JP5283249B2 - 研磨液組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、研磨液組成物の製造方法、及び該製造方法で得られる研磨液組成物に関する。
近年のメモリーハードディスクドライブには、高容量・小径化が求められ、記録密度を上げるために磁気ヘッドの浮上量を低下させて、単位記録面積を小さくすることが求められている。それに伴い、磁気ディスク用基板の製造工程においても研磨後に要求される表面品質は年々厳しくなってきており、ヘッドの低浮上化に対応して、表面粗さ、微小うねりの低減が求められてきている。かかる要求を満たすために、研磨後の基板のスクラッチを低減し得る研磨剤スラリーが知られている(特許文献1及び特許文献2)。
そして、最近では、より平滑で、傷が少ないといった表面品質向上と生産性向上の両立の観点から、2段階以上の研磨工程を有する多段研磨方式が採用されるようになってきた。多段研磨方式の最終研磨工程、即ち、仕上げ研磨工程では、表面粗さの低減、傷の低減という要求を満たすために、コロイダルシリカ粒子を使用した仕上げ用研磨液組成物で研磨され得る。一方、仕上げ研磨工程より前の研磨においては、生産性の観点から、高い研磨速度を実現し得る比較的粒子径の大きな砥粒、例えば酸化アルミニウム粒子が使用される傾向にある。
特開2000−15560号公報 特開2000−458号公報
しかしながら、従来の酸化アルミニウム粒子を砥粒として使用した場合、テキスチャースクラッチとしてメディアでの欠陥を引き起こし得ることが判明した。
従って、本発明の目的は、酸化アルミニウム粒子を砥粒として含有する研磨液組成物の製造方法及び該製造方法で得られる研磨液組成物であって、ハードディスク基板の製造のための、酸化アルミニウム粒子の基板への突き刺さり、及びうねりを低減し得る研磨液組成物の製造方法及び該製造方法で得られる研磨液組成物を提供することである。
酸化アルミニウム粒子を砥粒として使用した場合、基板へ砥粒が突き刺さりやすく、この突き刺さりが基板品質向上の妨げとなることが明らかとなった。具体的には、この砥粒の突き刺さりは、仕上げ研磨工程でも除去されずに残留した場合、テキスチャースクラッチとしてメディアでの欠陥を引き起こし得ること、さらに、この突き刺さりが強い場合、仕上げ研磨工程で除去されたとしても磁気特性の低下、即ち、シグナルノイズ比(SNR)の低下を引き起こし得ることが明らかとなった。また、テキスチャー処理を施さない垂直記録用の基板においても、前記砥粒の突き刺さりは、記録エラー、磁気特性の低下、SNRの低下等の原因となることがわかった。
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 二次粒子の体積中位粒子径が0.1〜0.7μmであり、且つ1μm以上の粒子の含有量が、0.2重量%以下である酸化アルミニウム粒子を含有してなる研磨液組成物の製造方法であって、湿式分級装置の分級筒内に5〜50重量%の酸化アルミニウム粒子の懸濁液を供給する工程、及び供給口より上方に設けられた排出口から分級後の液を排出する工程を含み、該分級筒内における該懸濁液の上方垂直方向の平均流速が0.1〜3mm/minであり、該懸濁液の温度は1〜70℃の範囲内である、研磨液組成物の製造方法、並びに
〔2〕 〔1〕記載の製造方法により得られる研磨液組成物
に関する。
本発明の研磨液組成物の製造方法で得られる研磨液組成物を、例えばハードディスク基板の仕上げ研磨工程前の研磨に使用すると、経済的な研磨速度を有しながら、酸化アルミニウム粒子の突き刺さり、及びうねりが少ない優れた表面品質の基板を製造することができるという効果が奏される。
本発明において、砥粒の「突き刺さり」とは、基板に付着した砥粒とは異なり、基板に押し込まれて残留している状態を指す。この「突き刺さり」は、後述の実施例のように、コロイド粒子を砥粒として含有する研磨液組成物で、基板表面をわずかに研磨して基板に付着した砥粒を除去した後、その基板表面を暗視野顕微鏡観察、又は原子間力顕微鏡若しくは走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって調べることができる。
この突き刺さりがあると、ハードディスク基板のメディア化工程で実施されるテキスチャリングにおいて表面に深いスクラッチが入るなどの欠陥が発生したり、完成したハードディスクにおいて磁気特性の低下、即ち、シグナルノイズ比(SNR)の低下を引き起こしたりすると考えられる。従って、この砥粒の突き刺さりを低減することは、優れたハードディスク基板を得るために重要である。
本発明は、酸化アルミニウム粒子の粒子径を特定のサイズに制御すること、及び砥粒中に存在する特定の大きさの粗大粒子を特定量以下に低減することにより、この突き刺さりの低減に加えて、うねりの低減が可能になるという知見に基づいてなされたものである。
本発明の研磨液組成物の製造方法は、二次粒子の体積中位粒子径が0.1〜0.7μmであり、且つ1μm以上の粒子の含有量が、0.2重量%以下である酸化アルミニウム粒子を含有してなる研磨液組成物の製造方法であって、湿式分級装置の分級筒内に5〜50重量%の酸化アルミニウム粒子の懸濁液を供給する工程、及び供給口より上方に設けられた排出口から分級後の液を排出する工程を含み、該分級筒内における該懸濁液の上方垂直方向の平均流速が0.1〜3mm/minであり、該懸濁液の温度は1〜70℃の範囲内であることを特徴とする。かかる特徴を有する研磨液組成物を用いて研磨することにより、基板への酸化アルミニウム粒子の突き刺さり、及びうねりを顕著に低減することができる。これにより、経済的な研磨速度で、優れた表面品質を有するハードディスク基板を提供することができる。尚、本発明における湿式分級は、固体粒子の水中における重力沈降速度の差を利用して固体粒子群をそれぞれの粒子に従って分ける操作をいい、以下単に分級ともいう。
<酸化アルミニウム粒子原料>
本発明の製造方法に用いられる酸化アルミニウム粒子の原料としては、分級後に製造される酸化アルミニウム粒子が研磨液組成物として使用されるため、突き刺さり低減の観点、うねり低減、表面粗さ低減、研磨速度向上及び表面欠陥防止の観点から、並びに分級工程の生産性の観点からアルミナとしての純度が95%以上であることが好ましく、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上である。また、研磨速度向上の観点からは、α−アルミナが好ましく、表面性状及びうねり低減の観点からは、中間アルミナ及びアモルファスアルミナが好ましい。中間アルミナとは、α−アルミナ粒子以外の結晶性アルミナ粒子の総称であり、具体的にはγ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、η−アルミナ、κ−アルミナ、及びこれらの混合物等が挙げられる。その中間アルミナの中でも、研磨速度向上及びうねり低減の観点から、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ及びこれらの混合物が好ましく、より好ましくはγ−アルミナ及びθ−アルミナである。ここで「本発明の製造方法に用いられる酸化アルミニウム粒子の原料」とは湿式分級装置に用いる懸濁液中の酸化アルミニウム粒子のことをいう。
本発明の製造方法に用いられる酸化アルミニウム粒子の原料の二次粒子の体積中位粒子径は、分級工程での生産性向上の観点、製造される酸化アルミニウムの特性の観点、すなわち、突き刺さり低減の観点、並びにうねり低減及び表面粗さ低減、研磨速度向上の観点から、0.1〜0.8μmであり、好ましくは0.1〜0.7μm、より好ましくは0.1〜0.5μm、さらに好ましくは0.1〜0.4μm、さらにより好ましくは0.15〜0.35μm、さらにより好ましくは0.15〜0.3μm、特に好ましくは0.2〜0.25μmである。
本発明の製造方法に用いられる酸化アルミニウム粒子の原料の一次粒子の平均粒子径は、分級工程での生産性向上の観点、製造される酸化アルミニウムの特性の観点、すなわち、突き刺さり低減の観点、並びにうねり低減及び表面粗さ低減の観点から、0.005〜0.5μmが好ましく、0.01〜0.4μmがより好ましく、0.03〜0.3μmがさらに好ましく、0.05〜0.2μmがさらにより好ましい。中でも、α−アルミナ粒子の一次粒子の平均粒子径としては、研磨速度向上、うねり低減、及び突き刺さり低減の観点から、0.05〜0.5μmが好ましく、0.05〜0.4μmがより好ましく、0.05〜0.3μmがさらに好ましく、0.07〜0.2μmがさらにより好ましい。
本発明の製造方法に用いられる酸化アルミニウム粒子の原料の一次粒子の平均粒子径(体積基準)及び0.1μm以下の二次粒子の体積中位粒子径は、走査型電子顕微鏡で観察(好適には3000〜30000倍)又は透過型電子顕微鏡で観察(好適には10000〜300000倍)して画像解析を行い、粒子径を測定することにより求めることができる。具体的には、拡大写真等を用い、個々の一次粒子又は二次粒子の最大長を少なくとも200個の粒子について測定し、該長さを直径とする球の体積を算出し、小粒径側から積算粒径分布(体積基準)が50%となる粒径(D50)をそれぞれ、一次粒子の平均粒子径又は二次粒子の体積中位粒子径とする。また、0.1μmを超える二次粒子の体積中位粒子径は、レーザー光回折法を用いて該粒子径を測定する。
本発明の製造方法に用いられる酸化アルミニウム粒子の原料中における粒子径が1μm以上の粒子(粗大粒子)の含有量は、生産性向上の観点から、5重量%以下であり、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。また、粒子径が3μm以上の粗大粒子の前記含有量は、同様の観点から、1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.3重量%以下、さらにより好ましくは0.2重量%以下、さらにより好ましくは0.1重量%以下である。なお、前記「粒子径が1μm以上の粗大粒子」及び「粒子径が3μm以上の粗大粒子」には、一次粒子のみならず、一次粒子が凝集した二次粒子も含むものとする。
研磨液組成物中の前記粗大粒子の含有量の測定には、個数カウント方式(Sizing Particle Optical Sensing法)が使用でき、具体的には、米国パーティクルサイジングシステムズ(Particle Sizing Systems)社製「アキュサイザー(Accusizer)780」によって研磨粒子径を測定することにより、該含有量を求めることができる。
本発明の製造方法に用いられる酸化アルミニウム粒子の原料を製造する方法としては、公知の方法で酸化アルミニウムを製造し、更に必要に応じて、乾式または湿式粉砕により粉砕し、また必要に応じて、分級、粗大粒子除去のために、静置沈殿や遠心分離等により沈殿させる方法、またはろ過材による精密ろ過等により粗大粒子を除去する方法などを使用する事ができる。これらは、それぞれ単独の方法で処理しても、2種以上の方法を組み合わせ処理しても得ることができる。
本発明の製造方法は、湿式分級装置の分級筒内に、5〜50重量%の酸化アルミニウム粒子の懸濁液を供給する工程、及び供給口より上方に設けられた排出口(以下、上部排出口ともいう)から分級後の液を排出する工程を含む。該懸濁液の供給方法としては、バッチ式および連続式が挙げられるが、分離精度および作業効率の観点から連続式が好ましい。また、該懸濁液の供給は、分級筒に設置された導入口から供給されるのが好ましい。該導入口の位置は特に限定されないが、分離精度の観点から、上部排出口より下方に設置することが好ましい。分級後の液は分級筒上端に配置された上部排出口から排出されることが好ましい。
該分級筒に供給される際の懸濁液中の酸化アルミニウム粒子の濃度は、効率的、且つ経済的な観点から、5重量%以上であり、7重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。
また、生産性の観点より、高濃度とすることが好ましいが、懸濁液の粘度上昇、分級効率の観点から、該濃度は50重量%以下であり、45重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましく、25重量%以下がさらにより好ましく、20重量%以下が特に好ましい。すなわち、該濃度は5〜50重量%であり、5〜45重量%が好ましく、7〜40重量%がより好ましく、7〜30重量%がさらに好ましく、10〜30重量%がさらにより好ましく、10〜25重量%がさらにより好ましく、10〜20重量%が特に好ましい。尚、懸濁液は、該酸化アルミニウム粒子が分散した水を含むものである。
該懸濁液中の酸化アルミニウム粒子の表面電位は、効率的な分級および粗大粒子除去の観点から、絶対値で50mV以上が好ましく、60mV以上がより好ましく、70mV以上がさらに好ましく、80mV以上がさらにより好ましく、90mV以上が特に好ましい。また、該懸濁液中の酸化アルミニウム粒子の表面電位は、表面電位の絶対値を上げるための経済的な観点から、絶対値で500mV以下が好ましく、400mV以下がより好ましく、300mV以下がさらに好ましく、200mV以下が特に好ましい。すなわち、懸濁液中の酸化アルミニウム粒子の表面電位は、絶対値で50〜500mVが好ましく、50〜400mVがより好ましく、60〜400mVがさらに好ましく、70〜300mVがさらにより好ましく、80〜300mVがさらにより好ましく、90〜300mVがさらにより好ましく、90〜200mVが特に好ましい。前記酸化アルミニウム粒子の表面電位は、たとえば、Colloidal Dynamics社のZetaProbe (ZetaPotentialAnalyser)によって測定できる。
前記表面電位は、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸、酢酸、メタンスルホン酸等の無機酸や有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリを添加したり、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸等の有機系分散剤やヘキサメタリン酸ソーダ等の無機系分散剤を添加することによって制御することができる。
前記懸濁液は、分級効率向上の観点から、上述の酸、アルカリのうち、1価の酸、1価のアルカリ若しくはそれらの塩、または上述の分散液を含有することが好ましく、その濃度としては、効率的な分級および粗大粒子除去の観点および経済的観点より、懸濁液中に合計で0.001〜2重量%が好ましく、より好ましくは0.001〜1.5重量%、さらに好ましくは0.01〜1.5重量%、さらに好ましくは0.02〜1重量%、更により好ましくは0.05〜1重量%、更により好ましくは0.1〜1重量%である。
懸濁液のpHは、経済的および装置さらに作業者への安全性の観点から、1〜12が好ましく、1.5〜11がより好ましく、2〜10がさらに好ましい。
分級処理では、生産効率および製品品質を向上する目的で、分級装置を並列で組み合わせることも、直列多段とすることもでき、さらにこの両者を組み合わせることもできる。
なお、懸濁液を分級筒に供給する際の導入流量は、特に制限されず、分級装置内での好ましい平均流速を考慮して適宜設定することができる。
該分級筒内における該懸濁液の上方垂直方向の平均流速は、生産性の観点から、0.1mm/min以上であり、0.2mm/min以上が好ましく、0.3mm/min以上がより好ましく、0.4mm/min以上がさらに好ましく、0.5mm/min以上が特に好ましい。また、粗大粒子の除去効率の面から、該上方垂直方向の平均流速は、3mm/min以下であり、2.5mm/min以下が好ましく、2mm/min以下がより好ましく、1.5mm/min以下がさらに好ましく、1mm/min以下が特に好ましい。すなわち、該上方垂直方向の平均流速は、0.1〜3mm/minであり、0.2〜2mm/minが好ましく、0.3〜1.5mm/minがより好ましく、0.4〜1.5mm/minがさらに好ましく、0.5〜1.5mm/minがさらにより好ましく、0.5〜1mm/minが特に好ましい。
尚、該上方垂直方向の平均流速は、上部排出口から排出される懸濁液流量を分級筒内の平均断面積で除することによって求められる。
また、分級筒内における懸濁液の平均滞留時間は、特に制限されないが、分級精度および生産性の観点から、20分〜100時間が好ましく、30分〜50時間がより好ましく、1〜24時間がさらに好ましい。
分級する際の懸濁液の温度は、効率的な分級および粗大粒子除去の観点および経済性の観点から、1〜70℃の範囲内であり、1〜50℃の範囲内がより好ましい。また、効率的な分級および粗大粒子除去の観点並びに経済性の観点から、工程処理の温度変動幅は、0.1〜20℃が好ましく、0.2〜15℃がより好ましく、0.5〜10℃がさらに好ましく、1〜5℃であることが特に好ましい。
また、前記分級筒は、分級精度および生産性の観点から、下部排出口をさらに備え、下部排出口から懸濁液中の粗大粒子が含まれた液を排出することが好ましい。下部排出口は、導入口より下方に設置することが好ましく、分級筒側面の下端部あるいは分級筒の底面に設置することがより好ましい。また、その排出量としては、分級精度および生産性の観点から、下部排出量に対する上部排出量の割合(上部排出量/下部排出量)が、1〜100倍の範囲であることが好ましい。更に、分級精度の観点から、2〜50倍がより好ましく、2〜20倍がさらに好ましく、3〜20倍がさらにより好ましく、4〜10倍が特に好ましい。
尚、分級処理で得られた酸化アルミニウム粒子の濃度は、経済的および生産性の観点から、分級後の液中2〜50重量%が好ましく、より3〜49重量%、より好ましくは5〜45重量%、更に好ましくは5〜40重量%、更により好ましくは5〜30重量%、更により好ましくは8〜30重量%、更により好ましくは8〜25重量%、更により好ましくは8〜20重量%である。
なお、分級装置の排出口から排出された分級後の液は、分級筒内へ再投入することもでき、また、それらの酸化アルミニウム粒子を更に粉砕した後、分級筒内へ再投入することにより、経済性を高めることもできる。
分級処理で得られた酸化アルミニウム粒子は、研磨材として本発明の研磨液組成物に使用される。研磨速度向上及びうねり低減の観点から、α−アルミナと、中間アルミナ及び/又はアモルファスアルミナとを混合して使用することが好ましく、α−アルミナとθ−アルミナとを混合して使用することがより好ましい。また、酸化アルミニウム粒子中のα−アルミナ粒子の含有量は、研磨速度向上及びうねり低減の観点から、20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましく、40重量%以上がさらに好ましく、50重量%以上がさらにより好ましい。本発明において、酸化アルミナ粒子中のα−アルミナ粒子の含有量は、上述と同様の方法により求める。
これらのアルミナは、分級前に混合し、一度に混合物として製造してもよいが、生産性および分級精度の観点から、αアルミナと中間アルミナをそれぞれ分級した後に、混合して研磨液を調製することが好ましい。
分級処理で得られた酸化アルミニウム粒子の二次粒子の体積中位粒子径は、突き刺さり低減の観点、並びにうねり低減及び表面粗さ低減の観点から、0.7μm以下であり、0.5μm以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましく、0.35μm以下がさらに好ましく、0.3μm以下がさらにより好ましく、0.25μm以下がさらにより好ましい。また、該粒子径は、研磨速度向上の観点から、0.1μm以上であり、0.15μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましい。即ち、該粒子径は、0.1〜0.7μmであり、好ましくは0.1〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.4μm、さらに好ましくは0.15〜0.35μm、さらにより好ましくは0.15〜0.3μm、さらにより好ましくは0.2〜0.25μmである。中でも、α−アルミナ粒子の二次粒子の体積中位粒子径は、突き刺さり低減の観点、うねり低減及び表面粗さ低減の観点、並びに研磨速度向上の観点から、0.1〜0.7μmが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましく、0.1〜0.4μmがさらに好ましく、0.1〜0.35μmがさらにより好ましく、0.15〜0.3μmがさらにより好ましく、0.15〜0.25μmがさらにより好ましい。
分級処理で得られた酸化アルミニウム粒子の一次粒子の平均粒子径は、突き刺さり低減及びうねり低減の観点から、0.005〜0.5μmが好ましく、0.01〜0.4μmがより好ましく、0.03〜0.3μmがさらに好ましく、0.05〜0.2μmがさらにより好ましい。中でも、α−アルミナ粒子の一次粒子の平均粒子径としては、研磨速度向上、うねり低減、及び突き刺さり低減の観点から、0.05〜0.5μmが好ましく、0.05〜0.4μmがより好ましく、0.05〜0.3μmがさらに好ましく、0.07〜0.2μmがさらにより好ましい。
酸化アルミニウム粒子の一次粒子の平均粒子径(体積基準)並びに0.1μm以下及び0.1μmを越える二次粒子の体積中位粒子径は、上述した測定方法により求めることができる。
BET法にて測定されたα−アルミナ粒子の比表面積は、研磨速度向上及びうねり低減の観点から、0.1〜50m/gが好ましく、より好ましくは1〜40m/g、さらに好ましくは2〜20m/gである。さらに、BET法で測定された中間アルミナ粒子又はアモルファスアルミナ粒子の比表面積は、好ましくは30〜300m/g、より好ましくは50〜200m/gである。
分級処理で得られた酸化アルミニウム粒子中における粒子径が1μm以上の粒子(粗大粒子)の含有量は、突き刺さり低減の観点から、0.2重量%以下であり、好ましくは0.15重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下である。また、粒子径が3μm以上の粗大粒子の前記含有量は、同様の観点から、0.05重量%以下が好ましく、より好ましくは0.04重量%以下、さらに好ましくは0.03重量%以下、さらにより好ましくは0.02重量%以下、さらにより好ましくは0.01重量%以下である。前記「粒子径が1μm以上の粗大粒子」又は「粒子径が3μm以上の粗大粒子」とは、一次粒子のみならず、一次粒子が凝集した二次粒子も含むものとする。なお、研磨液組成物中の前記粗大粒子の含有量は、上述した測定方法により求められる。
上記の湿式分級で得られた酸化アルミニウム粒子を含有する研磨液組成物を以下で説明する。
<研磨液組成物>
研磨液組成物中の酸化アルミニウム粒子の含有量は、研磨速度向上及びうねり低減の観点から、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、さらにより好ましくは1重量%以上である。また、該含有量は、表面品質向上及び経済性の観点から、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下、さらにより好ましくは10重量%以下である。即ち、研磨液組成物中における酸化アルミニウム粒子の含有量は好ましくは0.05〜30重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%、さらにより好ましくは1〜10重量%である。なお、本発明の研磨液組成物には、1種類または2種類以上の酸化アルミニウム粒子を用いてもよい。
研磨液組成物中の水は、媒体として使用されるものであり、イオン交換水、純水、超純水等を使用することができる。研磨液組成物中における水の含有量は、被研磨物を効率良く研磨する観点から、好ましくは55〜99重量%、より好ましくは60〜97重量%、さらに好ましくは70〜95重量%である。
研磨液組成物は、研磨速度向上及びうねり低減の観点から、さらに酸を含有することが好ましい。
本発明に用いられ得る酸は、研磨速度向上及びうねり低減の観点から、そのpK1が好ましくは7以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下、さらにより好ましくは2以下の酸である。ここで、pK1とは、酸解離定数(25℃)の逆数の対数値をpKaと表したとき、その内の第1酸解離定数の逆数の対数値である。各化合物のpK1は例えば化学便覧改訂4版(基礎編)II、pp316〜325(日本化学会編)等に記載されている。
研磨液組成物に用いられ得る酸の具体例としては硝酸、塩酸、過塩素酸、アミド硫酸等の一価の鉱酸類、硫酸、亜硫酸、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等の多価鉱酸、ギ酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、プロパン酸、ヒドロキシプロパン酸、酪酸、安息香酸、グリシン等のモノカルボン酸類、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、フタル酸、ニトロトリ酢酸、エチレンジアミン四酢酸等の多価カルボン酸類、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等のアルキルスルホン酸類、エチルリン酸、ブチルリン酸等のアルキルリン酸類、ホスホノヒドロキシ酢酸、ヒドロキリエチリデンジホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸等のホスホン酸類等が挙げられる。これらの内、研磨速度向上及びうねり低減の観点から、多価鉱酸及び多価有機カルボン酸が好ましく、被研磨物の表面汚れ防止の観点から、硝酸、硫酸、スルホン酸及びカルボン酸が好ましい。
前記酸は単独で用いてもよいが、2種以上を混合して使用することが好ましい。特に、Ni−Pメッキ基板のような金属表面を研磨する場合で、研磨中に被研磨物の金属イオンが溶出して研磨液組成物のpHが上昇し、高い研磨速度が得られないとき、pH変化を小さくするためにpK1が2.5未満の酸とpK1が2.5以上の酸とを組み合わせて使用することが好ましく、pK1が1.5以下の酸とpK1が2.5以上の酸との組み合わせがより好ましい。このような2種以上の酸を含有する場合、研磨速度向上及びうねり低減、かつ入手性を考慮すると、pK1が2.5未満の酸としては、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸等の鉱酸や有機ホスホン酸を用いることが好ましい。一方、pK1が2.5以上の酸としては、同様な観点から、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イタコン酸等の有機カルボン酸が好ましく、中でも、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イタコン酸が好ましく、クエン酸がより好ましい。また、研磨速度向上及びうねり低減の観点から、pK1が2.5以上の有機カルボン酸を使用する場合は、オキシカルボン酸と2価以上の多価カルボン酸とを組み合わせて使用することがより好ましい。例えば、オキシカルボン酸としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等が挙げられ、多価カルボン酸としては、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。従って、これらをそれぞれ1種以上組み合わせて使用することが好ましく、中でも、クエン酸と多価カルボン酸を組み合わせることが好ましい。
研磨液組成物中における前記酸の含有量は、研磨速度向上、うねり低減、表面品質及び経済性の観点から、好ましくは0.002〜20重量%、より好ましくは0.005〜15重量%、さらに好ましくは0.007〜10重量%、さらにより好ましくは0.01〜5重量%である。また、研磨速度向上の観点から、pK1が2.5未満の酸とpK1が2.5以上の酸との重量比〔(pK1が2.5未満の酸)/(pK1が2.5以上の酸)〕は、9/1〜1/9が好ましく、7/1〜1/7がより好ましく、5/1〜1/5がさらに好ましい。
研磨液組成物は、研磨速度向上及びうねり低減の観点から、酸化剤を含有することが好ましい。本発明で使用され得る酸化剤としては、過酸化物、金属のペルオキソ酸又はその塩、酸素酸又はその塩、硝酸塩、硫酸塩、酸の金属塩等が挙げられる。これらの内、研磨速度向上、入手性、水溶性等の取り扱い性、環境問題の観点から、過酸化水素、ペルオキソ硫酸塩類、ハロゲン酸又はその誘導体が好ましく、さらに好ましくは過酸化水素である。また、これらの過酸化物は単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
研磨液組成物中における酸化剤の含有量は、研磨速度向上及びうねり低減、表面品質及び経済性の観点から、好ましくは0.002〜20重量%、より好ましくは0.005〜15重量%、さらに好ましくは0.007〜10重量%、さらにより好ましくは0.01〜5重量%である。
また、本発明の研磨液組成物には、さらに研磨速度向上やうねり低減、その他の目的に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、例えば、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、コロイダル酸化チタン等の金属酸化物砥粒、無機塩、増粘剤、防錆剤、塩基性物質等が挙げられる。無機塩の例としては、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸ニッケル、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、スルファミン酸アンモニウム等が挙げられる。無機塩は、研磨速度の向上、ロールオフの改良、研磨液組成物のケーキング防止等の目的で使用され得る。前記他の成分は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。研磨液組成物中における前記の他の成分の含有量は、経済性の観点から、好ましくは0.05〜20重量%、より好ましくは0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.05〜5重量%である。
さらに、他の成分として必要に応じて殺菌剤や抗菌剤等を配合することができる。研磨液組成物中におけるこれらの殺菌剤及び抗菌剤等の含有量は、機能を発揮する観点、並びに研磨性能への影響及び経済性の観点から、好ましくは0.0001〜0.1重量%、より好ましくは0.001〜0.05重量%、さらに好ましくは0.002〜0.02重量%である。
なお、本発明の研磨液組成物中における前記の各成分濃度は、研磨する際の好ましい濃度であるが、該組成物の製造時の濃度であってもよい。通常、研磨液組成物は濃縮液として製造され、これを使用前あるいは使用時に希釈して用いてもよい。また、研磨液組成物は目的成分を任意の方法で添加、混合して製造することができる。
研磨液組成物のpHは、被研磨物の種類や要求品質等に応じて適宜決定することが好ましい。例えば、研磨液組成物のpHは、研磨速度向上及びうねり低減の観点と、加工機械の腐食防止性及び作業者の安全性の観点から、7未満が好ましく、0.1〜6がより好ましく、さらに好ましくは0.5〜5であり、さらにより好ましくは1〜5、さらにより好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3である。該pHは、必要により、硝酸、硫酸等の無機酸、オキシカルボン酸、多価カルボン酸やアミノポリカルボン酸、アミノ酸等の有機酸、及びその金属塩やアンモニウム塩、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミン等の塩基性物質を適宜、所望量で配合することで調整することができる。
<湿式分級装置>
湿式分級装置は、たとえば、図1に示した分級装置1である。なお大きい矢印は、懸濁液の上部垂直方向への流れ6を示す。
該分級装置の分級筒の材質は、特に制限はなく、ステンレス製、ガラス製、樹脂製、金属製等であって、それらの表面に、樹脂やガラス等をコーティングしたもの等を用いることができる。また、温度制御の観点から、該分級筒をジャケット等により温度制御できる構造をもつことが好ましい。
該分級装置の分級筒の断面構造は、円形、楕円、多角形のいずれでもよいが、効率的な分級および粗大粒子除去の観点並びに経済的観点から、円形が好ましい。
分級筒の断面の大きさとしては、効率的な分級および粗大粒子除去の観点並びに経済的観点より、100〜300,000cmが好ましく、200〜100,000cmがより好ましく、500〜50,000cmがさらに好ましく、1,000〜10,000cmがさらにより好ましい。
導入口3から上部排出口5に至る形状は、一様でも、円錐状、逆円錐としてもよく、上部排出口5は、容器上部の側方、または容器上面に取り付けてもよい。
導入口3と上部排出口5との間の高さは、効率的な分級および粗大粒子除去の観点並びに経済的観点より、5〜500cmが好ましく、10〜400cmがより好ましく、30〜300cmがさらに好ましく、40〜200cmがさらにより好ましい。また、該排出口周辺の構造は、特に制限はない。
さらに、下部排出口4は、連続的又は非連続的に分級後の液を排出し、粗大粒子を除去するために備えることが好ましい。
下部排出口4と上部排出口5との間の高さは、効率的な分級および粗大粒子除去の観点並びに経済的観点より、10cm〜5mが好ましく、20cm〜4mがより好ましく、30cm〜3mがさらに好ましい。下部排出口4と導入口3との間の高さは、効率的な分級および粗大粒子除去の観点並びに経済的観点より、2cm〜1mが好ましく、5cm〜70cmがより好ましく、10〜50cmがさらにより好ましい。
導入口3より下部の構造も、一様でも、円錐状、逆円錐としてもよい。たとえば、円錐状の構造は、粗大粒子が容器下部に沈降堆積せずに下部排出口4から排出可能となるので好ましい。
該排出口からの粗大粒子を含む液の排出は、分級中、又は分級停止後に実施されてもよい。なお、懸濁液を導入する導入口3、下部排出口4、及び上部排出口5は、それぞれ1つでもよく、必要に応じて複数を使用してもよい。
上記の組成、方法等によって本発明の研磨液組成物の製造方法を行なうことができ、研磨液組成物を得ることができる。さらに該研磨液組成物を用いることにより、基板への砥粒の突き刺さり及びうねりが顕著に低減されるため、高記録密度化に適したハードディスク基板を提供することができる。
<基板の製造方法>
本発明のハードディスク基板の製造方法は前記研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程(以下、「研磨する工程」と称することがある。)を有する。
本発明が対象とする被研磨基板であるハードディスク基板とは、磁気記録用媒体の基板として使用されるものである。磁気ディスク基板の具体例としては、アルミニウム合金にNi−P合金をメッキした基板が代表的であるが、アルミニウム合金の代わりにガラスやグラッシュカーボンを使用し、これにNi−Pメッキを施した基板、あるいはNi−Pメッキの代わりに、各種金属化合物をメッキや蒸着により被覆した基板を挙げることができる。
前記の「研磨する工程」においては、多孔質の有機高分子系の研磨布等を貼り付けた研磨盤で被研磨基板を挟み込み、本発明の研磨液組成物を研磨面に供給し、圧力を加えながら研磨盤や被研磨基板を動かすことにより、被研磨基板を研磨することができる。したがって、本発明は、前記研磨液組成物を用いて、被研磨基板を研磨する方法に関する。研磨を行なう際の研磨荷重としては、酸化アルミニウム粒子の基板への突き刺さり低減の観点、及び生産性(研磨速度)の観点から、1〜20kPaが好ましく、2〜15kPaがより好ましく、3〜10kPaがさらに好ましく、4〜8kPaがさらにより好ましい。その他の研磨条件(研磨機の種類、研磨温度、研磨速度、研磨液組成物の供給量等)については特に限定はない。
また、本発明の基板の製造方法は、2段階以上の研磨工程を有する多段研磨方式であることが好ましく、最終工程である仕上げ研磨工程よりも前の工程で、前記の「研磨する工程」を行うことが好ましい。仕上げ研磨工程で使用される研磨液組成物中の研磨粒子としては、フュームドシリカ砥粒、コロイダルシリカ砥粒等が挙げられ、表面粗さの低減、及びスクラッチ等表面欠陥の低減の観点から、コロイダルシリカ砥粒が好ましい。コロイダルシリカ砥粒の一次粒子の平均粒子径としては、0.005〜0.08μmが好ましく、0.005〜0.05μmがより好ましく、0.01〜0.03μmがさらに好ましい。
仕上げ研磨工程において、一次粒子の平均粒子径が0.005〜0.1μmの研磨粒子を使用する場合、表面粗さの低減、酸化アルミニウム粒子の突き刺さりの低減の観点、及び生産性(研磨時間)の観点から、研磨量は、0.05〜0.5μmが好ましく、0.1〜0.4μmがより好ましく、0.2〜0.4μmがさらに好ましい。仕上げ研磨を行なう際の他の条件(研磨機の種類、研磨温度、研磨速度、研磨液の供給量等)については特に限定はなく、研磨荷重としては、前記の「研磨する工程」において例示される研磨荷重と同様であればよい。なお、研磨量は、後述の実施例のようにして求めることができる。
本発明の研磨液組成物は、ポリッシング工程において特に効果があるが、これ以外の研磨工程、例えば、ラッピング工程等にも同様に適用することができる。
本発明の研磨液組成物の製造方法で得られた研磨液組成物を用いたハードディスク基板は、酸化アルミニウム粒子の突き刺さり、及びうねりが顕著に低減されていることから、高記録密度化に適したものである。
1.研磨液組成物の調製
<酸化アルミニウム粒子の調製例−1>
平均粒径20μm、BET比表面積250m/gの擬ベーマイト粒子を1150℃で3時間焼成してα−アルミナ粒子を得た。このα−アルミナ粒子に水および硝酸を加え、0.4重量%の硝酸を含む、40重量%の酸化アルミニウム粒子を含む懸濁液を調製し、5mmのジルコニアビーズを用いて湿式粉砕した後、さらに0.8mmのジルコニアビーズを用いて湿式粉砕して、二次粒子の体積中位粒子径0.2〜1μmの酸化アルミニウム粒子含有懸濁液を調製した。
この懸濁液に表1のように水、酸を加え、これを半径20cm、高さ60cmのステンレス製湿式分級装置の分級筒の底面から10cm位置に取り付けられた直径1cmの導入口より、懸濁液を一定流量で投入し、底面から50cmの位置に取り付けられた上部排出口より分級後の液を排出させて、酸化アルミニウム粒子を調製した。また同時に、分級筒の下部排出口より、連続的に粗大粒子を含む分級後の液を排出させた。なお、上記の操作はすべて温度30±1℃で行った。
<酸化アルミニウム粒子の調製例−2>
平均粒径10μm、比表面積7m/gのギブサイト粒子を1150℃で3時間焼成してα−アルミナ粒子を得た。このα−アルミナ粒子に水およびメタンスルホン酸を加え、0.6重量%のメタンスルホン酸を含む、40重量%の酸化アルミニウム粒子を含む懸濁液を調製し、5mmのジルコニアビーズを用いて湿式粉砕した後、さらに0.8mmのジルコニアビーズを用いて湿式粉砕して、二次粒子の体積中位粒子径0.2〜1μmの酸化アルミニウム粒子含有懸濁液を調製した。
この懸濁液に表1のように水、酸を加え、これを調製例―1と同じ湿式分級装置の分級筒に導入し、酸化アルミニウム粒子を調製した。
<酸化アルミニウム粒子の調製例−3>
平均粒径20μm、比表面積250m/gの擬ベーマイト粒子を950℃で3時間焼成してθ−アルミナ粒子を得た。このθ−アルミナ粒子に水および硝酸を加え、0.6重量%の硝酸を含む、20重量%の酸化アルミニウム粒子を含む懸濁液を調製し、5mmのジルコニアビーズを用いて湿式粉砕した後、さらに0.8mmのジルコニアビーズを用いて湿式粉砕して、二次粒子の体積中位粒子径0.2〜1μmの酸化アルミニウム粒子含有懸濁液を調製した。
この懸濁液に表1のように水、酸を加え、これを半径20cm、高さ60cmのステンレス製容器の底面から10cm位置に取り付けられた直径1cmの導入口より、懸濁液を一定流量で投入し、底面から50cmの位置に取り付けられた上部排出口より分級後の液を排出させて、酸化アルミニウム粒子を調製した。また同時に、容器の下部排出口より、連続的に粗大粒子を含む分級後の液を排出させた。なお、上記の操作はすべて温度30±1℃で行った。
上記により本発明の研磨液組成物に用いる酸化アルミニウム粒子を調製するが、各酸化アルミニウム粒子を調製した際のそれぞれの懸濁液、分級条件、及び分級処理で得られた酸化アルミニウム粒子を以下の表1に示す。
Figure 0005283249
上記で得られた酸化アルミニウム粒子を表2記載のように用い、さらに過酸化水素(旭電化社製)を0.6重量%および各種酸等を加え、残分をイオン交換水として配合、攪拌し、研磨液組成物を調製した。
Figure 0005283249
2.研磨方法
厚さ1.27mm、直径3.5インチのNi−Pメッキされたアルミニウム合金からなる基板(「Zygo NewView5032」を用いた測定における短波長うねり3.8nm、長波長うねり1.6nm)の表面を両面加工機により、以下の両面加工機の設定条件でポリッシングし、磁気記録媒体用基板として用いられるNi−Pメッキされたアルミニウム合金基板の研磨物を得た。
両面加工機の設定条件を下記に示す。
<両面加工機の設定条件>
両面加工機:スピードファーム(株)製、9B型両面加工機
研磨荷重:9.8kPa
研磨パッド:フジボウ(株)製 1P用研磨パッド 平均気孔径45μm
定盤回転数:50r/分
研磨液組成物供給流量:100mL/分
研磨時間:4分
投入した基板の枚数:10枚
3.評価方法
(1)研磨速度
研磨前後の各基板の重さを計り(Sartorius社製「BP−210S」)を用いて測定し、各基板の重量変化を求め、10枚の平均値を減少量とし、それを研磨時間で割った値を重量減少速度とした。重量の減少速度を下記の式に導入し、研磨速度(μm/min)に変換した。比較例1の研磨速度を基準値100として各実験例の研磨速度の相対値(相対速度)を求めた。結果を表3に示す。
重量減少速度(g/min)={研磨前の重量(g)−研磨後の重量(g)}/研磨時間(min)
研磨速度(μm/min)=重量減少速度(g/min)/基板片面面積(mm2)
/Ni-Pメッキ密度(g/cm3)×106
(2)うねり
研磨後の10枚の基板から任意に2枚を選択し、選択した各基板の両面を180°おきに2点(計8点)について、下記の条件で測定した。その8点の測定値の平均値を基板の短波長うねり又は長波長うねりとして算出した。比較例1の基板のうねりを基準値100として各実験例の基板のうねりの相対値を求めた。結果を表3に示す。
機器 :Zygo NewView5032
レンズ :2.5倍 Michelson
ズーム比 :0.5
リムーブ :シリンダー
フィルター:FFT Fixed Band Pass
短波長うねり:50〜500μm
長波長うねり:0.5〜5mm
エリア :4.33mm×5.77mm
(3)粗大粒子含有量の測定
以下の測定条件で粗大粒子の含有量を測定した。結果を表1に示す。
・測定機器:PSS社製 「アキュサイザー780APS」
・インジェクションループボリューム:1mL
・流速:60mL/分
・データコレクションタイム:60秒
・チャンネル数:128
(4)二次粒子の体積中位粒子径の測定
以下の測定条件で二次粒子の体積中位粒子径(D50)を測定した。結果を表1に示す。
・測定機器:堀場製作所製 レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA920
・循環強度:4
・超音波強度:4
(5)α−アルミナ粒子の含有量
前記1.で調製した研磨液組成物20gを105℃、5時間乾燥させ、粉末とした後、X線回折装置(型番:RINT2500VPC、理学電機製)を使用し、管電圧40kW、管電流120mAで、104面のピーク面積を測定し、同様に測定した昭和電工製WA-1000のピーク面積を相対比較することによって求めた。結果を表1に示す。
α−アルミナ含量(重量%)=(試験試料ピーク面積)÷(WA-1000のピーク面積)×100
(6)砥粒の突き刺さりの評価
上記2.の研磨方法により得られた研磨基板を、以下の研磨液組成物を用いて研磨量が0.05μm±0.005μmとなるように研磨した後の基板表面を観察することにより、砥粒の突き刺さりを評価した。研磨液組成物の組成、研磨条件、研磨量の測定方法、及び突き刺さりの観察方法を以下に示す。
<研磨液組成物>
コロイダルシリカスラリー(デュポン社製、一次粒子の平均粒子径0.02μm)をシリカ粒子濃度として7重量%、HEDP(1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ソルーシアジャパン製)を有効分として2重量%、過酸化水素(旭電化製)を有効分として0.6重量%、イオン交換水を残分として含有する研磨液組成物を用いた。
<研磨条件>
・研磨試験機:スピードファム(株)製、両面9B研磨機
・研磨パッド:フジボウ(株)製、ウレタン製仕上げ研磨用パッド
・上定盤回転数:32.5r/min
・研磨液組成物供給量:100mL/min
・研磨時間:0.5〜2min(研磨量が0.05μm±0.005μmとなるように調整)
・研磨荷重:7.8kPa・投入した基板の枚数:10枚
<研磨量>
研磨前後の各基板の重さを計り(Sartorius社製、「BP-210S」)を用いて測定し、下記式に導入することにより、研磨量を求めた。
重量減少量(g)={研磨前の重量(g)−研磨後の重量(g)}
研磨量(μm)=重量減少量(g)/基板片面面積(mm2)/2
/Ni-Pメッキ密度(g/cm3)×106
(基板片面面積は、6597mm、Ni-Pメッキ密度8.4g/cmとして算出)
<突き刺さり観察>
オリンパス光学製顕微鏡(本体BX60M、デジタルカメラDP70、対物レンズ100倍、中間レンズ2.5倍)を使用し、暗視野観察(視野100×75μm)し、輝点数を測定した。
上記観察は、研磨後の10枚の基板から任意に2枚を選択し、基板の両面について中心から30mm位置を90°ごとの各4点、計16点観察し、観察された輝点数の平均値を砥粒の突き刺さり数とした。
上記の突き刺さり観察で観察された砥粒の突き刺さり数、及び以下の評価基準に基づいて、砥粒の突き刺さりを評価した。結果を表3に示す。
<突き刺さり評価基準>
5:100個以上
4:30〜99個
3:10〜29個
2:5〜9個
1:0〜4個
Figure 0005283249
比較例1の研磨速度は、1.2μm/min、短波長うねりは0.38nmであった。
表3より、実施例1〜9で得られた基板は、比較例1〜4で得られた基板に比べ、基板への砥粒の突き刺さり及びうねりが顕著に低減されたものであることが分かる。
本発明の研磨液組成物の製造方法で得られる研磨液組成物を用いることにより、高記録密度化に適したハードディスク基板を提供することができる。
図1は、湿式分級を行なうための分級容器を示す概略図である。
符号の説明
1 分級装置
2 分級筒
3 導入口
4 下部排出口
5 上部排出口
6 懸濁液の上方垂直方向への流れ

Claims (6)

  1. 二次粒子の体積中位粒子径が0.1〜0.7μmであり、且つ1μm以上の粒子の含有量が、0.2重量%以下である酸化アルミニウム粒子を含有してなる研磨液組成物の製造方法であって、湿式分級装置の分級筒内に5〜50重量%の酸化アルミニウム粒子が分散した水を含む懸濁液を供給する工程、及び供給口より上方に設けられた排出口から分級後の液を排出する工程を含み、該分級筒内における該懸濁液の上方垂直方向の平均流速が0.1〜3mm/minであり、該懸濁液の温度は1〜70℃の範囲内であり、該懸濁液中の酸化アルミニウム粒子の表面電位が絶対値で50mV以上である、研磨液組成物の製造方法。
  2. 懸濁液が、1価の酸、1価のアルカリ若しくはそれらの塩、または分散剤を0.001〜2重量%の濃度で含む、請求項1記載の研磨液組成物の製造方法。
  3. 湿式分級装置が上部及び下部排出口を備え、下部排出口から懸濁液中の粗大粒子が含まれた液を排出し、かつ下部排出量に対する上部排出量の割合が、1〜100倍の範囲である請求項1又は2記載の研磨液組成物の製造方法。
  4. 酸化アルミニウム粒子がα−アルミナである請求項1〜いずれか記載の製造方法。
  5. 酸化アルミニウム粒子中のα−アルミナ粒子の含有量が60〜100重量%である、請求項1〜3いずれか記載の製造方法。
  6. 研磨液組成物がハードディスク基板用である請求項1〜5いずれか記載の製造方法。
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