JP5272658B2 - 高靭性で透光性のアルミナ焼結体及びその製造方法並びに用途 - Google Patents

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Description

本発明は靭性が高く、かつ透光性にも優れることにより歯列矯正ブラケットや歯科修復用ミルブランク等の歯科材料に適するアルミナ焼結体に関する。又透光性の高温劣化が少なく、ランプ管等にも適用できる。
近年、歯科材料に透光性アルミナ焼結体が広く用いられており、透光性に優れ、なおかつ高強度、特に高靭性のアルミナ焼結体が望まれている。これまで靭性の高いアルミナ焼結体としては種々の焼結体が提案されているが、それらは透光性が十分なものではなかった。
例えば、数千ppmの不純物を含むバイヤー法アルミナ粉末を用いてなる異方粒成長した板状粒子を含むアルミナ焼結体が異方形状粒子のために高靭性化することが報告されている(特許文献1)。5〜8MPa・m0.5の高い破壊靭性が報告されているが、焼結体の密度は3.93〜3.94g/cm(相対密度99.0%)であり、透光性を発揮できる高密度(>99.8%)に達しておらず、透光性が十分ではなかった。
アルミナ焼結体では、異方形状粒子が発達すると緻密化が進み難く、透光性が得難いことが知られており、異方成長を抑制するため、ZrO、Y、La、MgO等の粒成長抑制剤を添加することが知られている。これら抑制剤を添加した焼結体では粒子は等軸形状となり、100%に近い高密度化が容易となることから、透光性アルミナが得られている(特許文献2〜8、非特許文献1)。しかし、従来のZrO、Y、La、MgO等の粒成長抑制剤を添加した焼結体では、異方形状粒子が形成されず、靭性が低いものしか得られていなかった。
高純度アルミナ粉末を常圧焼結し、それをHIP処理で高密度化して、透光性を付与する方法が知られている(特許文献9〜16)。この方法では、99.99%以上の高純度アルミナ粉末(又はZrO、Y、La、MgO等の粒成長抑制剤を添加したもの)による等軸形状粒子からなる透光性焼結体が得られている。しかし焼結粒子の形状が等軸であるため、いずれも靭性が低いものであった。
この様に、これまで高純度アルミナ、又はZrO、Y、La、MgO等の粒成長抑制剤を含むアルミナでは、たとえ熱間静水圧プレス(HIP)処理しても、透光性と高い靭性を両立したアルミナ焼結体は得られていなかった。
特開平11−1365号公報 米国特許第3026210号 特開昭53−111312号公報 特開昭56−140072号公報 特開昭56−160374号公報 特開平4−198060号公報 特開平6−340469号公報 特開平9−2865号公報 特開昭63−236757号公報 特開平3−168140号公報 特開平3−261648号公報 特開2001−322866号公報 米国特許第6878456号 米国特許第6648638号 特開平2006−87915号 特表2005−532250号公報 J.Ceram.Soc.Jpn.108[6]558−564(2000)
本発明は高靭性でなおかつ透光性に優れるアルミナ焼結体を提供するものである。
従来、ZrO、Y、La及びMgO等の粒成長抑制剤の存在下ではアルミナ粒子は異方形状とはならないとされてきたが、本発明者等はその様な粒子成長抑制剤と同時にNaO,SiO等のガラス相形成剤を共存させると、1550℃以上の特定の温度領域での焼結温度において、アルミナ焼結粒子が異方粒成長を開始するために、焼結体の気孔の低減と高靭性化が可能となり、この様な焼結体では熱処理によって透光性の低下のない耐熱性にも優れる透光性アルミナ焼結体となることを見出し、本発明を完成するに到ったものである。
以下、本発明の透光性アルミナ焼結体について説明する。
本発明の焼結体は、粒成長抑制剤としてランタノイド、ジルコニア及びイットリアの群から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物を総量で100〜1000ppm、ガラス相形成剤である1A族アルカリ金属酸化物、2A族アルカリ土類金属酸化物(但し、酸化マグネシウムを除く)、SiO、B、P及びGeOの群から選ばれる少なくとも1種以上を総量で20〜1000ppm含有し、なおかつ破壊靭性が4.5MPa・m0.5以上、波長600nmの可視光に対する全光線透過率(試料厚さ1mm)が60%以上であるアルミナ焼結体である。
本発明の焼結体は、ランタノイド、ジルコニア及びイットリアの群から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物と、NaO等の1A族アルカリ金属酸化物、2A族アルカリ土類金属酸化物(但し、酸化マグネシウムを除く)、SiO、B、P、GeOの中から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物との両方を含有することを必須とし、総含有量は前者が100〜1000ppm、後者が20〜1000ppmである。
本発明で用いるNaO等の1A族アルカリ金属酸化物、2A族アルカリ土類金属酸化物(但し、酸化マグネシウムを除く)、SiO、B、P、GeOはガラス相形成剤として働き、アルミナ粒子の異方成長を促進する。このうち、特にガラス相形成能力の高い酸化物はNaO、NaO+SiOである。この効果は総含有量20ppm未満では発現せず、又1000ppmを超えると焼結を阻害する。
本発明では上記の添加物と同時に粒成長抑制剤としてランタノイド、ジルコニア及びイットリアの群から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物を用いるが、本発明でいうランタノイドの酸化物としては特にLa 又はLu いずれかが好ましい。これらの添加物は前述の添加物によって進む異方性成長の発現する温度を制御し、これらの成分との組み合せによって初めて靭性と透光性の双方を満足する焼結体を得る効果を発揮する。添加量は総含有量100〜1000ppmで効果が特に顕著であり、100ppm未満では効果が薄れ、1000ppmを超えると透光性の低下をもたらす。
MgOは2A族アルカリ土類金属酸化物であるが、MgOの添加効果は粒成長抑制剤として働くため、2A族アルカリ土類金属酸化物にMgOを用いる場合には、1A族アルカリ金属酸化物、MgO以外の2A族アルカリ土類金属酸化物、SiO、B、P及びGeOの群からさらに少なくとも1種以上の成分を添加することが必要であり、2A族元素としてはMgO以外の酸化物を用いることがより好ましい。
本発明の焼結体は、破壊靱性は4.5MPa・m0.5以上であり、特に5MPa・m0.5以上、さらには6MPa・m0.5以上であることが好ましい。
本発明の焼結体の曲げ強度は特に規定されないが、高いことが好ましく、特に350MPa以上であることが好ましい。曲げ強度は破壊靱性が高くなると低下する傾向があり、破壊靱性8〜10MPa・m0.5では350〜400MPaとなる。ここでの破壊靱性、曲げ強度の評価方法はいずれもJISに規定される方法による。
本発明の焼結体は試料厚み1mmにおいて、600nmの可視光に対して60%以上の高い全光線透過率を有するものであり、特に65%以上、さらには70%以上であることが好ましい。
本発明の焼結体は焼結粒子に長軸長さが10μm以上、アスペクト比1.5以上の異方性粒子を含むことが好ましい。焼結体を構成するアルミナ粒子の代表例を図1に示す。
異方性粒子のアスペクト比は、大きいほど破壊靭性が高まる。異方性粒子のアスペクト比は3以上であることが好ましい。異方性粒子の含量は20vol%以上、さらには50vol%以上であることが好ましい。異方性粒子の含量が増加するほど、焼結体の破壊靱性は増加する。ただし、異方性粒子の含有量が100vol%になると、破壊靱性は10MPa・m0.5以上に達するが、曲げ強度が低下しやすくなるので、異方性粒子の含有量を過度に増加させる必要はない。
本発明の異方性粒子は特に板状(異方性板状粒子)であることが好ましい。
本発明のアルミナ焼結体は、異方性粒子以外の焼結粒子は等軸形状粒子からなり、異方性粒子が破壊靱性向上に寄与する一方、等軸形状粒子は異方性粒子を結合する働きをし、強度維持に寄与する。
次に、本発明のアルミナ焼結体の製造法について説明する。
本発明のアルミナ焼結体は、ランタノイド、ジルコニア及びイットリアの群から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物を総量で100〜1000ppm、1A族アルカリ金属酸化物、2A族アルカリ土類金属酸化物(但し、酸化マグネシウムを除く)、SiO、B、P及びGeOの群から選ばれる少なくとも1種以上を総量で20〜1000ppm含有するアルミナ粉末を成形後、常圧焼結した後、さらに熱間静水圧プレス(HIP)処理することによって製造することができる。
前者の粒成長抑制剤(ZrO等)、及び後者のガラス相形成剤(1A族アルカリ金属酸化物等)の添加方法は特に限定されないが、例えば、アルミナ粉末に添加し、混合・粉砕等によって分散させればよい。また酸化物粉末として添加しても良いが、焼成によって酸化物になる前駆体として添加してもよい。例えば、ZrOの場合、ZrOCl或いはZrO(NOを水溶液とし、アルミナ粉末と湿式混合した後、乾燥・焼成する方法が例示できる。同様にNaOの場合、NaCO或いはNaCl等の水溶性塩を用いることができる。
本発明の方法における成形方法も特に限定されるものではなく、金型プレス、ラバープレス、スリップキャスティング、射出成形等あらゆる方法が適用できる。
本発明における焼結は、常圧焼結した後、さらに熱間静水圧プレス(HIP)処理を実施する。
常圧焼結は、大気、酸素、真空等の雰囲気中で、温度1250℃〜1450℃で実施することが好ましい。常圧焼結では、焼結体を次のHIP処理を施すに必要な密度(理論密度の約95%)まで緻密化する。常圧焼結後の密度が95%以下では、HIP処理の圧力媒体ガスが焼結体内部に浸透し、気孔の除去が十分に達成されず、透光性が得られない。一方、常圧焼結時において焼結温度が高すぎると、気孔が焼結粒子内に取り込まれる現象(粒内気孔)が起こり易く、その様な気孔はHIP処理によって除去され難い。したがって、理論密度の95%以上及び粒内気孔の生成抑止の観点から、常圧焼結は温度1250〜1450℃が好ましい。
本発明の方法におけるHIP処理は焼結体中の残留気孔を消滅させ、透光性を付与する目的でなされる。処理温度は1200℃以上、処理圧力は50MPa以上が好ましく、特に1550〜1700℃が好ましい。本発明の組成では特に1550℃以上で焼結粒子の異方成長が始まり、異方性粒子を含む組織形成が進行する。従ってHIP処理温度は1550〜1600℃の温度が特に好ましい。一方、1700℃を超えると異方成長が進みすぎ、粒子が粗大になり、曲げ強度が低下し易い。
HIP処理における圧力媒体としては通常用いられるアルゴンガスを用いることができる。その他のガス、例えば窒素、酸素なども適用可能である。
HIP処理の圧力は50MPa以上が好ましく、通常適用される100〜200MPaであれば十分の効果が得られる。
本発明では、粒成長抑制剤とガラス相形成剤とを共存させることにより、1550℃までのHIP処理では微細な等方性粒子が支配的であるが、それ以上の温度から急激に異方形状粒子が出現するため、透光性に必要な気孔低減と、高靭性化に必要な異方性粒子の形成が理想的に進行することを見出した。
本発明の方法で用いるアルミナ粉末は特に限定されないが、純度99.99%以上、比表面積5〜20m/g、1μm以下の微粒子比率90vol%以上の微細粒子からなるものが好ましい。本発明の焼結体原料として、微粒子比率は特に重要で、90vol%以下では焼結温度が高くなる。本発明では、各種添加物を添加して焼結するが、アルミナ粉末そのものに高純度のものを用いることにより、各種成分の添加の効果にばらつきがなく、均質な品質の焼結体が得られる。
本発明のアルミナ焼結体は高靭性と透光性を兼ね備えており、歯科材料、特に歯列矯正ブラケット又は歯科修復用ミルブランクとしての用途に適している。特に、耐熱性に優れており、熱処理後に透光性の低下がないため、加熱コーティング、ガラス融着等の高温二次処理が可能である。
本発明のアルミナ焼結体は特に靭性が高いため、歯科材料に用いる上で、以下の様な利点もある。
ブラケットには矯正用ワイヤーから受ける捻り応力に耐える破壊抵抗力(トルク強度)が要求される。トルク強度は材料の破壊靭性によって決まるものであり、本発明の焼結体は高靭性であるため、高いトルク強度が獲得される。そのため、従来に比してよりコンパクトかつより複雑な形状からなるブラケットが設計でき、高機能セルフライゲーションブラケット等が可能になる。
クラウン、ブリッジ等の歯科修復材料には噛み合わせ応力に対する破壊抵抗力と自然歯に近い審美性を出すための透光性が要求される。この用途に利用されている従来のアルミナ焼結体の破壊靭性は4MPa・m0.5以下であり、又透光性にも乏しい。本発明の焼結体は高い破壊靭性と高い透光性を兼備しているので、審美性の増したクラウン、ブリッジ等を可能にする。近年、クラウン、ブリッジ等は焼結体をCAD−CAM方式で加工して製造され、この焼結体披加工材をミルブランクと称している。本発明の焼結体は高靭性であるため、加工時のチッピング、欠けの発生がない、優れたミルブランクとなる。
本発明のアルミナ焼結体は透光性が高く、なおかつ従来のものに比べて高い靭性を有しているため、特に歯科用途に適している。また、熱処理によって透光性の低下がないため、加熱コーティング、加熱融着などの二次処理に対して高い耐久性を有する。さらに二次処理によって、ブラケットのスロット部分に金属、ガラス等の被膜を形成し、矯正ワイヤーとの摩擦が軽減されるため、従来にない高機能のブラケット、クラウン・ブリッジ等を提供することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明の焼結体の評価方法を以下に説明する。
(1)破壊靭性
破壊靭性試験はJISR1607「ファインセラミックスの破壊靱性試験方法」に基づきSEPB法により測定した。5本の平均値を採用した。
(2)曲げ強度
曲げ試験はJISR1601「ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法」に基づき3点曲げ試験により測定し、10本の平均値を採用した。
(3)全光線透過率
全光線透過率はJISK7105「プラスティックスの光学特性試験方法」およびJISK7361−1「プラスティック・透明材料の全光線透過率の試験方法」に基づき、ダブルビーム方式の分光光度計(日本分光株式会社製、V−650型)で測定した。測定試料は焼結体厚みを1mmに加工し表面粗さRa=0.02μm以下に両面鏡面研磨したものを用いた。光源(重水素ランプおよびハロゲンランプ)より発生した光を試料に透過および散乱させ積分球を用いて全光線透過量を測定した。測定波長領域は200〜800nmの領域で測定し、本件での全光線透過率は、可視光線領域の600nmの波長での透過率とした。
(4)粒子の長軸長さ、アスペクト比、異方性粒子の割合
焼結体を鏡面研磨し、ケミカルエッチングにより粒界を際立たせ、金コーティングしたものを走査型電子顕微鏡或いは光学顕微鏡写真で観察し、この写真の画像解析より算出した。各粒子を矩形近似し、長辺を長軸長さ、短辺を短軸長さとして測定した。長軸長さを短軸長さで除した値をアスペクト比とした。長軸長さ10μm以上、アスペクト比1.5以上の粒子をピックアップし、その粒子が占める面積から体積比率を求めた。その際の測定粒子数は100個以上とした。なお、ケミカルエッチングは焼結体を80℃の過飽和ホウ酸ナトリウム溶液に浸して表面に付着させた後、900℃で0.5時間加熱し冷却後、塩酸溶液で洗浄する方法で行った。
(5)焼結体密度
焼結体の水中での重量を測定するアルキメデス法によって求めた。相対密度は理論密度を3.98g/cmとして計算した。
実施例1〜3
純度99.99%以上、比表面積14m/g、1μm以下の微粒子比率100vol%の高純度アルミナ粉末(大明化学工業製)、ジルコニア粉末(東ソー製3Y(3モル%Y−97モル%ZrO))、NaO、SiO等不純物を含有するワックス系熱可塑性樹脂を用い、アルミナ1000gにジルコニア0.4g、樹脂200gを添加し、加温ニーダーで混練し、ジルコニア添加アルミナコンパウンドを作製した。
当該コンパウンドを射出成形機によりプレート形状に成形した。成形体を600℃まで加熱し脱脂した後、大気中にて1300℃、2時間焼成し一次焼結体を得た。一次焼結体をHIP装置にて、150MPaのアルゴンガス雰囲気中で処理温度を1550、1600、1650℃の各温度で1時間処理した。
1600℃でHIP処理した焼結体のケミカルエッチング面光学顕微鏡写真の一例を図1に示す。異なる箇所から同様の写真を7枚撮影し、それを用いた画像解析結果を表1に示す。焼結体組織は20μm以上の大きい異方性板状アルミナ粒子と10μm以下の小さい等軸形状粒子との2種類の焼結粒子組織からなるものであった。
長軸長さ10μm以上、アスペクト比1.5以上の異方性粒子割合、破壊靱性、曲げ強度、全光線透過率、密度の測定を行った。結果を表2に示す。焼結体は異方性粒子を含有し、高い破壊靱性と優れた透光性を有するものであった。また、1600℃HIP処理試料の化学分析を行った。結果を表3に示す。Zr、Na、Siの各元素が含有されていることを確認した。
Figure 0005272658
Figure 0005272658
Figure 0005272658
実施例4〜6
実施例1〜3で用いたものと同様の高純度アルミナ粉末(大明化学工業製)にZrO粉末を0.05wt%、炭酸ナトリウムをNaO換算で0.03wt%添加し、高純度アルミナボールを用い水溶媒中で混合し、ZrO・NaO含有アルミナ粉末を調製した。同様の方法で、Y・NaO含有アルミナ粉末、La・NaO含有アルミナ粉末を得た。
これらの粉末を用い、金型一軸プレス装置で圧力50MPaを加えて40mm×50mm、厚さ5mmの板状成形体とし、さらにゴム型に入れ冷間静水圧プレス装置で圧力200MPaを加えて成形した。成形体を大気中1400℃で2時間焼結し一次焼結体とし、さらにそれをHIP装置によりアルゴンガス中、温度1550℃、圧力150MPaで1時間処理した。
得られた焼結体試料の化学分析を行った。結果を表4に示す。焼結体のケミカルエッチング面の観察から、これらの焼結体は異方性粒子を含有していた。実施例1〜3と同様の画像解析を行い、長軸長さ10μm以上、アスペクト比1.5以上の異方性粒子割合を求め、破壊靱性、曲げ強度、全光線透過率、密度の測定を行った。結果を表5に示す。いずれの焼結体も異方性粒子を含み、高い破壊靱性と優れた透光性を有するものであった。
Figure 0005272658
Figure 0005272658
実施例7〜10
実施例1及び3と同様の処理を施した焼結体から両面鏡面研磨した厚さ1mmの試料を作製し、1300℃、1400℃の各温度で大気中1時間加熱処理し、処理前後の全光線透過率を測定した。全光線透過率の変化を表6に示す。
Figure 0005272658
実施例11
実施例1〜3と同様のコンパウンドを用い、射出成形により歯列矯正ブラケットを作製した。成形体を600℃まで加熱し脱脂した後、大気中にて1300℃、2時間焼成し一次焼結体を得た。その一次焼結体を蓋つきアルミナ容器に入れ、HIP装置に設置し、アルゴンガス雰囲気中150MPaの圧力下で1600℃、1時間処理した。得られたブラケットは実施例2のサンプルと同程度の透光性を示していた。ブラケットのトルク強度を測定した結果、0.69kg・cmの値が得られ、市販アルミナブラケットに比較して20%以上高強度であった。
なお、トルク強度は、ブラケットを試料台に接着した後、そのスロットに0.018×0.025インチSUS製ワイヤーを挿入し、トルク測定装置においてブラケットを、ワイヤーを固定した状態で回転させ、それが破壊するときの応力から算出した。測定値5点の平均値とした。
比較例1〜4
実施例で用いたものと同じ高純度アルミナ粉末(大明化学工業製 純度99.99%以上)にZrOのみを0.05wt%添加した粉末、Yのみを0.05wt%添加した粉末、Laのみを0.05wt%添加した粉末、及び無添加の粉末を用い、HIP温度を1400℃とした以外は、実施例4〜6と全く同様の方法で透光性アルミナ焼結体を得た。焼結体の化学分析結果を表7に示す。
いずれも図2に示すような等軸形状粒子からなり、異方形状粒子は認められなかった。平均粒径、平均アスペクト比、破壊靱性、曲げ強度、全光線透過率、密度の測定を行った。結果を表8に示す。ZrO等の添加による粒成長抑制効果により、長軸長さ10μm以上、アスペクト比1.5以上の異方性粒子が含まれず、曲げ強度は高いが破壊靱性は低いものであった。ZrO等を添加したものは密度が十分に高いにもかかわらず透光性に劣るものであった。
Figure 0005272658
Figure 0005272658
比較例5〜6
比較例4で用いた無添加の焼結体を実施例7〜10と同様の方法で加熱処理し、処理前後の全光線透過率を測定し、加熱による透光性の低下を評価した。実施例7〜10に比較して、透過率の低下が顕著であった。結果を表9に示す。
Figure 0005272658
本発明の焼結体組織(実施例2)を示す光学顕微鏡写真 等軸形状粒子からなる焼結体組織(比較例4)を示す光学顕微鏡写真

Claims (7)

  1. ランタノイド、ジルコニア及びイットリアの群から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物を総量で100〜1000ppm、1A族アルカリ金属酸化物、2A族アルカリ土類金属酸化物(但し、酸化マグネシウムを除く)、SiO、B、P及びGeOの群から選ばれる少なくとも1種以上を総量で20〜1000ppm含有し、なおかつ破壊靭性が4.5MPa・m0.5以上、波長600nmの可視光に対する全光線透過率(試料厚さ1mm)が60%以上であるアルミナ焼結体。
  2. ランタノイドの酸化物がLa 及びLuいずれか1種以上である請求項1に記載のアルミナ焼結体。
  3. 焼結粒子に長軸長さが10μm以上、アスペクト比1.5以上の異方性粒子を含むことを特徴とする請求項1乃至2に記載のアルミナ焼結体。
  4. 長軸長さが10μm以上、アスペクト比1.5以上の異方性粒子の含有率が20vol%以上である請求項1乃至3に記載のアルミナ焼結体。
  5. 比表面積5〜20m /g、1μm以下の微粒子比率が90vol%以上のアルミナ粉末に、ランタノイド、ジルコニア及びイットリアの群から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物を総量で100〜1000ppm及び1A族アルカリ金属酸化物、2A族アルカリ土類金属酸化物(但し、酸化マグネシウムを除く)、SiO、B、P及びGeOの群から選ばれる少なくとも1種以上を総量で20〜1000ppmを添加してなる粉末を成形後、1250〜1450℃で常圧焼結した後、さらに1550〜1700℃、50MPa以上で熱間静水圧プレス(HIP)処理するアルミナ焼結体の製造方法。
  6. 請求項1乃至4に記載のアルミナ焼結体を用いた歯科材料。
  7. 歯列矯正ブラケット又は歯科修復用ミルブランクのいずれかである請求項の歯科材料。
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