JP5272225B2 - 低融点金属粉末およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、低融点金属の粉末およびその製造方法に関し、特に室温近傍の温度で液体となる低融点金属であるガリウムおよび融点が150℃以下のガリウム合金の粉末と、その製造方法に関するものである。
金属ガリウムやガリウム合金は、窒化ガリウム、ガリウムリンおよびガリウムヒ素などIII−V族半導体の主要材料となり、特に、窒化ガリウムは青色発光ダイオードの材料として、近年、脚光を浴びている材料の1つである。
ガリウムやガリウム合金を上記半導体等の原料として用いる場合には、粉末である方が、取り扱いが容易であるため好ましい。しかし、金属ガリウムの融点は29.8℃と低く、また、Ga−InやGa−Zn等のガリウム合金の中にも、体温以下の温度で液体となってしまうものがある。そのため、金属ガリウムや低融点のガリウム合金を固体となる低温で粉砕して粉末状態としても、その状態を維持するためには、常時、融点以下の低温に保持しておく必要があるため、ほとんど製造されていないのが実情である。
従来、低融点金属を粉末化する技術としては、例えば、特許文献1には、融点が350℃以下の低融点金属材料の溶湯を注湯ノズルより流下させると共に、流下する溶湯流にガスノズルよりアトマイズガスを吹き付けて微滴粒化したあと前記微滴粒を水により急速冷却して低融点金属粉末を製造する方法が、また、特許文献2には、融点が500℃以下の低融点金属材料の溶湯を、ガスアトマイズ法によって、注湯ノズルから流下させると共に、流下する溶湯流にガス噴射口から加熱したアトマイズガスを吹き付けて微細粒化する低融点金属粉末の製造方法において、上記微細粒化された溶融金属粒子を、分散媒として有機溶媒揮発成分を含んだ不活性ガス雰囲気中にて流動、冷却して、微細金属粒子の表面に有機溶媒揮発成分をコーティングした微細金属粒子を、有機溶媒中に回収する低融点金属粉末の製造方法が開示されている。
特開平11−323411号公報 特開2003−286502号公報
しかしながら、上記の特許文献1および特許文献2に記載された技術は、融点が156℃のインジウムやその合金を対象とした技術であり、融点が150℃より低下すればするほどガスアトマイズして水中に投入しても凝固速度が遅くなり、凝固する前に粒子同士が凝集し、扁平状粒子や粗大粒子が増加して、所望の粒度を有する粉末を得ることは困難になってくる。特に、室温で容易に液体状態となってしまう低融点のガリウムやガリウム合金には適用することができない。
そこで、本発明の目的は、150℃以下の融点を有するガリウムおよびガリウム合金の粉末を提供すると共に、その製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、金属ガリウムあるいはガリウム合金を適切な分散媒中で粉砕や磨砕等(以降、単に「粉砕」と言う。)すると、分散媒中に微粒子が懸濁したスラリーが作製できると同時に、その微粒子の表面に水酸化物皮膜が形成され、その皮膜が乾燥時および乾燥後に融点以上の雰囲気中におかれても安定して粉末の状態を維持する作用があることを見出した。また水酸化物皮膜は400℃以上で容易に酸化物皮膜へと変化し、その場合でも同様に粉末状態を維持する機能を保持し、1000℃という高温でも安定して粉末の状態を維持することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、ガリウムまたは融点が150℃以下のガリウム合金の平均粒径が200μm以下の室温で液状の球状微粒子からなる粉末であって、その微粒子の表面には水酸化物および/または酸化物皮膜が形成されてなり、微粒子全体の酸素含有量が0.5〜15mass%であることを特徴とする低融点金属粉末である。
また、本発明の低融点金属粉末における上記ガリウム合金は、ガリウムと、インジウム、亜鉛、銀、錫、水銀、ビスマス、アルミニウムおよびマグネシウムのうちから選ばれる1種または2種以上とからなるものであることを特徴とする。
また、本発明の上記低融点金属粉末は、ガリウムまたはガリウム合金の酸化物、窒化物、砒化物あるいはリン化物の原料であることを特徴とする。
また、本発明は、上記いずれかの低融点金属粉末の製造方法であって、ガリウムまたは融点が150℃以下のガリウム合金を、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンおよびヘキサンのうちから選ばれる1種または2種以上の分散媒とともに湿式で粉砕して上記ガリウムまたはガリウム合金の微粒子が分散媒中に懸濁したスラリーとし、その後、そのスラリーを乾燥して分散媒を除去し、ガリウムまたはガリウム合金の微粒子を回収することを特徴とする低融点金属粉末の製造方法を提案する。
また、本発明の低融点金属粉末の製造方法は、上記粉砕・磨砕を、ボールミル、遊星ミル、遊星ボールミル、振動ミル、ローターミル、ハンマーミル、ディスパーミル、自動乳鉢、ミキサーおよびホモジナイザーのいずれか1または2種以上を用いて行うことを特徴とする。
上記乾燥を、真空乾燥、加熱乾燥、温風または熱風乾燥および噴霧乾燥のいずれか1または2種以上の方法で行うことを特徴とする。
本発明によれば、室温から1000℃の高温下でも安定して、粉末状態を維持することができる低融点金属の粉末を得ることができる。したがって、本発明の低融点金属粉末は、取り扱いが容易であり、各種化合物の原材料として好適に用いることができる。
GaおよびGa−In合金微粒子のスラリー中の粒度分布を測定した結果を示すグラフである。 Ga粉末およびGa−In合金粉末のX線回折パターンである。 Ga粉末およびGa−In合金粉末のSEM像である。
発明者らは、室温近傍温度で容易に液体となるため、取り扱いが難しいとされてきた低融点の金属ガリウムおよびガリウム合金の微粒子を、融点以上の温度でも微粒子として粉末状態を安定して維持させる方法について鋭意検討を重ねた。その結果、ガリウムまたはガリウム合金を、有機溶媒からなる分散媒中で湿式粉砕し、分散媒中にそれらの微粒子が懸濁したスラリーとし、その後、そのスラリーを乾燥して分散媒を除去することにより得られるガリウムまたはガリウム合金の微粒子からなる粉末は、融点以上の室温でもまた1000℃という高温下でも、液体のまま粉末状態を安定して維持し得ることを見出し、本発明を完成させた。
以下、本発明を開発する基礎となった実験について説明する。
内容量400cmのアルミナ製ポットに、15mmφのアルミナボールを容量の半分程度、また、分散媒としてエタノールを120ml投入した粉砕容器を準備し、この粉砕容器中に、液体状態の金属ガリウム(融点:29.8℃)15.0gを投入後、100rpmで4時間の粉砕処理を施してガリウムの微粒子が分散媒中に懸濁したスラリーとし、得られたスラリー中に懸濁したガリウム微粒子の粒度分布を、レーザー回折粒度分布計を用いて測定した。
また、150℃に加熱した液体状態の金属ガリウム13.5gに、粒径が2〜5mmφのショット状金属インジウム1.5gを溶解して、液体状態のガリウム−10mass%インジウム合金(融点:約23℃)15.0gを得、このガリウム−インジウム合金を、上記と同様にして粉砕処理して、ガリウム−インジウム合金の微粒子が分散媒中に懸濁したスラリーとし、上記と同様、粒度分布を測定した。
次いで、上記スラリーを真空乾燥して分散媒(エタノール)を除去し、金属ガリウムおよびガリウム−インジウム合金の微粒子からなる粉末を回収し、この粉末について、室温で、X線回折(XRD)するとともに、SEMで外観観察と表面のEDX分析(エネルギー分散型X線分光分析)を行った。さらに、得られた粉末中に含まれる酸素量を不活性ガス融解法で分析した。
図1は、ガリウム粉末の乾燥前の状態、すなわち、分散媒を除去する前のスラリー中におけるガリウム微粒子の粒度分布を測定した結果を示したものである。この結果から、金属ガリウムの微粒子は、平均粒径が0.80μm、粒度分布幅が0.1〜3.5μm、また、ガリウム−インジウム合金の微粒子は、平均粒径が3.74μm、粒度分布幅が0.3〜20μmであり、シャープな粒度分布を示していることがわかる。
図2は、スラリーを乾燥し、分散媒を除去して得られた低融点金属の粉末をX線回折(XRD)した結果を示したものである。図2からわかるように、ガリウム、ガリウム−インジウム合金とも、回折パターンがブロードしており、これらの粉末は非晶質であること、すなわち、液体のまま粉末状態を維持していることがわかる。
また、図3は、ガリウムおよびガリウム−インジウム合金の乾燥後の粉末を、SEMで観察した写真を示したものであり、ガリウム粉末は0.1〜10μm、ガリウム−インジウム合金粉末は0.5〜100μmの大きさであり、上記スラリー状態における微粒子よりも大きな粒子が観察されている。これから、ガリウムおよびガリウム−インジウム合金の粉末は、乾燥過程における攪拌等による圧力で若干の粒子同士の融着が進むものの、粉末状態をそのまま維持していることがわかる。
上記のように、上記ガリウムおよびガリウム−インジウム合金の粉末は、室温では液体となっているにも拘わらず、粉末状態を維持し続けていることがわかった。さらに、この液状微粒子は、圧力を加えない限り、室温でもまた1000℃の高温下においても粉末状態のまま存在し得る安定性を有している。
そこで、発明者らは、その原因について調査した。
図3のSEM写真のガリウムおよびガリウム−インジウム合金の粉末表面には、小さな異物の付着が多数認められる。そこで、ガリウム−インジウム合金の粉末表面をEDX分析し、その結果を表1に示した。異物付着の認められないa,c,eおよびgの測定箇所の酸素量は約2mass%程度である。これに対して、異物付が着したb,dおよびfの測定箇所の酸素量は最大で27mass%であり、この最大値は、水酸化ガリウム(GaOOH)の理論酸素含有量31mass%および酸化ガリウム(Ga)の理論酸素含有量26mass%に近い値である。
Figure 0005272225
また、ガリウムおよびガリウム−インジウム合金の粉末のXRD分析結果を示した図1には、ブロード化したガリウム、ガリウム−インジウム合金のピーク以外に、小さなピークが多数認められるが、これらのピークは水酸化ガリウム(GaOOH)のピークと一致し、また、上記ピークの高さは、粉末中に含まれる酸素含有量(Ga粉末:7.0mass%、Ga−In合金:2.0mass%)と比例している。なお、上記GaOOHは、EDXの結果からも明らかなように10mass%前後のInを含んでいる。
これらの結果から、上記ガリウムおよびガリウム−インジウム合金の粉末表面に付着した異物は、水酸化ガリウム(GaOOH)であり、また、粉末の表面には、水酸化ガリウム(GaOOH)の薄い皮膜が形成されていることが推定された。そして、それらの皮膜や異物によって、粉末同士の融着が抑制される結果、融点以上の温度でも、液体のまま粉末状態を維持することができるものと推定される。
なお、XRDでは確認されなかったが、雰囲気中には酸素が存在し、酸化が進行することから、上記異物や皮膜中には、少なからず酸化ガリウム(Ga)も含まれているものと推定される。
本発明は、上記知見にさらに検討を重ねてなされたものである。
次に、本発明の低融点金属粉末について具体的に説明する。
上述したように、本発明の低融点金属粉末は、ガリウムまたは融点が150℃以下のガリウム合金の液状粉末であることに特徴がある。
ガリウムは、融点が29.8℃であり、体温以下の温度で液体となる金属であるため、加熱乾燥などの処理により得られる粉末は、多くの場合、液体の粉末状態である。なお、冬期での保管など、融点以下の環境下におかれると固体へと変化するが、液体ガリウムは過冷却される場合があり、直ちに固体化するとは限らない。
また、ガリウム合金は、本発明では、融点が150℃以下のものを対象とする。ここで、ガリウム合金の融点の上限を、上記のように150℃としたのは、本発明は、従来技術では粉末化が困難であった融点領域を対象とする技術であるからであり、融点が100℃以下の合金であれば、本発明の効果をより享受することができる。なお、自明ながら、ガリウム合金の場合、融点が高ければ高いほど、固体粉末として得られる可能性が増加する。さらには、150℃を超える融点を有する合金であっても、本発明による方法で粉末化が可能であることはいうまでもない。
上記、低融点の融点を有するガリウム合金としては、2元系状態図のガリウムリッチ側でガリウムと低融点の共晶合金を形成する、インジウム、亜鉛、銀、錫、水銀、ビスマスおよびアルミニウム等との合金を挙げることができる。因みに、上記2元系共晶合金の融点は、Ga−In:15.7℃、Ga−Zn:20℃、Ga−Ag:25℃、Ga−Sn:20.5℃、Ga−Hg:27.7℃およびGa−Al:26.4℃であり、いずれも融点が30℃以下である。
なお、本発明の低融点金属は、上記2元系に限定されるものではなく、融点が150℃以下であれば、3元系以上でもよい。さらに、融点が150℃以下であれば、Ga−Bi合金やGa−Mg合金のように、共晶合金を形成しない合金であってもよい。
また、本発明の低融点金属粉末の特徴は、その液状粉末の表面に、粉末粒子同士が融着するのを防止する効果を有する皮膜が形成されていることである。
上記粒子表面の皮膜は、水酸化ガリウム(GaOOH)を主体とし、それに、酸化ガリウム(Ga)等が含まれたものと考えられ、400℃以上に加熱すると、GaOOHは容易にGaへと変化するが、皮膜としての機能は変わらず維持される。なお、上記皮膜は、分散媒中で微粒子とする粉砕工程で主に形成されるものと考えられ、ガリウム合金の場合、上記皮膜中に、合金を構成するガリウム以外の元素が含まれることがある。
なお、上記GaOOHおよび/またはGaを主体とする皮膜が、粒子同士の融着を防止する機能を有するには、酸素の含有量が全ガリウムまたは全ガリウム合金に対して0.5〜15mass%であることが好ましい。酸素が0.5mass%より少ないと、十分な厚さの皮膜が形成されず、スラリー乾燥中あるいは乾燥後に粉末を静置するだけで隣接した粉末粒子と融着を起こしてしまう。一方、酸素量が15mass%を超えると、隣接した粉末粒子との融着は起こり難くなるものも、金属としてのガリウム量が減少し過ぎるため好ましくない。より好ましくは、1.0〜10mass%の範囲である。
なお、本発明の低融点金属粉末の粒径については、特に制限は設けないが、平均粒径が200μm以下であることが好ましい。200μmを超える大きさとなると、自重によって液体粒子同士が融着するようになり、粉体として安定して存在することが難しくなるからである。より好ましくは、100μm以下である。
なお、前述したように、本発明の低融点金属粉末は、融点以上の温度において液体の状態にある場合、この粉末に指などで押しつぶす等の圧力を加えると、粒子が破壊されて容易に隣接する粒子と融着を起こして粗大化するが、通常に静置するだけでは、融着を起こすことなく粉末のままで存在する。したがって、本発明の低融点金属粉末は、一旦形成されると、何らかの圧力を加えない限り、1000℃の高温下でも安定して粉末の状態で存在することができる。
次に、本発明に係る低融点金属粉末の製造方法について説明する。
本発明の低融点金属の粉末は、ガリウムまたは融点が150℃以下のガリウム合金を、分散媒とともに湿式で粉砕して上記ガリウムまたはガリウム合金の微粒子が分散媒中に懸濁したスラリーとし、その後、そのスラリーを乾燥して分散媒を除去し、ガリウムまたはガリウム合金の微粒子を回収することにより、GaOOHを主体とした皮膜で表面が被覆された低融点金属の粉末を得ることができる。
ここで、上記低融点金属を粉砕して液体微粒子が分散媒中に懸濁したスラリーを得る方法としては、ボールミル、遊星ミル、遊星ボールミル、振動ミル、ローターミル、ハンマーミル、ディスパーミル、自動乳鉢、ミキサーおよびホモジナイザー等、湿式で高速剪断、攪拌、混合が可能な方法であればいずれかの方法でも好適に用いることができる。また、上記2つ以上を組み合わせてもよい。なお、上記粉砕方法の選択に当たっては、それぞれの方法によって得られる微粒子の大きさが異なるので、所望とする微粒子の大きさに応じて適宜選択するのが好ましい。
なお、粉砕する際の温度は、ガリウムまたはガリウム合金が固体となる融点以下の温度で行っても、融点以上の温度で行ってもよい。ただし、融点以上の液体状態で粉砕した場合には、微粒子の粒径が大きくなる傾向があるので、要求される粉末の大きさに応じて、最適な温度を設定するのが好ましい。また、粉砕時間は、長ければ長いほど粒子径を小さくすることができるので、目的とする粉末粒子の大きさに応じて適宜決定すればよく、特に制限はない。ただし、粉砕時間をいたずらに長くしても、粉砕効果が飽和してしまうので、それぞれの方法の特性に応じて粉砕時間を決定するのが好ましい。例えば、ボールミルでは、4時間程度で粉砕効果が飽和してしまうので、それ以上の粉砕は好ましくない。
次に、低融点金属を粉砕する際に用いる分散媒は、粉砕によって粉末の表面にGaOOHを主体とした皮膜や異物付着を形成することができる有機溶媒であればよく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ヘキサンのうちから選ばれる1種または2種以上であれば好適に用いることができる。中でも、アルコール類は、気化熱が大きいため、粉砕時に発生する熱による温度上昇を適度に抑えることができるため好ましい。
次いで、上記低融点金属の微粒子が懸濁したスラリーを乾燥させて分散媒を除去することにより、低融点金属の微粒子からなる粉末を回収することができる。上記乾燥方法としては、真空乾燥、加熱乾燥、温風(熱風)乾燥、噴霧乾燥(スプレードライ)等、いずれの方法を用いてもよいが、好ましくは熱をかけない真空乾燥法または粒子を流動させながら乾燥させる噴霧乾燥法が望ましい。なお、この乾燥工程においても、低融点金属粉末の表面に水酸化皮膜や酸化皮膜が形成されるものと思われる。
なお、この乾燥工程では、低融点金属の粉末にある程度の圧力が加わることは避け難いので、回収した粉末同士が融着して粉末の平均粒径が大きくなる傾向にあるが、乾燥前の状態で平均粒径が1μm程度であれは、10μm以下の平均粒径の粉末を得ることができる。
上記のようにして製造される本発明の低融点金属の粉末(ガリウムおよびガリウム合金の粉末)は、圧力を加えない限り、高温下でも安定して液体のまま粉末の状態を維持するので、この特性を活かして、各種ガリウム化合物の原料として用いることができる。例えば、本発明のガリウムまたはガリウム合金の粉末に、高温下で酸素または酸素化合物を作用させることにより、蛍光体原料、レーザーダイオード、ガリウム−ヒ素半導体等の原料となる酸化ガリウムやガリウム合金の酸化物を製造することができる。また、最近では、ガリウムをドープした酸化亜鉛薄膜が、太陽電池やプラズマディスプレイ等に用いる透明導電膜としての用途が開発されつつあり、この用途に用いられる酸化ガリウムのターゲット材の原料としても、本発明の低融点粉末は好適に用いることができる。また、本発明により製造されるガリウムまたはガリウム合金の粉末は、高温下で窒素または窒素化合物を作用させることにより、青色発光ダイオードとして有用な窒化ガリウムやガリウム合金の窒化物を製造する原料として、また、高温下で砒素または砒素化合物を作用させることにより、化合物半導体や赤色・赤外光の発光ダイオードに広く用いられガリウム砒素やガリウム合金の砒化物を製造する原料として、さらに、高温下でリンまたはリン化合物を作用させることにより、赤・黄・緑の発光ダイオードとして有用なガリウムリンやガリウム合金のリン化物を製造するための原料等としても好適に用いることができる。
金属GaおよびGa−In合金以外の低融点金属についても粉末を得ることが可能か否かを確認するため、内容量400cm のアルミナ製ポットに、15mmφのアルミナボールを容量の約半分まで投入し、さらに分散媒としてエタノールを120ml投入した粉砕容器を準備し、この粉砕容器に、150℃に加熱した液状の金属ガリウムに粒径が2〜5mmφのショット状合金元素を溶解した液状のGa−5mass%Zn合金(融点:25℃)、Ga−5mass%Sn合金(融点:21℃)、Ga−10mass%In−5mass%Zn合金(融点:20℃程度)のそれぞれを15gずつ投入し、100rpmで回転させて4hrの粉砕処理を施し、それぞれの低融点金属(合金)の微粒子がエタノール中に懸濁したスラリーとした。上記のようにして得た各低融点合金のスラリーについて、レーザー回折粒度分布計を用いてスラリー中の微粒子の粒径を測定した。
次いで、上記スラリーを温風乾燥にてエタノールの大部分を蒸発させた後、80℃に設定した自然対流式定温乾燥機で最終乾燥して、それぞれの低融点合金の粉末を得た。
得られた低融点合金粉末は、その後、SEMで外観を観察すると共に、金属Gaを除く合金についてEDXで成分分析を行った。また、不活性ガス融解法で別途、粉末中に含まれる酸素量を分析した。
上記測定の結果を表2に示したが、スラリー中の微粒子の平均粒径は、1〜3μm程度であった。また、上記スラリーを乾燥して得られた低融点合金の粉末をSEMで観察したところ、いずれも球状の粉末を呈しており、各粉末の表面には異物の付着が認められた。また、各粉末の酸素量は、1〜6mass%程度であった。さらに、EDX分析の結果から、各粉末粒子は、合金化していることがわかった。以上の結果から、Ga−Zn合金、Ga−Sn合金、Ga−In−Zn合金でも、本発明の方法を用いることにより、低融点合金の粉末を得ることができることがわかる。
Figure 0005272225
内容量400cmのアルミナ製ポットに、15mmφのアルミナボールを容量の約半分まで投入し、さらに、分散媒としてエタノールを120ml投入した粉砕容器を準備し、この粉砕容器に、液体状の金属ガリウム15.0gを容器内に分散して投入後、100rpmで1hr、4hrおよび16hrの粉砕処理を行い、ガリウムの微粒子が懸濁したスラリーとし、得られたスラリー中の微粒子の粒度分布を、レーザー回折粒度分布計で測定した。
その後、上記スラリーを、実施例1と同様にし、乾燥して分散媒(エタノール)を除去し、得られたGa粉末中の酸素含有量を、実施例1と同様にして分析した。
上記測定の結果を表3のNo.1〜3に示したが、ボールミルによる粉砕では、粉砕時間が4hrを超えると粉砕効果が飽和していること、また、粉砕時間が長くなると酸素量が増加する傾向があるため、酸化を抑える上では好ましくないことがわかる。
Figure 0005272225
内容量400cmのアルミナ製ポットに、15mmφのアルミナボールを容量の約半分まで投入し、さらに、分散媒として酢酸エチルまたはアセトンを120ml投入した粉砕容器を準備し、この粉砕容器に、液体状の金属ガリウム15.0gを容器内に分散して投入後、4hrの粉砕処理を行い、ガリウムの微粒子が懸濁したスラリーとし、得られたスラリー中の微粒子の粒度分布を、レーザー回折粒度分布計で測定した。
その後、上記スラリーを、実施例1と同様にして乾燥し、分散媒(エタノール)を除去し、得られたGa粉末中の酸素含有量を、実施例1と同様にして分析した。
また、分散媒として酢酸エチルを用いたガリウム粉末については、粉末の表面をSEMで観察するとともに、XRDによる分析を行った。
上記測定の結果を表3のNo.4,5に併記して示したが、分散媒としてエタノール以外の有機溶媒を用いても、低融点金属の粉末が得られることがわかる。また、SEMによる観察では、分散媒として酢酸エチルを用いた粉末の表面にも、異物の付着が確認され、この異物はXRDで測定の結果、エタノールを分散媒とした粉末と同様、水酸化ガリウム(GaOOH)であることが確認された。また、上記XRDの結果から、この粉末も非晶質であり、内部は液体状態であった。
本発明の方法によって得た金属Ga粉末およびGa−10mass%In合金粉末を、石英ボートに入れて、50mmφの石英炉芯管を使用した横型管状炉にセットし、Arガスを1L/minの流量で流しながら、1000℃×1hrの熱処理を施した。上記熱処理後のGa粉末を冷却後、炉から取り出して、粉末を確認したところ、金属Ga粉末は、水酸化物皮膜が酸化物皮膜へと変化したこと以外は加熱前と変わらず、融着を起こすことなく粉末状態の維持していた。この結果から、本発明の低融点金属粉末は、室温だけでなく、1000℃の高温下でも、安定して粉末であり続けることができることがわかった。
本発明の方法で得た金属Gaの粉末1.00gを秤量し、石英製ボートにのせ、電気炉を使用して大気中で1000℃×1hrに加熱し、酸化処理を施した。
同様にして、本発明の方法で得た金属Gaの粉末1.00gを秤量し、石英製ボートにのせ、実施例4において用いた横型管状炉を使用して、NHガスを1L/minで流しながら1000℃×1hrの窒化処理を施した。
上記処理後、放冷し、ボート中の粉末を取り出してXRDで分析した結果、金属Ga粉末は、酸化処理では全て酸化ガリウム(Ga)の粉末に、また、窒化処理では、全て窒化ガリウム(GaN)の粉末となっていることが確認された。
上記の結果から、本発明の低融点金属粉末は、半導体等の原料となるガリウム化合物を製造する原料として好適であることがわかる。
ガリウムおよびガリウム合金の粉末は、酸化ガリウム、窒化ガリウム、ガリウム砒素、ガリウム燐等のガリウム化合物またはガリウム合金化合物の原料として好適に用いることができる。特に、本発明の低融点金属粉末は、粉末であることを利用して、スプレー、塗布、印刷等を行った後、上記化合物へと変化させることにより、薄膜等の任意の形状のガリウムおよびガリウム合金の化合物をえることができる。

Claims (6)

  1. ガリウムまたは融点が150℃以下のガリウム合金の平均粒径が200μm以下の室温で液状の球状微粒子からなる粉末であって、その微粒子の表面には水酸化物および/または酸化物皮膜が形成されてなり、微粒子全体の酸素含有量が0.5〜15mass%であることを特徴とする低融点金属粉末。
  2. 上記ガリウム合金は、ガリウムと、インジウム、亜鉛、銀、錫、水銀、ビスマス、アルミニウムおよびマグネシウムのうちから選ばれる1種または2種以上とからなるものであることを特徴とする請求項1に記載の低融点金属粉末。
  3. 上記低融点金属粉末は、ガリウムまたはガリウム合金の酸化物、窒化物、砒化物あるいはリン化物の原料であることを特徴とする請求項1または2に記載の低融点金属粉末。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の低融点金属粉末の製造方法であって、ガリウムまたは融点が150℃以下のガリウム合金を、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンおよびヘキサンのうちから選ばれる1種または2種以上の分散媒とともに湿式で粉砕して上記ガリウムまたはガリウム合金の微粒子が分散媒中に懸濁したスラリーとし、その後、そのスラリーを乾燥して分散媒を除去し、ガリウムまたはガリウム合金の微粒子を回収することを特徴とする低融点金属粉末の製造方法。
  5. 上記粉砕・磨砕を、ボールミル、遊星ミル、遊星ボールミル、振動ミル、ローターミル、ハンマーミル、ディスパーミル、自動乳鉢、ミキサーおよびホモジナイザーのいずれか1または2種以上を用いて行うことを特徴とする請求項に記載の低融点金属粉末の製造方法。
  6. 上記乾燥を、真空乾燥、加熱乾燥、温風または熱風乾燥および噴霧乾燥のいずれか1または2種以上の方法で行うことを特徴とする請求項4または5に記載の低融点金属粉末の製造方法。
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