JP5274074B2 - 耐酸化性に優れた耐熱性フェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents

耐酸化性に優れた耐熱性フェライト系ステンレス鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、特に高温強度や耐酸化性が必要な排気系部材などの使用に最適な耐熱性ステンレス鋼において、特に耐酸化性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板に関するものである。
自動車の排気マニホールド、フロントパイプおよびセンターパイプなどの排気系部材は、エンジンから排出される高温の排気ガスを通すため、排気部材を構成する材料には耐酸化性、高温強度、熱疲労特性など多様な特性が要求される。
従来、自動車排気部材には鋳鉄が使用されるのが一般的であったが、排ガス規制の強化、エンジン性能の向上、車体軽量化などの観点から、ステンレス鋼製の排気マニホールドが使用されるようになった。排ガス温度は、車種によって異なるが、近年では750〜900℃程度が多いが、さらに高温に達する場合もある。このような温度域で長時間使用される環境において高い高温強度、耐酸化性を有する材料が要望されている。
ステンレス鋼の中でオーステナイト系ステンレス鋼は、耐熱性や加工性に優れているが、熱膨張係数が大きいために、排気マニホールドのように加熱・冷却を繰り返し受ける部材に適用した場合、熱疲労破壊が生じやすい。
一方、フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて熱膨張係数が小さいため、熱疲労特性や耐スケール剥離性に優れている。また、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて、高価なNiをほとんど含有しないため材料コストも安く、汎用的に使用されている。但し、フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて、高温強度が低いために、高温強度を向上させる技術が開発されてきた。例えば、SUS430J1(Nb添加鋼)、Nb−Si添加鋼、SUS444(Nb−Mo添加鋼)があり、Nb添加を基本に、Si、Moの添加によって高温強度を向上させるものであった。この中で、SUS444は2%程度のMoを添加するため、最も高強度であるが、加工性が劣るとともに、高価なMoを多量に含むためコストが高いという問題があった。
上記の合金以外にも種々の添加元素が検討されている。特許文献1〜4には、CuあるいはCu−V複合添加を行う技術が開示されている。特許文献1におけるCu添加は低温靭性向上のために0.5%以下の添加が検討されており、耐熱性の観点からの添加ではない。特許文献2〜4では、Cu析出物による析出硬化を利用して600℃あるいは700〜800℃の温度域における高温強度を向上させる技術が開示されている。Cu添加による高温強度向上についての従来技術は、Cu析出物を利用したものであるが、Cu析出物は長時間高温に曝された場合、析出物の凝集・合体による粗大化が急速に生じるため、析出強化能が著しく低下してしまう問題がある。排気マニホールドのように、エンジンの起動・停止に伴う熱サイクルを受ける場合、長時間使用段階で著しく高温強度が低下して熱疲労破壊を起こす危険性が生じることになる。また、エンジン構造によっては排気ガス温度が、900℃程度まで上がる場合がある。特許文献2に記載されているようにCu添加あるいはCu−V複合添加は900℃における耐力はSUS444レベルに到達しないことから、排気部品として十分な信頼性を得るものではなかった。
特開2006−37176号公報 国際公開WO2003/004714号公報 特許第3468156号 特許第3397167号
本発明は、特に排気ガスの最高温度が950℃程度までとなる環境下において使用される耐酸化性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼を提供するものである。
発明者らは、Cu添加鋼のエキゾーストマニホールド材としての特性評価を行っている過程において、成分の少しの違いにより、耐酸化性が大きく異なり、従来技術では、必ずしも十分な耐酸化性が得られていないことを見出した。これを改善すべく種々の検討を行い、耐酸化性に優れた耐熱ステンレス鋼板を発明した。
即ち、上記課題を解決するために、本発明者らは750℃〜950℃における高温環境に曝されるフェライト系ステンレス鋼の耐酸化性について詳細に検討を行った。その結果、高温強度を確保するために添加されるCuを含む場合、その耐酸化性が必ずしも十分でないことが判明した。さらに検討を進めた結果、Cuそのものが耐酸化性に悪影響を与えるものではなく、酸化の進行に伴う、表層部のCr濃度低下により、表層部のみα相からγ相へ相変態が起こり、その結果、α相に比べてCr拡散の遅いγ相が表層部となったためにCr欠乏となり、耐酸化性が劣化したためと考えられることが分かった。さらに検討を進め、各添加元素を相互調整することにより、γ相抑制ができることを見出した。加えて、他の元素の効果も検討した結果、耐酸化性に優れた耐熱ステンレス鋼を発明するに至った。
すなわち、上記課題を解決する本発明の要旨は、
(1)質量%にて、C:0.008%以下、N:0.02%以下、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.5〜1.5%、Cr:14〜19%、Cu:0.8〜2%、Ni:0.2%以下、Nb:0.2〜0.8%、Ti:0.01〜0.3%、Mo:0.1〜1%(ただし、0.1%、1%をそれぞれ除く。)を含有し、かつ、下記(1)式が0以下となるよう各元素が相互調整され、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐酸化性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板。
γp=420×[%C*]+470×[%N*]+23×[%Ni]+9×[%Cu]+7×[%Mn]−11.5×[%Cr]−11.5×[%Si]−52×[%Al]−12×[%Mo]−47×[%Nb*]−23×[%V]+189
[%C*]=[%C]−12/93×[%Nb] ただし、[%C]−12/93×[%Nb]<0の場合は、[%C*]=0
[%N*]=[%N]−14/48×[%Ti] ただし、[%N]−14/48×[%Ti]<0の場合は、[%N*]=0
[%Nb*]=[%Nb]−93/12×[%C]
・・・(1)
(2)950℃における200時間の大気中連続酸化試験後の質量増加が2mg/cm2 以下であることを特徴とする(1)記載の耐酸化性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板。
(3)質量%にて、V:0.02〜0.5%を含有することを特徴とする(1)または(2)記載の耐酸化性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板。
(4)質量%にて、B:0.0002〜0.0050%を含有することを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の耐酸化性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板。
(5)質量%にて、Al:3%以下、W:3%以下、Sn:1%以下の1種以上を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の耐酸化性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板。
である。また、ここで、下限の規定がないものについては、不可避的不純物レベルまで含むことを示す。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば高温強度が優れたCu添加系フェライト系ステンレス鋼に優れた耐酸化性を付与できることから、特に自動車などの排気系部材に適用することにより、環境対策や部品の低コスト化などに大きな効果が得られる。
本発明を実施するための最良の形態と限定条件について詳細に説明する。
発明者らは、Cu添加フェライト系ステンレス鋼の高温特性を調査している過程において、Cu無添加のフェライト系ステンレス鋼と違い、高温、特に950℃において、わずかな成分の違いで耐酸化性が大きく異なることを見出した。さらに、その違いを詳細に検討したところ、高温で保持中に表層部のγ相が生成する場合があり、そのとき、耐酸化性が劣化することが判明した。さらに、検討を進め、高温保持中にγ相が生成有無は、γ相の生成しやすさに対する各元素の寄与を表した、下記(1)式のγpによって示すことができ、このγpが0以下とある場合、950℃においても、良好な耐酸化性を示すことが明らかになった。
γp=420×[%C*]+470×[%N*]+23×[%Ni]+9×[%Cu]+7×[%Mn]−11.5×[%Cr]−11.5×[%Si]−52×[%Al]−12×[%Mo]−47×[%Nb*]−23×[%V]+189
[%C*]=[%C]−12/93×[%Nb] ただし、[%C]−12/93×[%Nb]<0の場合は、[%C*]=0
[%N*]=[%N]−14/48×[%Ti] ただし、[%N]−14/48×[%Ti]<0の場合は、[%N*]=0
[%Nb*]=[%Nb]−93/12×[%C]
・・・(1)
さらに、個々の元素の効果についても検討を進め、Siは、耐酸化性を向上させる元素であるが、多量に添加するとスケール剥離を起こすことも見出した、さらには、V、Mo、B、Al、W、Snの効果を明らかにし、耐酸化性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼を発明した。
以下に各成分の効果を詳細に述べる。
Cは、成形性と耐食性を劣化させ、高温強度の低下をもたらす。さらには、Cu添加の場合、耐酸化性の低下ももたらすため、その含有量は少ないほど良い。したがって、0.008%以下とした。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、0.001〜0.005%が望ましい。
NはCと同様、成形性と耐食性を劣化させ、高温強度の低下をもたらす上に、Cu添加の場合、耐酸化性の低下ももたらすため、その含有量は少ないほど良い。したがって、0.02%以下とした。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、0.003〜0.015%が望ましい。
Siは、脱酸剤として添加される元素であるが、耐酸化性を改善するために重要な元素である。その効果は0.1%以上で発現する。しかし、過度に添加するとスケール剥離を起こしやすくなり、耐酸化性は低下する。したがって、0.1〜0.5%が最適である。
Mnは、脱酸剤として添加される元素であり、さらに耐酸化性に効果がある元素である。これはMnが酸化してMn酸化物を形成することによりFeの酸化を抑制する効果と考えられている。また、Siと同時添加される場合、Mn添加量の増加によりスケール剥離を抑制する効果がある。さらには、750℃程度の中温域での強度上昇に寄与する。したがって、0.5%以上添加する。一方、1.5%超の過度な添加は、異常酸化を起こしやすくなるとともに常温の均一伸びを低下させる他、MnSを形成して耐食性を低下させる。さらには、Mnはオーステナイト安定元素であるので、この点からは抑制したほうが良い。したがって、これらの観点から、上限を1.5%とした。
Niは耐食性を向上させる元素であるが、オーステナイト安定元素であるとともに、高価であることから、極力低減する。本発明はNiを含有しなくてもよいが、極度の低減はコスト増加を招くため、0.2%以下の含有は許容される。
Crは、本発明において、耐酸化性確保のために必須な元素であり、Cr量が高いほど耐酸化性は向上する傾向にある。Cuが添加されている本発明では14%未満では、その効果は発現せず、19%超では加工性が低下するとともに靭性の劣化をもたらすため、14〜19%とした。また、Crはフェライト安定元素であるため、γ相への変態を抑制する。したがって、各元素の相互調整を必須とする本発明は、Crが低い場合に有効であることから、14〜17%が好ましい。
Cuは、先述したように特に750℃近傍の中温度域における高温強度向上に有効な元素である。これは、ε−Cuが析出することによる析出強化作用であり、0.8%以上の添加により発現する。一方、過度な添加は、均一伸びの低下や常温耐力が高くなりすぎてプレス成型性に支障が生じる。また、2%以上添加すると本発明を持ってしても、高温域でオーステナイト相が形成を防止できず、表面に異常酸化が生じるため上限を2%とした。製造性やスケール密着性を考慮すると、0.8〜1.4%が望ましい。
Tiは、C,N,Sと結合して耐食性、耐粒界腐食性、深絞り性の指標となるr値を向上させる元素である。また、Nbとの複合添加において、適量添加することにより高温強度の向上、高温延性の向上をもたらし、熱疲労特性を向上させる。これらの効果は、0.01%以上から発現するが、0.3%超の添加により、固溶Ti量が増加して均一伸びを低下させる他、粗大なTi系析出物を形成し、穴拡げ加工時の割れの起点になり、穴拡げ性を劣化させる。よって、Ti添加量は、0.01〜0.3%以下とした。更に、表面疵の発生や靭性を考慮すると0.05〜0.15%が望ましい。
Nbは、固溶強化および析出物微細化強化による高温強度向上のために必要な元素である。また、CやNを炭窒化物として固定し、製品板の耐食性やr値に影響する再結晶集合組織の発達に寄与する役割もある。750℃程度の中温度域ではLaves相の微細析出に寄与し、900℃程度の高温域では固溶Nbによる固溶強化に寄与し、この効果は0.2%以上の添加で発現する。一方、過度な添加は均一伸びを低下させ、穴拡げ性が劣化するため、0.2〜0.8%とした。更に、溶接部の粒界腐食性、製造性および製造コストを考慮すると、0.3〜0.6%が望ましい。
γ相の生成しやすさに対する各元素の寄与を示す式として、カストロの式が知られている。一方、本発明が対象とする成分の鋼においては、Nbが炭化物を形成し、Tiが窒化物を形成する傾向にある。そこで、カストロの式における[%C]を[%C*]=[%C]−12/93×[%Nb]と置き換え、[%N] を[%N*]=[%N]−14/48×[%Ti]と置き換え、[%Nb] を[%Nb*]=[%Nb]−93/12×[%C]と置き換え、カストロの式から[%Ti]を削除した。ただし、[%C]−12/93×[%Nb]<0の場合は[%C*]=0とし、[%N]−14/48×[%Ti]<0の場合は[%N*]=0とする。これにより、前記(1)式を導いた。(1)式のγpの値と耐酸化性の関係について評価したところ、上記本発明の鋼成分を有するものの中で、γpが0以下の場合に良好な耐酸化性が実現されることが明らかとなった。γpが0超であると耐酸化性が低下し、異常酸化が起きやすくなる。
そこで本発明においては、上記各元素は、(1)式のγpが0以下となるよう相互調整される。0超となった場合、高温でγ相が析出しやすくなる。特に酸化によりCrが減少している表層部がγ相となりやすい。γ相はα相と比較して元素の拡散が遅くなるためCrの外方拡散が遅くなり、その結果、良好な保護皮膜が形成されにくくなり、異常酸化が発生しやすくなるため好ましくない。
さらに、950℃における耐酸化性の指標は、200時間の大気中連続酸化試験における単位面積当たりの酸化増量とした。この値が、2mg/cm2以下の場合、異常酸化状態に該当せず、良好な耐酸化性を示しているとした。また、スケール剥離については、酸化スケールの剥離量が0.5mg/cm2以下であれば金属面が露出するような剥離状況に至らないため、実用上問題ないので、これを上限とすることが好ましい。スケール剥離のない場合がさらに好ましい。
加えて、以下に元素の添加により、本発明の特性はさらに向上する。
Vは、微細な炭窒化物を形成し、析出強化作用が生じて高温強度向上に寄与する。また、Vはフェライト形成元素であり、γpを低下させる作用も持つため、本発明のようなCu添加鋼においては、耐酸化性向上効果も有する。この効果は0.02%以上の添加で安定して発現するが、0.5%超添加すると析出物が粗大化して高温強度が低下し、熱疲労寿命は低下してしまうため、上限を0.5%とした。更に、製造コストや製造性を考慮すると、0.05〜0.2%が望ましい。
Moは、耐食性を向上させるとともに、高温酸化を抑制し、固溶強化による高温強度向上に対して有効である。また、Vと同じくMoもフェライト形成元素であり、γpを低下させる作用も持つため、本発明のようなCu添加鋼においては、耐酸化性向上効果も有する。しかしながら、高価であるとともに、常温のおける均一伸びを低下させる。その効果は0.1%以上のMo添加で得られることから、下限を0.1%とした。1%超の過度な添加はLaves相の粗大化を促進して高温強度の増加が緩やかなること、かつコスト増が激しいから、0.1%〜1%とした
Bは、製品のプレス加工時の2次加工性を向上させる元素であるが、本発明ではNb−Cu添加でNb系析出物とε−Cuの微細析出をもたらし、高温強度の向上に寄与する。一般的にBは、高温域で(Fe,Cr)23(C,B)6やCr2Bを形成し易いが、Nb−Cu複合添加鋼においては、これらの析出物は析出せず、先述したLaves相とε−Cu相を微細析出させる効果があることが判明した。Laves相は、固溶Nb量の低減をもたらし、通常粗大化してしまうので、特に長時間時効後の高温強化能はほとんどないが、B添加により微細析出するため、析出強化能を有し、高温強度の向上に寄与し長時間使用時の強度安定性を高くする。また、ε−Cuは通常析出初期において極めて微細に析出し強度向上効果が大きいが、時効熱処理により粗大し、時効後の強度低下が大きい。しかしながら、B添加によりε−Cuの粗大化が抑制され、使用時の強度安定性が高くなる。B添加による析出微細化および粗大化抑制効果の機構は明確ではないが、Bの粒界偏析により界面エネルギーが低下し、Laves相とε−Cuの粒界析出を抑制し粒内に微細析出させると推察される。また、NbやCuの粒界拡散を抑えることがこれらの析出物の粗大化を抑制すると推察される。これらの効果は、0.0002%以上で発現するが、過度な添加は硬質化や粒界腐食性を劣化させる他、溶接割れが生じるため、0.0002〜0.0050%とした。更に、成型性や製造コストを考慮すると、0.0003〜0.0015%が望ましい。
Alは、脱酸元素として添加される他、耐酸化性を向上させる元素である。また、固溶強化元素として750〜950℃の強度向上に有用である。その作用は0.01%から安定して発現するが、過度の添加は硬質化して均一伸びを著しく低下させる他、靭性が著しく低下するため、上限を3%とした。更に、表面疵の発生や溶接性、製造性を考慮すると、0.01〜2.5%が望ましい。
Wは、Moと同様な効果を有し、高温強度を向上させる元素である。この効果は1%以上から安定して発現するが、過度に添加するとLaves相中に固溶し、析出物を粗大化させてしまうとともに製造性を劣化させるため、1〜3%が好ましい。更に、コストや耐酸化性等を考慮すると、1.2〜2.5%が望ましい。
Snは、原子半径が大きく固溶強化に有効な元素であり、常温の機械的特性を大きく劣化させない。高温強度への寄与は0.1%以上で安定して発現するが、1%以上添加すると製造性が著しく劣化するため、0.1〜1%が好ましい。更に、耐酸化性等を考慮すると、0.2〜0.8%が望ましい。
なお、鋼板の製造方法については、特に規定しないが、熱延条件、熱延板厚、熱延板焼鈍の有無、冷延条件、熱延板および冷延板焼鈍温度、雰囲気などは適宜選択すれば良い。
また、冷延・焼鈍後に調質圧延やテンションレベラーを付与しても構わない。更に、製品板厚についても、要求部材厚に応じて選択すれば良い。
さらに、実施例により発明を詳細に述べる。
表1に示す成分組成の鋼を溶製してスラブに鋳造し、スラブを熱間圧延して5mm厚の熱延コイルとした。その後、熱延コイルに酸洗を施した後、2mm厚まで冷間圧延し、さらに焼鈍・酸洗を施して製品板とした。冷延板の焼鈍温度は、結晶粒度番号を6〜8程度にするために、980〜1070℃とした。
このようにして得られた製品板から、常温引張り試験片、高温引張試験片、酸化試験片を採取した。常温引張り試験片は、JIS13B号試験片、高温引張り試験片はつば付試験片、酸化試験片は、20mm幅、20m長さで全面#400研磨仕上げ材を使用した。
常温引張り試験は、JIS Z 2241に準拠して行い、圧延方向の破断伸びを測定した。ここで、常温での破断伸びは30%以上あれば、一般的な排気部品への加工が可能なため、30%以上の破断伸びを有することが望ましい。
高温引張り試験は、JIS G 0567に準拠し、750℃および950℃で引張試験を実施し、0.2%耐力を測定した。750℃で60MPa以上、950℃で15MPa以上を良好とした。
更に、耐酸化性の評価試験として、JIS Z 2281に準拠し、大気中950℃で200時間の連続酸化試験を行い、酸化増量とスケール剥離量を評価した。酸化増量を2mg/cm2以下、スケール剥離量を0.5mg/cm2以下を良好とした。
結果を表2に示す。表2から明らかなように、本発明で規定する成分組成を有する鋼を上記のような通常の方法にて製造した場合、比較例に比べて750℃〜950℃における高温耐力が高く、酸化増量が少なく、異常酸化は発生しておらず、スケール剥離量も非常に少なく、耐酸化性に優れていることがわかる。また、常温での機械的性質において破断延性が30%以上と高く、比較鋼に比べて加工性に優れていることがわかる。
これに対し、比較鋼である、No.14〜33の鋼は、常温の伸び、750℃、950℃の初期耐力、酸化増量、スケール剥離量のいずれか、あるいは複数項目が合格値に達しておらず、発明鋼に比べて特性が劣ることは明らかである。
以上から、本発明が極めて優れた特性を有することは明らかである。
Figure 0005274074
Figure 0005274074

Claims (5)

  1. 質量%にて、
    C:0.008%以下、
    N:0.02%以下、
    Si:0.1〜0.5%、
    Mn:0.5〜1.5%、
    Cr:14〜19%、
    Cu:0.8〜2%、
    Ni:0.2%以下、
    Nb:0.2〜0.8%、
    Ti:0.01〜0.3%、
    Mo:0.1〜1%(ただし、0.1%、1%をそれぞれ除く。)、
    を含有し、かつ、下記(1)式に規定するγpが0以下となるよう各元素が相互調整され、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐酸化性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板。
    γp=420×[%C*]+470×[%N*]+23×[%Ni]+9×[%Cu]+7×[%Mn]−11.5×[%Cr]−11.5×[%Si]−52×[%Al]−12×[%Mo]−47×[%Nb*]−23×[%V]+189
    [%C*]=[%C]−12/93×[%Nb] ただし、[%C]−12/93×[%Nb]<0の場合は、[%C*]=0
    [%N*]=[%N]−14/48×[%Ti] ただし、[%N]−14/48×[%Ti]<0の場合は、[%N*]=0
    [%Nb*]=[%Nb]−93/12×[%C]
    ・・・(1)
  2. 950℃における200時間の大気中連続酸化試験後の質量増加が2mg/cm2以下であることを特徴とする請求項1記載の耐酸化性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板。
  3. 質量%にて、V:0.02〜0.5%を含有することを特徴とする請求項1または2記載の耐酸化性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板。
  4. 質量%にて、B:0.0002〜0.0050%を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の耐酸化性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板。
  5. 質量%にて、Al:3%以下、W:3%以下、Sn:1%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐酸化性に優れた耐熱フェライト系ステンレス鋼板。
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