JP6641167B2 - 被覆半導体粒子の製造方法、半導体膜の製造方法、積層体の製造方法、電極の製造方法、及び色素増感太陽電池の製造方法 - Google Patents
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特許文献1には、酸化チタン粒子のスラリーを用いて、150℃以下の加熱によって、フィルム基材上にTiO2電極を形成する方法が開示されている。前記スラリーには酸化チタン粒子同士を結着させる少量の高分子バインダーが含まれている。高分子バインダーは絶縁体であり、低温加熱では焼失しないため、TiO2層に残ってしまう。このため、高分子バインダーの量を少なくすることによって、TiO2電極の電子伝導性の向上を図っている。しかしながら、150℃以下の低温の加熱ではTiO2粒子同士のネッキング(接合)が悪く、TiO2電極の電子伝導性は不十分であり、発電効率は依然として低い。
[2] 前記金属含有物質が金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物である、上記[1]に記載の被覆半導体粒子の製造方法。
[3] 上記[1]又は[2]に記載された製造方法によって被覆半導体粒子を得て、基材の表面に前記被覆半導体粒子の薄膜を成膜する、半導体膜の製造方法。
[4] 前記薄膜を成膜する方法が、前記基材の表面に前記被覆半導体粒子を吹き付けて成膜するエアロゾルデポジション法である、上記[3]に記載の半導体膜の製造方法。
[5] 前記薄膜を成膜する方法が、前記基材の表面に前記被覆半導体粒子を含むスラリーを塗布して乾燥させる方法である、上記[3]に記載の半導体膜の製造方法。
[6] 前記スラリーに高分子バインダーが含まれている場合、前記被覆半導体粒子100質量部に対して、前記高分子バインダーの含有量は5質量部以下である、上記[5]に記載の半導体膜の製造方法。
[7] 前記スラリーに高分子バインダーが含まれていない、上記[5]に記載の半導体膜の製造方法。
[8] 半導体粒子の表面に金属含有物質の焼成物からなる被覆層が形成された被覆半導体粒子。
[9] 基材と、前記基材の表面に成膜された薄膜と、を備え、前記薄膜は上記[8]に記載の被覆半導体粒子によって形成されている、積層体。
[10] 上記[9]に記載の積層体によって形成された電極。
[11] 上記[10]に記載の電極が有する前記薄膜に、増感色素が担持されてなる光電極を備えた、色素増感太陽電池。
本発明の半導体膜の製造方法によれば、粒子同士が充分に接合し、電子伝導性に優れた被覆半導体粒子からなる薄膜を比較的低温で成膜することができる。
本発明の被覆半導体粒子、積層体及び電極は、発電効率に優れた色素増感太陽電池の材料として有用である。
本発明の第一態様は、半導体粒子の表面が金属含有物質によって覆われてなる被覆体を焼成し、前記表面に前記金属含有物質の焼成物からなる被覆層が形成された被覆半導体粒子を得る、被覆半導体粒子の製造方法である。
前記金属アルコキシドとしては、例えば、チタン(IV)、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム等のアルコキシドが挙げられる。なかでも、化学式:M(O−i−Pr)mで表される金属アルコキシド(金属イソプロポキシド)が好ましい。前記化学式中、Mは、チタン、アルミ、マグネシウム又はジルコニウムを表し、mは当該金属の価数に対応する数を表し、「−i−Pr」はイソプロピル基を表す。金属アルコキシドの少なくとも一部は、焼成後に金属酸化物になる。金属酸化物としては、例えば、TiO2、Al2O3、MgO等が挙げられる。
前記金属ハロゲン化物としては、例えば、四塩化チタン(IV)、塩化マグネシウム(II)、塩化アルミニウム、四塩化ジルコニウム等が挙げられる。
前記半導体粒子を構成する半導体の種類は、バンドギャップ間の遷移が生じる半導体が好ましく、例えば、TiO2,TiSrO3,BaTiO3,Nb2O5,MgO,ZnO,WO3,Bi2O3,CdS,CdSe,CdTe,In2O3,SnO2などが挙げられる。これらの半導体は、色素吸着が良好であり、増感色素を担持した光電極として良好に機能するため好ましい。光電変換効率を向上させる観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化第二錫などの金属酸化物半導体が好適である。
前記半導体粒子は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
被覆半導体粒子を吹き付けるAD法によって成膜する場合には、優れた比表面積、電子伝導性を得る観点から、前記半導体粒子の平均一次粒子径は、10nm〜500nmが好ましく、10nm〜200nmがより好ましい。
被覆半導体粒子を基材表面に塗布し、乾燥又は加熱して成膜する場合には、優れた比表面積、電子伝導性を得る観点から、前記半導体粒子の平均一次粒子径は、10nm〜500nmが好ましく、50nm〜500nmがより好ましい。
上記範囲であると、優れた電子伝導性を有する被覆半導体粒子が容易に得られる。
また、前記金属含有物質の厚さは、前記半導体粒子の平均一次粒子径の0.001〜10%程度の厚さが好ましく、0.01〜1%程度の厚さがより好ましい。
上記範囲であると、焼成後に形成される前記金属含有物質の焼成物からなる被覆層が、被覆半導体粒子同士の接合力を充分に高めることができる。
焼成後の被覆半導体粒子の被覆層を形成する前記金属酸化物は、半導体であってもよいし、絶縁体であってもよい。絶縁体である場合、後述する半導体膜の形成時に被覆半導体粒子の半導体部分が接合するため、半導体粒子同士の電気伝導性は損なわれない。また絶縁体層は数nm〜数十nm程度の厚みであれば、電子トンネル効果の影響によって絶縁体層から半導体層へスムーズに電子が流れる為、半導体粒子同士の電気伝導性は損なわれない。成膜された半導体膜において、粒子表面の被覆層によって被覆半導体粒子同士の接合性が向上するため、半導体膜の電気伝導性が向上する。
上記焼成の方法により、前記半導体粒子の表面に前記金属含有物質の焼成物からなる被覆層が形成された、被覆半導体粒子を得ることができる。
本発明の第二態様は、前記半導体粒子の表面に前記金属含有物質の焼成物からなる被覆層が形成された被覆半導体粒子であり、第一態様の製造方法によって製造されたものである。
前記焼成物からなる被覆層の厚さとしては、例えば、0.1nm〜0.1μm程度の厚さが挙げられる。
また、前記被覆層の厚さは、前記被覆半導体粒子の平均粒子径の0.001〜10%程度の厚さが好ましく、0.01〜1%程度の厚さがより好ましい。
上記範囲であると、前記被覆層が、当該被覆半導体粒子同士の接合力を充分に高めることができる。
前記半導体粒子及び前記被覆半導体粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡のSEM写真によって複数の粒子の長径(直径)を測定して平均した値である。平均を算出する際の測定粒子数は多いほど好ましいが、例えば30〜100個が挙げられる。
本発明の第三態様は、第一態様の製造方法によって得られた被覆半導体粒子を用いて、基材の表面に前記被覆半導体粒子の薄膜を成膜する、半導体膜の製造方法である。
色素増感太陽電池等の電気化学デバイスの部材として半導体膜を製造する場合には、上記で例示した基材のうち非導電性基材の表面には、ITO等の導電膜が予め形成されていることが好ましい。
基材がガラス基板である場合には、例えば、前記被覆半導体粒子、高分子バインダー及び分散媒を含むスラリーを基板表面に塗布し、従来の成膜法と同様に500℃程度の高温で焼成して成膜してもよい。
高分子バインダーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記スラリーは、前記被覆半導体粒子及び分散媒を含む。当該スラリーには、高分子バインダーは含まれないことが好ましい。高分子バインダーを含む場合、前記被覆半導体粒子100質量部に対して、高分子バインダーの含有量は5質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。本発明に係る前記被覆半導体粒子の表面には前記焼成物からなる被覆層が形成されているため、例えば100〜150℃という比較的低い温度で加熱して乾燥することによって、当該粒子同士を充分に接合し、電子伝導性に優れた半導体膜を形成することができる。
本発明におけるAD法は、前記被覆半導体粒子を基材に吹き付けることにより、前記基材上に半導体膜を成膜する方法である。AD法によれば、吹き付け速度を調整することにより、多孔質膜及び緻密膜(非多孔質膜)のどちらの膜質でも任意に形成することができる。
AD法による成膜方法としては、例えば、国際公開第WO2012/161161A1号に開示された方法が適用できる。以下、図1を参照して、AD法の具体例を説明する。
成膜装置60は、ガスボンベ55と、搬送管56と、ノズル52と、基台63と、成膜室51と、を備えている。ガスボンベ55には、被覆半導体粒子54を加速させて基材53に吹き付けるためのガス(搬送ガス)が充填されている。ガスボンベ55には、搬送管56の一端が接続されている。ガスボンベ55から供給される搬送ガスは搬送管56に供給される。
以上の工程により、基材53の成膜面71の上に被覆半導体粒子54からなる所定の膜厚の薄膜を成膜することができる。
本発明の第四態様は、基材と、前記基材の表面に成膜された薄膜と、を備え、前記薄膜は本発明の第二態様の被覆半導体粒子によって形成されている積層体である。
前記基材の表面に成膜された薄膜の膜構造は緻密膜であってもよいし、多孔質膜であってもよい。その膜厚は特に限定されず、例えば1μm〜500μm程度の厚みが挙げられる。
前記積層体の用途は、色素増感太陽電池用の電極に限られず、前記薄膜の物理的特性又は化学的特性を活かすことが可能な用途に広く適用できる。
本発明の第五態様は、第四態様の積層体によって形成された電極である。
前記積層体を構成する半導体膜に増感色素を吸着させることによって、色素増感太陽電池用の光電極として使用することができる。半導体膜は緻密膜であってもよいが、より多くの増感色素を吸着させる観点から、多孔質膜であることが好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、増感色素をより多く担持することができる。上記範囲の上限値以下であると多孔質膜の強度をより強固にすることができる。
空隙率の測定は、公知のガス吸着試験又は水銀圧入試験によって行うことができる。
上記範囲の下限値以上であると、多孔質膜に担持させた増感色素が光エネルギーを吸収する確率を一層高めることができ、色素増感太陽電池における光電変換効率を一層向上できる。また、上記範囲の上限値以下であると、バルクの電解質(太陽電池セル内の電解質)と多孔質膜内の電解質との交換が、拡散によって一層効率よく行われ、発電効率を一層向上できる。
本発明の第六態様は、第五態様の電極が有する前記薄膜に、増感色素が担持されてなる光電極を備えた、色素増感太陽電池である。
色素増感太陽電池は、光電極と、対向電極と、電解液又は電解質層とを備えている。電解液は、光電極と対向電極の間において封止材によって封止されている。
前記樹脂としては、可視光の透過性を有するものが好ましく、例えばポリアクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等が挙げられる。これらのうち、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが、透明耐熱フィルムとして好適であり、薄くて軽いフレキシブルな色素増感太陽電池を製造することができる。
前記固体電解質は、ゲル状又は固体状の何れかの状態である。ゲル状又は固体状の電解質層を用いることにより、色素増感太陽電池から電解液が漏出することがなくなる。
<被覆半導体粒子の製造>
イソプロピルアルコールに、金属含有物質であるチタン(IV)イソプロポキシドを10mMで溶解させた処理溶液を300g得た。この処理溶液に、半導体粒子として、平均一次粒子径が15nm、平均二次(凝集)粒子径が50μmのアナターゼ型TiO2粒子を10g浸漬させた。30分間浸漬した後、目開き20μmのメッシュを用いて処理溶液を濾過して、メッシュ上において風乾させることにより、金属含有物質によって表面が被覆された半導体粒子(被覆体)を得た。
次に、上記で得た被覆体をオーブン中で、500℃で30分間焼成することにより、上記金属含有物質の焼成物からなる被覆層が形成された被覆半導体粒子を得た。この被覆層の大部分は酸化チタンによって構成されていると考えられる。この被覆半導体粒子の平均一次粒子径を前述した方法で測定したところ、16〜17nmであった。
基材として、あらかじめITO(スズドープ酸化インジウム)がPEN基板に成膜されたITO−PEN基板を用いた。
図1に示す成膜装置60を使用して、成膜室51内において、10mm×0.5mmの長方形の開口部を持つノズル52からITO−PEN基板に対して前記被覆半導体粒子を吹き付けた。ノズル52における搬送速度は5mm/secとした。
上記のAD法により、被覆半導体粒子同士が互いに接合してなる、厚さ10μmの多孔質膜を成膜してなる積層体を得た。
金属含有物質として、アルミニウムイソプロポキシドを使用した以外は、実施例1と同様に多孔質膜を成膜してなる積層体を得た。
前記処理溶液に浸漬させず、前記焼成も行っていない、前記TiO2粒子を使用して、AD法により実施例1と同様に積層体を得た。
前記処理溶液に浸漬させずに、オーブン中で、500℃で30分間焼成して得られたTiO2粒子を使用して、AD法により実施例1と同様に積層体を得た。
実施例1〜2及び比較例1〜2の多孔質膜を備えた積層体(電極基板)を、0.3mMのRu錯体色素(N719)のアルコール溶液中に、室温で18時間浸漬させて、当該多孔質膜に色素を吸着させることにより、光電極基板を得た。
光電極基板と、白金コーティング付きガラス基板からなる対極基板とを対向配置し、この間にスペーサーとして厚み30μmの多孔性樹脂フィルムを挟んで、ダブルクリップで留めて圧着した。さらに、対極基板に予め空けておいた注入孔から、両基板の間に、電解液(30mMのI2、1Mの1,3−ジメチルプロピルイミダゾリウムヨージド、 0.5Mのtert‐ブチルピリジン、0.1Mのヨウ化リチウムを含むアセトニトリル溶液)を注入した後、注入孔を樹脂板で塞ぐことにより、色素増感太陽電池の簡易セルを作製した。受光する有効面積は0.16cm2であった。
得られた各試験例の簡易セルの発電効率(光電変換効率)等の性能を、ソーラーシミュレーター(AM1.5、100mW/cm2)を用いて評価した。その結果を表1に示す。
Claims (10)
- 半導体粒子の表面に、金属含有物質及び有機溶媒を含む溶液(但し、25℃では固体状態をとって、加熱により融解して極性を示す液体状態となり、そして加熱をさらに続けることにより熱分解する有機材料の融液に、上記金属含有物質の塩が溶解されたものを除く。)を接触させ、ゲル化を経ずに乾燥することにより、
前記半導体粒子の表面が前記金属含有物質によって覆われてなる被覆体を得て、
さらに前記被覆体を焼成することにより、
前記表面に前記金属含有物質の焼成物からなる被覆層が形成された被覆半導体粒子を得る、被覆半導体粒子の製造方法。 - 前記金属含有物質が金属アルコキシド又は金属ハロゲン化物である、請求項1に記載の被覆半導体粒子の製造方法。
- 請求項1又は2に記載された製造方法によって被覆半導体粒子を得て、基材の表面に前記被覆半導体粒子の薄膜を成膜する、半導体膜の製造方法。
- 前記薄膜を成膜する方法が、前記基材の表面に、亜音速から超音速の速度で前記被覆半導体粒子を吹き付けて成膜するエアロゾルデポジション法である、請求項3に記載の半導体膜の製造方法。
- 前記薄膜を成膜する方法が、前記基材の表面に前記被覆半導体粒子を含むスラリーを塗布して乾燥させる方法である、請求項3に記載の半導体膜の製造方法。
- 前記スラリーに高分子バインダーが含まれており、前記被覆半導体粒子100質量部に対して、前記高分子バインダーの含有量は5質量部以下である、請求項5に記載の半導体膜の製造方法。
- 前記スラリーに高分子バインダーが含まれていない、請求項5に記載の半導体膜の製造方法。
- 基材と、前記基材の表面に成膜された薄膜と、を備えた積層体の製造方法であって、
請求項1又は2に記載の製造方法によって被覆半導体粒子を得て、
前記被覆半導体粒子によって前記基材の表面に前記薄膜を形成することを含む、積層体の製造方法。 - 請求項8に記載の製造方法によって積層体を得て、
前記積層体を用いて電極を形成することを含む、電極の製造方法。 - 請求項9に記載の製造方法によって電極を得て、
前記電極が有する前記薄膜に増感色素を担持させることによって光電極を得ることを含む、色素増感太陽電池の製造方法。
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