JP5630974B2 - ポリエチレン樹脂組成物および該樹脂組成物の成形方法ならびにブローボトル - Google Patents

ポリエチレン樹脂組成物および該樹脂組成物の成形方法ならびにブローボトル Download PDF

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Description

本発明は、ポリエチレン樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、特定の重合触媒を用いて得られるポリエチレン組成物であって、ブロー成形、押出成形、射出成形に有用であり、特にブローボトルに使用した際に高い剛性を有することからボトルの薄肉化が容易でさらに結晶化速度が速いことから成形サイクルの短縮に有用な、優れた剛性と高速成形性を兼ね備えたポリエチレン樹脂組成物である。しかも、ブローボトルとしての耐衝撃性が高くまた内容物に影響を及ぼす臭気の少ないポリエチレン樹脂組成物に関するものである。
従来、内容物が液体、固体であるかを問わず容器として樹脂が広く使われてきた。その中でボトルとして特にブロー成形が容易で物性バランスが良く耐薬品性に優れかつ経済的であることからポリエチレンが特にブローボトル用途に一般的に広く使われている。
しかしながら、低コスト化、成形サイクルの短縮、リサイクルなどの問題から、最近は、樹脂の高剛性化と高速成形性が求められてきている。すなわち、ボトルとして要求される項目である縦方向の耐圧縮性能を維持しつつ樹脂量を減らしてコストダウン、および製品の生産速度の大部分を占める冷却時間を短縮するために樹脂の結晶化速度を早め生産速度を上げて単位時間あたりの生産数を増加させてコストダウンを計る要求がだされている。
ブローボトルの素材であるポリエチレン樹脂組成物に求められる性能は、内溶液、用途により異なるが食品用途の場合は剛性、成形特性および耐衝撃性が特に求められる。
ブローボトルに関しては、昨今の樹脂原料の高騰と内溶液の入った最終製品の価格の下落そして容器リサイクル法に伴う使用樹脂量に応じた負担金が高額である事から、ボトラーやエンドユーザーからブローボトルに対する樹脂量削減要求が厳しくなってきている。さらにボトルを成形するモールダーから成形サイクルの短縮による生産性の向上を強く要求してきている。
ブローボトルは一般的に内容物を詰めたボトルをダンボールケースに入れ、倉庫や店舗で段積みにされる。最近ではダンボール箱も薄肉化されてきており、ボトル自身が上に詰まれる箱の重量を支える形になっている。そのため段積みの下部にあたる箱では上に詰まれたボトル重量すべてを負担することになる。ボトルは上記のような縦軸方向の過度の圧縮により変形および座屈が起きることが知られており、座屈するとボトルがつぶれてしまい商品価値が無くなってしまう。変形や座屈はボトルの曲げ剛性が高いほど起こりにくくなるが、ボトルの曲げ剛性は肉厚に依存するため樹脂量削減のために単に薄肉化を行うとボトルの曲げ剛性が低下して座屈が起こりやすくなる。そのため樹脂自体の単位厚みあたりの曲げ剛性強度を強化することによってボトルの曲げ剛性を高め、縦軸方向のボトルとしての強度の低下無しに薄肉化できる高強度な樹脂が求められている。ポリエチレンの単位厚みあたりの曲げ剛性強度は密度に相関しており、密度が高いほど剛性強度は増加するため高密度化が進められてきた。しかしポリエチレンの密度は導入されるコモノマー量に依存しており、コモノマー量が少ないほど高密度化するが特に高密度領域では導入コモノマー量がもとから少量のためポリエチレンの高密度化は限界があり、従来の触媒系によるポリエチレンでは高密度化を進めていくと含有コモノマーがほとんどなくなることから急激に衝撃強度が低下してボトルとして使用に耐えなくなってしまう問題があった。
他方、ブローボトルの成形サイクルのうち冷却過程がサイクル時間を決める律速になっており樹脂の冷却固化速度が生産性に大きく影響する。従来ロータリーブロー成形による連続多数成形や内部冷却による強制冷却により冷却時間の短縮が行われてはいるが特殊な設備を要するため一般的でない。樹脂の固化速度を早めることができれば成形サイクル時間が短縮され生産性が向上するのであるが、いわゆるチーグラー系触媒で重合されたポリエチレンは結晶化速度が遅いことが知られており、クロム系触媒で重合されたポリエチレンと比較して成形サイクルが長くなるといった問題があった。他方クロム触媒によるポリエチレンは結晶化速度は速いものの、重合ポリエチレンに末端ビニルを多数含むことと長鎖分岐を含むことから熱安定性と臭気性に問題があった。
ブローボトル用に新しい触媒による組成物が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の発明では特定の触媒成分を用いて結晶化速度の向上と臭気の削減が図られているが剛性や耐衝撃性については何ら示唆されていない。
ブロー容器用組成物が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に記載の発明では結晶化速度がボトルの収縮ソリ変形に有効であることが述べられているが結晶化速度に何が有効であるか一切述べられていない。また当該特許は押出し性の改善と環境下応力破壊(ESCR)性の向上が主眼であり、本件の剛性の向上と耐衝撃性の向上、ならびに臭気の低減にはまったくあてはまらない。
さらに中空成形体の提案がある(特許文献3参照)。しかしながら、特許文献3に記載の発明も高剛性と高い耐衝撃性についてはなんら言及がない。
結晶化速度の向上はポリエチレン以外の樹脂では結晶核剤がしばしば用いられている。しかしポリエチレンには従来結晶核剤による結晶化速度向上、強度向上の効果がほとんどあらわれず、結晶核剤を用いた発明もある(特許文献4参照)が実際は結晶化速度向上や強度向上の効果がみられなかった。
特開2007−284667号公報 特許第4002663号公報 特許第3579391号公報 特開平6−248123号公報
以上のように従来は、ブロー成形、押出成形、射出成形に有用であり、特にブローボトルに使用した際に結晶化速度が速く高速成形が可能で、十分な剛性を保持しながら薄肉化できる高い剛性を持ち、耐衝撃性に優れなおかつ臭気性に優れたポリエチレン樹脂組成物は存在しなかった。
本発明は、かかる従来技術の欠点を改良するものであり、特にブローボトルを生産する場合、結晶化速度が速いため高速成形が可能で、特にブローボトルとしての十分な剛性を保持しながら薄肉化できる高い剛性を持ち、なおかつ耐衝撃性に優れた特にブローボトル用のポリエチレン樹脂組成物を提供するものである。さらに、この樹脂組成物は、低分子量成分が少ないため臭気が少ない優れた特徴をも有する。
本発明は、従来技術の欠点を改良するため鋭意研究を重ねた結果、ポリエチレン樹脂組成物が、特定の触媒を用いて製造され、しかも、特定の物性要件を満たす場合にのみ、特にブローボトル生産時、速い結晶化速度のため高速成形が可能で、薄肉化しても特にブローボトルとしての十分な剛性を保持しながら、特にブローボトルとしての耐衝撃性が優れることを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(4)に関する。
(1)下記(a)〜()からなる要件を満たすことを特徴とするポリエチレン樹脂組成物:
(a)JIS K7210に従い、温度190℃及び2.16kg荷重の条件下で測定したコードDのMFRが100〜350g/10minの範囲にあるエチレン単独重合体からなる低分子量成分(A)の割合が60〜40wt%と、エチレンと炭素数が3〜10のα−オレフィンとの共重合体からなる高分子量成分(B)の割合が40〜60wt%を含み;
(b)コードDのMFR0.1〜2.0g/10min;
(c)密度が963〜970kg/m
(d)IR法により測定した末端ビニル量が1000炭素原子あたり0.2個以下;
(e)樹脂中のチタン残渣量が1.5ppm以下;
(f)融点(Tm)より11℃低い温度での結晶化開始時間が1.5分以下
(g)高温ゲル・パーミエーション・クロマトグラフイー(GPC)により得られた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比であるMw/Mnの値が、10〜20。
(2)3mmプレス板より作成したノッチ付きシャルピー試験片における、23℃でのシャルピー衝撃試験値(Ic)と密度(D)が以下の関係を満たし、
Ic>15−(965−D)
0.9mmプレス板より作成した引張衝撃試験片による引張試験衝撃値(Tc)と密度(D)が以下の関係を満たす
Tc>120+(965−D)×12
ことを特徴とする上記(1)に記載のポリエチレン樹脂組成物。
(3)固体触媒成分[A]及び有機アルミニウム化合物[B]を含む重合触媒の存在下に、一段目の重合槽でエチレンを重合することにより前記のエチレン単独重合体を製造し、次に、二段目の重合槽でエチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとを共重合することにより前記のエチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体を製造するという二段重合法により、請求項1又は2に記載のポリエチレン樹脂組成物を、製造する方法であって、
前記固体触媒成分[A]が、以下のようにして得られる固体触媒成分であることを特徴とする、前記の製造方法:
(A−1)(i)一般式(Al)α(Mg)β(R(R(OR〔式中、R、R及びRは炭素数2〜20の炭化水素基であり、α,β,p,q及びrは次の関係を満たす数であり、
0≦α,0<β,0≦p,0≦q,0≦r,p+q>0,0≦r/(α+β)≦2,3α+2β=p+q+r〕
で示される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム成分1モルと、
(ii)一般式HSiCl 4−(a+b)(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、aとbとは次の関係を満たす数であり、0<a,0<b,a+b≦4)で示されるSi−H結合を有するクロロシラン化合物0.01〜100モル
を反応させて得られる固体と、
(A−2)アルコールを、前記固体(A−1)中に含まれるC−Mg結合1モルに対して0.05〜20モル反応させて得られる固体を、さらに
(A−3)一般式AlR 3−s
(式中Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、QはOR,OSiR,NR1011,SR12およびハロゲンから選ばれた基を表し、R,R,R,R,R10,R11,R12は水素原子または炭化水素基であり、0<s<3)で示される有機金属化合物を、反応させて得られる固体に、
(A−4)チタン化合物を、前記(A−3)成分の存在下に反応させて得られる、
固体触媒成分。
(4)上記(1)又は(2)に記載の樹脂組成物を成型してなるブローボトル。
本発明により、高剛性かつ結晶化速度の向上により優れた成形性を有し(高速成形が可能で)、かつ、特にブローボトルに用いた場合、耐衝撃性に優れ臭気も少ない優れた新規なポリエチレン樹脂組成物を提供できた。従って、本発明のポリエチレン樹脂組成物は、特にブローボトル用途として最適である。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明に係るポリエチレン樹脂組成物は、好ましくは、特定のチーグラー型触媒を用い、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれた1種または2種以上のコモノマーとを、所望の物性となるような割合で重合させることにより製造される。
その際、所望の分子量やMFRを得るには、水素のような分子量調節剤を用いればよい。
次に、本発明に好ましくは用いる特定のチーグラー型触媒の調製方法について説明する。
本発明に係るポリエチレン樹脂組成物を得るために好ましくは使用される特定のチーグラー型触媒は、固体触媒成分[A]と有機アルミニウム化合物[B]を含む重合触媒である。固体触媒成分[A]の調製方法としては、好ましくは、
(A−1)(i)一般式(Al)α(Mg)β(R(R(OR〔式中、R、R及びRは炭素数2〜20の炭化水素基であり、α,β,p,q及びrは次の関係を満たす数である。
0≦α,0<β,0≦p,0≦q,0≦r,p+q>0,0≦r/(α+β)≦2,3α+2β=p+q+r〕
で示される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム成分1モルと、
(ii)一般式HSiCl 4−(a+b)(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、aとbとは次の関係を満たす数である。0<a,0<b,a+b≦4)で示されるSi−H結合を有するクロロシラン化合物0.01〜100モル
を反応させて得られる固体と、
(A−2)アルコールを、前記固体(A−1)中に含まれるC−Mg結合1モルに対して0.05〜20モル反応させて得られる固体を、さらに
(A−3)一般式AlR 3−s
(式中Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、QはOR,OSiR,NR1011,SR12およびハロゲンから選ばれた基を表し、R,R,R,R,R10,R11,R12は水素原子または炭化水素基であり、0<s<3)で示される有機金属化合物を、反応させて得られる固体に、
(A−4)チタン化合物を、前記(A−3)成分の存在下に反応させて得られる。
ここで用いられる有機マグネシウム化合物「A」は、一般式(Al)α(Mg)β(R(R(OR〔式中、R、R及びRは炭素数2〜20の炭化水素基であり、α,β,p,q及びrは次の関係を満たす数である。0≦α,0<β,0≦p,0≦q,0≦r,p+q>0,0≦r/(α+β)≦2,3α+2β=p+q+r〕で表される。この化合物は、炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、RMgおよびこれらと他の金属化合物との錯体の全てを包含するものである。記号α、β、p、q、rの関係式3α+2β=p+q+rは、金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
上記式中RないしRで表される炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル(ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくはRはアルキル基である。
アルミニウムに対するマグネシウムの比β/αは、任意に設定可能であるが、好ましくは0.1〜30、特に0.5〜10の範囲が好ましい。またα=0である、ある種の有機マグネシウム化合物を用いる場合には、例えば、Rがsec−ブチル等であれば炭化水素溶媒に可溶性であり、このような化合物も本発明に好ましい結果を与える。
一般式(Al)α(Mg)β(R(R(ORにおいて、α=0の場合のR、Rは次に示す三つの群(1)、(2)、(3)のいずれか一つであることが推奨される。
(1)R、Rの少なくとも一方が炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基であること、好ましくはR、Rがともに炭素原子数4〜6であり、少なくとも一方が二級または三級のアルキル基であること。
(2)RとRとが炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはRが炭素原子数2または3のアルキル基であり、Rが炭素原子数4以上のアルキル基であること。
(3)R、Rの少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくは、R、Rがともに炭素原子数6以上のアルキル基であること。
以下これらの基を具体的に示す。
(1)において炭素原子数4〜6である二級または三級のアルキル基としては、sec−ブチル、tert−ブチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチル−2−エチルプロピル等が用いられ、sec−ブチルが特に好ましい。
次に(2)において炭素原子数2または3のアルキル基としてはエチル基、プロピル基が挙げられ、エチル基は特に好ましい。また炭素原子数4以上のアルキル基としては、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、ブチル基、ヘキシル基が特に好ましい。
(3)において炭素原子数6以上のアルキル基としては、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基等が挙げられ、アルキル基である方が好ましく、ヘキシル基が特に好ましい。
一般にアルキル基の炭素原子数を増やすと炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘性が高くなる傾向があり、必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。なお、上記有機マグネシウム化合物は炭化水素溶液として用いられるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のコンプレックス化剤がわずかに含有され、あるいは残存していても差し支えなく用いることができる。また、上記有機マグネシウム化合物が可溶な炭化水素溶媒とは、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の不活性炭化水素媒体である。
次にアルコキシ基(OR)について説明する。Rで表される炭化水素基としては、炭素原子数3〜10のアルキル基またはアリール基が好ましい。具体的には、たとえば、n−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アミル、ヘキシル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチル−4−メチルペンチル、2−プロピルヘプチル、2−エチル−5−メチルオクチル、n−オクチル、n−デシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくはn−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、2−メチルペンチル及び2−エチルヘキシルである。
これらの有機マグネシウム化合物、もしくは有機マグネシウム錯体は、一般式RMgX、R Mg(Rは前述の意味であり、Xはハロゲンである)で示される有機マグネシウム化合物と、一般式、AlR またはAlR 3−1H(Rは前述の意味である)で示される有機金属化合物とを、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の不活性炭化水素媒体中、室温〜150℃の間で反応させ、必要な場合には続いてRで表される炭化水素基を有するアルコールまたは炭化水素溶媒に可溶な上記Rで表される炭化水素基を有するヒドロカルビルオキシマグネシウム化合物、及び/またはヒドロカルビルオキシアルミニウム化合物と反応させる方法により得られる。
このうち炭化水素に可溶な前記有機マグネシウム化合物と前記Rで表される炭化水素基を有するアルコールとを反応させる場合、反応の順序については、前記有機マグネシウム化合物中に前記アルコールを加えていく方法、前記アルコール中に前記有機マグネシウム化合物を加えていく方法、または両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。本発明において炭化水素に可溶な前記有機マグネシウム化合物と前記Rで表される炭化水素基を有するアルコールとの反応比率については特に制限はないが、反応の結果、得られるアルコキシ基含有有機マグネシウム成分における、全金属原子に対するアルコキシ基のモル組成比r/(α+β)の範囲は0≦r/(α+β)≦2であり、0≦r/(α+β)<1が特に好ましい。
次に、本発明に係るポリエチレン樹脂組成物を得るために好ましくは用いる固体触媒成分[A]の調製において用いられるSi−H結合を有するクロロシラン化合物(ii)について説明する。
当該クロロシラン化合物としては一般式、HSiCl 4−(a+b)(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、aとbとは次の関係を満たす数である。0<a,0<b,a+b≦4)で表される。上記式においてRで表される炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、たとえば、メチル、エチル、ブチル、アミル、ヘキシル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、メチル、エチル、プロピル等の低級アルキル基が特に好ましい。また、a及びbはa+b≦4の関係を満たす0より大きな数であり、特にbが2または3であることが好ましい。
これらの化合物としては、HSiCl、HSiClCH、HSiCl、HSiCln−C、HSiCliso−C、HSiCln−C、HSiCl、HSiCl(4−Cl−C)、HSiClCH=CH、HSiClCH、HSiCl(1−C10)、HSiClCHCH=CH、HSiClCH、HSiClC、HSiCl(CH、HSiCl(C、HSiClCH(iso−C)、HSiClCH(C)、HSiCl(C等が挙げられ、これらの化合物またはこれらの化合物から選ばれた二種類以上の混合物からなるクロロシラン化合物が使用される。当該クロロシラン化合物としては、トリクロロシラン(HSiCl)、モノメチルジクロロシラン(HSiClCH)、ジメチルクロロシラン(HSiCl(CH)、エチルジクロロシラン(HSiCl)が好ましく、トリクロロシラン、モノメチルジクロロシランが特に好ましい。
次に炭化水素溶媒に可溶な前記有機マグネシウム成分(i)と前記クロロシラン化合物との反応について説明する。反応に際してはクロロシラン化合物を予め不活性反応溶媒体、たとえば、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、1,2−ジクロロエタン、o−ジクロロベンゼン、ジクロロメタン等の塩素化炭化水素、もしくはエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系媒体、あるいはこれらの混合媒体を用いて希釈した後利用することが好ましい。触媒の性能上、脂肪族炭化水素媒体が好ましい。反応の温度については特に制限されないが、反応の進行上、好ましくはクロロシランの沸点以上もしくは40℃以上で実施される。前記有機マグネシウム成分(i)と前記クロロシラン化合物の2種成分の反応比率にも特に制限はないが、通常有機マグネシウム成分1モルに対し、クロロシラン化合物0.01〜100モルであり、好ましくは有機マグネシウム成分1モルに対し、クロロシラン化合物0.1〜10モルの範囲である。
反応方法については2種成分を同時に反応帯に導入しつつ反応させる同時添加の方法、もしくはクロロシラン化合物を事前に反応帯に仕込んだ後に、有機マグネシウム成分を反応帯に導入しつつ反応させる方法、あるいは有機マグネシム成分を事前に仕込み、クロロシラン化合物を添加する方法があるが、クロロシラン化合物を事前に反応帯に仕込んだ後に、有機マグネシウム成分を反応帯に導入しつつ反応させる方法が好ましい結果を与える。上記反応によって得られる固体成分はろ別またはデカンテーション法によって分離した後、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の不活性溶媒を用いて充分に洗浄し、未反応物あるいは副生成物等を除去することが好ましい。
上記のようにして得られた固体(A−1)を、さらにアルコール(A−2)と反応させる。この際用いられるアルコールとしては、炭素数1〜20の飽和又は不飽和のアルコールを例示することができる。このようなアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、iso−アミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、ヘキシルアルコール、シクロヘキサノール、フェノール、クレゾール等を挙げることができ、CからCの直鎖アルコール、iso−ブチルアルコール、及びiso−アミルアルコールは特に好ましい。
次にアルコールの使用量は、固体(A−1)中に含まれるC−Mg結合1モル当たり、0.05〜20モルであり、好ましくは0.1〜10モル、特に好ましくは0.2〜8モルの範囲である。固体(A−1)とアルコール(A−2)との反応は、不活性媒体の存在下または非存在下において行う。不活性媒体としては前述の脂肪族、芳香族ないし脂環式炭化水素のいずれを用いても良い。反応時の温度は特に制限はないが、好ましくは室温から200℃で実施される。
次に、固体(A−1)とアルコール(A−2)との反応により得られた固体を、好ましくは、更に、以下の一般式(A−3)で示される有機金属化合物と反応させて、固体を得る。
(A−3)一般式AlR 3−s
(式中Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、QはOR,OSiR,NR1011,SR12およびハロゲンから選ばれた基を表し、R,R,R,R,R10,R11,R12は水素原子または炭化水素基であり、0<s<3)。
当該有機金属化合物(A−3)としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−プロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリiso−ブチルアルミニウム、トリn−アミルアルミニウム、トリiso−アミルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウム、トリn−デシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジiso−ブチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド等のハロゲン化アルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジiso−ブチルアルミニウムブトキシド等のアルコキシアルミニウム、ジメチルヒドロシロキシアルミニウムジメチル、エチルメチルヒドロシロキシアルミニウムジエチル、エチルジメチルシロキシアルミニウムジエチル等のシロキシアルキルアルミニウムおよびこれらの混合物が用いられ、ハロゲン化アルミニウムが好ましく、ジメチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジプロピルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリドが特に好ましい。
固体(A−1)とアルコール(A−2)との反応により得られた固体と、有機金属化合物(A−3)との反応は、好ましくは不活性反応媒体を用いるが、不活性反応媒体としてはたとえば、ヘキサン、ヘプタンの如き脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素等が挙げられるが、脂肪族炭化水素が好ましい。有機金属化合物(A−3)の使用量は、固体成分(A−1)に含まれるC−Mg結合1モル当たり、0.5モル以下が好ましく、特に好ましくは0.1モル以下である。反応温度については、特に制限はないが、室温ないし150℃の範囲で行うことが好ましい。
次いでチタン化合物(A−4)について説明する。当該チタン化合物としては、一般式Ti(OR134−uで表されるチタン化合物が用いられる。式中uは0≦u≦4の数であり、R13で表される炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、アリル等の脂肪族炭化水素基、シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、シクロペンチル等の脂環式炭化水素基、フェニル、ナフチル等の芳香族炭化水素基等が挙げられるが、脂肪族炭化水素基が好ましい。Xで表されるハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、塩素が好ましい。uは0であるのが好ましい。上記から選ばれたチタン化合物を、2種以上混合した形で用いることは可能である。
固体物質とチタン化合物との反応は不活性反応媒体を用いるが、不活性反応媒体としてはたとえば、ヘキサン、ヘプタンの如き脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素等が挙げられるが、脂肪族炭化水素が好ましい。チタン化合物の使用量は固体成分(A−1)に含まれるC−Mg結合1モル当たり、0.5モル以下が好ましく、特に好ましくは0.1モル以下である。反応温度については、特に制限はないが、室温ないし150℃の範囲で行うことが好ましい。この場合、前記有機金属化合物成分(A−3)を存在させることも可能である。その際添加順序としては、有機金属化合物(A−3)に続いてチタン化合物を加える、チタン化合物に続いて有機金属化合物(A−3)を加える、両者を同時に添加する、のいずれの方法も可能であるが、有機金属化合物成分(A−3)に続いてチタン化合物を加えることが好ましい。この場合、有機金属化合物(A−3)とチタン化合物のモル比は0.5〜2の範囲が好ましい。
かくして得られた固体触媒成分[A]は、不活性溶剤によるスラリー溶液として使用される。不活性溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、1、2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、等があげられる。
本発明の固体触媒成分[A]とともに用いる有機アルミニウム化合物[B]としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−プロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリiso−ブチルアルミニウム、トリn−アミルアルミニウム、トリiso−アミルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウム、トリn−オクチルアルミニウム、トリn−デシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジiso−ブチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド等のハロゲン化アルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジiso−ブチルアルミニウムブトキシド等のアルコキシアルミニウム、ジメチルヒドロシロキシアルミニウムジメチル、エチルメチルヒドロシロキシアルミニウムジエチル、エチルジメチルシロキシアルミニウムジエチル等のシロキシアルキルアルミニウムおよびこれらの混合物が用いられ、特にトリアルキルアルミニウムは最も高い活性が達成されるため好ましい。
本発明の触媒系で重合するオレフィンとしては、エチレンおよび炭素数が3〜20のα−オレフィンが挙げられ、炭素数が3〜20のα−オレフィンの代表例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられ、このうちのいくつかを組み合わせて、共重合することもできる。固体触媒成分及び有機アルミニウム化合物は、重合条件下に重合系内に添加してもよいし、あらかじめ重合に先立って混合してもよい。また組み合わせる両成分の比率は、固体触媒成分[A]中のTiと有機アルミニウム化合物[B]中のAlとのモル比で規定され、好ましくは、Al/Ti=0.3〜1000である。
重合溶媒としては、スラリー重合に通常使用される炭化水素溶媒が用いられる。具体的には、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素の単独あるいは混合物が用いられる。重合温度は室温〜100℃、好ましくは50℃〜90℃の範囲である。重合圧力は常圧ないし100気圧の範囲で実施される。得られる重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、あるいは重合温度を変化させることによって調節することができる。
本発明における高分子量成分、低分子量成分なる語句は、二段重合における各反応器で生成するポリマーの相対的な分子量の大小を示したものである。
本発明のエチレン単独重合体からなる低分子量成分(A)とエチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体からなる高分子量成分(B)とを含むポリエチレン樹脂組成物は、低分子量成分(A)と高分子量成分(B)とを別々に重合し、それらを所定の配合比でブレンドすることによるパウダーブレンドやペレットブレンド、あるいは、直列に接続した2以上の重合器で順次連続的に重合して得られる多段重合法や、並列に接続した2つ以上の重合器で同時に重合して得られる各成分をスラリー状態などでブレンドする方法でも良い。
その中でも、物性を安定的にコントロールでき、高品質のポリエチレンを製造するという点から、直列に接続した2以上の重合器で順次連続的に重合して得られる多段重合法が最も好ましい。
特に、一段目の重合槽で低分子量成分(A)を製造し、二段目の重合槽で高分子量成分(B)を製造することがより好ましい。密度およびESCR(耐環境応力亀裂性)等の物性と成形性を両立させるためには、低分子量成分(A)を重合する一段目の重合槽には、コモノマーをフィードせずにエチレン単独重合体を製造し、続いて、高分子量成分(B)を製造する二段目の重合槽には、コモノマーをフィードさせて、共重合体を製造することが好ましい。
一段目の重合槽で高分子量成分(B)を製造し、二段目の重合槽で低分子量成分(A)を製造することもできるが、一段目でコモノマーをフィードすると未反応のコモノマーが残留し、二段目の重合槽にそのままフィードされ、低分子量成分にもコモノマーが挿入し、コポリマーとなってしまう可能性があり、密度を高く保った上で、ESCRを高くすることができなくなる恐れがあるなど、制御が複雑になる。
また、本発明のポリエチレン樹脂組成物は、エチレン単独重合体からなる低分子量成分(A)が60〜40wt%、エチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体からなる高分子量成分(B)が40〜60wt%を含む。好ましくは、低分子量成分(A)が65〜50wt%、高分子量成分(B)が35〜50wt%である。エチレン単独重合体からなる低分子量成分(A)の量が40wt%以上である場合、流動性が良く、押出機負荷が良好で、高速成形性に優れる。60wt%以下である場合、高分子量成分が多くなり、ESCR、耐衝撃性に優れる。
二段連続重合におけるエチレン単独重合体からなる低分子量成分(A)とエチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体からなる高分子量成分(B)との割合は、樹脂の生産量から把握することが可能である。たとえば、最終的に得られるポリマー生産量から一段目の重合槽で得られるポリマー量を差し引いた値が二段目の重合槽で得られるポリマー量に相当する。
また、エチレン単独重合体からなる低分子量成分(A)の密度は971kg/m以上であることが好ましい。更に好ましくは、密度を973kg/m以上とすることが望ましい。このことにより、ポリエチレン組成物の密度を高くできると同時に、エチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体からなる高分子量成分(B)にコモノマーを少量かつ効率的に導入して耐衝撃性を維持することが可能となる。エチレン単独重合体からなる低分子量成分(A)の密度が971kg/m未満である場合、エチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体からなる高分子量成分(B)の密度を十分に低下させることができないので、耐衝撃性が低下する。
本発明のエチレン単独重合体からなる低分子量成分(A)のMFRD(コードDのMFR;JIS K7210:1999、190℃、2.16kg荷重)は、100〜350g/10minであり、好ましくは140〜300g/10minである。この低分子量成分を大きく取ることによって高分子量成分をさらに高分子量化できる。低分子量成分(A)のMFRDが100g/10min未満の場合、本発明のポリエチレン樹脂組成物のMFRDを0.1〜2.0g/10min.にするために、高分子量成分(B)のMFRDを低くすることが困難となり耐衝撃性が低下して好ましくない。一方、500g/10minを超える場合には、ワックスのような低分子量成分が多くなり、臭気やボトル内容物への溶出の原因となり、好ましくない。本発明の低分子量成分と高分子成分は相対的な分子量を表しており低分子量成分の分子量が高分子量成分の分子量よりも小さくなる。本発明における高分子量成分(B)のMFRDは、好ましくは5g/10min以下である。
本発明のポリエチレン樹脂組成物の数平均分子量(Mn)およびその分子量分布(Mw/Mn)は、高温ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(高温GPC)を用いて、標準ポリスチレンサンプルから検量線を作成して求めることができる。GPCの溶媒としてはオルトジクロロベンゼン(ODCB)を用いた。また本発明のポリエチレン樹脂組成物のMw/Mnの値は、10〜20であることが好ましく、12〜17であることがより好ましく、14〜16であることが特に好ましい。Mw/Mnが10未満では、高分子量成分が少なく、ESCRが不足する。10以上とすることでブロー成形性が良好となる。20より大きい場合、ワックスのような分子量で1000以下の低分子量成分量が多くなり、これらが臭気の問題や、ボトル内の飲料に溶け出す恐れ等の問題を引き起こす可能性がある。また、このように分子量分布を従来よりも狭くすることにより、衝撃強度を高めるという効果もある。前述した特定の触媒を用いることにより、この従来よりも狭いMw/Mnの値を満足させることができ、従来のチーグラー・ナッタ系触媒では到達することができなかった。また、分子量分布が広がることにより、衝撃強度が低下し、落下の衝撃でボトルが割れやすくなるほか、結晶化速度の低下にもつながる。
本発明の樹脂組成物は、コードDのMFR(JIS K7210:1999、190℃、2.16kg荷重;以下「MFRD」と記載する)が、0.1〜2.0g/10minの範囲にあり、好ましくは0.2〜1.0g/10minの範囲、さらに好ましくは、0.3〜0.6g/10minである。MFRDの値が0.1g/10min以上である場合、成形時に充分な流動性が得られ成形性が良い。また、2.0g/10min以下の場合に成形に際し、押出した溶融パリソンが自重で伸びてしまうドローダウン現象がおこらない成形をすることができる。
また、コードGのMFR(JIS K7210:1999、190℃、21.6kg荷重;以下「MFRG」と記載する)の値が7.0〜170g/10minであることが好ましい。より好ましくは14〜85g/10minであり、さらに好ましくは、21〜50g/10minである。この値が7.0g/10min未満であれば成形性に劣り、170g/10minを超える場合は、良好な耐ストレスクラック性(ESCR)が得られない。
ここでいう成形性とは、同一条件において押出機の負荷が低くなり、押出圧力上限に対して吐出速度をどこまで上げられるかによって判断できる。
次に、MFRGとMFRDとの比FRR(G/D)の値としては、一般的に分子量分布と相関のある数値であり、分子量分布が広くなると、このFRR(G/D)の値は大きくなる傾向にあるが、本発明のポリエチレン樹脂組成物のFRR(G/D)は、60以上90以下、好ましくは65以上85以下、さらに好ましくは70以上85以下である。この値が60未満である場合、成形時の押出機の負荷が高くなり、成形性上好ましくない。また、耐ストレスクラック性も充分ではない。また、90を超える場合、衝撃強度が低下するだけでなく、結晶化速度が遅くなり成型サイクルが長くなる。
樹脂組成物の密度としては963〜970kg/mの範囲である。好ましくは963〜967kg/mであり、より好ましくは964〜966kg/mである。この耐衝撃性を改良するためには、樹脂の密度を低くすることが有効であるが、ブローボトル用の樹脂組成物においては、密度が963kg/m未満である場合、ボトルの剛性が不足し、軸強度の要求される用途であるボトルの薄肉化が達成できない。一方、970kg/mを超える場合には、実質的にコモノマーを含有しないホモ重合体となり耐衝撃性が急落する。
また本発明のエチレン樹脂組成物はIR法で求めた炭素原子1000個あたりの末端ビニル量が0.2個以下であることが重要である。末端ビニルとは、主にポリエチレンが生成した重合触媒からポリエチレンが切断される際に末端部分に発生したビニル性二重結合のことであり、特にクロム系触媒からポリエチレンが生成する際に発生が顕著になる。低分子量のポリエチレンに発生した末端ビニルは臭気の原因となるほか、ビニル性二重結合は酸素等により酸化を受けやすく、酸化により発生したアルデヒド、カルボン酸が臭気の原因になるとともに黄変などの外観不良の原因や、分子の分解や熱架橋の原因であるため、末端二重結合はできるかぎり少ないほうが望ましい。炭素原子1000個あたりの末端二重結合量は0.2個以下であり、0.1個以下が好ましい。
本発明のエチレン樹脂組成物に含まれるチタン残渣量は0.5ppm以上1.5ppm以下である。該発明で好ましくは使用される触媒はチタン系触媒であるチーグラー系触媒であるが、触媒残渣はポリエチレン製造後も樹脂中に残るため、チタン残渣量を減らすためには触媒重量あたりのポリエチレン生成量を表す活性が高いほど樹脂中のチタン残渣量は少なくなる。樹脂中に残留するチタンは樹脂の黄変の原因となるほか条件によっては赤色変色を引き起こす。また触媒残渣があらたな反応の起点となって副生成物を発生するおそれがあるので含有量はできるだけ少ない方がよい。樹脂中に含まれるチタン残渣量は0.5ppm以上1.5ppm以下であり、0.5ppm以上1.2ppm以下が好ましく、0.5ppm以上1.0ppm以下がより好ましい。なお、上記活性が極端に高ければ、本発明のエチレン樹脂組成物に含まれるチタン残渣量は0.5ppm未満でも良い。
そのほかに、本発明のポリエチレン樹脂組成物は、JIS K6760に記載された定ひずみ環境応力亀裂試験方法により測定された耐環境応力亀裂性(以下、ESCRと記す。)が、20時間以上であることが好ましい。具体的な測定方法としては、試験液として、ローディア日華(株)製のイゲパルCO−630(登録商標)の10重量%水溶液を使用し、環境応力による亀裂が発生する確率が50%(以下F50と記載)となる時間を計測し、ESCRの値とした。単位は時間である。この値が20時間未満であると、ボトルの内圧によりボトルがESCR破壊する可能性が高くなる。
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、密度が高いことから、ボトルを成形した際に、高い剛性を有し、軸方向の圧縮により変形することが少ない。剛性を評価する一つの指標として、曲げ弾性率の測定がある。これは、JIS K7171に記載の方法に準拠して、160℃でプレス成形したプレス板から打ち抜いた試験片を試料に用いて測定することができる。本発明のポリエチレン樹脂組成物の曲げ弾性率の好ましい範囲は、1400〜2000MPaであり、より好ましくは1600〜1900MPaであり、さらに好ましくは1700〜1900MPaであり特に好ましくは1800〜1900MPaである。1400MPa未満では、薄肉成形されたボトルの圧縮で、変形して座屈する恐れがある。2000MPaを超えた場合には、剛性は高いもののESCRが不足するとともに重合体中にコモノマーが導入されなくなり耐衝撃強度が急激に低下する。
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、分子量分布がシャープであるため低分子量成分を少なく抑えることができるため従来のポリエチレン樹脂に比べ低分子量炭化水素に起因するポリ臭が少ない。また分子内の二重結合を少なくできるため、二重結合を持った低分子量成分の持つオレフィン臭や、二重結合は酸化を受けやすいため二重結合の酸化物であるアルデヒド類やカルボン酸類の不快臭を低減することができる。また二重結合の数や分子内分岐数、副反応の原因となる触媒残渣の量が少ないことから熱安定性にすぐれている。そのため熱安定剤の添加量を少なくできることから熱安定剤起因の臭いも低減できる。低分子量成分量はたとえば無極性成分および極性成分の揮発性有機化合物相対含有量としてヘッドスペースガスクロマトグラフィーで評価することができる。飽和炭化水素の各炭素数に相当する無極性成分量または極性成分の標準物質に相当する極性成分をピークエリアからそのピークエリアの合計値をそれぞれの成分における揮発性有機化合物相対含有量として測定、評価することができる。
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、無極性成分における揮発性有機化合物相対含有量はピークエリアが1,000,000未満であり、極性成分における揮発性有機化合物相対含有量が300,000未満である。無極性成分のものが800,000未満、極性成分のものが200,000未満が好ましく、無極性成分のものが600,000未満、極性成分のものが150,000未満がより好ましい。無極性成分が800,000以上であるといわゆるポリ臭がきつくなり、極性成分が200,000以上でカルボン酸やアルデヒド類に起因する不快臭がきつくなる。
本発明の樹脂組成物は溶媒への溶出成分も少なく、内溶液の風味に対する影響が少ない。溶出成分の尺度として、試料からのエタノールへの抽出成分のガスクロマトグラフィーによる定量を測定した。
エタノール抽出における抽出成分有機化合物含有量はピークエリアが100,000未満が好ましく、50,000未満が特に好ましい。含有量が100,000以上になると低分子量成分の内溶液への溶出が顕著になり内容物の風味を損なうことになる。
また臭気の元になる低分子量成分は前記高温GPCを用いても規定でき、分子量1000以下の成分の量で低分子量成分の多少を評価することができる。分子量1000以下の低分子量成分が1.0%以下が好ましく、0.9%以下がより好ましい。
本発明のポリエチレン樹脂組成物は特定の触媒を利用し、さらに分子量分布をコントロールすることによって結晶化速度が極めて速いことが特徴であり、ポリエチレンの結晶化は当該樹脂の融点(Tm)から一定温度だけ低い温度条件での結晶化速度により規定できる。ポリエチレンの融点は密度に相関しており密度が高いほど融点が高くなることから、融点と結晶化温度の相関式が導かれる。融点からのバイアス温度(融点との温度差)は適度な数値で定義できるが、融点から離れるほど(低温になるほど)結晶化速度が加速度的に増加するため、バイアス温度の設定においては差異を出しやすいバイアス温度を設定する必要がある。本発明では融点に対し11℃低い温度での結晶化開始時間を規定しており、結晶化開始時間の測定はDSC法によって行った。DSC法による融点(Tm)より11℃低い温度での結晶化開始時間が1.5分以下であり、1.2分以下が好ましい。Tmより11℃低い温度での結晶化開始時間が1.5分以下であることにより冷却時間の短縮が可能となり成形サイクルの短縮につなげることができる。
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、分子量分布の狭いエチレン単独重合体の低分子量成分(A)と分子量分布の狭いエチレン共重合体の高分子量成分(B)からなるため、耐衝撃性に優れる。耐衝撃性は、例えば、JIS K7111に記載されているシャルピー衝撃強さやJIS K7160に記載されている引張衝撃強さを求めることで評価することができる。衝撃強さは樹脂の密度に依存することが知られており、シャルピー衝撃強度は密度が増加するほど樹脂が硬くなるため増加するが引張衝撃強度は密度が増加するほど伸び易さが低下するため低下する。したがって衝撃強度を樹脂の広範な密度範囲で規定しようとすると相関式が必要となる。本発明の密度が963kg/m以上970kg/m以下の範囲では、好ましくは、以下のように規定できる。
シャルピー衝撃試験では3mmプレス板より作成したノッチ付きシャルピー試験片における、23℃でのシャルピー衝撃試験値(Ic)と密度(D)が以下の関係を満たし、
Ic>15−(965−D)
引張衝撃試験では0.9mmプレス板より作成した引張衝撃試験片による引張試験衝撃値(Tc)と密度(D)が以下の関係を満たす
Tc>120+(965−D)×12。
シャルピー衝撃強さ(Ic)が前式を満たす場合にはボトルを落とした際にボトルのピンチオフやエッジ部が破損することがない。他方引張衝撃強さ(Tc)が前式を満たす場合はボトルを落とした際にボトルの胴部が裂けて破壊することがない。
上記本発明のポリエチレン樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤や充填剤等を添加しても良い。使用される添加剤としては、フェノール系酸化防止剤が良いが末端ビニル量が少ないことから熱安定性に優れており、特に熱安定剤を加えなくとも使用することができる。
他方添加剤は臭気の原因になるので添加量は少ないほうが好ましい。
添加するフェノール系酸化防止剤の量としては、500ppm以下であり、好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは、100ppm以下であり、フレーバー性の点から全く添加しない場合が最も好ましい。
また、樹脂中の塩素成分の中和のために中和剤でもある滑剤を少量添加しても良い。添加する滑剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられ、添加量としては、400ppm以下、好ましくは250ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下である。400ppmの添加で成形機内での流動性が良くまた製品にしたときの製品すべり性が良くなる。また樹脂中の触媒残渣が少ないので滑剤の添加量は少なくてもよく50ppm以下であっても製品に影響がない。
本発明の組成物は結晶化速度が速いため結晶核剤は添加の必要はないが、さらに冷却時間を短くすることを目的に、結晶化速度を上げることのできる核剤を添加することもできる。酸化チタンなどの顔料を少量添加することで結晶化速度が上がることもある。
帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防曇剤、有機過酸化物などについては、できるだけ添加しないことが好ましい。充填剤としては、例えば、タルク、シリカ、カーボン、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、木粉などが挙げられる。必要に応じて、酸化チタンや有機顔料を使用するためにマスターバッチで添加することも可能であるが、臭気性を低下させる原因にもなるため、これらの添加剤や充填剤、酸化チタン、有機顔料などの添加は、出来る限り避けるべきである。
本発明を実施例及び比較例を用いて更に具体的に説明する。
本発明及び以下の実施例、比較例において、示す記号ならびに測定方法は以下の通りである。
(1)コードDのMFR(MFRD):
メルトインデックスを表し、JIS K7210により温度190℃、荷重2.16kgの条件下で測定した値で単位はg/10minである。
(2)コードGのMFR(MFRG):
メルトインデックスを表し、JIS K7210により温度190℃、荷重21.6kgの条件下で測定した値で単位はg/10minである。
(3)FRR(G/D):
上記のコードGのMFRとコードDのMFRとの比を表す。
(4)密度:
JIS K7112に準拠して測定した値で、単位はkg/mである。
(5)分子量分布(Mw/Mn):
高温ゲル・パーミエーション・クロマトグラフイー(GPC)を測定し、得られた分子量分布のチャートにおいて、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比から求めることができる。高温GPC測定は、Waters社製Alliance GPCV2000を用い、カラムには、昭和電工(株)製のAT−807S(1本)と東ソー(株)製GMHHR−H(S)HT(2本)を直列に接続し、移動相にオルトジクロロベンゼン(ODCB)、カラム温度140℃、流量1.0ml/分、試料濃度20mg/溶媒(ODCB)10ml、試料溶解温度140℃、試料溶解時間1時間の条件下で行った。単位は重量%である。
(6)耐環境応力亀裂性(ESCR):
定ひずみ環境応力亀裂試験であり、JIS K6760に記載の方法で実施した。試験液としては、ローディア日華(株)製のイゲパルCO−630(登録商標)の10重量%水溶液を使用し、環境応力による亀裂が発生する確率が50%(以下F50と記載)となる時間を計測し、ESCRの値とした。単位は時間である。
(7)末端ビニル基濃度測定
ビニル基濃度測定は、樹脂ペレットを東立電機(株)製冷却プレス機にて、圧力100kg/cmで5分冷却プレスを行うことによってプレスシートを作成し、赤外吸収スペクトル(IR)を日本分光(株)社製FT/IR−4200装置を用いて測定した。ビニル基濃度の定量は、トランスビニル基:964cm−1、末端ビニル基:908cm−1、ビニリデン基:888cm−1のピーク吸光度より下記式(1)〜(3)を用いて算出される値の合計値から求められる。
トランスビニル基{個/1000(C)}=(1.11×A)/L (1)
末端ビニル基{個/1000(C)}=(1.12×A)/L (2)
ビニリデン基{個/1000(C)}
=(1.36×A)/L−0.0069×(メチル基個数) (3)
ここで、Aは吸光度、Lはシート厚(mm)である。
(8)チタン残渣量:
試料をテフロン(登録商標)製分解容器に秤取し、高純度硝酸(関東化学製Ultrapure)を加えてマイクロウェーブ分解装置にて加圧分解した。これに超純水を加えて一定容とした。IPC−MS(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社X7 ICP−MS)にて内標準法で定量を行い、同時に実施した操作ブランク値を差し引いて試料中の含量を求めた。
(9)引張破壊時呼び歪み:
210℃で成形した射出成形片を試料に用い、JIS K7161に記載の方法で測定した。単位は%である。
(10)引張降伏応力:
上記(9)と同様にして測定した。単位はMPaである。
(11)曲げ弾性率:
JIS K7171に従って測定した。4mmのプレスシートから短冊試験片を打ち抜き、スパン間64mm、クロスヘッドスピード2mm/min.で測定した。
(12)シャルピー衝撃強度(Ic):
上記(9)で作成した射出成形片をJIS K7111に記載の方法で求めた。温度は23℃である。単位はkJ/mである。
(13)引張衝撃強度(Tc):
ASTM D1822に準拠し、厚さ1.1〜1.2mmのプレスシートからS型ダンベル試験片を切削し、23℃で測定した。単位はkJ/mである。
(14)ヘッドスペースガスクロマトグラフ法による揮発性有機化合物相対含有量測定:
ペレット中の無極性成分および極性成分の揮発性有機化合物含有量、並びにエタノール抽出成分の揮発性有機化合物含有量を、ヘッドスペースガスクロマトグラフ法(以下、HS−GCと表記する)により測定した。試料5mgを内容積20mlのガラス製バイアル瓶に入れ、60分間100℃に加熱し、気相をガスクロマトグラフィー(GC)で測定した。ヘッドスペース(以下、HSと表記する)サンプラーにパーキンエルマー社製のHS−40、ガスクロマトグラフに島津製作所のGC−2014を使用し、HSに入れた5gのペレットサンプルを100℃、サイクルタイムを60分、ニードル温度を180℃、無極性カラムとしてメチルシリコンの膜厚が0.5μmで内径が0.32mmである25mのキャピラリーカラム、極性カラムとしてポリエチレングリコールの膜厚が0.5μmで内径が0.32mmである50mのキャピラリーカラムを使用した。無極性カラム温度は70℃で15分間保持した後、10℃/分のスピードで200℃まで昇温し、5分間保温する。極性カラムは45℃で10分間保持し、10℃/分のスピードで160℃まで昇温して1分間保温した後、5℃/分のスピードで220℃まで昇温し、6分間保温する。無極性カラムのキャリアーガスに30ミリリットル/分の流量、100kPaに調整した窒素ガス、極性カラムのキャリアーガスに30ミリリットル/分の流量、80kPaに調整したヘリウムガス、検出器にFIDを使用して行った。
各成分の定量については、無極性成分は予め、ノルマルヘキサン、ノルマルオクタン、ノルマルノナン、ノルマルデカン、ノルマルウンデカン、ノルマルテトラデカンなどを標準物質とした検量線によって、各炭素数に相当する無極性成分量をピークエリアから算出し、極性成分は予め酢酸、プロピオン酸、酪酸、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、酪酸アルデヒドなどを標準物質とした検量線によって、各炭素数に相当する極性成分量をピークエリアから算出した。ピークエリアは、検出されたピークの高さ方向の電圧(μV)と横方向の検出時間(秒)の積によって求められた。また、ピークエリアの合計値をそれぞれの成分における揮発性有機化合物相対含有量とした。
無極性成分における揮発性有機化合物相対含有量のピークエリアが1,000,000未満のものを少ないと評価し、一方で、揮発性有機化合物相対含有量が3,000,000以上であれば多いと評価した。極性成分における揮発性有機化合物相対含有量が300,000未満のものを少ないと評価し、一方で、揮発性有機化合物相対含有量が500,000以上であれば多いと評価した。
溶媒への溶出成分の尺度として、試料からのエタノールへの抽出成分を測定した。試料5gとエタノール5mlとを20mlガラス製サンプル管にOV−17(1.1m)を使用した。カラム温度は140℃2分保持、昇温速度10℃/min.で250℃まで昇温し、250℃で7分間保持した。キャリアガスに窒素を用いキャリアガスの流量は50ml/分であった。検出器はFIDを用いた。
さらに、エタノール抽出における抽出成分有機化合物含有量のピークエリアが50,000未満のものを少ないと評価し、含有量が100,000以上であれば多いと評価した。
(15)示差走査熱量計(DSC)法による融点(Tm):
Perkin Elmer社製Pyris1DSCを用いて、窒素雰囲気下、25℃〜180℃の温度範囲で、昇温速度10℃/min.、試料重量5mgの条件で測定した。
(16)示差走査熱量計(DSC)法による結晶化開始時間(分):
Perkin Elmer社製Pyris1DSCを用いて、窒素雰囲気下、試料重量5mgで測定した。50℃で1分間保持した後、昇温速度200℃/min.で180℃まで昇温して5分間180℃で保ち、降温速度80℃/min.で上記融点(Tm)より11℃低い温度まで冷却し、その温度で保持したときの結晶化時間(ピーク)を測定した。
(固体触媒成分[A]の調製)
(1)クロロシラン化合物との反応によるマグネシウム含有固体の合成
充分に窒素置換された15リットルの反応器に、トリクロロシラン(HSiCl)(成分(ii))を2モル/リットルのn−ヘプタン溶液として2740ミリリットル仕込み、攪拌しながら65℃に保ち、組成式AlMg(C(i−C10.8(Oi−C1.2で示される有機マグネシウム成分(成分(i))のn−ヘプタン溶液7リットル(マグネシウム換算で5モル)を1時間かけて加え、更に65℃にて1時間攪拌下反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、n−ヘキサン7リットルで4回洗浄を行い、固体物質スラリーを得た。この固体(成分(A−1))を分離・乾燥して分析した結果、固体1グラム当たり、Mg8.62ミリモル、Cl17.1ミリモル、i−ブトキシ基(Oi−C)0.84ミリモルを含有していた。
(2)固体触媒の調製
上記固体500gを含有するスラリーを、iso−ブチルアルコール(成分(A−2))1モル/リットルのn−ヘキサン溶液2160ミリリットルとともに、攪拌下50℃で1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで1回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド(成分(A−3))1モル/リットルのn−ヘキサン溶液970ミリリットルを攪拌下加えて1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのn−ヘキサンで2回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1モル/リットルのn−ヘキサン溶液270ミリリットルおよび四塩化チタン(成分(A−4))1モル/リットルのn−ヘキサン溶液270ミリリットルを加えて、2時間反応した。反応終了後上澄みを除去し、内温を50℃に保った状態で、7リットルのn−ヘキサンで4回洗浄して、固体触媒成分(成分[A])をヘキサンスラリー溶液として得た。この固体触媒スラリー溶液上澄み液中の塩素イオン濃度は2.5ミリモル/リットル、アルミニウムイオン濃度は4.5ミリモル/リットルであった。
〔実施例1〕
上記で得られた固体触媒成分及びトリエチルアルミニウム(成分[B])を用いた連続スラリー重合法で、直列に接続した2つの重合槽による二段重合を行った。用いたコモノマーは1−ブテンである。一段目の重合槽には、モノマーとしてエチレンのみを供給し、温度85℃、圧力8Kg/cmG、水素濃度60%にて重合を行い、二段目にはエチレンと1−ブテンを供給し83℃、3.4Kg/cmG、水素濃度6.8%、1−ブテン濃度0.05%にて重合した。一段目の重合槽で得られるエチレン単独重合体からなる低分子量成分(A)の生産量の割合を52wt%、二段目の重合槽で得られる共重合体からなる高分子量成分(B)の生産量の割合を48wt%に設定した。得られたパウダー状態の樹脂に、添加剤としてステアリン酸カルシウムを350ppm加えて、ヘンシェルミキサーにてブレンドした。これを二軸押出機(日本製鋼社製;TEX44HCT−49PW−7V)を用い、シリンダー温度200℃、押出量35kg/時間の条件で混練しながら押出し、組成物ペレットを得た。
前記した測定法に基づいて各物性値及び評価データを求めた。その結果を表1に示す。実施例1で得られた樹脂組成物は、剛性が高いにも関わらず、シャルピー衝撃性に非常に優れ、成型サイクルに関わる高速成型性の指標である結晶化開始時間が非常に短くなっている。
参考例2〕
二段目の重合槽の圧力を3.2Kg/cmG、水素濃度5.6%、1−ブテン濃度0.9%とした以外は実施例1と同様にして組成物ペレットを得た。参考例2の樹脂は、引張衝撃試験でさらに高強度であり、耐ストレスクラック性(ESCR)に優れていた。結果を表1に示した。
〔参考例3〕
二段目の重合槽の圧力を2.9Kg/cmGとした以外は実施例1と同様にして組成物ペレットを得た。参考例3の樹脂は、引張衝撃試験でさらに高強度であり、耐ストレスクラック性(ESCR)に非常に優れていた。結果を表1に示した。
〔実施例4および参考例5〕
固体触媒の調製において、iso−ブチルアルコールの代わりにn−プロパノールを用いた以外は実施例4は実施例1に、参考例5は実施例2と同様に重合を行い、組成物ペレットを得た。組成物の物性を表1に示す。剛性、衝撃性に優れ、高速成形性も良好な結果であった。
〔実施例6〕
一段目の重合槽で得られるエチレン単独重合体からなる低分子量成分(A)の生産量の割合を55wt%、二段目の重合槽で得られる共重合体からなる高分子量成分(B)の生産量の割合を45wt%に設定した以外は、実施例1と同様にして重合した。剛性、衝撃性に優れ、高速成形性も良好であった。
〔実施例7〕
一段目の重合槽への水素供給量を上昇させ、重合槽内の水素濃度を63%まで上げて、低分子量成分(A)のMFRDを300g/minとした以外は、実施例1と同様に行った。組成物の物性を表1に示す。剛性、衝撃性に優れ、高速成形性も良好であった。
〔比較例1〕
一段目の低分子量成分のMFRDを500g/10minとした以外は実施例1と同様にしてペレット組成物を得た。高剛性で結晶化開始時間は短いもののシャルピー衝撃強度は低下した。結果を表1に示す。
〔比較例2〕
〔固体触媒の調製〕
充分に窒素置換された15リットルの反応器に、テトラクロロチタン(TiCl)を2モル/リットルのn−ヘプタン溶液として2740ミリリットル仕込み、攪拌しながら65℃に保ち、組成式AlMg(C(i−Cで示される有機マグネシウム成分のn−ヘプタン溶液7リットルを1時間かけて加え、更に65℃にて1時間攪拌下反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、n−ヘキサン7リットルで4回洗浄を行い、固体物質スラリーを得た。この固体を分離・乾燥した。
〔重合〕
上記で得られた固体触媒を用いた連続スラリー重合法で、直列に接続した2つの重合槽による二段重合を行った。用いたコモノマーは1−ブテンである。一段目の重合槽には、モノマーとしてエチレンのみを供給し、温度85℃、圧力6.5Kg/cmG、水素濃度62%にて重合を行い、二段目にはエチレンと1−ブテンを供給し80℃、2.8Kg/cmG、水素濃度6.6%、1−ブテン濃度0.64%にて重合した。一段目の重合槽で得られるエチレン単独重合体からなる低分子量成分(A)の生産量の割合を55wt%、二段目の重合槽で得られる共重合体からなる高分子量成分(B)の生産量の割合を45wt%に設定した。得られたパウダー状態の樹脂に、添加剤としてステアリン酸カルシウムを350ppm加えて、ヘンシェルミキサーにてブレンドした。これを二軸押出機(日本製鋼社製;TEX44HCT−49PW−7V)を用い、シリンダー温度200℃、押出量35kg/時間の条件で混練しながら押出し、組成物ペレットを得た。剛性は高いものの、シャルピー衝撃、引張衝撃とも低く、結晶化開始時間も遅く揮発性有機化合物の量も多かった。
〔比較例3〕
一段目の水素濃度を56%として低分子量成分(A)のMFRDを110g/minとした以外は比較例2と同様にして重合を行った。剛性は高く結晶化開始時間は早いものの、シャルピー衝撃、引張衝撃とも低く揮発性有機化合物の量が多かった。
〔比較例4〕
〔固体触媒成分の調製〕
三酸化クロム10gを蒸留水2,000mlに溶解し、この溶液中にシリカ500gを浸漬し、室温にて1時間攪拌した。このスラリーを加熱して水を留去し減圧乾燥した。この固体を乾燥空気流通下、700度で5時間焼成して固体成分を得た。
〔有機アルミニウム成分の合成〕
トリエチルアルミニウム100mmol、メチルヒドロポリシロキサン50mmol、n−ヘプタン150mlを窒素雰囲気下ガラス製耐圧容器に秤取し、攪拌下100℃において24時間反応させてAl(C2.5(OSiH・CH・C0.5ヘプタン溶液を合成した。次にこの溶液100mmolを窒素雰囲気下200mlフラスコに秤取し、滴下ロートによりエタノール50mmolとn−ヘプタン50mlの混合溶液を氷冷攪拌下に滴下し、滴下後室温にて1時間反応させてAl(O2.0(OC3.5(OSi・H・CH・C0.5ヘプタン溶液を合成した。
〔ポリエチレンの重合〕
反応容器に200lの重合器を使用し、単独重合によってポリエチレンを製造した。重合温度は83℃、重合圧力は11kg/cmGの条件で重合し、得られたパウダーを実施例1と同様の押し出しによりペレット組成物を得た。
本発明のポリエチレン組成物は、ブロー成形、押出成形、射出成形に有用であり、特にブローボトルの分野で好適に利用できる。

Claims (4)

  1. 下記(a)〜()からなる要件を満たすことを特徴とするポリエチレン樹脂組成物:
    (a)JIS K7210に従い、温度190℃及び2.16kg荷重の条件下で測定したコードDのMFRが100〜350g/10分の範囲にあるエチレン単独重合体からなる低分子量成分(A)の割合が60〜40wt%と、エチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体からなる高分子量成分(B)の割合が40〜60wt%を含み;
    (b)コードDのMFRが0.1〜2.0g/10分;
    (c)密度が963〜970kg/m
    (d)IR法により測定した末端ビニル量が1000炭素原子あたり0.2個以下;
    (e)樹脂中のチタン残渣量が0.5ppm以上1.5ppm以下;及び
    (f)融点(Tm)より11℃低い温度での結晶化開始時間が1.5分以下
    (g)高温ゲル・パーミエーション・クロマトグラフイー(GPC)により得られた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比であるMw/Mnの値が、10〜20。
  2. 3mmプレス板より作成したノッチ付きシャルピー試験片における、23℃でのシャルピー衝撃試験値(Ic)と密度(D)が以下の関係を満たし、
    Ic>15−(965−D)
    0.9mmプレス板より作成した引張衝撃試験片による引張試験衝撃値(Tc)と密度(D)が以下の関係を満たす
    Tc>120+(965−D)×12
    ことを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物。
  3. 固体触媒成分[A]及び有機アルミニウム化合物[B]を含む重合触媒の存在下に、一段目の重合槽でエチレンを重合することにより前記のエチレン単独重合体を製造し、次に、二段目の重合槽でエチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとを共重合することにより前記のエチレンと炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体を製造するという二段重合法により、請求項1又は2に記載のポリエチレン樹脂組成物を、製造する方法であって、
    前記固体触媒成分[A]が、以下のようにして得られる固体触媒成分であることを特徴とする、前記の製造方法:
    (A−1)(i)一般式(Al)α(Mg)β(R(R(OR〔式中、R、R及びRは炭素数2〜20の炭化水素基であり、α,β,p,q及びrは次の関係を満たす数であり、
    0≦α,0<β,0≦p,0≦q,0≦r,p+q>0,0≦r/(α+β)≦2,3α+2β=p+q+r〕
    で示される炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム成分1モルと、
    (ii)一般式HSiCl 4−(a+b)(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、aとbとは次の関係を満たす数であり、0<a,0<b,a+b≦4)で示されるSi−H結合を有するクロロシラン化合物0.01〜100モル
    を反応させて得られる固体と、
    (A−2)アルコールを、前記固体(A−1)中に含まれるC−Mg結合1モルに対して0.05〜20モル反応させて得られる固体を、さらに
    (A−3)一般式AlR 3−s
    (式中Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、QはOR,OSiR,NR1011,SR12およびハロゲンから選ばれた基を表し、R,R,R,R,R10,R11,R12は水素原子または炭化水素基であり、0<s<3)で示される有機金属化合物を、反応させて得られる固体に、
    (A−4)チタン化合物を、前記(A−3)成分の存在下に反応させて得られる、
    固体触媒成分。
  4. 請求項1又は2に記載の樹脂組成物を成型してなるブローボトル。
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