案している。しかし、この方法については、REM含有
が例えば0.1wt%以上と多い場合には、REM酸化物が
生成する危険がある。また、使用する浸漬ノズルの材質
(例えば、SiO含有Al−C質)によって
は、ノズル内壁との反応により、ノズル内壁にREM酸
化物が生成し、閉塞する危険があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、REM含有
ステンレス鋼製造の際に見られる上記課題を解決する技
術を確立することにある。即ち、本発明の目的は、連続
鋳造時のノズル閉塞を確実に防止することができるとと
もに、高清浄なオーステナイト系ステンレス鋼の製造が
できるようすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者らは、REM含有
ステンレス鋼鋳造後の浸漬ノズルを調査したところ、次
のような新規な事実を見出した。即ち、ノズル内付着物
は、REM酸化物と地金との混合物であり、介在物中の
平均REM酸化物濃度が高いほど、付着厚みが大きくな
り、閉塞する傾向にあるという知見を得た。この結果
は、従来から閉塞の問題があるAl系介在物より
も、REM酸化物の方がさらに、閉塞を助長しやすい酸
化物であることを示している。
【0009】このような知見に対し、発明者らは、RE
Mが酸化しない条件を見い出すべく、鋭意研究を行っ
た。その結果、溶鋼中のAlとREMの比率をうまく制
御すればREMの酸化を十分に抑制できることがわかっ
た。
【0010】さらに、発明者らは、ノズル用の各種耐火
物を溶鋼に浸漬し、付着状況を調査した。その結果,R
EM含有ステンレス鋼に対しては、SiOレスのZr
−CaO−C質耐火物が最適であることを見出し
た。本発明は、以上説明した2つの新規知見に基づいて
開発されたものである。
【0011】すなわち、本発明は希土類元素を含有する
ステンレス鋼の製造方法において、電気炉で溶解し、A
ODおよびVODのいずれか一方、または両方の二次精
錬炉で脱炭のための酸化精錬を行った後、Siおよびま
たはAlを添加してスラグからCrを還元し、次いでA
lを投入して仕上げ脱酸を行った後、REMを0.0001〜
0.03wt%を添加するにあたり、鋼中Al濃度を、16.7×
REMwt%≦Al≦0.5wt%の範囲に調整し、REM酸化物
含有介在物の生成を抑制した後、連続鋳造機で、少なく
とも内壁がSiOレスのZrO−CaO−C質から
なる浸漬ノズルを用いて鋳造し、高清浄のステンレス鋼
のスラブを得るようにしたことを特徴とする希土類含有
ステンレス鋼の製造方法を提案する。
【0012】
【発明の実施の形態】発明者らは、鋼中のREM濃度、
Al濃度と介在物との関係を調査した。即ち、鋼中にR
EMを添加した後、120分迄逐時にサンプリングを行
い、REM濃度、Al濃度ならびに介在物の組成をEP
MA(SEM−EDS)を用いて分析した。その結果、
介在物はAlあるいはREM酸化物のいずれかで
あり、その境界は、下記(1)式の反応により規定され
ることを見出した。 (数1) Al(介在物)+2REM=(REM)(介在物)+2Al …(1)
【0013】一般に、ステンレス溶鋼中でのAlとRE
M(以下、Ceの例で述べる)の平衡濃度は、熱力学デ
ータにより下記(2)式によって求めることができる。
ただし、その平衡濃度を決定するためには、活量係数f
が必要となる。 (数2) In aAl/aCe=In fAl*〔%Al〕/fCe〔%Ce〕=4.03 …(2) (a:活量、f:活量係数)
【0014】そこで、発明者らは上記実験により濃度の
境界線aを求めたところ、下記(3)式で表わすことが
できた。なお、この境界線aはCe以外のREMでもほ
とんど変わらなかった。要するに、これらの式から、R
EM酸化物からとアルミナとの領域は明瞭に顕れること
がわかった。 (数3) 〔%Al〕/〔%Ce〕=16.7 …(3)
【0015】なお、これらの関係を図1に示す。図よ
り、境界線aより上では介在物として、Ceが安
定で、閉塞や清浄度の悪化を来す危険性のある領域を意
味する。この時、REM単独酸化物が付着すると、地金
成長を誘発する理由については、明らかではないが、い
くつかの凝固実験からは、REM酸化物がδ−Feの核
生成を促し、低い過冷度でも凝固を可能にするという事
実から、REM酸化物は、核生成促進作用として働き、
地金を成長させているものと推定される。
【0016】つまり、本発明は、REM,Alの比率を
Al介在物が安定な領域に制御することが重要で
ある。ただし、AlもREM酸化物ほどではない
が、付着する傾向は持っている。そこで、このAl
の付着をも軽減するために、REM添加時に、ワイヤ
などによりCaをも併せて添加することが好ましい。こ
れは、Caの複合添加により、介在物組成が低融点でノ
ズル内壁に付着しにくいCaO−Al系に変化さ
せることができるからである。また、添加すべきREM
やAlの添加は、その比率を正確にコントロールするた
めに、精錬に用いるスラグ組成をCaO−Al
にすることが好ましい。より好ましくは、SiOが5
wt%以下のスラグ組成に調整する。これは、SiO
AlやREMにより容易に還元され、AlやREMの歩
留りを著しく悪化するためである。
【0017】次に、発明者らは、各種の浸漬ノズル用耐
火物を溶鋼に浸漬する実験を行った。その結果より、R
EM含有ステンレス鋼に対しては、SiO含有耐火物
製浸漬ノズル(Al−C、ZrO−Cいずれ
も)の場合、表層にREM単独酸化物が生成し、地金成
長を誘発し、閉塞に至る危険性がある。ところが、Si
レスのZrO−CaO−C耐火物質の場合、表面
にCaOを含有する低融点酸化物が生成するため、RE
M単独酸化物とならないため、良好な結果が得られるも
のと考えられる。このような材質の耐火物は、ノズル内
壁のみでなく、吐出孔部周辺にまで、設置することがよ
り好ましい実施の形態である。
【0018】なお、本発明においては、希土類元素(R
EM:Ce、La、Smの族)を含有するステンレス
鋼、とくにC:0.03wt%以下、Si:2.0wt%以下、M
n:3.0wt%以下、P:0.045wt%以下、S:0.015wt%
以下、Cu:2.0wt%以下、Ni:3.0〜10.0wt%以下、
Cr:20.0〜35.0wt%以下、Mo:0.5〜6.0wt%以下、
B:0.0005〜0.01wt%以下を含み、N:0.08〜0.30wt
%、W:0.03〜2.0wt%、V:0.03〜2.0wt%のうちが選
ばれる、1種または2種以上を含むステンレス鋼を電気
炉で溶解する。
【0019】次に、この溶鋼は、AODおよびVODの
いずれか一方、またはその両方の二次精錬炉で脱炭のた
めの酸化精錬を施した後、Si、AlでスラグからCr
を還元し、Alで仕上げ脱酸を行った後、REMを0.00
01から0.03wt%を添加するにあたり、鋼中Al濃度を、
REMとの関係において下記(4)式の条件を満足する
ように調整することが必要である。このような成分調整
によって、REM酸化物を含む介在物生成を抑制するこ
とができ、そうしたREM含有ステンレス鋼の溶鋼を連
続鋳造機で鋳造し、高清浄スラブを製造し、その後常法
に従う方法によって圧延し、所望のステンレス鋼製品を
得るのである。 (数4) 16.7×REMwt%≦Al≦0.5wt% … (4)
【0020】上記式はまた、図2の斜線で示す範囲で示
すことができる。このとき、連続鋳造機の浸漬ノズルと
して、その内壁がSiOレスのZrO−CaO−C
質耐火物からなるものを用いると、付着物厚みをより軽
減でき、REM含有ステンレス鋼の連々鋳を円滑に行う
ことができるようになる。
【0021】なお、本発明において、鋼中のREMを0.
0001〜0.03wt%に限定した理由は、少なくとも0.0001wt
%は添加しないと熱間加工性を改善できず、熱間圧延
時、端部割れを起こし、歩留りを低下させる。一方、0.
3wt%を超えるREMを添加すると、溶接時にビード上
にREM酸化物の塊を生じ、溶接性を悪化させるため、
これを上限とした。
【0022】また、AlとREMの関係を(4)式にて規
定し、式中の左辺である最低を16.7×Cewt%とした理由
は、上述したとおり、Al系介在物を安定にする
ためである。一方、式中の右辺である上限を0.5wt%と
した理由は、0.5wt%を超えると、溶接時にビード上に
Alの酸化物の塊を生じ、溶接性を悪化させるためであ
る。
【0023】
【実施例】C:0.03wt%以下、Si:2.0wt%以下、M
n:3.0wt%以下、P:0.045wt%以下、S:0.015wt%
以下、Cu:2.0wt%以下、Ni:3.0〜10.0wt%以下、
Cr:20.0〜35.0wt%以下、Mo:0.5〜6.0wt%以下、
B:0.0005〜0.01wt%以下を含み、N:0.08〜0.30wt%
を含むステンレス鋼を、60t電気炉により溶解し、AO
DあるいはVODまたはAOD→VODのルートで酸化
精錬による脱炭と、Crの還元を行い、AODまたはV
ODあるいはLFにてREM濃度を0.0003〜0.042wt
%、Al濃度を0.002〜0.721wt%に調整し得られた溶鋼
を、連続鋳造機で3〜5フィート(1000〜1600mm)幅、
150mmあるいは200mm厚みのスラブを得た。
【0024】評価は、ノズル内付着物厚みと清浄度の2
項目について行った。ノズル内付着物厚みは、鋳込み後
ノ浸漬ノズルを回収し、スラグラインで切断後に測定し
た値である。そして、清浄度については、得られたスラ
ブを熱間圧延機にて5.5mm厚にし、冷間圧延機で1.0mm厚
保に圧延された板を光学顕微鏡を用いて測定したもので
ある。
【0025】その結果を表1に示す。表中の実施例1〜
6に示すように、Alを16.7×REMwt%≦Al≦0.5wt%に
調整した場合は、ノズルへの付着厚み、清浄度がともに
良好な結果を示しており、操業上、品質上全く問題はな
かった。また、表1からわかるように、シリカレスZC
Gノズルを用いた場合、付着物厚みはAG,ZGよりも
薄く、より効果的であった。
【0026】一方、比較例7〜11に示すように、Al≦
16.7×REMwt%の場合、付着物が厚く、操業時、鋳速低
下を招くなど問題があった。さらに清浄度も悪く、品質
的にも問題の有るレベルであった。また、比較例12で
はAlが0.721wt%と高く、溶接性が悪く品質上問題を
生じた。
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、R
EM含有ステンレス鋼の連続鋳造における浸漬ノズル閉
塞を確実に防止することができ、かつ、高清浄なステン
レス鋼を簡易に製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、REM添加Alキルドステンレス溶鋼
の介在物安定領域を説明する図である。
【図2】図2は、目標REM、Al濃度の範囲を説明す
る図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 秀毅 神奈川県川崎市川崎区小島町4番2号 日本冶金工業株式会社 川崎製造所内 (56)参考文献 特開 昭52−56011(JP,A) 特開 平2−205618(JP,A) 特開 平9−111329(JP,A) 特開 平9−316535(JP,A) 特開 平11−199917(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21C 7/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 0.0001〜0.03wt%の希土類元素(RE
    M)を含有するステンレス鋼を製造する方法において、
    精錬炉での酸化精錬後、SiおよびまたはAlにてスラ
    グ中Crの還元を行い、引き続きAlで仕上げ脱酸を行
    った後、REMの添加に際しては、鋼中Al濃度との関
    係において、16.7×REMwt%≦Al≦0.5wt%の条件を満
    足するように添加することによりREM酸化物含有介在
    物の生成を抑制し、その後、連続鋳造して高清浄スラブ
    を得たのち常法に従う圧延工程での処理を行うことを特
    徴とする希土類含有ステンレス鋼の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の方法において、REM
    添加時にCaを併せて添加することを特徴とする希土類
    元素含有ステンレス鋼の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の方法において、精錬炉
    内スラグ組成をCaO−Al系スラグとすること
    を特徴とする希土類元素含有ステンレス鋼の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の方法において、連続鋳
    造に際し、少なくとも内壁がSlOレスのZrO
    CaO質からなる浸漬ノズルを用いて鋳造することを特
    徴とする希土類元素含有ステンレス鋼の製造方法。
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