JP5285848B2 - ビスフェノール類のジオキシエチレンエーテルの製造方法および組成物 - Google Patents

ビスフェノール類のジオキシエチレンエーテルの製造方法および組成物 Download PDF

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本発明は、副生成物としてのビスフェノール類のエチレンオキサイド1モル付加物とエチレンオキサイド3モル以上付加物が少ない、ビスフェノール類のジオキシエチレンエーテルの製造方法に関する。更に詳しくは、ポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂の改質剤として用いられるビスフェノールAのジオキシエチレンエーテルの製造方法、およびその組成物に関する。
従来よりポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂にビスフェノール骨格を導入する目的で、ビスフェノールそのものよりも反応性の良い改質剤として、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、臭素化ビスフェノールAなどのビスフェノール類やこれらのアルキレンオキサイド付加物が知られている(例えば特許文献1、2)。
しかしながら、上記のビスフェノール類、特にビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、フェノール酸性の水酸基が残存していると多塩基酸との縮合反応性が低く、フェノール酸性の水酸基をなくすためにアルキレンオキサイドの量を多くすると樹脂が柔らかくなり、樹脂のガラス転移点を上昇させるという点において品質的に満足し得なかった。
アルキレンオキサイドがプロピレンオキサイドの場合は、公知の製造方法でジオキシプロピレンエーテルが98%以上の純度で得られるが、水酸基が98%以上2級水酸基となるため、多塩基酸との縮合による高分子化する時の反応性が悪いという問題点を有する。
また、アルキレンオキサイドがエチレンオキサイドの場合は、未反応の原料のビスフェノール系化合物や1モル付加物が残存したり、3モル付加物が多く生成するため、ジオキシエチレンエーテルの純度が低下し(例えば、特許文献3)、前述した樹脂の物性そのものに影響を与えるいう問題点を有するため、副生物の少ないジオキシエチレンエーテルが望まれている。
また、ジオキシエチレンエーテルの高純度物を得る方法はあるが、水洗等の煩雑な精製操作を必要とし、収率も低い(例えば、特許文献4)。
特開2006−227540号公報 特開平9−136978号公報 特開2000−86562号公報 特開昭50−105638号公報
そこで、本発明はビスフェノール類のフェノール性水酸基のみに選択的かつ効率的にエチレンオキサイド(以下、EOと略す。)と反応させ、未反応のビスフェノール類が検出されず、EO1モル付加物が0.1%以下、EO3モル以上付加物が5%以下である、ビスフェノール類のジオキシエチレンエーテル(EO2モル付加物)を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、ビスフェノールA及びビスフェノールSからなる群より選ばれる1種以上であるビスフェノール類にエチレンオキサイドを付加して該ビスフェノール類のジオキシエチレンエーテル(A)を製造する方法において、触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを存在させ、70〜110℃で付加反応させることで、精製することなく直接製造され、該ビスフェノール類のエチレンオキサイド1モル付加物が0.1重量%以下、かつ該ビスフェノール類のエチレンオキサイド3モル付加物が5.0重量%以下であることを特徴とするビスフェノール類のジオキシエチレンエーテル(A)の製造方法である。
本発明のビスフェノール類のジオキシエチレンエーテルは、水洗や濾過などの精製工程を必要とせず、純度の高いジオキシエチレンエーテルが得られ、生産効率もよく、高収率で得られる。また、ビスフェノールAのジオキシエチレンエーテルにおいては、従来品よりも比熱が高くなり、凝固しやすく生産性が上がる。各種樹脂に用いた時のガラス転移温度(TG)も上昇させることができる。
本発明において、ビスフェノール類のジオキシエチレンエーテル(A)とは、2つのフェノール性水酸基の両方に1モルづつエチレンオキサイド(以下EOという)が付加したものをいう。
ここで「直接製造され」とは、該(A)を水洗、濾過等の精製工程等により未反応のビスフェノール類や生成したEO1モル付加物、EO3モル付加物を分別する操作なしで直接得られたものであることを意味する。
分別を要するものは工程が煩雑となり、廃液も多く発生して経済性が劣り、環境にも悪く、(A)を通常の汎用樹脂原料として用いるにはコスト面での実用性がない。
本発明のビスフェノール類とは、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFやそのハロゲン化誘導体(例えば、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、テトラクロロビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールF、テトラクロロビスフェノールF)などが挙げられる。
本発明のビスフェノール類へのEO付加反応は、EO3モル付加物の生成を抑制するため、その反応温度は、通常70〜110℃であり、80〜100℃が好ましい。
なお、一般に、ビスフェノール類は、その融点が150℃以上(例えば、ビスフェノールAは158〜159℃)であるため、EOを均一系で付加反応させるには、反応媒体が必要となる。
反応媒体としては、ビスフェノール類のジオキシエチレンエーテル(A)そのもの、またはトルエン、キシレンなどの有機溶剤が挙げられる。
有機溶剤を使用した場合は、反応後に除去が必要となるので、好ましくは(A)そのものである。
反応媒体の量は、通常ビスフェノール類に対して20〜50重量%用いる。好ましくは25〜40重量%、さらに好ましくは25〜30重量%である。媒体として(A)を用いる場合は、まず(A)を溶解させ、そこへビスフェノール類を分散させてスラリー状にする。そこへ触媒を添加する。
本発明では、触媒として4級アンモニウム塩を用いることを必須とする。
4級アンモニウム塩として特に限定されないが、炭素数1〜3のアルキル基からなる4級アンモニウムカチオンが好ましく、対アニオンはハロゲンアニオン、ヒドロキシアニオンが好ましい。
好ましい具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムクロライド、エチルトリメチルアンモニウムクロライド、プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらのうち、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムクロライドであり、特に好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。
触媒の添加量は通常、ビスフェノール類のジオキシエチレンエーテル(A)の仕上がり量に対して純分で0.05〜1.0重量%である。好ましくは0.1〜0.5重量%、さらに好ましくは0.2〜0.3重量%である。
エチレンオキサイドに限らずアルキレンオキサイドの付加反応は通常脱水を行うが、本発明では脱水せず、EO付加反応前の水分量を0.01〜1.0重量%に調整することが好ましい。その水分量は、好ましくは0.1〜0.5重量%である。水分量を0.01〜1.0重量%にすることで触媒の反応活性を上げることができ、ポリエチレングリコールもほとんど副成しない。また、触媒の形態は通常水溶液であり、そのまま用いることができる。
また、触媒と同時に着色防止目的で水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を使用してもよい。そのときの使用量はビスフェノール類のジオキシエチレンエーテル(A)仕上がり量に対して10ppm〜50ppmが好ましい。
EOの滴下反応は、通常、温度70〜110℃で行う。好ましくは80〜100℃、さらに好ましくは85〜95℃である。反応温度が低いと反応時間を要し途中で凝固することがあり、高いとEOの反応選択性が低下しEO1モル付加物やEO3モル付加物が増加する。
反応圧力は0.5MPa以下で行うことが好ましい。0.5MPa以下であれば、反応の暴走による急激な圧力上昇、温度上昇は起こらない。
EOの反応系内への供給量はビスフェノール類1モルに対して2.05〜2.20モルが好ましい。さらに好ましくは2.10〜2.15モルである。2.05〜2.20モルで目的とするジオキシエチレンエーテル(A)が得られる。
以上の条件で反応を行えば、EOがビスフェノール類のフェノール性の水酸基に選択的に反応し、原料であるビスフェノール類、EO1モル付加物は消費され、反応系中にほとんど残存しない。また、EO3モル付加物は5.0重量%以下、好ましくは3.0重量%以下とすることができる。
反応終了後、触媒の分離が必要でない場合には、塩酸、リン酸などの鉱酸または乳酸、酢酸などの有機酸でpHを6〜8に調整すればよい。触媒の分離が必要な場合には、水洗や吸着剤による吸着ろ過処理を行ってもよい。
また、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを本発明の触媒として用いた場合には、150〜170℃まで昇温し、触媒を分解減圧除去してもよい。
本発明の製造方法で得られるビスフェノールAのジオキシエチレンエーテル(A)は、示差走査熱量計におけるその比熱が、通常85J/g以上、好ましくは95J/g以上であることを特徴とする。
副生成物としてのEO1モル付加物やEO3モル付加物は、その分子構造が非対称であるため非結晶性となり、その溶融物は凝固しにくい傾向がある。従ってこれらの付加物を不純物として含有する組成物は、一旦溶融した後に冷却しても凝固しにくい。従来の方法で製造した副生成物の含有量が高い組成物は、その比熱が低く、融点温度幅も広いためすぐには凝固せず、通常のフレーク化設備では生産が困難であり、放置冷却させるための容器に取り出して凝固させるのに30〜50時間を要する。さらに、その粉砕物は、貯蔵中にブロッキングを起こしやすく、取扱い上問題がある。
これに対し比熱が高くなり融点温度幅が狭くなると冷却によって凝固しやすくなり通常のフレーク化設備が使用できるようになり生産性が大幅に上がる。ここでいう通常のフレーク化設備としてはドラムドライヤー、テーブルフレーカー、ダブルベルトフレーカーなどがある。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
本発明のビスフェノール類のジオキシエチレンエーテル(A)、および微量成分の他のエチレンオキサイド付加物の組成、およびそれらと未反応ビスフェノール類自体の含有比率はガスクロマトグラフ(GC)によって確認できる。一例として、測定条件は次の通りであった。
<試料調整方法>
試料1gを採取し、次いでアセトン19gを加えて溶解させる。この試料にTMS−H1(シリル化剤、東京化成製)を0.1ml加え、2〜3分間、50〜70℃に温めシリル化を完結させる。この上澄みを1μl採取し、GC測定を行う。
<GCの測定条件>
GC機種 :GC−14B(島津製作所製)
充填剤:シリコンGE−SE−52(4%)、担体CromosorbG(AW−DMCS) ;150〜180μm (和光純薬製パックドカラム)
カラム温度 :250〜350℃(昇温速度10℃/分)
検出器 :FID
溶媒 :アセトンまたはメチルエチルケトン
キャリアガス :窒素 流量50ml/分
実施例1
内容量1100mlのガラス製オートクレーブに、トルエン143.5g(ビスフェノール類に対して40%)、ビスフェノールA358.7g(1.57mol)を仕込み、窒素置換を行った後、75℃まで昇温し、ビスフェノールAをトルエンに分散させた。ここにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%水溶液を2.93g(純分で仕上がり量に対し0.14%)を添加した(水分量は計算値で0.44%)。再度窒素置換を行い、EO148.6g(3.38mol)を75〜95℃、反応圧0.2MPa以下の範囲で滴下反応させた。8時間で反応終了し、反応後、130〜160℃、減圧下で未反応EO、トルエン、触媒を留去し、本発明のビスフェノールAジオキシエチレンエーテル(A−1)を500g(収率98.7%)得た。
この(A−1)をGCにて分析したところ、ビスフェノールAは検出されず(以下、「検出されず」を「N.D.」と略記する。)EO1モル付加物N.D.、EO2モル付加物99.4%、EO3モル付加物0.6%、EO4モル付加物N.D.であった。また、(A−1)の比熱は110J/gであった。
実施例2
内容量1100mlのガラス製オートクレーブに、実施例1で得られた(A−1)を89.7g(ビスフェノール類に対して25%)を溶融させて反応系の溶媒として入れた。、110℃まで加熱してこれを溶融した後、ビスフェノールA358.7g(1.57mol)を仕込み、窒素置換を行った後、95℃まで冷却し、ビスフェノールAを分散させた。ここにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%水溶液を2.93g(純分で仕上がり量に対し0.14%)を添加した(水分量は計算値で0.49%)。再度窒素置換を行い、EO148.6g(3.38mol)を75〜95℃、反応圧0.2MPa以下の範囲で滴下反応させた。7時間で反応終了し、反応後、130〜160℃、減圧下で未反応EO、触媒を留去し、本発明のビスフェノールAジオキシエチレンエーテル(A−2)を593g(収率99.3%)得た。
この(A−2)をGCにて分析したところ、ビスフェノールAはN.D.、EO1モル付加物N.D.、EO2モル付加物99.6%、EO3モル付加物0.4%、EO4モル付加物N.D.であった。また(A−2)の比熱は110J/gであった。
実施例3
内容量1100mlのガラス製オートクレーブに、トルエン143.5g(ビスフェノール類に対して40%)、テトラブロモビスフェノールA544g(1.0mol)を仕込み、窒素置換を行った後、105℃まで昇温し、テトラブロモビスフェノールAをトルエンに分散させた。ここにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%水溶液を2g(純分で仕上がり量に対し0.08%)を添加した。再度窒素置換を行い、EO94.6g(2.15mol)を85〜110℃、反応圧0.2MPa以下の範囲で滴下反応させた。5時間で反応終了し、反応後、130〜160℃、減圧下で未反応EO、トルエン、触媒を留去し、本発明のテトラブロモビスフェノールAジオキシエチレンエーテル(A−3)を634.6g(収率99.4%)得た。
この(A−3)をGCにて分析したところ、テトラブロモビスフェノールAはN.D.、EO1モル付加物N.D.、EO2モル付加物98.8%、EO3モル付加物1.2%、EO4モル付加物N.D.であった。
実施例4
内容量1100mlのガラス製オートクレーブに、トルエン150.0g(ビスフェノール類に対して30%)、ビスフェノールS500.0g(2.0mol)を仕込み、窒素置換を行った後、95℃まで昇温し、ビスフェノールSをトルエンに分散させた。ここにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%水溶液を2g(純分で仕上がり量に対し0.08%)を添加した。再度窒素置換を行い、EO189.2g(4.3mol)を75〜95℃、反応圧0.2MPa以下の範囲で滴下反応させた。8時間で反応終了し、反応後、160〜180℃、減圧下で未反応EO、トルエン、触媒を留去し、本発明のビスフェノールSジオキシエチレンエーテル(A−4)を684.2g(収率99.3%)得た。
この(A−4)をGCにて分析したところ、ビスフェノールSはN.D.、EO1モル付加物N.D.、EO2モル付加物99.2%、EO3モル付加物0.8%、EO4モル付加物N.D.であった。
比較例1
内容量1100mlのガラス製オートクレーブに、トルエン143.5g(ビスフェノール類に対して40%)、ビスフェノールA358.7g(1.57mol)を仕込み、窒素置換を行った後、150℃まで昇温し、ビスフェノールAをトルエンに溶解させた。ここに水酸化カリウムを0.5g(純分で仕上がり量に対し0.1%)を添加した。再度窒素置換を行い、EO148.6g(3.38mol)を120〜140℃、反応圧0.2MPa以下の範囲で滴下反応させた。6時間で反応終了し、反応後、130〜160℃、減圧下で未反応EO、トルエンを留去し、比較のためのビスフェノールAジオキシエチレンエーテル(B−1)を500g(収率98.7%)得た。 この(B−1)をGCにて分析したところ、ビスフェノールAは0.8%、EO1モル付加物が15.8%、EO2モル付加物77.7%、EO3モル付加物5.4%、EO4モル付加物0.3%であった。また、(B−1)の比熱は68J/gであった。
比較例2
内容量1100mlのガラス製オートクレーブにトルエン143.5g(ビスフェノール類に対して40%)、ビスフェノールA358.7g(1.57mol)を仕込み、窒素置換を行った後、120℃まで昇温し、ビスフェノールAをトルエンに分散させた。ここにトリエチルアミンを2.1g(純分で仕上がり量に対し0.4%)を添加した。再度窒素置換を行い、EO158.8g(3.61mol)を120〜140℃、反応圧0.2MPa以下の範囲で滴下反応させた。6時間で反応終了し、反応後、130〜160℃、減圧下で未反応EO、トルエン、触媒を留去し、比較のためのビスフェノールAジオキシエチレンエーテル(B−2)を502g(収率97%)得た。
この(B−2)をGCにて分析したところ、ビスフェノールAはN.D.、EO1モル付加物はN.D.、EO2モル付加物81.4%、EO3モル付加物17.4%、EO4モル付加物1.2%であった。また、(B−2)の比熱は76J/gであった。
比較例3
内容量1100mlのガラス製オートクレーブにトルエン143.5g(ビスフェノール類に対して40%)、ビスフェノールA358.7g(1.57mol)を仕込み、窒素置換を行った後、75℃まで昇温し、ビスフェノールAをトルエンに分散させた。ここにトリエチルアミンを2.1g(純分で仕上がり量に対し0.4%)を添加した。再度窒素置換を行い、EO151.8g(3.45mol)を120〜140℃、反応圧0.2MPa以下の範囲で滴下反応させた。6時間で反応終了した。反応後、さらに反応物を塩酸で中和した後、温水1200部を添加し、60〜85℃で撹拌静置後、上層の水洗物を分離した。この水洗操作を3回繰り返し、上層を減圧下でトルエン、水を留去し、比較のためのビスフェノールAジオキシエチレンエーテル(B−3)を459g(収率90%)得た。
この(B−3)をGCにて分析したところ、ビスフェノールAは0.1%、EO1モル付加物は0.3%、EO2モル付加物97.1%、EO3モル付加物1.4%、EO4モル付加物N.D.であった。またこの場合1.1%相当のポリエチレングリコールが副生していた。さらに、(A−3)の比熱は106J/gであった。
比較例4
比較例1の反応温度120〜140℃を75〜95℃に換えた以外は同様に反応を行った。反応温度が低いため、反応に24時間要した。比較のためのビスフェノールAジオキシエチレンエーテル(B−4)を500g(収率98.7%)得た。
この(B−4)をGCにて分析したところ、ビスフェノールAは0.1%、EO1モル付加物が16.4%、EO2モル付加物79.7%、EO3モル付加物3.6%、EO4モル付加物0.2%であった。また(A−4)の比熱は62J/gであった。
以上の実施例1〜4および比較例1〜4の製造条件、生成物の組成、示差走査熱量計(DSC)で測定した比熱の結果を表1に示す。なお、(A−3)と(A−4)の原料のビスフェノール類はビスフェノールAではないため、比熱の測定は省略した。
さらに、実施例1、2で得られたビスフェノールAのジオキシエチレンエーテル(A−1)、(A−2)、および比較例1、2で得られた(B−1)、(B−2)をそれぞれ用いて、以下の方法で実施例5、6と比較例例5、6で共重合ポリエステルを合成した。
<共重合ポリエステルの合成方法>
実施例5
ジメチルテレフタレート、エチレングリコール(ジメチルテレフタレートに対してモル比2.0)、本発明のビスフェノールAのジオキシエチレンエーテル(A−1)(共重合率70モル%となるように計量)、および触媒として酢酸マグネシウム(ジメチルテレフタレートに対して0.08重量%)、三酸化アンチモン(ジメチルテレフタレートに対して0.03重量%)をエステル交換缶に仕込み、135℃で原料を溶融させた後、230℃まで4時間かけて昇温し、エステル交換反応で生じるメタノールを系外に留出させた(常圧下から減圧下;反応率98%以上)。さらに、リン酸トリメチルを0.12重量%(対ジメチルテレフタレート)添加し30分反応させた後、重合缶に移し、1時間30分かけて240℃から290℃まで昇温させ、昇温開始と同時に常圧から1mmHg以下へ1時間かけて減圧にした。さらに、3時間重合し、ジオール成分としてビスフェノールAのジオキシエチレンエーテルが70モル%共重合されたポリエステル(a−1)を得た。
共重合ポリエステル(a−1)を示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移点Tgは78℃であった。
実施例6、比較例5、6
実施例5で用いた(A−1)を(A−2)、および(B−1)、(B−2)に代える以外は同様にして、ジオール成分としてビスフェノールAのジオキシエチレンエーテルが70モル%共重合されたポリエステル(a−2)、および(b−1)、(b−2)を得た。
これらのTgの測定結果を表2に示す。
実施例および比較例の評価結果から、本発明のビスフェノール類のジオキシエチレンエーテルの製造方法は、精製することなく直接製造され、不純物が少なく、収率が高いことが明らかである。また、ビスフェノールAを使用して製造した本発明のビスフェノールAジオキシエチレンエーテル(A)の比熱や、(A)を使用したポリエステル樹脂のTgが大きくなり、融着などが起こりにくい経時保存安定性の良いものが得られることがわかる。
本発明の製造法で得られたビスフェノール類のジオキシエチレンエーテルは、精製することなく直接製造されるもので収率が高く、従来品よりも不純物が少ないため、ポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネートの改質剤として有用である。また、本発明のビスフェノール類のジオキシエチレンエーテルの水酸基を変性、例えばエピクロルヒドリンによるエポキシ変性、アリルクロライドによるアリル変性、(メタ)アクリル酸によるアクリル変性しても、従来とは物性の異なる樹脂原料となり有用である。

Claims (2)

  1. ビスフェノールA及びビスフェノールSからなる群より選ばれる1種以上であるビスフェノール類にエチレンオキサイドを付加して該ビスフェノール類のジオキシエチレンエーテル(A)を製造する方法において、触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを存在させ、70〜110℃で付加反応させることで、精製することなく直接製造され、該ビスフェノール類のエチレンオキサイド1モル付加物が0.1重量%以下、かつ該ビスフェノール類のエチレンオキサイド3モル付加物が5.0重量%以下であることを特徴とするビスフェノール類のジオキシエチレンエーテル(A)の製造方法。
  2. エチレンオキサイド付加前の系中の水分量が0.01〜1.0重量%である請求項1に記載のビスフェノール類のジオキシエチレンエーテル(A)の製造方法。
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