JP4659955B2 - 色素増感型太陽電池セルおよびそれを用いた色素増感型太陽電池モジュール、およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色素増感型太陽電池セルおよびそれを用いた色素増感型太陽電池モジュール、およびそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
二酸化炭素が原因とされる地球温暖化が世界的に問題となっている近年、環境にやさしく、クリーンなエネルギー源として、太陽光エネルギーを利用した太陽電池が注目され、積極的に研究開発が進められている。このような太陽電池として、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池などが既に実用化されているが、より光電変換効率が高く、且つ、低コスト化の可能性のある太陽電池として、色素増感型太陽電池が新たに注目され研究開発されている。
【0003】
色素増感型太陽電池は、例えば、光の入射する側から、透明基板、透明電極層、発電層(発電層は、多孔質の酸化物半導体膜とその表面に担持された色素増感剤と電解質溶液とで構成される)、裏面電極層、裏面基板が順に積層されてセルが形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような色素増感型太陽電池セルは、実験室的には変換効率など性能に優れたセルを作製することができるが、各構成要素(材料)の高品質化と低コスト化、およびモジュール化を含めた製造方法など量産化技術などの点では、未だ多くの課題がある。例えば、前記透明基板や裏面基板についても、通常、ガラス板が用いられるが、その場合、光の透過性、耐久性、ガスバリヤー性などの性能面では優れているが、このガラス板を基材として、その上に各種の電池の構成要素をバッチ式で逐次加工して太陽電池を製造する必要があり、その作業性、生産性に劣るため、大量生産が困難であり、製造コストも上昇するなどの問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、光電変換効率が高く、且つ、生産性にも優れ、大量生産が容易であると共に、製造コストも低減することのできる色素増感型太陽電池セルおよびそれを用いた色素増感型太陽電池モジュール、およびそれらの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、以下の本発明により解決することができる。即ち、請求項1に記載した発明は、少なくとも、受光面側から、透明基板、透明電極層、発電層、裏面電極層、裏面基板が順に積層されてなる太陽電池セルにおいて、該発電層が、光拡散能の高い微粒子を含む多孔質の酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜に担持された色素増感剤と、該酸化物半導体膜に含浸された電解質とで形成され、且つ、該酸化物半導体膜における光拡散能の高い微粒子の含有量が1〜50重量%であり、前記光拡散能の高い微粒子が無機系又は有機系の中空ビーズであることを特徴とする色素増感型太陽電池セルからなる。
【0007】
上記酸化物半導体膜における光拡散能の高い微粒子の含有量は、1〜50重量%の範囲が好ましく、含有量が1重量%未満の場合は、充分な光拡散効果が得られず、光電変換効率の向上が得られないため好ましくない。また、含有量が50重量%を超える場合は、過剰であり、相対的に酸化物半導体膜中の酸化物微粒子の量が減るため、その表面積も減少し光電変換効率が低下するため好ましくない。
前記のような構成を採ることにより、発電層の酸化物半導体膜が前記微細な酸化物微粒子とそれに混合された光拡散能の高い微粒子とで形成されるので、高度の多孔質膜が形成され、内部の実表面積が大きくなると同時に、内部の表面にも色素増感剤が担持されるので、広い波長領域の光を有効に取り込んで光電変換でき、且つ、入射した光が光拡散能の高い微粒子により拡散され、光の利用効率が高められるため、色素増感型太陽電池セルの光電変換効率、即ち、発電効率を一層高くすることができる。
【0008】
このような構成を採ることにより、前記微粒子は、いずれもその形状、屈折率により、効果的に光を拡散することができるので、発電層に入射した光の利用効率が高められ、色素増感型太陽電池セルの光電変換効率を一層向上させることができる。
【0009】
請求項2に記載した発明は、前記請求項1に記載の色素増感型太陽電池セルが、複数個、平面状または曲面状に配列され、且つ直列に接続されてなる色素増感型太陽電池モジュールである。
【0010】
このような構成を採ることにより、前記請求項に記載した色素増感型太陽電池セルを有効に利用できるので、光電変換効率に優れ、且つ、所望の起電力を有する色素増感型太陽電池モジュールを生産性よく、低コストで製造することができる。
【0011】
請求項3に記載した発明は、少なくとも受光面側から、透明基板、透明電極層、発電層、裏面電極層、裏面基板が順に積層された積層体で形成され、且つ、該発電層が、粒子径0.1nm〜10μmの酸化物微粒子を焼成してなる酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜に担持された色素増感剤と、該酸化物半導体膜に含浸された電解質とで形成される色素増感型太陽電池セルの製造方法であって、
前記の粒子径0.1nm〜10μmの酸化物微粒子を焼成してなる酸化物半導体膜を、粒子径0.1nm〜10μmの酸化物微粒子と無機系又は有機系の中空ビーズからなる光拡散能の高い微粒子とを少なくともポリエチレングリコールを含む液に分散させて作製した酸化物微粒子ペーストを用いて形成することを特徴とする色素増感型太陽電池セルの製造方法からなる。
【0012】
上記酸化物微粒子の粒子径は、0.1nm〜10μmの範囲が好ましく、0.1〜10nmの範囲が更に好ましい。粒子径が0.1nm未満の微粒子は、製造自体が難しい上、粒子同士が凝集して二次粒子を作りやすくなるため好ましくない。また、粒子径が10μmを超える微粒子は、酸化物半導体膜の厚さを必要以上に厚くすると共に、光の透過性も低下させるため好ましくない。上記酸化物微粒子に混合される光拡散能の高い微粒子は、実際に使用する酸化物微粒子の粒子径よりは大きくてもよいが、その粒子径の範囲は、酸化物微粒子と同じ範囲であることが、同様な理由で好ましい。
【0013】
請求項4に記載した発明は、前記の酸化物微粒子ペーストを塗布し、100〜350℃で、10〜180分間、乾燥、焼成して酸化物半導体膜を形成することを特徴とする請求項3に記載の色素増感型太陽電池セルの製造方法からなる。
【0014】
請求項5に記載した発明は、前記の酸化物微粒子ペーストを塗布した後であって、100〜350℃で、10〜180分間、乾燥、焼成する前に、予備乾燥をすることを特徴とする請求項4に記載の色素増感型太陽電池セルの製造方法からなる。
【0015】
請求項6に記載した発明は、少なくとも発電層の色素増感剤が担持された酸化物半導体膜と裏面電極層と裏面基板との積層体を、
裏面基板として、ロール状に巻き上げられた長尺の耐熱性フレキシブルフィルムを用い、裏面基板の上に、巻き取り供給巻き上げ方式のパターンコーターを用いて、白金またはカーボンペーストをパターン状に塗布、乾燥して、裏面電極層を形成し、次いで、裏面電極層の上に、前記の酸化物微粒子ペーストを、パターン状に塗布、乾燥、焼成して酸化物半導体膜を形成し、更に、形成された酸化物半導体膜に、色素増感剤の溶液を、巻き取り供給巻き上げ方式のパターンコーター、または巻き取り供給巻き上げ方式の浸漬装置を用いて、塗布、または浸漬して含浸させた後、乾燥して、色素増感剤を担持させて、形成することを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の色素増感型太陽電池セルの製造方法からなる。
【0016】
上記酸化物微粒子は、アモルファスシリコンなどと比較して安価であるため、材料コストを低減することができる。更に、裏面基板には、ガラス板を用いてもよいが、ロール状に巻き上げられた長尺の耐熱性フィルムを用いることができ、それにより、少なくともその上の裏面電極層、および発電層の酸化物半導体膜とそれに担持させる色素増感剤を、巻き取り供給巻き上げ方式のパターンコーター、例えば、グラビアダイレクトコーター、ロータリースクリーン印刷機、或いは浸漬装置などを用いて、ロール・ツー・ロール方式で形成することができるので、生産性が著しく向上し、大量生産が容易になると同時に製造コストも低減することができる。
【0017】
このような製造方法を採ることにより、色素増感型太陽電池セルの各構成要素のうち、少なくとも色素増感剤が担持された酸化物半導体膜と裏面電極層と裏面基板との積層体を、裏面基板の長尺の耐熱性フレキシブルフィルムを基材として、その上に、裏面電極層と酸化物半導体膜とそれに担持させる色素増感剤とを、巻き取り供給巻き上げ方式のパターンコーター、または浸漬装置などを用いて加工し、製造することができるので、生産性が大幅に向上し、光電変換効率に優れた色素増感型太陽電池セルを低コストで大量生産することができる。
【0018】
請求項7に記載した発明は、少なくとも受光面側から、透明基板、透明電極層、発電層、裏面電極層、裏面基板が順に積層された積層体で形成され、且つ、該発電層が、粒子径0.1nm〜10μmの酸化物微粒子と無機系又は有機系の中空ビーズからなる光拡散能の高い微粒子とを少なくともポリエチレングリコールを含む液に分散させて作製した酸化物微粒子ペーストを用いて形成した酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜に担持された色素増感剤と、該酸化物半導体膜に含浸された電解質とで形成される色素増感型太陽電池セルが、複数個、平面状または曲面状に配列され、且つ直列に接続されてなる色素増感型太陽電池モジュールの製造方法であって、上記色素増感型太陽電池セルが、請求項3乃至6のいずれかに記載の色素増感型太陽電池セルの製造方法で製造することを特徴とする色素増感型太陽電池モジュールの製造方法である。
【0019】
請求項8に記載した発明は、少なくとも受光面側から、透明基板、透明電極層、発電層、裏面電極層、裏面基板が順に積層された積層体で形成され、且つ、該発電層が、粒子径0.1nm〜10μmの酸化物微粒子と無機系又は有機系の中空ビーズからなる光拡散能の高い微粒子とを少なくともポリエチレングリコールを含む液に分散させて作製した酸化物微粒子ペーストを用いて形成した酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜に担持された色素増感剤と、該酸化物半導体膜に含浸された電解質とで形成される色素増感型太陽電池セルが、複数個、平面状または曲面状に配列され、且つ直列に接続されてなる色素増感型太陽電池モジュールの製造方法であって、少なくとも下記(1)〜(5)の工程を含むことを特徴とする色素増感型太陽電池モジュールの製造方法である。
(1)裏面基板として、ロール状に巻き上げられた長尺の耐熱性フレキシブルフィルムを用い、裏面基板の上に、巻き取り供給巻き上げ方式のパターンコーターを用いて、白金またはカーボンペーストを、複数個のセルが所定の間隔を開けて配列されて形成されるモジュールの裏面電極層のパターンで塗布、乾燥して、裏面電極層を形成し、該裏面電極層の上に酸化物半導体膜のパターンで、粒子径0.1nm〜10μmの酸化物微粒子に光拡散能の高い微粒子が混合された混合微粒子を、少なくともポリエチレングリコールを含む液に分散させて作製した混合微粒子ペーストを塗布し、予備乾燥後、100〜350℃で10〜180分間、乾燥、焼成して多孔質の酸化物半導体膜を形成する工程。
(2)前記(1)の工程で作製した耐熱性フレキシブルフィルムの裏面基板と、該裏面基板の上にそれぞれ所定のパターンで形成された裏面電極層と酸化物半導体膜の積層体の酸化物半導体膜に、色素増感剤の溶液を、巻き取り供給巻き上げ方式のパターンコーター、または巻き取り供給巻き上げ方式の浸漬装置を用いて、塗布、または浸漬して含浸させた後、乾燥して、色素増感剤を担持させる工程。
(3)前記(2)の工程で作製した耐熱性フレキシブルフィルムの裏面基板と、該裏面基板の上にそれぞれ所定のパターンで形成された裏面電極層と色素増感剤を担持させた酸化物半導体膜との積層体の酸化物半導体膜形成面に、各セル間を直列に接続する接続部と、各セル間を仕切りする隔壁とを設ける工程。
(4)前記(3)の工程で作製した積層体の酸化物半導体膜形成面に、別に作製した透明基板と該透明基板の上に所定のパターンで形成された透明電極層の積層体を、その透明電極層面が対向するように重ね、直列に接続された複数個のセルからなるモジュールの正極の端部と負極の端部から電極リードを引き出すと共に、両者を接合する工程。
(5)前記(4)の工程で作製した積層体の各セルに予め耐熱性フレキシブルフィルムの裏面基板に設けられた小孔、またはセルの端部に設けられた間隙部から電解質を注入し、酸化物半導体膜に含浸させ、それぞれの小孔または間隙部をシール材で封止する工程。
【0020】
このような製造方法を採ることにより、色素増感型太陽電池モジュールの各構成要素のうち、少なくとも色素増感剤が担持された酸化物半導体膜と裏面電極層と裏面基板との積層体を、裏面基板の長尺の耐熱性フレキシブルフィルムを基材として、その上に、裏面電極層と酸化物半導体膜とそれに担持させる色素増感剤とを、巻き取り供給巻き上げ方式のパターンコーター、または浸漬装置などを用いて加工し、製造することができるので、生産性を大幅に向上させることができ、光電変換効率に優れ、且つ、所望の起電力を有する色素増感型太陽電池モジュールを生産性よく、低コストで大量生産することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
酸化物半導体膜の酸化物微粒子が、TiO2、ZnO、SnO2、ITO、ZrO2、SiOX、MgO、Al2O3、CeO2、Bi2O3、Mn3O4、Y2O3、WO3、Ta2O5、Nb2O5、La2O3の微粒子のうちのいずれか一種、または二種以上の混合系の微粒子であることが好ましい。
【0022】
上記の酸化物微粒子は、材質的に発電層の酸化物半導体多孔質膜の形成に適しており、その光電変換効率も高く、コスト面でも比較的安価である。従って、このような構成を採ることにより、上記に記載した発明の作用効果に加えて、光電変換効率が高く、低コストの色素増感型太陽電池セルを一層容易に製造することができる。
【0023】
前記酸化物半導体膜の酸化物微粒子の30重量%以上が、TiO2の微粒子であることが好ましい。
【0024】
色素増感型太陽電池セルの酸化物半導体膜に用いる酸化物微粒子としては、TiO2の微粒子が、粒子径0.1〜10nmの微粒子の製造も比較的容易であり、高多孔質膜の形成、光電変換効率の高さ、低コスト化などの点で特に適している。従って、酸化物微粒子の全部をTiO2の微粒子で構成してもよいが、30重量%以上をTiO2の微粒子とすることにより、前記高多孔質膜の形成、高光電変換効率、低コスト化などの効果を充分に得ることができる。従って、前記のような構成を採ることにより、前記に記載した発明の作用効果に加えて、一層確実に光電変換効率が高く、低コストの色素増感型太陽電池セルを製造することができる。
【0025】
前記光拡散能の高い微粒子が、無機系ビーズ、無機系充填剤、有機系ビーズ、有機系充填剤の微粒子のうちの少なくともいずれか一種を含むことが好ましい。上記無機系ビーズ、有機系ビーズの微粒子は、それぞれ中空ビーズの微粒子であってもよい。
【0026】
このような構成を採ることにより、前記微粒子は、いずれもその形状、屈折率により、効果的に光を拡散することができるので、発電層に入射した光の利用効率が高められ、色素増感型太陽電池セルの光電変換効率を一層向上させることができる。
【0027】
前記酸化物半導体膜が、前記酸化物微粒子に光拡散能の高い微粒子が混合された混合微粒子に、導電性バインダーを1〜30重量%の範囲で混合した混合物で形成されていることが好ましい。上記導電性バインダーの混合量が1重量%未満の場合は、バインダーとしての効果が不充分となるため好ましくない。また、導電性バインダーの混合量が30重量%を超える場合は、多孔質膜の形成が阻害されるため好ましくない。
【0028】
このような構成を採ることにより、前記の発明の作用効果に加えて、酸化物半導体膜を形成する際、より低い加熱温度、或いは、より短い加熱時間で、その多孔質膜を形成できるので、生産性を向上できると共に、裏面基板として、耐熱性フレキシブルフィルムを用いる場合、その耐熱性のレベルを下げることができるので、フィルムの選択範囲を広げることができ、コスト低減効果も容易に得ることができる。
【0029】
前記酸化物半導体膜が、その多孔質の内部表面まで、TiCl4水溶液及び/又はt−ブチルピリジンのアセトニトリル分散液により、表面処理されていることが好ましい。
【0030】
上記TiCl4水溶液による表面処理は、形成された多孔質の酸化物半導体膜上に0.5M未満のTiCl4水溶液を塗布し、含浸させた後、乾燥する方法で実施することができ、これが酸化物半導体膜の表面準位の減少に寄与し、また、t−ブチルピリジンのアセトニトリル分散液による表面処理は、色素増感剤を担持させた後の酸化物半導体膜上にt−ブチルピリジン5容量%未満を含むアセトニトリル分散液を塗布し、含浸させた後、乾燥する方法で実施することができ、これにより酸化物半導体膜中に移動した電子の逆流を抑制することができる。
【0031】
従って、このような表面処理を施すことにより、前記に記載した発明の作用効果に加えて、発生した電子を一層効率的に利用できるようになるので、色素増感型太陽電池セルの発電効率を更に向上させることができる。
【0032】
前記色素増感剤が、ルテニウム錯体であることが好ましい。
【0033】
前記色素増感剤としては、有機色素または金属錯体色素を使用することができ、有機色素としては、アクリジン系、アゾ系、インジゴ系、キノン系、クマリン系、メロシアニン系、フェニルキサンテン系の色素が挙げられ、金属錯体色素では、ルテニウム系色素が好ましく、特にルテニウム錯体であるルテニウムビピリジン色素およびルテニウムターピリジン色素が好ましい。例えば、酸化物半導体膜だけでは、可視光(400〜800nm程度の波長)を殆ど吸収できないが、ルテニウム錯体を担持させることにより、大幅に可視光まで取り込んで光電変換できるようになる。
【0034】
従って、前記のような構成を採ることにより、前記に記載した発明の作用効果に加えて、ルテニウム錯体により光電変換できる光の波長領域を大幅に広げることができるので、色素増感型太陽電池セルの光電変換効率を一層向上させることができる。
【0035】
前記電解質が、ヨウ素電解質溶液、またはゲル電解質、固体電解質のいずれかであることが好ましい。
【0036】
本発明の色素増感型太陽電池セルの電解質としては、ヨウ素電解質溶液を有効に使用することができるが、そのほかにゲル電解質、固体電解質を使用することができる。ゲル電解質は、大別して、物理ゲルと化学ゲルに分けられ、物理ゲルは、物理的な相互作用で室温付近でゲル化しているものであり、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリレートが挙げられる。化学ゲルは、架橋反応などにより化学結合でゲルを形成しているものであり、アクリル酸エステル系、メタクリル酸エステル系のゲルが挙げられる。また、固体電解質としては、ポリピロール、CuIが挙げられる。ゲル電解質、固体電解質を使用する場合、低粘度の前駆体を酸化物半導体膜に含浸させ、加熱、紫外線照射、電子線照射などの手段で二次元または三次元の架橋反応を起こさせることにより、ゲル化または固体化することができる。
【0037】
このような構成を採ることにより、前記に記載した発明の作用効果に加えて、ヨウ素電解質溶液を使用した場合は、その酸化還元反応が迅速に行われ、光電変換効率が向上する。また、ゲル電解質、固体電解質を用いた場合は、液漏れすることがないので安全性、耐久性を向上させることができる。
【0038】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の色素増感型太陽電池セルの一実施例の構成を示す模式断面図であり、図2は、本発明の色素増感型太陽電池モジュールの一実施例の構成を示す要部の模式断面図である。
【0039】
図1に示した色素増感型太陽電池セル100は、光が入射する側から、透明基板1、透明電極層2、電解質3、色素増感剤が担持された酸化物半導体膜4、裏面電極層5、裏面基板6が順に積層または配置されて構成されている。透明基板1は、特に光の透過性(紫外光〜可視光域の波長の光の透過性)に優れると共に、耐候性、水蒸気その他のガスバリヤー性などに優れることが好ましく、ガラス板が適しているが、適宜の厚さのプラスチックシートなどを使用することもできる。ガラス板を使用する場合、厚さは0.5〜5mmの範囲が適当であり、1〜3mm程度が好ましい。プラスチックシートを使用する場合、耐候性の点ではエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体シートが適しているが、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートシートなども使用することができる。プラスチックシートを使用する場合、その厚さは、特に限定はされないが、50〜300μm程度が適当である。
【0040】
透明電極層2は、導電性と共に光の透過性(紫外光〜可視光域の波長の光の透過性)に優れることが好ましく、例えば、SnO2、ITO、ZnOなどの薄膜層を用いることができるが、なかでもフッ素ドープしたSnO2、ITOの薄膜層が、導電性と光の透過性の両方に優れている点で特に好ましい。SnO2またはITOの薄膜層を形成する方法としては、各種の蒸着法を用いることができるが、特にスパッタリング法により形成することが、生産性がよく、前記性能にも優れている点で好ましい。SnO2またはITOの薄膜層の厚さは300〜1500Å程度が適当である。
【0041】
発電層8を構成する電解質3、および色素増感剤が担持された酸化物半導体膜4に関しては、先に詳しく説明したので、ここでは説明を省略する。只、酸化物半導体膜4を形成する際、その塗布液にポリエチレングリコールを含ませることにより、高度の多孔質膜を容易に形成できるようになる。この酸化物半導体膜4の厚さは10μm程度が好ましい。また、図には示していないが、酸化物半導体膜4には、先に説明したようなTiCl4水溶液及び/又はt−ブチルピリジンのアセトニトリル分散液による表面処理を施すことが好ましい。
【0042】
裏面電極層5は、裏面基板6の上に、例えば白金ペーストまたはカーボンペーストをパターン状に塗布、乾燥して形成することができる。白金ペーストを使用する場合、例えばH2PtCl6ペーストを使用することができ、これをイソプロピルアルコール、酢酸エチル、トルエンなどの有機溶剤で適する粘度に調整して塗布することができる。
【0043】
裏面基板6には、ガラス板を使用することもできるが、生産性を向上させ、またコストの低減化を図るためには、先に説明したように、ロール状に巻き上げ可能な耐熱性フレキシブルフィルムを使用することが好ましい。耐熱性フレキシブルフィルムとしては、例えば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのほか、ポリエーテルサルフォン(PES)フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム、ポリエーテルイミド(PEI)フィルム、ポリイミド(PI)フィルムなどが挙げられる。これらは単独のフィルムを使用してもよく、他の耐熱性材料を積層した複合フィルムとして使用することもできる。このような耐熱性フレキシブルフィルムの厚さは、特に限定はされないが、16〜100μm程度が適当である。
【0044】
次に、図2は、本発明の色素増感型太陽電池モジュールの一実施例の構成を示す要部の模式断面図である。図2に示した色素増感型太陽電池モジュール200は、前記図1に示した構成の色素増感型太陽電池セルが所定の間隔を開けて3個並べて配列され、それぞれのセルが導電性の電極接続部7で直列に接続されると共に、各セルの間には非導電性の隔壁9が設けられて仕切りされ、また、両側のセルの端部、即ち、色素増感型太陽電池モジュール200の周囲の端部は非導電性の封止材10で封止され、更に、両側のセルから正極または負極の電極リード11が引き出されて構成されている。
【0045】
従って、各セル自体の構成は、前記図1に示した色素増感型太陽電池セル100と同様であり、光の入射する側から、透明基板1、透明電極層2、電解質3、色素増感剤が担持された酸化物半導体膜4、裏面電極層5、裏面基板6が順に積層または配置されて構成されている。
【0046】
尚、図2に示した色素増感型太陽電池モジュール200では、色素増感型太陽電池セルが3個並べて配列され、直列に接続された形態で示したが、配列するセルの数は任意であり、所望の電圧が得られるように自由に設計することができる。また、このような色素増感型太陽電池モジュールは、前記に記載した発明の色素増感型太陽電池モジュールの製造方法により、生産性よく、低コストで製造でき、大量生産も容易である。
【0047】
【実施例】
以下に、実施例、比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。発電層の酸化物半導体膜を形成する酸化物微粒子への光拡散能の高い微粒子の混合効果を確かめるため、下記のように実施例1と比較例1の色素増感型太陽電池セルを作製し、その光電変換効率を測定した。
〔実施例1〕
裏面基板として、ガラス板を用い、その上に枚葉のスクリーン印刷機により、先ず、白金ペーストをパターン状に塗布、乾燥して厚さ3μmの裏面電極層を形成し、その上に粒子径1〜10nmのTiO2微粒子80重量部と、粒子径150nmの光拡散用ビーズ20重量部とを混合した混合微粒子をポリエチレングリコールに分散した塗布液をパターン状に塗布し、予備乾燥後、450℃で30分間、乾燥、焼成して、厚さ10μmの酸化物半導体膜(多孔質膜)を形成した。そして、この積層体の酸化物半導体膜に色素増感剤を担持させるため、この積層体をルテニウム錯体のエタノール溶液に浸漬して多孔質膜に含浸させた後、乾燥して、ルテニウム錯体を酸化物半導体膜に担持させた。次いで、この積層体の酸化物半導体膜形成面に、別に用意したガラス板(透明基板)上にSnO2の薄膜層(透明電極層)がパターン状に形成された積層体のSnO2の薄膜層形成面が対向するように重ね合わせ、電極リードを引き出すと共に、周囲の端部をエポキシ系接着剤で電解質の注入口のみを残して封止し、接着剤の硬化後、その注入口からヨウ素電解質溶液を注入し、注入後、その注入口をシール材で封止して実施例1の色素増感型太陽電池セルを作製した。
【0048】
〔比較例1〕
前記実施例1の色素増感型太陽電池セルの作製において、酸化物半導体膜の形成に用
いた粒子径1〜10nmのTiO2微粒子と粒子径150nmの光拡散用ビーズの混合微粒子から光拡散用ビーズを取り除き、粒子径1〜10nmのTiO2微粒子のみをポリエチレングリコールに分散して塗布液とした他は、総て実施例1と同様に加工して比較例1の色素増感型太陽電池セルを作製した。
【0049】
以上のように作製した実施例1と比較例1の色素増感型太陽電池セルについて、その光電変換効率〔η%〕を測定した結果は、実施例1の色素増感型太陽電池セルは10%で、比較例1の色素増感型太陽電池セルは9%であり、実施例1の色素増感型太陽電池セルは、比較例1の色素増感型太陽電池セルと対比して、酸化物半導体膜のTiO2微粒子への光拡散能の高い微粒子の混合により、光電変換効率の大幅な向上が認められた。
【0050】
【発明の効果】
以上、詳しく説明したように、本発明によれば、光電変換効率〔η%〕が高く、生産性にも優れ、大量生産が容易であると共に、コストも低減することのできる色素増感型太陽電池セルおよびそれを用いた色素増感型太陽電池モジュール、およびそれらの製造方法を提供できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の色素増感型太陽電池セルの一実施例の構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明の色素増感型太陽電池モジュールの一実施例の構成を示す要部の模式断面図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 透明電極層
3 電解質
4 色素増感剤が担持された酸化物半導体膜
5 裏面電極層
6 裏面基板
7 電極接続部
8 発電層
9 隔壁
10 封止材
11 電極リード
100 色素増感型太陽電池セル
200 色素増感型太陽電池モジュール
Claims (8)
- 少なくとも、受光面側から、透明基板、透明電極層、発電層、裏面電極層、裏面基板が順に積層されてなる太陽電池セルにおいて、該発電層が、光拡散能の高い微粒子を含む多孔質の酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜に担持された色素増感剤と、該酸化物半導体膜に含浸された電解質とで形成され、且つ、該酸化物半導体膜における光拡散能の高い微粒子の含有量が1〜50重量%であり、前記光拡散能の高い微粒子が無機系又は有機系の中空ビーズであることを特徴とする色素増感型太陽電池セル。
- 前記請求項1に記載の色素増感型太陽電池セルが、複数個、平面状または曲面状に配列され、且つ直列に接続されてなる色素増感型太陽電池モジュール。
- 少なくとも受光面側から、透明基板、透明電極層、発電層、裏面電極層、裏面基板が順に積層された積層体で形成され、且つ、該発電層が、粒子径0.1nm〜10μmの酸化物微粒子を焼成してなる酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜に担持された色素増感剤と、該酸化物半導体膜に含浸された電解質とで形成される色素増感型太陽電池セルの製造方法であって、
前記の粒子径0.1nm〜10μmの酸化物微粒子を焼成してなる酸化物半導体膜を、粒子径0.1nm〜10μmの酸化物微粒子と無機系又は有機系の中空ビーズからなる光拡散能の高い微粒子とを少なくともポリエチレングリコールを含む液に分散させて作製した酸化物微粒子ペーストを用いて形成することを特徴とする色素増感型太陽電池セルの製造方法。 - 前記の酸化物微粒子ペーストを塗布し、100〜350℃で、10〜180分間、乾燥、焼成して酸化物半導体膜を形成することを特徴とする請求項3に記載の色素増感型太陽電池セルの製造方法。
- 前記の酸化物微粒子ペーストを塗布した後であって、100〜350℃で、10〜180分間、乾燥、焼成する前に、予備乾燥をすることを特徴とする請求項4に記載の色素増感型太陽電池セルの製造方法。
- 少なくとも発電層の色素増感剤が担持された酸化物半導体膜と裏面電極層と裏面基板との積層体を、
裏面基板として、ロール状に巻き上げられた長尺の耐熱性フレキシブルフィルムを用い、
裏面基板の上に、巻き取り供給巻き上げ方式のパターンコーターを用いて、白金またはカーボンペーストをパターン状に塗布、乾燥して、裏面電極層を形成し、
次いで、裏面電極層の上に、前記の酸化物微粒子ペーストを、パターン状に塗布、乾燥、焼成して酸化物半導体膜を形成し、
更に、形成された酸化物半導体膜に、色素増感剤の溶液を、巻き取り供給巻き上げ方式のパターンコーター、または巻き取り供給巻き上げ方式の浸漬装置を用いて、塗布、または浸漬して含浸させた後、乾燥して、色素増感剤を担持させて、
形成することを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の色素増感型太陽電池セルの製造方法。 - 少なくとも受光面側から、透明基板、透明電極層、発電層、裏面電極層、裏面基板が順に積層された積層体で形成され、且つ、該発電層が、粒子径0.1nm〜10μmの酸化物微粒子と無機系又は有機系の中空ビーズからなる光拡散能の高い微粒子とを少なくともポリエチレングリコールを含む液に分散させて作製した酸化物微粒子ペーストを用いて形成した酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜に担持された色素増感剤と、該酸化物半導体膜に含浸された電解質とで形成される色素増感型太陽電池セルが、複数個、平面状または曲面状に配列され、且つ直列に接続されてなる色素増感型太陽電池モジュールの製造方法であって、
上記色素増感型太陽電池セルが、請求項3乃至6のいずれかに記載の色素増感型太陽電池セルの製造方法で製造することを特徴とする色素増感型太陽電池モジュールの製造方法。 - 少なくとも受光面側から、透明基板、透明電極層、発電層、裏面電極層、裏面基板が順に積層された積層体で形成され、且つ、該発電層が、粒子径0.1nm〜10μmの酸化物微粒子と無機系又は有機系の中空ビーズからなる光拡散能の高い微粒子とを少なくともポリエチレングリコールを含む液に分散させて作製した酸化物微粒子ペーストを用いて形成した酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜に担持された色素増感剤と、該酸化物半導体膜に含浸された電解質とで形成される色素増感型太陽電池セルが、複数個、平面状または曲面状に配列され、且つ直列に接続されてなる色素増感型太陽電池モジュールの製造方法であって、少なくとも下記(1)〜(5)の工程を含むことを特徴とする色素増感型太陽電池モジュールの製造方法。
(1)裏面基板として、ロール状に巻き上げられた長尺の耐熱性フレキシブルフィルムを用い、該裏面基板の上に、巻き取り供給巻き上げ方式のパターンコーターを用いて、白金またはカーボンペーストを、複数個のセルが所定の間隔を開けて配列されて形成されるモジュールの裏面電極層のパターンで塗布、乾燥して、裏面電極層を形成し、該裏面電極層の上に酸化物半導体膜のパターンで、粒子径0.1nm〜10μmの酸化物微粒子に光拡散能の高い微粒子が混合された混合微粒子を、少なくともポリエチレングリコールを含む液に分散させて作製した混合微粒子ペーストを塗布し、予備乾燥後、100〜350℃で10〜180分間、乾燥、焼成して多孔質の酸化物半導体膜を形成する工程。
(2)前記(1)の工程で作製した耐熱性フレキシブルフィルムの裏面基板と該裏面基板の上にそれぞれ所定のパターンで形成された裏面電極層と酸化物半導体膜の積層体の酸化物半導体膜に、色素増感剤の溶液を、巻き取り供給巻き上げ方式のパターンコーター、または巻き取り供給巻き上げ方式の浸漬装置を用いて、塗布、または浸漬して含浸させた後、乾燥して、色素増感剤を担持させる工程。
(3)前記(2)の工程で作製した耐熱性フレキシブルフィルムの裏面基板と該裏面基板の上にそれぞれ所定のパターンで形成された裏面電極層と色素増感剤を担持させた酸化物半導体膜との積層体の酸化物半導体膜形成面に、各セル間を直列に接続する接続部と、各セル間を仕切りする隔壁とを設ける工程。
(4)前記(3)の工程で作製した積層体の酸化物半導体膜形成面に、別に作製した透明基板と該透明基板の上に所定のパターンで形成された透明電極層の積層体を、その透明電極層面が対向するように重ね、直列に接続された複数個のセルからなるモジュールの正極の端部と負極の端部から電極リードを引き出すと共に、両者を接合する工程。
(5)前記(4)の工程で作製した積層体の各セルに予め耐熱性フレキシブルフィルムの裏面基板に設けられた小孔、またはセルの端部に設けられた間隙部から電解質を注入し、酸化物半導体膜に含浸させ、それぞれの小孔または間隙部をシール材で封止する工程。
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