JP5274691B1 - 色素増感太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】光電変換特性を向上させることができる色素増感太陽電池を提供すること。
【解決手段】光を透過させることが可能な導電性基板15上に多孔質酸化チタン層13を有する作用極10と、作用極10に対向するように配置される対極20と、作用極10の多孔質酸化チタン層13に担持される光増感色素と、作用極10及び対極20の間に配置される電解質40とを備え、多孔質酸化チタン層13が、アナターゼ結晶からなるアナターゼ結晶型酸化チタンと、ルチル結晶からなる球状のルチル結晶型酸化チタンとを含有するルチル結晶含有層を含み、ルチル結晶含有層中のルチル結晶型酸化チタンの含有率が3〜15質量%である色素増感太陽電池100。
【選択図】図1

Description

本発明は、色素増感太陽電池に関する。
色素増感太陽電池は、スイスのグレッツェルらによって開発されたものであり、光電変換効率が高く、製造コストが低いなどの利点を持つため注目されている次世代太陽電池である。
色素増感太陽電池は一般に、作用極と、対極と、作用極の酸化物半導体層に担持される光増感色素と、作用極及び対極間に配置される電解質とを備えている。
このような色素増感太陽電池については光電変換特性のさらなる改善が求められており、そのために種々の研究が行われている。
例えば特許文献1には、色素増感太陽電池の酸化チタン膜として、三極構造の酸化チタン膜電極膜構造が開示されている。この三極構造の酸化チタン膜電極膜構造は、透明基板上の透明導電膜と接する下地層が径5〜10nmの微粒子のアナターゼ型結晶粒状酸化チタンからなる酸化膜で構成され、下地層上に設けられる中間層が、径30〜200nm、長さ0.5〜20μmのルチル型結晶針状酸化チタンと径5〜400nmのアナターゼ型結晶粒状酸化チタンとを含む多孔質膜で構成され、中間層上に設けられる最上層が径20〜400nmのアナターゼ型結晶粒状酸化チタンからなる酸化チタン膜で構成されたものとなっている。このような構造の酸化チタン膜を用いることにより色素増感太陽電池において高い光電変換効率を達成することが図られている。
特開2008−115055号公報
しかし、上述した特許文献1に記載の色素増感太陽電池は、以下の課題を有していた。
即ち、上記特許文献1記載の色素増感太陽電池は、光電変換特性の向上の点で改善の余地があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光電変換特性を向上させることができる色素増感太陽電池を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するべく、特許文献1に記載の酸化チタン膜電極膜構造において、中間層に含まれるルチル型結晶酸化チタンに着目して鋭意研究を重ねた結果、多孔質酸化チタン層において、ルチル型結晶酸化チタンの形状が特定の形状であり、且つ、中間層中のルチル型結晶酸化チタンの含有率が特定の範囲にある層が含まれる場合に上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、光を透過させることが可能な導電性基板上に多孔質酸化チタン層を有する作用極と、前記作用極に対向するように配置される対極と、前記作用極の前記多孔質酸化チタン層に担持される光増感色素と、前記作用極及び前記対極の間に配置される電解質とを備え、前記多孔質酸化チタン層が、アナターゼ結晶からなるアナターゼ結晶型酸化チタンと、ルチル結晶からなる球状のルチル結晶型酸化チタンとを含有するルチル結晶含有層を含み、前記ルチル結晶含有層中の前記ルチル結晶型酸化チタンの含有率が3〜15質量%である色素増感太陽電池である。
この色素増感太陽電池によれば、例えば太陽光が作用極の導電性基板を透過し、多孔質酸化チタン層に入射される。その後、光は、多孔質酸化チタン層中のルチル結晶含有層に入射される。このとき、ルチル結晶含有層において、ルチル結晶型酸化チタンは、アナターゼ結晶型酸化チタンよりも高い屈折率を有しており、アナターゼ結晶型酸化チタンよりも光を散乱させやすい。しかも、本発明ではルチル結晶型酸化チタンは球状となっており、針状である場合に比べて、光を種々の方向に散乱することが可能となり、ルチル結晶含有層全体に光を満遍なく行き渡らせることが可能となる。すなわちルチル結晶含有層はそれ単独でも十分に高い光閉じ込め効果を有する。一方、ルチル結晶含有層中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は3〜15質量%であり、残りがアナターゼ結晶型酸化チタンである。ここで、光増感色素は、ルチル結晶型酸化チタンよりもアナターゼ結晶型酸化チタンに吸着しやすい。このため、ルチル結晶含有層では、ルチル結晶含有層中のルチル結晶型酸化チタンの含有率が上記範囲を外れる場合に比べて、アナターゼ結晶型酸化チタンに吸着した光増感色素により、光を十分に吸収させることが可能となる。このように本発明によれば、光の吸収と光の閉じ込めとがバランス良く行われるため、色素増感太陽電池の光電変換特性を向上させることができる。
前記ルチル結晶含有層中の前記アナターゼ結晶型酸化チタンの平均粒径は15〜40nmであることが好ましい。
アナターゼ結晶型酸化チタンの平均粒径が上記範囲内にあると、40nmを超える場合に比べて、光増感色素がより吸着しやすいアナターゼ結晶型酸化チタンの比表面積がより増加するため、色素増感太陽電池の光電変換特性をより向上させることができる。またアナターゼ結晶型酸化チタンの平均粒径が上記範囲内にあると、15nm未満である場合に比べて、格子欠陥がより少ない(すなわち結晶性がより高い)ため、漏れ電流をより十分に低減できる。
上記色素増感太陽電池においては、前記ルチル結晶含有層中の前記ルチル結晶型酸化チタンの平均粒径が50〜500nmであることが好ましい。
ルチル結晶型酸化チタンの平均粒径が上記範囲内にあると、上記範囲を外れる場合に比べて、多孔質酸化チタン層で光閉じ込め効果がより高められ、色素増感太陽電池の光電変換特性をより向上させることができる。
上記色素増感太陽電池においては、前記多孔質酸化チタン層が、第1層と、前記第
1層に対し、前記導電性基板側に設けられる第2層とを有し、前記第1層が前記ルチル結晶含有層で構成され、前記第2層中の前記ルチル結晶型酸化チタンの含有率が、前記第1層中の前記ルチル結晶型酸化チタンの含有率よりも小さいことが好ましい。
この場合、第1層よりも第2層の方が、ルチル結晶型酸化チタンの含有率が小さいため、光を第2層にてより十分に吸収させることが可能となる。そして、第2層を通過して第1層に入射される光は、第2層よりもより多く含まれる第1層中のルチル結晶型酸化チタンによってより十分に反射させることが可能となる。このため、第2層中のルチル結晶型酸化チタンの含有率が、第1層中のルチル結晶型酸化チタンの含有率以上である場合と比べて、光閉じ込め効果がより高められると共に、光の吸収がより十分に行われる。その結果、色素増感太陽電池の光電変換特性をより向上させることができる。
上記色素増感太陽電池においては、前記多孔質酸化チタン層が、前記ルチル結晶含有層に対し前記導電性基板と反対側に、前記ルチル結晶含有層から出射される光を反射する光反射層をさらに有することが好ましい。
この場合、光が、ルチル結晶含有層を透過しても、その光は光反射層で反射され、ルチル結晶含有層に戻される。このため、多孔質酸化チタン層が光反射層を有しない場合に比べて、多孔質酸化チタン層における光の吸収効率がより高くなり、色素増感太陽電池の光電変換特性をより向上させることができる。
上記色素増感太陽電池においては、前記光反射層が、ルチル結晶からなるルチル結晶型酸化チタンを含むことが好ましい。
この場合、光反射層が、ルチル結晶型酸化チタンを含まない場合に比べて、光をより十分に散乱させることができ、多孔質酸化チタン層における光の吸収効率がより高くなり、色素増感太陽電池の光電変換特性をより向上させることができる。
上記色素増感太陽電池においては、前記ルチル結晶含有層が、前記多孔質酸化チタン層において前記対極に最も近い位置に配置されており、前記電解質が、ルチル結晶からなるルチル結晶型酸化チタンを含むゲル電解質で構成され、前記電解質のヘイズ率が、前記多孔質酸化チタン層のヘイズ率よりも大きいことが好ましい。
この場合、電解質のヘイズ率が、多孔質酸化チタン層のヘイズ率よりも大きいため、ルチル結晶含有層を透過した光が電解質で効果的に反射され、ルチル結晶含有層に十分に戻される。このため、電解質のヘイズ率が、多孔質酸化チタン層のヘイズ率以下である場合に比べて、多孔質酸化チタン層における光の吸収効率がより高くなり、色素増感太陽電池の光電変換特性をより向上させることができる。また電解質が、ルチル結晶型酸化チタンを含まない場合に比べて、光をより十分に散乱させることができ、多孔質酸化チタン層における光の吸収効率がより高くなり、色素増感太陽電池の光電変換特性をより向上させることができる。さらに電解質がゲル電解質で構成されているため、電解質の流動性が十分に低下される。このため、色素増感太陽電池を導電性基板が水平面に対して傾くように設置した場合でも、電解質が液状である場合と異なり、電解質中においてルチル結晶型酸化チタンが偏在することを十分に抑制することが可能となり、多孔質酸化チタン層を透過する光を満遍なく反射することができる。
なお、本発明において、ルチル結晶型酸化チタンの平均粒径は、1〜100nmである場合は、X線回析装置(XRD、Rigaku社製全自動水平型多目的X線回折装置 SmartLab)により測定される平均粒径を言い、100nmを超える場合は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)により測定される平均粒径を言う。ここで、SEMにより測定される平均粒径とは、SEMにより観察されるルチル結晶型酸化チタンについて下記式に基づいて算出される粒径の平均値を言うものとする。
粒径=(S/π)1/2
(上記式中、Sはルチル結晶型酸化チタンの面積を示す)
また「球状」とは、多孔質酸化チタン層をSEMにて観察した場合に、ルチル結晶型酸化チタンの最小径に対する最大径の比が1以上1.75以下である形状を言うものとする。
さらに本発明で言う「ヘイズ率」とは、400〜1000nmの波長領域におけるヘイズ率の平均値を言うものとする。
さらに本発明において、「ゲル電解質」とは、粘度が失われている状態にある電解質を言う。具体的には、内径15mm、深さ10cmの円筒状ガラス管の中に10ccの電解質を入れ、室温(23℃)にてガラス管を逆さにして放置したときに、15分後に全ての電解質が下まで落下しなければ、この電解質はゲル電解質となっているものと定義する。
本発明によれば、光電変換特性を向上させることができる色素増感太陽電池が提供される。
本発明の色素増感太陽電池の第1実施形態を示す断面図である。 図1の作用極を示す部分拡大断面図である。 本発明の色素増感太陽電池の第2実施形態を示す断面図である。 図3の部分拡大断面図である。 図1の作用極の変形例を示す部分拡大断面図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全図中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
<第1実施形態>
まず本発明の色素増感太陽電池の第1実施形態について図1及び図2を用いて説明する。
図1は、本発明に係る色素増感太陽電池の第1実施形態を示す断面図、図2は、図1の作用極を示す部分拡大断面図である。
図1に示すように、色素増感太陽電池100は、酸化チタンを含む多孔質酸化チタン層13を有する作用極10と、作用極10に対向するように配置される対極20と、作用極10の多孔質酸化チタン層13に担持される光増感色素と、作用極10と対極20とを連結する封止部30と、作用極10と対極20との間に配置される電解質40とを備えている。
作用極10は、光を透過させることが可能な導電性基板15上に多孔質酸化チタン層13を有している。導電性基板15は、透明基板11と、透明基板11の対極20側に設けられる透明導電膜12とを有する。また電解質40は、多孔質酸化チタン層13中にも含浸されている。対極20は、対極基板21と、対極基板21のうち作用極10側に設けられて対極20の表面における還元反応を促進する導電性の触媒層22とを備えている。
図2に示すように、多孔質酸化チタン層13は、三層の積層体で構成されている。具体的には、多孔質酸化チタン層13は、第1層13bと、第1層13bに対し導電性基板15側に設けられ、アナターゼ結晶型酸化チタンを含む第2層13cと、第1層13bに対し、導電性基板15と反対側に、ルチル結晶含有層13bから出射される光を反射する光反射層13aとで構成されている。ここで、第1層13b及び第2層13cは光を光増感色素に吸収させる光吸収層として機能する。
第1層13bは、アナターゼ結晶からなるアナターゼ結晶型酸化チタンと、ルチル結晶からなる球状のルチル結晶型酸化チタンとを含有するルチル結晶含有層で構成されている。そして、第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は3〜15質量%となっている。
第2層13c中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率よりも小さくなっている。
一方、光反射層13aは、ルチル結晶型酸化チタンを含んでおり、光反射層13a中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率よりも大きくなっている。
従って、多孔質酸化チタン層13においては、導電性基板15から離れるにつれて、層中のルチル結晶型酸化チタンの含有率が増加している。逆に、導電性基板15から離れるにつれて、層中のアナターゼ結晶型酸化チタンの含有率が減少している。
上述した色素増感太陽電池100によれば、例えば太陽光が作用極10の導電性基板15を透過し、多孔質酸化チタン層13に入射される。その後、光は、多孔質酸化チタン層13中のルチル結晶含有層である第1層13bに入射される。このとき、第1層13bにおいて、ルチル結晶型酸化チタンは、アナターゼ結晶型酸化チタンよりも高い屈折率を有しており、アナターゼ結晶型酸化チタンよりも光を散乱させやすい。しかも、ルチル結晶型酸化チタンは球状となっており、針状である場合に比べて、光を種々の方向に散乱することが可能となり、第1層13b全体に光を満遍なく行き渡らせることが可能となる。すなわち第1層13bはそれ単独でも十分に高い光閉じ込め効果を有する。一方、第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は3〜15質量%であり、残りがアナターゼ結晶型酸化チタンである。ここで、光増感色素は、ルチル結晶型酸化チタンよりもアナターゼ結晶型酸化チタンに吸着しやすい。このため、第1層13bでは、第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率が上記範囲を外れる場合に比べて、アナターゼ結晶型酸化チタンに吸着した光増感色素により、光を十分に吸収させることが可能となる。このように色素増感太陽電池100によれば、光の吸収と光の閉じ込めとがバランス良く行われるため、色素増感太陽電池100の光電変換特性を向上させることができる。
また色素増感太陽電池100では、多孔質酸化チタン層13が、第1層13bに対し、導電性基板15側に、ルチル結晶型酸化チタンの含有率が、第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率よりも小さい第2層13cを有する。このため、以下の効果が得られる。すなわち第1層13bよりも第2層13aの方が、ルチル結晶型酸化チタンの含有率が、第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率よりも小さいため、光を第2層13cにてより十分に吸収させることが可能となる。そして、第2層13cを通過して第1層13bに入射される光は、第2層13cよりもより多く含まれる第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンによってより十分に反射させることが可能となる。このため、第2層13c中のルチル結晶型酸化チタンの含有率が、第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率以上である場合と比べて、光閉じ込め効果がより高められると共に、光の吸収がより十分に行われる。その結果、色素増感太陽電池100の光電変換特性をより向上させることができる。
さらに色素増感太陽電池100では、多孔質酸化チタン層13が、第1層13bに対し導電性基板15と反対側に、第1層13bから出射される光を反射する光反射層13aをさらに有する。このため、以下の効果が得られる。すなわち、光が、第1層13bを透過しても、その光は光反射層13aで反射され、第1層13bに戻される。このため、多孔質酸化チタン層13が光反射層13aを有しない場合に比べて、多孔質酸化チタン層13における光の吸収効率がより高くなり、色素増感太陽電池100の光電変換特性をより向上させることができる。
次に、作用極10、光増感色素、対極20、封止部30および電解質40について詳細に説明する。
(作用極)
作用極10は、上述したように、光を透過させることが可能な導電性基板15と、導電性基板15の上に設けられる多孔質酸化チタン層13とを備えている。導電性基板15は、透明基板11と、透明基板11の対極20側に設けられる透明導電膜12とを有する(図1参照)。
透明基板11を構成する材料は、例えば透明な材料であればよく、このような透明な材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、白板ガラス、石英ガラスなどのガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン(PES)などが挙げられる。透明基板11の厚さは、色素増感太陽電池100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば50〜10000μmの範囲にすればよい。
透明導電膜12を構成する材料としては、例えばスズ添加酸化インジウム(Indium−Tin−Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO)、フッ素添加酸化スズ(Fluorine−doped−Tin−Oxide:FTO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。中でも、透明導電膜12は、高い耐熱性及び耐薬品性を有することから、FTOで構成されることが好ましい。透明導電膜12の厚さは例えば0.01〜2μmの範囲にすればよい。
〔第1層〕
第1層13bは、アナターゼ結晶型酸化チタンと、球状のルチル結晶型酸化チタンとを含んでいればよい。
ここで、アナターゼ結晶型酸化チタンは、光を光増感色素に吸収させるための光吸収用アナターゼ結晶型酸化チタンのみで構成されていても、光吸収用アナターゼ結晶型酸化チタンと、光を散乱させるための光散乱用アナターゼ結晶型酸化チタンとで構成されてもよい。但し、アナターゼ結晶型酸化チタンは、光吸収用アナターゼ結晶型酸化チタンのみで構成されることが好ましい。この場合、色素増感太陽電池100の光電変換特性をより向上させることができる。
第1層13b中のアナターゼ結晶型酸化チタンの平均粒径は通常は10〜60nmであるが、好ましくは15〜40nmである。
アナターゼ結晶型酸化チタンの平均粒径が15〜40nmの範囲内にあると、40nmを超える場合に比べて、光増感色素がより吸着しやすいアナターゼ結晶型酸化チタンの比表面積がより増加するため、色素増感太陽電池100の光電変換特性をより向上させることができる。またアナターゼ結晶型酸化チタンの平均粒径が上記範囲内にあると、15nm未満である場合に比べて、格子欠陥がより少ない(すなわち結晶性がより高い)ため、漏れ電流をより十分に低減できる。
アナターゼ結晶型酸化チタンの平均粒径は、より好ましくは17〜30nmである。
ルチル結晶型酸化チタンの平均粒径は通常は、40〜700nmであるが、好ましくは50〜500nmである。
ルチル結晶型酸化チタンの平均粒径が50〜500nmの範囲内にあると、この範囲を外れる場合に比べて、多孔質酸化チタン層13で光閉じ込め効果がより十分なものとなり、色素増感太陽電池100の光電変換特性をより向上させることができる。
ルチル結晶型酸化チタンの平均粒径は、より好ましくは80〜400nmであり、特に好ましくは100〜300nmである。
第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は、3〜15質量%であり、より好ましくは3〜10質量%である。
第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率と光反射層13a中のルチル結晶型酸化チタンの含有率との含有率差は、0質量%よりも大きいことが好ましく、85〜97質量%であることがより好ましい。この場合、上記含有率差が上記範囲を外れる場合に比べて、より高い発電特性が得られる。
第1層13bの厚さは特に限定されるものではないが、通常は1〜40μmであり、好ましくは4〜25μmである。
〔第2層〕
第2層13cは、アナターゼ結晶型酸化チタンを含んでいればよい。従って、第2層13cは、アナターゼ結晶型酸化チタンのみで構成されてもよく、アナターゼ結晶型酸化チタンとルチル結晶型酸化チタンとで構成されてもよい。但し、本実施形態では、第2層13c中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は、第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率よりも小さくなっている。
第2層13c中のルチル結晶型酸化チタンの含有率と第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率との含有率差は、特に限定されないが、好ましくは0質量%より大きく50質量%以下である。この場合、上記含有率差が上記範囲を外れる場合に比べて、より高い発電特性が得られる。
第2層13cは、ルチル結晶型酸化チタンを含まないことが好ましい。すなわち第2層13c中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は0質量%であることが好ましい。この場合、第2層13cがルチル結晶型酸化チタンを含む場合に比べて、多孔質酸化チタン層13において光をより十分に吸収させることができ、色素増感太陽電池100の光電変換特性をより向上させることができる。
第2層13c中のアナターゼ結晶型酸化チタンは、第1層13bと同様、光吸収用アナターゼ結晶型酸化チタンのみで構成されていても、光吸収用アナターゼ結晶型酸化チタンと、光散乱用アナターゼ結晶型酸化チタンとで構成されてもよい。但し、アナターゼ結晶型酸化チタンは、光吸収用アナターゼ結晶型酸化チタンのみで構成されることが好ましい。この場合、色素増感太陽電池100の光電変換特性をより向上させることができる。
第2層13cに含まれるルチル結晶型酸化チタン及びアナターゼ結晶型酸化チタンの形状は特に限定されるものではなく、例えば球状及び針状が挙げられる。特にルチル結晶型酸化チタンは、第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンと同様、球状であることが好ましい。この場合、ルチル結晶型酸化チタンが球状以外である場合に比べて、多孔質酸化チタン層13に入射した光を散乱させる効果がより大きくなり、色素増感太陽電池100の光電変換特性をより向上させることができる。
第2層13cの厚さは特に限定されるものではないが、通常は1〜40μmであり、好ましくは4〜25μmである。
〔光反射層〕
本実施形態では、光反射層13a中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は、第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率よりも大きければ特に限定されないが、好ましくは70〜100質量%である。この場合、光反射層13a中のルチル結晶型酸化チタンの含有率が上記範囲を外れる場合に比べて、光閉じ込め効果がより高められる。また以下の利点も得られる。すなわち、まず光反射層13aは、第1層13b,第2層13cに比べて、電解質40との間でより大きい接触面積を有する。このため、光増感色素から電解質40への漏れ電流が大きくなり易い傾向にある。その点、光反射層13a中のルチル結晶型酸化チタンの含有率が70〜100質量%であると、ルチル結晶型酸化チタンには光増感色素がほとんど担持しないため、漏れ電流サイトとして機能する光増感色素がより少なくなる。このため、光反射層13a中のルチル結晶型酸化チタンの含有率が上記範囲を外れる場合に比べて、色素増感太陽電池100の光電変換特性をより向上させることができる傾向にある。なお、光反射層13a中のルチル結晶型酸化チタンの含有率が100質量%未満である場合、光反射層13a中に含まれる残りの酸化チタンはアナターゼ結晶型酸化チタンである。
光反射層13a中のルチル結晶型酸化チタンの含有率はより好ましくは80〜100質量%であり、特に好ましくは100質量%である。
光反射層13aに含まれるルチル結晶型酸化チタン及びアナターゼ結晶型酸化チタンの形状は特に限定されるものではなく、例えば球状及び針状が挙げられる。特にルチル結晶型酸化チタンは、第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンと同様、球状であることが好ましい。この場合、ルチル結晶型酸化チタンが球状以外である場合に比べて、多孔質酸化チタン層13に入射した光を散乱させる効果がより大きくなり、色素増感太陽電池100の光電変換特性をより向上させることができる。
ルチル結晶型酸化チタンの平均粒径は、例えば第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの平均粒径と同様とすればよい。
光反射層13aの厚さは特に限定されるものではないが、通常は1〜15μmであり、好ましくは2〜8μmである。
多孔質酸化チタン層13全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は特に限定されるものではないが、好ましくは3〜40質量%であり、より好ましくは10〜35質量%である。
多孔質酸化チタン層13全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率が10〜35質量%であると、上記範囲を外れた場合に比べて、色素増感太陽電池100の光電変換特性をより向上させることができる。
多孔質酸化チタン層13の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば0.5〜50μmとすればよい。
(光増感色素)
光増感色素としては、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や、ポルフィリン、エオシン、ローダミン、メロシアニンなどの有機色素が挙げられる。中でも、ターピリジン構造を含む配位子を有するルテニウム錯体が好ましい。この場合、色素増感太陽電池100の光電変換特性をより向上させることができる。
なお、色素増感太陽電池100が屋内や低照度(10〜10000lux)の環境下において使用される場合には、光増感色素として、ビピリジン構造を含む配位子を有するルテニウム錯体を用いることが好ましい。
(対極)
対極20は、上述したように、対極基板21と、対極基板21のうち作用極10側に設けられて対極20の表面における還元反応を促進する導電性の触媒層22とを備えている。
対極基板21は、例えばチタン、ニッケル、白金、モリブデン、タングステン、SUS等の耐食性の金属材料や、上述した透明基板11にITO、FTO等の導電性酸化物からなる膜を形成したもので構成される。対極基板21の厚さは、色素増感型太陽電池100のサイズに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、例えば0.005〜0.1mmとすればよい。
触媒層22は、白金、炭素系材料又は導電性高分子などから構成される。ここで、炭素系材料としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブが挙げられ、その中でも特にカーボンナノチューブが好適に用いられる。
(封止部)
封止部30を構成する材料としては、例えば非鉛系の透明な低融点ガラスフリットなどの無機絶縁材料や、アイオノマー、エチレン−ビニル酢酸無水物共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などを含む各種変性ポリオレフィン樹脂、紫外線硬化樹脂、及び、ビニルアルコール重合体などの樹脂が挙げられる。なお、封止部30は樹脂のみで構成されてもよいし、樹脂と無機フィラーとで構成されていてもよい。
(電解質)
電解質40は、例えばI/I などの酸化還元対と有機溶媒とを含んでいる。有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、バレロニトリル、ピバロニトリル、グルタロニトリル、メタクリロニトリル、イソブチロニトリル、フェニルアセトニトリル、アクリロニトリル、スクシノニトリル、オキサロニトリル、ペンタニトリル、アジポニトリルなどを用いることができる。酸化還元対としては、例えばI/I のほか、臭素/臭化物イオン、亜鉛錯体、鉄錯体、コバルト錯体などのレドックス対が挙げられる。また電解質40は、有機溶媒に代えて、イオン液体を用いてもよい。イオン液体としては、例えばピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩であって、室温付近で溶融状態にある常温溶融塩が用いられる。このような常温溶融塩としては、例えば、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムヨーダイド、ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、エチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド、ブチルメチルイミダゾリウムアイオダイド、又は、メチルプロピルイミダゾリウムアイオダイドが好適に用いられる。
また、電解質40は、上記有機溶媒に代えて、上記イオン液体と上記有機溶媒との混合物を用いてもよい。
また電解質40には添加剤を加えることができる。添加剤としては、LiI、I、4−t−ブチルピリジン、グアニジウムチオシアネート、1−メチルベンゾイミダゾール、1-ブチルベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
さらに電解質40としては、上記電解質にSiO、TiO、カーボンナノチューブなどのナノ粒子を混練してゲル様となった擬固体電解質であるナノコンポジットゲル電解質を用いてもよく、また、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド誘導体、アミノ酸誘導体などの有機系ゲル化剤を用いてゲル化した電解質を用いてもよい。
次に、色素増感太陽電池100の製造方法について説明する。
<作用極形成工程>
まず作用極10を以下のようにして準備する。
はじめに透明基板11の上に透明導電膜12を形成し、透明性を有する導電性基板15を準備する。透明導電膜12の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、スプレー熱分解法(SPD)及びCVD法などが用いられる。
(多孔質酸化チタン層形成工程)
次に、透明導電膜12上に、第2層13cを形成するための第2層形成用ペーストを印刷する。第2層形成用ペーストは、酸化チタンのほか、ポリエチレングリコール、エチルセルロースなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。第2層形成用ペーストに含まれる酸化チタンは、アナターゼ結晶型酸化チタンを含み、必要に応じて、ルチル結晶型酸化チタンを含む。酸化チタン全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は第2層13c中のルチル結晶型酸化チタンの含有率と同一となるようにする。
次に、上記第2層形成用ペーストを乾燥させ、その上に、第1層13bを形成するための第1層形成用ペーストを印刷する。第1層形成用ペーストは、酸化チタンのほか、ポリエチレングリコール、エチルセルロースなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。酸化チタンは、アナターゼ結晶型酸化チタンと、球状のルチル結晶型酸化チタンとを含む。第1層形成用ペーストに含まれる酸化チタン全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は、第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率と同一となるようにする。すなわち、第1層形成用ペーストに含まれる酸化チタン全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は、3〜15質量%となるようにする。また本実施形態では、酸化チタン全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は、第2層形成用ペーストに含まれる酸化チタン中のルチル結晶型酸化チタンの含有率より大きくなるようにする。
次に、上記第1層形成用ペーストを乾燥させ、その上に、光反射層形成用ペーストを印刷する。光反射層形成用ペーストは、酸化チタンのほか、ポリエチレングリコール、エチルセルロースなどの樹脂及び、テレピネオールなどの溶媒を含む。酸化チタンは、ルチル結晶型酸化チタンを含み、必要に応じて、アナターゼ結晶型酸化チタンを含む。光反射層形成用ペーストに含まれる酸化チタン全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は光反射層13a中のルチル結晶型酸化チタンの含有率と同一となるようにする。このとき、光反射層形成用ペーストに含まれる酸化チタン全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は、第1層形成用ペーストに含まれる酸化チタン中のルチル結晶型酸化チタンの含有率よりも大きくなるようにする。
第2層形成用ペースト、第1層形成用ペースト及び光反射層形成用ペーストの印刷方法としては、例えばスクリーン印刷法、ドクターブレード法、又は、バーコート法などを用いることができる。
最後に、第2層形成用ペースト、第1層形成用ペースト及び光反射層形成用ペーストを一括焼成して透明導電膜12上に多孔質酸化チタン層13を形成する。焼成温度は酸化物半導体粒子の材質により異なるが、通常は350〜600℃であり、焼成時間も、酸化物半導体粒子の材質により異なるが、通常は1〜5時間である。なお、第2層形成用ペースト、第1層形成用ペースト及び光反射層形成用ペーストを一括して焼成する代わりに、第2層形成用ペーストを焼成させた後、第1層形成用ペーストを印刷し、第1層形成用ペーストを焼成させた後に光反射層形成用ペーストを印刷し、最後に光反射層形成用ペーストを焼成してもよい。
こうして作用極10が得られる。
<色素担持工程>
次に、作用極10の多孔質酸化チタン層13に光増感色素を担持させる。このためには、作用極10を、光増感色素を含有する溶液の中に浸漬させ、その光増感色素を多孔質酸化チタン層13に吸着させた後に上記溶液の溶媒成分で余分な光増感色素を洗い流し、乾燥させることで、光増感色素を多孔質酸化チタン層13に吸着させればよい。但し、光増感色素を含有する溶液を多孔質酸化チタン層13に塗布した後、乾燥させることによって光増感色素を多孔質酸化チタン層13に吸着させても、光増感色素を多孔質酸化チタン層13に担持させることが可能である。
<対極準備工程>
一方、以下のようにして対極20を準備する。
まず対極基板21を準備する。そして、対極基板21の上に触媒層22を形成する。触媒層22の形成方法としては、スパッタ法、スクリーン印刷法、又は、蒸着法などが用いられる。これらのうちスパッタ法が膜の均一性の点から好ましい。
<封止部固定工程>
次に、例えば熱可塑性樹脂からなる環状のシートを準備する。そして、このシートを、光増感色素を担持した多孔質酸化チタン層13を有する作用極10上に載せ、加熱溶融させる。このとき、環状のシートの内側に多孔質酸化チタン層13が配置されるようにする。こうして作用極10の表面に環状の樹脂シートを固定する。
<電解質配置工程>
そして、電解質40を用意する。そして、電解質40を、作用極10上に固定した環状の樹脂シートの内側に配置する。電解質40は、例えばスクリーン印刷等の印刷法によって配置することが可能である。
<封止工程>
電解質40を作用極10の上に配置した後は、作用極10に対し、対極20を、作用極10との間に電解質40を挟むように重ね合わせ、環状の樹脂シートを加熱溶融させることによって作用極10と対極20とを接着させる。こうして、作用極10と対極20との間に封止部30を有する色素増感太陽電池100が得られ、色素増感太陽電池100の製造が完了する。
なお、対極20の準備は、対極20と作用極10とを貼り合せる前に行えばよい。従って、作用極10上に電解質40を配置する場合には、対極20の準備は、作用極10上に電解質40を配置した後であって、対極20と作用極10とを貼り合せる前に行ってもよい。但し、対極20上に電解質40を配置する場合には、作用極10の準備は、対極20上に電解質40を配置した後であって、対極20と作用極10とを貼り合せる前に行ってもよい。
<第2実施形態>
次に、本発明の色素増感太陽電池の第2実施形態について図3及び図4を用いて説明する。
図3は、本発明に係る色素増感太陽電池の第2実施形態を示す断面図、図4は、図3の部分拡大断面図である。
図3及び図4に示すように、本実施形態の色素増感太陽電池200は、多孔質酸化チタン層213が第1層13bと第2層13cとで構成され、第1層13bが、多孔質酸化チタン層213を構成する層の中で対極20に最も近い位置に配置されている点で第1実施形態の色素増感太陽電池100と相違する。また本実施形態の色素増感太陽電池200は、電解質240がルチル結晶からなるルチル結晶型酸化チタン250を含むゲル電解質で構成されている点でも第1実施形態の色素増感太陽電池100と相違する。さらに本実施形態の色素増感太陽電池200は、電解質240のヘイズ率が多孔質酸化チタン層213のヘイズ率よりも大きくなっている点でも第1実施形態の色素増感太陽電池100と相違する。
この色素増感太陽電池200によれば、電解質240のヘイズ率が、多孔質酸化チタン層213のヘイズ率よりも大きいため、第1層13bを透過した光が電解質240で効果的に反射され、第1層13bに十分に戻される。このため、電解質240のヘイズ率が、多孔質酸化チタン層213のヘイズ率以下である場合に比べて、多孔質酸化チタン層13における光の吸収効率がより高くなり、色素増感太陽電池200の光電変換特性をより向上させることができる。
また色素増感太陽電池200では、電解質240が、ルチル結晶からなるルチル結晶型酸化チタン250を含むゲル電解質で構成されている。このため、電解質240が、ルチル結晶型酸化チタンを含まない場合に比べて、光をより十分に散乱させることができ、多孔質酸化チタン層213における光の吸収効率がより高くなり、色素増感太陽電池200の光電変換特性をより向上させることができる。また電解質240がゲル電解質で構成されているため、電解質240の流動性が十分に低下される。このため、色素増感太陽電池200を導電性基板15が水平面に対して傾くように設置した場合でも、電解質240が液状である場合と異なり、電解質240中においてルチル結晶型酸化チタンが偏在することを十分に抑制することが可能となり、多孔質酸化チタン層213を透過する光を満遍なく反射することができる。
電解質240中に含まれるルチル結晶型酸化チタンの平均粒径は、例えば第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの平均粒径と同様とすればよい。
ルチル結晶型酸化チタンの形状は特に限定されるものではなく、例えば球状及び針状が挙げられるが、第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンと同様、球状であることが好ましい。この場合、ルチル結晶型酸化チタンが球状以外である場合に比べて、多孔質酸化チタン層213に入射した光を散乱させる効果がより大きくなり、色素増感太陽電池200の光電変換特性をより向上させることができる。
電解質240のヘイズ率は、多孔質酸化チタン層213のヘイズ率よりも大きければよいが、電解質240のヘイズ率と多孔質酸化チタン層213のヘイズ率との差は、好ましくは10〜70%であり、より好ましくは20〜70%であり、さらに好ましくは30〜50%である。電解質240のヘイズ率と多孔質酸化チタン層213のヘイズ率との差が上記各範囲内にあると、各範囲を外れる場合に比べて、色素増感太陽電池200の光電変換特性をより向上させることができる。
電解質240のヘイズ率は、例えば、ルチル結晶型酸化チタン250の材料、および電解質240中のルチル結晶型酸化チタン250の含有率を変えることにより調整することが可能である。電解質240中のルチル結晶型酸化チタン250の含有率は、好ましくは10〜90質量%であり、より好ましくは20〜70質量%であり、さらに好ましくは30〜70%質量%である。電解質240中のルチル結晶型酸化チタン250の含有率が上記範囲内にあると、上記範囲を外れた場合に比べて、色素増感太陽電池200の光電変換特性をより向上させることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記第1実施形態では、多孔質酸化チタン層13が第2層13cを有しているが、図5に示す作用極310のように、多孔質酸化チタン層313が、第2層13cを有していなくてもよい。すなわち、多孔質酸化チタン層313は、光反射層13aと第1層13bとで構成されてもよい。また第2実施形態でも、多孔質酸化チタン層213は、第2層13cを省略することが可能である。すなわち、多孔質酸化チタン層213は、第1層13bのみで構成されてもよい。
また上記第1及び第3実施形態では、多孔質酸化チタン層13,313が光反射層13aを有しているが、多孔質酸化チタン層13は、必ずしも光反射層13aを有している必要はない。
さらに上記第1及び第2実施形態では、第2層13c中のルチル結晶型酸化チタンの含有率が第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率よりも小さくなっていると説明したが、第2層13c中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は、第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率以上であってもよい。
さらにまた上記第1実施形態では、光反射層13a中のルチル結晶型酸化チタンの含有率が第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率よりも大きくなっていると説明したが、光反射層13a中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は、第1層13b中のルチル結晶型酸化チタンの含有率以下であってもよい。
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(作用極の作製)
はじめに、ガラス基板上にFTO膜が形成されたFTO/ガラス基板を準備した。そして、このFTO/ガラス基板を洗浄し、この基板にUV−O処理を行い、その基板上にスクリーン印刷により、酸化チタンを含有する第1層形成用酸化チタンナノ粒子ペーストを塗布し、150℃で10分間乾燥させた。このとき、酸化チタンは、光吸収用のアナターゼ結晶型酸化チタン(日揮触媒化成社製21NR)と、光散乱用のルチル結晶型酸化チタン(純正化学社製酸化チタン(ルチル型))とで構成した。ここで、酸化チタン中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は5質量%となるようにした。
次に、酸化チタンとして、180nmの平均粒径を有する光散乱用のルチル結晶型酸化チタンのみからなる酸化チタンを用いたこと以外は第1層形成用酸化チタンナノ粒子ペーストと同様にして光反射層形成用酸化チタンナノ粒子ペーストを用意した。そして、乾燥させた第1層形成用酸化チタンナノ粒子ペースト上に、光反射層形成用酸化チタンナノ粒子ペーストをスクリーン印刷により塗布し、150℃で10分間乾燥させた。
こうして、未焼成基板を得た。その後、この未焼成基板をオーブンに入れて第1層形成用酸化チタンナノ粒子ペースト及び光反射層形成用酸化チタンナノ粒子ペーストを500℃で1時間焼成し、FTO膜上に、厚さ10μmの第1層および厚さ4μmの光反射層を順次積層してなる積層体で構成される厚さ14μmの多孔質酸化チタン層を形成し、作用極を得た。なお、上記と同様にして作製した作用極を切断し、その断面のうちの第1層および光反射層の断面をSEMにて観察したところ、光反射層中の酸化チタンの形状は球状であり、その平均粒径は180nmであった。また第1層においては酸化チタンの形状はいずれも球状であり、酸化チタンのうち粒径の小さい酸化チタンの粒径は20〜25nmであり、粒径の大きい酸化チタンの粒径は150〜210nmであった。このとき、光反射層及び第1層における酸化チタンについてXRD分析を行ったところ、光反射層における酸化チタンはルチル結晶型酸化チタンであることが分かった。また第1層において、粒径の小さい酸化チタンはアナターゼ結晶型酸化チタンであり、その平均粒径は21nmであった。さらに光反射層中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は100質量%であり、第1層中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は5質量%であり、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率は32質量%であることが分かった。
(光増感色素の担持)
次に、光増感色素であるN719色素を、アセトニトリルとt−ブチルアルコールとを1:1(体積比)で混合した混合溶媒中に溶かして色素溶液を作製した。そして、この色素溶液中に上記作用極を24時間浸漬させ、多孔質酸化チタン層に光増感色素を担持させた。
(対極の作製)
一方、作用極の作製で使用した厚さ1mmのFTO/ガラス基板を用意し、この基板上にスパッタリング法によってPtを堆積させた。こうして対極を得た。
(封止部の作製)
次に、作用極の上に、アイオノマーであるハイミラン(商品名、三井・デュポンポリケミカル社製)からなる環状の熱可塑性樹脂シートを配置した。このとき、環状の熱可塑性樹脂シートの内側に、多孔質酸化チタン層が配置されるようにした。そして、熱可塑性樹脂シートを180℃で5分間加熱し溶融させて作用極に接着させた。
(電解質の配置)
他方、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイドおよび3−メトキシプロピオニトリルの混合物に、I、グアニジウムチオシアネート、及び、1−メチルベンゾイミダゾールを加えてなる電解質成分からなる液体の電解質を用意した。そして、用意した電解質をスクリーン印刷法によって、作用極に、多孔質酸化チタン層を覆うように塗布した。
(封止)
作用極に対し、対極を、作用極との間に電解質を挟むように重ね合わせ、封止部を減圧下(1000Pa)で加熱溶融することによって対極と封止部とを接着させた。こうして色素増感太陽電池を得た。
(実施例2)
表1に示す通り、第1層中の光吸収用酸化チタンであるアナターゼ結晶型酸化チタンの含有率を95質量%から97質量%に変更し、第1層中の光散乱用酸化チタンであるルチル結晶型酸化チタンの含有率を、5質量%から3質量%に変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から31質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(実施例3)
表1に示す通り、第1層中の光吸収用酸化チタンであるアナターゼ結晶型酸化チタンの含有率を95質量%から85質量%に変更し、第1層中の光散乱用酸化チタンであるルチル結晶型酸化チタンの含有率を、5質量%から15質量%に変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から40質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(実施例4)
表1に示す通り、第1層の上に光反射層を形成せず、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から5質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(実施例5)
第1層中の光吸収用酸化チタンであるアナターゼ結晶型酸化チタンの平均粒径を、21nmから15nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(実施例6)
表1に示す通り、第1層におけるルチル結晶型酸化チタンのサイズを、平均粒径180nmから平均粒径550nmに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(実施例7)
表1に示す通り、第1層におけるルチル結晶型酸化チタンのサイズを、平均粒径180nmから平均粒径400nmに変更し、光反射層中の光散乱用酸化チタンを、ルチル結晶型酸化チタンからアナターゼ結晶型酸化チタンに変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から5質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(実施例8)
表1に示す通り、第1層の上に光反射層を形成せず、その代わりに、電解質を、液体から、光散乱用酸化チタンとしてルチル結晶型酸化チタンのみを用いたゲル電解質に変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から5質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。なお、ゲル電解質は以下のようにして用意した。
すなわち、実施例1の電解質成分を用意し、この電解質成分に、180nmの平均粒径を有するルチル結晶型酸化チタンからなるナノ粒子を添加した。このとき、ルチル結晶型酸化チタンのナノ粒子は、電解質成分とナノ粒子との合計質量割合を100質量%とした場合に、4質量%の割合となるように添加した。そして、遠心分離処理及び混練処理を順次行うことにより、ゲル化を行い、ゲル電解質を得た。遠心分離処理及び混練処理を順次行った結果、ルチル結晶型酸化チタンのナノ粒子は、電解質全体の質量割合を100質量%とした場合に、80質量%の割合となった。
(実施例9)
表1に示す通り、第1層の上に光反射層を形成せず、その代わりに、電解質を、液体から、光散乱用酸化チタンとしてアナターゼ結晶型酸化チタンのみを用いたゲル電解質に変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から5質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。なお、ゲル電解質としては、ルチル結晶型酸化チタンをアナターゼ結晶型酸化チタンに変更したこと以外は実施例8と同様のものを使用した。
(比較例1)
表1に示す通り、第1層の上に光反射層を形成せず、第1層中の光吸収用酸化チタンであるアナターゼ結晶型酸化チタンの含有率を95質量%から100質量%に変更し、第1層中の光散乱用酸化チタンであるルチル結晶型酸化チタンの含有率を、5質量%から0質量%に変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から0質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(比較例2)
表1に示す通り、第1層の上に光反射層を形成せず、第1層中の光吸収用酸化チタンであるアナターゼ結晶型酸化チタンの含有率を95質量%から80質量%に変更し、第1層中の光散乱用酸化チタンであるルチル結晶型酸化チタンの含有率を、5質量%から20質量%に変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から20質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(比較例3)
表1に示す通り、第1層の上に光反射層を形成せず、第1層中の光吸収用酸化チタンであるアナターゼ結晶型酸化チタンの含有率を95質量%から99質量%に変更し、第1層中の光散乱用酸化チタンであるルチル結晶型酸化チタンの含有率を、5質量%から1質量%に変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から1質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(比較例4)
表1に示す通り、第1層の上に光反射層を形成せず、第1層中の光散乱用酸化チタンを、ルチル結晶型酸化チタンからアナターゼ結晶型酸化チタンに変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から0質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(比較例5)
表1に示す通り、第1層の上に光反射層を形成せず、第1層中の光散乱用酸化チタンであるルチル結晶型酸化チタンの形状を、球状から、平均径30nm、平均長さ70nmの針状に変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から5質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(実施例10)
表2に示す通り、光増感色素を、N719からN749に変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から21質量%に変更し、第1層の厚さを10μmから21μmに変更するとともに、色素溶液の溶媒を、アセトニトリルとt−ブチルアルコールとの混合溶媒から1−プロパノールに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(実施例11)
表2に示す通り、第1層の上に光反射層を形成せず、光増感色素を、N719からN749に変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から4.2質量%に変更するとともに、色素溶液の溶媒を、アセトニトリルとt−ブチルアルコールとの混合溶媒から1−プロパノールに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(実施例12)
表2に示す通り、第1層の上に光反射層を形成せず、その代わりに、電解質を、液体から、光散乱用酸化チタンとしてルチル結晶型酸化チタンのみを用いたゲル電解質に変更し、光増感色素を、N719からN749に変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から4.2質量%に変更し、第1層の厚さを10μmから21μmに変更するとともに、色素溶液の溶媒を、アセトニトリルとt−ブチルアルコールとの混合溶媒から1−プロパノールに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。なお、ゲル電解質としては、実施例8と同様のものを使用した。
(比較例6)
表2に示す通り、第1層の上に光反射層を形成せず、光増感色素を、N719からN749に変更し、第1層中の光吸収用酸化チタンであるアナターゼ結晶型酸化チタンの含有率を95質量%から100質量%に変更し、第1層中の光散乱用酸化チタンであるルチル結晶型酸化チタンの含有率を、5質量%から0質量%に変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から0質量%に変更し、第1層の厚さを10μmから21μmに変更するとともに、色素溶液の溶媒を、アセトニトリルとt−ブチルアルコールとの混合溶媒から1−プロパノールに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(比較例7)
表2に示す通り、第1層の上に光反射層を形成せず、光増感色素を、N719からN749に変更し、第1層中の光散乱用酸化チタンを、ルチル結晶型酸化チタンからアナターゼ結晶型酸化チタンに変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から0質量%に変更し、第1層の厚さを10μmから21μmに変更するとともに、色素溶液の溶媒を、アセトニトリルとt−ブチルアルコールとの混合溶媒から1−プロパノールに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
(比較例8)
表2に示す通り、光増感色素を、N719からN749に変更し、第1層中の光散乱用酸化チタンであるルチル結晶型酸化チタンの形状を、球状から、平均径30nm、平均長さ70nmの針状に変更し、多孔質酸化チタン層全体中のルチル結晶型酸化チタンの含有率を32質量%から21質量%に変更し、第1層の厚さを10μmから21μmに変更するとともに、色素溶液の溶媒を、アセトニトリルとt−ブチルアルコールとの混合溶媒から1−プロパノールに変更したこと以外は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。
なお、表1及び表2において、比較例5及び比較例8以外の実施例及び比較例については、第1層における「ルチルのサイズ」とは、ルチル結晶型酸化チタンの「平均粒径」を意味する。
[特性評価]
上記のようにして得られた実施例1〜12及び比較例1〜8の色素増感太陽電池について、光電変換特性と光閉じ込め効果を評価した。
(1)光電変換特性
上記のようにして得られた実施例1〜12及び比較例1〜8のうち実施例1〜9及び比較例1〜5の色素増感太陽電池について、光電変換効率η(%)を測定した。そして、比較例1を基準として、下記式に基づいて光電変換効率ηの増加率を算出した。結果を表1に示す。
光電変換効率の増加率(%)=100×(実施例又は比較例の光電変換効率−比較例1の光電変換効率)/比較例1の光電変換効率
このとき、光電変換効率の測定は、Xeランプソーラーシミュレータ(山下電装社製YSS−150)とIVテスタ(英光精機社製MP−160)を使用して行った。
また実施例1〜9及び比較例1〜5とは光増感色素が異なる実施例10〜12及び比較例6〜8の色素増感太陽電池についても光電変換効率η(%)を測定した。そして、比較例6を基準として、下記式に基づいて光電変換効率ηの増加率を算出した。結果を表2に示す。
光電変換効率の増加率(%)=100×(実施例又は比較例の光電変換効率−比較例6の光電変換効率)/比較例6の光電変換効率
(2)光閉じ込め効果
光閉じ込め効果については、へイズ率を指標とした。そして、上記のようにして得られた実施例1〜12及び比較例1〜8の色素増感太陽電池について、ヘイズメータ(村上色彩科学研究所社製HM−150)を用いてへイズ率を測定した。結果を表1〜2に示す。なお、表1の実施例6及び7におけるヘイズ率は、色素増感太陽電池のヘイズ率であるが、ゲル電解質のヘイズ率をも表す。また、実施例6及び7の色素増感太陽電池における多孔質酸化チタン層のヘイズ率は、ゲル電解質から光散乱用酸化チタンを取り除いた色素増感太陽電池のヘイズ率、すなわち実施例4のヘイズ率と同一であり、その値は76%である。また表2の実施例12におけるヘイズ率は、色素増感太陽電池のヘイズ率であるが、ゲル電解質のヘイズ率をも表す。また、実施例12の色素増感太陽電池における多孔質酸化チタン層のヘイズ率は、ゲル電解質から光散乱用酸化チタンを取り除いた色素増感太陽電池のヘイズ率、すなわち実施例11のヘイズ率と同一であり、その値は89%である。
Figure 0005274691
Figure 0005274691
表1に示す結果より、実施例1〜9の色素増感太陽電池では、比較例1を基準とした光電変換効率の増加率が、比較例1〜5の色素増感太陽電池よりも大きくなることが分かった。
なお、実施例1〜12ではいずれも高いヘイズ率が得られていた。
表2に示す結果より、実施例10〜12の色素増感太陽電池では、比較例6を基準とした光電変換効率の増加率が、比較例6〜8の色素増感太陽電池よりも大きくなることが分かった。
なお、実施例10〜12ではいずれも高いヘイズ率が得られていた。
以上より、本発明の色素増感太陽電池によれば、光電変換特性を向上させることができることが確認された。
10,310…作用極
13,213,313…多孔質酸化チタン層
13a…光反射層
13b…第1層(ルチル結晶含有層)
13c…第2層
15…導電性基板
20…対極
40,240…電解質
100,200…色素増感太陽電池

Claims (7)

  1. 光を透過させることが可能な導電性基板上に多孔質酸化チタン層を有する作用極と、
    前記作用極に対向するように配置される対極と、
    前記作用極の前記多孔質酸化チタン層に担持される光増感色素と、
    前記作用極及び前記対極の間に配置される電解質とを備え、
    前記多孔質酸化チタン層が、アナターゼ結晶からなるアナターゼ結晶型酸化チタンと、
    ルチル結晶からなる球状のルチル結晶型酸化チタンとを含有するルチル結晶含有層を含み、
    前記ルチル結晶含有層中の前記ルチル結晶型酸化チタンの含有率が3〜15質量%である、色素増感太陽電池。
  2. 前記ルチル結晶含有層中の前記アナターゼ結晶型酸化チタンの平均粒径が15〜40nmである、請求項1に記載の色素増感太陽電池。
  3. 前記ルチル結晶含有層中の前記ルチル結晶型酸化チタンの平均粒径が50〜500nmである、請求項1又は2に記載の色素増感太陽電池。
  4. 前記多孔質酸化チタン層が、第1層と、前記第1層に対し、前記導電性基板側に設けられる第2層とを有し、
    前記第1層が前記ルチル結晶含有層で構成され、
    前記第2層中の前記ルチル結晶型酸化チタンの含有率が、前記第1層中の前記ルチル結晶型酸化チタンの含有率よりも小さい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
  5. 前記多孔質酸化チタン層が、前記ルチル結晶含有層に対し前記導電性基板と反対側に、前記ルチル結晶含有層から出射される光を反射する光反射層をさらに有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
  6. 前記光反射層が、ルチル結晶からなるルチル結晶型酸化チタンを含む、請求項5に記載の色素増感太陽電池。
  7. 前記ルチル結晶含有層が、前記多孔質酸化チタン層において前記対極に最も近い位置に配置されており、前記電解質が、ルチル結晶からなるルチル結晶型酸化チタンを含むゲル電解質で構成され、前記電解質のヘイズ率が、前記多孔質酸化チタン層のヘイズ率よりも大きい、請求項1〜4のいずれか一項に記載の色素増感太陽電池。
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