JP5269822B2 - 薄肉容器用ポリエチレン及びそれからなる容器 - Google Patents

薄肉容器用ポリエチレン及びそれからなる容器 Download PDF

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Description

本発明は、薄肉容器用ポリエチレン及びそれからなる容器に関し、詳しくは、成形性、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、かつ、これまでよりも薄肉容器金型で射出成形可能な薄肉容器用ポリエチレンとそれからなる容器に関する。さらに詳しくは、射出成形で成形される薄肉のカップ型容器に好適な材料であり、薄肉容器用金型で成形ができ、剛性が高く、低温(5℃)での耐衝撃性に優れた清涼飲料、乳飲料等の液体や乳製品等を収容する薄肉容器用ポリエチレン及びそれからなる容器に関する。
従来、射出成形で成形される薄肉のカップ型容器は、その形状から材料には、高い流動性が求められ、一般的には、メルトフローレート(MFR)が40g/10分程度の単段重合により製造された高密度ポリエチレン(HDPE)が使用されている。
近年、カップ型容器は、更なる軽量化に向け、これまで以上の容器薄肉化が要求されている。上記MFR40g/10分程度の高密度ポリエチレン(HDPE)を用い容器の薄肉化を行う試みがなされているが、材料の流動性が不足し、ショートショットを起こし、また射出圧力も上昇し、成形が困難となっている。
一般に成形温度を上げて成形を行うと、ショートショットは起こりにくくなるが、成形温度と取り出し温度との温度差が大きくなり、製品収縮が大きく、不均一になり製品が変形してしまうという問題がある。また、ショートショット改良のため、MFRを60g/10分程度に上げた場合には、ショートショットによる不良品や射出圧力の上昇といった問題は低減されるが、実用物性が著しく低下し、実用上、使用することが難しい。
また、2種類のポリエチレンを順次重合もしくはブレンドすることにより、得られるポリエチレン樹脂組成物は、耐ストレスクラック性、常温での耐衝撃性等に優れており、コンテナー、ボトル、フィルム、キャップ等に使用されているが、現在、薄肉カップ型金型での成形に適応できるだけの流動性が十分でなく、製品剛性も、十分満足するものは得られていない。
一方、特許文献1記載の手法により得られる、分子量1,000以下の成分含有量が3wt%以下であることなどを特徴とするポリエチレンを、射出成形で成形する薄肉カップ型容器に適用すると、クリーン性、耐衝撃性、耐ストレスクラック性は良いものの、材料の流動性が悪く、成形性が極端に低下するため、ショートショットを起こしてしまい、良好な製品を得ることが困難である。
また、特許文献2記載の手法により得られるポリエチレン製射出成形体を薄肉カップ型容器に適用した場合も、耐衝撃性は良いものの、材料の流動性が悪く、良好な製品を得ることが困難となる。
ところが、特許文献3記載の手法によれば、特定のMFR、せん断速度比、密度を調整することにより得られたポリエチレンは、成形性、剛性、23℃での耐衝撃性のバランスを改良することが可能となっている。
しかしながら、公知の非特許文献1によれば、特許文献3の実施例に開示されているポリエチレンでは、薄肉カップ容器が実際使用される低温領域での耐衝撃性の改良には不十分であり、特に、高分子量成分(A)の密度をある領域以上に下げると、低温での耐衝撃性は著しく低下し、製品破損の原因となる。また、曲げ弾性率も800MPa以上では、現在、要求されている薄肉容器において、製品を持った際の形状保持が十分でなく、安易に変形しまうため、製品を持ちづらいという問題がある。
特開平11−246714号公報 特開2001−213916号公報 特開2006−160987号公報
E.Q.Clutton,L.J.Rose&G.Capaccio,PALASTICS X,349(1998)
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、剛性と低温での耐衝撃性とのバランスに優れ、かつ、材料の分子量分布、結晶化速度を制御することで、金型内での材料の粘度低下を抑制し成形温度・金型温度を上げることなく金型内での流動長を伸ばし、同時に射出圧力上昇も抑え、成形サイクルの低下を回避でき、これまでよりも薄肉の金型で射出成形が可能であるという特徴的な成形性を有したポリエチレンを提供することにある。特に、射出成形で成形される薄肉のカップ型容器に好適な材料であり、カップ型容器の更なる薄肉カップ型容器も射出成形が可能で、剛性が高く、低温での耐衝撃性に優れた容器を提供でき、特に清涼飲料、乳飲料等の液体や乳製品等を収容する容器用に好適な材料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の物性を有するポリエチレンが剛性と低温での耐衝撃性とのバランスに優れ、かつ、成形サイクルを低下させることなく、薄肉形状のカップ型容器を成形できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記成分(A)及び(B)からなり、且つ成分(A)と成分(B)の組成割合は、成分(A)が25〜40質量部、成分(B)が60〜75質量部であるポリエチレンであって、下記の特性(1)〜(7)を満たすことを特徴とする薄肉容器用ポリエチレンが提供される。
成分(A):温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が40〜80g/10分、密度が0.940〜0.955g/cm であるエチレンとα−オレフィンとの共重合体
成分(B):温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が150〜400g/10分、密度が0.955〜0.975g/cm であるエチレン単独重合体又はエチレンとα−オレフィンとの共重合体
(1)温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が25〜45g/10分である。
(2)密度が0.955〜0.970g/cmである。
(3)示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間が180秒以上である。
(4)曲げ弾性率が1000MPa以上である。
(5)5℃でのシャルピー衝撃強度が1.5KJ/m以上である。
(6)幅10mm、厚み2mm、最長流路長2000mmのアルキメデスのスパイラル流路を有する金型で、190℃における、射出圧力がそれぞれ60MPa、75MPa、90MPaで得られるスパイラルフロー長さと射出圧力との関係を最小二乗法近似により直線関係式にした場合の傾きaが以下の範囲である。
0.55≦a≦0.61
(7)GPC測定による分子量分布の広さを表す単分散性Q値(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が10〜13である。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、130℃のヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC)測定による炭化水素揮発分が80ppm以下であることを特徴とする薄肉容器用ポリエチレンが提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、連続多段重合法で製造されることを特徴とする薄肉容器用ポリエチレンが提供される。
一方、本発明の第の発明によれば、第1〜のいずれかの発明に係る薄肉容器用ポリエチレンを射出成形して得られることを特徴とする薄肉容器が提供される。
本発明の薄肉容器用ポリエチレンは、特に、高流動性で成形性に優れ、この薄肉容器用ポリエチレンを用いることにより、薄肉で剛性と低温での耐衝撃性とのバランスに優れた容器を成形でき、かつ、分子量分布、結晶化速度を制御することで、成形温度・金型温度を上げることなく、容器を成形することが可能であり、そして、成形後の容器は、変形も少なく容器の寸法安定性にも優れる。また、本発明のポリエチレンを用いた容器は、剛性が高く、優れた性能を有する容器である。
本発明の薄肉容器用ポリエチレン(実施例3)のスパイラルフロー長さと射出圧力との関係を説明する図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の薄肉容器用ポリエチレンは、下記の特性(1)〜(6)を、或いは、さらに特性(7)を満たすことを特徴とし、好ましくは、成分(A)及び(B)からなる樹脂組成物である。
(1)温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が25〜45g/10分である。
(2)密度が0.955〜0.970g/cmである。
(3)示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間が180秒以上である。
(4)曲げ弾性率が1000MPa以上である。
(5)5℃でのシャルピー衝撃強度が1.5KJ/m以上である。
(6)幅10mm、厚み2mm、最長流路長2000mmのアルキメデスのスパイラル流路を有する金型で、190℃における、射出圧力がそれぞれ60MPa、75MPa、90MPaで得られるスパイラルフロー長さと射出圧力との関係を最小二乗法近似により直線関係式にした場合の傾きaが以下の範囲である。
0.55≦a≦0.61
(7)130℃のヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC)測定による炭化水素揮発分が80ppm以下である。
本発明において、上記の成分(A)であるエチレン系重合体(A)及び成分(B)であるエチレン系重合体(B)の重合触媒は、公知刊行物である特開昭53−78287号公報、特開昭54−21483号公報、特開昭55−71707号公報、特開昭58−225105号公報、特開昭63−202602号公報に記載のチーグラー系触媒を用いることができる。
具体的には、固体触媒成分と有機金属化合物とからなり、水素がオレフィン重合の連鎖移動作用を示すようなスラリー法オレフィン重合に適する触媒であり、好ましくは重合活性点が局在している不均一系触媒である。
上記固体触媒成分としては、遷移金属化合物を含有するオレフィン重合用の固体触媒として用いられるものであれば特に制限はない。遷移金属化合物としては、周期表第4族〜第10族、好ましくは第4族〜第6族の元素の化合物を使用することができ、具体例としては、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mo等の化合物が挙げられる。好ましい触媒の例としては、Ti及び/又はVの化合物と周期表第1族〜第3族元素の有機金属化合物からなる固体チーグラー触媒である。
上記固体チーグラー触媒として、チタン(Ti)及び/又はバナジウム(V)並びにマグネシウム(Mg)を含有する固体触媒が挙げられ、これらの成分と共に用いることのできる有機金属化合物として、有機アルミニウム化合物、中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましいものとして挙げられる。重合反応中における有機アルミニウム化合物の使用量は、特に制限されないが、用いる場合には、通常遷移金属化合物1モルに対して0.05〜1000モルの範囲が好ましい。
また、本発明の薄肉容器用ポリエチレンは、好ましくは、成分(A)であるエチレン系重合体(A)及び成分(B)であるエチレン系重合体(B)からなる樹脂組成物であるが、その重合方法としては、公知刊行物である特開2004−123995号公報の実施例1等に記載の「原料の配合比や条件」を参酌することにより、第1段目で高分子量、低密度のポリエチレン、すなわちエチレン系重合体(A)を、次に第2段目で低分子量、高密度のポリエチレン、すなわちエチレン系重合体(B)を製造することができる。
HLMFR及びMFRは、主に水素量により調整され、密度は、主としてα−オレフィンの量により調整され、エチレン系重合体(A)及びエチレン系重合体(B)の量比は、エチレンの供給量で調整される旨が記載されており、本発明に係るエチレン系重合体(A)及びエチレン系重合体(B)に適用することができる。
さらに、本発明の薄肉容器用ポリエチレンは、例えば、特開平6−248125号公報や特開平9−95502号公報に記載されるチーグラー触媒を用い、コモノマーとしてブテン−1を用いたスラリー重合法により、連続的に2段重合して製造することができる。
なお、本発明で規定した特性の範囲を満たせば、シングルサイト系触媒(公知刊行物:特開昭58−19309号公報、同59−95292号公報、同59−23011号公報、同60−35006号公報、同60−35007号公報、同60−35008号公報、同60−35009号公報、同61−130314号公報、特開平3−163088号公報参照。)や、クロム系触媒(公知刊行物:特開2002−80520号公報、特開2002−80521号公報、特開2002−020412号公報、特開2003−096127号公報、特開2003−183287号公報、特開2003−313225号公報、特開2006−182917号公報参照。)等の他の触媒を、併用して用いても良い。
併用されるシングルサイト系触媒としては、メタロセン触媒と呼ばれる、シクロペンタジエン骨格を有する配位子が遷移金属に配位してなる錯体と助触媒とを組み合わせたものが例示される。具体的なメタロセン触媒としては、Ti、Zr、Hf、ランタニド系列などを含む遷移金属に、メチルシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、インデン等のシクロペンタジエン骨格を有する配位子が配位してなる錯体触媒と、助触媒として、アルミノキサン等の周期表第1族〜第3族元素の有機金属化合物とを、組み合わせたものや、これらの錯体触媒をシリカ等の担体に担持させた担持型のものが挙げられる。
また、併用されるクロム系触媒としては、特開2002−80520号公報で公知である無機酸化物等の担体にクロム化合物を担持した固体触媒、または該固体触媒と有機金属化合物とを組み合わせた触媒等が挙げられ、いわゆるフィリップス触媒といわれるものが好ましい。特に、クロム系化合物と有機アルミニウム化合物とを組み合わせた触媒は、重合体の物性バランスを改良する効果があって、好ましい。
成分(A)及び(B)のエチレン系重合体は、エチレンの単独重合、又はエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等との共重合により得ることができる。
また、改質を目的とする場合のジエンとの共重合も可能である。このとき使用されるジエン化合物の例としては、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。
なお、重合の際のコモノマー含有率は、任意に選択することができるが、例えば、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合の場合には、エチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は、0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%である
また、エチレン系重合体(A)及びエチレン系重合体(B)のエチレン系重合体は、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法などの製造プロセスにより製造することができ、好ましくはスラリー重合法が望ましい。
エチレン系重合体の重合条件のうち重合温度としては、0〜300℃の範囲から選択することができる。スラリー重合においては、生成ポリマーの融点より低い温度で重合を行う。重合圧力は、大気圧〜約100kg/cmの範囲から選択することができる。実質的に酸素、水等を断った状態で、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下でエチレン及びα−オレフィンのスラリー重合を行うことにより製造することができる。
スラリー重合において重合器に供給される水素は、連鎖移動剤として消費され、生成するエチレン系重合体の平均分子量を決定するほか、一部は溶媒に溶解して重合器から排出される。溶媒中への水素の溶解度は小さく、重合器内に大量の気相部が存在しない限り、触媒の重合活性点付近の水素濃度は低い。そのため、水素供給量を変化させれば、触媒の重合活性点における水素濃度が速やかに変化し、生成するエチレン系重合体の分子量は、短時間の間に水素供給量に追随して変化する。従って、短い周期で水素供給量を変化させれば、より均質な製品を製造することができる。このような理由から、重合法としてスラリー重合法を採用することが好ましい。また、水素供給量の変化の態様は、連続的に変化させるよりも不連続的に変化させる方が、分子量分布を広げる効果が得られるので好ましい。
本発明に係るエチレン系重合体(A)及びエチレン系重合体(B)においては、水素供給量を変化させることが重要であるが、その他の重合条件、例えば重合温度、触媒供給量、エチレンなどのオレフィンの供給量、1−ブテンなどのコモノマーの供給量、溶媒の供給量等を、適宜に水素の変化と同時に又は別個に変化させることも重要である。
また、エチレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)とからなるポリエチレン樹脂組成物は、エチレン系重合体(A)及びエチレン系重合体(B)を別々に重合した後に、混合したものでもよい。
更に、成分(A)であるエチレン系重合体(A)は、複数の成分により構成することが可能である。該成分(A)は、1種類の触媒を用いて、多段重合反応器にて順次連続的に重合された重合体でもよく、複数種類の触媒を用いて、単段又は多段重合反応器にて製造された重合体でもよいし、1種類又は複数種類の触媒を用いて重合された重合体を混合したものでもよい。
また、成分(B)であるエチレン系重合体(B)は、複数の成分により構成することが可能である。該成分(B)は、1種類の触媒を用いて、多段重合反応器にて順次連続的に重合された重合体でもよく、複数種類の触媒を用いて、単段又は多段重合反応器にて製造された重合体でもよいし、1種類又は複数種類の触媒を用いて重合された重合体を混合したものでもよい。
直列及び/又は並列に接続した複数の反応器で順次連続して重合するいわゆる多段重合方法は、本請求範囲を満たす限り、始めの重合域(第1段目の反応器)において高分子量成分を製造する製造条件を採用して重合し、得られた重合体を次の反応域(第2段目の反応器)に移送し、第2段目の反応器において低分子量成分を製造する順序でも、逆に、始めの重合域(第1段目の反応器)において低分子量成分を製造する製造条件を採用して重合し、得られた重合体を次の反応域(第2段目の反応器)に移送し、第2段目の反応器において高分子量成分を製造する順序のどちらでも良い。
具体的な好ましい重合方法は、以下の方法である。即ち、チタン系遷移金属化合物及び有機アルミニウム化合物を含むチーグラー触媒及び二器の反応器を使用し、第1段目の反応器にエチレン及びα−オレフィンを導入し、低密度の高分子量成分の重合体を製造し、第1段目の反応器から抜き出された重合体を第2段目の反応器に移送し、第2段目の反応器にエチレン及び水素を導入し、高密度の低分子量成分の重合体を製造する方法である。
なお、多段重合の場合、第2段目以降の重合域で生成するエチレン系重合体の量とその性状については、各段における重合体生成量(未反応ガス分析等により把握できる)を求め、各段の後でそれぞれ抜出した重合体の物性を測定し、加成性に基づいて各段で生成した重合体の物性を求めることができる。
本発明の薄肉容器用ポリエチレンは、前記したように、以下の特性を有する。
特性(1): メルトフローレート(MFR)
本発明の薄肉容器用ポリエチレンは、好ましくはエチレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)からなるポリエチレンであり、温度190℃、荷重2.16kgにおけるMFRが25〜45g/10分である。MFRが25g/10分未満の場合、GPCで測定されるQ値を大きくしても、十分な流動性を得ることが困難であり、一方、MFRが45g/10分を超える場合、エチレン系重合体(A)、(B)の組成・配合割合を最適化しても、耐衝撃性は著しく低下してしまう。
ここで、MFRは、JIS K6922−2に準拠して測定する値である。
MFRは、エチレン系重合体(A)、(B)の個々のMFR、HLMFRを変化させたり、或いは(A)、(B)2成分の配合割合を変化させることにより、調整することができる。
上記エチレン系重合体(A)は、温度190℃、荷重21.6kgにおけるHLMFRが40〜80g/10分であり、好ましくは50〜70g/10分である。HLMFRが30g/10分未満では、結晶化時間が短くなり、金型内でゲートシールを起こし易くなり十分な流動長を得ることができない。また、HLMFRが80g/10分を超えると、常温・低温に関わらず耐衝撃性が著しく低下してしまう。
ここで、HLMFRは、JIS K6922−2に準拠して測定する値である。
HLMFRは、エチレン重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、所望のものを得ることができる。即ち、エチレンとα−オレフィンとの重合温度を上げることにより、分子量を下げた結果として、HLMFRを大きくすることができ、重合温度を下げることにより、分子量を上げた結果として、HLMFRを小さくすることができる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応において、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を増加させることにより、分子量を下げた結果として、HLMFRを大きくすることができ、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を減少させることにより、分子量を上げた結果として、HLMFRを小さくすることができる。
また、エチレン系重合体(B)は、温度190℃、荷重2.16kgにおけるMFRが150〜400g/10分であり、好ましくは200〜350g/10分である。MFRが150g/10分未満では、流動性が低下し、結晶化時間を長くし結晶化による粘度上昇を抑制する効果を十分発揮できないため、十分な流動長を得ることができない。また、MFRが400g/10分を超えると、高分子量成分であるエチレン系重合体(A)との分子量差が大きくなり相溶性が低下し、耐衝撃性が低下し、耐ストレスクラック性も低下する。
ここで、MFRは、JIS K6922−2に準拠して測定する値である。
MFRは、エチレン重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、所望のものを得ることができる。即ち、エチレンとα−オレフィンとの重合温度を上げることにより、分子量を下げた結果として、MFRを大きくすることができ、重合温度を下げることにより、分子量を上げた結果として、MFRを小さくすることができる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応において、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を増加させることにより、分子量を下げた結果として、MFRを大きくすることができ、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を減少させることにより、分子量を上げた結果として、MFRを小さくすることができる。
特性(2): 密度
本発明の薄肉容器用ポリエチレンは、好ましくはエチレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)からなるポリエチレンであり、密度が0.955〜0.970g/cm以下である。
密度が0.955g/cm未満の場合、得られる薄肉容器の剛性が不足し、一方、密度が0.970g/cmを超える場合、エチレン系重合体(A)、(B)の組成・配合割合を最適化しても、耐衝撃性が著しく低下する。
ここで、密度は、JIS K6922−2に準拠して測定する値である。
密度は、エチレン系重合体(A)、(B)の個々の密度を変化させたり、(A)、(B)2成分の配合割合を変化させることで、調整することができる。
また、エチレン系重合体(A)は、密度が0.940〜0.955g/cmであり、好ましくは0.945〜0.950g/cmである。
密度が0.940g/cm未満では、低温での耐衝撃性が低下する。また、密度が0.955g/cmを超えると、結晶化時間が短くなり、金型内でゲートシールを起こし易くなり十分な流動長を得ることができない。
ここで、密度は、JIS K6922−1、2に準拠して測定する値である。また、エチレン系重合体及びポリエチレン樹脂組成物の密度も、JIS K6922−1,2に準じて、測定される値である。
密度は、エチレンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることにより、所望のものを得ることができる。
また、エチレン系重合体(B)は、密度が0.955〜0.975g/cmであり、好ましくは0.960〜0.965g/cmである。密度が0.955g/cm未満では剛性が低下し、一方、密度が0.975g/cmを超えると、低温での耐衝撃性が低下する。
ここで、密度は、JIS K6922−1、2に準拠して測定する値である。また、上記したように、エチレン重合体及びポリエチレン樹脂組成物の密度も、JIS K6922−1,2に準じて、測定される値である。
密度は、エチレンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることにより、所望のものを得ることができる。
本発明の薄肉容器用ポリエチレンは、好ましくは連続多段重合法で得られるポリエチレンであって、エチレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)からなるポリエチレンであり、エチレン系重合体(A)とエチレン系重合体(B)の組成割合は、成分(A)が25〜40質量部、好ましくは25〜35質量部であり、一方、成分(B)が60〜75質量部、好ましくは65〜75質量部である。成分(A)が25質量部未満では、常温・低温共に耐衝撃性が低下し、また、40質量部を超えると、流動性が低下し、成形性が悪化する。
特性(3): 等温結晶化におけるピークトップ時間
本発明の薄肉容器用ポリエチレンは、示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間が180秒以上であり、好ましくは200秒以上である。ピークトップ時間が180秒未満である場合、金型内でのポリエチレンの結晶時間が短く、結果、結晶化による粘度上昇が起こり、十分な流動長を得ることができない。一方、ピークトップ時間の上限値は、特に限定されないが、通常は600秒程度である。これ以上になると、成形から製品取出しまでのサイクルが長くなり、生産効率が下がってしまう。
ここで、等温結晶化におけるピークトップ時間は、パーキンエルマー社製DSC−7にて、試料を190℃にて5分放置後、120℃/分の速度にて121.5℃まで冷却し、保持とした。121.5℃の等温下において結晶化が終了した時点にて、ピークトップを検出し、測定した値である。
等温結晶化におけるピークトップ時間は、高分子量成分であるエチレン系重合体(A)の密度を下げ、MFRを上げることで、長くすることができる。この効果は、MFR,密度共に独立でも発揮するため、どちらか一方を変化させることでも、調整することができる。
特性(4): 曲げ弾性率
本発明の薄肉容器用ポリエチレンの曲げ弾性率は、1000MPa以上であり、好ましくは1100である。曲げ弾性率が1000MPa未満では、剛性が不足し、容器が変形しやすい。一方、曲げ弾性率の上限値は、特に限定されないが、通常は2000MPa程度である。
ここで、曲げ弾性率は、射出成形にて210℃で10×80×4mmの試験片を作成し、JIS K6922−2に準拠して測定する値である。
曲げ弾性率を大きくするには、ポリエチレン材料の密度を上げたり、剛直な充填材を添加することで調整できる。
特性(5): シャルピー衝撃強度
本発明の薄肉容器用ポリエチレンは、5℃でのシャルピー衝撃強度が1.5KJ/m以上であり、好ましくは2.0KJ/m以上である。シャルピー衝撃強度が1.5KJ/m未満では、実際に薄肉容器が使用されるチルド領域(約5℃付近)で容器破損の可能性が大きくなる。
ここで、シャルピー衝撃強度は、JIS K6922−2に準拠し、試験片を5℃雰囲気下で1時間状態調整し、測定した値である。
5℃でのシャルピー衝撃強度は、エチレン系重合体(A)では、HLMFRを下げ、密度を上げることで大きくなり、エチレン系重合体(B)では、MFR、密度を下げることで大きくできる。また、エチレン系重合体(A)の組成割合を大きくすることでも、大きくすることができる。特にエチレン系重合体(A)では、密度が0.940g/cm以上であることが重要である。エチレン系重合体(A)の密度が0.940g/cm未満の場合、成形品が破損するきっかけとなる欠損点が形成され易くなり、特に低温での耐衝撃性低下を引き起こす場合がある。
また、シャルピー衝撃強度に関連して、GPC測定による分子量の分布の広さを表す単分散性Q値(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、10≦Q値≦13が好ましく、より好ましくは11≦Q≦12である。Q値が13を超える場合、耐衝撃性が著しく低下する。一方、Q値が10未満の場合、流動性が十分ではなく、成形性が不良になる。
Q値は、エチレン重合体(A)、(B)の分子量差を大きくし、薄肉容器用ポリエチレンの分子量分布を広くすることにより、大きくすることができる。
分子量は、エチレンとα−オレフィンとの重合温度を上げることにより、分子量を下げることができ、一方、重合温度を下げることにより、分子量を上げることができる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応において、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を増加させることにより、分子量は下げることができ、一方、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を減少させることにより、分子量は上げることができる。
特性(6): スパイラルフロー長さに係る特性
本発明の薄肉容器用ポリエチレンは、190℃、ランナー側ゲート幅4mm、キャビティ側ゲート幅5mm、幅10mm、厚み2mm、最長流路長2000mmのアルキメデスのスパイラル流路を有する金型を用いて得られるスパイラルフロー長さと射出圧力との最小二乗法近似による直線関係式における直線の傾きaは、0.55≦a≦0.61であり、好ましくは0.58≦a≦0.61である。
傾きaは、射出成形時のせん断応力と樹脂粘度と強い相関関係にあり、傾きaが大きい場合、射出成形した際に樹脂粘度が下がり、流動性が高くなり成形性が優れる。そのため傾きaは、その材料が薄肉容器成形に適しているか、否かの判断指標の一つとなる。
傾きaが0.55未満の場合、十分な流動性が得られず、また、傾きaが0.62を超える場合、耐衝撃性が著しく低下する。
傾きaは、エチレン重合体(A)、(B)の分子量差を大きくし、トータルのポリエチレンの分子量分布を広くすることにより、大きくすることができる。
前記したように、GPC測定による分子量の分布の広さを表す単分散性Q値(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、10≦Q値≦13が好ましく、より好ましくは11≦Q≦12である。
Q値が10未満の場合、傾きaも小さくなり、流動性の向上が十分ではなく、一方、13を超える場合、耐衝撃性が著しく低下する。
Q値は、エチレン重合体(A)、(B)の分子量差を大きくし、薄肉容器用ポリエチレンの分子量分布を広くすることにより、大きくすることができる。
分子量は、エチレンとα−オレフィンとの重合温度を上げることにより、分子量を下げることができ、一方、重合温度を下げることにより、分子量を上げることができる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応において、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を増加させることにより、分子量は下げることができ、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を減少させることにより、分子量は上げることができる。
なお、射出圧力75MPaにおけるスパイラルフロー長さは、60cm以上が好ましく、より好ましくは70cm以上である。射出圧力75MPaにおけるスパイラルフロー長さが60cm未満では、傾きaを大きくした場合でも、十分な流動長を得ることは困難である。
特性(7): 炭化水素揮発分
本発明の薄肉容器用ポリエチレンは、130℃のヘッドスペースGC測定による炭化水素揮発分が80ppm以下であり、好ましくは30ppm以下である。
GC測定による炭化水素揮発分が80ppmを超えると、臭気が発生し、内容物の味、香味が変質し、好ましくない。
ここで、GC測定の条件は、ポリエチレン樹脂1gを25mlのガラス密閉容器に入れ、130℃で60分加熱した際のヘッドスペース中の空気をガスクロマトグラフィーにて揮発分を測定した値である。
本発明にいう炭化水素とは、少なくとも炭素及び水素を含む化合物をいい、通常ガスクロマトグラフィーにて測定されるもので、本発明の要件を満足することにより、容器内容物の臭い、味への影響を防ぐことができる。
本発明において、炭化水素揮発分を所定の値以下にするためには、重合したポリエチレン系重合体を揮発分除去操作、例えば、スチームストリッピング処理、温風脱臭処理、真空処理、窒素パージ処理等を実施することにより、達成することができ、特にスチーム脱臭処理を行うことにより、本発明の効果を顕著に発揮することができる。スチーム処理の条件は、特に限定されるものではないが、エチレン系重合体を100℃のスチームに8時間程度接触させるとよい。
また、本発明の上記薄肉容器用ポリエチレンは、常法に従い、ペレタイザーやホモジナイザー等による機械的な溶融混合によりペレット化した後、各種成形機により成形を行って所望の成形品とすることができる。
また、上記の方法により得られる薄肉容器用ポリエチレンには、性能を損なわない範囲で、常法に従い、他のオレフィン系重合体やゴム等のほか、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色顔料、架橋剤、発泡剤、無機又は有機充填剤、難燃剤等の公知の添加剤を配合することができる。
添加剤として、例えば、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を1種又は2種以上、適宜併用することができる。
また、充填材(剤)としては、炭酸カルシウム、タルク、金属粉(アルミニウム、銅、鉄、鉛など)、珪石、珪藻土、アルミナ、石膏、マイカ、クレー、アスベスト、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタン等が使用可能であり、なかでも炭酸カルシウム、タルク及びマイカ等を用いるのが好ましい。
いずれの場合でも、本発明の上記薄肉容器用ポリエチレンに、必要に応じ、各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。ただし、食品容器向けに使用する場合は、添加剤の使用は、極力少なくする方が容器自体の味・臭い、及び内容物の味・臭いに対し影響が少なくなるため、好ましい。
本発明のポリエチレンは、必要に応じて、射出成形法以外の成形方法により容器とすることもできるが、特に射出成形により薄肉のカップ型容器向けに好適な材料である。
また、本発明の容器は、剛性が高く、耐衝撃性、成形性、低臭・低味に優れているので、特に清涼飲料、乳飲料等の液体や乳製品等を収容するのに適している。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、ポリエチレンの物性は、以下の方法で測定した。
(1)温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR):
JIS K6922−2に準拠して測定した。
(2)温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR):
JIS K6922−2に準拠して測定した。
(3)密度:
JIS K6922−1、2に準拠して測定した。
(4)Q値(単分散性):
GPCで測定される重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)のそれぞれ値を用いて、以下の関係式により算出した。
Q値=重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)
尚、GPC測定条件は、以下の通りである。
装置:Polymer Laboratories社製、PL−GPC220
カラム:昭和電工(株)製、HT−806M(2本)を直列に接続
移動相:O−ジクロロベンゼン(ODCB)
カラム温度:145℃
試料濃度:20〜30mg(PE)/20ml(ODCB)
溶解温度:150℃
検出器:示差屈折計
検量線:PS標準試料による
(5)結晶化時間:
パーキンエルマー社製DSC−7にて、試料を190℃にて5分放置後、120℃/分の速度にて121.5℃まで冷却し、保持とした。121.5℃の等温下にて結晶化が終了した時点にて、ピークトップを検出し、測定した。
(6)曲げ弾性率:
JIS K6922−2に準拠して測定した。
(7)スパイラルフロー長さ/傾きa:
ファナック社製ROBOSHOT S−2000i 100B射出成形機を用い、設定温度190℃、射出速度10mm/秒、射出時間5秒、冷却時間10秒、保圧切替え位置7mmの条件で、射出圧力60MPa、75MPa、90MPaの各射出圧力にて、ランナー側ゲート幅4mm、キャビティ側ゲート幅5mm、幅10mm、厚み2mm、最長流路長2000mmのアルキメデスのスパイラル流路を有する金型を用い、スパイラルフロー長さを測定した。
そして、スパイラルフロー長さと射出圧力との関係を最小二乗法近似により、直線関係式にし、その直線の傾きaを算出した。
スパイラルフロー長さ(cm)=傾きa×射出圧力(MPa)+C(任意の数)
その例として、下記に示す実施例3の各データを、表1に示す。
実施例3では、図1に示すように、次のようになり、傾きaは、0.6である。
スパイラルフロー長さ(cm)=0.6×射出圧力(MPa)+28
Figure 0005269822
(8)シャルピー衝撃強度:
JIS K6922−2に準拠し、低温5℃のシャルピー衝撃試験のシャルピー衝撃強度は、恒温槽(TABAI ESPECCORP.社製 MIN−SUBZERO MC−710)を用い、槽内を5℃にし、試験片をその中で1時間状態調整した後、23℃恒温室内で直ちに取り出し、測定した。
(9)炭化水素揮発分:
ポリエチレン樹脂1gを25mlのガラス密閉容器に入れ、130℃で60分加熱した後の密閉容器中のヘッドスペースの空気をガスクロマトグラフィーにて、分析して測定した。
(10)成形性:
ファナック社製ROBOSHOT S−2000i 100B射出成形機を用い、設定温度190℃、保圧100MPa、射出圧力120MPa、射出速度200mm/秒、射出時間5秒、冷却時間10秒、保圧切替え位置7mmの条件でフランジ71φ、側面厚み0.8mm、底面厚み1mm、高さ110mmのカップ型金型で、カップ型容器を成形した。そのカップ型容器のヒケ、フローマーク、フランジ部の水平度を外観目視により、以下の基準にて評価した。
○:外観に変形なし
×:外観に変形あり
(11)総合評価:
薄肉容器用ポリエチレンとして、適性総合評価し、以下の基準にて判定した。
○:不良項目なし(良好)
×:不良項目あり
[実施例1]
1.触媒の製造
固体触媒成分として、溶解析出法によるTi系触媒を使用した。その製造方法は、以下の通りである。
攪拌機および冷却器を取り付けた容量1リットルの三つ口フラスコの内部を十分に窒素置換した後、乾燥ヘキサン250ml、あらかじめ3リットル振動ミルで1時間粉砕処理を行った無水塩化マグネシウム11.4gおよびn−ブタノール110mlを入れ、68℃で2時間加熱し均一な溶液(1a)とした。
この溶液(1a)を室温まで冷却した後、25℃の動粘度が25cStであるメチルポリシロキサン8gを添加し、1時間攪拌して均一な溶液(1b)を得た。
溶液(1b)を水で冷却した後、この中へ四塩化チタン50mlおよび乾燥ヘキサン50mlを、滴下漏斗を用い1時間を費やして滴下し、溶液(1c)を得た。
溶液(1c)は均一であり、反応生成物の錯体は析出していなかった。溶液(1c)を還流しながら、68℃で2時間加熱処理を行った。加熱を開始して約30分後に反応生成物錯体(1d)の析出が見られた。これを採取して乾燥ヘキサン250mlで6回洗浄し、さらに窒素ガスで乾燥して、反応生成物錯体(1d)19gを回収した。
反応生成物錯体(1d)を分析したところ、Mg14.5質量%、n−ブタノール44.9質量%およびTi0.3質量%を含有しており、その比表面積は、17m/gであった。
反応生成物錯体(1d)4.5gを窒素雰囲気下で攪拌機および冷却器を取り付けた容量1リットルの三つ口フラスコに採取し、これに乾燥ヘキサン250mlおよび四塩化チタン25mlを加えて還流下に68℃で2時間加熱処理を行い、室温まで冷却した後、乾燥ヘキサン250mlで6回洗浄し、窒素ガスで乾燥して固体触媒成分(1e)4.6gを回収した。
この固体触媒成分(1e)を分析したところ、Mg12.5質量%、n−ブタノール17.0質量%およびTi9.0質量%を含有しており、その比表面積は、29m/gであった。この固体触媒成分(1e)をSEMで観察したところ、粒径は、均一であり球に近い形状であった。
2.重合体の製造
第一段反応器として内容積200リットルの第1段重合器に、触媒供給ラインから上記1.触媒の製造で得られた固体触媒成分(1e)14.3g/hrを、また、トリエチルアルミニウム(TEA)を有機金属化合物供給ラインから56mmol/hrの速度にて、連続的に供給して、重合内容物を所要速度で排出しながら、70℃において、重合溶媒(n−ヘキサン)70(l/hr)、水素1.46(mg/hr)、エチレン18.0(kg/hr)、1−ブテン1.50(kg/hr)の速度で供給し、全圧1.4MPa、平均滞留時間1.7Hrの条件下で、連続的に第1段共重合を行った。
第1段反応器の重合生成物を一部採取し、重合物を回収して、物性を測定した結果を、「成分(A)」として、表2に示した。
第一段反応器で生成したスラリー状重合生成物を、そのまま内容積400リットルの第二段反応器へ全量、内径50mmの連続管を通して導入し、重合器内容物を所要速度にて排出しながら、82℃にて、重合溶媒(n−ヘキサン)100(l/hr)、水素14.7(g/hr)、エチレン33.4(kg/hr)の速度で供給し、全圧1.3MPa、平均滞留時間1.2Hrの条件下で連続的に第2段重合を行った。
第二段反応器から排出される重合生成物をフラッシング槽へ導入し、重合生成物を連続的に抜き出し、脱気ラインから未反応ガスを除去した。
得られた重合体を、スチームストリッピング処理を施した後、ペレタイザーで造粒した後、その物性を評価した。結果を表2に示した。
なお、表2において、第二段反応器で生成した「成分(B)」の物性は、最終製品であるポリエチレン(樹脂組成物)の物性と第一段反応器で得られた成分(A)の物性とから、加成則に基づく計算により求めた。
表2から明らかように、実施例1のポリエチレン(樹脂組成物)は、曲げ弾性率、5℃でのシャルピー衝撃強度、成形性、炭化水素揮発分のいずれも、良好であった。
[実施例2]
表2に示す成分(A)のHLMFR、組成割合、成分(B)の組成割合を変えた以外は、実施例1と同様に行った。
得られたポリエチレン(樹脂組成物)は、曲げ弾性率、5℃でのシャルピー衝撃強度、成形性、炭化水素揮発分のいずれも、良好であった
[実施例3]
表2に示す成分(A)のHLMFR、組成割合、成分(B)のMFR、組成割合を変えた以外は、実施例1と同様に行った。
得られたポリエチレン(樹脂組成物)は、曲げ弾性率、5℃でのシャルピー衝撃強度、成形性、炭化水素揮発分のいずれも、良好であった。
[実施例4]
表2に示す成分(A)のHLMFR、密度、組成割合、成分(B)の組成割合を変えた以外は、実施例3と同様に行った。
得られたポリエチレン(樹脂組成物)は、曲げ弾性率、5℃でのシャルピー衝撃強度、成形性、炭化水素揮発分のいずれも、良好であった。
[実施例5]
表2に示す成分(A)のHLMFR、密度、組成割合と、成分(B)のMFR、密度、組成割合を変えた以外は、実施例1と同様に行った。
得られたポリエチレン(樹脂組成物)は、曲げ弾性率、5℃でのシャルピー衝撃強度、成形性、炭化水素揮発分のいずれも、良好であった。
[比較例1]
表3に示す成分(A)のHLMFR、密度、組成割合、成分(B)の組成割合を変えた以外は、実施例1と同様に行った。
その結果、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度は良好であったが、ポリエチレン(樹脂組成物)のMFRが低下し、かつ結晶化時間が短いため、十分な流動長が得られず、成形性が不十分となり、容器としての総合評価が不良であった。
[比較例2]
表3に示す成分(A)のHLMFRを変えた以外は、実施例2と同様に行った。
その結果、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度は良好であったが、結晶化時間が短いため、十分な流動長が得られず、成形性が不十分であり、容器としての総合評価が不良であった。
[比較例3]
表3に示す成分(A)のHLMFR、密度と、成分(B)のMFRを変えた以外は、実施例3と同様に行った。
その結果、曲げ弾性率は良好であったが、ポリエチレン(樹脂組成物)のMFRが低下し、かつ結晶化時間が短いため、十分な流動長が得られず、成形性が不十分となった。また、Q値も13を超え、シャルピー衝撃強度が不十分となり、容器としての総合評価が不良であった。
[比較例4]
表3に示す成分(B)の密度を変えた以外は、実施例2と同様に行った。
その結果、成形性、シャルピー衝撃強度は共に良好であったが、ポリエチレン(樹脂組成物)の密度が低く、曲げ弾性率が低下してしまい、容器としての総合評価が不良であった。
[比較例5]
表3に示す成分(A)のHLMFR、密度と、成分(B)のMFR、密度を変えた以外は、実施例3と同様に行った。
その結果、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度は共に良好であったが、ポリエチレン(樹脂組成物)のスパイラルフロー長さと射出圧力との関係の最小二乗法近似による直線関係式の傾きaが0.55を超えず、十分な流動長が得られず成形性が不十分であり、容器としての総合評価が不良であった。
[比較例6]
表3に示す成分(B)のみからなるポリエチレンを用いて、実施例1と同様に行った。
その結果、曲げ弾性率、成形性は良好であったが、シャルピー衝撃強度が著しく低下し、容器としての総合評価が不良であった。
[比較例7]
表3に示す成分(B)のみからなるポリエチレンを用いて、実施例1と同様に行った。
その結果、表3に示すように、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度は良好であったが、スパイラルフロー長さが著しく低下し、成形性が不十分であり、容器としての総合評価が不良であった。
[比較例8]
表3に示す成分(A)の密度、組成割合と、成分(B)のMFR、密度、組成割合を変えた以外は、実施例2と同様に行った。
その結果、曲げ弾性率、成形性は良好であったが、Q値が13を超え、成分(A)の配合割合も25質量部未満、密度が0.940g/cm未満であったため、低温5℃でのシャルピー衝撃強度が低下し、容器としての総合評価が不良であった。
[比較例9]
表3に示す成分(A)のHLMFR、密度、組成割合と、成分(B)のMFR、密度、組成割合を変えた以外は、実施例1と同様に行った。
その結果、曲げ弾性率、成形性は良好であったが、成分(A)の配合割合も25質量部未満、密度が0.940g/cm未満であったため、低温5℃でのシャルピー衝撃強度が低下し、容器としての総合評価が不良であった。
Figure 0005269822
Figure 0005269822
本発明の薄肉容器用ポリエチレンは、高流動性で成形性に優れ、容器の軽量化、生産効率の向上、製品不良率の低減ができ、薄肉のカップ型容器向けに好適な材料として用いることができる。また、本発明の容器は、剛性が高く、低温での耐衝撃性に優れているので、特に清涼飲料、乳飲料等の液体や乳製品等を収容する容器として、用いることができる。

Claims (4)

  1. 下記成分(A)及び(B)からなり、且つ成分(A)と成分(B)の組成割合は、成分(A)が25〜40質量部、成分(B)が60〜75質量部であるポリエチレンであって、
    下記の特性(1)〜(7)を満たすことを特徴とする薄肉容器用ポリエチレン。
    成分(A):温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が40〜80g/10分、密度が0.940〜0.955g/cm であるエチレンとα−オレフィンとの共重合体
    成分(B):温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が150〜400g/10分、密度が0.955〜0.975g/cm であるエチレン単独重合体又はエチレンとα−オレフィンとの共重合体
    (1)温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が25〜45g/10分である。
    (2)密度が0.955〜0.970g/cmである。
    (3)示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間が180秒以上である。
    (4)曲げ弾性率が1000MPa以上である。
    (5)5℃でのシャルピー衝撃強度が1.5KJ/m以上である。
    (6)幅10mm、厚み2mm、最長流路長2000mmのアルキメデスのスパイラル流路を有する金型で、190℃における、射出圧力がそれぞれ60MPa、75MPa、90MPaで得られるスパイラルフロー長さと射出圧力との関係を最小二乗法近似により直線関係式にした場合の傾きaが以下の範囲である。
    0.55≦a≦0.61
    (7)GPC測定による分子量分布の広さを表す単分散性Q値(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が10〜13である。
  2. 130℃のヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC)測定による炭化水素揮発分が80ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄肉容器用ポリエチレン。
  3. 連続多段重合法で製造されることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄肉容器用ポリエチレン。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の薄肉容器用ポリエチレンを射出成形して得られることを特徴とする薄肉容器。
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