JP4102054B2 - 光電極及びこれを備えた色素増感型太陽電池 - Google Patents

光電極及びこれを備えた色素増感型太陽電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光電極及びこれを備えた色素増感型太陽電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球温暖化やエネルギー問題に対する関心の高まりとともに太陽電池の様々な開発が進められている。その太陽電池の中でも、色素増感型太陽電池は使用する材料が安価であること、比較的シンプルなプロセスで製造できること等からその実用化が期待されている。
【0003】
従来の色素増感型太陽電池おいては、半導体電極に含有される増感色素の吸収係数が小さいことから、赤外〜近赤外の波長領域の光は半導体電極に入射しても当該半導体電極内において十分に吸収されずに透過してしまい、光電変換反応の進行に寄与していなかった。
【0004】
そのため、色素増感型太陽電池の実用化に向けて、光電極に備えられる半導体電極における入射光の吸収効率を向上させることにより、電池のエネルギー変換効率を向上させるための様々な検討が行われている。なお、色素増感型太陽電池のエネルギー変換効率η(%)は、下記式(1)で表される。
【0005】
ここで、下記式(1)中、P0は入射光強度[mWcm-2]、Vocは開放電圧[V]、Iscは短絡電流密度[mAcm-2]、F.F.は曲線因子(Fill Factor)を示す。
η=100×(Voc×Isc×F.F.)/P0…(1)
【0006】
上記の検討として、例えば、特開平10−255863号公報には、平均粒子径が例えば80nm以下である小さな半導体粒子(例えば、アナターゼ型の酸化チタン粒子)を構成材料とする半導体電極(光吸収粒子層)の電解質の側の面上に、平均粒子径が例えば200〜500nmである大きな高屈折材料粒子(例えば、ルチル型の酸化チタン粒子)を構成材料とする層(光反射粒子層)を設けて光電極を構成し、光吸収粒子層から電解質に向けて進行する入射光を光反射粒子層において反射させ、再び光吸収粒子層に入射させることによりエネルギー変換効率を向上させることを意図した色素増感型太陽電池が提案されている。
【0007】
また、特開2000−106222号公報には、粒子径の大きな半導体粒子(平均粒子径;10〜300nm)と、粒子径の小さな半導体粒子(平均粒子径;10nm以下)とを混在させた1つの層からなる半導体電極を構成し、当該半導体電極に入射する入射光を内部で散乱させることにより、エネルギー変換効率を向上させることを意図した色素増感型太陽電池が提案されている。
【0008】
更に、Solar Energy Materials and Solar Cells 44(1996)99-117 には、アナターゼ型の酸化チタン粒子(粒子径が25nmのものを使用する場合と、約10nm〜約120nmの範囲の様々な粒子径を有するものの混合物を使用する場合とがある。)を構成材料とする光電極(photoelectrode,厚さ:10μm)の電解質の側の面上に、屈折率の大きなルチル型の酸化チタン粒子(粒子径:300nm)とジルコニア粒子(粒子径:20nm以下)とをルチル型の酸化チタン粒子:ジルコニア粒子=100:10の質量比で含有させた porous spacer (light reflecting spacer, 厚さ:10μm)を設け、光電極から電解質の側に向けて透過する光を porous spacer において反射させ、再び光電極に入射させることにより、エネルギー変換効率を向上させることを意図した色素増感型太陽電池が提案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らは、上述の特開平10−255863号公報の光電極を備えた色素増感型太陽電池、特開2000−106222号公報に記載の光電極を備えた色素増感型太陽電池及び Solar Energy Materials and Solar Cells 44(1996)99-117 の光電極を備えた色素増感型太陽電池のいずれであっても、光電極を構成する半導体電極において十分な入射光の吸収効率が得られておらず、電池として十分なエネルギー変換効率を得ることができず未だ不十分であるということを見出した。
【0010】
すなわち、特開平10−255863号公報に記載の色素増感型太陽電池の場合には、電解質の側に配置される光反射粒子層が光を光吸収粒子層に向けて反射するため、光吸収粒子層における光の利用効率が僅かに増大するものの、光反射粒子層では光を吸収し該層内において光電変換反応を十分に進行させることができず、しかも、光反射率が不十分であるため、光電極全体として十分な光の利用効率を得ることができず、十分なエネルギー変換効率を得ることができないという問題があった。また、光を十分に吸収しない光反射粒子層が電解質溶液の拡散抵抗を増大させてしまう場合があるという問題があった。
【0011】
また、特開2000−106222号公報に記載の色素増感型太陽電池の場合には、半導体電極中の大きな半導体粒子による入射光の光散乱の結果、大きな半導体粒子がない場合に比べて半導体電極内を通過する光路長は長くなり光の利用効率は増加するが、一部の光は該半導体電極内において利用される前にどうしても半導体電極外に漏れ出てしまい、その結果、半導体電極内での光の閉じ込め効果が小さくなり、十分な光の利用効率を得ることができないという問題があった。
【0012】
また、この場合には、半導体電極内において大きな半導体粒子が多くなると、色素が吸着する半導体表面の総表面積が減って光吸収率が減少してしまい、かえってエネルギー変換効率が低下してしまうという問題もあった。
【0013】
更に、Solar Energy Materials and Solar Cells 44(1996)99-117 に記載の色素増感型太陽電池の場合にも、電解質の側に配置される porous spacer が光を光電極に向けて反射するため、光電極における光の利用効率が僅かに増大するものの、porous spacerでは光を吸収し該層内において光電変換反応を十分に進行させることができず、しかも、光反射率が不十分であるため porous spacer と光電極とを合わせた全体としての十分な光の利用効率を得ることができず、十分なエネルギー変換効率を得ることができないという問題があった。また、光を十分に吸収しない porous spacer が電解質溶液の拡散抵抗を増大させてしまう場合があるという問題があった。
【0014】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れた入射光の利用効率を有する光電極及び優れたエネルギー変換効率を有する色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、光電極を構成する半導体電極を複数の層からなる構成とし、複数の層の中で透明電極に対して最も遠い位置に配置される層を、平均粒子径が70nm以下の酸化物半導体粒子と、光を十分に散乱させることができるとともに光を吸収することも可能な平均粒子径が150nm以上の酸化物半導体粒子とを用いて構成し、同時に、透明電極に最も近い位置に配置される層を、光の散乱を十分に抑制することができる範囲の小さな粒子径を有する酸化物半導体粒子を選択的に用いて構成することにより、半導体電極全体としての入射光の光閉じ込め効果を大きく向上させることができることを見出し、本発明に到達した。
【0016】
すなわち、本発明は、受光面を有する半導体電極と、当該受光面上に隣接して配置された透明電極とを有する光電極であって、半導体電極が増感色素と酸化物半導体粒子とを含む複数の層から構成されており、複数の層の中で透明電極に対して最も近い位置に配置される最内部の層の層厚が1〜5μmであり、最内部の層に含まれる酸化物半導体粒子の平均粒子径が70nm以下であり、かつ、該酸化物半導体粒子中、粒子径が100nm以上である粒子の割合が5質量%以下であり、複数の層の中で透明電極に対して最も遠い位置に配置される最外部の層の層厚が5〜49μmであり、最外部の層に含まれる酸化物半導体粒子は、平均粒子径が70nm以下の粒子(以下、「小径粒子」という)と、平均粒子径が150nm以上の粒子(以下、「大径粒子」という)とであり、該酸化物半導体粒子中、平均粒子径が150nm以上の粒子の割合が20質量%以上であること、を特徴とする光電極を提供する。
【0017】
最外部の層を上記のような大径粒子と小径粒子とが混在する構成とすることにより、この層において光を散乱させることができるとともに光を吸収して光電変換反応に利用することも可能となる。また、最内部の層を上記の構成とすることにより、この層内における光の散乱を十分に抑制することができる。
【0018】
そのため、透明電極に入射し最内部の層において利用される光の他に、最内部の層を通過して最外部の層に到達する光の光路長と、最外部の層において散乱され再び最内部の層に向けて進行する光の光路長を十分に長く確保することができ、半導体電極全体としての光の利用効率を向上させることができる。
【0019】
ここで、最内部の層に含まれる「粒子径が100nm以上である粒子」とは、最内部の層において酸化物半導体粒子の一次粒子同士が凝集しない状態で存在する場合には一次粒子を示し、最内部の層において酸化物半導体粒子の一次粒子同士が凝集した状態で存在する場合には二次粒子を示す。
【0020】
従って、「粒子径が100nm以上である粒子」の「粒子径」とは、最内部の層において酸化物半導体粒子の一次粒子同士が凝集しない状態で存在する場合には一次粒子径を示し、最内部の層において酸化物半導体粒子の一次粒子同士が凝集した状態で存在する場合には二次粒子径を示す。
【0021】
例えば、最内部の層を形成する際に、これに含まれる酸化物半導体粒子の分散液を塗布し、乾燥・焼結する方法を用いる場合、分散液のpHを調節することにより、酸化物半導体粒子の分散状態を制御することができる。通常分散液が強酸性のとき或いは強アルカリ性のときでは一次粒子同士が凝集せずに分散され、弱酸性〜弱アルカリ性のときでは一次粒子同士が凝集して分散される。
【0022】
このような「粒子径が100nm以上である粒子」の含有量が5%以下であるような酸化物半導体粒子により構成された最内部の層は、層内の光散乱を有効に防止することができる。
【0023】
また、最内部の層の層厚が1μm未満となると、増感色素の吸着量が少なくなり光を有効に吸収できなくなる。一方、最内部の層の層厚が5μmを超えると、電気抵抗が大きくなり半導体に注入されたキャリアの損失量が多くなるとともに、イオン拡散抵抗が増大して、光励起されて半導体への電子注入を果した後の色素へのI-からの電子注入によって生じるI3 -の対極への搬出が阻害され、電池の出力特性が低下する。なお、上記と同様の観点から、最内部の層の層厚は2〜4μmであることがより好ましい。
【0024】
更に、最内部の層に含まれる酸化物半導体粒子の平均粒子径が70nmを超えると、これらの粒子による光の散乱が顕著となり、その結果最内部の層における光の反射率が増加し、光の利用効率が低減してしまう。なお、上記と同様の観点から、最内部の層に含まれる酸化物半導体粒子の平均粒子径は10〜50nmであることがより好ましい。
【0025】
また、最内部の層に含まれる酸化物半導体粒子の平均粒子径が70nm以下であっても、これに含まれる粒子径が100nm以上である粒子が含まれていると、これら粒子による光の散乱が発生する。そして、粒子径が100nm以上である粒子の割合が5質量%を超えると、これらの粒子による光の散乱が顕著となり、その結果最内部の層における光の反射率が増加し、光の利用効率が低減してしまう。
【0026】
更に、最外部の層の層厚が5μm未満となると、増感色素の吸着量が少なくなり光を有効に吸収できなくなる。一方、最外部の層の層厚が49μmを超えると、電気抵抗が大きくなり半導体に注入されたキャリアの損失量が多くなるとともに、イオン拡散抵抗が増大して、光励起されて半導体への電子注入を果した後の色素へのI-からの電子注入によって生じるI3 -の対極への搬出が阻害され、電池の出力特性が低下する傾向が大きくなる。なお、上記と同様の観点から、最外部の層の層厚は7〜12μmであることがより好ましい。
【0027】
最外部の層に含まれる小径粒子の平均粒子径が70nmを超えると、電極内の増感色素の量が減少する。また、上記の観点と、最外部の層に含まれる小径粒子の平均粒子径が小さすぎると、半導体電極層内の細孔径が小さくなり、増感色素の吸着時間の増大や増感色素の電解液中への拡散が困難となるおそれがあるという観点から、最外部の層に含まれる小径粒子の平均粒子径は、10〜50nmであることがより好ましい。
【0028】
最外部の層に含まれる大径粒子の平均粒子径が150nm未満となると、光散乱効果が小さく光閉じ込め効果が不十分となる。また、上記の観点と、最外部の層に含まれる大径粒子の平均粒子径が大きすぎると、大径粒子の数密度が減少するため層内での均一な光散乱効果が得られず、光閉じ込め効果が不十分となるおそれがあり、更に層の機械的強度が不足するおそれがあるため、最外部の層に含まれる大径粒子の平均粒子径は、150〜450nmであることがより好ましい。
【0029】
また、この場合、最外部の層における小径粒子と大径粒子との合量に対する大径粒子の配合割合は20〜80質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。これにより、半導体電極内における光散乱効率をより精密に向上させることができる。
【0030】
更に、本発明において、半導体電極を3層以上の構成とする場合、最内部の層と最外部の層との間に配置される層の構成は特に限定されるものではなく、例えば、最内部の層と同様の構成を有していてもよく、最外部の層と同様の構成を有していてもよい。
【0031】
また、この場合、最内部の層と最外部の層との間に配置される層に、最外部の層に用いた小径粒子と大径粒子とを含有させる場合に、小径粒子と大径粒子との合量に対する大径粒子の配合割合を、最内部の層の最も近い位置に隣接して配置された層から最外部の層にかけて増加させてもよい。
【0032】
ここで、「小径粒子と大径粒子との合量に対する大径粒子の配合割合が、最内部の層の最も近い位置に隣接して配置された層から最外部の層にかけて増加する」状態とは、半導体電極を構成する各層の一端に位置する最外部の層の小径粒子と大径粒子との合量に対する大径粒子の配合割合が他端に位置する最内部の層の最も近い位置に隣接して配置された層の小径粒子と大径粒子との合量に対する大径粒子の配合割合よりも最終的に大きくなっており、複数の層を全体としてみた場合に各層の小径粒子と大径粒子との合量に対する大径粒子の配合割合が最内部の層の最も近い位置に隣接して配置された層から最外部の層にかけて概略的に増加している状態を示す。
【0033】
例えば、最内部の層の最も近い位置に隣接して配置された層から最外部の層にかけて小径粒子と大径粒子との合量に対する大径粒子の配合割合が単調に増加している状態であってもよい。また、例えば、最内部の層と最外部の層との間に配置される層のうち、一部の隣り合う層同士の小径粒子と大径粒子との合量に対する大径粒子の配合割合が同じ値をとる状態であってもよい。
【0034】
更に、最内部の層と最外部の層との間に配置される層のうち、一部の隣り合う層同士の小径粒子と大径粒子との合量に対する大径粒子の配合割合を比較した場合、最内部の層の側に位置する層の小径粒子と大径粒子との合量に対する大径粒子の配合割合が最外部の層の側に位置する層の小径粒子と大径粒子との合量に対する大径粒子の配合割合よりも大きい場合があってもよい。
【0035】
ただし、半導体電極の入射光の吸収効率を十分に確保する観点から、最内部の層の最も近い位置に隣接して配置された層から最外部の層にかけて小径粒子と大径粒子との合量に対する大径粒子の配合割合が単調に増加している状態、又は、最内部の層と最外部の層との間に配置される層のうち、一部の隣り合う層同士の小径粒子と大径粒子との合量に対する大径粒子の配合割合が同じ値をとる状態が好ましい。
【0036】
更に、半導体電極を3層以上の構成とする場合、最内部の層と最外部の層との間に配置される層の各層を上述のような小径粒子と大径粒子を混合させて構成するのではなく、粒子径のほぼそろった酸化物半導体粒子から構成し、各層の酸化物半導体粒子の平均粒子径が最内部の層の最も近い位置に隣接して配置される層から最外部の層の最も近い位置に隣接して配置される層にかけて増加させてもよい。
【0037】
ただし、この場合、半導体電極の入射光の吸収効率を十分に確保する観点から、最内部の層に隣接して配置される層の酸化物半導体粒子の平均粒子径は、最内部の層の酸化物半導体粒子の平均粒子径よりも大きいことが好ましい。
【0038】
そしてこの場合にも、「各層の酸化物半導体粒子の平均粒子径が最内部の層の最も近い位置に隣接して配置される層から最外部の層の最も近い位置に隣接して配置される層にかけて増加する」状態とは、最内部の層と最外部の層との間に配置される層の各層のうち、各層の一端に位置する最外部の層に隣接して配置される層の酸化物半導体粒子の平均粒子径が他端に位置する最内部の層の最も近い位置に隣接して配置された層の酸化物半導体粒子の平均粒子径よりも最終的に大きくなっており、各層を全体としてみた場合に各層の酸化物半導体粒子の平均粒子径が最内部の層の最も近い位置に隣接して配置された層から最外部の層の最も近い位置に隣接して配置された層にかけて概略的に増加している状態を示す。
【0039】
また、最外部の層は、この層だけを光電極として色素増感型太陽電池を作製した際に、AM1.5、100mW/cm2の疑似太陽光を照射した場合に得られる短絡電流が1mA/cm2以上であることが好ましい。
【0040】
更に、本発明の光電極においては、最外部の層に含まれる酸化物半導体粒子はアナターゼ型の酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ及び酸化ニオブからなる群から選択される少なくとも1種の粒子であることが好ましい。このような粒子をもちいることにより、光を十分に散乱させるとともに十分に吸収することのできる最外部の層をより確実に構成することができる。
【0041】
また、本発明は、受光面を有する半導体電極と当該半導体電極の受光面上に隣接して配置された透明電極とを有する光電極と、対極とを有しており、半導体電極と対極とが電解質を介して配置された色素増感型太陽電池であって、光電極が前述した本発明の光電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池を提供する。このように、前述した本発明の光電極を用いることにより、優れたエネルギー変換効率を有する色素増感型太陽電池を構成することができる。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の光電極及び色素増感型太陽電池の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
図1は、本発明の光電極の好適な一実施形態を示す模式断面図である。更に、図2は、図1に示した光電極を備えた色素増感型太陽電池を示す模式断面図である。
【0044】
図1に示す光電極10は、主として、受光面F2を有する半導体電極2と、当該半導体電極2の受光面F2上に隣接して配置された透明電極1とから構成されている。
【0045】
また、図2に示す色素増感型太陽電池20は、主として、図1に示した光電極10と、対極CEと、スペーサーSにより光電極10と対極CEとの間に形成される間隙に充填された電解質Eとから構成されている。そして、半導体電極2は、受光面F2と反対側の裏面F22において電解質Eと接触している。
【0046】
この色素増感型太陽電池20は、透明電極1を透過して半導体電極2に照射される光L10によって半導体電極2内において電子を発生させる。そして、半導体電極2内において発生した電子は、透明電極1に集められて外部に取り出される。
【0047】
透明電極1の構成は特に限定されるものではなく、通常の色素増感型太陽電池に搭載される透明電極を使用できる。例えば、図1及び図2に示す透明電極1は、ガラス基板等の透明基板4の半導体電極2の側に光を透過させるためのいわゆる透明導電膜3をコートした構成を有する。この透明導電膜3としては、液晶パネル等に用いられる透明電極を用いればよい。
【0048】
例えば、フッ素ドープSnO2コートガラス、ITOコートガラス、ZnO:Alコートガラス等が挙げられる。また、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板4上に設けたものでもよい。
【0049】
透明基板4としては、液晶パネル等に用いられる透明基板を用いてよい。具体的には透明なガラス基板、ガラス基板表面を適当に荒らすなどして光の反射を防止したもの、すりガラス状の半透明のガラス基板など光を透過するものが透明基板材料として挙げられる。なお、光を透過するものであれば材質はガラスでなくてもよく、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などでもよい。
【0050】
図1に示す半導体電極2は、酸化物半導体粒子を構成材料とする2つの層から構成されている。すなわち、半導体電極2は、透明電極1に最も近い位置に配置される最内部の層21と、透明電極1に対して最も遠い位置に配置される最外部の層22とから構成されている。
【0051】
先に述べたように、最内部の層21は、層厚が1〜5μmとなるように調節されている。また、最内部の層21に含まれる酸化物半導体粒子の平均粒子径は70nm以下に調節され、かつ、該酸化物半導体粒子中、粒子径が100nm以上である粒子の割合が5質量%以下に調節されている。
【0052】
また、最外部の層22は、層厚が5〜49μmとなるように調節されている。更に、最外部の層22に含まれる小径粒子の平均粒子径は70nm以下となるように調節されており、同じく最外部の層22に含まれる大径粒子の平均粒子径は150nm以上となるように調節されている。
【0053】
この光電極10は、上記の構造を有する半導体電極2を備えることにより、当該半導体電極2内における入射光の吸収効率の向上が図られている。すなわち、透明電極1の受光面F1から入射し最内部の層21内を透過する光L10の一部は、最外部の層22において利用される他に最外部の層22に含有されている大径粒子上で効率よく反射されて、散乱光となり再び最内部の層21に効率よく戻され、再び最内部の層21内において利用される。この半導体電極2の各層内における高い光閉じ込め効果により、半導体電極2において優れた入射光の利用効率を得ることができる。
【0054】
最内部の層21は、主として、上述の条件を満たす大きさを有する酸化物半導体粒子と、この酸化物半導体粒子の表面に吸着された増感色素とから構成されている。
【0055】
最内部の層21に含有される酸化物半導体粒子は特に限定されるものではなく、公知の酸化物半導体等を使用することができる。酸化物半導体としては、例えば、TiO2,ZnO,SnO2,Nb25,In23,WO3,ZrO2,La23,Ta25,SrTiO3,BaTiO3等を用いることができる。
【0056】
また、最内部の層21に含有される増感色素は特に限定されるものではなく、可視光領域および/または赤外光領域に吸収を持つ色素であればよい。この増感色素P2としては、金属錯体や有機色素等を用いることができる。金属錯体としては銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン、クロロフィルまたはその誘導体、ヘミン、ルテニウム、オスミウム、鉄及び亜鉛の錯体(例えばシス−ジシアネート−ビス(2、2’−ビピリジル−4、4’−ジカルボキシレート)ルテニウム(II))等が挙げられる。有機色素としては,メタルフリーフタロシアニン,シアニン系色素,メロシアニン系色素,キサンテン系色素,トリフェニルメタン系色素等を用いることができる。
【0057】
また、最外部の層22は、主として、上述の条件を満たす大きさを有する小径粒子と、大径粒子と、これら小径粒子及び大径粒子の表面に吸着された増感色素とから構成されている。
【0058】
最外部の層22に含有される小径粒子及び大径粒子を構成する酸化物半導体としては、先に述べたように、アナターゼ型の酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ及び酸化ニオブからなる群から選択される少なくとも1種の粒子が好ましく使用される。また、最外部の層22に含有される増感色素も最内部の層21に含有される増感色素と同様に特に限定されるものではなく、可視光領域および/または赤外光領域に吸収を持つ色素であればよい。例えば、上述の最内部の層21に含有される増感色素と同様の色素を使用してよい。
【0059】
また、半導体電極2の厚さは、6〜50μmであることが好ましく、9〜30μmであることがより好ましく、9〜16μmであることが更に好ましい。半導体電極の厚さが6μm未満となると、色素吸着量が少なくなり光を有効に吸収できなくなる傾向が大きくなる。
【0060】
一方、半導体電極の厚さが50μmを超えると、電気抵抗が大きくなり半導体に注入されたキャリアの損失量が多くなるとともに、イオン拡散抵抗が増大して、光励起されて半導体への電子注入を果した後の色素へのI-からの電子注入によって生じるI3 -の対極への搬出が阻害され、電池の出力特性が低下する傾向が大きくなる。
【0061】
また、対極CEは、特に限定されるものではなく、例えば、シリコン太陽電池、液晶パネル等に通常用いられている対極と同じものを用いてよい。例えば、前述の透明電極1と同じ構成を有するものであってもよく、透明電極1と同様の透明導電膜3上にPt等の金属薄膜電極を形成し、金属薄膜電極を電解質Eの側に向けて配置させるものであってもよい。また、透明電極1の透明導電膜3に白金を少量付着させたものであってもよく、白金などの金属薄膜、炭素などの導電性膜などであってもよい。
【0062】
更に、電解質Eの組成も光励起され半導体への電子注入を果した後の色素を還元するための酸化還元種を含んでいれば特に限定されないが、I-/I3 -等の酸化還元種を含むヨウ素系レドックス溶液が好ましく用いられる。具体的には、I-/I3 -系の電解質はヨウ素のアンモニウム塩あるいはヨウ化リチウムとヨウ素を混合したものなどを用いることができる。その他、Br-/Br3 -系、キノン/ハイドロキノン系などのレドックス電解質をアセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネートなどの電気化学的に不活性な溶媒(およびこれらの混合溶媒)に溶かしたものも使用できる。
【0063】
また、スペーサーSの構成材料は特に限定されるものではなく、例えば、シリカビーズ等を用いることができる。
【0064】
次に、図1に示した光電極10及び図2に示した色素増感型太陽電池20の製造方法の一例について説明する。
【0065】
透明電極1を製造する場合は、ガラス基板等の基板4上に先に述べたフッ素ドープSnO2等の透明導電膜3をスプレーコートする等の公知の方法を用いて形成することができる。
【0066】
透明電極1の透明導電膜3上に半導体電極2の最内部の層21及び最外部の層22を形成する方法としては、例えば、以下の方法がある。すなわち、先ず、先に述べた条件を満たす大きさを有する酸化物半導体粒子を分散させた最内部の層21を形成するための分散液を調製する。この分散液の溶媒は水、有機溶媒、または両者の混合溶媒など酸化物半導体粒子を分散できるものなら特に限定されない。また、分散液中には必要に応じて界面活性剤、粘度調節剤を加えてもよい。
【0067】
次に、分散液を透明電極1の透明導電膜3上に塗布し、次いで乾燥する。このときの塗布方法としてはバーコーター法、印刷法などを用いることができる。そして、乾燥した後、空気中、不活性ガス或いは窒素中で加熱、焼成して半導体電極2の最内部の層21(多孔質半導体膜)を形成する。このときの焼成温度は300〜800℃が好ましい。焼成温度が300℃未満であると酸化物半導体粒子間の固着、基板への付着力が弱くなり十分な強度がでなくなるおそれがある。焼成温度が800℃を超えると酸化物半導体粒子間の固着が進み、半導体電極2(多孔質半導体膜)の表面積が小さくなるおそれがある。
【0068】
次に、最内部の層21上に最外部の層22を形成する場合には、例えば、最内部の層21に含有させる酸化物半導体粒子のかわりに所定量の大径粒子及び小径粒子を添加させた組成を有する分散液を調製する以外は、上述した最内部の層21を形成する方法と同様にして最外部の層22を形成することができる。
【0069】
次に、半導体電極2の最内部の層21及び最外部の層22中に浸着法等の公知の方法により増感色素を含有させる。増感色素は半導体電極2に付着(化学吸着、物理吸着または堆積など)させることにより含有させる。この付着方法は、例えば色素を含む溶液中に半導体電極2を浸漬するなどの方法を用いることができる。この際、溶液を加熱し還流させるなどして増感色素の吸着、堆積を促進することができる。なお、このとき、色素の他に必要に応じて、銀等の金属やアルミナ等の金属酸化物を半導体電極2中に含有させてもよい。
【0070】
なお、半導体電極2内に含まれる光電変換反応を阻害する不純物を除去する表面酸化処理を、各層それぞれの形成時毎、或いは、各層全てを形成した時などに公知の方法により適宜施してもよい。
【0071】
また、透明電極1の透明導電膜3上に半導体電極2を形成する他の方法としては、以下の方法がある。すなわち、透明電極1の透明導電膜3上にTiO2等の半導体を膜状に蒸着させる方法を用いてもよい。透明導電膜3上に半導体を膜状に蒸着させる方法としては公知の方法を用いることができる。例えば、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、スパッタ蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法を用いてもよく、酸素等の反応性ガス中で金属等を蒸発させ、反応生成物を透明導電膜3上に堆積させる反応蒸着法を用いてもよい。更に、反応ガスの流れを制御する等してCVD等の化学蒸着法を用いることもできる。
【0072】
このようにして光電極10を作製した後は、公知の方法により対極CEを作製し、図1に示すように、光電極10と、対極CEとをスペーサーSを介して対抗させるように組み上げる。このとき、スペーサーSにより光電極10と対極CEとの間に形成される空間に電解質Eを充填し、色素増感型太陽電池20を完成させる。
【0073】
図3は、図1に示した光電極を備えた色素増感型太陽電池の他の実施形態を示す模式断面図である。以下、図3に示す色素増感型太陽電池30について説明する。なお、上述した図2に示した色素増感型太陽電池20に関して説明した要素と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0074】
図3に示す色素増感型太陽電池30は、図1に示した光電極10を使用し、図2に示した対極CEと同様の対極CEを使用している。そして、図2に示した色素増感型太陽電池20においてはスペーサーSにより光電極10と対極CEとの間に形成される空間に電解質Eを充填したのに比較して、図3に示す色素増感型太陽電池30においては、光電極10と対極CEとの間に多孔体層PSを配置している。そして、対極CEの多孔体層PSと反対側の面には透明基板6が配置されている。
【0075】
この多孔体層PSは多数の細孔を有した構造を有しており、この多孔体層PSの内部には、図2に示した色素増感型太陽電池20に使用したものと同様の電解質Eがしみ込まされることにより保持されている。
【0076】
また、この電解質は半導体電極2内や、使用する構成材料(例えば、炭素等の多孔質の導電性膜)によっては対極CEにも保持されている。そして、図3に示す色素増感型太陽電池30の半導体電極2、多孔体層PS及び対極CEの側面は、電解質が、半導体電極2、多孔体層PS及び対極CEの側面から外部に漏れることを防止するためにシール材5により被覆されている。
【0077】
多孔体層PSは、電解質を保持可能であり、電子伝導性を有さない多孔体であれば特に限定されない。例えば、ルチル型の酸化チタン粒子により形成した多孔体を使用してもよい。また、ルチル型の酸化チタン以外の構成材料としては、ジルコニア、アルミナ、シリカ等が挙げられる。
【0078】
また、シール材5としては、例えば、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂フィルム、あるいはエポキシ系接着剤を使用することができる。対極CEの側に配置される透明基板6は光電極10の透明電極1に使用される透明基板4と同様の基板を使用することができる。
【0079】
次に、図3に示す色素増感型太陽電池30の製造方法の一例について説明する。先ず、図2に示した色素増感型太陽電池20と同様にして光電極10を作製する。次に、光電極10の半導体電極2の各層を作製する場合と同様の手順により、光電極10の半導体電極2の最外部の層22の面上に多孔体層PSを形成する。例えば、ルチル型の酸化チタン等の多孔体層PSの構成材料を含む分散液(スラリー)を調製し、これを最外部の層22の面上に塗布し乾燥させることにより形成してもよい。
【0080】
また、対極CEについても、例えば、炭素等の多孔質の導電性膜を対極CEとする場合には、例えば、カーボンペーストを調製し、これを多孔体層PSの面上に塗布し乾燥させることにより形成してもよい。そして、公知の方法により、対極CEの多孔体層PSの側と反対の側の面上に透明基板6を形成し、半導体電極2、多孔体層PS及び対極CEの側面をシール材5で被覆して色素増感型太陽電池30を完成する。
【0081】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0082】
例えば、上記の実施形態においては、2層の構造を有する半導体電極2を備えた光電極10と、これを備える色素増感型太陽電池20及び色素増感型太陽電池30について説明したが、本発明の光電極及び色素増感型太陽電池はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の光電極は、3層以上の層から構成された半導体電極を備える構成を有していてもよい。
【0083】
また、本発明の色素増感型太陽電池は、例えば、図4に示す色素増感型太陽電池40のように、複数の電池を併設したモジュールの形態を有していてもよい。図4に示す色素増感型太陽電池40は、図3に示した色素増感型太陽電池30を複数個直列に併設する場合の一例を示している。
【0084】
図3に示した色素増感型太陽電池30に比較して、図4に示す色素増感型太陽電池40は、隣り合う太陽電池の単セルの光電極10間に設けられるシール材5と一方の単セル(以下、単セルAという)の光電極10との間に溝が形成されている。
【0085】
この溝は、単セルAの半導体電極2を、例えばレーザースクライブなどの技術により削りとることにより形成される。この溝のうちのシール材5の近傍部分は、半導体電極2の部分を完全に除去して透明電極1の透明導電膜3の層があらわれる深さまで達している。また、この溝のうちの単セルAの半導体電極2の近傍部分は、半導体電極2の部分と透明導電膜3の部分を完全に除去して、透明電極1の透明基板4の層があらわれる深さまで達している。
【0086】
そして、この溝のうちのシール材5の近傍部分には、隣り合う光電極10の透明導電膜3及び該透明導電膜3上の半導体電極2の部分同士が電気的に接触しないように、これらの部分の間に単セルAの多孔体層PSの鍔状に形成された縁部分が透明電極1の透明基板4に接触するようにして挿入されている。
【0087】
更に、この溝のうちの単セルAの半導体電極2の近傍部分、すなわち、単セルAの多孔体層PSとシール材5との間の部分には、単セルAの対極CEの鍔状に形成された縁部分が、もう一方の単セルの透明電極1の透明導電膜3に接触するようにして挿入されている。
【0088】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の光電極及び色素増感型太陽電池について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0089】
(実施例1)
以下に示す手順により、図1に示した光電極10と同様の構成を有する光電極を作製し、更に、この光電極を用いた以外は図2に示す色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する色素増感型太陽電池(受光面の面積:1cm2)を作製した。
【0090】
先ず、市販のTiO2粒子(アナターゼ、平均粒子径;25nm、以下、P25という)にアセチルアセトン、イオン交換水、界面活性剤(東京化成社製、商品名;「Triton−X」)を加え、混練して最内部の層を形成するためのスラリー(P25の含有量;15質量%、以下、スラリー1とする)を調製した。なお、使用したP25中、粒子径が100nm以上である粒子の割合は2質量%であった。
【0091】
次に、上述のP25と、市販のTiO2粒子(アナターゼ、平均粒子径;200nm、以下、P200という)とを用い、P25とP200との質量比が、P25:P200=70:30となるようにした以外は前述のスラリー1と同様の調製手順により、最外部の層を形成するためのスラリー(P25の含有量;10.5質量%、P200の含有量;4.5質量%、以下、スラリー2とする)を調製した。
【0092】
一方、ガラス基板(透明導電性ガラス)上にフッ素ドープされたSnO2導電膜(膜厚:700nm)を形成した透明電極1(厚さ:1.1mm)を準備した。そして、このSnO2導電膜上に、上述のスラリー1をバーコーダを用いて塗布し、次いで乾燥させた。その後、大気中、450℃の条件のもとで30分間焼成した。
【0093】
更に、スラリー2を用いて、上述と同様の塗布と焼成とを繰り返すことにより、SnO2導電膜上に図1に示す半導体電極2と同様の構成の半導体電極(受光面の面積:1.0cm2、層厚:10.5μm、最内部の層の層厚:3.5μm、最外部の層の層厚:7μm)を形成し、増感色素を含有していない光電極を作製した。
【0094】
その後、半導体電極の裏面に色素を以下のようにして吸着させた。先ず、増感色素としてルテニウム錯体[cis-Di(thiocyanato)-N,N'-bis(2,2'-bipyridyl-4,4'dicarboxylic acid)-ruthenium(II)]を用い、これのエタノール溶液(増感色素の濃度;3×10-4mol/L)を調製した。
【0095】
次に、この溶液に半導体電極を浸漬し、80℃の温度条件のもとで20時間放置した。これにより、半導体電極の内部に増感色素を約1.0×10-7mol/cm2吸着させた。次に、開放電圧Vocを向上させるために、ルテニウム錯体吸着後の半導体電極を4-tert-ブチルピリジンのアセトニトリル溶液に15分浸漬した後、25℃に保持した窒素気流中において乾燥させ、光電極を完成させた。
【0096】
次に、上記の光電極と同様の形状と大きさを有する対極として、電子ビーム蒸着法によりPtが蒸着された透明導電性ガラス電極(Pt薄膜の厚さ:3nm)を作製した。また、電解質Eとして、ヨウ素、ヨウ化リチウム、イミダゾリウム塩を含むヨウ素系レドックス溶液を調製した。
【0097】
更に、半導体電極の大きさに合わせた形状を有する三井デュポンポリケミカル社製のスペーサーS(商品名:「ハイミラン」)を準備し、図2に示すように、光電極と対極とをスペーサーを介して対向させ、内部に上記の電解質を充填して色素増感型太陽電池を完成させた。
【0098】
(実施例2〜実施例5)
半導体電極の最内部の層及び最外部の層を表1に示す条件の構成とした以外は、実施例1と同様の手順により図1に示した光電極10及び図2に示した色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する光電極及び色素増感型太陽電池(受光面の面積:1cm2)を作製した。
【0099】
(実施例6)
以下に示す手順により、図1に示した光電極10と同様の構成を有する光電極を作製し、更に、この光電極を用いた以外は図3に示す色素増感型太陽電池30と同様の構成を有する色素増感型太陽電池(受光面の面積:1cm2)を作製した。
【0100】
実施例1と同様の光電極を作製した後、多孔体層を次の手順により形成した。多孔体層を形成するためのスラリーは、市販のルチル型の酸化チタン粒子(粒径:300nm)と市販のジルコニア(ZrO2)粒子(粒径:20nm)とを用い、ルチル型の酸化チタン粒子とジルコニア粒子の質量比がルチル型の酸化チタン粒子:ジルコニア粒子=100:10となるようにした以外は前述のスラリー1と同様の調製手順により調製した。次いで、実施例1に示す光電極の形成手順と同様にして光電極の裏面に対してこのスラリーの塗布と焼結を繰り返すことにより、厚さ10μmの多孔体層を形成した。
【0101】
その後、カーボンの多孔体からなる対極となる層を次の手順により形成した。この対極となる層を形成するためのスラリーは、市販のグラファイトパウダー、カーボンブラック及びチタニア(アナターゼ型の酸化チタン)粒子(粒径:20nm)を用い、グラファイト、カーボンブラック及びチタニアの質量比が、グラファイト:カーボンブラック:チタニア=100:20:15となるようにした以外は前述のスラリー1と同様の調製手順により調製した。次いで、実施例1に示す光電極の形成手順と同様に多孔体層の面上にこのスラリーの塗布し更に焼結を行うことにより、厚さ50μmの対極となる層を形成した。
【0102】
その後、実施例1と同様に色素を吸着・乾燥させた後、半導体電極の大きさに合わせた形状を有する三井デュポンポリケミカル社製のスペーサーS(商品名:「ハイミラン」)を準備し、図3に示すように、光電極とガラス透明基板とをスペーサーを介して対向させ、内部に上記の電解質を充填して色素増感型太陽電池を完成させた。
【0103】
(比較例1)
実施例1に用いたスラリー1のみを用いて1つの層のみからなる半導体電極(受光面の面積:1.0cm2、層厚:10μm)を作製したこと以外は、実施例1と同様の手順により表1に示す構成を有する光電極及び色素増感型太陽電池を作製した。
【0104】
(比較例2)
実施例1に用いたスラリー2のみを用いて1つの層のみからなる半導体電極(受光面の面積:1.0cm2、層厚:10μm)を作製したこと以外は、実施例1と同様の手順により表1に示す構成を有する光電極及び色素増感型太陽電池を作製した。
【0105】
(比較例3〜比較例7)
半導体電極の最内部の層及び最外部の層を表1に示す条件の構成とした以外は、実施例1と同様の手順により図1に示した光電極10及び図2に示した色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する光電極及び色素増感型太陽電池(受光面の面積:1cm2)を作製した。
【0106】
(比較例8)
スラリー2にかえて以下に示す手順で作製したスラリーを用いて最外部の層を形成した以外は、実施例1と同様の手順により表1に示す構成を有する光電極及び色素増感型太陽電池(受光面の面積:1cm2)を作製した。
【0107】
最外部の層を形成するためのスラリーは、市販のルチル粒子(粒径300nm)を用いたこと以外はスラリー1と同様の手順により作製した。すなわち、この最外部の層は上記の1種類のルチル粒子から構成した。
【0108】
(比較例9)
光電極として比較例2に示すものを用いた以外は、実施例6と同様の図3に示す色素増感型太陽電池30と同様の構成を有する色素増感型太陽電池(受光面の面積:1cm2)を作製した。
【0109】
【表1】
Figure 0004102054
【0110】
[電池特性試験]
電池特性試験を行ない、実施例1〜実施例6、比較例1〜9の色素増感型太陽電池のエネルギー変換効率ηを測定した。電池特性試験は、ソーラーシミュレータ(ワコム製、商品名;「WXS−85−H型」)を用い、AMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW/cm2の疑似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、開放電圧(Voc/V)、短絡電流(Isc/mA・cm-2)、曲線因子(F.F.)及びエネルギー変換効率(η/%)を求めた。
【0111】
実施例1〜実施例6、比較例1〜9の各色素増感型太陽電池に備えられている光電極の構成と電池特性試験の結果を表2に示す。
【0112】
【表2】
Figure 0004102054
【0113】
表2に示した結果から明らかなように、実施例1〜実施例6の色素増感型太陽電池のエネルギー変換効率ηは、それぞれに対応する比較例1〜9の色素増感型太陽電池のエネルギー変換効率ηよりも高い値を示すことが確認された。
【0114】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、光電極を構成する半導体電極内において高い光閉じ込め効果を得ることが可能となるので、優れた入射光の利用効率を有する光電極を構成することができる。また、この光電極を用いることにより、優れたエネルギー変換効率を有する色素増感型太陽電池を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光電極の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】図1に示した光電極を備えた色素増感型太陽電池の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図3】図1に示した光電極を備えた色素増感型太陽電池の他の実施形態を示す模式断面図である。
【図4】図3に示した色素増感型太陽電池を複数併設する場合の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1…透明電極、2…半導体電極、3…透明導電膜、4…透明基板、5…シール材、6・・・透明基板、10…光電極,20…色素増感型太陽電池、21…最内部の層、22…最外部の層、30,40…色素増感型太陽電池、CE…対極、E…電解質、F1,F2,F3,…受光面、F22…半導体電極2の裏面、L10…入射光、S…スペーサー、PS…多孔体層。

Claims (3)

  1. 受光面を有する半導体電極と、当該受光面上に隣接して配置された透明電極とを有する光電極であって、
    前記半導体電極が増感色素と酸化物半導体粒子とを含む複数の層から構成されており、
    前記複数の層の中で前記透明電極に対して最も近い位置に配置される最内部の層の層厚が1〜5μmであり、
    前記最内部の層に含まれる前記酸化物半導体粒子の平均粒子径が70nm以下であり、かつ、該酸化物半導体粒子中、粒子径が100nm以上である粒子の割合が5質量%以下であり、
    前記複数の層の中で前記透明電極に対して最も遠い位置に配置される最外部の層の層厚が5〜49μmであり、
    前記最外部の層に含まれる前記酸化物半導体粒子は、平均粒子径が70nm以下の粒子と、平均粒子径が150nm以上の粒子とであり、該酸化物半導体粒子中、平均粒子径が150nm以上の粒子の割合が20質量%以上であること、
    を特徴とする光電極。
  2. 前記最外部の層に含まれる前記酸化物半導体粒子はアナターゼ型の酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ及び酸化ニオブからなる群から選択される少なくとも1種の粒子であること、
    を特徴とする請求項1に記載の光電極。
  3. 受光面を有する半導体電極と当該半導体電極の前記受光面上に隣接して配置された透明電極とを有する光電極と、対極とを有しており、前記半導体電極と前記対極とが電解質を介して配置された色素増感型太陽電池であって、
    前記光電極が請求項1又は2に記載の光電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池。
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