以下、本発明の第1の実施の形態の構成を、図面を参照して説明する。
図1ないし図4において、10は吸音構造体であり、この吸音構造体10は、吸音材である多孔質材11と、この多孔質材11を挟む第1の部材12及び第2の部材13とを一体的に備えている。そして、この吸音構造体10は、レゾネータとも呼ばれ、多孔質材11による吸音とヘルムホルツ共鳴とを用いて騒音を吸収するものである。
多孔質材11は、一主面15と他主面16とを備える平板状に形成されている。この多孔質材11は、例えば四角形状に形成されている。また、この多孔質材11としては、例えば雑フェルトが用いられる。さらに、この多孔質材11は、例えば10mm程度の厚さに形成されている。
第1の部材12は、第1の有孔部品とも呼び得るもので、例えば剛性を有する合成樹脂により一体に射出成形されている。この第1の部材12は、第1の部材本体21と、この第1の部材本体21の外縁部に連続する第1の側壁部22と、第1の部材本体21を貫通して設けられた第1の通孔23と、第1の通孔23を区画する第1の壁部24とを備えている。また、この第1の部材12は、第1の側壁部22に連続して、吸音構造体10を取り付けるための第1の取付部25を一体に設けてもよい。そして、この第1の部材12は、多孔質材11の一主面15側に配置されている。
第1の部材本体21は、多孔質材11と略等しい形状、本実施の形態では多孔質材11と外形が略等しい四角形状に形成されている。また、この第1の部材本体21は、例えば多孔質材11よりも肉厚が小さい板状に形成されており、多孔質材11の一主面15を覆ってこの一主面15に対向配置されている。さらに、この第1の部材本体21は、多孔質材11の一主面15に対して離間されて位置している。
第1の側壁部22は、多孔質材11の外側面を覆う部分である。この第1の側壁部22は、第1の部材本体21の外縁部から多孔質材11側へと立ち上げられ、この多孔質材11の外側面17に対向するとともに、この多孔質材11の外側面17と密着している。
第1の通孔23は、丸孔状に形成されている。この第1の通孔23は、第1の部材本体21に複数設定されている。これら第1の通孔23は、本実施の形態では、第1の部材本体21の互いに対向する一の辺部(例えば長辺(長手方向))に対して平行に複数個が互いに略等間隔に配置されて列をなし、それら列が第1の部材本体21の互いに対向する他の辺部(例えば短辺(短手方向))に沿って互いに略等間隔に複数列配置されている。すなわち、第1の通孔23は、第1の部材本体21の長手方向及び短手方向に沿って規則的に配列されている。このため、第1の部材本体21には、これら第1の通孔23が位置しない第1の非開口部27が、第1の通孔23間にて第1の部材本体21の短手方向に沿って帯状に形成され、これら第1の非開口部27が第1の部材本体21の長手方向に複数列形成されている。
第1の壁部24は、各第1の通孔23を区画して形成されている。すなわち、これら第1の壁部24は、第1の部材本体21に対して、各第1の通孔23から、多孔質材11の一主面15側へと突出して形成されている。したがって、これら第1の壁部24は、各第1の通孔23の縁部に連続する円筒状に形成されている。さらに、これら第1の壁部24は、第1の部材本体21の背面側(多孔質材11の一主面15側)に突出して多孔質材11の一主面15に対して先端部が面接触している。このため、これら第1の壁部24によって囲まれる内側が、第1の通孔23と連通する第1の空間部28となっているとともに、第1の壁部24の外側と第1の部材本体21(第1の非開口部27)とによって囲まれる部分が、第1の気室部29となっている。換言すれば、これら第1の壁部24の高さが、各第1の通孔23の孔深さを定義するように構成されている。
第1の取付部25は、吸音構造体10を他部材に対して取り付けるときの座部となるもので、第1の側壁部22から外方へとフランジ状に延出している。したがって、この第1の取付部25は、本実施の形態において四角形枠状に形成されている。この第1の取付部25は、第1の壁部24の先端部と略面一となっている。
第2の部材13は、第2の有孔部品とも呼び得るもので、第1の部材12と同様に、例えば剛性を有する合成樹脂により一体に射出成形されている。この第2の部材13は、第2の部材本体31と、この第2の部材本体31の外縁部に連続する第2の側壁部32と、第2の部材本体31を貫通して設けられた第2の通孔33と、第2の通孔33を区画する第2の壁部34とを備えている。また、この第2の部材13は、第2の側壁部32に連続して、吸音構造体10を取り付けるための第2の取付部35を一体に設けてもよい。そして、この第2の部材13は、多孔質材11の他主面16側に配置されている。
第2の部材本体31は、多孔質材11と略等しい形状、本実施の形態では多孔質材11と外形が略等しい四角形状に形成されている。したがって、この第2の部材本体31は、第1の部材本体21と略等しい外縁形状に形成されている。また、この第2の部材本体31は、例えば多孔質材11よりも肉厚が小さい板状に形成されており、多孔質材11の他主面16を覆ってこの他主面16に対向配置されている。さらに、この第2の部材本体31は、多孔質材11の他主面16に対して離間されて位置している。
第2の側壁部32は、多孔質材11の外側面を覆う部分である。この第2の側壁部32は、第2の部材本体31の外縁部から多孔質材11側へと立ち上げられ、この多孔質材11の外側面17に対向するとともに、この多孔質材11の外側面17と密着している。したがって、この第2の側面部32は、第1の側面部22とともに、多孔質材11の外側面17全体を覆っている。
第2の通孔33は、丸孔状に形成されている。この第2の通孔33は、第2の部材本体31に複数設定されている。これら第2の通孔33は、本実施の形態では、第2の部材本体31の互いに対向する一の辺部(例えば長辺(長手方向))に対して平行に複数個が互いに略等間隔に配置されて列をなし、それら列が第2の部材本体31の互いに対向する他の辺部(例えば短辺(短手方向))に沿って互いに略等間隔に複数列配置されている。すなわち、第2の通孔33は、第2の部材本体31の長手方向及び短手方向に沿って規則的に配列されている。このため、第2の部材本体31には、これら第2の通孔33が位置しない第2の非開口部37が、第2の通孔33間にて第2の部材本体31の短手方向に沿って帯状に形成され、これら第2の非開口部37が第2の部材本体31の長手方向に複数列形成されている。
第2の壁部34は、各第2の通孔33を区画して形成されている。すなわち、これら第2の壁部34は、第2の部材本体31に対して、各第2の通孔33から、多孔質材11の他主面16側へと突出して形成されている。したがって、これら第2の壁部34は、各第2の通孔33の縁部に連続する円筒状に形成されている。さらに、これら第2の壁部34は、第2の部材本体31の背面側(多孔質材11の他主面16側)に突出して多孔質材11の他主面16に対して先端部が面接触している。このため、これら第2の壁部34によって囲まれる内側が、第2の通孔33と連通する第2の空間部38となっているとともに、第2の壁部34の外側と第2の部材本体31(第2の非開口部37)とによって囲まれる部分が、第2の気室部39となっている。換言すれば、これら第2の壁部34の高さが、各第2の通孔33の孔深さを定義するように構成されている。
第2の取付部35は、吸音構造体10を他部材に対して取り付けるときの座部となるもので、第2の側壁部32から外方へとフランジ状に延出し、第1の側壁部22と重ねられて貼り合わせられることで、フランジ部Fを構成している。したがって、この第2の取付部35は、本実施の形態において四角形枠状に形成されている。この第2の取付部35は、第2の壁部34の先端部と略面一となっている。
そして、第1の部材12の各第1の通孔23及び第1の壁部24と、第2の部材13の各第2の通孔33及び第2の壁部34との配置は、互いにずれている。換言すれば、第1の通孔23と第2の通孔33との配置は、吸音構造体10の厚さ方向に直接貫通、すなわち吸音構造体10を厚さ方向に見て第1の通孔23(第2の通孔33)の範囲内に第2の通孔33(第1の通孔23)が位置しないように設定されている。本実施の形態では、第1の通孔23(第1の壁部24)と第2の通孔33(第2の壁部34)とは、吸音構造体10(第1の部材12及び第2の部材13)の長手方向に互いにずれている。したがって、第1の通孔23(第1の壁部24)は、第2の非開口部37に対して多孔質材11を介して対向し、第2の通孔33(第2の壁部34)は、第1の非開口部27に対して多孔質材11を介して対向している。この結果、第1の通孔23の位置で、第1の空間部28、多孔質材11及び第2の気室部39により、第1のヘルムホルツ共鳴器HR1が構成され、第2の通孔33の位置で、第2の空間部38、多孔質材11及び第1の気室部29により、第2のヘルムホルツ共鳴器HR2が構成される。
ここで、この吸音構造体10(各ヘルムホルツ共鳴器HR1,HR2)のヘルムホルツ共鳴による共鳴周波数は、次の式により定義される。
fo=C/2π×√(S/V(L+α×√S))
fo〔Hz〕:共鳴周波数
C〔m/s〕:音速
S〔m2〕:第1の通孔23(第1の空間部28)または第2の通孔33(第2の空間部38)の断面積
V〔m3〕:第1の通孔23の位置または第2の通孔33の位置での空気層容積
L〔m〕:第1の壁部24(第1の空間部28)または第2の壁部34(第2の空間部38)の高さ
α:補正係数
したがって、図2に示す第1の通孔23(第1の空間部28)または第2の通孔33(第2の空間部38)の断面積すなわち第1の通孔23の孔径D1または第2の通孔33の孔径D2が大きいほど、第1のヘルムホルツ共鳴器HR1または第2のヘルムホルツ共鳴器HR2に高い共鳴周波数が設定される。同様に、第1の通孔23の位置または第2の通孔33の位置での空気層容積を設定する第1の通孔23の配置ピッチ(所定方向(本実施の形態では長手方向)隣接する第1の通孔23,23の中心間距離)P1または第2の通孔33の配置ピッチ(所定方向(本実施の形態では長手方向)隣接する第2の通孔33,33の中心間距離)P2、及び、第1の通孔23の位置での空気層厚さ(多孔質材11の一主面15から第2の部材本体31の表面までの距離、換言すれば多孔質材11の厚さと第2の部材13の厚さとの和)T1または第2の通孔33の位置での空気層厚さ(多孔質材11の他主面16から第1の部材本体21の表面までの距離、換言すれば多孔質材11の厚さと第1の部材12の厚さとの和)T2が小さいほど、第1のヘルムホルツ共鳴器HR1または第2のヘルムホルツ共鳴器HR2に高い共鳴周波数が設定される。さらに、第1の壁部24(第1の空間部28)の高さH1または第2の壁部34(第2の空間部38)の高さ(第1の通孔23または第2の通孔33の孔深さ)H2が小さいほど、第1のヘルムホルツ共鳴器HR1または第2のヘルムホルツ共鳴器HR2に高い共鳴周波数が設定される。本実施の形態では、例えば第1の通孔23の孔径D1が第2の通孔33の孔径D2よりも大きく、その他の要素は略等しい(P1≒P2、T1≒T2、H1≒H2)。したがって、この吸音構造体10において、第1の部材12側(第1のヘルムホルツ共鳴器HR1)で吸音する周波数は、第2の部材13側(第2のヘルムホルツ共鳴器HR2)で吸音する周波数よりも高く設定されている。換言すれば、この吸音構造体10は、第1の部材12側(第1のヘルムホルツ共鳴器HR1)で主として高音を吸収し、第2の部材13側(第2のヘルムホルツ共鳴器HR2)で主として低音を吸収するようになっている。すなわち、この吸音構造体10は、第1の部材12側(第1のヘルムホルツ共鳴器HR1)と第2の部材13側(第2のヘルムホルツ共鳴器HR2)とで吸収する雑音の周波数帯が異なっている。具体的に、本実施の形態では、第1の部材12側(第1のヘルムホルツ共鳴器HR1)で、エンジン音(車両速度やエンジン回転数に依存するものの、約5000Hz付近の周波数帯)を吸収し、第2の部材13側(第2のヘルムホルツ共鳴器HR2)で、タイヤパターンノイズ(車両速度に依存するものの、約1000Hz付近の周波数帯)を吸収するように設定されている。
そして、吸音構造体10を製造する際には、多孔質材11の一主面15に第1の部材12を重ねるとともに他主面16に第2の部材13を重ね、これら第1の部材12の第1の取付部25と第2の部材13の第2の取付部35とを互いに溶着などによって固定することで多孔質材11を第1の部材12と第2の部材13とで挟み込んだ状態とする。
完成した吸音構造体10は、例えば自動車などの車両に用いられる車両用カバー部材41に取り付けられる。本実施の形態では、この車両用カバー部材41は、例えばエンジンルームの下部を覆うアンダーカバーである。この車両用カバー部材41は、カバー部材本体42と、このカバー部材本体42の外縁部全体に延出されたカバー取付部43とを一体に備えている。そして、この車両用カバー部材41は、カバー取付部43をボルトなどによって車体側に固定することで車体に取り付けられる。
カバー部材本体42は、例えば合成樹脂により板状に形成されており、車幅方向に長手状となっている。このカバー部材本体42は、長手方向の両端部がそれぞれ後方へ突出する、平面視でコ字状となっている。このカバー部材本体42には、図示しないが、開口部が厚さ方向である上下方向に貫通して設けられている。この開口部は、本実施の形態では、カバー部材本体42の中央部にて左右方向に延びる第1の開口部と、カバー部材本体42の長手方向両端部の後部に開口された第2開口部とが設定されている。そして、第1の開口部と第2の開口部とに、それぞれ吸音構造体10が取り付けられて、これら第1及び第2の開口部が吸音構造体10によって覆われる。
ここで、吸音構造体10は、本実施の形態では、第2の部材13側(第2のヘルムホルツ共鳴器HR2)を下側すなわち路面側に向け、第1の部材12側(第1のヘルムホルツ共鳴器HR1)を上側すなわちエンジンルーム側に向けて配置される。
吸音構造体10のカバー部材本体42への取り付けの際には、例えばフランジ部Fを超音波溶着により開口部の縁部に固定する、あるいは、例えばカバー部材本体42の開口部の縁部にピン形状を立設し、このピン形状を吸音構造体10のフランジ部Fを貫通して形成した挿通穴に挿通して熱かしめするなどの方法が好適に用いられる。
そして、第1の部材12側、すなわち車両用カバー部材41の上側では、各第1の通孔23から侵入したエンジン音などの騒音が多孔質材11にて拡散されて吸収されるとともに、第1のヘルムホルツ共鳴器HR1の作用により吸収される。同様に、第2の部材13側、すなわち車両用カバー部材41の下側では、各第2の通孔33から進入したタイヤパターンノイズなどの騒音が多孔質材11にて拡散されて吸収されるとともに、第2のヘルムホルツ共鳴器HR2の作用により吸収される。
このように、第1の実施の形態によれば、多孔質材11を挟む第1の部材12と第2の部材13とのそれぞれに設けた第1の通孔23と第2の通孔33との位置をずらし、第1の通孔23を区画する第1の壁部24と第2の通孔33を区画する第2の壁部34とをそれぞれ多孔質材11の一主面15と他主面16とに接触させているので、吸音構造体10の一面側である第1の部材12側と、他面側である第2の部材13側とでそれぞれ別個に、第1の通孔23に対応する位置と第2の通孔33に対応する位置とに第1のヘルムホルツ共鳴器HR1と第2のヘルムホルツ共鳴器HR2とを構成し、これらヘルムホルツ共鳴器HR1,HR2によってそれぞれの騒音を吸収できる。したがって、複数の音源方向、すなわち吸音構造体10を挟んで互いに反対側に位置する、互いに異なる雑音源に対応可能な吸音特性を設定できる。
また、例えば第1の通孔23と第2の通孔33との大きさ(孔径)を互いに異ならせることで、第1の通孔23に対応する位置と第2の通孔33に対応する位置とにそれぞれ構成される第1のヘルムホルツ共鳴器HR1で吸収する雑音の周波数帯と、第2のヘルムホルツ共鳴器HR2で吸収する雑音の周波数帯とを容易に互いに異ならせることができる。したがって、異なる雑音源から発生する、異なる周波数帯の騒音を吸収でき、より多様な周波数帯の雑音現に対応可能な吸音特性を設定できる。
この結果、特定の周波数帯の吸音と、互いに異なる雑音源からの吸音が可能になる。
また、吸音構造体10は、多孔質材11を第1の部材12と第2の部材13とで挟む、箱形状となるため、パネル状の車両用カバー部材41に組み込むことで、車両用カバー部材41の面剛性を向上できる。
さらに、例えば低周波数帯の吸音効果を向上する場合、一般的な吸音材を用いる構成の場合には、吸音材の厚みを増加させなければならず、質量が増加するのに対して、本実施の形態では、吸音する周波数帯を特定すれば、通孔23,33の孔径や配置ピッチなどを変えるだけで容易に設定でき、最小限の質量増加に留めることが可能となる。すなわち、吸音構造体10は、吸音する周波数帯によっては一般的な吸音材よりも軽量化できる。
そして、多孔質材11を第1の部材12と第2の部材13とで挟んで構成した簡易な構造であるため、比較的高価な一般的な吸音材よりも安価に構成できる。
なお、上記第1の実施の形態において、例えば第1の通孔23の配置ピッチまたは第2の通孔33の配置ピッチ、第1の通孔23の位置での空気層厚さまたは第2の通孔33の位置での空気層厚さ、あるいは第1の通孔23と第2の通孔33との孔深さ(第1の壁部24の高さまたは第2の壁部34の高さ)を互いに異ならせても、ヘルムホルツ共鳴器HR1,HR2の共鳴周波数を互いに異ならせることができる。
次に、第2の実施の形態を図6ないし図9を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
この第2の実施の形態は、上記の第1の実施の形態において、第1の部材12と第2の部材13との少なくともいずれか、本実施の形態では図9(a)および図9(b)に示すように第1の部材12が複数設定され、吸音構造体10が箱型のユニット構造となっているものである。
第1の部材12は、例えば第1の通孔23の配置が同一の一対の(一の)第1の部材12a,12aと、第1の通孔23の配置が第1の部材12aと異なる1つの(他の)第1の部材12bとを備えている。
図8に示すように、第1の部材12a,12aは、第1の部材12bの両側に配置されている。各第1の部材12aは、(一の)第1の部材本体21aと、(一の)第1の側壁部22aとを備え、第1の側壁部22aの先端部に、第1の部材12aを第2の部材13に固定するための舌片状の固定片部46が複数突設されている。また、第1の部材本体21aには、(一の)第1の通孔23aが複数設けられ、これら第1の通孔23aを区画して、(一の)第1の壁部24aが設けられている。そして、図6(a)に示すように、第1の壁部24aが多孔質材11aの一主面15aと接触することにより、第1の壁部24aによって囲まれる内側が(一の)第1の空間部28aとなっているとともに、第1の壁部24aの外側と第1の部材本体21aとによって囲まれる部分が、(一の)第1の気室部29aとなっている。また、第1の部材本体21aには、第1の通孔23aが位置しない(一の)第1の非開口部27aが、第1の通孔23a間にて第1の部材本体21aの短手方向に沿って帯状に形成され形成されている。
図8に示すように、第1の部材12bは、(他の)第1の部材本体21bと、(他の)第1の側壁部22bとを備え、第1の側壁部22bの先端部に、第1の部材12aを第2の部材13に固定するための舌片状の固定片部46が複数突設されている。また、第1の部材本体21bには、(他の)第1の通孔23bが複数設けられ、これら第1の通孔23bを区画して、(他の)第1の壁部24bが設けられている。そして、図6(b)に示すように、第1の壁部24bが多孔質材11bの一主面15bと接触することにより、第1の壁部24bによって囲まれる内側が(他の)第1の空間部28bとなっているとともに、第1の壁部24bの外側と第1の部材本体21bとによって囲まれる部分が、(他の)第1の気室部29bとなっている。また、第1の部材本体21bには、第1の通孔23bが位置しない(他の)第1の非開口部27bが、第1の通孔23b間にて第1の部材本体21bの短手方向に沿って帯状に形成され形成されている。
本実施の形態では、図6(a)に示す第1の通孔23aは、図6(b)に示す第1の通孔23bよりも孔径及び配置ピッチが大きく設定され、図6(a)に示す第1の壁部24aは、図6(b)に示す第1の壁部24bよりも高さが小さく設定されている。
また、本実施の形態において、図8に示すように、多孔質材11は、第1の部材12a,12aと第1の部材12bとのそれぞれに対応して、複数設定されている。すなわち、多孔質材11は、図7に示すように、一対の(一の)多孔質材11a,11aと、(他の)多孔質材11bとを備えている。これら多孔質材11a,11bは、例えば四角形状に形成されており、図8に示すように、第1の部材12a,12bの第1の側壁部22a,22bによりそれぞれ外縁部が囲まれている。本実施の形態では、多孔質材11aと多孔質材11bとは、例えば同一の材質で互いに略等しい厚さに設定されているが、材質と厚さとの少なくともいずれかが互いに異なっていてもよい。
さらに、第2の部材13は、第2の部材本体31が、第1の部材12aに対応する例えば四角形状の一の領域31aと、第1の部材12bに対応する例えば四角形状の他の領域31bとを備えている。また、この第2の部材本体31には、固定片部46が挿入されてそれぞれ溶着されることで第1の部材12a,12bを固定するためのスリット48が第2の部材本体31の各領域31a,31bの外縁部に沿って複数設けられている。
一の領域31aは、例えば第1の部材12aと略等しい四角形状であり、図7に示すように他の領域31bの両側に配置されている。この一の領域31aには、図6(a)に示すように、(一の)第2の通孔33aが複数設けられ、これら第2の通孔33aを区画して、(一の)第2の壁部34aが設けられている。これら第2の通孔33aは、第1の通孔23aに対してずれた位置となっている。また、これら第2の通孔33aは、第1の通孔23aよりも孔径が小さく設定されている。さらに、第2の壁部34aは、第1の壁部23aと略等しい高さに設定されている。そして、第2の壁部34aが多孔質材11aの他主面16aと接触することにより、第2の壁部34aによって囲まれる内側が(一の)第2の空間部38aとなっているとともに、第2の壁部34aの外側と第2の部材本体31(一の領域31a)とによって囲まれる部分が、(一の)第2の気室部39aとなっている。また、一の領域31aには、第2の通孔33aが位置しない(一の)第2の非開口部37aが、第2の通孔33a間にて一の領域31aの短手方向に沿って帯状に形成され形成されている。
図8に示す他の領域31bは、例えば第1の部材12bと略等しい四角形状である。他の領域31bには、図6(b)に示すように、(他の)第2の通孔33bが複数設けられ、これら第2の通孔33bを区画して、(他の)第2の壁部34bが設けられている。これら第2の通孔33bは、第1の通孔23bに対してずれた位置となっている。また、これら第2の通孔33bは、第1の通孔23a,23bよりも孔径が大きく設定されている。さらに、第2の壁部33bは、第2の壁部33a及び第1の壁部23a,23bと略等しい高さに設定されている。そして、第2の壁部34bが多孔質材11bの他主面16bと接触することにより、第2の壁部34bによって囲まれる内側が(他の)第2の空間部38bとなっているとともに、第2の壁部34bの外側と第2の部材本体31(他の領域31b)とによって囲まれる部分が、(他の)第2の気室部29bとなっている。また、他の領域31bには、第2の通孔33bが位置しない(他の)第2の非開口部37bが、第2の通孔33b間にて他の領域31bの短手方向に沿って帯状に形成され形成されている。
そして、図6(a)及び図6(b)に示すように、第1の通孔23a,23bの位置で、第1の空間部28a,28b、多孔質材11a,11b及び第2の気室部39a,39bにより、(一及び他の)第1のヘルムホルツ共鳴器HR1a,HR1bが構成され、第2の通孔33a,33bの位置で、第2の空間部38a,38b、多孔質材11a,11b及び第1の気室部29a,29bにより、(一及び他の)第2のヘルムホルツ共鳴器HR2a,HR2bが構成される。
吸音構造体10を製造する際には、図7に示すように、第2の部材13の一の領域31a,31a上に多孔質材11a,11aの他主面16a,16aを重ね、他の領域31bに多孔質材11bの他主面16bを重ねるとともに、多孔質材11a,11a,11bの一主面15a,15a,15b上に第1の部材12a,12a,12bを重ねつつ、これら第1の部材12a,12a,12bの固定片部46をそれぞれ第2の部材13のスリット48(図9(b))に挿入して溶着することで、多孔質材11a,11a,11bを第1の部材12a,12a,12bと第2の部材13とで挟み込んだ状態とする。この完成した吸音構造体10は、任意の車両用の外装部品などに取り付けることができる。
図6(a)及び図6(b)に示す第1の部材12a,12a,12b側では、各第1の通孔23a,23a,23bから侵入した騒音が多孔質材11a,11a,11bにて拡散されて吸収されるとともに、第1のヘルムホルツ共鳴器HR1a,HR1a,HR1bの作用により吸収される。同様に、第2の部材13側では、各第2の通孔33a,33a,33bから侵入した騒音が多孔質材11a,11a,11bにて拡散されて吸収されるとともに、第2のヘルムホルツ共鳴器HR2a,HR2a,HR2bの作用により吸収される。
そして、このように吸音構造体10を様々に異なる共鳴周波数を有する複数のヘルムホルツ共鳴器HR1a,HR1b,HR2a,HR2bを一面側と他面側とに一体的に備える箱型のユニット構造とすることで、より多様な周波数帯及び配置方向を有する雑音源に対応可能な吸音特性を容易に設定できる。
特に、第1の壁部24a,24aと第1の壁部24bとの高さ、すなわち第1の通孔23a,23aと第1の通孔23bとの孔深さを互いに異ならせることで、第1の通孔23aに対応する位置と第1の通孔23bに対応する位置とにそれぞれ構成される第1のヘルムホルツ共鳴器HR1a,HR1bの共鳴周波数を互いに異ならせることができる。したがって、より多様な周波数帯の雑音現に対応可能な吸音特性を設定できる。
なお、上記の第2の実施の形態において、第1の部材12a,12bの第1の通孔23a,23bの孔径や第1の壁部24a,24bの高さ、あるいは、第2の部材13の第2の通孔33a,33bの孔径や第2の壁部34a,34bの高さなどは、ヘルムホルツ共鳴器HR1a,HR1b,HR2a,HR2bで吸収したい共鳴周波数に応じて任意に組み合わせることができる。
また、第1の部材12は、3種類以上設定してもよいし、その配置も任意に設定できる。同様に、第2の部材13を2種類以上設定してもよい。
そして、上記の各実施の形態において、吸音構造体10は、インナーフェンダなど、アンダーカバー以外の車両用の外装部品にも適用できる。その場合には、必要な共鳴数端数に応じて通孔23,33の孔径や壁部24,34の高さなどを適宜設定できる。