JP5271496B2 - 重合硬化性組成物 - Google Patents
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Description
フォトクロミック性を有するプラスチック眼鏡レンズの製造方法の一つとして、重合性単量体組成物にフォトクロミック化合物を溶解させそれを重合させることにより直接フォトクロミックレンズを得る方法(以下、練り込み法という)が知られている。該方法は、フォトクロミック性の付与をレンズ成形と同時に行なうものであり、一旦レンズを成形してから後でフォトクロミック性を付与するための処理を行なう方法と比べて一段階でフォトクロミック性プラスチックレンズが得られるという利点を有している。
このような問題のない、即ち優れたフォトクロミック特性を有し硬度及び耐熱性が高いフォトクロミック性硬化体を与える硬化性組成物としては、(A)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が40以下である重合性単量体、(B)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が60以上である3官能以上の重合性単量体、(C)単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が60以上である2官能の重合性単量体及び(D)フォトクロミック化合物を含んでなる重合硬化性組成物(以下、従来組成物ともいう)が知られている(特許文献1参照)。
そこで、このような穿孔加工時或いは加工後の強度(以下、耐穿孔加工強度ともいう)が低下する原因を探るべく、上記従来組成物の組成比を検討した結果、特に、前述の“単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が60以上である3官能以上の重合性単量体”(以下、多官能モノマーともいう。)の添加量が多い場合には硬化体の耐穿孔加工強度が著しく低下することが判明した。このことから耐穿孔加工強度向上のためには多官能モノマー量を減らせば良いと考えられるが、多官能モノマーの添加量を少なくしすぎると、優れたフォトクロミック特性を得ることが難しくなるといったトレードオフの関係が存在することが明らかとなった。そして、該知見に基づき更に検討を行なったところ、重合硬化性組成物中に含まれる前記多官能モノマーの配合割合を特定の範囲とし、更に2官能重合性単量体として2つのフェニレン基が特定の基を介して結合した構造を有する特定の重合性単量体を特定量含むものを使用したフォトクロミック性硬化性組成物(以下、改良組成物ともいう)は、上記の特性を満たすことができることを見出し先に提案した(特許文献2参照)。
ここで、退色半減期とは、光照射してフォトクロミック化合物を発色状態にした後に光照射を止めたときに、前記最大波長における吸光度が発色時の1/2まで低下するのに要する時間を意味し、フォトクロミック特性のうち最も重要な特性のひとつである退色速度の指標となる値である。基材中のフォトクロミック化合物の退色半減期が、溶液中の該フォトクロミック化合物の退色半減期の30倍以内、好ましくは10倍以内、より好ましくは7倍以内、特に好ましくは5倍以内であることは、優れたフォトクロミック特性を有することを意味する。なお、上記フォトクロミック化合物溶液の溶媒は特に限定されないが、基準となる溶媒としてエチレングリコールジメチルエーテルを挙げることができる。また、硬化体における退色半減期を絶対値で表せば、4分以内、好適には2分以内である。
改良組成物は、リムレス眼鏡用フォトクロミック性プラスチックレンズとして好適に使用できる硬化体を与えるものであるが、この組成物について更に検討を行なったところ、保存安定性にさらに改善すべき問題があることが分かってきた。即ち、上記改良組成物で使用される重合性単量体自体は、例えば低温(10℃以下)で保存することにより1年間保存しても品質が低下することはないが、フォトクロミック化合物(色素)を混合して保存すると、色素が劣化して組成物が黄変するという改善すべき点のあることが明らかとなった。黄変した組成物を用いてフォトクロミックレンズを製造した場合には、得られるレンズは、光未照射の状態で着色したものとなってしまう。
本発明者はこの問題に関して、鋭意検討を行った。その結果、重合性単量体組成物に特定の光安定剤を特定の割合で配合することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
(II): フォトクロミック化合物0.001〜5質量部、並びに
(III): 2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル骨格を有する化合物からなる光安定剤0.001 〜0.5質量部、特に好ましくは、下記式(3)で表される化合物からなる光安定剤0.001〜0.5質量部
を含有してなることを特徴とする重合硬化性組成物である。
本発明で使用するモノマー組成物(I)は、下記成分(I−1)、(I−2)及び(I−3)からなる(これら成分の合計が100質量%となる)。
(I−1) 前記式(1)で表される2官能重合性単量体(以下、特定2官能モノマーともいう。)からなる成分
(I−2) 前記式(2)で表される多官能重合性単量体(以下、特定多官能モノマーともいう。)からなる成分
(I−3) 上記(I−1)及び(I−2)以外の重合性単量体(以下、他のモノマーともいう。)。
前記成分(I−1)を構成する特定2官能モノマーのうち、前記式(1)におけるm及びnがm+nが8未満であるものは、前記国際公開第01/05854号パンフレットに開示されている従来組成物における(C)成分、すなわち、単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が60以上である2官能重合性単量体に含まれる重合性単量体(モノマー)に相当する。またm+nが8以上のものは、従来組成物における(A)成分、すなわち、単独重合したときに得られる重合体のLスケールロックウエル硬度が40以下である重合性単量体に相当する。
(I−1)成分の特定2官能モノマーのうち、入手の容易さを考慮し、好適に使用できるものを具体的に例示すれば、2,2−ビス[4−(メタクリロイロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン(m+nの平均値が2のもの)、同(m+nの平均値が2.6のもの)、同(m+nの平均値が4のもの)、同(m+nの平均値が10のもの)、同(m+nの平均値が30のもの)、2,2−ビス[4−(アクリロイロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン(m+nの平均値が4のもの)、2,2−ビス[4−(メタクリロイロキシポリプロポキシ)フェニル]プロパン(m+nの平均値が4のもの)、同(m+nの平均値が10のもの)、ビス[4−(メタクリロイロキシポリエトキシ)フェニル]メタン(m+nの平均値が4のもの)、ビス[4−(メタクリロイロキシポリエトキシ)フェニル]スルホン(m+nの平均値が4のもの)等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上混合して使用してもよい。
また、(C)成分に該当するものとしては、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ノナエチレングリコールジメタクリレート、ノナプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,9−ノニレングリコールジメタクリレート、ネオペンチレングリコールジメタクリレート等が使用できる。
さらに、2〜6官能重合性ポリウレタンオリゴマー、2〜6官能重合性ポリエステルオリゴマーも好適に使用できる。
2〜6官能重合性ポリエステルオリゴマーとは、種々のポリオールと多塩基酸より合成されたポリエステル骨格に残った水酸基に、アクリル酸若しくはメタクリル酸を縮合させたものである。
ポリオールの具体例としては、前述の2〜6官能重合性ポリウレタンオリゴマーで説明したものと同様の各種のポリオールが挙げられ、多塩基酸の具体例としては、無水フタル酸、アジピン酸、トリメリット酸等が挙げられる。
で示されるインデノナフトピラン化合物、及び、下記式(5)
で示されるナフトピラン化合物、及び、下記式(6)
で示されるナフトピラン化合物、を例示することができる。
本発明で好適に使用できるフォトクロミック化合物を具体的に例示すれば、次のようなものを挙げることができる。なお、これら化合物は単独で使用することもできるが、通常は発色時の色調を調整するため1種若しくは2種以上の他のフォトクロミック化合物(下記化合物およびそれ以外のフォトクロミック化合物を含む)と併用することが多い。
なお、これらのうち前記式(3)で示される化合物からなる光安定剤が、入手が容易で効果が高く、さらに取り扱いが容易であるという点から特に好ましい。前記式(3)で表される化合物の代表例を例示すると、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等が挙げられる。
本発明の重合硬化性組成物においては、本発明の効果を阻害しない範囲内で、フォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、種々の添加剤を更に添加することもできる。好適に使用できる添加剤としては、例えば界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、ハードコートの密着性を向上させるためのシランカップリング剤等を挙げることができる。
界面活性剤及びシランカップリング剤の添加量は、全重合性単量体100質量部に対して0〜20質量部であるのが好適であり、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料および香料等の添加量は、夫々全重合性単量体100質量部に対して0〜2質量部であるのが好適である。
上記重合硬化性組成物を硬化させて硬化体を製造する方法は特に限定されない。それぞれ所定量の各成分を適宜混合して本発明の重合硬化性組成物を調整した後、熱重合及び/又は光重合により硬化させることができる。このとき、必要に応じて熱重合開始剤及び/又は光重合開始剤を使用することもできる。
これら光重合開始剤の使用量は特に限定されないが、重合を十分に進行させ、かつ過剰な光重合開始剤を硬化体中に残さないという観点から、全重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、特に好ましくは0.01〜3質量部である。
なお、熱重合開始剤と光重合開始剤はそれぞれ単独で使用してもよく、両者を併用して使用しても構わない。但し、全重合開始剤の総量は、全重合性単量体100質量部に対して、0.001〜10質量部である。
次に、本重合硬化性組成物の調整方法、及び本重合硬化性組成物を用いた硬化体の製造方法についてさらに詳細に説明する。
本重合硬化性組成物を用いて硬化体を製造する方法についても特に限定されないが、例えば熱重合開始剤を使用する場合の方法の一例を以下に説明する。
R=e−Kd・s
ここで、
Kd=A・e−Ea/RT
A:各重合開始剤に固有の頻度因子(単位:hr−1)
Ea:各重合開始剤に固有の活性化エネルギー(単位:kJ/mol)
R=8.314×10−3(単位:kJ/mol/K)
T=(273.15+摂氏温度)(単位:K)
s:時間(単位:hr)
を表す。
前記工程(1)の時間が1時間未満のときはレンズとしての成形性に問題を生じる場合がある。即ち、脈理、剥れ等の不良を生じる。さらに強度(靭性)も劣る硬化体となる。また、前記工程(2)の時間が2時間未満のときも同じくレンズとしての成形性に問題を生じ、かつ強度(靭性)も劣る硬化体となる場合がある。さらに、前記工程(3)の時間が1時間未満の場合は、硬度、強度ともに劣る硬化体となる場合がある。また、重合開始剤の残存率が30%を超える場合には、強度が劣る硬化体となるばかりでなく、レンズとして長期間使用した場合にフォトクロミック化合物が分解し、フォトクロミック特性が低下するという別の問題が生じる場合もある。
重合硬化させた後、ガスケット又はテープを取り除き、硬化体とガラスモールドの間に刃を当てるなどして空気を入れ、ガラスモールドを取り外す。さらに重合ひずみを除去するために、80〜130℃で0.1〜10時間アニールして、目的とする硬化体を得ることができる。
以上のとおり、本発明の重合硬化性組成物は、長期間で保存しても色素が劣化せず、優れたフォトクロミック特性を有し、更にリムレス眼鏡に使用できる十分耐穿孔加工強度をも兼ね備えた硬化体を与えるという特徴を有する。
(I−1)成分の2官能モノマー
BPE100:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(m+nの平均値は2.6)
BPE200:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(m+nの平均値は4)
BPE500:2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(m+nの平均値は10)。
(I−2)成分の多官能モノマー
TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート
TMPT3EO:エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート。
(I−3)成分のモノマー
(A)成分に該当するもの
A200:テトラエチレングリコールジアクリレート
A400:ノナエチレングリコールジアクリレート
PKA5009:平均分子量550のメトキシポリエチレングリコールアリルエーテル
(C)成分に該当するもの
4G:テトラエチレングリコールジメタクリレート
(A)成分及び(C)成分以外のモノマーに該当するもの
M90G:平均分子量475のメチルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
αMS:αメチルスチレン
MSD:αメチルスチレンダイマー
EB1830:6官能重合性ポリエステルオリゴマー
クロメン1:下記構造の化合物。この化合物のエチレングリコールジメチルエーテル(EGDME)溶液における退色半減期は0.4分である。
2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル骨格を有する化合物からなる光安定剤
LS765:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート
LS770:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
LS744:4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
それ以外の光安定剤
TINUVIN571:2(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール
TINUVIN120:2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート
t−ブチルパーオキシネオデカノエート(10時間半減期温度47℃)(有効成分75%品)
1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(
10時間半減期温度64℃)(有効成分90%品)
t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(10時間半減期温度74℃)(有効成分97%品)
BPE100:50質量部、TMPT:5質量部、4G:24質量部:A200:5質量部、GMA:10質量部、αMS:5質量部およびMSD:1質量部を十分に混合した。次いで得られた混合物に“クロメン1”0.03質量部および“LS765”0.05質量部を添加し、十分に混合することにより本発明の組成物を調製した。その後、得られた組成物を10℃に保たれたインキュベーター内で6ヶ月間保存した。保存期間経過後、インキュベーターから取り出された組成物に熱重合開始剤としてt−ブチルパーオキシネオデカノエート(有効成分75%品)を1.33質量部およびt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(有効成分97%品)0.1質量部を加えよく混合し、脱気した後、ガラスモールドとエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に1ミクロンのセルロース製フィルターを通して濾過注入した。これを33℃で4時間保持した後、4時間をかけて40℃に、さらに4時間をかけて55℃に、さらに2時間をかけて90℃まで昇温し、90℃で2時間保持し、1時間かけて80℃まで冷却した(この時の開始剤の残存率の計算値は、t−ブチルパーオキシネオデカノエートが0%、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートが2%である)。重合後、硬化体を鋳型のガラス型から取り外し、110℃で2時間アニールした。次いで得られた硬化体のフォトクロミック特性及び強度特性、さらに黄変度の評価を行なった。評価結果を表1に示す。
なお、硬化体のフォトクロミック特性及び強度特性及び黄変度の評価は以下に示す方法で行なった。
得られた硬化体を用いて厚さ2mm、直径5cmφの円盤状の試験片を成形した後に該円盤状試験片の直径となる線上に周縁からそれぞれ4mmの点を中心とした直径2mmφの2つの穴をドリル加工により穿孔し、得られた2つの穿孔に夫々直径1.6mmφのステンレス製の棒を貫通せしめ、試験片を貫通した状態でこれら2本の棒を夫々引張り試験機の上下のチャックに固定し、5mm/分の速度で引張り試験を行なったときの引張り強度を測定した。
スガ試験機(株)製カラーコンピューターを用いて、10℃に保たれたインキュベーター内で6ヶ月間保存した組成物を用いて製造した硬化体の黄色度(YI)と、新たに調合した(保存をしていない)組成物を用いて製造した硬化体の黄色度(YI0)とを測定し、黄変度(ΔYI)=(YI)−(YI0)を算出した。
得られた硬化体(厚み2mm、直径5cmの円盤状)に、浜松ホトニクス(株)製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100をエアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20℃±1℃、重合体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm2,245nm=24μW/cm2で120秒間照射して発色させ、前記試料のフォトクロミック特性を測定した。各フォトクロミック特性は次の方法で評価した。
(i) 最大吸収波長(λmax): (株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
(ii) 発色濃度{ε(120)−ε(0)}: 前記最大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度{ε(120)}と上記ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
(iii) 退色半減期〔t1/2(min.)〕: 120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記最大波長における吸光度が{ε(120)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほど退色速度が速くフォトクロミック性が優れているといえる。
また、参照として、同様に調製した組成物を調製後直ちに同様にして重合を行い、得られた硬化体について同様の評価を行なったが、その結果はすべての項目について6ヶ月保存したものとほぼ同じであった。
BPE100:20質量部、TMPT:5質量部、4G:54質量部、A200:5質量部、GMA:10質量部、αMS:5質量部およびMSD:1質量部を十分に混合した。得られた混合物に“クロメン1”0.03質量部及び“LS765”0.05質量部を添加し、十分に混合することにより本発明の組成物を調製した。その後、得られた組成物を10℃に保たれたインキュベーター内で6ヶ月間保存した。保存期間経過後、インキュベーターから取り出された組成物に熱重合開始剤としてt−ブチルパーオキシネオデカノエート(有効成分75%品)を1.33質量部および1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(有効成分90%品)0.05質量部を加えよく混合し、脱気した後、ガラスモールドとエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に1ミクロンのセルロース製フィルターを通して濾過注入した。これを、33℃で8時間保持した後、4時間をかけて40℃に、さらに4時間をかけて55℃に、さらに2時間をかけて90℃まで昇温し、90℃で5時間保持し、1時間かけて80℃まで冷却した(この時の開始剤の残存率の計算値は、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートともに0%である)。重合後、硬化体を鋳型のガラス型から取り外し、110℃で2時間アニールした。次いで得られた硬化体について実施例1と同様にして評価を行なった。その結果を表1に併せて示した。本実施例についても参照実験として組成物調製後直ちに重合を行ったが、このとき得られた硬化体についての評価結果は、すべての項目について6ヶ月保存したものとほぼ同じであった。
組成を表1に示したように変える他は実施例1と同様にして、組成物調製、保存及び重合を行ない、更に実施例1と同様にして得られた硬化体の評価を行なった。その結果を表1に併せて示した。硬化体の評価結果は、黄変度を除き6ヶ月保存したものとほぼ同じであった。
表1の実施例から、本発明の重合硬化性組成物から得られる硬化体は、優れたフォトクロミック特性を有し、リムレス眼鏡に使用し得る強度を有し、さらに重合硬化性組成物を10℃で6ヶ月間保存したのち硬化体とした場合でも、黄変度は保存せずに硬化体としたものと比較して品質がほとんど変わらないことがわかる。一方、比較例1〜6に示すようにモノマー組成が本発明で規定する範囲内である場合でも、光安定剤として式(3)で示される化合物を含まないものは、長期間保存してから硬化を行なうと、硬化体は黄変度が大きく、光未照射の状態で着色したものとなってしまうことがわかる。さらに比較例7及び8に示すように、(I−1)成分の2官能モノマー及び(I−2)成分の多官能モノマー、(I−3)のモノマーの配合割合が本発明で規定する範囲から外れるものを使用して得られた硬化体は、十分なフォトクロミック特性が得られないか、もしくは強度の低下がみられることがわかる。
Claims (8)
- (I): (I−1)下記式(1)で表される2官能重合性単量体10〜80質量%、(I−2)下記式(2)で表される多官能重合性単量体1〜15質量%、及び(I−3)前記(I−1)および(I−2)以外の重合性単量体5〜89質量%からなる重合性単量体組成物100質量部、
(II): フォトクロミック化合物0.001〜5質量部、並びに
(III): 2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル骨格を有する化合物からなる光安定剤0.001〜0.5質量部、
を含有してなることを特徴とする重合硬化性組成物。
- 請求項1又は2に記載の重合硬化性組成物100質量部に対し、熱重合開始剤0.001〜10質量部を加えてなる重合硬化性組成物。
- 熱重合開始剤として、10時間半減期温度が50℃未満の熱重合開始剤0.01〜5質量部及び10時間半減期温度が50℃以上の熱重合開始剤0.001〜0.5質量部を加えることを特徴とする請求項3に記載の重合硬化性組成物。
- 光安定剤が重合硬化性組成物の保存中の黄変を抑制して保存安定性を改良する請求項1に記載の重合硬化性組成物。
- 請求項1又は2に記載の重合硬化性組成物を熱重合することを特徴とする、硬化体の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の重合硬化性組成物100質量部に対し、熱重合開始剤0.001〜10質量部を加え、(1)40℃以下で1〜48時間保持することによりゲル化させる工程、(2)引き続き2〜24時間かけて80℃以上まで昇温することにより硬化させる工程、(3)引き続き80℃以上に1〜10時間保持することにより重合開始剤の残存率が30%以下になるまで硬化を進める工程、を含む一連の工程を経て熱重合することを特徴とする、請求項6に記載の硬化体の製造方法。
- 熱重合開始剤として、10時間半減期温度が50℃未満の熱重合開始剤0.01〜5質量部及び10時間半減期温度が50℃以上の熱重合開始剤0.001〜0.5質量部を加えることを特徴とする請求項7に記載の硬化体の製造方法。
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