JP2013181233A - 製膜方法及び製膜体並びに色素増感太陽電池 - Google Patents

製膜方法及び製膜体並びに色素増感太陽電池 Download PDF

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Yukitoshi EZUKA
幸敏 江塚
Jun Aketo
純 明渡
Shunsuke Kunugi
俊介 功刀
Satoshi Yoguchi
聡 與口
Setsuo Nakajima
節男 中嶋
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Abstract

【課題】凝集した粉体の微粒子に起因する製膜特性への悪影響を抑制可能な製膜方法を提供する。
【解決手段】粒径分布を有する粉体の微粒子をノズル14から基材に吹き付けて多孔質膜を製膜する。ノズルから微粒子を吹き出す吹出工程と、ノズルから吹き出された微粒子のうち特定の微粒子を選択して、基材に吹き付ける微粒子の粒径分布を調整する調整工程と、を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、無機物質からなる多孔質膜を基材上に形成する製膜方法、該製膜方法によって得られる製膜体、該製膜体を備えた色素増感太陽電池に関するものである。
例えば、色素増感太陽電池における光電極を形成する際には、エアロゾルデポジション法が用いられる。エアロゾルデポジション法は、微粒子の粉体、特にナノサイズの粉体をガスで配管内を移送させ基材に吹き付けて付着させることで、衝撃硬化(impact consolidation)現象により低い温度条件と高い成膜速度で成膜するものである(例えば、特許文献1参照)。
上記エアロゾルデポジション法においては、基材に吹き付ける微粒子のサイズ、吹き付け速度が製膜特性における重要な制御要素となっている。そこで、特許文献2、3には、基材に微粒子を吹き付ける前段階で微粒子のサイズを整えるために、微粒子のサイズを分級する装置を設ける構成が示されている。
特開2011−100879号公報 特開平11−21677号公報 特開2001−348658号公報
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
上記エアロゾルデポジション法による粉体の移送時には、微粒子の分級後であっても、摩擦・衝突により粒子が帯電することで、微粒子の配管内への付着が生じやすい。一旦、配管内に付着した粉体粒子同士が凝集した後に、その微粒子の凝集物が配管から剥離して基材に付着した場合、粉体粒子の凝集物により製膜特性が変化してしまう。
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、凝集した粉体の微粒子に起因する製膜特性への悪影響を抑制可能な製膜方法及び該製膜方法で製造された製膜体、並びにその製膜体を備えた色素増感太陽電池を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様に従えば、粒径分布を有する粉体の微粒子をノズルから基材に吹き付けて多孔質膜を製膜する製膜方法であって、前記ノズルから前記微粒子を吹き出す吹出工程と、前記ノズルから吹き出された前記微粒子のうち特定の微粒子を選択して、前記基材に吹き付ける微粒子の粒径分布を調整する調整工程と、を有する製膜方法が提供される。
本発明の第2の態様に従えば、第1の態様の製膜方法において、前記調整工程では、密度に応じて前記微粒子を選択する製膜方法が提供される。
本発明の第3の態様に従えば、第2の態様の製膜方法において、前記ノズルと前記基材との間における前記ノズルと対向する位置にスリットを有する板状のスリット部材を設け、選択する微粒子に応じて、前記スリットの大きさ及び前記スリットの前記ノズルからの距離を設定する製膜方法が提供される。
本発明の第4の態様に従えば、第3の態様の製膜方法において、前記スリット部材を、前記スリットから離間するのに従って、前記微粒子の吹出方向の下流側に漸次傾くように傾斜して配置する製膜方法が提供される。
本発明の第5の態様に従えば、第3または第4の態様の製膜方法において、前記スリット部材を、前記微粒子の吹出方向に間隔をあけて複数段設ける製膜方法が提供される。
本発明の第6の態様に従えば、第2から第5のいずれか一項の態様の製膜方法において、前記スリット部材を、前記微粒子の吹出方向に間隔をあけて複数段設ける製膜方法が提供される。
本発明の第7の態様に従えば、第6の態様の製膜方法において、前記小径粒子の第1の平均粒子径が、1nm〜200nmである製膜方法が提供される。
本発明の第8の態様に従えば、第6または第7の態様の製膜方法において、前記大径粒子の第2の平均粒子径が、0.2μm〜100μmである製膜方法が提供される。
本発明の第9の態様に従えば、第1から第8のいずれか一項の態様の製膜方法において、前記微粒子は、酸化物半導体の微粒子である製膜方法が提供される。
本発明の第10の態様に従えば、第1から第9のいずれか一項の態様の製膜方法において、前記基材は、有機フィルムである製膜方法が提供される。
本発明の第11の態様に従えば、第1から第10のいずれか一項の態様の製膜方法によって得られた製膜体が提供される。
本発明の第12の態様に従えば、第11の態様の製膜体において、前記大径粒子の含有率が、30体積%以下である製膜体が提供される。
本発明の第13の態様に従えば、第11または第12の態様の製膜体を備えた色素増感太陽電池が提供される。
本発明の製膜方法によれば、例えば配管内で凝集した微粒子がノズルから吹き出された場合でも、このような凝集した微粒子以外の微粒子を選択して基材に吹き付けることにより、凝集した粉体の微粒子等に起因して生じる製膜特性への悪影響を抑制して、所望の製膜特性をもって基材上に製膜することが可能になる。
また、本発明の製膜方法によれば、ノズルから吹き出された微粒子が密度に応じて異なる広がりを示すという現象に基づくことにより、密度に応じて容易に微粒子の選択を実施することができる。
さらに、本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
・凝集粒子を取り除いて製膜することができる。
・得られた膜は均質で、かつ、圧粉体のようにはなりにくく、緻密な膜が得られる。
・基材直前で凝集粒子を取り除く(分級)するため、それまでの配管を工夫する必要がなくなる(配管の制約がない)。
・ノズルの構成(スリット幅,スリット角度,スリット段数,スリット間距離 など)によって、どのような粒子を用いる場合でも簡便に対応可能である。
本実施形態を示す図であって、製膜装置10の概略構成図である。 ノズル14及びスリット部材40を示す外観斜視図である。 ノズル14から吹き出された粉体の微粒子について、Y方向の位置と、基板21の表面21aにおける分布との関係を示す図である。
以下、本発明の製膜方法及び製膜体並びに色素増感太陽電池の実施の形態を、図1ないし図3を参照して説明する。
ここでは、本発明に係る製膜方法を、例えば、基材の一方の面に原料粒子を高速で吹き付けることにより、基材の一方の面に光電極等の膜を形成するエアロゾルデポジション法(AD法)を用いた製膜方法に適用する場合について説明する。
図1は、本発明の製膜方法を実施するために用いられる製膜装置10の概略構成図である。
製膜装置10は、基材21を収容して、その一方の面21aに多孔質膜を形成するための製膜室11を備えている。製膜室11内には、基材21を配置するための配置面12aを有するステージ12が設けられている。ステージ12は、基材21を配置した状態で水平方向に移動可能となっている。製膜室11には、真空ポンプ13が接続されている。この真空ポンプ13により、製膜室11内が陰圧にされる。
また、製膜室11内には、長方形の開口部14aを持つノズル14が配設されている。ノズル14は、その開口部14aがステージ12の配置面12a、すなわち、ステージ12の面12a上に配置された基材21の一方の面21aと対向するように配設されている。なお、以下の説明では、開口部14aの長さ方向(延在方向)をX方向とし、載置面12aと平行でX方向と直交する方向をY方向とし、微粒子の基材21への吹付方向をZ方向として説明する。
ノズル14は、輸送管(管体)15を介して、ガスボンベ16と接続されている。
輸送管15の中途には、ガスボンベ16側から順に、マスフロー制御器17、エアロゾル発生器18、解砕器19および分級器20が設けられている。これら、輸送管15、ガスボンベ16、マスフロー制御器17、エアロゾル発生器18、解砕器19および分級器20によって粉体輸送装置が構成される。
製膜装置10では、例えば、輸送ガスであるヘリウムを、ガスボンベ16から輸送管15へ供給し、そのヘリウムの流速をマスフロー制御器17で調整する。エアロゾル発生器18に吹き付け用の粉体の原料粒子を装填し、輸送管15中を流れるヘリウムに原料粒子を分散させて、原料粒子を解砕器19および分級器20へ搬送する。そして、ノズル14から、原料粒子31が亜音速〜超音速の噴射速度で、基材21の一方の面21aに噴射される。
また、本実施形態における製膜装置10には、ノズル14から吹き出された微粒子のうち、特定の微粒子を選択して、基材21に吹き付ける粒径分布を調整するための調整装置として、板状のスリット部材40が設けられている。図2は、ノズル14及びスリット部材40を示す外観斜視図である。この図に示すように、スリット部材40は、ノズル14の+Z側に開口部14aと対向配置されたスリット41を挟んだY方向の両側に対をなしてそれぞれ配置されている。また、スリット部材40は、微粒子の吹付方向(吹出方向)であるZ方向に所定間隔をあけて複数段(本実施形態では3段)設けられている。これらスリット部材40は、例えばノズル14に一体的に固定されている。なお、以下の説明では、ノズル14側からスリット41A〜41Cを有するスリット部材40A〜40Cとし、適宜代表的にスリット41及びスリット部材40と称する。
スリット41のY方向の幅Wは、開口部14aの幅と略同一に設定されている。また、各スリット部材40は、スリット41からY方向に離間するのに従って、微粒子の吹出方向の下流側である+Z側に向かう方向に漸次傾くように角度θで傾斜して配置されている。また、開口部14aからスリット41A(スリット部材40A)までの距離P1、及び隣り合うスリット部材40Aと40Bの間の距離P2、40Bと40Cとの間の距離P3は、スリット41の幅W、角度θと同様に、基材21に吹き付けるために選択する微粒子の種類に応じて適宜設定される。
続いて、上記の製膜装置10を用いて、一例として色素増感太陽電池(以下、単に太陽電池と称する)の光電極を形成する方法について説明する。
本実施形態の製膜方法は、無機物質の微粒子を基材21に吹き付けて、基材21と微粒子とを接合させると共に、微粒子同士を接合させることによって、基材21上に無機物質の多孔質膜を製膜するものである。
前記無機物質としては、例えばPt、Ag、Auなどの金属粒子、Si、 CdS、CdSe、CdTe、PbS、PbSe、ZnO、TiOIn, SnO、BaTiOなどの半導体粒子、及び公知の複合無機粒子等が挙げられる。
また、無機物質としては、電子伝導性及び色素の担持性により優れた酸化物半導体が好ましい。前記酸化物半導体としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)等が挙げられる。これらの中でも、多孔質膜を形成した時に電子伝導性に優れる酸化チタンが好ましい。
本発明にかかる製膜体を構成する多孔質膜は、いわゆる圧粉体とは異なり、圧粉体よりも強度が強く、圧粉体よりも基材から剥離し難いものである。
使用する酸化チタン粒子として、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン又は非晶質の酸化チタンを用いても良い。
前記微粒子は、平均粒子径r<0.2μmの小径粒子、及び平均粒子径R≧0.2μmの大径粒子からなる混合粒子であり、前記小径粒子の平均粒子径rと前記大径粒子の平均粒子径Rとの相対比(r/R)が、
(1/1000)≦(r/R)≦(1/5)の関係を満たすことが好ましい。
前記相対比が前記関係を満たすことによって、前記多孔質膜を構成する微粒子のうち、小径粒子及び/又は小径粒子が砕けた粒子の占める割合を、50体積%以上にすることができる。前記相対比の範囲を好適な範囲に設定し、又は前記混合粒子の混合比を好適な範囲に調整することによって、前記割合をさらに高められる。言い換えると、基材上に製膜する多孔質膜中の大径粒子及び/又は大径粒子が砕けた粒子の含有率を、50体積%未満にすることができ、好ましくは40体積%以下にすることができ、更に好ましくは30体積%以下にすることができる。これは、前記相対比の範囲を好適な範囲に設定し、又は前記混合粒子の混合比を好適な範囲に調整することによって、製膜時に基材へ吹き付けられた大径粒子が多孔質膜を形成せずに、前記衝突後に外へ弾かれるためだと考えられる。
前記多孔質膜中の大径粒子及び大径粒子が砕けた粒子の含有率を少なくするほど、当該多孔質膜を構成する微粒子の粒径を揃えることができ、当該多孔質膜の強度及び電子伝導性を高められるので、好ましい。
また、前記相対比が前記関係を満たす場合には、小径粒子の平均粒子径rと大径粒子の平均粒子径Rとの差がより明確となる。小径粒子と大径粒子とが同じ無機物質(例えば酸化チタン)からなる場合、平均粒子径の差がより明確になることは、小径粒子の個々の粒子と大径粒子の個々の粒子との重量の差がより明確になることを意味する。
本実施形態において、前記重量の差をより明確にすることによって、前記重量の差を考慮した吹き付け条件の設定をより容易に行えるので好ましい。例えば、前記重量の差が比較的大きい場合であると、前記混合粒子を基材に吹き付けて製膜する際、小径粒子同士の衝突エネルギーよりも、大径粒子が小径粒子へ与える衝突エネルギーを格段に大きくすることができる。すなわち、製膜過程において、前記基材又は隣接する別の粒子の上に到達した小径粒子に対して、吹き付けられた大径粒子が衝突することによって、衝突された前記小径粒子が前記基材又は前記隣接する別の粒子に押し付けられて若しくは擦り付けられて、前記小径粒子と前記基材、又は前記小径粒子と前記隣接する別の粒子へ、より確実に接合できる。
しかし、前記重量の差が極端に大きいと、衝突された小径粒子が粉々に砕けてしまい、多孔質膜を形成することが困難になる場合がある。また、前記重量の差が極端に小さいと、小径粒子が前記基材又は前記隣接する別の粒子に接合する際の、大径粒子が前記小径粒子に衝突して与えるエネルギーが寄与する程度は、相対的に小さくなってしまう。この場合、吹き付けられた小径粒子が本来有する運動エネルギーによって、前記基材又は隣接する別の粒子に衝突して接合するメカニズムが優勢に働く。
前記相対比(r/R)が前記関係を満たすものとすることによって、前記重量の差を適切な範囲とすることができ、強度及び電子伝導性が一層優れた多孔質膜を前記基材上に製膜できる。
前記小径粒子の平均粒子径(第1の平均粒子径)rは0.2μm未満であり、且つ上記関係を満たせば特に制限されない。例えば1nm以上200nm未満が好ましく、1nm以上100nm以下がより好ましく、1nm以上50nm以下が更に好ましい。前記アナターゼ型酸化チタンを前記小径微粒子として使用する場合の好適な平均粒子径rも上記範囲と同様である。
上記範囲の下限値以上であることにより、色素(増感色素)をより多く担持でき、電解液がより拡散しやすい空隙が前記多孔質膜に形成されやすい。
上記範囲の上限が好ましくは0.2μm未満、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下であることにより、前記小径粒子同士で接合した状態となりやすい。
この結果、当該多孔質膜の電子伝導性及び強度が一層向上しうる。
前記大径粒子の平均粒子径(第2の平均粒子径)Rは0.2μm以上であり、且つ上記関係を満たせば特に制限されない。例えば0.2μm以上100μm以下が好ましく、1μm以上50μm以下がより好ましく、1μm以上10μm以下が更に好ましく、1μm以上5μm以下が特に好ましい。前記ルチル型酸化チタンを前記大径微粒子として使用する場合の好適な平均粒子径Rも上記範囲と同様である。
上記範囲の下限値以上であることにより、前記混合粒子を基材に吹き付ける際の、大径粒子が小径粒子に衝突するエネルギーをより大きくすることができる。この結果、前記吹き付けによる製膜において、小径粒子同士の接合、小径粒子と基材との接合、又は小径粒子と大径粒子との接合をより確実に行える。この結果、当該多孔質膜の電子伝導性及び強度が一層向上しうる。
上記範囲の上限値以下であることにより、製膜時に前記基材上に形成されつつある多孔質膜を、大径粒子が削り取ってしまうことを防止できる。これにより、前記吹き付けによって着実に製膜を進行させられるので、製膜スピードを速めることができる。また、前記小径粒子同士で接合した状態となりやすい。
前記小径粒子の平均粒子径rは、複数の小径粒子を電子顕微鏡で観察して測定した粒子径の平均値として求められる。この場合、測定する小径粒子の個数は多いほど好ましいが、例えば10〜50個を測定して、その平均を求めれば良い。或いは、レーザー回折式粒度分布測定装置の測定により得られた粒子径(体積平均径)分布のピーク値として決定する方法も挙げられる。
前記大径粒子の平均粒子径Rは、前記小径粒子の平均粒子径rと同じ測定方法で求められる。
前記混合粒子において、小径粒子:大径粒子の混合比が、0.1重量部:99.9重量部〜50重量部:50重量部であることが好ましく、0.5重量部:99.5重量部〜25重量部:75重量部であることがより好ましく、1重量部:99重量部〜20重量部:80重量部であることが更に好ましい。
上記範囲であると、基材上において、小径粒子に対して大径粒子をより確実に衝突させることができる。この結果、基材上に製膜される多孔質膜の強度及び電子伝導性を一層高められる。
次に、製膜方法の詳細について説明する。
まず、製膜室11内のステージ12の配置面12aに、基材21を配置する。
基材21としては、特に制限されず、例えば、太陽電池の光電極に使用される透明基材が挙げられる。透明基材としては、例えば、ガラスやプラスチックからなる基板又はフィルムが挙げられる。また、基材21の材料であるガラスとしては、ソーダライムガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、バイコールガラス、無アルカリガラス、青板ガラス及び白板ガラス等の一般的なガラスが挙げられる。
基材21の材料であるプラスチックとしては、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリアミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(PET)は、透明耐熱フィルムとして大量に生産及び使用されている。薄く、軽く、かつフレキシブルな色素増感太陽電池を製造する観点からは、基材21としてはPETフィルムが好ましい。
次いで、真空ポンプ13を作動させて、製膜室11内を真空にする。
次いで、輸送管15を介して、ガスボンベ16から製膜室11内にヘリウムを供給し、製膜室11内をヘリウム雰囲気とする。
次いで、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化インジウム/酸化亜鉛(IZO)、酸化ガリウム/酸化亜鉛(GZO)などの原料粒子を用い、AD法により、基材21の一方の面21aに導電材からなる透明導電層を形成する。
具体的には、透明導電層を形成するには、エアロゾル発生器18に装填されている上記の原料粒子を、輸送管15中を流れるヘリウムに分散させて、解砕器19および分級器20へ搬送する。そして、ノズル14の開口部14aから、基材21の一方の面21aに、原料粒子を吹き付ける。
基材21表面に衝突した微粒子は、少なくともその一部が基材21表面に食い込んで、容易には剥離しない状態となる。また、この衝突により、基材21表面と微粒子表面に新生面が形成されて、主にこの新生面において、基材と微粒子とが接合する。続いて、さらに吹き付けを継続することにより、基材21表面に食い込んだ微粒子に対して、別の微粒子が衝突する。微粒子同士の衝突によって、互いの微粒子表面に新生面が形成されて、主にこの新生面において微粒子同士が接合する。この微粒子同士の衝突においては、微粒子が溶融するような温度上昇は発生し難いため、微粒子同士が接合した界面には、ガラス質からなる粒界層は実質的に存在しない。微粒子の吹き付けを継続することによって、次第に、基材21表面に多数の微粒子が接合してなる薄膜が形成される。形成された薄膜は、色素増感太陽電池(DSSC)の透明導電層として充分な強度を有するので、焼成による焼き締めを必要としない。
次いで、基材21の一方の面21aに形成された透明導電層上に、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)などの金属酸化物からなる光電変換層を形成する。光電変換層を形成するには、エアロゾル発生器18に、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズなどの金属酸化物からなる原料粒子を装填し、その原料粒子を、輸送管15中を流れるヘリウムに分散させて、解砕器19および分級器20へ搬送する。そして、ノズル14の開口部14aから、基材21の一方の面21aに形成された透明導電層の表面(透明導電層の基材21と接している面とは反対側の面)に、原料粒子を吹き付ける。
本実施形態では、基材21の一方の面21aに形成された透明導電層の表面に、TiO粒子を高速で吹き付けて、透明導電層とTiO粒子とを接合させると共に、TiO粒子同士を接合させることによって、透明導電層上にTiO粒子からなる薄膜を形成する。
図3は、ノズル14から吹き出された粉体の微粒子について、Y方向の位置と、基板21の表面21aにおける分布との関係を示す図である。
ノズル14から吹き出された粒子のうち、エアロゾル化した粒子は、凝集していない場合は、あまり広がりを持たず、図3に分布BNとして示すように、直線的に吹き出す。また、粒子が凝集すると、ガス流の広がりや空気抵抗の影響を受けやすいことから広い分布BSとなる。そこで、このような分布の差を利用して、広がった分布の分の凝集粒子を上記スリット41によって取り除くことによって、凝集粒子の少ないエアロゾルを、基板21の直前で得ることができる。この粒子を用いることで、製膜に凝集粒子の関与を取り除くことができ、製膜のバラツキを抑制することができる。また、凝集粒子が膜中に取り込まれることを抑制できるため、均質で密度が高い膜を製膜することが可能である。なお、スリット41の幅や角度θは、粒子径や粒子噴出量など、粒子の状態に併せて調整することが可能である。
また、基材21の表面21aへの衝突エネルギーが小さく緻密性に劣る凝集粒子の基板21への到達がスリット部材40によって遮られ抑制されていることから、凝集粒子は製膜に関与することなく、製膜に対する凝集粒子の関与による製膜精度の低下を抑制することができる。その結果、本実施形態で製膜された製膜体は、基材21への到達が抑制された凝集粒子、及び反跳する大径粒子は、実質的に製膜体を構成せず、主として小径粒子によって形成された多孔質膜となる。
この多孔質膜は、色素増感太陽電池の色素を担持できる空隙(空孔又は細孔とも呼ばれる)を有する多孔質膜である。
前記多孔質膜の空隙率(空孔率、細孔率又は多孔度とも呼ばれる)は、50%以上が好ましく、50〜85%がより好ましく、50〜80%が更に好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、色素をより多く担持することができる。上記範囲の上限値以下であると多孔質膜の強度をより強固にすることができる。
本明細書および特許請求の範囲において、空隙率とは「製膜した薄膜の単位体積あたりの空隙の体積が占める百分率」を意味する。この空隙率は、空隙率=嵩比重/真比重×100(%)によって算出される。なお、嵩比重は、多孔質膜の単位体積あたりの質量を単位体積あたりの無機物質の粒子の質量(理論値)で除したものであり、真比重は、無機物質の粒子の比重(理論値)を意味する。また、前記空隙率は、微細構造特性の分析法として公知のガス吸着試験又は水銀圧入試験によって測定することができる。
前記多孔質膜は前記基材の上に製膜されたものであり、前記多孔質膜の厚さは、1μm〜200μmであることが好ましく、2μm〜100μmであることが好ましく、5μm〜50μmであることが更に好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記多孔質膜に担持させた色素が光エネルギーを吸収する確率を一層高めることができ、色素増感太陽電池における光電変換効率を一層向上できる。また、上記範囲の上限値以下であると、バルクの電解質(太陽電池セル内の電解質)と多孔質膜内の電解質との交換が、拡散によって一層効率よく行われ、光電変換効率を一層向上できる。
(実施例)
ノズル14から基板21までの距離を30mm、ノズル14からスリット部材40Aまでの距離P1を7mm、スリット部材40A〜40B間の距離P2及びスリット部材40B〜40C間の距離P3を7mm、スリット部材40A〜40Bの傾斜角度θ及びスリット部材40B〜40Cの傾斜角度θを45°、ノズル14の開口部14a及びスリット41A〜41Cの幅Wを0.4mmとし、微粒子吹付条件として、原料粉体を大径粒子としてルチル型酸化チタン粒子(ルチル化率95%、平均粒子径2.31μm、純度99.9%、三津和化学社製)を使用し、小径粒子としてアナターゼ型酸化チタン粒子(型番=P25、ルチル化率30%、平均粒子約30nm、日本アエロジル社製)を使用し、製膜室11内の気圧100Pa、ガス供給量1l/min、開口部14aの長さ10mm、基板21の掃引速度30cm/minで微粒子の吹き付けの製膜処理を実施した。また、比較例として上記スリット部材40A〜40Cを用いずに製膜処理を実施した。
製膜により得られた膜の色素吸着量測定を実施した。
色素吸着量測定は以下のようにおこなった。
[実施例]、および[比較例]で製膜したガラス基板を、0.3mMに調製した色素(N719、ソラロニクス社製)のアルコール溶液に、室温で24時間浸漬した。浸漬後、ガラス基板を0.5Mの水酸化カリウム水溶液に浸漬し、吸着した色素を溶出させた。
色素の溶出した水酸化カリウム水溶液の吸光度を分光光度計(日立ハイテクノロジーズ製:U−4100)で測定し、色素の吸光係数から溶出した色素濃度,すなわち吸着した色素量を算出した。
[実施例]で得られた膜,および[比較例]で得られた膜の色素吸着量(単位面積,単位厚みあたり)は以下のようである。
[実施例]; 4.86E−9 mol/cm・μm
[比較例]; 3.64E−9 mol/cm・μm
このように、スリット41を取り付けて製膜した膜は、取り付けていない場合に比べて色素吸着量が1.34倍となった。この結果から、スリットを取り付けることによって、凝集粒子の影響を取り除いた緻密な膜ができていることがわかった。
以上説明したように、本実施形態では、凝集粒子を排除することで選択した微粒子を基板21に吹き付けて製膜処理を実施するため、凝集粒子に起因して生じる製膜特性への悪影響を抑制することが可能になり、凝集粒子や大径粒子が取り込まれておらず緻密性を有する多孔質の製膜体を効果的に製膜することができる。特に、本実施形態では、ノズル14と基板21との間に配置した板状のスリット部材40により凝集粒子を排除するため、ノズル14からの吹出し前に配管内で凝集粒子が生じた場合でも、簡単な構成で効率的に凝集粒子を排除できる。さらに、本実施形態では、スリット部材40をXY平面に対して傾斜して配置しているため、スリット部材40上への膜付着を抑制することができ、長時間の製膜処理が実現可能となる。
なお、上記の製膜体を構成する多孔質膜に対して色素を吸着させて、色素増感太陽電池用の光電極を得る方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
まず、後述する色素を溶剤に溶かし、さらにテトラブチルアンモニウムカチオン(以下、TBAということがある)を添加して色素溶液を調製する。この色素溶液に前記製膜体を浸漬して、前記多孔質膜に色素及びTBAを吸着させることによって、前記製膜体を光電極とすることができる。
前記色素は特に限定されるものではなく、一般に色素増感太陽電池に使用されている増感色素を用いることができる。前記色素としては、シス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)(以下、N3ということがある)、N3のビス−TBA塩(以下、N719ということがある)、トリ(チオシアナト)−(4,4’,4”−トリカルボキシ−2,2’:6’,2”−ターピリジン)ルテニウムのトリス−テトラブチルアンモニウム塩(ブラックダイと呼ばれる)などのルテニウム色素系等が挙げられる。また、前記色素としては、クマリン系、ポリエン系、シアニン系、ヘミシアニン系、チオフェン系、インドリン系、キサンテン系、カルバゾール系、ペリレン系、ポルフィリン系、フタロシアニン系、メロシアニン系、カテコール系及びスクアリリウム系等の各種有機色素等が挙げられる。さらに、これらの色素を組み合わせたドナー−アクセプター複合色素等も前記色素として用いられる。
前記色素溶液を調製するために用いる溶剤としては、アルコール、ニトリル、エーテル、エステル、ケトン、炭化水素、ハロゲン化炭化水素等の各種溶剤の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。
前記アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコールなどが挙げられる。
前記ニトリルとしては、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが挙げられる。
前記エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
前記エステルとしては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
前記ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチレン、クロロホルムなどが挙げられる。
前記色素としてN3又はN719を用いる場合、色素溶液を調製するための溶剤としては、例えば、t−ブチルアルコール(t−BuOH)とアセトニトリル(MeCN)との混合溶剤を用いることが好ましい。
前記色素溶液に添加されるTBAカチオンは、水酸化TBA又はTBA塩を、適当な溶剤に溶解又は分散させた状態で、前記色素溶液に添加することが好ましい。
前記TBA塩としては、臭化TBA(TBAB)、ヨウ化TBA(TBAI)などが挙げられる。
前記色素溶液に添加されるTBAカチオンの量は、色素溶液に含まれる色素のモル当たり、0.1〜3.0当量の範囲が好ましく、0.3〜2.5当量の範囲がより好ましく、0.5〜1.5当量の範囲がさらに好ましい。TBAカチオンの添加量が0.1当量未満であると、TBAカチオンの添加効果が不十分であり、光電変換効率がTBAカチオン無添加の場合と同様になってしまう。TBAカチオンの添加量が3.0当量を超えると、TBAカチオンの添加効果が頭打ちになり好ましくない。
前記色素溶液において、前記色素の濃度は特に限定されないが、通常は0.05〜1.0mMの範囲が好ましく、0.1〜0.5mMの範囲がより好ましい。
前記色素溶液に前記製膜体を浸漬する方法は、特に限定されず、容器に入れた色素溶液中に製膜体を浸漬し、一定温度で一定時間保持し、その後、製膜体を引き上げる方法が挙げられる。また、色素溶液中に製膜体を移動させながら連続的に投入、浸漬及び引き上げを行う方法なども挙げられる。
浸漬時の色素溶液の温度は特に限定されない。該温度は10〜90℃であることが好ましい。浸漬時間は、30分〜50時間であることが好ましい。浸漬温度と浸漬時間との組み合わせは、用いる色素と多孔質膜を構成する無機物質の種類の組合せに応じて設定すればよい。
浸漬後に製膜体を前記色素溶液から引き上げて、必要に応じてアルコールで余分な色素を洗浄し、乾燥させる。
以上の操作によって、本発明にかかる製膜体を構成する多孔質膜に、前記色素及びTBAを吸着させた、色素増感太陽電池用の光電極が得られる。
本発明の色素増感太陽電池は、前記製膜体又は前記製膜体からなる光電極を備えたものである。前記光電極以外の部材は、公知の色素増感太陽電池に使用される、対極、セパレータ、及び電解質(電解液)等を使用できる。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態では、スリット部材40をZ方向に3段設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、1段〜2段であっても4段以上であってもよい。ただし、段数を多くした場合には、微粒子の分布幅をより狭めることができ分級効果を高めることが可能な一方で、基板21に到達する微粒子が減少して製膜速度が低下するため、製膜特性と製膜速度とに基づいて最適な段数を設定することが好ましい。これは、ノズル14の開口部14aの幅Wについても同様である。
また、上記実施形態では、二つのスリット部材40の間の隙間にスリット41が形成される構成としたが、これに限られず、例えば一つの板状部材に対して形成された貫通孔をスリットとする構成であってもよい。
14…ノズル、 21…基材、 40、40A〜40C…スリット部材、 41、41A〜41C…スリット

Claims (13)

  1. 粒径分布を有する粉体の微粒子をノズルから基材に吹き付けて多孔質膜を製膜する製膜方法であって、
    前記ノズルから前記微粒子を吹き出す吹出工程と、
    前記ノズルから吹き出された前記微粒子のうち特定の微粒子を選択して、前記基材に吹き付ける微粒子の粒径分布を調整する調整工程と、
    を有することを特徴とする製膜方法。
  2. 請求項1記載の製膜方法において、
    前記調整工程では、密度に応じて前記微粒子を選択することを特徴とする製膜方法。
  3. 請求項2記載の製膜方法において、
    前記ノズルと前記基材との間における前記ノズルと対向する位置にスリットを有する板状のスリット部材を設け、
    選択する微粒子に応じて、前記スリットの大きさ及び前記スリットの前記ノズルからの距離を設定することを特徴とする製膜方法。
  4. 請求項3記載の製膜方法において、
    前記スリット部材を、前記スリットから離間するのに従って、前記微粒子の吹出方向の下流側に漸次傾くように傾斜して配置することを特徴とする製膜方法。
  5. 請求項3または4記載の製膜方法において、
    前記スリット部材を、前記微粒子の吹出方向に間隔をあけて複数段設けることを特徴とする製膜方法。
  6. 請求項2から5のいずれか一項に記載の製膜方法において、
    前記微粒子は、第1の平均粒子径を有する小径粒子と、前記第1の平均粒子径よりも大きな第2の平均粒子径を有する大径粒子からなる混合粒子であり、
    前記調整工程では、凝集した前記小径粒子を非選択とすることを特徴とする製膜方法。
  7. 請求項6記載の製膜方法において、
    前記小径粒子の第1の平均粒子径が、1nm〜200nmであることを特徴とする製膜方法。
  8. 請求項6または7記載の製膜方法において、
    前記大径粒子の第2の平均粒子径が、0.2μm〜100μmであることを特徴とする製膜方法。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載の製膜方法において、
    前記微粒子は、酸化物半導体の微粒子であることを特徴とする製膜方法。
  10. 請求項1から9のいずれか一項に記載の製膜方法において、
    前記基材は、有機フィルムであることを特徴とする製膜方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の製膜方法によって得られたことを特徴とする製膜体。
  12. 請求項11記載の製膜体において、
    前記大径粒子の含有率が、30体積%以下であることを特徴とする製膜体。
  13. 請求項11または12記載の製膜体を備えたことを特徴とする色素増感太陽電池。
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