JP4042196B2 - 防汚剤及び防汚層の形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防汚性を必要とする各種被処理基材の表面に防汚層を形成するために使用する防汚剤、この防汚剤を用いて防汚層を形成する方法及びそれにより得られる防汚層に関する。特に、光学部材(反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プロジェクションテレビ、プラズマディスプレー、ELディスプレー等)の表面に、各種光学部材の光学性能を損なわせることなく防汚層を形成することを可能とする防汚剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プロジェクションテレビ、プラズマディスプレー、ELディスプレー等の光学部材には、人が使用することによって、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着する場合が多い。そのような汚れは、一度付着すると除去することは容易ではなく、特に、反射防止膜付き光学部材では、付着した汚れが目立つために問題となる。
【0003】
そこで、これら汚れの問題を解決する手段として、汚れが付着しにくく、付着しても拭き取りやすい性能を持つ防汚層を光学部材の表面に形成する技術が種々提案されている。
【0004】
例えば、特開昭64−86101号公報には、基材の表面に、主として二酸化ケイ素からなる反射防止膜を設け、更にその表面に有機ケイ素置換基を含む化合物で処理した防汚性、耐擦傷性の反射防止物品が提案されている。特開平4−338901号公報には、同様に基材表面に末端シラノール有機ポリシロキサンを被覆した防汚性、耐擦傷性のCRTフィルターが提案されている。また、特公平6−29332号公報には、プラスチック表面にポリフルオロアルキル基を含むモノ及びジシラン化合物及び、ハロゲン、アルキルまたはアルコキシのシラン化合物とからなる反射防止膜を有する防汚性・低反射性プラスチックが提案されている。更に、特開平7−16940号公報には、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレートとアルコキシシラン基を有する単量体との共重合体を二酸化ケイ素を主とする光学薄膜上に形成した光学部材が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の防汚層の形成技術においては、防汚性が不十分であり、特に、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが拭き取りにくく、また、使用とともに防汚性能が大きく低下する。このため、防汚性と耐久性に優れた防汚層の開発が望まれている。
【0006】
本発明は以上のような従来技術の課題を解決しようとするものであり、種々の被処理基材、特に、反射防止膜等の光学部材の表面に、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着することを防止し、また付着しても容易に拭き取れるようにする優れた防汚性の防汚層を、高い耐久性で形成できるようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成するため、式(1)
【0008】
【化4】
R1f-(CH2)l-Si(NH)3/2 (1)
(但し、R1fはフッ素を有する置換基であり、lは0〜3の整数である。)で示されるオルガノシラザン化合物と、式(3)
【0009】
【化5】
Rf(OC3F6)n-O-(CF2)m-(CH2)1-OH (3)
(但し、R f は炭素数1〜16の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基であり、nは1〜50の整数であり、mは0〜3の整数であり、lは0〜3の整数である。但し、6≧m+l>0である。)で示される水酸基を有するフッ素系化合物とからなることを特徴とする防汚剤を提供する。
【0012】
また、本発明の防汚剤を用いて被処理基材上に防汚層を形成する方法として、本発明の防汚剤をドライコーティング法により被処理基材の少なくとも片面に成膜することを特徴とする防汚層の形成方法を提供し、そのようにして形成された防汚層を提供する。
【0013】
本発明の防汚剤は、特定の式で示される有機シラン化合物(好ましくは、特定の式のオルガノシラザン化合物)とフッ素系化合物とを含有しているため、この防汚剤を用いて被処理基材に防汚層を形成すると、その被処理基材が各種光学部材(反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プロジェクションテレビ、プラズマディスプレー、ELディスプレー等)であった場合に、それらの光学性能を損なわせることなく、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れの付着を防止でき、また、付着した汚れを容易に拭き取ることが可能となり、防汚層の耐久性も優れたものとなる。特に、有機シラン化合物として、加水分解基がアミノ基であるオルガノシラザラン化合物を使用すると、防汚層と被処理基材との密着性が高くなるので、これにより得られる防汚層は、いっそう防汚性及び耐久性に優れたものとなる。
【0014】
さらに、本発明の防汚層の形成方法にしたがい、防汚層を、ドライコーティング法により形成すると、ウェットコーティング法で形成する場合と比較して、防汚層の形成時に防汚剤の希釈溶剤が不要となるので、防汚層形成作業上の安全性が高まり、また、防汚層の膜厚を正確に制御することも可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の防汚剤は、式(1)
【0017】
【化7】
[R1f-(CH2)l]n-(SiA4-n)m (1)
(但し、R1fはフッ素を有する置換基、Aは加水分解基、置換数nは0<n<4、lは0〜3の整数、mは1〜10の整数である)
で示される有機シラン化合物と、
式(2)
【0018】
【化8】
R2f-OH (2)
(但し、R2fはフッ素を有する置換基である)
で示される水酸基を有するフッ素系化合物とを含有する。
【0019】
ここで、式(1)の有機シラン化合物について、フッ素を有する置換基R1fとしては、例えば、C1〜C16の直鎖又は分岐のパーフルオロアルキル基等をあげることができる。
【0020】
また、式(1)の有機シラン化合物において、加水分解基Aは、被処理基材表面の水酸基と結合する反応基であり、これにより被処理基材に防汚層が形成されると考えられる。従って、この加水分解基Aの反応性が高いほど、得られる防汚層と被処理基材との密着性が高まると考えられる。そこで、加水分解基Aとしては、水酸基に対する反応性を有するものとして、アルコキシド基(-OCH3、-OC2H5、-OC3H7等)、ハロゲン元素(-Cl、-Br等)、アミノ基(-NH2等)が例示される。このうち、アルコキシド基は一部が加水分解せずに、残存することが知られている。従って、加水分解基Aとしては、特に反応性の高いアミノ基が好ましい。
【0021】
加水分解基Aがアミノ基である式(1)の有機シラン化合物、即ち、オルガノシラザン化合物として、より具体的には、n-CF3(CH2)2Si(NH)3/2 、n-C3F7(CH2)2Si(NH)3/2 、n-C4F9(CH2)2Si(NH)3/2 、n-C6F13(CH2)2Si(NH)3/2 、n-C8F17(CH2)2Si(NH)3/2 等が例示される。特にn-C8F17(CH2)2Si(NH)3/2 が好ましい。
【0022】
式(1)の有機シラン化合物における置換数nは、0<n<4とすることが好ましい。
【0023】
一方、式(2)で示されるフッ素系化合物としては、n-CF3(CH2)2OH、n-C3F7(CH2)2OH、n-C4F9(CH2)2OH、n-C6F13(CH2)2OH、n-C8F17(CH2)2OH等が例示される。
【0024】
また、式(2)で示されるフッ素系化合物としては、式(3)
【0025】
【化9】
Rf-(OC3F6)n-O-(CF2)m-(CH2)1-OH (3)
(但し、Rf は炭素数1〜16の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基、nは1〜50の整数、mは0〜3の整数、lは0〜3の整数、但し、6≧m+l>0である)で示される化合物が好ましく、特に、Rf が-CF3、-C2F5、-C3F7であるフッ素系化合物が好ましい。
【0026】
本発明の防汚剤は、上述の式(1)の有機シラン化合物及び式(2)のフッ素系化合物の他、必要に応じて種々の添加剤を含有することができる。例えば、式(1)の有機シラン化合物の加水分解、重縮合を促進させる触媒を含有させることができる。
【0027】
このような触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、フッ酸、ギ酸、リン酸、シュウ酸、アンモニア、アルミニウムアセチルアセトナート、ジブチルスズジラウレート、オクチル酸スズ化合物、メタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、トリフロロ酢酸等が例示できる。これらは、単独にあるいは2種類以上併せて用いてもよい。
【0028】
本発明の防汚剤が、防汚層の形成対象とする被処理基材には特に制限はなく、例えば、ガラス板、または無機化合物層を含有したガラス板等の無機基材や、透明プラスチック基材、または無機化合物層を含有した透明プラスチック基材等の有機基材からなる通常の光学部材をあげることができる。
【0029】
このうち、無機基材としては、主にガラス板をあげることができる。無機化合物層を含有したガラス板を形成する当該無機化合物としては、金属酸化物〔酸化ケイ素(二酸化ケイ素、一酸化ケイ素等)、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、ITO(Indium Tin Oxide)等〕、金属ハロゲン化物(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化ランタン、フッ化セリウム、フッ化リチウム、フッ化トリウム等)をあげることができる。
【0030】
これら無機化合物からなる無機基材あるいは無機化合物層は、単層あるいは多層構成とすることができ、これらはウェットコーティング法(ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法等)、PVD(Physical Vapor Deposition)法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法)、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の公知の方法により形成される。
【0031】
また、被処理基材となる有機基材のうち、透明プラスチック基材としては、種々の有機高分子からなる基材をあげることができる。通常、光学部材として使用される基材は、透明性、屈折率、分散性などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性の点から、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド系(ナイロン−6、ナイロン−66等)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、アクリル、セルロース系(トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等)、あるいはこれらの有機高分子の共重合体などからなっているが、本発明が被処理基材とする透明プラスチック基材としてもこれらの基材をあげることができる。
【0032】
これらの有機基材を構成する有機高分子に、公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を含有させたものも使用することができる。
【0033】
また、被処理基材とする無機基材あるいは有機基材の形状は、特に限定されるものではないが、通常、光学部材として使用される透明プラスチック基材はフィルム状またはシート状をなしており、本発明の防汚剤もこれらフィルム状又はシート状のものを被処理基材とすることができる。このフィルム状またはシート状の基材としては、単層あるいは複数の有機高分子を積層したものでもよい。また、その厚みは、特に限定されるものではないが、0.01〜5mmが好ましい。
【0034】
また、上述のような有機基材上に無機化合物層を形成した被処理基材の当該無機化合物層としては、前述の無機基材を構成する無機化合物層と同様の無機化合物を用いて同様の手法により形成することができる。
【0035】
本発明が被処理基材とする光学部材としては、透明プラスチック基材と無機化合物層との間にハードコート層を有するものでもよい。このハードコート層を設けることにより、基材表面の硬度が向上すると共に、基材表面が平滑になり、透明プラスチック基材と無機化合物層との密着が向上するので、鉛筆等の荷重のかかる引っ掻きによる傷を防止でき、また、透明プラスチック基材の屈曲により無機化合物層にクラックが発生することを抑制でき、光学部材の機械的強度を改善できる。
【0036】
ハードコート層は透明性と適度な硬度と機械的強度があれば、特に限定されるものではない。例えば、電離放射線や紫外線の照射による硬化樹脂や熱硬化性の樹脂が使用でき、特に紫外線照射硬化型アクリル系樹脂、有機ケイ素系樹脂、熱硬化型ポリシロキサン樹脂が好ましい。これらの樹脂は透明プラスチック基材と屈折率が同等もしくは近似していることがより好ましい。
【0037】
ハードコート層の膜厚は3μm以上あれば十分な強度となるが、透明性、塗工精度、取り扱い性の点から5〜7μmの範囲が好ましい。
【0038】
また、ハードコート層に平均粒子径0.01〜3μmの無機あるいは有機物粒子を混合分散させか、または、表面形状を凹凸にすることで一般的にアンチグレアと呼ばれる光拡散性処理を施すことができる。これらの微粒子は透明であれば特に限定されるものではないが、低屈折率材料が好ましく、酸化ケイ素、フッ化マグネシウムが安定性、耐熱性等で好ましい。
【0039】
このようなハードコート層の塗布方法は均一に塗布されるのであれば、いかなる方法でも構わない。
【0040】
本発明の防汚剤が被処理基材とする光学部材の具体的用途としては、例えば、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プロジェクションテレビ、プラズマディスプレー、ELディスプレー等をあげることができる、これらは公知の方法により製造されたものとすることができ、例えば、反射防止膜は、透明プラスチック基材の少なくとも片面に、無機化合物の単層または多層の薄膜公知の手法により形成したものとすることができる。
【0041】
以上のような被処理基材に本発明の防汚剤を用いて防汚層を形成する方法には特に制限はなく、ウェットコーティング法(ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法等)によってもよく、また、ドライコーティング法〔真空蒸着法(抵抗加熱法、電子線ビーム法、高周波加熱法、イオンビーム法等)、スパッタリング法、CVD法(プラズマCVD法、光CVD法、熱CVD法等)等〕によってもよい。本発明の防汚剤を任意の方法で用いることにより被処理基材の少なくとも片面に防汚層を形成することができる。
【0042】
ウェットコーティング法による場合、希釈溶媒としては、特に限定されないが、組成物の安定性、揮発性などを考慮して、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン等の通常の炭素数5〜12のパーフルオロ脂肪族炭化水素、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等の多フッ素化芳香族炭化水素、多フッ素化脂肪族炭化水素等があげられる。また、溶媒は1種類のみならず2種類以上の混合物として用いることも可能である。
【0043】
ただし、防汚層形成時の作業環境や、防汚層の層厚の制御の点からは、希釈溶媒を必要としないドライコーティング法によることが好ましく、特に、真空蒸着法によることが好ましい。
【0044】
即ち、従来の防汚層は、ウェットコーティング法により被処理基材の表面に防汚剤を塗布することにより作製されている。このようなウェットコーティング法では、防汚剤は揮発性溶媒で希釈して使用されるために、環境対策あるいは防火対策が必要であり、作業性が悪いという欠点がある。また、膜厚を正確に制御しにくいと言う問題点もある。
【0045】
また、一般的に有機金属化合物からなる防汚剤は、一般有機溶剤への溶解性が低く、フロン規制対象物である1,1,3−トリクロロトリフロロエタンのようなフロン類や、高価なフッ化炭化水素類にしか安定に溶解しないという問題点もある。
【0046】
これに対して、ドライコーティング法は、希釈溶媒を使用しなくても良いという利点がある。
【0047】
また、従来困難であった防汚層の膜厚をオングストロームオーダーで正確に制御することができ、所望の防汚層を有する光学部材を提供できる。さらに、反射防止膜を有する光学部材については、色設定が難しい反射防止膜の干渉色を変化させることなく、容易に防汚性を付与することが可能である。
【0048】
なお、防汚層をドライコーティング法により形成する場合、その膜厚は防汚剤の蒸発量に依存して変化する。したがって、防汚層の膜厚を正確に制御するためには、防汚剤の蒸発量を正確に制御することが好ましい。
【0049】
ドライコーティング法により、あるいはウェットコーティング法により被処理基材上に防汚層を成膜した後は、必要に応じて、加熱、加湿、光照射、電子線照射等を行ってもよい。
【0050】
こうして形成される防汚層の膜厚には、特に限定はないが、防汚性、耐擦傷性及び光学部材の光学性能の点から、通常、10〜500Åとすることが好ましい。
【0051】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は実施例に記載に限定されるものではない。
【0052】
実施例1
攪拌装置、滴下ロートを装備した100mlの二つ口フラスコ中に、CF3(CF2)7(CH2)2Si(NH)3/2をビス(トリフルオロメチル)ベンゼンで3wt%に希釈した溶液(KP801M:信越化学工業社製)(0.13g)を添加し、十分に攪拌を続けながら、滴下ロートよりC3F7-(OC3F6)24-O-(CF2)2-CH2-OH(0.13g)を滴下し、防汚剤を合成した。
【0053】
トリアセチルセルロースフィルム上にハードコート層と反射防止膜を積層したものを被処理基材とし、これに真空蒸着法(抵抗加熱法)で上述の防汚剤を成膜し、防汚層を形成した。
【0054】
この真空蒸着法を行うに際しては、ボート中の防汚剤の固形量を5mgとし、5×10-5Torr以下に真空排気した後、ボートを400℃に加熱し、防汚剤を蒸発させた。
【0055】
比較例1
CF3(CF2)7(CH2)2Si(NH)3/2(KP801M:信越化学工業社製)を防汚剤に用い、実施例1と同様にして反射防止膜上に防汚層を形成した。
【0056】
評価
上記の実施例及び比較例で得られた防汚層を試料とし、次の各種物性評価を行った。この結果を表1に示す。
【0057】
(a)接触角測定:接触角計(CA−X型:協和界面科学(株)製)を用いて、乾燥状態(20℃−65%RH)で直径1.8mmの液滴を針先に作り、これを試料(固体)の表面に接触させて液滴を作った。接触角とは、固体と液体が接触する点における液体表面に対する接線と固体表面がなす角で、液体を含む方の角度で定義した。液体には、蒸留水とn−ヘキサデカンをそれぞれ使用した。
【0058】
(b)転落角測定:転落角計(CA−X型:協和界面科学(株)製)を用いて、乾燥状態(20℃−65%RH)で直径3.0mmの液滴を針先に作り、これを水平な試料(固体)の表面上に接触させて液滴を作った。次にこの固体試料を徐々に傾けていくと、液滴は徐々に変形し、傾斜角度がある角度に達したとき、液滴は下方へ滑り出す。このときの傾斜角度を転落角とした。液体には、蒸留水とn−ヘキサデカンをそれぞれ使用した。
【0059】
(c)油性ペンの付着性:試料表面に油性ペン(マジックインキ:細書き用No.500)を用いて、長さ1cmの直線を書き、その付き易さあるいは目立ち易さの目視判定を行った。判定基準は次の通りとした。
【0060】
○:油性ペンによる筆跡が球状にはじけている
×:油性ペンによる筆跡がはじかれずに、直線が描けている
【0061】
(d)油性ペンの拭き取り性:試料表面に付着した油性ペンをセルロース製不織布(ペンコットM−3:旭化成(株)製)で拭き取り、その取れ易さの目視判定を行った。判定基準は次の通りとした。
【0062】
○:油性ペンを完全に拭き取ることができる
△:油性ペンの拭き取り跡が残る
×:油性ペンを拭き取ることができない
【0063】
(e)指紋の付着性:試料表面に指を数秒押しつけて、指紋を付着させ、その付き易さあるいは目立ち易さの目視判定を行った。判定基準は次の通りとした。
【0064】
○:指紋の付着が少なく、付いた指紋が目立たない
×:指紋の付着が確認できる
【0065】
(f)指紋の拭き取り性:試料面に付着した指紋をセルロース製不織布(ペンコットM−3:旭化成(株)製)で拭き取り、その取れ易さを目視判定を行った。判定基準は次の通りとした。
【0066】
○:指紋を完全に拭き取ることができる
△:指紋の拭き取り跡が残る
×:指紋を拭き取ることができない
【0067】
(g)耐摩耗性:試料表面をセルロース製不織布(ペンコットM−3:旭化成(株)製)で荷重500gfで100回擦った後に、前記各種物性評価(a)〜(f)を行った。
【0068】
【表1】
【0069】
表1から実施例1の防汚層は、比較例1の防汚層に比して、蒸留水やn−ヘキサデカンに濡れにくく、また、指紋や油性汚れが付着しにくく、かつ付着した汚れが落ちやすく、優れた防汚性を有していることがわかる。また、この実施例の防汚性は耐摩耗性試験後も維持されていることから、実施例の優れた防汚性は耐久性を有していることがわかる。
【0070】
【発明の効果】
本発明の防汚剤を用いて光学部材の表面上に形成した防汚層は、従来の防汚剤を用いて形成した防汚層に比して、光学部材の光学性能を損なわせることがなく、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れを付着しにくくし、また、付着しても拭き取りやすくし、かつこのような防汚効果の耐久性に優れている。
【0071】
さらに、本発明の防汚剤を用いてドライコーティング法により防汚層を形成すると、従来のウェットコーティング法と比較して、防汚層形成のための希釈溶媒が不要となり、また、防汚層の膜厚の正確な制御も可能となる。
Claims (6)
- 請求項1に記載の防汚剤をドライコーティング法により被処理基材の少なくとも片面に成膜することを特徴とする防汚層の形成方法。
- 請求項1に記載の防汚剤を被処理基材の少なくとも片面に成膜後、さらに加熱、加湿、光照射、又は電子線照射を行う請求項2記載の防汚層の形成方法。
- 被処理基材が光学部材である請求項2又は3記載の防汚層の形成方法。
- 光学部材が反射防止膜である請求項4記載の防汚層の形成方法。
- 請求項2〜5のいずれかに記載の方法により形成された防汚層。
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