JP2012241244A - 製膜体、該製膜体を備えた光電極、及び該光電極を備えた色素増感太陽電池 - Google Patents

製膜体、該製膜体を備えた光電極、及び該光電極を備えた色素増感太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】製造時に焼成工程が不要であり、強度、電子伝導性、色素吸着性及び電解液の拡散性に優れた、無機物質からなる多孔質膜が基材上に形成された製膜体、該製膜体を備えた光電極、及び該光電極を備えた色素増感太陽電池の提供。
【解決手段】(1)無機物質の微粒子22を基材24に吹き付けて、基材24と微粒子22とを接合させると共に、微粒子22同士を接合させることによって、基材24上に無機物質の多孔質膜23を製膜して得られた製膜体であって、微粒子22の1次粒径が変化しないことを特徴とする製膜体。(2)多孔質膜23の空隙率が50%以上であることを特徴とする(1)に記載の製膜体。(3)多孔質膜23が、少なくとも表面に結晶性部位を有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の製膜体。
【選択図】図2

Description

本発明は、無機物質の多孔質膜を基材上に形成した製膜体、該製膜体を備えた光電極、及び該光電極を備えた色素増感太陽電池に関する。
色素増感太陽電池(DSC)の光電極には、ルテニウム金属錯体等の光増感色素を吸着させた、酸化チタン等の酸化物半導体からなる多孔質膜が用いられる(特許文献1)。多孔質膜を形成する従来方法として、酸化物半導体の粒子を含むスラリー又はペーストを基材上に塗布して、これを酸化物半導体の融点以下の温度で焼成することによって、酸化物半導体の粒子同士が弱く接触した状態で製膜される。塗布前のスラリー又はペーストに、エチルセルロース等のバインダーを配合することによって、スラリー又はペーストの粘度を調整すると共に、製膜される膜の多孔度を高めて、光増感色素の吸着面積を増やした多孔質膜とすることが通常行われる。
DSCの光電変換効率を向上させるために、多孔質膜を構成する微粒子を表面処理する方法が知られている。代表例として、上記のように製膜した酸化チタンからなる多孔質膜を四塩化チタン水溶液に浸漬させて引き上げ、これを加熱処理することによって、多孔質膜に新たな酸化チタン膜を形成する方法が知られる(非特許文献1)。この酸化チタン膜が、多孔質膜に清浄な表面を与えると共に、多孔質膜を構成する酸化チタン粒子同士の接着力を高める役割を果たすと考えられている。
特許第3435459号公報
技術教育出版社発行 色素増感太陽電池のモジュール化・材料開発・評価技術 P. 89〜93
しかし、500℃で1時間程度の焼成法によって製膜された多孔質膜では、酸化物半導体の粒子同士の接着力が弱く、電子伝導性が低く留まるという問題がある。これは、焼成温度が酸化物半導体の融点(酸化チタンの融点は1700〜1800℃)よりも格段に低いために、粒子表面が溶融せず、粒子同士の接触面積が小さいままで留まるからである。例えば粒子が球体に近い形状であれば、2つの粒子同士の界面(粒界)の接触面積は極めて小さくなってしまう。また、スラリー又はペースト中にバインダーを配合すると、粒子同士の接点が更に減ってしまい、製膜される多孔質膜の電子伝導度が低く留まるという問題がある。
従来の多孔質膜を支持する基材は、焼成に耐える材料である必要があるため、プラスチックや樹脂フィルム等を基材として使用することが困難である。また、焼成工程に要する時間が、多孔質膜の製造工程全体の所要時間を押し上げてしまう問題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、製造時に焼成工程が不要であり、強度、電子伝導性、色素吸着性及び電解液の拡散性に優れた、無機物質からなる多孔質膜が基材上に形成された製膜体、該製膜体を備えた光電極、及び該光電極を備えた色素増感太陽電池の提供を課題とする。
本発明の請求項1に記載の製膜体は、無機物質の微粒子を基材に吹き付けて、前記基材と前記微粒子とを接合させると共に、前記微粒子同士を接合させることによって、前記基材上に無機物質の多孔質膜を製膜して得られた製膜体であって、前記微粒子の1次粒径が変化しないことを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の製膜体は、請求項1において、前記多孔質膜の空隙率が50%以上であることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の製膜体は、請求項1又は2において、前記多孔質膜が、少なくとも表面に結晶性部位を有することを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の製膜体は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記基材が、樹脂からなることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の製膜体は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記基材が樹脂からなるフィルムであることを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の光電極は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製膜体を備えたことを特徴とする。
本発明の請求項7に記載の色素増感太陽電池は、請求項6に記載の光電極を備えたことを特徴とする。
本発明の製膜体は、多孔質膜を構成する微粒子の1次粒径(1次粒子径)が、吹き付け前の微粒子の1次粒径と比べて変化していない。このため、多孔質膜中の微粒子が砕けておらず、砕けていない微粒子同士が接合して多孔質膜をなしている。前記多孔質膜を構成する前記微粒子同士は互いに接合しているため、強度が高く、電子伝導性に優れる。この接合によって、多孔質膜内に色素吸着サイトとなる空隙が形成されるため、色素吸着性に優れる。その空隙は電解液が拡散することにも適しているため、電解液の拡散性に優れる。また、本発明の製膜体を製造する際、従来行われていた焼成工程を必要としない。このため、比較的耐熱性の低いプラスチックや樹脂フィルム等を基材の材料として使用できる。更に、製造時に焼成工程が不要であり、製膜の所要時間を短縮できるため、製造特性に優れる。
本発明の製膜体は、優れた特性を有する多孔質膜を基材の表面に配しているため、光電極の構成部品として有用である。この光電極を備えた色素増感太陽電池は、光電変換効率に優れる。また、樹脂フィルム等の柔軟な基材を使用した製膜体を用いれば、変形可能な色素増感太陽電池とすることもできる。
本発明に使用できる製膜装置を示す模式図である。 本発明にかかる製膜体の製膜過程の一例を示す模式的な断面図である。 本発明にかかる製膜体の表面の電子顕微鏡写真(TEM写真)の一例である。 本発明にかかる製膜体の表面の電子顕微鏡写真(TEM写真)の一例である。 焼成によって形成された多孔質酸化チタン層の表面の電子顕微鏡写真(TEM写真)の一例である。 焼成によって形成された多孔質酸化チタン層の表面の電子顕微鏡写真(TEM写真)の一例である。 本発明にかかる製膜体の電子顕微鏡写真(SEM写真)の一例である。
以下、本発明について詳しく説明する。
<<製膜体>>
本発明の製膜体は、無機物質の微粒子を基材に吹き付けて、前記基材と前記微粒子とを接合させると共に、前記微粒子同士を接合させることによって、前記基材上に無機物質の多孔質膜を製膜して得られた製膜体であって、前記微粒子の1次粒径が変化しないものである。
本発明における多孔質膜は、前記吹き付けによって、原料である前記微粒子を砕くことなく、圧力、衝撃を与えることによって、前記微粒子同士を面で接合させ(面接合させ)、且つ多孔質膜とされたものである。前記面接合の様子を図2に示す。Lで示した領域が、前記微粒子同士が面接合した領域である。
本発明における多孔質膜は、吹き付ける粒子に対して、粒子が破壊される強度よりも小さい機械的衝撃力を負荷して形成されている。つまり、本発明における多孔質膜は、原料粒子を粉砕せずに、吹き付け前後において粒子径(粒径)を減じずに、吹き付けた粒子同士を、基材もしくは基材の導電層から多孔質膜の上部まで途切れることなく連結(接合)して形成されたものである。本発明における多孔質膜はこの構成を有することによって、粒子間の導電性を確保しながら、膜強度及び大きな表面積を確保している。
このような粒子同士の接合が実現されるメカニズムは、以下のように考えられる。吹き付ける原料粒子(1次粒子)には、大径粒子(相対的に大きな粒子)と小径粒子(相対的に小さな粒子)が含まれる。この原料粒子の吹き付けにおいて、大径粒子(比較的大きな粒子)を小径粒子(比較的小さな粒子)に打ち付けることによって、小径粒子同士に機械的衝撃エネルギーを付与し、小径粒子同士を接合していると考えられる。この際、小径粒子は破砕されず、大きな変形も起こらず、結果、原料粒子の結晶サイズは殆ど変化しない。また、小径粒子は破砕されないが、お互いにその表面が擦り合わされ、結果、接合部に相当する粒子表面の一部に新生面が形成され、互いに接合している。このように接合しているため、粒子の内部の結晶性の乱れが少なく、電気伝導性に優れた多孔質膜ができる。電気伝導性に優れた多孔質膜となるので、色素増感太陽電池の光電極に好適に用いられる。
本発明において、「1次粒径」とは、前記微粒子の本来有する粒子径(粒子の直径若しくは長径)であり、粒子同士が凝集している状態の大きさ(2次粒径)とは区別される。前記微粒子の吹き付け前の1次粒径及び前記多孔質膜を構成する微粒子の1次粒径は、電子顕微鏡で複数の当該微粒子を観察し、その平均をとることによって、平均粒子径として求められる。例えば30〜50個程度の微粒子の1次粒子径を平均すればよい。
本発明において、「微粒子同士が接合している」とは、隣り合う微粒子同士が互いに密着している状態をいう。この密着状態は、互いに融合して接着している(融着している)状態とも表現できる。多くの場合、粒子同士が接合した面においては、粒子表面が溶融してできるガラス質からなる粒界層は実質的には無い。
通常、電子顕微鏡で観察した場合に、「接合状態」と単に「接触している状態」とは明らかに異なることが見て取れる。微粒子全体が観察できる(観察視野に微粒子全体が入る)程度の倍率(例えば5万〜20万倍)のSEM写真を撮った場合、接合状態にある微粒子同士の境界には、隙間が形成されておらず密着している様子が観察される。このように密着した周長が連続して繋がっている領域は、接合状態にあると判断できる。
前記無機物質としては、例えばPt、Ag、Auなどの金属粒子、Si、 CdS、CdSe、CdTe、PbS、PbSe、ZnO、TiO、In, SnO、BaTiOなどの半導体粒子、及び公知の複合無機粒子等が挙げられる。
前記無機物質としては、電子伝導性及び色素の担持性により優れた酸化物半導体が好ましい。前記酸化物半導体としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)等が挙げられる。これらの中でも、多孔質膜を形成した時に電子伝導性に優れる酸化チタンが好ましい。
一般に、産業上利用される酸化チタンはアナターゼ型とルチル型とに大別され、その他にブルッカイト型や非晶質(アモルファス)の酸化チタンが知られる。本発明において、前記多孔質膜を構成する無機物質として酸化チタンを使用する場合、1次粒径が比較的小径である小径粒子としてはアナターゼ型酸化チタンが好ましく、1次粒径が比較的大径である大径粒子としてはルチル型酸化チタンが好ましい。この組み合わせで混合された混合粒子を使用して形成した多孔質膜は、色素増感太陽電池の光電極に適した強度を有するものとなりやすい。このように、前記小径粒子及び前記大径粒子は、互いに異なる結晶系の酸化物半導体であることが好ましい。
前記多孔質膜を形成する酸化チタン中に、アナターゼ型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン又はアモルファス酸化チタン等の、ルチル型以外の酸化チタンが含まれていても良い。異なる結晶系の酸化チタンを任意の割合で混合したものが使用できる。
前記無機物質の微粒子の平均粒子径としては、例えば1nm〜5.0μmが好ましい。
上記範囲の下限値以上であることにより、色素(増感色素)をより多く担持でき、電解液がより拡散しやすい空隙が前記多孔質膜に形成されやすい。
なお、酸化チタンの平均粒子径は、SEM観察により複数の粒子径を測定して平均する方法やレーザー回折式粒度分布測定装置の測定により得られた粒子径(体積平均径)分布のピーク値として決定する方法がある。
前記多孔質膜は、色素増感太陽電池の色素を担持できる空隙(空孔又は細孔とも呼ばれる)を有する多孔質膜である。
前記多孔質膜の空隙率(空孔率、細孔率又は多孔度とも呼ばれる)は、50%以上が好ましく、50〜85%がより好ましく、50〜80%が更に好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、色素をより多く担持することができる。上記範囲の上限値以下であると多孔質膜の強度をより強固にすることができる。
本明細書および特許請求の範囲において、空隙率とは「製膜した薄膜の単位体積あたりの空隙の体積が占める百分率」を意味する。この空隙率は、空隙率=嵩比重/真比重×100(%)によって算出される。なお、嵩比重は、多孔質膜の単位体積あたりの質量を単位体積あたりの無機物質の粒子の質量(理論値)で除したものであり、真比重は、無機物質の粒子の比重(理論値)を意味する。また、前記空隙率は、微細構造特性の分析法として公知のガス吸着試験又は水銀圧入試験によって測定することができる。
前記多孔質膜は前記基材の上に製膜されたものであり、前記多孔質膜の厚さは、1μm〜200μmであることが好ましく、2μm〜100μmであることが好ましく、5μm〜50μmであることが更に好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記多孔質膜に担持させた色素が光エネルギーを吸収する確率を一層高めることができ、色素増感太陽電池における光電変換効率を一層向上できる。また、上記範囲の上限値以下であると、バルクの電解質(太陽電池セル内の電解質)と多孔質膜内の電解質との交換が、拡散によって一層効率よく行われ、光電変換効率を一層向上できる。
前記多孔質膜は、少なくとも表面に結晶性部位を有することが好ましい。表面の少なくとも一部が結晶性であることにより、当該多孔質膜を形成した製膜体を光電極として備えた色素増感太陽電池の光電変換効率が一層向上し得る。この理由としては、結晶性であることによって電子伝導率がより高まること及び/又は色素の担持率若しくは色素と無機物質間における電子の授受の効率がより高まることが一因として考えられる。
ここで、「結晶性である」とは、前記多孔質膜をなす無機物質の微粒子が結晶の様に規則的に配列しているこという。ただし、無機物質の粒子を構成する原子が完全な結晶をなしていることを意味するものではない。結晶性であることは、後述するように、前記多孔質膜の表面を電子顕微鏡で観察してTEM写真を撮った際に、規則的な平行線(縞模様)が観察されることによって確認できる。
また、「多孔質膜の表面」とは、多孔質膜が基材に接している面を「裏面」とした場合の、反対側の面を意味する。つまり、粒子が吹き付けられる側の面を「表面」という。
前記多孔質膜は、その表面全体が結晶性であることがより好ましいが、表面の一部が結晶性であり、他の部分がアモルファス(非結晶性)である場合でも効果は奏され得る。また、前記多孔質膜の表面だけでなく、多孔質膜の厚さ方向においても結晶性であることがより好ましい。
前記多孔質膜の表面の一部又は全部が結晶性であることは、当該多孔質膜の表面を電子顕微鏡で観察することによって確認できる。例えば、TEM写真を撮ることによって、図3〜図4に示すような規則的で平行な縞模様が観察された場合、少なくともその表面領域が結晶性であるといえる。一方、表面又は膜厚方向がアモルファス(非結晶性)である場合は、このような縞模様は観察され得ない。例えば図5〜図6は低温焼成(110℃5分)で形成できるペクセル社製の酸化チタンペーストを用いて作製した多孔質酸化チタン層の表面のTEM写真であるが、前記縞模様は観察されていない。
前記多孔質膜が膜厚方向においても結晶性であることは、例えばX線回折によって確認することができる。
なお、前記ペクセル社製の酸化チタンペーストは、110℃5分の低温焼成によって多孔質酸化チタン層が形成可能であるとして市販されているものである。また、前記低温焼成によって多孔質半導体層が形成できることは公知である(Chemistry Letters Vol.36, No.6(2007)等を参照)。
このような低温焼成は、従来の500℃の焼成温度に比べて穏やかな温度ではあるが、基材として樹脂製の基板又は樹脂製のフィルムを用いることは、やはり困難である。
本発明にかかる製膜体を構成する前記基材は特に制限されず、例えば太陽電池の光電極に使用される透明基材が挙げられる。
前記透明基材としては、例えばガラス、プラスチックからなる基板及び樹脂製フィルム等が挙げられる。
前記基材の材料であるガラスとしては、ソーダライムガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、バイコールガラス、無アルカリガラス、青板ガラス及び白板ガラスなどの一般的なガラスが例示できる。
前記基材の材料であるプラスチックとしては、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリアミド樹脂等が例示できる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(PET)は、透明耐熱フィルムとして大量に生産及び使用されている。薄く、軽く、かつフレキシブルな色素増感太陽電池を製造する観点からは、前記基材はPETフィルムであることが好ましい。
前記基材の表面には、公知の色素増感太陽電池の透明導電性基板に用いられる金属酸化物がコーティングされていることが好ましい。例えば、酸化インジウム/酸化スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化インジウム/酸化亜鉛(IZO)、酸化ガリウム/酸化亜鉛(GZO)等が、前記基材の表面に予め形成されていてもよい。これらの金属酸化物からなる層が基材表面に形成されている場合、前記多孔質膜は、この金属酸化物層の上に積層されて製膜されることが好ましい。前記金属酸化物からなる層は、1層であっても複数層であってもよい。
前記色素は特に限定されるものではなく、一般に色素増感太陽電池に使用されている増感色素を用いることができる。前記色素としては、シス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)(以下、N3ということがある)、N3のビス−TBA塩(以下、N719ということがある)、トリ(チオシアナト)−(4,4’,4”−トリカルボキシ−2,2’:6’,2”−ターピリジン)ルテニウムのトリス−テトラブチルアンモニウム塩(ブラックダイと呼ばれる)などのルテニウム色素系等が挙げられる。また、前記色素としては、クマリン系、ポリエン系、シアニン系、ヘミシアニン系、チオフェン系、インドリン系、キサンテン系、カルバゾール系、ペリレン系、ポルフィリン系、フタロシアニン系、メロシアニン系、カテコール系及びスクアリリウム系等の各種有機色素等が挙げられる。さらに、これらの色素を組み合わせたドナー−アクセプター複合色素等も前記色素として用いられる。
<<製膜体の製造方法>>
本発明の製膜体は、前記無機物質の前記微粒子を前記基材に吹き付けて、前記基材と前記微粒子とを接合させると共に、前記微粒子同士を接合させることによって、前記基材上に前記無機物質の前記多孔質膜を製膜して得られたものである。
本発明においては、前記微粒子の吹き付け前の1次粒径と、製膜した多孔質膜を構成する微粒子(吹き付け後の微粒子)の1次粒径とがほとんど変化しないように製膜する。
前記無機物質の微粒子を基材に吹き付ける方法としては、搬送ガスを用いるエアロゾルデポジション法(AD法)、静電力により微粒子を加速する静電微粒子コーティング法、コールドスプレー法等が挙げられる。
前記AD法は、ヘリウム等の搬送ガスによって微粒子を亜音速〜超音速程度まで加速して、基材に吹き付ける方法である。基材表面に衝突した微粒子は、少なくともその一部が基材表面に食い込んで、容易には剥離しない状態となる。また、この衝突により、基材表面と微粒子表面とが接合する。つづいて、さらに吹き付けを継続することにより、基材表面に食い込んだ微粒子に対して、別の微粒子が衝突する。微粒子同士の衝突によって、互いの微粒子表面が接合する。この微粒子同士の衝突においては、微粒子が溶融するような温度上昇は発生し難いため、微粒子同士が接合した界面には、ガラス質からなる粒界層は実質的に存在しない。前記微粒子の吹き付けを継続することによって、次第に、基材表面に多数の微粒子が接合してなる多孔質膜が形成される。形成された多孔質膜は、色素増感太陽電池の光電極として充分な強度及び電子伝導性を有するので、焼成による焼き締めを必要としない。
前記吹き付けの速度を調整する方法としては、例えば吹き付けノズルの開口径(開口部の直径又は開口部の一辺の長さ)を調整することによって行うことができる。前記開口径を広げるほど、吹き付け速度を遅くすることができ、前記開口径を狭めるほど、吹き付け速度を速めることができる。例えば、ガス搬送された微粒子(小径微粒子又は大径微粒子)を1mm以下の開口径のノズル口を通して吹きつけることによって、数百m/s程度まで容易に加速できる。
図2は、本発明にかかる製膜体の製膜過程の一例を示す模式的な断面図である。基材24の表面に、微粒子22同士が接合して多孔質膜23が製膜されている様子を示している。微粒子22同士が接合している状態の断面の模式図を拡大して示してある。この拡大図において、二つの微粒子22が互いに接合した接合部位の断面を示している。一方の微粒子22の周長のうち、微粒子同士で接合した長さをLで示してある。他方の微粒子22の周長における、微粒子同士で接合した長さも同じLである。このように本発明の製膜体は、多孔質膜23及び基材24を少なくとも備えたものである。
本発明において、前記搬送ガスによって加速する前記微粒子の速度としては、10〜650m/sが好ましく、10〜250m/sがより好ましく、10〜150m/sが更に好ましい。
上記範囲の上限値以下であることにより、前記吹き付ける微粒子が、基材又は既に堆積している微粒子に衝突した際に、微粒子が過度に砕けることなく、吹き付け時の微粒子径をほぼ保ったまま、多孔質膜を形成できる。
上記範囲の下限値以上であることにより、前記吹き付ける微粒子が、基材又は既に堆積している微粒子に確実に接合された状態とし、充分な強度及び電子伝導性の多孔質膜を形成することがより容易にできる。
前記搬送ガスによって加速する前記微粒子の速度は、上記範囲内において、基材の種類に応じて適宜調整すればよい。
本発明における製膜体は常温環境で製造されることが好ましい。
ここで常温とは、前記無機物質の前記微粒子の融点より十分低い温度のことを指し、実質的には200℃以下である。
前記常温環境の温度は、前記基材の融点以下であることが好ましい。前記基材が樹脂製である場合は、前記常温環境の温度はビカット軟化温度未満であることが好ましい。
公知のAD法としては、例えば国際公開第WO01/27348A1号パンフレットに開示されている超微粒子ビーム堆積法及びその装置、又は特許第3265481号公報の脆性材料超微粒子低温成形法及びその装置を、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適用してもよい。
これらの公知のAD法では、吹き付ける微粒子をボールミル等で前処理することにより、クラックが入るか入らないか程度の内部歪を微粒子に予め加えておくことが重要であるとしている。この内部歪を加えておくことによって、吹き付けられた微粒子が、基材又は既に堆積した微粒子に衝突する際に破砕や変形をおこし易くすることができ、この結果、緻密な膜を形成できる、としている。
本発明の製膜体を製造する場合、吹き付ける前記微粒子に予め内部歪を加えておく必要は無い。前記微粒子が適度な強度を有していることにより、吹き付け時に前記微粒子が粉砕されずに構造が維持されたまま、前記微粒子同士が接合した状態となり、且つ前記微粒子同士の間に空隙を形成できる。これにより、大きな比表面積を有する多孔質の薄膜を製膜できる。
一方、予め内部歪を加えた微粒子を吹き付けて製膜すると、空隙率の小さい、非常に緻密な薄膜となる。このような緻密な薄膜は、前記色素を吸着し難く、光電極として用いるのは不適当である。
本発明の製膜体を製造する際、前記微粒子が吹き付け前に凝集して2次粒子を形成してしまうことを防ぐために、前記超微粒子ビーム堆積法で使用されているエアロゾル発生器、分級器及び/又は解砕器を使用してもよい。
本発明の製膜体を構成する多孔質膜の空隙率は、前記微粒子の吹き付け速度や吹き付け角度によっても調整できるが、当該微粒子の粒子径を適宜選択することによって、より効果的に調整することができる。前述の好ましい粒子径の範囲において、吹き付ける微粒子の粒子径を大きくする程、形成される多孔質膜の空隙率は高くなる傾向がある。逆に、吹き付ける微粒子の粒子径を小さくする程、形成される多孔質膜の空隙率は低くなる傾向がある。
また、前記吹き付けの微粒子として、複数の種類の微粒子を混合した混合微粒子を使用しても良い。例えば前記ルチル型酸化チタン粒子を70〜90質量部、アナターゼ型、ブルッカイト型又は非晶質の酸化チタン微粒子を10〜30質量部の割合で混合した混合微粒子を使用できる。この混合微粒子には、他の種類の無機物質が含まれていても良い。
結晶系の異なる酸化チタン微粒子を混合して前記混合粒子とすることによって、粒子径の異なる酸化チタン微粒子を混合した混合粒子とすることがより容易にできる。この混合粒子を基材に吹き付けた場合、小粒径の粒子がまず基材上に堆積し、その上から大粒径粒子を打ち付けることができ、多くのエネルギー(機械的衝撃力)を小径粒子に与えることによって、小径粒子同士をより一層充分に接合させることがより容易となる。
前記混合微粒子の調製方法は特に制限されない。例えば、基材に吹き付ける前に前記ルチル型酸化チタン微粒子と他の酸化チタン微粒子とを、ボールミル等で均一に混合すればよい。また、ルチル型酸化チタン微粒子と他の酸化チタン微粒子とを、予め混合せず、各々別のノズルから基材へ向けて同時に吹き付ける方法も可能である。
前記ルチル型酸化チタン微粒子の平均粒子径としては、1.0μm〜5.0μmが好ましく、1.0μm〜4.0μmがより好ましく、1.0μm〜3.0μmがさらに好ましい。前記ルチル型以外の酸化チタン微粒子の好適な平均粒子径は、前記ルチル型酸化チタン微粒子の好適な平均粒子径と同様であっても良いし、ルチル型酸化チタン微粒子よりも小さくても良く、例えば1.0nm〜1.0μmであってもよい。
上記平均粒子径の範囲であることにより、色素(増感色素)をより多く担持でき、電解液がより拡散しやすい空隙が前記多孔質膜に形成されやすい。
この結果、当該多孔質膜の電子伝導性及び強度が一層向上しうる。
なお、酸化チタンの平均粒子径は、SEM観察により複数の粒子径を測定して平均する方法やレーザー回折式粒度分布測定装置の測定により得られた粒子径(体積平均径)分布のピーク値として決定する方法がある。
本発明の製膜体を構成する多孔質膜に対して前記色素を吸着させて、色素増感太陽電池用の光電極を得る方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
まず、前記色素を溶剤に溶かし、さらにテトラブチルアンモニウムカチオン(以下、TBAということがある)を添加して色素溶液を調製する。この色素溶液に前記製膜体を浸漬して、前記多孔質膜に色素及びTBAを吸着させることによって、前記製膜体を光電極とすることができる。
前記色素溶液を調製するために用いる溶剤としては、アルコール、ニトリル、エーテル、エステル、ケトン、炭化水素、ハロゲン化炭化水素等の各種溶剤の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。
前記アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコールなどが挙げられる。
前記ニトリルとしては、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが挙げられる。
前記エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
前記エステルとしては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
前記ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチレン、クロロホルムなどが挙げられる。
前記色素としてN3又はN719を用いる場合、色素溶液を調製するための溶剤としては、例えば、t−ブチルアルコール(t−BuOH)とアセトニトリル(MeCN)との混合溶剤を用いることが好ましい。
前記色素溶液に添加されるTBAカチオンは、水酸化TBA又はTBA塩を、適当な溶剤に溶解又は分散させた状態で、前記色素溶液に添加することが好ましい。
前記TBA塩としては、臭化TBA(TBAB)、ヨウ化TBA(TBAI)などが挙げられる。
前記色素溶液に添加されるTBAカチオンの量は、色素溶液に含まれる色素のモル当たり、0.1〜3.0当量の範囲が好ましく、0.3〜2.5当量の範囲がより好ましく、0.5〜1.5当量の範囲がさらに好ましい。TBAカチオンの添加量が0.1当量未満であると、TBAカチオンの添加効果が不十分であり、光電変換効率がTBAカチオン無添加の場合と同様になってしまう。TBAカチオンの添加量が3.0当量を超えると、TBAカチオンの添加効果が頭打ちになり好ましくない。
前記色素溶液において、前記色素の濃度は特に限定されないが、通常は0.05〜1.0mMの範囲が好ましく、0.1〜0.5mMの範囲がより好ましい。
前記色素溶液に前記製膜体を浸漬する方法は、特に限定されず、容器に入れた色素溶液中に製膜体を浸漬し、一定温度で一定時間保持し、その後、製膜体を引き上げる方法が挙げられる。また、色素溶液中に製膜体を移動させながら連続的に投入、浸漬及び引き上げを行う方法なども挙げられる。
浸漬時の色素溶液の温度は特に限定されない。該温度は10〜90℃であることが好ましい。浸漬時間は、30分〜50時間であることが好ましい。浸漬温度と浸漬時間との組み合わせは、用いる色素と多孔質膜を構成する無機物質の種類の組合せに応じて設定すればよい。
浸漬後に製膜体を前記色素溶液から引き上げて、必要に応じてアルコールで余分な色素を洗浄し、乾燥させる。
以上の操作によって、本発明にかかる製膜体を構成する多孔質膜に、前記色素及びTBAを吸着させた、色素増感太陽電池用の光電極が得られる。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[実施例1]
原料粒子としてルチル型酸化チタン粒子(ルチル化率95%、平均粒子径2.31μm、純度99.9%、三津和化学社製)を粉体重量のうち96%、アナターゼ型酸化チタン粒子(P25:ルチル化率30%、平均粒子径約30nm、日本アエロジル社製)を粉体重量のうち4%の割合で混合した原料粉(混合粒子)を用いて、透明導電膜(FTO)が形成されたガラス基板上に、AD法によって、酸化チタンからなる多孔質膜(厚さ10μm)を製膜した。
ここで使用したAD法の条件は以下の通りである。
図1に記載の製膜装置10を使用して製膜した。製膜室1内において、5mm×0.5mmの長方形の開口部を持つノズル2からガラス基板3に対して、亜音速〜超音速の噴射速度で混合粒子4を吹き付けた。
搬送ガスであるヘリウムをボンベ5から搬送管6へ供給し、その流速をマスフロー制御器7で調整した。吹き付け用の混合粒子をエアロゾル発生器8に装填し、搬送ガスに分散させて、解砕器9および分級器11へ搬送し、ノズル2から基板3へ噴射した。製膜室1にはポンプ12が接続されており、製膜室内を陰圧にした。
二次粒子(凝集粒子)の形成を防ぐために真空乾燥によって、混合粒子から水分を予め除去した微粒子を使用した。約10分間の噴射中、ステージ13を水平に動かして、ガラス基板3上に、均一な厚さの多孔質膜が形成されるようにした。
多孔質膜を製膜したガラス基板を、0.3mMに調製した色素(N719、ソラロニクス社製)のアルコール溶液に、室温で24時間浸漬した。次に、色素を担持した多孔質膜およびガラス基板からなる光電極をアルコールで軽く洗浄した後、薄膜の周りに30μm厚みのシリコンゴムのスペーサーを配し、電解液(Iodolyte50、ソラロニクス社製)を注いだ。続いて、空気が入らないように、白金コーティング付きガラスからなる対極を被せて、ダブルクリップで光電極と対極とを挟んで圧着し、色素増感太陽電池の簡易セルを得た。有効面積は4mm角とした。
[比較例1]
実施例1で使用したものと同じ、透明導電膜(FTO膜)が表面に形成されたガラス基板を使用した。前記ガラス基板上に酸化チタンペーストをドクターブレード法で塗布し、空気雰囲気下110℃で5分間焼成して、透明導電膜上に多孔質酸化チタン層を、厚さ10μmとなるように形成した。
次に、実施例1と同様の方法によって、得られた多孔質酸化チタン層に色素を吸着させて、色素増感太陽電池の簡易セルを作成した。有効面積は4mm角とした。
ここで使用したAD法の条件は以下の通りである。
図1に記載の製膜装置10を使用して製膜した。製膜室1内において、2mm×0.1mmの長方形の開口部を持つノズル2からガラス基板3に対して、亜音速〜超音速の噴射速度で混合粒子4を吹き付けた。
搬送ガスであるヘリウムをボンベ5から搬送管6へ供給し、その流速をマスフロー制御器7で調整した。吹き付け用の混合粒子をエアロゾル発生器8に装填し、搬送ガスに分散させて、解砕器9および分級器11へ搬送し、ノズル2から基板3へ噴射した。製膜室1にはポンプ12が接続されており、製膜室内を陰圧にした。
二次粒子(凝集粒子)の形成を防ぐために真空乾燥によって、混合粒子から水分を予め除去した微粒子を使用した。約10分間の噴射中、ステージ13を水平に動かして、ガラス基板3上に、均一な厚さの緻密な薄膜が形成されるようにした。
次に、実施例1と同様の方法によって、得られた緻密な薄膜に色素を吸着させて、色素増感太陽電池の簡易セルを作成した。有効面積は4mm角とした。
[光電変換効率の評価]
I-V特性測定装置を備えたソーラーシミュレーター(AM1.5、100mW/cm)を用いて、実施例1、比較例1及び比較例2で作製した各簡易セルの光電変換効率を評価した。
その結果、実施例1、比較例1及び比較例2の光電変換効率は、順に7.06%、5.70%、0.4%であった。この結果から、実施例1の多孔質膜を備えた製膜体が光電極として優れていることが明らかである。
このように実施例1にかかる色素増感太陽電池の光電変換効率が優れている理由は、これを構成する製膜体の多孔質膜が、強度、電子伝導性、色素吸着性及び電解液の拡散性に優れているからである。
[空隙率の測定]
実施例1で作成した製膜体の多孔質膜の空隙率は、窒素吸着測定の方法で測定したところ55%であった。同様に測定したところ、比較例1の多孔質酸化チタン層及び比較例2の緻密な薄膜の空隙率は、それぞれ7%、15%であった。
[膜の結晶性]
また、実施例1で作成した製膜体の多孔質膜の表面を電子顕微鏡で観察し、TEM写真を撮った。その写真を図3〜図4に示す。酸化チタン粒子に対応する部分において規則的で平行な縞模様が観察されたことから、当該領域の少なくとも表面が結晶性であると判断された。同様に、比較例1の多孔質酸化チタン層及び比較例2の緻密な薄膜の表面には、規則的で平行な縞模様は観察されなかったことから、結晶性ではないと判断された。比較例1の多孔質酸化チタン層の表面のTEM写真を図5〜図6に示す。
[多孔質膜の断面の観察]
実施例1で作成した製膜体の多孔質膜の断面を電子顕微鏡で観察し、SEM写真を撮ったところ(図7参照)、当該多孔質膜を構成する微粒子同士が接合していることを確認できた。図7は、多孔質膜の破断面をイオンミリングによって平滑に削りだした面を約10万倍の倍率で撮像したものである。微粒子同士が接合(接着)している様子がわかる。
また、別の電子顕微鏡写真の結果から、実施例1において、前記微粒子の1次粒径は吹き付け前と吹き付け後(製膜された多孔質膜をなす状態)とでは変化していないことが確認された。
以上から、本発明の製膜体は、その製造時に焼成工程を必要としないため、製膜の所要時間を短縮できることは明らかである。また、常温で製膜できるため、プラスチックや樹脂フィルム等の基材上に多孔質膜を形成した製膜体を製造できることは明らかである。
本発明の製膜体は、色素増感太陽電池及びその製造に広く利用することが可能である。
1…製膜室、2…ノズル、3…基材、4…混合粒子、5…ガスボンベ、6…搬送管、7…マスフロー制御器、8…エアロゾル発生器、9…解砕器、10…製膜装置、11…分級器、12…ポンプ、13…ステージ、22…微粒子、23…多孔質膜、24…基材。

Claims (7)

  1. 無機物質の微粒子を基材に吹き付けて、前記基材と前記微粒子とを接合させると共に、前記微粒子同士を接合させることによって、前記基材上に無機物質の多孔質膜を製膜して得られた製膜体であって、前記微粒子の1次粒径が変化しないことを特徴とする製膜体。
  2. 前記多孔質膜の空隙率が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の製膜体。
  3. 前記多孔質膜が、少なくとも表面に結晶性部位を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の製膜体。
  4. 前記基材が、樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の製膜体。
  5. 前記基材が、樹脂からなるフィルムであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の製膜体。
  6. 請求項1〜5の何れか一項に記載の製膜体を備えたことを特徴とする光電極。
  7. 請求項6に記載の光電極を備えたことを特徴とする色素増感太陽電池。
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