JP5275893B2 - ヒートインシュレータの取付構造 - Google Patents

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Description

本発明は、排気管から車体に伝わる熱を遮断するためのヒートインシュレータの取付構造に関する。
従来、ヒートインシュレータの取付構造として、特許文献1及び特許文献2に記載のものが知られている。
これらのヒートインシュレータの取付構造を有する車両は、車両本体(以下、車体という)の下面において上方に盛り上がるように形成された窪み部と、当該窪み部の下方に配置された排気管とを備えている。当該車両に対して、円弧状に湾曲するとともに複数の孔が形成された湾曲部と、当該湾曲部の周方向両端から径方向外側に延びる平板部とを備える遮熱板が取り付けられている。具体的には、湾曲部は、窪み部を形成する湾曲下面と排気管との中間に当該排気管の外周に沿うように配置されている。そして、当該湾曲部の両端から延びる一対の平板部がボルトで車体の下面に固定されている。
この構成によると、車体と遮熱板との間に空気層を設けることでヘルムホルツ構造が形成されるので、遮熱機能だけでなく、吸音機能を発揮することができる。
特開平9−32545号公報 特開2000−190744号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されたヒートインシュレータの取付構造では、排気管から車体の湾曲下面に向かって放出される騒音成分をヘルムホルツ構造により低減することが可能であるものの、車両の周囲に伝わる騒音の低減効果は十分とは言えず、更なる騒音の低減が要求されている。
本発明は、上記実情に鑑みることにより、車両の周囲に伝わる騒音を低減させることが可能なヒートインシュレータの取付構造を提供することを目的とする。
本発明に係るヒートインシュレータの取付構造における第1の特徴は、車体の下面よりも上方に少なくとも一部が位置するように配置された排気管と、前記車体の下面よりも上方において、前記排気管の上面を覆う第1遮蔽部と、前記排気管の外周方向における当該第1遮蔽部の両端から、前記車体の下面よりも下方に延びる一対の第2遮蔽部と、を備えることである。
この構成によると、第1遮蔽部により、排気管から車体側への熱伝達を抑制することができる。
更に、車体の下面よりも下方に延出する第2遮蔽部により、排気管から発生する騒音が車体の下面と地面との間の空間を通って、直接又は少ない反射回数で車体の幅方向外側に放出されることを抑制することができる。
これにより、車両の周囲に伝わる騒音を、簡易な構成で、効果的に低減させることが可能である。
また、本発明に係るヒートインシュレータの取付構造における第2の特徴は、前記第1遮蔽部及び/又は前記第2遮蔽部は、前記排気管に対向する多孔板を備えていることである。
この構成によると、排気管に多孔板が対向しているため、排気管から発生する騒音の吸収効果を高めることができる。
また、本発明に係るヒートインシュレータの取付構造における第3の特徴は、前記多孔板から見て前記排気管とは逆側における、当該多孔板の貫通孔が開口する空間が、密閉されていることである。
この構成によると、多孔板とその背後の密閉された空気層とからなるヘルムホルツの吸音構造の吸音効果を得ることができる。即ち、多孔板の開口率や、背後空気層の厚さなどを調整することで、所望の周波数での吸音効果を高めることが可能になる。これにより、排気管から発生する騒音の周波数特性を考慮して、より効果的に吸音効果を発揮させることができる。
また、本発明に係るヒートインシュレータの取付構造における第4の特徴は、前記多孔板から見て前記排気管とは逆側における、当該多孔板の貫通孔が開口する空間が、複数の密閉空間となるように構成され、当該複数の密閉空間の、前記多孔板に直交する方向における幅が、互いに異なることである。
この構成によると、複数の特定周波数の騒音に対して特に高い吸音効果を発揮することができ、より広い周波数帯域で高い吸音効果を発揮することができる。
また、本発明に係るヒートインシュレータの取付構造における第5の特徴は、前記多孔板から見て前記排気管とは逆側における、当該多孔板の貫通孔が開口する空間が、複数の密閉空間となるように構成され、当該複数の密閉空間の各密閉空間に開口する前記貫通孔の数及び/又は当該貫通孔の径が、互いに異なることである。
この構成によると、複数の特定周波数の騒音に対して特に高い吸音効果を発揮することができ、より広い周波数帯域で高い吸音効果を発揮することができる。
また、本発明に係るヒートインシュレータの取付構造における第6の特徴は、前記第1遮蔽部及び前記第2遮蔽部は、前記排気管に対向する内側板状部材と、当該内側板状部材に対向するように当該内側板状部材から見て前記排気管とは逆側に配置された外側板状部材とを備え、当該内側板状部材と当該外側板状部材との間の空間が密閉されており、前記一対の第2遮蔽部は、前記第1遮蔽部の両端部から、互いに近づくように斜め下方に延出しており、前記第1遮蔽部においては、前記内側板状部材に複数の貫通孔が形成されており、当該第2遮蔽部においては、前記外側板状部材に複数の貫通孔が形成されていることである。
この構成によると、排気管から放出されて地面で反射した音を、複数の貫通孔が形成された第2遮蔽部の外側板状部材で受けることができるため、より効果的に排気管からの騒音を吸収することができる。
また、本発明に係るヒートインシュレータの取付構造における第7の特徴は、前記車体の下面は、上方に盛り上がって窪み部を形成する屈曲下面を備え、前記排気管は、前記窪み部内に少なくとも一部が配置され、前記第1遮蔽部は、前記屈曲下面と前記排気管との間に配置され、前記第2遮蔽部は、前記排気管の外周方向における前記第1遮蔽部の両端から、それぞれ前記窪み部の下方に延びており、当該第1遮蔽部及び当該第2遮蔽部は、1枚の多孔板からなり、前記屈曲下面と前記多孔板との間の空間が、密閉されていることである。
この構成によると、車体の屈曲下面と多孔板との間の空間全体を有効に活用することができ、ヒートインシュレータの取付構造をよりコンパクトに形成することができる。
また、本発明に係るヒートインシュレータの取付構造における第8の特徴は、前記第2遮蔽部の下端が、前記排気管の下端と同じ高さ、又は、前記排気管の下端よりも上方に位置することである。
この構成によると、車高(地面から車体の最下部までの高さ)が過度に低くなることを防止できる。
また、本発明に係るヒートインシュレータの取付構造における第9の特徴は、前記一対の第2遮蔽部の間隔が前記排気管の外径以上であることである。
この構成によると、一対の第2遮蔽部の間隔が排気管の外径よりも大きいので、例えば、第2遮蔽部を車体に対して固定した後でも、容易に排気管を取り付けることができる。
本願発明によれば、車両の周囲に伝わる騒音を、簡易な構成で、効果的に低減させることが可能である。
第1実施形態に係るヒートインシュレータの取付構造を示す(a)斜視図、及び(b)断面図。 第1実施形態の変形例(1)を示す図。 第1実施形態の変形例(2)を示す図。 第2実施形態に係るヒートインシュレータの取付構造を示す断面図。 第2実施形態の変形例(1)を示す図。 第2実施形態の変形例(2)を示す図。 第2実施形態の変形例(3)を示す図。 第2実施形態の変形例(4)を示す図。 第2実施形態の変形例(5)を示す図。 第2実施形態の変形例(6)を示す図。 第2実施形態の変形例(7)を示す図。 第2実施形態の変形例(8)を示す図。 吸音効果を検証するための解析モデル((a)比較モデル、及び(b)実施モデル1)を示す図。 図13の解析モデルを用いた解析結果を示す図。 吸音効果を検証するための解析モデル(実施モデル2)を示す図。 図15の解析モデルを用いた解析結果を示す図。 吸音効果を検証するための解析モデル(実施モデル3)を示す図。 図17の解析モデルを用いた解析結果を示す図。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1(a)に、第1実施形態に係るヒートインシュレータの取付構造1を示す。図1(b)は、図1(a)における排気管12の軸方向と垂直な断面図(A1−A1断面図)である。
この取付構造1は、自動車の排気管12にヒートインシュレータとしての遮蔽板13を取り付けたものである。当該自動車は、その下部に、略水平に配置されて、車室と外部とを仕切る車体底板10を備えている(図1(a)においては二点差線で端面のみ示す)。
この車体底板10の下面11(以下、車体下面11)には、エンジンから排出される排気ガスを外部に導く排気管12が取り付けられている。排気管12は、円筒状に形成され、車体の前後方向にその軸方向が直線的に延びるように配置されている。尚、排気管12は、車体下面11に固定されて下方に延びるステー(図示せず)等によって支持されている。
図1(b)に示すように、車体下面11は、排気管12の軸方向から見たときに、上方(車室側)に盛り上がるように屈曲している。そして、上方に盛り上がるように屈曲して形成された窪み部αに排気管12が配置される。
ここで、窪み部αとは、車体下面11において略水平に延びる面(以下、水平下面11a)の高さよりも上方に位置するとともに、水平下面11aから屈曲して形成された面(以下、屈曲下面11b)で囲まれた空間を意味する。本実施形態において、水平下面11aは、車体下面11における最も下方に位置している。そして、排気管12の軸方向から見たときに、当該排気管12の上半面が窪み部α内に位置するように、当該排気管12が車体下面11に対して固定されている。尚、排気管12の全周が全て当該窪み部α内に位置するように、当該排気管12が配置されていてもよい。
車体の屈曲下面11bと排気管12との間には、遮蔽板13が配置されている。当該遮蔽板13は、屈曲下面11bと排気管12とを仕切るように、車体の水平下面11aに固定されている。具体的には、遮蔽板13は、1枚の金属板を、例えばロールフォーミング等により屈曲して形成されており、半円筒状の第1遮蔽部131と、第1遮蔽部131の円周方向の両端部から当該両端の接線方向に延びる平板状の一対の第2遮蔽部132と、第2遮蔽部132に連続して排気管12と逆側の斜め上方に延びるとともに、その延出端部の近傍で屈曲して第2遮蔽部132から離れるように略水平方向に延び、車体の水平下面11aに固定される固定部133とを備えている。
第1遮蔽部131は、窪み部α内に配置されている。第2遮蔽部132は、窪み部α外に位置する。即ち、第2遮蔽部132は、遮蔽板13における、車体の水平下面11aよりも下方に延出する延出部分である。
また、第2遮蔽部132の下端が、排気管12の下端と同じ高さになるように、遮蔽板13が取り付けられている。
固定部133は、遮蔽板13における軸方向(第1遮蔽部131の円筒軸方向)に連続するように設けられ、当該軸方向の両端部近傍に、上下に貫通する取付孔133aが形成されている。遮蔽板13は、この取付孔133aを用いてボルト等で、車体の水平下面11aに固定される。
尚、本実施形態では、第1遮蔽部131の円筒中心軸が、排気管12の円筒中心軸と一致するように、遮蔽板13が車体下面11に取り付けられている。
◆第1実施形態の効果
第1実施形態のヒートインシュレータの取付構造1は、車体の水平下面11aよりも上方に上半面が位置するように配置された排気管12と、車体の水平下面11aよりも上方において、排気管12の上面を覆う第1遮蔽部131と、排気管12の外周方向(図1(b)における排気管12の中心軸を中心とする円の円周方向)における第1遮蔽部131の両端から、車体の水平下面11aよりも下方に延びる一対の第2遮蔽部132とを備える。
この構成によると、第1遮蔽部131により、排気管12から車体側への熱伝達を抑制することができる。
更に、車体下面11よりも下方に延出する第2遮蔽部132により、排気管12から発生する騒音が車体下面11の下側の空間(車体下面11と地面との間の空間)を通って、直接又は少ない反射回数で車体の幅方向外側に放出されることを抑制することができる。
これにより、車両の周囲に伝わる騒音を、簡易な構成で、効果的に低減させることが可能である。また、車両の側面のドアガラス面等から車内に伝わる騒音を低減することができる。
尚、本実施形態では、自動車の車体は、車体下面11において上方に盛り上がるように形成された窪み部αを備えており、排気管12は、当該窪み部α内に上半面が配置されている。そして、第1遮蔽部131は、窪み部αを形成する面である屈曲下面11bと排気管12との間に配置され、第2遮蔽部132は、排気管12の外周方向における第1遮蔽部131の両端から、それぞれ窪み部αの下方に延びている。
この構成によると、屈曲下面11bを介して排気管12から車体底板10に熱が伝達されることが抑制される。
また、第2遮蔽部132の下端が、排気管12の下端と同じ高さに位置するように遮蔽板13が取り付けられている。
この構成によると、第2遮蔽部132が過度に地面に近づくことを抑制され、車体の下方のスペースを十分に確保することができる。即ち、当該第2遮蔽部132を設けることで車高が過度に低くなってしまうことを防止できる。
(第1実施形態の変形例)
(1)
遮蔽板13の固定部133は、第2遮蔽部132の下端に連続する場合に限らず、図2(a)における固定部133’で示すように、第1遮蔽部131と第2遮蔽部132との境界部から水平に延ばしてもよい。
また、図2(a)に示すように、固定部133’を、第1遮蔽部131の円筒中心軸と平行な方向に連続して設ける場合に限らず、当該軸方向において間欠的に設けてもよい。具体的には、例えば、図2(b)に示すように、第1遮蔽部131の円筒中心軸と平行な方向における両端のみに固定部133’’を設けてもよい。尚、図1に示す固定部133においても同様に構成できる。
(2)
一対の第2遮蔽部132は、互いに平行に鉛直下方に延びる場合に限らず、図3(a)に一対の第2遮蔽部132’として示すように、下方に向かうほど、互いに対向する間隔を狭めるように、斜め下方に延ばしてもよい。
この構成によると、第2遮蔽部132’で反射する排気管12からの騒音が第1遮蔽部131及び第2遮蔽部132’で囲まれた空間から漏れることを抑制できる。つまり、この第2遮蔽部132’により、遮蔽板13の内面で排気管12からの騒音が反射される回数を増やすことができ、吸音効果が大きくなる。
尚、図3(a)に示す変形例においては、排気管12の軸方向から見たときに、一対の第2遮蔽部132’の下端の間隔は、排気管12の外径と同じである。
この構成によると、遮蔽板13を車体下面11に取り付けた後に、当該一対の第2遮蔽部132’の下端の間を通過させて排気管12を第1遮蔽部131及び第2遮蔽部132’で囲まれた空間に配置することができるため、排気管12の固定作業が容易になる。
尚、鉛直下方から見たときに、第2遮蔽部132’が排気管12と重ならないように構成されているので、排気管12を鉛直方向に移動させて排気管12の取り付け、及び取り外しが可能である。
また、排気管12の周囲は、当該排気管12の鉛直下方以外、全て遮蔽板13で覆われているので、排気管12から発生する騒音の漏れを最小限にとどめることが可能である。
ここで、水平下面11aに固定される固定部133は、図3(a)に固定部133''として示すように、第2遮蔽部132’の下端から延ばしてもよいし、図3(b)に固定部133'''として示すように、第1遮蔽部131と第2遮蔽部132’との境界部から延ばしてもよい。
(第2実施形態)
図4に、第2実施形態のヒートインシュレータの取付構造2の断面図を示す。尚、図4は、図1(b)に示す取付構造1の断面図に対応する図である。
第2実施形態の取付構造2は、第1実施形態の取付構造1の遮蔽板13を遮蔽構造体14に置き換えた構成である。その他の構成は、第1実施形態の取付構造1と同様であり、第1実施形態と同一部材には同一符号を付し説明を省略する。
遮蔽構造体14は、排気管12に対向する多孔板141と、当該多孔板141から見て排気管12とは逆側に、当該多孔板141に対向するように配置される背面板142とを備えている。
多孔板141は、半円筒状に形成された円筒状部分と、当該円筒状部分の円周方向両端から互いに近づくように斜め下方に延びる一対の延出部分とを備えており、複数の貫通孔141aが形成されている。当該複数の貫通孔141aは、多孔板141の表面全体にわたって略均等に分散するように形成されている。
尚、当該貫通孔141aは、微細な孔とすることが、吸音効果を向上させる上で望ましい。例えば、貫通孔141aの径を、少なくとも多孔板141の厚さよりも小さくすることが望ましい。
背面板142は、多孔板141と略同様に、半円筒状に形成された円筒状部分と、当該円筒状部分の円周方向両端から互いに近づくように斜め下方に延びる一対の延出部分とを備えている。
そして、多孔板141と背面板142との間の空間S1が密閉されるように構成されている。
尚、ここでいう「密閉」とは多孔板141と背面板142との間の空間と外部とを連通する通路が多孔板141の貫通孔141a以外にないように、多孔板141と背面板142との間の空間が閉じられていることを意味する。
具体的には、多孔板141の延出部分の端縁部と背面板142の延出部分の端縁部とが略水平に配置される側板143で連結されることで、排気管12の外周方向において多孔板141と背面板142との間の空間が閉塞される。また、排気管12の軸方向における当該空間の両端も、側板等の仕切り部材により閉塞される。
この遮蔽構造体14は、略水平に延びる固定部144を介して水平下面11aに固定されており、その下端が、排気管12の下端と同じ高さになるように配置されるとともに、当該遮蔽構造体14で排気管12の鉛直下方を遮らないように配置されている。
◆第2実施形態の効果
以上説明したように、第2実施形態のヒートインシュレータの取付構造2において、遮蔽構造体14は、排気管12に対向する多孔板141を備えている。多孔板141において、貫通孔141aは、当該多孔板141の半円筒状部分及び延出部分の両方に形成されている。
この構成によると、排気管12に多孔板141が対向しているため、排気管12から発生する騒音の吸収効果を高めることができる。
尚、当該多孔板141の半円筒状部分及び延出部分の両方に貫通孔141aが形成されている場合に限らず、いずれか一方にのみ貫通孔141aが形成されていてもよい。
また、多孔板141から見て排気管12とは逆側に位置し、当該多孔板141の貫通孔141aが開口する空間S1が密閉されている。
この構成によると、遮蔽構造体14は、多孔板141とその背後の密閉された空気層(密閉空間S1)とからなるヘルムホルツ構造を構成するため、多孔板141の開口率や、背後空気層の厚さなどを調整することで、所望の周波数での吸音効果を高めることが可能になる。これにより、排気管12から発生する騒音の周波数特性を考慮して、より効果的に吸音効果を発揮させることができる。
(第2実施形態の変形例)
(1)
排気管12に対向する位置に配置された板材にのみ貫通孔を設ける場合に限らず、地面に対向する位置に配置された板材に貫通孔を設けてもよい。例えば、図5に示すように、多孔板141の延出部分(水平下面11aよりも下方に位置する部分)に貫通孔を形成せず、背面板142の延出部分、及び側板143に、貫通孔142a、143aを形成してもよい。
即ち、当該変形例に係るヒートインシュレータの取付構造は、排気管12に対向する内側板状部材(多孔板141)と、当該内側板状部材に対向するように当該内側板状部材から見て排気管12とは逆側に配置された外側板状部材(背面板142)を備える。当該内側板状部材と当該外側板状部材との間の空間S1が密閉されており、多孔板141及び背面板142における車体の水平下面11aよりも下方に位置する延出部分は、円筒状部分の端部から、排気管12に近づくように斜め下方に延出している。そして、多孔板141における円筒状部分に、複数の貫通孔141aが形成されており、背面板142における延出部分と側板143に複数の貫通孔142a、143aが形成されている。
この構成によると、内部に密閉空間S1を形成する遮蔽構造体14における地面側に対向する板材(背面板142の延出部分及び側板143)に、密閉空間S1に開口する貫通孔142a、143aが形成されている。そのため、排気管12から放出されて地面で反射した音を、当該複数の貫通孔142a、143aが形成された背面板142の延出部分と側板143とで受けることができる。これにより、より効果的に排気管12からの騒音を吸収することができる。また、床下で増幅するロードノイズなどの音に対しても、吸音効果を発揮することができる。
(2)
多孔板141と背面板142とで挟まれた空気層を吸音に利用する場合に限らず、図6(a)に示すように、排気管12の周りに設けられた多孔板141’と車体の屈曲下面11bとの間の空気層S2を利用して吸音する構成であってもよい。
この図6(a)に示す構成は、図1に示す遮蔽板13における第1遮蔽部131及び第2遮蔽部132に複数の貫通孔を設け、排気管12の軸方向における空気層S2の両端を閉塞した構成と等しい構成である。即ち、車体下面11は、上方に盛り上がって窪み部αを形成する屈曲下面11bを備えており、排気管12は、当該窪み部α(図1参照)内に上半面が配置されている。そして、多孔板141’は、屈曲下面11bと排気管12との間に配置される円弧状部分(第1遮蔽部)と、当該部分の両端から、それぞれ窪み部α(図1参照)の下方に延びる延出部分(第2遮蔽部)とを有している。この屈曲下面11bと多孔板141’との間の空間S2は密閉されている。
また、図6(b)に示すように、多孔板141’において水平下面11aよりも下方に延出する一対の延出部分を、下方に向かうほど互いに近づくように形成してもよい。尚、当該多孔板141’の下端が、排気管12の下端と同じ高さになるとともに、当該多孔板141’で排気管12の鉛直下方を遮らないように構成されている。
これらの、図6(a)及び図6(b)に示す構成によると、多孔板141’と屈曲下面11bとの間の空間全体を有効に活用することができ、ヒートインシュレータの取付構造をよりコンパクトに形成することができる。また、図4に示す構成に比べて、背面板142が不要であるため、製造コストを低減できる。
(3)
図7に示すように、遮蔽構造体14における背面板142に複数の貫通孔142aを形成するとともに、背面板142と屈曲下面11bとの間の空間S4を密閉した構成とすることもできる。
この構成によると、多孔板141と屈曲下面11bとの間の空間が、多孔板としての背面板142により複数(2つ)の空気層(S3、S4)に分割される。これにより、当該多孔板141の貫通孔141aと背面板142の貫通孔142aとを利用して吸音することができるため、より広い周波数帯域で高い吸音効果を発揮することができる。
(4)
図8に、変形例に係る取付構造における排気管12の中心軸を通る鉛直断面を示すように、背面板142を、例えば、プレス加工により屈曲させて、排気管12の軸方向において、多孔板141の背面側の空気層が複数の密閉空間S5、S6に分割されるように構成してもよい。
図8に示す構成では、排気管12の軸方向において、密閉空間S5と密閉空間S6とが交互に並べられる。密閉空間S5と密閉空間S6とは、それぞれ、多孔板141から背面板142(屈曲して形成された底面)までの間隔(排気管12の径方向における間隔)が異なっている。つまり、密閉空間S5と密閉空間S6とは、多孔板141に直交する方向における幅(密閉空間内の空気層の厚さ)が、互いに異なっている。
尚、この変形例では密閉空間S5と密閉空間S6とは、容積も異なっている。
この構成によると、異なる2つの周波数の騒音に対して特に高い吸音効果を発揮することができ、より広い周波数帯域で高い吸音効果を発揮することができる。
(5)
図9に示すように、背面板142を、例えば、プレス加工により屈曲させて、排気管12の軸方向において、多孔板141の背面側の空気層が複数の密閉空間S7に分割されるように構成してもよい。
この図9に示す構成では、排気管12の軸方向において、密閉空間S7が等間隔で複数並べられている。これらの密閉空間S7は、それぞれ、多孔板141に直交する方向における幅(密閉空間内の空気層の厚さ)、及び容積が同じである。そして、多孔板141において各密閉空間S7に開口するの貫通孔141aの数が、排気管12の軸方向において変化している。つまり、複数の貫通孔141aは、多孔板141の全体にわたって均等に分散しておらず、排気管12の軸方向に並ぶ複数の領域(T1及びT2)毎に、開口率が異なるように、多孔板141に形成されている。尚、多孔板の所定の領域における開口率とは、多孔板における当該所定の領域内に存在する全ての開口の面積を積算した総面積を、当該所定の領域の面積で割った値である。
この構成によると、多孔板141の開口率が、排気管12の軸方向において一定ではないため、当該軸方向における開口率に対応した特定の周波数の騒音に対して特に高い吸音効果を発揮することができ、より広い周波数帯域で高い吸音効果を発揮することができる。
尚、排気管12の軸方向に並ぶ複数の領域(T1及びT2)毎に、多孔板141を貫通する貫通孔141aの径が異なるように構成してもよい。
(6)
図10に示すように、背面板142と多孔板141とを、例えば、プレス加工により屈曲させて、排気管12の軸方向において、複数の密閉空間S8、S9が形成されるように構成してもよい。
尚、図10に示す構成では、排気管12の軸方向において、容積及び形状が異なる密閉空間S8と密閉空間S9とが交互に並べられる。
ここで、凹部をプレス加工によって形成する場合、凹部の深さを所定の深さ以上にすることができない場合もある。例えば、複数の凹部を形成する間隔が決められている場合において、先細り形状のパンチで凹部をプレス加工する場合などである。つまり、例えば、板材の基準面に対して45°の傾斜面を形成するように当該板材をプレス加工して凹部を形成する場合は、凹部の深さ(基準面からの深さ)は最大でも凹部の幅(基準面と平行な方向における幅)の1/2である。
しかしながら、多孔板141と背面板142との両方にプレス加工で凹部を形成することで、一方のみをプレス加工する場合に比べて、空気層の厚さを2倍にすることができる。
即ち、多孔板141を排気管12側に突出させることで、密閉空間S8及び密閉空間S9の奥行き(排気管12の径方向における奥行き)をより深くすることができ、当該密閉空間の容積及び多孔板141に直交する方向における幅を増加させることができる。
(7)
背面板142を用いずに多孔板141’と屈曲下面11bとの間を空間を利用する構成(図6に示す構成)において、図11に示すように、排気管12の軸方向において多孔板141’を屈曲させて、多孔板141’と車体の屈曲下面11bとの間に、排気管12の軸方向において複数の密閉空間S10、S11を形成してもよい。尚、当該軸方向において隣接する密閉空間S10、S11の厚さ(多孔板141’における排気管12に対向する面に直交する方向における幅)が互いに異なるように形成されている。
この構成によると、多孔板141’と屈曲下面11bとの間の空間全体を有効に活用することができ、ヒートインシュレータの取付構造をよりコンパクトに形成することができる。また、背面板142が不要であるため、製造コストを低減できる。更に、異なる周波数の騒音に対して特に高い吸音効果を発揮することができ、より広い周波数帯域で高い吸音効果を発揮することができる。
(8)
背面板142を用いずに多孔板141’と屈曲下面11bとの間を空間を利用する構成(図6に示す構成)において、図12(a)に示すように、排気管12の軸方向から見て多孔板141’が屈曲するように構成し、多孔板141’と車体の屈曲下面11bとの間に、排気管12の周方向において複数の密閉空間を形成してもよい。尚、図12(a)に示す構成では、隣接する密閉空間の厚さ及び容積が互いに異なっている。この多孔板141’は、排気管12の軸と平行に、同形状で延びており、このような形状の多孔板141’は、例えば、ロールフォーミングにより形成することができる。この場合、製造コストが安価である。
当該排気管12の軸方向における多孔板141’の両端は、例えば、プレス加工により、屈曲下面11bに密着するように変形されている。これにより、多孔板と屈曲下面11bとの間の空間の両端が閉じられている。
また、図12(b)に、図12(a)におけるA2−A2断面に相当する断面を示すように、排気管12の軸方向において、多孔板141’と屈曲下面11bとの間の空間を仕切る隔壁145を、所定の間隔で設けてもよい。尚、図11に示す構成と同様に、プレス加工により多孔板141’を屈曲させることで隔壁を形成してもよい。このように隔壁を形成することで、吸音構造の強度を向上させることができる。
(吸音効果の解析)
以下、本発明の実施形態に係るヒートインシュレータの取付構造の吸音効果をコンピュータシミュレーションにより検証した結果を示す。
◆解析1
図13に、解析モデルを示す。
図13(a)に示すように、比較例に係る解析モデル(以下、比較モデルという)は、車両における一対の側壁部21と、当該一対の側壁部21の下端からそれぞれ、地面Gと平行に、車両幅方向中央に向かって延びる底部22と、当該底部22に連続し、車両幅方向中央部において上方に盛り上がるように設けられた半円弧状の遮蔽部23とを備えている。比較例に係る遮蔽部23は、その円弧の両端部が、底部22の下面と同じ高さになるように配置されている。
また、排気管に相当する音源24が、遮蔽部23の円弧中心上に配置されている。
図13(b)に示すように、本発明の実施形態に係る解析モデル(以下、実施モデル1という)は、遮蔽部33以外は、比較モデルと同様である。当該実施モデル1における遮蔽部33は、比較モデルにおける遮蔽部23の円弧の両端を、底部22の下面と垂直に地面Gに向かって所定量延ばしたものである。即ち、実施モデル1は、比較モデルに延出部33aを追加した構成である。尚、遮蔽部33における一対の延出端を結んだ直線上に、音源24の下端が位置するように当該遮蔽部33が設けられている。
上記比較モデル及び実施モデル1で、それぞれ、音源24から所定の騒音を発生させ、そのときに、側壁部21の下方の領域X(評価領域X)に作用した音波の、相対音圧レベルを算出した。
比較モデル及び実施モデル1での解析において、評価領域Xに作用した音波の、相対音圧レベルと周波数(1000Hz〜4000Hz)との関係を図14に示す。
図14に示すように、実施モデル1では、1000Hz〜2000Hzの周波数帯域において、相対音圧レベルが、比較モデルに比べて減少していることが分かる。
これにより、遮蔽部33を車両下面よりも地面G側に延出させることで、吸音効果が向上することが分かる。
◆解析2
図15に解析モデルを示す。
図15に示す解析モデルは、本発明の実施形態に係る解析モデル(以下、実施モデル2という)である。この実施モデル2における遮蔽部43は、上記解析1で用いた実施モデル1における遮蔽部33の延出端に連続して車幅方向中央に車両下面と平行に延びる延出部43aを設けたものである。尚、延出部43aは、その延出端が、車両幅方向において音源24の両端と同位置となるように設けられている。
上記実施モデル2で、上記解析1と同様に、音源24から所定の騒音を発生させ、評価領域Xに作用する音波の相対音圧レベルを算出した。
実施モデル2での解析において、評価領域Xに作用した相対音圧レベルと、周波数(1000Hz〜4000Hz)との関係を図16に示す。尚、上記解析1の解析結果(比較モデル及び実施モデル1の結果)も併せて示す。
図16に示すように、実施モデル2では、1000Hz〜1600Hzの周波数帯域において、相対音圧レベルが、実施モデル1に比べて減少していることが分かる。
これにより、当該遮蔽部43が、車両下面よりも下方に延出した端部から屈曲して音源24に近づくように延びる延出部43aを備えることで、吸音効果が更に向上することが分かる。
◆解析3
図17に解析モデルを示す。
図17に示す解析モデルは、本発明の実施形態に係る解析モデル(以下、実施モデル3という)である。この実施モデル3における遮蔽部53は、多孔板531と、その背後の密閉空気層Sと、を備える吸音構造体である。この実施モデル3は、図6に示す実施形態にほぼ対応したモデルである。
当該遮蔽部53は、音源24を挟んだ車両幅方向両側において車両下面よりも下方に延出するように設けられている。尚、当該遮蔽部53の一対の延出端を結んだ直線上に、音源24の下端が位置する。
上記実施モデル3で、上記解析1と同様に、音源24から所定の騒音を発生させ、評価領域Xに作用する音波の相対音圧レベルを算出した。
実施モデル3での解析において、評価領域Xに作用した相対音圧レベルと、周波数(1000Hz〜4000Hz)との関係を図18に示す。尚、上記解析1の解析結果(比較モデル及び実施モデル1の結果)も併せて示す。
図18に示すように、実施モデル3では、1000Hz〜1250Hzの周波数帯域において、相対音圧レベルが、実施モデル1に比べて減少していることが分かる。
これにより、遮蔽部53を、多孔板531と、その背後の密閉空気層Sとを備える吸音構造体とすることで、吸音効果が更に向上することが分かる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
例えば、車体底板10が屈曲下面11bを有する場合に限らず、当該屈曲下面11bに相当する位置において車体底板10が開口している場合でも、本発明を適用することができる。
本発明は、排気管からの熱が車体に伝達することを抑制するヒートインシュレータを車体に取り付ける場合に利用することができる。
1、2 ヒートインシュレータの取付構造
11 車体下面
11a 水平下面
11b 屈曲下面
12 排気管
13 遮蔽板
131 第1遮蔽部
132 第2遮蔽部
14 遮蔽構造体
141 多孔板(内側板状部材、第1遮蔽部及び第2遮蔽部)
142 背面板(外側板状部材、第1遮蔽部及び第2遮蔽部)

Claims (3)

  1. 車体の下面よりも上方に少なくとも一部が位置するように配置された排気管と、
    前記車体の下面よりも上方において、前記排気管の上面を覆う第1遮蔽部と、
    前記排気管の外周方向における当該第1遮蔽部の両端から、前記車体の下面よりも下方に延びる一対の第2遮蔽部と、
    を備え
    前記第1遮蔽部及び前記第2遮蔽部は、前記排気管に対向する内側板状部材と、当該内側板状部材に対向するように当該内側板状部材から見て前記排気管とは逆側に配置された外側板状部材とを有し、
    当該内側板状部材と当該外側板状部材との間の空間が密閉されており、
    前記一対の第2遮蔽部は、前記第1遮蔽部の両端部から、互いに近づくように斜め下方に延出しており、
    前記第1遮蔽部においては、前記内側板状部材に複数の貫通孔が形成されており、
    当該第2遮蔽部においては、前記外側板状部材に複数の貫通孔が形成されている、ヒートインシュレータの取付構造。
  2. 前記第2遮蔽部の下端が、前記排気管の下端と同じ高さ、又は、前記排気管の下端よりも上方に位置する、
    請求項1に記載のヒートインシュレータの取付構造。
  3. 前記一対の第2遮蔽部の間隔が前記排気管の外径以上である、
    請求項1又は2に記載のヒートインシュレータの取付構造。
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