JP5282792B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Description
固定スクロールの溝幅L、
可動スクロールの歯厚T、
可動スクロールの旋回半径D、
可動スクロールのボスとそれに連結するクランク軸との間のピン軸受隙間P、
クランク軸とそれを支持する主軸受との間の主軸受隙間Mとした場合に、
(L−T−D×2)≦δ≦(L−T−D×2+P+M)の範囲にある。
本発明のスクロール圧縮機の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(1)ケーシング
ケーシング10は、略円筒状の胴部ケーシング部11と、胴部ケーシング部11の上端部に気密状に溶接される椀状の上壁部12と、胴部ケーシング部11の下端部に気密状に溶接される椀状の底壁部13とを有する。そして、このケーシング10には、主に、ガス冷媒を圧縮するスクロール圧縮機構15と、スクロール圧縮機構15の下方に配置される駆動モータ16とが収容されている。このスクロール圧縮機構15と駆動モータ16とは、ケーシング10内を上下方向に延びるように配置されるクランク軸17によって連結されている。そして、この結果、スクロール圧縮機構15と駆動モータ16との間には、間隙空間18が生じる。
スクロール圧縮機構15は、図1に示されるように、主に、ハウジング23と、ハウジング23の上方に密着して配置される固定スクロール24と、固定スクロール24に噛合する可動スクロール26とから構成されている。また、スクロール圧縮機構15は、容量アップや効率向上のため、固定スクロール24および可動スクロール26のそれぞれの渦巻き状のラップ24b、26bは非対称の形状になっており、可動スクロール26のラップ26bと比較して、固定スクロール24のラップ24bがその内周側を半周程度延長している。
固定スクロール24は、図1〜3に示されるように、主に、平板状の鏡板24aと、鏡板24aの下面に形成された渦巻き状(インボリュート状)のラップ24bとから構成されている。
可動スクロール26は、図1に示されるように、主に、鏡板26aと、鏡板26aの上面に形成された渦巻き状(インボリュート状)のラップ26bと、鏡板26aの下面に形成された軸受部であるボス26cと、鏡板26aの両端部に形成されるキー溝26d(図8参照)とから構成されている。ボス26cは、クランク軸17のピン軸部17aの外側に嵌合する。
(Vsi/Vdi)<(Vso/Vdo) (式1)
の関係となり、外側のA室40a1の方が内側のB室40b1より圧縮比が大きくなる。
Pdi<Pdo (式2)
の関係となり、外側のA室40a1の方が内側のB室40b1より圧力が高くなる。
L:固定スクロール24の溝24fの幅、
T:可動スクロール26のラップ26bの歯厚、
D:可動スクロール26の旋回半径、
P:可動スクロール26のボス26cと、それに連結するクランク軸17のピン軸部17aとの間のピン軸受隙間、
M:クランク軸17と、それを支持する主軸受、すなわちハウジング23の軸受メタル34との間の主軸受隙間として、
半径方向隙間δは、
(L−T−D×2)≦δ≦(L−T−D×2+P+M) (式3)
の範囲にあるように設定されている。
ハウジング23は、その外周面において周方向の全体に亘って胴部ケーシング部11に圧入固定されている。つまり、胴部ケーシング部11とハウジング23とは全周に亘って気密状に密着されている。このため、ケーシング10の内部は、ハウジング23下方の高圧空間28とハウジング23上方の低圧空間29とに区画されていることになる。また、このハウジング23には、上端面が固定スクロール24の下端面と密着するように、固定スクロール24がボルト38により締結固定されている。また、このハウジング23には、上面中央に凹設されたクランク室31と、下面中央から下方に延設された軸受部32とが形成されている。そして、この軸受部32には、上下方向に貫通する軸受孔33が形成されており、この軸受孔33にクランク軸17が軸受メタル34を介して回転自在に嵌入されている。
また、このスクロール圧縮機構15には、固定スクロール24とハウジング23とに亘り、連絡通路46が形成されている。この連絡通路46は、固定スクロール24とハウジング23に切欠形成されたハウジング側通路48とが連通するように形成されている。そして、連絡通路46の上端は拡大凹部42に開口し、連絡通路46の下端、即ちハウジング側通路48の下端はハウジング23の下端面に開口している。つまり、このハウジング側通路48の下端開口により、連絡通路46の冷媒を間隙空間18に流出させる吐出口49が構成されていることになる。
オルダム継手39は、上述したように、可動スクロール26の自転運動を防止するための部材であって、ハウジング23に形成されるオルダム溝(図示せず)に嵌め込まれている。なお、このオルダム溝は、長円形状の溝であって、ハウジング23において互いに対向する位置に配設されている。
駆動モータ16は、本実施形態においてブラシレスDCモータであって、主に、ケーシング10の内壁面に固定された環状のステータ51と、ステータ51の内側に僅かな隙間(エアギャップ)をもって回転自在に収容されたロータ52とから構成されている。そして、この駆動モータ16は、ステータ51の上側に形成されているコイルエンド53の上端がハウジング23の軸受部32の下端とほぼ同じ高さ位置になるように配置されている。
下部主軸受60は、駆動モータ16の下方の下部空間に配設されている。この下部主軸受60は、胴部ケーシング部11に固定されるとともにクランク軸17の下端側軸受を構成し、クランク軸17を支持している。
吸入管19は、冷媒回路の冷媒をスクロール圧縮機構15に導くためのものであって、ケーシング10の上壁部12に気密状に嵌入されている。吸入管19は、低圧空間29を上下方向に貫通すると共に、内端部が固定スクロール24に嵌入されている。
吐出管20は、ケーシング10内の冷媒をケーシング10外に吐出させるためのものであって、ケーシング10の胴部ケーシング部11に気密状に嵌入されている。そして、この吐出管20は、胴体内面から中心に下方に向かって突き出した位置で開口されている。
(1)
実施形態のスクロール圧縮機1では、可動スクロール26のラップ26bの巻始め26bsから中間部26bmにかけての区間のみに限定してインボリュートの基礎円半径を小さくして(すなわち、歯厚を小さくして)スクロール圧縮機構15の小型化を達成している。それとともに、それ以外の中間部26bmから巻終り26beにかけての区間では、インボリュートの基礎円半径大きくすることにより、巻終り26beの歯厚を確保して巻終り26beの強度の向上を図ることが可能である。
したがって、実施形態のスクロール圧縮機1では、可動スクロール26の遠心力が高回転運転時に大きくなり、可動スクロール26と固定スクロール24との接触が生じる場合に、ラップ26bの巻終り26beに大きな遠心力が作用しても、ラップの巻終り26beの強度が十分あるので、ラップ26bの割れなどの不具合を解消することができる。その結果、ラップ26bの巻終り26beの強度を向上することができ、しかもスクロール圧縮機構15の小型化を達成できる。
いいかえれば、実施形態のスクロール圧縮機1では、可動スクロール26のラップ26bの強度を向上し、割れにくいラップ26bとするとともに、スクロール圧縮機構15の小型化を図り、性能向上を図るラップ26bとしており、結果として、ラップ26bの形状によってラップ26bの強度向上を達成している。
また、実施形態のスクロール圧縮機1では、ラップ26bの中間部26bmは、ラップ26b全体のうち、巻始め26bsからラップ1/2巻き分と巻終り26beからラップ1/2巻き分を除いた範囲(斜線部の範囲)であるので、スクロール圧縮機構15の小型化および巻終り26beの強度の向上を両方とも確実に達成することが可能である。
また、実施形態のスクロール圧縮機1では、図2に示されるように、ラップ26bは、ラップ26bの中間部26bmから巻終り26beの区間S2では、ラップ26bの内側のインボリュートの基礎円半径R2が小さくなり、一方、ラップ26bの外側のインボリュートの基礎円半径R2が大きくなっているので、スクロール圧縮機構15の小型化および巻終り26beの強度の向上を達成できる。
すなわち、ラップ26bの中間部26bmから巻終り26beにかけて可動スクロール26の内側インボリュート曲線部分は基礎円半径が小さくなるラップ26bとし、外側インボリュート曲線部分は基礎円半径が大きくなるようにしており、その結果、内側インボリュート曲線部分でスクロール圧縮機構15の小型化を図ることが可能である。
また、実施形態のスクロール圧縮機1では、ラップ26bは、ラップ26bの巻終り26beにおいて、ラップ26bの内側のインボリュート終点の巻角θ2よりもラップ26bの外側のインボリュート終点の巻角θ1を小さくした形状である。
また、実施形態のスクロール圧縮機1では、可動スクロール26の鏡板のラップ26bが形成された側と反対側の面には、キー溝26dを避けた位置に複数の座ぐり部61が形成されている。これにより、可動スクロール26を軽量化することが可能である。
また、実施形態のスクロール圧縮機1では、可動スクロール26のラップ26bの巻終り26beから1巻き分の範囲における可動スクロール26のラップ26b外周面26b1と固定スクロール24の内周面24b2との半径方向隙間δ1は、巻始め26bs付近における半径方向隙間δ2より大きくなっている。
また、実施形態のスクロール圧縮機1では、可動スクロール26のラップ26bの巻終り26beから1巻き分の範囲における可動スクロール26のラップ26bの外周面26b1と固定スクロール24のラップ24bの内周面24b2との半径方向隙間δは、以下の(式3)の範囲にあるように設定されている。
L:固定スクロール24の溝24fの幅、
T:可動スクロール26のラップ26bの歯厚、
D:可動スクロール26の旋回半径、
P:可動スクロール26のボス26cと、それに連結するクランク軸17のピン軸部17aとの間のピン軸受隙間、
M:クランク軸17と、それを支持する主軸受、すなわちハウジング23の軸受メタル34との間の主軸受隙間として、
半径方向隙間δは、
(L−T−D×2)≦δ≦(L−T−D×2+P+M) (式3)
の範囲にあるように設定されている。
(A)
上記実施形態のスクロール圧縮機1では、可動スクロール26のラップ26bが、その中間部26bmから巻終り26beにかけての区間では、巻角θが大きくなるに従いインボリュートの基礎円半径が大きくなっているが、巻き始め26bsから中間部26bmにかけての区間におけるインボリュートの基礎円半径の最小値よりも、インボリュートの基礎円半径が大きい渦巻き形状であってもよい。この場合も、ラップ26bの巻終り26beの強度が向上するとともに圧縮機構の小型化を達成することが可能である。
上記実施形態のスクロール圧縮機1では、可動スクロール26のラップ26bが、その中間部26bmから巻終り26beにかけての区間では、巻角θが大きくなるに従いインボリュートの基礎円半径が大きくなっているが、巻角θが大きくなるに従い、ラップの内側のインボリュートの基礎円半径が小さくなると共にラップの外側のインボリュートの基礎円半径が大きくなるかまたは一定になる渦巻き形状であってもよく、巻角が大きくなるに従い、ラップの内側のインボリュートの基礎円半径が一定になると共にラップの外側のインボリュートの基礎円半径が大きくなるかまたは一定になる渦巻き形状であってもよい。この場合も、ラップ26bの巻終り26beの強度が向上するとともに圧縮機構の小型化を達成することが可能である。
上記実施形態のスクロール圧縮機1では、可動スクロール26のラップ26bが、その中間部26bmから巻終り26beにかけての区間では巻角θが大きくなるに従いインボリュートの基礎円半径が大きくなっているが、ラップ26bの中間部26bmから巻終り26beにかけての区間では巻角θが大きくなるに従い、ラップ26bの内側のインボリュートの基礎円半径が小さくなり、一方、ラップ26bの外側のインボリュートの基礎円半径が大きくなるか一定になっていてもよい。この場合も、ラップ26bの巻終り26beの強度が向上するとともに圧縮機構の小型化を達成することが可能である。
上記実施形態のスクロール圧縮機1では、インボリュートの基礎円半径がR2<R3<R1の関係になり、歯厚がt2<t3<t1の関係になっているが、インボリュートの基礎円半径がR2<R1<R3の関係になり、歯厚がt2<t1<t3の関係になっていてもよい。この場合も、ラップ26bの巻終り26beの強度が向上するとともに圧縮機構の小型化を達成することが可能である。
上記実施形態のスクロール圧縮機1では、ラップ26bの中間部26bmは、内側端部26bm1から外側端部26bm2までの範囲であるが、より狭い範囲であってもよい。例えば、内側端部26bm1は、インボリュート始点からインボリュート終点に向かって、インボリュート曲線に沿って1/2〜1回転の範囲内の任意の値だけ進んだポイントであってもよく、外側中間ポイントは、インボリュート終点からインボリュート始点に向かって、インボリュート曲線に沿って1/2〜1回転の範囲内の任意の値だけ進んだポイントであってもよい。この場合も、ラップ26bの巻終り26beの強度が向上するとともに圧縮機構の小型化を達成することが可能である。
上記実施形態のスクロール圧縮機1では、図9に示されるように、圧縮室形成ポイント26i3は、ラップ26bの外側のインボリュート終点26i2とは異なるポイントであるが、圧縮室形成ポイント26i3が、ラップ26bの外側のインボリュート終点26i2と同じポイントであってもよい。本変形例では、図10に示されるように、圧縮室形成ポイント26i3とラップ26bの巻終り26beとの間の区間であって、圧縮室の形成に関係しない区間は、インボリュート形状でなくてもよい。この場合も、ラップ26bの巻終り26beの強度が向上するとともに圧縮機構の小型化を達成することが可能である。
上記実施形態では、可動スクロール26のラップ26bの形状を変更することにより、ラップ26bの巻終り26beの強度が向上するとともに圧縮機構の小型化を達成しているが、固定スクロール24のラップ24bの形状を上記実施形態のように変更してもよい。この場合も固定スクロール24のラップ24bの巻終りの強度が向上するとともに圧縮機構の小型化を達成することが可能である。
24 固定スクロール
24a 鏡板
24b ラップ
26 可動スクロール
26a 鏡板
26b ラップ
26bm1 内側中間ポイント(内側端部)
26bm2 外側中間ポイント(外側端部)
40 圧縮室
40z 最外圧縮室
Claims (4)
- それぞれの鏡板(24a、26a)の一方の面に螺旋状のラップ(24b、26b)が設けられた固定スクロール(24)および可動スクロール(26)を備え、
前記固定スクロール(24)の前記ラップ(24b)と前記可動スクロール(26)の前記ラップ(26b)は、互いに組み合わされることにより、隣接する前記固定スクロール(24)の前記ラップ(24b)と前記可動スクロール(26)の前記ラップ(26b)との間に圧縮室(40)を形成し、
前記固定スクロール(24)または前記可動スクロール(26)のうちの少なくともいずれか一方の前記ラップ(24b、26b)は、前記ラップ(24b、26b)の巻き始めから中間部にかけての区間では、巻角が大きくなるに従い前記ラップ(24b、26b)の内側および外側のインボリュートの基礎円半径が小さくなる渦巻き形状であり、かつ、前記ラップ(24b、26b)の中間部から巻終りにかけての区間では、巻角が大きくなるに従い前記ラップ(24b、26b)の内側のインボリュートの基礎円半径が一定になり前記ラップ(24b、26b)の外側のインボリュートの基礎円半径が一定になる渦巻き形状である構成により、前記ラップ(24b、26b)の巻き始め付近における歯厚t1と、前記ラップ(24b、26b)の中間部における歯厚t2とが、t2<t1の関係を満たし、
前記ラップ(24b、26b)は、前記鏡板(24a、26a)の径方向の最も外側に位置する圧縮室である最外圧縮室(40z)を形成し、かつ、前記ラップ(24b、26b)の外側のインボリュートに含まれ、かつ、前記ラップ(24b、26b)の外側のインボリュート終点に最も近いポイントである圧縮室形成ポイントの巻角が、前記ラップ(24b、26b)の内側のインボリュート終点の巻角よりも小さい渦巻き形状である構成により、前記可動スクロール(26)の前記ラップ(26b)の巻終りが両持ちで支持され、かつ、吸入完了時の前記可動スクロール(26)の前記ラップ(26b)の外側の圧縮室(40a1)と吐出直前の前記可動スクロール(26)の前記ラップ(26b)の外側の圧縮室(40a1)との容積比と、吸入完了時の前記可動スクロール(26)の前記ラップ(26b)の内側の圧縮室(40b1)と吐出直前の前記可動スクロール(26)の前記ラップ(26b)の内側の圧縮室(40b1)との容積比との差が小さくなり、これにより、前記可動スクロール(26)の前記ラップ(26b)の内側の圧縮室(40b1)と、前記可動スクロール(26)の前記ラップ(26b)の外側の圧縮室(40a1)との圧力差が小さく、そのために漏れ損失が小さく、
前記ラップ(24b、26b)の中間部は、前記ラップ(24b、26b)の外側のインボリュート始点から前記ラップ(24b、26b)の外側のインボリュート終点に向かってラップ1/2〜1巻き分だけ離れた位置にある内側中間ポイント(26bm1)から、前記ラップ(24b、26b)の外側のインボリュート終点から前記ラップ(24b、26b)の外側のインボリュート始点に向かってラップ1/2〜1巻き分だけ離れた位置にある外側中間ポイント(26bm2)までの範囲である、
スクロール圧縮機(1)。 - 前記可動スクロール(26)の前記鏡板(26a)の面であって、前記ラップ(26b)が設けられている面の反対側の面に座ぐり部が形成されている、
請求項1に記載のスクロール圧縮機(1)。 - 前記可動スクロール(26)の前記ラップ(26b)の巻終りから1巻き分の範囲における前記可動スクロール(26)の前記ラップ(26b)外周面と前記固定スクロール(24)の前記ラップ(24b)の内周面との間の半径方向隙間は、巻き始め付近における半径方向隙間より大きい、
請求項1または2に記載のスクロール圧縮機(1)。 - 前記可動スクロール(26)の前記ラップ(26b)の巻終りから1巻き分の範囲における前記可動スクロール(26)の前記ラップ(26b)の外周面と前記固定スクロール(24)の前記ラップ(24b)の内周面との間の半径方向隙間δは、
前記固定スクロールの溝幅L、
前記可動スクロールの歯厚T、
前記可動スクロールの旋回半径D、
前記可動スクロールのボスとそれに連結するクランク軸のピン軸部との間のピン軸受隙間P、
前記クランク軸とそれを支持する主軸受との間の主軸受隙間Mとした場合に、
(L−T−D×2)≦δ≦(L−T−D×2+P+M)の範囲にある、
請求項3に記載のスクロール圧縮機(1)。
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