JP5293180B2 - リン酸エステル化合物を含有する被膜形成用塗布液及び反射防止膜 - Google Patents
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Description
例えば、Mg源としてのマグネシウム塩、アルコキシマグネシウム化合物などと、F源としてのフッ化物塩とを反応させることにより生成させたMgF2微粒子のアルコール分散液、又はこれに膜強度向上のためにテトラアルコキシシランなどを加えた液を塗布液とし、これをブラウン管等ガラス基材上に塗布し、次いで、100から500℃で熱処理することにより、当該基材上に低屈折率を示す反射防止膜を形成させる方法が開示されている(特許文献1参照。)。
また、テトラアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシランなどの加水分解重縮合物であって、平均分子量の異なる2種以上とアルコール等溶剤とを混合することによりコーティング液となし、当該コーティング液から被膜を形成するに当たって上記混合の際の混合割合、相対湿度のコントロールなどの手段を加えて被膜をつくり、その後これを加熱することにより、1.21から1.40の屈折率を有し、50から200nmの径を有する、マイクロピット又は凹凸を有する厚さ60から160nmの薄膜をガラス基板上に形成させた低反射ガラスが開示されている(特許文献2参照。)。
また、Si(OR)4で示される珪素化合物と、CF3(CF2)nCH2CH2Si(OR1)3で示される珪素化合物と、R2CH2OHで示されるアルコールと、蓚酸とを特定比率で含有する反応混合物を、水の不存在下に40から180℃で加熱することによりポリシロキサンの溶液を生成させ、次いで当該溶液を含有する塗布液を基材表面に塗布し、その塗膜を80から450℃で熱硬化させることにより当該基材表面に密着して形成させ、1.28から1.38の屈折率と、90から115度の水接触角を有する被膜が開示されている(特許文献4参照。)。
1.(A)成分であるフッ素原子で置換された有機基を側鎖に持つポリシロキサンと、(B)成分である水酸基がリン原子に結合したリン酸エステル化合物と、を含有する被膜形成用塗布液であって、
(A)成分が、式(1)で表されるアルコキシシラン及び式(2)で表されるアルコキシシランを含むアルコキシシランを、重縮合して得られるポリシロキサンであり、(B)成分が、式(4)で表されるリン酸エステル化合物である、ことを特徴とする被膜形成用塗布液。
4.(A)成分の珪素原子の合計量の1モルに対して、(B)成分のリン原子が0.01から0.45モルである、上記1から3のいずれかに記載の被膜形成用塗布液。
5.(A)成分が、式(1)で表されるアルコキシシランを60から95モル%及び式(2)で表されるアルコキシシランを5から40モル%含有するアルコキシシランを重縮合して得られる、ポリシロキサンである上記1から4のいずれかに記載の被膜形成用塗布液。
6.上記1から5のいずれかに記載の被膜形成用塗布液を用いて形成される被膜。
8.上記1から5のいずれかに記載の被膜形成用塗布液を、基材に塗布し、室温から150℃で乾燥した後、室温から150℃で硬化させる、被膜の形成方法。
9.上記1から5のいずれかに記載の被膜形成用塗布液を、基材に塗布し、室温から150℃で乾燥した後、室温から150℃で硬化させる、反射防止膜の形成方法。
10.上記6に記載の被膜又は上記7に記載の反射防止膜を有する反射防止基材。
11.上記6に記載の被膜又は上記7に記載の反射防止膜を有する反射防止フィルム。
本発明は、(A)成分であるフッ素原子で置換された有機基を側鎖に持つポリシロキサンと、(B)成分である水酸基がリン原子に結合したリン酸エステル化合物と、を含有する被膜形成用塗布液及びそれから形成される被膜並びにそれらの製造方法に関するものである。
(A)成分は、フッ素原子で置換された有機基を側鎖に持つポリシロキサンである。
本発明において、前記の側鎖は主に被膜に高い水接触角を付与するものであり、これにより防汚性を発現する。
このようなフッ素原子で置換された有機基は、脂肪族基や芳香族基の水素原子を一部又は全部をフッ素原子で置換した有機基である。これらの具体例を以下に挙げる。
例えば、トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘプタデカフルオロデシル基、ペンタフルオロフェニルプロピル基等が挙げられる。
これらの中でも、パーフルオロアルキル基を有する炭素数が3から15の脂肪族基は、透明性の高い被膜を得易いので好ましい。
具体例として、トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘプタデカフルオロデシル基等が挙げられる。
本発明においては、上記の如き側鎖を有するポリシロキサンを複数種併用してもよい。
このようなテトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられ、市販品として容易に入手可能である。
本発明においては、式(1)で表されるアルコキシシランのうちの少なくとも1種を用いればよいが、必要に応じて複数種を用いてもよい。
ここで、式(2)のR2は、上記したフッ素原子で置換された有機基を表すが、この有機基が有するフッ素原子の数は特に限定されない。
また、式(2)のR3は炭素数1から5の炭化水素基を表し、好ましくは、炭素数1から5の飽和炭化水素基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基である。
このような式(2)で表されるアルコキシシランにおいて、R2 は式(5)で表される有機基である。
特に、kが2から12の整数の場合、反射防止膜の指紋の拭き取り性が良好となるので好ましい。
本発明においては、式(2)で表されるアルコキシシランのうちの少なくとも1種を用いればよいが、必要に応じて複数種を用いてもよい。
また、ポリシロキサン(A)は、式(1)及び式(2)で表されるアルコキシシランと、それ以外に式(3)及び/または式(6)で表されるアルコキシシランとを重縮合させたものでもよい。この際、式(1)及び式(2)で表されるアルコキシシラン以外に、式(3)で表されるアルコキシシランと式(6)で表されるアルコキシシランのどちらか一方を単独で用いてもよいし、両方を併用してもよい。
式(3)中のR4は、炭素数1から20の有機基、好ましくは炭素数1から15の有機基である。nが2、3の場合、一般的にはR4が同一の場合が多いが、本発明においては、R4は同一でも、それぞれ異なっていてもよい。
このような、式(3)で表されるアルコキシシランの具体例を以下に示すが、これに限定されない。
本発明においては、式(3)で表されるアルコキシシランを必要に応じて複数種用いることもできる。
本発明においては、式(6)で表されるアルコキシシランを必要に応じて複数種用いることもできる。一般的にはR7は同一の場合が多いが、本発明においては、R7は同一でも、それぞれ異なっていてもよい。R8は炭素数1から20の有機鎖であり、構造は特に限定されず、二重結合や三重結合、フェニル基などの環状構造及び分岐構造を含んでもよい。また、窒素、酸素、フッ素などのヘテロ原子を含んでもよい。
このような、式(6)のR8の部分が式(7)で表されるパーフルオロアルキル鎖を含む有機鎖であるような構造のアルコキシシランの具体例としては1,6-ビス(トリメトキシシリルエチル)ドデカフルオロヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリルエチル)ドデカフルオロヘキサンなどが挙げられる。
式(2)で表されるアルコキシシランが、(A)成分を得るために用いるアルコキシシランの合計量に対して、5モル%以上の場合、水の接触角が80°以上の被膜が得られやすいので好ましく、40モル%以下の場合、ゲルや異物の生成を抑制でき、均質な(A)成分の溶液を得られ易いので好ましい。
他方、式(1)のアルコキシシランの使用量は、(A)成分を得るために用いる全アルコキシシランの合計量中で、60モル%から95モル%が好ましい。
式(3)で表されるアルコキシシランのみを併用する場合は、(A)成分を得るために用いるアルコキシシランの合計量中で、0モル%から35モル%が好ましい。また、式(6)で表されるアルコキシシランのみを併用する場合は、(A)成分を得るために用いるアルコキシシランの合計量中で、0モル%から20モル%が好ましい。さらに、式(3)及び式(6)で表されるアルコキシシランの両方を併用する場合には、式(3)と式(6)で表されるアルコキシシランの合計量が、(A)成分を得るために用いるアルコキシシランの合計量中で0から35モル%であり、かつそのうち式(6)で表されるアルコキシシランの割合が、(A)成分を得るために用いるアルコキシシランの合計量中で0から15モル%であることが好ましい。
本発明においては、上記反応に用いる水の量は、所望により適宜選択することができるが、通常、アルコキシシラン中の全アルコキシ基の0.1から2.5倍モルである。
また、別法として、例えば、アルコキシシラン、溶媒及び蓚酸の混合物を加熱する方法が挙げられる。具体的には、あらかじめアルコールに蓚酸を加えて蓚酸のアルコール溶液とした後、当該溶液とアルコキシシランを混合し、加熱する方法である。その際、蓚酸の量は、アルコキシシランが有する全アルコキシ基の1モルに対して0.2から2モルとすることが一般的である。この方法における加熱は、液温50から180℃で行うことができ、好ましくは、液の蒸発、揮散等が起こらないように、例えば、密閉容器中又は還流下で数十分から数十時間行われる。
上記のそれぞれの方法において、複数のアルコキシシランを用いる場合は、複数のアルコキシシランをあらかじめ混合して用いてもよいし、複数のアルコキシシランを順次加えてもよい。
アルコキシシランを重縮合する際に用いられる溶媒は、式(1)及び式(2)で表されるアルコキシシランと、必要に応じて式(3)及び式(6)で表されるアルコキシシランを溶解するものであれば特に限定されない。一般的には、アルコキシシランの重縮合反応によりアルコールが生成するため、アルコール類やアルコール類と相溶性の良好な有機溶媒が用いられる。
このような有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等が挙げられる。
本発明においては、上記の有機溶媒を複数種混合して用いてもよい。
本発明に用いる(B)成分は、水酸基を有するリン酸エステル化合物である。
本発明の効果である良好な埃拭き取り性を発現させるため、(B)成分は、1分子中にリン原子に結合した水酸基を1個又は2個有するリン酸エステル化合物、すなわち、式(4)で表されるリン酸エステル化合物である。
R6の炭素数が21以上の場合、ポリシロキサン(A)との相溶性が不充分となったり、塗布液の保存安定性が充分に得られない場合があるので、炭素数が1から20の有機基であることが好ましい。本発明の被膜を反射防止膜に用いる場合、炭素数1から10の場合は、反射率の上昇を抑制できるのでより好ましく、更に炭素数が1から6の場合は、反射率の上昇が殆ど無いので好ましい。
式(4)のmは1又は2の整数であるが、mが0の場合、式(4)の化合物は水酸基を有さないリン酸エステル化合物となり、本発明の効果である帯電防止効果が得られ難い。他方、mが3の場合、式(4)の化合物はリン酸を表し、ポリシロキサン(A)との親和性不足により形成された被膜が時間の経過と共に不安定化して白化する場合がある。
従って、被膜の安定性を保ちつつ帯電防止性を有し、それにより本発明の効果である埃拭取り性を発現する化合物は、mが1又は2である水酸基とアルキルエステル部位を併せ持つリン酸エステル化合物である。水酸基の数が多いほど帯電防止効果が強いため、特に、mが2の場合は、少量で本発明の効果を奏することができるため好ましい。
このようなリン酸エステル化合物の具体例を以下に挙げるが、これに限定されるものではない。
本発明において(B)成分は、(A)成分と良好に相溶する限りにおいて限定されず、それらを複数種用いることもできる。
本発明の被膜形成用塗布液は、通常、(A)成分、(B)成分、及び必要に応じて後記するその他の成分が、溶媒に溶解した溶液状態である。
そのため、本発明に用いる(C)溶媒は、(A)成分、(B)成分、及び必要に応じて後記するその他の成分を、均一に溶解するものであれば特に限定されない。通常は有機溶媒である。
このような溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、乳酸エチルエステル等のエステル類等が挙げられる。
本発明においては、複数の溶媒を用いることもできる。
本発明においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、(A)成分及び(B)成分以外のその他の成分、例えば、無機微粒子、フィラー、レベリング剤、表面改質剤、界面活性剤等の成分が含まれていてもよい。
金属酸化物としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化亜鉛等が挙げられ、金属複酸化物としては、ITO、ATO、AZO、アンチモン酸亜鉛等が挙げられる。また、中空のシリカ微粒子や多孔質シリカ微粒子等も例示することができる。
このような無機微粒子は、粉体及びコロイド溶液のいずれでもよいが、コロイド溶液のものが扱い易いので好ましい。このコロイド溶液は、無機微粒子粉を分散媒に分散したものでもよいし、市販品のコロイド溶液であってもよい。
本発明においては、無機微粒子を含有させることにより、形成される硬化被膜の表面形状やその他の機能を付与することが可能となる。
無機微粒子としては、その平均粒子径が0.001から0.2μmであることが好ましく、更に好ましくは0.001から0.1μmである。無機微粒子の平均粒子径が0.2μmを超える場合には、調製される塗布液によって形成される硬化被膜の透明性が低下する場合がある。
無機微粒子の分散媒としては、水及び有機溶剤を挙げることができる。コロイド溶液としては、被膜形成用塗布液の安定性の観点から、pH又はpKaが2から10に調整されていることが好ましく、より好ましくは3から7である。
また、フィラー、レベリング剤、表面改質剤、界面活性剤等は、公知のものを用いることができ、特に市販品は入手が容易なので好ましい。
本発明の被膜形成用塗布液を調製する方法は特に限定されない。(A)成分と(B)成分が均一な溶液状態であればよい。通常、(A)成分は、溶媒中で重縮合されるので、溶液の状態で得られる。そのため、(A)成分を含有する溶液(以下、(A)成分の溶液という。)をそのまま用いて、(B)成分と混合する方法が簡便である。また、必要に応じて、(A)成分の溶液を、濃縮したり、溶媒を加えて希釈したり又は他の溶媒に置換してから、(B)成分と混合してもよい。更に、(A)成分の溶液と(B)成分を混合した後に、溶媒を加えることもできる。また、(B)成分を(C)溶媒に溶解してから(A)成分の溶液と混合してもよい。
被膜形成用塗布液中のSiO2換算濃度は、0.5から15質量%が好ましく、0.5から6質量%がより好ましい。SiO2換算濃度が0.5質量%より低いと、一回の塗布で所望の膜厚を得ることが難しく、15質量%より高いと、溶液の保存安定性が不足し易い。
希釈や置換等に用いる溶媒は、上記したアルコキシシランの重縮合に用いたものと同じ溶媒でもよいし、別の溶媒でもよい。この溶媒は、(A)成分及び(B)成分との相溶性を損なわなければ特に限定されず、一種でも複数種でも任意に選択して用いることができる。
本発明において、被膜形成用塗布液の具体例を以下に挙げる。
[1](A)成分と、(A)成分の珪素原子の合計量の1モルに対して(B)成分のリン原子が0.01から0.45モルを含有する被膜形成用塗布液。
[2]上記[1]と無機微粒子を含有する被膜形成用塗布液。
[3]上記[1]又は[2]とフィラー、レベリング剤、表面改質剤、及び界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する被膜形成用塗布液。
本発明の被膜形成用塗布液は、基材に塗布し、熱硬化することで所望の被膜を得ることができる。
塗布方法は、公知又は周知の方法を採用できる。例えば、ディップコート法、フローコート法、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェットコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアロールコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアドクターコート法、エアーナイフコート法、ワイヤードクターコート法、リバースコート法、トランスファーロールコート法、マイクログラビアコート法、キスコート法、キャストコート法、スロットオリフィスコート法、カレンダーコート法、ダイコート法等の方法を採用できる。
その際、用いる基材は、プラスチック、ガラス、セラミックス等の公知又は周知の基材を挙げることができる。プラスチックとしては、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、トリメチルペンテン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、(メタ)アクリロニトリル、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース等の板及びフィルム等が挙げられる。
熱硬化に要する時間は、所望の被膜特性に応じて適宜選択することができるが、通常、1時間から10日間である。低い硬化温度を選択する場合は、硬化時間を長くすることで充分な耐擦傷性を有する被膜が得られやすい。
特に、基材がTAC(トリアセチルセルロース)フィルムやPET(ポリエステル)フィルムのような有機基材の場合、基材の耐熱性を考慮して、塗膜の硬化温度は室温から150℃、好ましくは温度10℃から150℃が好ましい。その際、乾燥工程を用いる場合は、室温から150℃の温度領域、好ましくは温度10℃から150℃の温度領域で10秒間から10分間乾燥させることが好ましい。
このようにして得られた本発明の被膜は、水の接触角が80°以上であり、埃拭き取り性に優れるという特徴を有している。加えて、本発明により形成される被膜のうち反射率が低いものは、特に、反射防止用途の低屈折率層として好適に用いることができる。
具体例を挙げると、波長550nmの光について、1.32の屈折率を有する被膜を形成し、ガラス表面からの反射光を防止するには、上記式のλとaにこれらの数値を代入することで最適な膜厚を算出することができる。その際、bは任意の正の整数を代入すればよい。例えば、bに1を代入することによって得られる膜厚は104nmであり、bに2を代入することによって得られる膜厚は312nmである。このようにして算出された被膜厚さを採用することによって、容易に反射防止能を付与することができる。
本実施例における略語を説明する。
TEOS:テトラエトキシシラン
UPS:γ‐ウレイドプロピルトリエトキシシラン
MAS:γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
MPS:γ‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン
GPS:γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
APS:3‐アミノプロピルトリエトキシシラン
F3:トリフルオロプロピルトリメトキシシラン
F13:トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン
F17:ペンタデカフルオロデシルトリメトキシシラン
F12:1,6-ビス(トリメトキシシリルエチル)ドデカフルオロヘキサン
MeOH:メタノール
IPA:イソプロピルアルコール(2‐プロパノール)
n−BuOH:n−ブチルアルコール(1−ブタノール)
PG:プロピレングリコール
PA:リン酸
MePA:リン酸メチル(別名リン酸メチルエステル、モノエステル:ジエステル=50:50(質量%)混合物)
EtPA:エチルホスフェート(別名リン酸エチルエステル、モノエステル:ジエステル=37:63(質量%)混合物)
IPPA:リン酸イソプロピル(別名リン酸イソプロピルエステル、モノエステル:ジエステル=30:70(質量%)混合物)
PhPA:フェニルリン酸(別名リン酸モノフェニルエステル、モノエステル単離品)
EhPA:リン酸2−エチルヘキシル(別名リン酸2−エチルヘキシルエステル、モノエステル:ジエステル=40:60(質量%)混合物)
DdPA:モノn−ドデシルリン酸(別名リン酸モノn−ドデシルエステル、モノエステル単離品)
TMePA:トリメチルリン酸(別名リン酸トリメチル、トリエステル単離品)
[残存アルコキシシランモノマー測定法]
ポリシロキサン(A)の溶液中の残存アルコキシシランモノマーをガスクロマトグラフィー(以下GCと称す。)で測定した。GC測定は島津製作所社製 Shimadzu GC−14Bを用い、下記の条件で測定した。
カラム:キャピラリーカラム CBP1−W25−100(25mm×0.53mmΦ×1μm)
カラム温度:開始温度を50℃として15℃/分で昇温して到達温度290℃(3分)とした。
サンプル注入量:1μL
インジェクション温度:240℃
検出器温度:290℃
キャリヤーガス:窒素(流量30mL/分)
検出法:FID法
還流管を備えつけた4つ口反応フラスコにMeOH32.54gを投入し、撹拌下で蓚酸18.00gを少量づつ添加して、蓚酸のMeOH溶液を調製した。次いでこの蓚酸−メタノール溶液を加熱して還流させてから、MeOH24.73g、TEOS17.71g、F13 7.02gの混合物を滴下した。滴下終了後、還流下で5時間反応を継続した後、放冷してポリシロキサン(A)の溶液(P1)を調製した。このポリシロキサン(A)の溶液(P1)をGCで測定したところ、アルコキシシランモノマーは検出されなかった。
表1に示す組成で、合成例1と同様の方法でポリシロキサン(A)の溶液(P2からP11)を得た。その際、合成例1と同様に、あらかじめ複数種のアルコキシシラン(以下モノマーと称す。)を混合して用いた。得られたポリシロキサン(A)の溶液(P2からP11)をそれぞれGCで測定したところ、モノマーは検出されなかった。
還流管を備えつけた4つ口反応フラスコにMeOH28.83gを投入し、撹拌下でTEOS 27.91g、F13 11.70g、UPS 1.98gを少量づつ添加して、複数種のアルコキシシラン化合物の混合MeOH溶液を調製した。次いでこの混合溶液を室温で攪拌しながら、MeOH 14.42g、水 15.01g、蓚酸0.15gの混合物を滴下した。滴下終了後に加熱を開始し、還流開始から1時間反応を継続した後、放冷してポリシロキサン(A)の溶液(P12)を調製した。このポリシロキサン(A)の溶液(P12)をGCで測定したところ、モノマーは検出されなかった。
表3に示す組成で、ポリシロキサン(A)の溶液にリン酸エステル化合物(B)及び溶媒を混合して被膜形成用塗布液を調製した。この塗布液を用いて、下記に示す保存安定性及び被膜の評価を行った。
表3に示す組成で、ポリシロキサン(A)の溶液に溶媒を混合して塗布液を調製した。この塗布液を用いて、実施例と同様に下記に示す保存安定性及び被膜の評価を行った。但し、比較例6においては、実施例におけるリン酸エステル化合物(B)の代わりにPAを用いた塗布液とし、比較例7においては、TMePAを用いた塗布液として、評価を行った。
表3の組成で調整された被膜形成用塗布液を室温で1ヶ月間静置した後、孔径0.45μm、Φ×L:18×22mmの非水系ポリテトラフルオロエチレンフィルター(倉敷紡績社製、クロマトディスク13N)で100cc濾過し、濾過できるものを○、目詰まりが生じたものを×とした。塗布液の保存安定性の評価結果を表4に示す。
調製した被膜形成用塗布液を、下記に示す処理を施したトリアセチルセルロース(以下、TACと称す。)フィルム(フィルム厚80μm、波長550nmにおける反射率が4.5%)にワイヤーバー(No.3)を用いて塗布し、塗膜を形成した。その後、室温で1分間放置し、クリーンオーブンを用い、温度100℃で5分間乾燥させ、次いで温度40℃で3日間硬化させた。
その際用いたTACフィルムは、日本製紙社製ハードコート付TACフィルム(フィルム厚80μm)を40℃に加熱した5質量%水酸化カリウム(KOH)水溶液に3分浸漬してアルカリ処理を行った後純水洗浄し、次いで室温の0.5質量%の硫酸(H2SO4)水溶液に30秒浸漬してから最後に純水洗浄し、その後温度70℃のオーブン中で1時間乾燥したフィルムである。
得られた被膜について、水接触角、マジック拭取り性、指紋拭取り性、HAZE、透過率、反射率、表面抵抗、摩擦帯電指数、埃拭取り性を評価した。これらの評価方法は下記の通りであり、評価結果は表4及び表5に示す。
協和界面科学社製自動接触角測定装置FACE(CA−W型)を用いて液適法5点平均で測定した。その際、23℃、相対湿度50%の環境で3.0μlの純水の水滴を針先に作り、これを被膜表面に滴下してその接触角を測定した。
被膜面に黒マジック(Magic ink社製 M700−T1)で書き込んだ後、乾燥させてからティッシュペーパーで拭取り、その拭取りレベルを下記基準に従って目視で評価した。
○:マジックを完全に拭取り可能。
△:マジックの大部分は拭取れるが、痕が残る。
×:マジック自体が残り、ほとんど拭取れない。
被膜面に指紋を付着させた後、ティッシュペーパーで拭取り、その拭取りレベルを下記基準に従って目視で評価した。
○:指紋・油分ともに完全に拭取り可能。
△:油分は拭取れるが、指紋の跡が残る。
×:指紋・油分ともに拭取り不可。
東京電色社製SPECIAL HAZE METER TC−1800Hを用いて測定した。
塗布面とは反対側のフィルム面(裏面)をサンドペーパーでこすり、艶消しの黒色塗料を塗布した後、島津製作所社製分光光度計UV−3100PCにUV反射率測定装置MPC−3100を接続して波長範囲400−800nmで測定した。波長550nm、入射角5゜での反射率を測定した。
東亜ディーケーケー社製デジタル絶縁計DSM−8103を用い、表面抵抗値を測定した。その際、23℃、相対湿度50%の環境に3時間以上放置したサンプルを用いた。
摩擦布として洋毛布(モスリン JIS L 0803用)を装着したカネボウエンジニアリング社製カネボウ式摩擦帯電圧測定装置EST−8を用い、23℃、相対湿度50%の環境で3時間以上放置したサンプル被膜面を10回摩擦した後、表面帯電圧値を60秒間測定した。これにより得られる摩擦帯電指数IFC(帯電圧−時間曲線の積分値)で被膜の帯電性を評価した(小さいほど帯電しにくく、埃拭取り性が良い)。本評価法はJIS L 1094に準処したものである。
被膜面上でティッシュペーパーを細かく引き裂いて、被膜面に紙埃を付着させた後ティッシュペーパーにより拭取り、その拭取りレベルを下記基準に従って目視で評価した。
○:拭取り前に付着させた埃の7割以上除去
△:拭取り前に付着させた埃の4から7割除去
×:ほとんど拭取れない
また、比較例6は、実施例と同様に、水接触角が高く埃拭き取り性も良好だったが、1週間経過後のHAZE値が上昇し、実施例1から実施例20のような安定な被膜が得られなかった。
そのため、液晶表示素子をはじめ、プラズマディスプレイ等の表示素子に用いる反射防止膜として非常に有用である。
なお、2006年4月13日に出願された日本特許出願2006−110725号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (12)
- (A)成分であるフッ素原子で置換された有機基を側鎖に持つポリシロキサンと、(B)成分である水酸基がリン原子に結合したリン酸エステル化合物と、を含有する被膜形成用塗布液であって、
(A)成分が、式(1)で表されるアルコキシシラン及び式(2)で表されるアルコキシシランを含むアルコキシシランを、重縮合して得られるポリシロキサンであり、(B)成分が、式(4)で表されるリン酸エステル化合物である、ことを特徴とする被膜形成用塗布液。
- 式(4)のR6が炭素数1から6の有機基である、請求項1又は請求項2に記載の被膜形成用塗布液。
- (A)成分の珪素原子の合計量の1モルに対して、(B)成分のリン原子が0.01から0.45モル含有する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の被膜形成用塗布液。
- (A)成分が、式(1)で表されるアルコキシシランを60から95モル%及び式(2)で表されるアルコキシシランを5から40モル%含有するアルコキシシランを重縮合して得られる、ポリシロキサンである請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の被膜形成用塗布液。
- 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の被膜形成用塗布液を用いて形成される被膜。
- 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の被膜形成用塗布液を用いて形成される反射防止膜。
- 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の被膜形成用塗布液を、基材に塗布し、室温から150℃で乾燥した後、室温から150℃で硬化させる、被膜の形成方法。
- 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の被膜形成用塗布液を、基材に塗布し、室温から150℃で乾燥した後、室温から150℃で硬化させる、反射防止膜の形成方法。
- 請求項6に記載の被膜又は請求項7に記載の反射防止膜を有する反射防止基材。
- 請求項6に記載の被膜又は請求項7に記載の反射防止膜を有する反射防止フィルム。
- 式(1)で表されるアルコキシシランを60から95モル%及び式(2)で表されるアルコキシシランを5から40モル%含有するアルコキシシランと、全アルコキシシランのアルコキシ基の1モルに対して0.2から2モルの蓚酸とを有機溶媒中で液温50から180℃で加熱し、重縮合して得られるポリシロキサンの溶液と;式(4)で表されるリン酸エステル化合物と;を混合することを特徴とする被膜形成用塗布液の製造方法。
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