JP5688327B2 - 薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物に関し、より詳細には、高速成形性に優れ、成形ハイサイクル化が可能であり、かつ剛性、耐衝撃性、スタック性、滑り性、低臭気性、食品安全性等に優れた、清涼飲料、乳飲料、プリン、ゼリー等の食品を収容するための薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物に関する。
従来、射出成形で成形される薄肉のカップ型容器は、その形状から材料には高い流動性が求められ、一般的にはメルトフローレート(MFR)が40g/10分程度の単段重合により製造された高密度ポリエチレンが使用されている。
近年、カップ型容器は更なる軽量化に向け、これまで以上の容器薄肉化が要求されている。上記MFR40g/10分程度の高密度ポリエチレン(HDPE)を用い容器の薄肉化を行う試みがなされているが、薄肉カップ用金型は従来金型に比べ材料が流れにくい構造であるため、材料の流動性が不足しショートショットを起こし、また射出圧力も上昇し、成形が困難となっている。
一般に、成形温度を上げて成形を行うとショートショットは起こりにくくなるが、冷却が追いつかず、成形サイクルが下がるという問題や、成形温度と取り出し温度との温度差が大きくなり製品収縮が大きく、不均一になり製品が変形してしまうという問題がある。また、ショートショット改良のため、MFRを60g/10分程度に上げた場合には、ショートショットによる不良品や射出圧力の上昇といった問題は、解決するが、実用物性が著しく低下し、実用上、使用することができない。
また、2種類のポリエチレンを順次重合もしくはブレンドすることにより得られるポリエチレン樹脂組成物は、耐ストレスクラック性、常温での耐衝撃性等に優れており、コンテナー、ボトル、フィルム、キャップ等に使用されているが、現在ニーズが高まっている薄肉カップ型金型での成形に適用出来るだけの流動性が十分でなく、製品剛性も十分満足するものは得られていない。
これまで、2種類のポリエチレンにより得られる容器用のポリエチレン樹脂組成物について種々の提案がなされているが、これらは、いずれも物性、特性の面で薄肉容器用として十分とはいえず、適合性に欠けるものであった。
例えば、特許文献1には、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートMFRが5〜2000g/10分、密度が0.965〜0.970g/cmのポリエチレンとMFRが0.01〜0.2g/10分のポリエチレとで構成され、荷重10.0kgにおけるメルトフローレートMFR10との比(MFR10/MFR)が15以下、密度が0.890〜0.950g/cmのエチレン・α−オレフィン共重合体とからなり、特定の物性を有するポリエチレン樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の組成物を射出成形により成形される薄肉のカップ型容器に適用すると、耐ストレスクラック性は良いものの、成形性と剛性のバランスが悪く、今以上に軽量化された薄肉カップ容器を得るためには不十分である。
また、特許文献2には、荷重2.16kgにおけるMFRが0.8〜5g/10分、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が180g/10分以上、かつ、HLMFR/MFRが80以上であるポリエチレン樹脂組成物が開示されている。
さらに、特許文献3には、荷重2.16kgにおけるMFRが0.5〜5g/10分、荷重21.6kgにおけるHLMFRが180g/10分以上、HLMFR/MFRが80以上、かつ高温GPC溶出分における短鎖分岐数BHとBL比が特定のポリエチレン樹脂組成物が開示され、耐ストレスクラック性を向上させることが可能となったが、やはり剛性、成形性が十分ではなく、流動性不足により現在求められている様な薄肉カップ型金型での成形に適用できず、成形温度を上げた場合、製品収縮が大きく、不均一になり製品が変形するという問題がある。
一方、特許文献4には、(a)温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が15〜50g/10分、(b)密度が0.955g/cm以上、(c)せん断速度比が1.6〜2.1、(d)曲げ弾性率が800MPa以上、(e)ガスクロマトグラフィー(GC)測定による炭化水素揮発分が80ppm以下、(f)190℃、射出圧75MPa、厚み2mmでのスパイラルフローが50cm以上、である薄肉射出成形容器用ポリエチレン及びそれから得られる容器が開示されている。
この材料によれば、特定のMFR、せん断速度比、密度を調整することにより成形性、剛性、23℃での耐衝撃性のバランスを改良することが可能となっているが、実施例に示されているポリエチレンの組成では薄肉カップ容器が実際使用される低温領域(5℃程度)での耐衝撃性の改良には不十分である。
ちなみに、非特許文献1に開示されているように、高分子量成分の密度をある領域以上に下げると、低温での耐衝撃性は著しく低下し製品破損の原因となる。また、せん断速度比が1.6〜2.1では物性は良好であり、せん断速度比が2.1を超える場合、物性は著しく低下するとされているが、せん断速度比が良いとされる領域であっても、せん断速度比と物性との関係が十分説明されておらず、かつ、せん断速度比の制御方法も不明である。
一方、高速性形成に関して、せん断速度比1.6〜2.1の領域でせん断速度比を大きくすることにより、高速性形成を改良できるとされているが、せん断速度比を大きくすると材料の分子配向が顕著になり流動性は上がるものの、実用上の物性が低下する恐れがある(特に耐衝撃性が低下する)ため、高速成形の改良技術としては不十分であり、かつ、この場合もその制御方法が十分説明されていない。
こうした状況下に、高速成形性に優れ、成形ハイサイクル化が可能であり、かつ剛性、耐衝撃性、スタック性、滑り性、低臭気性、食品安全性等に優れた薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物の更なる改良が求められている。
特開昭58−103542号公報 特開2000−248125号公報 特開2002−60559号公報 特開2006−160987号公報
E.Q.Clutton,L.J.Rose&G.Capaccio,PALASTICS X,349(1998)
本発明の課題は、上記した従来技術の問題点に鑑み、剛性と低温での耐衝撃性とのバランスに優れ、かつ、薄肉形状金型内で高流動性を有しながら、材料の結晶化速度を制御することで、成形サイクルを短くすることが出来るという特長的な成形性を有したポリエチレン樹脂組成物を提供することにある。特に、射出成形で成形される薄肉のカップ型容器に好適な材料であり、カップ型容器の更なる薄肉カップ型容器も射出成形が可能で、剛性が高く、低温での耐衝撃性に優れた容器を提供でき、特に清涼飲料、乳飲料等の液体や乳製品等を収容する容器用に好適な材料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、複数のエチレン系重合体を組み合わせてなるポリエチレン樹脂組成物において、メタロセン触媒を用いて重合された特定の物性を有するエチレン系重合体を特定の割合で配合すると、剛性と低温での耐衝撃性とのバランスに優れ、かつ、成形サイクルをおとさず薄肉形状のカップ型容器を成形できるという優れた成形性、全ての性能を有する薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物が得られることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、(A)チーグラー触媒を用いて製造されたエチレン単独重合体又はエチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が30〜80g/10分であり、密度が0.940〜0.955g/cmであるエチレン系重合体(成分(A))25〜40重量%、及び(B)エチレン単独重合体又はエチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)が150g/10分以上500g/10分以下であり、密度が0.955g/cm以上0.975g/cm以下であるエチレン系重合体(成分(B))60〜75重量%からなるポリエチレン(I)96〜60重量%と、エチレン系重合体(II)4〜40重量%とを含有し、かつ、下記の特性(i)〜(iii)を満足する薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物であって、前記エチレン系重合体(II)は、Ti、Zr又はHfを含有するメタロセン触媒を用いて重合され、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.01〜10g/10分であり、密度が0.935〜0.960g/cmであり、温度190℃、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)とGPCにて測定される重量平均分子量(Mw)とが下記の式(1)の関係を満たすことを特徴とする薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物が提供される。
式(1):log[HLMFR]≦−3.85log[Mw/10,000]+6.0
特性(i):MFRが15〜50g/10分である。
特性(ii):フローテスターにて測定できるN値が1.5〜2.0である。
特性(iii):密度が0.955〜0.970g/cmである。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、さらに、下記の特性(iv)〜(viii)を満足することを特徴とする薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物が提供される。
特性(iv):曲げ弾性率が850MPa以上である。
特性(v):引張降伏強さが25MPa以上である。
特性(vi):示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間が80秒以下である。
特性(vii):炭化水素揮発分が80ppm以下である。
特性(viii):静摩擦係数が0.30以下である。
また、本発明の第の発明によれば、第1又は2の発明において、前記エチレン系重合体(II)は、シクロペンタジエニル環及び複素環式芳香族基を有するメタロセン触媒を用いて重合されることを特徴とする薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1〜のいずれかの発明において、前記エチレン系重合体(II)は、シクロペンタジエニル環及びフルオレニル環を有するメタロセン触媒を用いて重合されることを特徴とする薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1〜のいずれかの発明において、前記ポリエチレン(I)は、多段重合により製造されることを特徴とする薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物が提供される。
本発明の薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物を用いることにより、薄肉で剛性と低温での耐衝撃性とのバランスに優れた容器が成形でき、かつ、成形サイクルを下げずに薄肉形状のカップ型容器を成形できるという優れた成形性、及び容器としての優れた性能を有する薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物として用いることができる。
実施例または比較例において[HLMFR]と[Mw/10,000]ととが式(1)の関係を満たすか否かを示したグラフである。
本発明の薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物は、ポリエチレン(I)に、メタロセン触媒を用いて重合された特定性状のエチレン系重合体(II)を特定量配合してなり、かつ特定の物性の要件を満足することを特徴とするものである。
以下、本発明を、項目毎に、詳細に説明する。
1.ポリエチレン(I)
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、ポリエチレン(I)96〜60重量%、及びエチレン系重合体(II)4〜40重量%を含有してなる。
本発明のポリエチレン樹脂組成物に含有されるポリエチレン(I)は、エチレン単独重合体及び/又はエチレン−α−オレフィン共重合体であり、好ましくは、チーグラー触媒又はメタロセン触媒で重合されたポリエチレンである。
さらに、ポリエチレン(I)は、好ましくは、MFRが20〜60g/10分であり、更に好ましくは25〜55g/10分、更に好適には30〜50g/10分であり、密度が0.955〜0.970g/cm、更に好ましくは0.956〜0.969g/cm、更に好適には0.957〜0.968g/cmであることが望ましい。
また、本発明のポリエチレン(I)は、好ましくは、エチレン単独重合又はエチレンとα−オレフィンを共重合させて、温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が30〜80g/10分であり、密度が0.940〜0.955g/cmであるエチレン系重合体(成分(A))25〜40重量%、及びエチレン単独重合又はエチレンとα−オレフィンを共重合させて、MFRが150〜500g/10分であり、密度が0.955〜0.975g/cmであるエチレン系重合体(成分(B))60〜75重量%からなるものが望ましい。
成分(A)であるエチレン系重合体は、好ましくは、HLMFRが30〜80g/10分であり、更に好ましくは40〜70g/10分、更に好適には50〜70g/10分である。HLMFRが30g/10分未満では、結晶化時間が短くなり、エチレン系重合体(II)を配合しても、金型内でゲートシールを起こし易くなり十分な流動長を得ることができない。また、HLMFRが80g/10分を超えると、常温・低温に関わらず耐衝撃性が著しく低下してしまう。
ここで、HLMFRは、JIS K6922−2に準拠して測定される値である。HLMFRは、エチレン重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、所望のものを得ることができる。即ち、エチレンとα−オレフィンとの重合温度を上げることにより、分子量を下げた結果として、HLMFRを大きくすることができ、重合温度を下げることにより、分子量を上げた結果として、HLMFRを小さくすることができる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応において、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を増加させることにより、分子量を下げた結果として、HLMFRを大きくすることができ、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を減少させることにより、分子量を上げた結果として、HLMFRを小さくすることができる。
成分(A)であるエチレン系重合体は、好ましくは、密度が0.940〜0.955g/cmであり、更に好ましくは0.940〜0.950g/cm、更に好適には0.945〜0.950g/cmである。密度が0.940g/cm未満では、低温での耐衝撃性が低下する。また、密度が0.955g/cmを超えると、耐衝撃性等の容器実用性能が確保できない。
ここで、密度は、JIS K6922−1、2:1997に準拠して測定される値である。密度は、エチレンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることにより、所望のものを得ることができる。
成分(B)であるエチレン系重合体は、好ましくは、MFRが150〜500g/10分であり、更に好ましくは200〜400g/10分、更に好適には200〜300g/10分である。MFRが150g/10分未満では、流動性が低下し、十分な流動長を得ることができない。また、MFRが500g/10分を超えると高分子量成分であるエチレン系重合体(成分(A))との分子量差が大きくなり相溶性が低下し、耐衝撃性が低下し、実用性能を確保できない。
ここで、MFRは、JIS K6922−2に準拠して測定する値である。MFRは、エチレン重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、所望のものを得ることができる。即ち、エチレンとα−オレフィンとの重合温度を上げることにより、分子量を下げた結果として、MFRを大きくすることができ、重合温度を下げることにより、分子量を上げた結果として、MFRを小さくすることができる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応において、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を増加させることにより、分子量を下げた結果として、MFRを大きくすることができ、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を減少させることにより、分子量を上げた結果として、MFRを小さくすることができる。
成分(B)であるエチレン系重合体は、好ましくは、密度が0.955〜0.975g/cmであり、更に好ましくは0.960〜0.970g/cm、更に好適には0.965〜0.970g/cmである。密度が0.955g/cm未満では剛性が低下し、密度が0.975g/cmを超えると、低温での耐衝撃性が低下する。
ここで、密度は、JIS K6922−1、2:1997に準拠して測定される値である。密度は、エチレンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることにより、所望のものを得ることができる。
本発明のポリエチレン(I)において、成分(A)であるエチレン系重合体と成分(B)であるエチレン系重合体の組成割合は、好ましくは、成分(A)が25〜40重量部、更に好ましくは25〜35重量部、更に好適には28〜30重量部であり、成分(B)が60〜75重量部、更に好ましくは65〜75重量部、更に好適には70〜72重量部である。成分(A)が25重量部未満では(すなわち、成分(B)が75重量部を超えると)、常温・低温共に耐衝撃性が低下し、また、成分(A)が40重量部を超えると(すなわち、成分(B)が60重量部未満では)、流動性が低下し、成形性が悪化する。
本発明のポリエチレン(I)において、成分(A)と成分(B)のポリエチレンを別個にそれぞれ重合し、それらをブレンドすることにより得ることもできる。好ましくは、操作の容易さや組成の均質さ等の理由から直列に接続した複数の重合反応器、例えば、2基の重合反応器で順次連続的に重合して得られるポリエチレンが挙げられる。
重合触媒は、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒等の各種触媒が用いられるが、好ましくはチーグラー系触媒が用いられる。好ましい触媒の例としては、Ti及び/又はVの化合物と周期表第1族〜第3族元素の有機金属化合物からなる固体チーグラー触媒である。
固体チーグラー触媒として、チタン(Ti)及び/又はバナジウム(V)並びにマグネシウム(Mg)を含有する固体触媒が挙げられ、これらの成分と共に用いることのできる有機金属化合物として、有機アルミニウム化合物、中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましいものとして挙げられる。重合反応中における有機アルミニウム化合物の使用量は、特に制限されないが、用いる場合には、通常遷移金属化合物1モルに対して、0.05〜1000モルの範囲が好ましい。
チーグラー触媒の例として、例えば、公知刊行物である特開昭63−202602号公報の実施例1等に記載の「触媒」を使用し、重合方法として、公知刊行物である特開2004−123995号公報の実施例1等に記載の「原料の配合比や条件」を参酌することにより、第1段目で高分子量、低密度のポリエチレンを、次に、第2段目で低分子量、高密度のポリエチレンを製造することができる。
成分(A)及び成分(B)のエチレン系重合体は、エチレンの単独重合、又はエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等との共重合により得られる。また、改質を目的とする場合のジエンとの共重合も可能である。このとき使用されるジエン化合物の例としては、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。
なお、重合の際のコモノマー含有率は、任意に選択することができるが、例えば、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合の場合には、エチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は、0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%である。
成分(A)及び成分(B)のエチレン系重合体は、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法などの製造プロセスにより製造することができ、好ましくはスラリー重合法が望ましい。エチレン系重合体の重合条件のうち、重合温度としては、0〜300℃の範囲から選択することができる。スラリー重合においては、生成ポリマーの融点より低い温度で重合を行う。重合圧力は、大気圧〜約10MPaの範囲から選択することができる。実質的に酸素、水等を断った状態で、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下でエチレン及びα−オレフィンのスラリー重合を行うことにより製造することができる。
スラリー重合において重合器に供給される水素は、連鎖移動剤として消費され、生成するエチレン系重合体の平均分子量を決定するほか、一部は溶媒に溶解して重合器から排出される。溶媒中への水素の溶解度は小さく、重合器内に大量の気相部が存在しない限り、触媒の重合活性点付近の水素濃度は低い。そのため、水素供給量を変化させれば、触媒の重合活性点における水素濃度が速やかに変化し、生成するエチレン系重合体の分子量は、短時間の間に水素供給量に追随して変化する。従って、短い周期で水素供給量を変化させれば、より均質な製品を製造することができる。このような理由から、重合法としてスラリー重合法を採用することが好ましい。また、水素供給量の変化の態様は、連続的に変化させるよりも不連続的に変化させる方が、分子量分布を広げる効果が得られるので好ましい。
本発明に係るエチレン系重合体においては、水素供給量を変化させることが重要であるが、その他の重合条件、例えば重合温度、触媒供給量、エチレンなどのオレフィンの供給量、1−ブテンなどのコモノマーの供給量、溶媒の供給量等を、適宜に水素の変化と同時に又は別個に変化させることも、重要である。
エチレン系重合体(成分(A))とエチレン系重合体(成分(B))とからなるエチレン系重合体は、所定のエチレン系重合体(成分(A))及びエチレン系重合体(成分(B))を別々に重合した後に、混合したものでもよい。
更に、エチレン系重合体(成分(A))は、複数の成分により構成することが可能である。該エチレン系重合体(成分(A))は、1種類の触媒を用いて多段重合反応器にて順次連続的に重合された重合体でもよく、複数種類の触媒を用いて単段又は多段重合反応器にて製造された重合体でもよいし、1種類又は複数種類の触媒を用いて重合された重合体を混合したものでもよい。
また、エチレン系重合体(成分(B))は、複数の成分により構成することが可能である。該エチレン系重合体(成分(B))は、1種類の触媒を用いて多段重合反応器にて順次連続的に重合された重合体でもよく、複数種類の触媒を用いて単段又は多段重合反応器にて製造された重合体でもよいし、1種類又は複数種類の触媒を用いて重合された重合体を混合したものでもよい。
直列に接続した複数の反応器で順次連続して重合するいわゆる多段重合方法は、本請求範囲を満たす限り、始めの重合域(第1段目の反応器)において高分子量成分を製造する製造条件を採用して重合し、得られた重合体を次の反応域(第2段目の反応器)に移送し、第2段目の反応器において低分子量成分を製造する順序でも、逆に、始めの重合域(第1段目の反応器)において低分子量成分を製造する製造条件を採用して重合し、得られた重合体を次の反応域(第2段目の反応器)に移送し、第2段目の反応器において高分子量成分を製造する順序のどちらでも良い。
具体的な好ましい重合方法は、以下の方法である。即ち、チタン系遷移金属化合物及び有機アルミニウム化合物を含むチーグラー触媒及び二器の反応器を使用し、第1段目の反応器にエチレン及びα−オレフィンを導入し、低密度の高分子量成分の重合体を製造し、第1段目の反応器から抜き出された重合体を第2段目の反応器に移送し、第2段目の反応器にエチレン及び水素を導入し、高密度の低分子量成分の重合体を製造する方法である。
なお、多段重合の場合、第2段目以降の重合域で生成するエチレン系重合体の量とその性状については、各段における重合体生成量(未反応ガス分析等により把握できる)を求め、各段の後でそれぞれ抜出した重合体の物性を測定し、加成性に基づいて各段で生成した重合体の物性を求めることができる。
2.エチレン系重合体(II)
本発明において、ポリエチレン樹脂組成物は、ポリエチレン(I)96〜60重量%に対して、Ti、Zr、又はHfを含有するメタロセン系触媒を用いて重合されたエチレン系重合体(II)を4〜40重量%含有させたものである。
エチレン系重合体(II)は、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.01〜10g/10分、密度が0.921〜0.960g/cmであり、温度190℃、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)とGPCにて測定される重量平均分子量(Mw)が下記の式(1)の関係式を満足する。
式(1):log[HLMFR]≦−3.85log[Mw/10,000]+6.0
エチレン系重合体(II)のMFRは、0.01〜10g/10分、好ましくは0.1〜5g/10分、更に好ましくは0.1〜2g/10分の範囲である。このMFRが0.01g/10分未満であれば、最終の樹脂組成物において、MFRが規定の範囲内を達成できず、流動性が低下する。一方、このMFRが10g/10分を超えると、最終樹脂組成物において、耐衝撃性が達成できず、かつ結晶化速度が低下し、DSCで測定できる121.5℃での等温結晶化時間が80秒を超え、その結果、成形サイクルが低下する。
ここで、MFRは、JIS K6922−2に準拠して測定する値である。MFRは、エチレン重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、既に記載された方法により所望のものを得ることができる。
エチレン系重合体(II)の密度は、0.921〜0.960g/cmであり、好ましくは0.935〜0.960g/cm、更に好ましくは0.947〜0.960g/cmである。密度が0.921g/cm未満であれば、最終樹脂組成物における密度範囲を達成できず、曲げ弾性率が低下、剛性が不足する恐れがある。一方、密度が0.960g/cmを超えた場合には、最終樹脂組成物において耐衝撃性等の実用性能が低下する。
ここで、密度は、JIS K6922−1、2:1997に準拠して測定される値である。密度は、エチレンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることにより、所望のものを得ることができる。
エチレン系重合体(II)は、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)とGPCにて測定される重量平均分子量(Mw)が次の式(1)の関係式を満足する。
式(1):log[HLMFR]≦−3.85log[Mw/10,000]+6.0
式(1)の関係を満たすエチレン系重合体(II)をポリエチレン(I)とともに使用することにより、結晶化速度を極めて有効に速くすることができ、いわゆる結晶核剤を添加したと同様な効果を発揮し、結晶化時間を短くすることができ、薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物としての高速成形ハイサイクル化を達成できる。
また、エチレン系重合体(II)をポリエチレン(I)とともに使用することにより、従来のエチレン系重合体組成物のみより、更に耐ストレスクラック性を向上させることができる。
従来のエチレン系重合体においては、結晶化速度を上げるために、結晶核剤として働く物質を添加する等の方法が試みられているが、このような従来技術の状況を踏まえて、成形加工性と機械強度などの物性を共に充分に向上させるエチレン系重合体を検討した結果、本発明に係るエチレン系重合体(II)を用いることにより、或いはエチレン系重合体(II)をエチレン系重合体組成物(I)とともに使用することにより、優れた機械強度などの物性を維持しつつ、結晶化速度を充分に向上させることができ、成形速度の向上を図ることができるものである。
そして、結晶化速度を充分に向上させることは、前記の関係式(1)を満足するエチレン系重合体(II)、好ましくは下記の式(2)、更に好ましくは式(3)を満足するエチレン系重合体(II)により、本発明の著しい効果を発揮することができる。
式(2):log[HLMFR]≦−3.85log[Mw/10,000]+5.8
式(3):log[HLMFR]≦−3.85log[Mw/10,000]+5.6
ここで、上記の式(1)の技術的意味は、重量平均分子量(Mw)との見合いで流動性が低い、即ちHLMFRが小さいことを示しており、これは、このエチレン系重合体(II)が長鎖分岐を有すること、しかも所定のMwに対して特定HLMFRを示す長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体であることを示している。なお、式(1)は、従来技術の樹脂組成物と本発明の樹脂組成物との境界を示すために、便宜的に設定された近似式であり、従来技術との境界線の役割を果たすものであると理解することが相当である。
本発明の属する技術分野において、長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体を測定する方法は、各種の方法が知られており、例えば、伸長粘度測定において粘度の立ち上がりが見られる高分子も長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体に含まれる。そして、長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体の中で、本発明の式を満足するものは、特定の長鎖分岐構造を有するものとして、好適である。
また、成形速度を律する長鎖分岐構造は、具体的には、例えば星形分岐高分子や櫛形分岐高分子が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、上記の特定式を満足するエチレン系重合体であれば、結晶化速度を向上させる効果を発揮することができる。さらに、エチレン系重合体が上記関係式を満足しないと、長鎖分岐高分子として有効に働かず、結晶化速度を速めることができず、成形速度の向上が難しくなる。
本発明に係る長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体(II)は、例えば、10,000炭素連鎖当たり1本程度の長鎖分岐が存在する重合体を挙げることができ、これは、例えば13C−NMR測定により確認することができる。長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体は、重合触媒として、フィリップス触媒等のクロム触媒や、シングルサイト触媒としてのメタロセン触媒を使用して、重合することにより製造することができる。
また、長鎖分岐構造を有するエチレン系重合体(II)としては、エチレンへの連鎖移動によって末端ビニル基を有するポリエチレン(マクロモノマー)を生成させ、マクロモノマーとエチレンの共重合を経て、長鎖分岐構造を有する重合体を得ることができる。
メタロセン触媒の中では、特定構造のメタロセン錯体を有する触媒が好ましく、特にシクロペンタジエニル環及び複素環式芳香族基を有するメタロセン触媒、又はシクロペンタジエニル環及びフルオレニル環を有するメタロセン触媒が好ましい。
エチレン系重合体(II)の配合量は、ポリエチレン(I)96〜60重量%に対し、4〜40重量%、好ましくはポリエチレン(I)96〜65重量%に対し、4〜35重量%、更に好ましくはポリエチレン(I)90〜75重量%に対し、10〜25重量%である。この配合量が4重量%未満であれば、本発明の樹脂組成物のDSCで測定できる121.5℃での等温結晶化時間が80秒を超え、その結果、成形サイクルが低下する。一方、40重量%を超えれば、本発明の樹脂組成物のMFR、密度が低下し、流動性、剛性、曲げ弾性率、引張降伏強さ、耐ストレスクラック性が低下する重合体となる。
エチレン系重合体(II)は、Ti、Zr、又はHfを含有するメタロセン触媒で重合される。メタロセン触媒としては、シクロペンタジエン骨格を有する配位子が遷移金属に配位してなる錯体と助触媒とを組み合わせたものが例示される。具体的なメタロセン触媒としては、Ti、Zr、Hfなどを含む遷移金属に、メチルシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、インデン等のシクロペンタジエン骨格を有する配位子が配位してなる錯体触媒と、助触媒として、アルミノキサン等の周期表第1族〜第3族元素の有機金属化合物とを、組み合わせたものや、これらの錯体触媒をシリカ等の担体に担持させた担持型のものが挙げられる。
本発明で用いられるメタロセン触媒は、以下の成分(A)及び成分(B)を含むものであり、必要に応じて成分(C)と組み合わせてなる触媒である。
成分(A):メタロセン錯体
成分(B):成分(A)と反応して、カチオン性メタロセン化合物を形成する化合物
成分(C):微粒子担体
(1)成分(A)
成分(A)は、第4族遷移金属のメタロセン化合物が用いられる。具体的には、下記一般式(I)〜(VI)で表される化合物が使用される。
(C5−a )(C5−b )MXY ・・・(I)
Q(C4−c )(C4−d )MXY ・・・(II)
Q’(C4−e )ZMXY ・・・(III)
(C5−f )ZMXY ・・・(IV)
(C5−f )MXYW ・・・(V)
Q”(C5−g )(C5−h )MXY ・・・(VI)
ここで、Qは、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を示し、Q’は、共役五員環配位子とZ基を架橋する結合性基を示し、Q”は、RとRを架橋する結合性基を示し、Mは、Ti、Zr又はHfを示し、X、Y及びWは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基又は炭素数1〜20の珪素含有炭化水素基を示し、Zは、酸素、イオウを含む配位子、炭素数1〜40の珪素含有炭化水素基、炭素数1〜40の窒素含有炭化水素基又は炭素数1〜40のリン含有炭化水素基を示す。
〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、酸素含有炭化水素基、硫黄含有炭化水素基、珪素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基又はホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のR、2個のR、2個のR、2個のR、又は2個のRが、それぞれ結合して炭素数4〜10個の環を形成していてもよい。また、a、b、c、d、e、f及びhは、それぞれ0≦a≦5、0≦b≦5、0≦c≦4、0≦d≦4、0≦e≦4、0≦f≦5、0≦g≦5、0≦h≦5、を満足する整数である。
2個の共役五員環配位子の間を架橋する結合性基Q、共役五員環配位子とZ基とを架橋する結合性基Q’、及び、RとRを架橋するQ”は、具体的には、下記のようなものが挙げられる。
すなわち、メチレン基、エチレン基のようなアルキレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、フェニルメチリデン基、ジフェニルメチリデン基のようなアルキリデン基、ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジプロピルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルエチルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、メチル−t−ブチルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基のような珪素含有架橋基、ゲルマニウム含有架橋基、アルキルフォスフィン、アミン等である。これらのうち、アルキレン基、アルキリデン基、珪素含有架橋基、及びゲルマニウム含有架橋基が特に好ましく用いられる。
上述の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)で表される具体的なZr錯体を下記に例示するが、ZrをHf又はTiに置き換えた化合物も、同様に使用可能である。
また、一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)で示される成分(A)は、同一の一般式で示される化合物、又は異なる一般式で示される化合物の二種以上の混合物として用いることができる。
一般式(I)の化合物:
ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4,5ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビスフルオレニルジルコニウムジクロリド、ビス(4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4H−アズレニル)シクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド。
ビス(2−フリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−フリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−フリル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド。
一般式(II)の化合物:
ジメチルシリレンビス(1,1’−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレンビス[1,1’−(2−メチル−4,5ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−メチル−4−ヒドロアズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル]}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−エチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレンビス[1,1’−(2−メチル−4−ヒドロアズレニル)]ジルコニウムジクロリド。
ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−フリルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−(2−フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−{2−[2−(5−トリメチルシリル)フリル]−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−(2−フリル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル]}ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)[9−(2,7−t−ブチル)フルオレニル]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)[9−(2,7−t−ブチル)フルオレニル]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)[9−(2,7−t−ブチル)フルオレニル]ジルコニウムジクロリド。
一般式(III)の化合物:
(第3級ブチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロライド、(メチルアミド)−(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル−ジルコニウムジクロライド、(エチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)−メチレンジルコニウムジクロライド、(第3級ブチルアミド)ジメチル−(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジクロライド、(第3級ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジベンジル、(ベンジルアミド)ジメチル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジクロライド、(フエニルホスフイド)ジメチル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジベンジル。
一般式(IV)の化合物:
(シクロペンタジエニル)(フェノキシ)ジルコニウムジクロリド、(2,3−ジメチルシクロペンタジエニル)(フェノキシ)ジルコニウムジクロリド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(フェノキシ)ジルコニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)ジルコニウムジクロリド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(2,6−ジ−i−プロピルフェノキシ)ジルコニウムジクロリド。
一般式(V)の化合物:
(シクロペンタジエニル)ジルコニウムトリクロリド、(2,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムトリクロリド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムトリクロリド、(シクロペンタジエニル)ジルコニウムトリイソプロポキシド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムトリイソプロポキシド。
一般式(VI)の化合物:
エチレンビス(7,7’−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{7,7’−(1−メチル−3−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{7,7’−[1−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[7,7’−(1−エチル−3−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{7,7’−[1−イソプロピル−3−(4−クロロフェニル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド。
なお、これらの具体例の化合物のシリレン基を、ゲルミレン基に置き換えた化合物も、好適な化合物として例示される。
以上において記載した遷移金属化合物成分(A)の中で、エチレン系重合体(II)を製造するための好ましいメタロセン錯体としては、一般式(I)又は一般式(II)で表されるメタロセン錯体が好ましく、さらには、高分子量のポリマーを生成可能であり、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合において共重合性に優れるという観点から、一般式(II)で表されるメタロセン錯体が好ましい。高分子量体を製造可能ということは、後述するような種々のポリマーの分子量の調整手法により、様々な分子量のポリマーの設計が行えるという利点がある。
さらに、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)とGPCにて測定できるMwが式(1)の関係を満たすための一つの方法は、エチレン重合体中に長鎖分岐を導入することであるが、高分子量でかつ長鎖分岐を有するポリエチレンを製造可能という観点から、一般式(II)で表されるメタロセン錯体の中でも、以下の2つの化合物群が好ましい。
好ましい態様として、第一の化合物群は、R〜Rとして、化合物内に少なくとも一つ、複素環式芳香族基を含有している架橋メタロセン錯体である。好ましい複素環式芳香族基としては、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基よりなる群が挙げられる。これらの置換基は、さらに珪素含有基等の置換基を有していてもよい。フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基よりなる群から選択される置換基の中で、フリル基、ベンゾフリル基がさらに好ましい。さらには、これらの置換基が、置換シクロペンタジエニル基又は置換インデニル基の2位に導入されていることが好ましく、少なくとも1つ、他に縮環構造を有しない置換シクロペンタジエニル基を有している化合物であることが特に好ましい。
第二の化合物群は、置換シクロペンタジエニル基と置換フルオレニル基を組み合わせた架橋メタロセン錯体である。
これらのメタロセン錯体は、後述するような担持触媒として用いることが好ましい。第一の化合物群においては、フリル基はチエニル基に含有されるいわゆるヘテロ原子と担体上の固体酸などの相互作用により、活性点構造に不均一性が生じ、長鎖分岐が生成しやすくなったものと考えている。また、第二の化合物群においても、担持触媒にすることで、活性点まわりの空間が変化するため、長鎖分岐が生成しやすくなったものと考えている。
(2)成分(B)
本発明に係るエチレン系重合体(II)の製造方法は、オレフィン重合用触媒の必須成分として、上記成分(A)以外に、成分(A)のメタロセン化合物(成分(A)、以下、単にAと記すこともある。)と反応してカチオン性メタロセン化合物を形成する化合物(成分(B)、以下、単にBと記すこともある。)、必要に応じて微粒子担体(成分(C)、以下、単にCと記すこともある。)を含むことに、特徴がある。
メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を形成する化合物(B)の一つとして、有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。
上記有機アルミニウムオキシ化合物は、分子中に、Al−O−Al結合を有し、その結合数は通常1〜100、好ましくは1〜50個の範囲にある。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、通常、有機アルミニウム化合物と水とを反応させて得られる生成物である。
有機アルミニウムと水との反応は、通常、不活性炭化水素(溶媒)中で行われる。不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素が使用できるが、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
有機アルミニウムオキシ化合物の調製に用いる有機アルミニウム化合物は、下記一般式(3)で表される化合物がいずれも使用可能であるが、好ましくはトリアルキルアルミニウムが使用される。
AlX 3−t・・・式(3)
(式中、Rは、炭素数1〜18、好ましくは1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基を示し、Xは、水素原子又はハロゲン原子を示し、tは、1≦t≦3の整数を示す。)
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のいずれでも差し支えないが、メチル基であることが特に好ましい。
上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は、0.25/1〜1.2/1、特に、0.5/1〜1/1であることが好ましく、反応温度は、通常−70〜100℃、好ましくは−20〜20℃の範囲にある。反応時間は、通常5分〜24時間、好ましくは10分〜5時間の範囲で選ばれる。反応に要する水として、単なる水のみならず、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物等に含まれる結晶水や反応系中に水が生成しうる成分も利用することもできる。
なお、上記した有機アルミニウムオキシ化合物のうち、アルキルアルミニウムと水とを反応させて得られるものは、通常、アルミノキサンと呼ばれ、特にメチルアルミノキサン(実質的にメチルアルミノキサン(MAO)からなるものを含む)は、有機アルミニウムオキシ化合物として、好適である。
もちろん、有機アルミニウムオキシ化合物として、上記した各有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、前記有機アルミニウムオキシ化合物を前述の不活性炭化水素溶媒に溶液又は分散させた溶液としたものを用いても良い。
また、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を形成する化合物(B)の他の具体例として、ボラン化合物やボレート化合物が挙げられる。
上記ボラン化合物をより具体的に表すと、トリフェニルボラン、トリ(o−トリル)ボラン、トリ(p−トリル)ボラン、トリ(m−トリル)ボラン、トリ(o−フルオロフェニル)ボラン、トリス(p−フルオロフェニル)ボラン、トリス(m−フルオロフェニル)ボラン、トリス(2,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランなどが挙げられる。
これらの中でも、トリス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランがより好ましく、さらに好ましくはトリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボランが好ましい化合物として例示される。
また、ボレート化合物を具体的に表すと、第1の例は、次の一般式(4)で示される化合物である。
[L−H][BR・・・式(4)
式(4)中、Lは、中性ルイス塩基であり、Hは、水素原子であり、[L−H]は、アンモニウム、アニリニウム、ホスフォニウム等のブレンステッド酸である。
アンモニウムとしては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウムなどのトリアルキル置換アンモニウム、ジ(n−プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウムなどのジアルキルアンモニウムを例示できる。
また、アニリニウムとしては、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムなどのN,N−ジアルキルアニリニウムが例示できる。
さらに、ホスフォニウムとしては、トリフェニルホスフォニウム、トリブチルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスフォニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスフォニウムなどのトリアリールホスフォニウム、トリアルキルホスフォニウムが挙げられる。
また、式(4)中、R及びRは、6〜20、好ましくは6〜16の炭素原子を含む、同じか又は異なる芳香族又は置換芳香族炭化水素基で、架橋基によって互いに連結されていてもよく、置換芳香族炭化水素基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等に代表されるアルキル基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンが好ましい。
さらに、X及びXは、ハイドライド基、ハライド基、1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、1個以上の水素原子がハロゲン原子によって置換された1〜20の炭素原子を含む置換炭化水素基である。
上記一般式(4)で表される化合物の具体例としては、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどを例示することができる。
これらの中でも、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレートが好ましい。
また、ボレート化合物の第2の例は、次の一般式(5)で表される。
[L[BR・・・式(5)
式(5)中、Lは、カルボカチオン、メチルカチオン、エチルカチオン、プロピルカチオン、イソプロピルカチオン、ブチルカチオン、イソブチルカチオン、tert−ブチルカチオン、ペンチルカチオン、トロピニウムカチオン、ベンジルカチオン、トリチルカチオン、ナトリウムカチオン、プロトン等が挙げられる。また、R、R、X及びXは、前記一般式(4)における定義と同じである。
上記化合物の具体例としては、トリチルテトラフェニルボレート、トリチルテトラ(o−トリル)ボレート、トリチルテトラ(p−トリル)ボレート、トリチルテトラ(m−トリル)ボレート、トリチルテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラフェニルボレート、トロピニウムテトラ(o−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaBPh、NaB(o−CH−Ph)、NaB(p−CH−Ph)、NaB(m−CH−Ph)、NaB(o−F−Ph)、NaB(p−F−Ph)、NaB(m−F−Ph)、NaB(3,5−F−Ph)、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、NaB(3,5−(CF−Ph)、NaB(C10、HBPh・2ジエチルエーテル、HB(3,5−F−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C ・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルを例示することができる。
これらの中でも、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、NaB(3,5−(CF−Ph)、NaB(C10、HB(C ・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルが好ましい。
さらに好ましくは、これらの中でもトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、HB(C ・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルが挙げられる。
(3)成分(C)
成分(C)である微粒子担体としては、無機物担体、粒子状ポリマー担体又はこれらの混合物が挙げられる。無機物担体は、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩、炭素質物、又はこれらの混合物が使用可能である。
無機物担体に用いることができる好適な金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
また、金属酸化物としては、周期表1〜14族の元素の単独酸化物又は複合酸化物が挙げられ、例えば、SiO、Al、MgO、CaO、B、TiO、ZrO、Fe、Al・MgO、Al・CaO、Al・SiO、Al・MgO・CaO、Al・MgO・SiO、Al・CuO、Al・Fe、Al・NiO、SiO・MgOなどの天然又は合成の各種単独酸化物又は複合酸化物を例示することができる。
ここで、上記の式は、分子式ではなく、組成のみを表すものであって、本発明において用いられる複合酸化物の構造及び成分比率は特に限定されるものではない。
また、本発明において用いる金属酸化物は、少量の水分を吸収していても差し支えなく、少量の不純物を含有していても差し支えない。
金属塩化物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物が好ましく、具体的にはMgCl、CaClなどが特に好適である。
金属炭酸塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、具体的には、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。
炭素質物としては、例えば、カーボンブラック、活性炭などが挙げられる。
以上の無機物担体は、いずれも本発明に好適に用いることができるが、特に金属酸化物、シリカ、アルミナなどの使用が好ましい。
これら無機物担体は、通常、200〜800℃、好ましくは400〜600℃で空気中又は窒素、アルゴン等の不活性ガス中で焼成して、表面水酸基の量を0.8〜1.5mmol/gに調節して用いるのが好ましい。
これら無機物担体の性状としては、特に制限はないが、通常、平均粒径は5〜200μm、好ましくは10〜150μm、平均細孔径は20〜1000Å、好ましくは50〜500Å、比表面積は150〜1000m/g、好ましくは200〜700m/g、細孔容積は0.3〜2.5cm/g、好ましくは0.5〜2.0cm/g、見掛比重は0.10〜0.50g/cmを有する無機物担体を用いるのが好ましい。
上記した無機物担体は、もちろんそのまま用いることもできるが、予備処理としてこれらの担体をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物に接触させた後、用いることができる。
本発明に係るメタロセン系触媒は、メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)、及び必要に応じて微粒子担体(C)からなる触媒を得る際の各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
(I)メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)とを接触させた後、微粒子担体(C)を接触させる。
(II)メタロセン化合物(A)と、微粒子担体(C)とを接触させた後、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)を接触させる。
(III)メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と、微粒子担体(C)とを接触させた後、メタロセン化合物(A)を接触させる。
これらの接触方法の中で(I)と(III)が好ましく、さらに(I)が最も好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下又は非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
この接触は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−50℃〜100℃、さらに好ましくは0℃〜50℃の温度にて、5分〜50時間、好ましくは30分〜24時間、さらに好ましくは30分〜12時間で行うことが望ましい。
また、メタロセン化合物(A)、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と微粒子担体(C)の接触に際しては、上記した通り、ある種の成分が可溶ないしは難溶な芳香族炭化水素溶媒と、ある種の成分が不溶ないしは難溶な脂肪族又は脂環族炭化水素溶媒とがいずれも使用可能である。
各成分同士の接触反応を段階的に行う場合にあっては、前段で用いた溶媒などを除去することなく、これをそのまま後段の接触反応の溶媒に用いてもよい。また、可溶性溶媒を使用した前段の接触反応後、ある種の成分が不溶もしくは難溶な液状不活性炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素あるいは芳香族炭化水素)を添加して、所望生成物を固形物として回収した後に、あるいは一旦可溶性溶媒の一部又は全部を、乾燥等の手段により除去して所望生成物を固形物として取り出した後に、この所望生成物の後段の接触反応を、上記した不活性炭化水素溶媒のいずれかを使用して実施することもできる。本発明では、各成分の接触反応を複数回行うことを妨げない。
本発明において、メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と、微粒子担体(C)の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)として、有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、メタロセン化合物(A)中の遷移金属(M)に対する有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウムの原子比(Al/M)は、通常、1〜100,000、好ましくは5〜1000、さらに好ましくは50〜200の範囲が望ましく、また、ボラン化合物やボレート化合物を用いる場合、メタロセン化合物中の遷移金属(M)に対する、ホウ素の原子比(B/M)は、通常、0.01〜100、好ましくは0.1〜50、さらに好ましくは0.2〜10の範囲で選択することが望ましい。
さらに、カチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)として、有機アルミニウムオキシ化合物と、ボラン化合物、ボレート化合物との混合物を用いる場合にあっては、混合物における各化合物について、遷移金属(M)に対して上記と同様な使用割合で選択することが望ましい。
微粒子担体(C)の使用量は、メタロセン化合物(A)中の遷移金属0.0001〜5ミリモル当たり、好ましくは0.001〜0.5ミリモル当たり、さらに好ましくは0.01〜0.1ミリモル当たり、1gである。
メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と、微粒子担体(C)とを、前記接触方法(I)〜(III)のいずれかで相互に接触させ、しかる後、溶媒を除去することで、オレフィン重合用触媒を固体触媒として得ることができる。溶媒の除去は、常圧下又は減圧下、0〜200℃、好ましくは20〜150℃で1分〜50時間、好ましくは10分〜10時間で行うことが望ましい。
なお、メタロセン系触媒は、以下の方法によっても得ることができる。
(IV)メタロセン化合物(A)と微粒子担体(C)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物又はこれらの混合物と接触させる。
(V)有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物又はこれらの混合物と微粒子担体(C)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下でメタロセン化合物(A)と接触させる。
上記(IV)、(V)の接触方法の場合も、成分比、接触条件及び溶媒除去条件は、前記と同様の条件が使用できる。
また、本発明に係るエチレン系重合体(II)の製造方法の必須成分であるメタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と微粒子担体(C)とを兼ねる成分として、層状珪酸塩を用いることもできる。
層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物である。
大部分の層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
一般に、天然品は、非イオン交換性(非膨潤性)であることが多く、その場合は好ましいイオン交換性(ないし膨潤性)を有するものとするために、イオン交換性(ないし膨潤性)を付与するための処理を行うことが好ましい。そのような処理のうちで特に好ましいものとしては、次のような化学処理が挙げられる。
ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と層状珪酸塩の結晶構造、化学組成に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。
具体的には、(イ)塩酸、硫酸等を用いて行う酸処理、(ロ)NaOH、KOH、NH等を用いて行うアルカリ処理、(ハ)周期表第2族から第14族から選ばれた少なくとも1種の原子を含む陽イオンとハロゲン原子又は無機酸由来の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンからなる塩類を用いた塩類処理、(ニ)アルコール、炭化水素化合物、ホルムアミド、アニリン等の有機物処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
前記層状珪酸塩は、全ての工程の前、間、後のいずれの時点においても、粉砕、造粒、分粒、分別等によって、粒子性状を制御することができる。その方法は、合目的的な任意のものであり得る。特に、造粒法について示せば、例えば、噴霧造粒法、転動造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、ブリケッティング法、コンパクティング法、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法及び液中造粒法等が挙げられる。特に好ましい造粒法は、上記の内、噴霧造粒法、転動造粒法及び圧縮造粒法である。
上記した層状珪酸塩は、もちろんそのまま用いることもできるが、これらの層状珪酸塩をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物と組み合わせて用いることができる。
本発明に係るメタロセン系触媒において、メタロセン化合物(A)を、層状珪酸塩に担持するには、メタロセン化合物(A)と層状珪酸塩を相互に接触させる、あるいはメタロセン化合物(A)、有機アルミニウム化合物、層状珪酸塩を相互に接触させてもよい。
各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
(VI)メタロセン化合物(A)と有機アルミニウム化合物を接触させた後、層状珪酸塩担体と接触させる。
(VII)メタロセン化合物(A)と層状珪酸塩担体を接触させた後、有機アルミニウム化合物と接触させる。
(VIII)有機アルミニウム化合物と層状珪酸塩担体を接触させた後、メタロセン化合物(A)と接触させる。
これらの接触方法の中で(VI)と(VIII)が好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下又は非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
メタロセン化合物(A)と、有機アルミニウム化合物、層状珪酸塩担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
メタロセン化合物(A)の担持量は、層状珪酸塩担体1gあたり、0.0001〜5ミリモル、好ましくは0.001〜0.5ミリモル、さらに好ましくは0.01〜0.1ミリモルである。
また、有機アルミニウム化合物を用いる場合のAl担持量は、0.01〜100モル、好ましくは0.1〜50モル、さらに好ましくは0.2〜10モルの範囲であることが望ましい。
担持及び溶媒除去の方法は、前記の無機物担体と同様の条件が使用できる。
触媒成分(B)と成分(C)とを兼ねる成分として、層状珪酸塩を用いると、重合活性が高く、長鎖分岐を有するエチレン系重合体の生産性が向上する。
こうして得られるオレフィン重合用触媒は、必要に応じてモノマーの予備重合を行った後に使用しても差し支えない。
メタロセン系触媒の製造例として、例えば、公知刊行物である特表2002−535339号公報や特開2004−189869号公報に記載の「触媒」及び「原料の配合比や条件」を参酌することにより、製造することができる。また、重合体のインデックスは、各種重合条件により制御することができ、例えば、特開平2−269705号公報や特開平3−21607号公報記載の方法により制御することができる。
エチレン系重合体(II)は、エチレンの単独重合、又はエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等との共重合により得られる。また、改質を目的とする場合のジエンとの共重合も可能である。このとき使用されるジエン化合物の例としては、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。なお、重合の際のコモノマー含有率は、任意に選択することができるが、例えば、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合の場合には、エチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は、0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%である。
生成重合体の分子量は、重合温度、触媒のモル比等の重合条件を変えることによってもある程度調節可能であるが、重合反応系に水素を添加することで、より効果的に分子量調節を行うことができる。
また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく実施することができる。
なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
水素濃度、モノマー量、重合圧力、重合温度等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式にも、支障なく適用することができる。
エチレン系重合体(II)は、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法などの製造プロセスにより製造することができ、好ましくはスラリー重合法が望ましい。エチレン系重合体(II)の重合条件のうち重合温度としては、0〜200℃の範囲から選択することができる。スラリー重合においては、生成ポリマーの融点より低い温度で重合を行う。重合圧力は、大気圧〜約10MPaの範囲から選択することができる。実質的に酸素、水等を断った状態で、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下でエチレン及びα−オレフィンのスラリー重合を行うことにより製造することができる。
エチレン系重合体(II)は、本発明で規定の範囲を満たせば、単一の重合器、直列もしくは並列に接続した複数の反応器で順次連続して重合、及び複数のエチレン重合体を別々に重合した後に混合したものでもよい。
エチレン系重合体(a)、エチレン系重合体(b)及びエチレン系重合体(II)に使用されるエチレンは、通常の化石原料由来の原油から製造されるエチレンであってもよいし、植物由来のエチレンであってもよい。植物由来のエチレン及びポリエチレンとしては、例えば、特表2010−511634号公報に記載のエチレンやそのポリマーが挙げられる。植物由来のエチレンやそのポリマーは、カーボンニュートラル(化石原料を使わず大気中の二酸化炭素の増加につながらない)の性質を持ち、環境に配慮した製品の提供が可能である。
3.薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物の特性
本発明の樹脂組成物は、下記の特性(i)〜(iii)を満足することを特徴とする。
特性(i):MFRが15〜50g/10分である。
特性(ii):フローテスターにて測定できるN値が1.5〜2.0である。
特性(iii):密度が0.955〜0.970g/cmである。
該特性(i)のMFRは、15〜50g/10分であり、好ましくは20〜45g/10分であり、更に好ましくは25〜40g/10分である。ここで、MFRは、JIS K6922−2:1997に準じて測定される値である。MFRは、本範囲より低い場合には、分子量が増大し、流動性及び成形性が確保できなくなる。また、本範囲より高い場合には、耐衝撃性等、実用性能が確保できなくなる。MFRは、エチレン重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、既に述べた方法により所望のものを得ることができる。
また、特性(ii)のフローテスターにて測定できるN値が1.5〜2.0であり、好ましくは1.6〜1.9、更に好ましくは1.7〜1.9gである。
フローテスターにて測定できるN値が本範囲より低い場合には成形時の流動性が確保できない。また,本範囲より高い場合には成形時に分子配向による割れが発生し、なおかつ収縮率の異方性が発生し、実用上好ましくない。一般にフローテスターにて測定できるN値は樹脂組成物の分子量分布を制御することにより、制御できる。
ここで、フローテスターにて測定できるN値とは、直径1mm、長さL/直径D=20のキャピラリ−にて、170℃、荷重20kgfのせん断速度をγL、せん断応力をτLとし、荷重150kgfのせん断速度をγH、せん断応力をτHとしたとき次式で算出されるものである。
N値={log(γH)−log(γL)}/{log(τH)−log(τL)}
特性(iii)の密度が0.955〜0.970g/cmであり、好ましくは0.957〜0.968g/cm、更に好ましくは0.958〜0.965g/cmである。密度が0.955g/cm未満であれば、薄肉容器の剛性が劣り高温時に変形しやすくなり、良品が確保できない。一方、密度が0.970g/cmを超えると、薄肉容器の耐衝撃性が劣り、実用性能を確保できなくなる。密度は、JIS K6922−1,2:1997に準じて、測定される値である。密度は、エチレンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることにより、所望のものを得ることができる。
本発明の成形性確認の手法の1つとして、以下のスパイラルフローの測定が挙げられる。190℃、ランナー側ゲート幅4mm、キャビティ側ゲート幅5mm、幅10mm、厚み2mm、最長流路長2000mmのアルキメデスのスパイラル流路を有する金型で、射出圧力75MPaで得られるスパイラルフロー長さにて確認することが出来る。射出圧力75MPaにおけるスパイラルフロー長さは60cm以上が好ましく、より好ましくは62cm以上、更に好ましくは65cmである。
スパイラル長さはポリエチレン(I)のMFRを高くする、あるいはポリエチレン(I)の分子量分布を広くする、もしくはその両方にて大きくすることが出来る。
この場合の分子量分布はGPCにて測定することができ、GPC測定による分子量の分布の広さを表す単分散性Q値(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は10≦Q値≦13が好ましく、より好ましくは11≦Q≦12である。
Q値が10未満の場合、流動性の向上が十分ではなく、13を超える場合、耐衝撃性が著しく低下する。
本発明の薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物は、さらに、下記特性(iv)〜(viii)を満足することが好ましい。
特性(iv):曲げ弾性率が850MPa以上である。
特性(v):引張降伏強さが25MPa以上である。
特性(vi):示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間が80秒以下である。
特性(vii):炭化水素揮発分が80ppm以下である。
特性(viii):静摩擦係数が0.30以下である。
薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物の特性(iv)の曲げ弾性率は、850MPa以上が好ましい。曲げ弾性率が850MPa未満では、剛性が低下し、薄肉容器が変形しやすく、特に高温時に変形しやすい、また、薄肉容器の肉厚を薄くした場合に強度が不足する。曲げ弾性率の上限値は、特に限定されないが、通常は2000MPa以下である。
ここで、曲げ弾性率は、試験片として210℃で射出成形した4×10×80mmの板を用い、JIS K6922−2に準拠して測定される値である。
曲げ弾性率は、ポリエチレン樹脂組成物の密度を増減させることにより、調節することができ、密度を増加させると、曲げ弾性率を上げることができる。
薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物の特性(v)の引張降伏強さは、25MPa以上が好ましい。引張降伏強さが25MPa未満では、剛性が低下し、容器の感触がやわらかくなる。引張降伏強さの上限値は、特に限定されないが、通常は50MPa以下である。
ここで、引張降伏強さは、試験片として210℃で射出成形したJIS1号引張試験片を用い、JIS K6922−2:1997年に準拠して測定される値である。
引張降伏強さは、ポリエチレンの分子量及び密度を増減させることにより、調節することができ、分子量又は密度を増加させると、引張降伏強さを上げることができる。
薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物の特性(vi)の示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間は、80秒以下が好ましい。本値が80秒を超えると、成形速度が遅延となり、成形サイクルが長くなる。本値はエチレン系重合体(II)の密度、分子量及び配合量にて調節が可能である。本発明の範囲外にて、エチレン系重合体(II)のMFRが高い、密度が低い、配合量が少ない場合には、ポリエチレン樹脂組成物の示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間が80秒を超える。なお、本発明の範囲外にてエチレン系重合体(II)のMFRが低い、密度が高い、配合量が多い場合には、剛性、成形性、耐衝撃性等、その他の実用物性を満足できないため、現実性が無い。
薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物の特性(vii)の炭化水素揮発分は、80ppm以下が好ましく、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下である。本発明にいう炭化水素とは、少なくとも炭素及び水素を含む化合物をいい、通常ガスクロマトグラフィーにて測定されるもので、本発明の要件を満足することにより、容器内容物の臭い、味への影響を防ぐことができる。
ここで、炭化水素揮発分は、ポリエチレン樹脂組成物1gを25mlのガラス密閉容器に入れ、130℃で60分加熱した際のへッドスペース中の空気をガスクロマトグラフィーにて測定される。
本発明において、炭化水素揮発分を所定の値以下にするためには、重合したポリエチレン系重合体を揮発分除去操作、例えば、スチームストリッピング処理、温風脱臭処理、真空処理、窒素パージ処理等を実施することにより、達成することができ、特にスチーム脱臭処理を行うことにより、本発明の効果を顕著に発揮することができる。スチーム処理の条件は、特に限定されるものではないが、エチレン系重合体を100℃のスチームに8時間程度接触させるとよい。
薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物の特性(viii)の静摩擦係数は、0.30以下が好ましく、より好ましくは0.25以下、更に好ましくは0.23以下であり、本値は、無次元値である。市販の摩擦係数測定器により測定が可能である。本値の下限値は、特に制限しないが、通常は0.10以上である。本値が0.30を超えれば、薄肉容器の充填ライン適正に悪影響を及ぼす。なお、この静摩擦係数は、ポリエチレンの密度、分子量及び分子量分布により、調整が可能である。ポリエチレン樹脂組成物の密度を本発明の範囲より下げれば悪化し、また、分子量分布を更に広く、HLMFRを更に上げれば、悪化する恐れがある。
上記の薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物は、常法に従い、ペレタイザーやホモジナイザー等による機械的な溶融混合によりペレット化した後、各種成形機により成形を行って所望の成形品とすることができる。
また、上記の方法により得られる薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物には、常法に従い、他のオレフィン系重合体やゴム等のほか、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色顔料、架橋剤、発泡剤、無機又は有機充填剤、難燃剤等の公知の添加剤を配合することができる。
添加剤として、例えば、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を1種又は2種以上、適宜併用することができる。充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、金属粉(アルミニウム、銅、鉄、鉛など)、珪石、珪藻土、アルミナ、石膏、マイカ、クレー、アスベスト、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタン等が使用可能であり、なかでも炭酸カルシウム、タルク及びマイカ等を用いるのが好ましい。いずれの場合でも、上記ポリエチレン樹脂組成物に、必要に応じ各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。
本発明において、薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物の結晶化速度を更に促進するために、核剤を用いることも、有効な手法である。
該核剤としては、一般に知られているものを使用することができ、一般的な有機系又は無機系の造核剤を用いることができる。例えば、ジベンジリデンソルビトールもしくはその誘導体、有機リン酸化合物もしくはその金属塩、芳香族スルホン酸塩もしくはその金属塩、有機カルボン酸もしくはその金属塩、ロジン酸部分金属塩、タルク等の無機微粒子、イミド類、アミド類、キナクリドンキノン類、又はこれらの混合物が挙げられる。
中でもジベンジリデンソルビトール誘導体、有機リン酸金属塩、有機カルボン酸金属塩等は、透明性に優れるなど好適である。
ジベンジリデンソルビトール誘導体の具体例としては、1,3:2,4−ビス(o−3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−2,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−4−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−4−クロロベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ジベンジリデンソルビトールが挙げられ、安息香酸金属塩の具体例としては、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸)アルミニウム等が挙げられる。
本発明のポリエチレン樹脂組成物に核剤を配合する場合、核剤の配合量は、成分(a)、(b)及び(c)からなる樹脂組成物100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜3重量部、更に好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.01〜0.5重量部である。核剤が0.01重量部未満では、高速成形性の改良効果が十分でなく、一方、5重量部を超えると、核剤が凝集してブツになり易いといった問題が生じる。
本発明のポリエチレン樹脂組成物を原料として、主に射出成形法により成形され、各種成形品が得られる。本発明のポリエチレン樹脂組成物は、上記特性を満足するものであるので、剛性が高く、低温での耐衝撃性に優れた容器を提供でき、かつ高速成形可能なポリエチレン樹脂組成物を提供することが可能である。
従って、このような特性を必要とする、容器、薄肉容器等の用途に使用でき、特に、乳飲料、コーヒー飲料、清涼飲料、茶系飲料などの飲料容器やヨーグルト、プリン、ゼリー等のデザート薄肉容器に好適に用いることができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。
なお、実施例で用いた測定方法は以下の通りである。
(1)温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR):
JIS K6922−2:1997に準拠して測定した。
(2)温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR):
JIS K6922−2:1997に準拠して測定した。
(3)密度:
JIS K6922−1,2:1997に準拠して測定した。
(4)N値:
東洋精機製フローテスターを用い、直径1mm、長さL/直径D=20のキャピラリ− にて、170℃、荷重20kgfのせん断速度をγL、せん断応力をτLとし、荷重150kgfのせん断速度をγH、せん断応力をτHとしたとき次式で算出した。
N値={log(γH)−log(γL)}/{log(τH)−log(τL)}
(5)重量平均分子量(Mw):
エチレン系重合体について下記の条件でゲル透過クロマトグラフ(GPC)を行ない、重量平均分子量(Mw)を求めた。
[ゲル透過クロマトグラフ測定条件]
装 置:Waters 150Cモデル、
カラム:Shodex−HT806M、
溶 媒:1,2,4−トリクロロベンゼン、
温 度:135℃、
単分散ポリスチレンフラクションを用いてユニバーサル評定。
(6)曲げ弾性率:
試験片として210℃で射出成形した4×10×80mmの板を用い、JIS K6922−2に準拠して測定した。
(7)引張降伏強さ:
JIS K6922−2:1997年に準拠して測定した。
(8)定ひずみESCR:
JIS K6922−2:1997年に準拠して測定した。
(9)結晶化時間:
パーキンエルマー社製DSC−7にて、試料を190℃にて5分放置後、120℃/分の速度にて121.5℃まで冷却し、保持とした。121.5℃の等温下にて結晶化が終了した時点にてピークトップを検出し、測定した。
(10)炭化水素揮発分:
樹脂1gを25mlのガラス製密閉容器に入れ、130℃で60分加熱した後の密閉容器中の成分をガスクロマトグラフィーにて分析して測定した。
(11)静摩擦係数:
ファナック社製ROBOSHOT S−2000i 100B射出成形機にて、成形温度190℃、金型温度40℃にて1辺フィルムゲート(ゲート厚み0.2mm)の120×120×2mmの平板成形を行い、成形後、23℃にて48時間放置後、新東科学社製トライボギアμs94iを用いて測定した。
(12)成形ハイサイクル性評価:
ファナック社製ROBOSHOT S−2000i 100B射出成形機にて、成形温度190℃、金型温度20℃にて、厚み0.8mm、高さ110mm、60mmΦのカップ型円筒容器を射出成形した。この際に、冷却時間を短くした場合に、金型から離型できるかを評価した。評価基準を以下とし、○、△、×にて記載した。
○:冷却時間3秒以内
△:冷却時間3〜6秒
×:冷却時間6秒以上
(13)総合評価:
薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物としての適性総合評価し、以下の基準にて判定した。
○:不良項目なし(良好)
×:不良項目あり
[実施例1]
<チーグラー触媒の製造>
固体触媒成分として、溶解析出法によるTi系触媒を使用した。その製造方法は、以下の通りである。
攪拌機及び冷却器を取り付けた容量1リットルの三つ口フラスコの内部を十分に窒素置換した後、乾燥ヘキサン250ml、あらかじめ3リットル振動ミルで1時間粉砕処理を行った無水塩化マグネシウム11.4g及びn−ブタノール110mlを入れ、68℃で2時間加熱し均一な溶液(1a)とした。
この溶液(1a)を室温まで冷却した後、25℃の運動粘度が25cStであるメチルポリシロキサン8gを添加し、1時間攪拌して均一な溶液(1b)を得た。
次に、溶液(1b)を水で冷却した後、この中へ四塩化チタン50ml及び乾燥ヘキサン50mlを、滴下漏斗を用い1時間を費やして滴下し、溶液(1c)を得た。溶液(1c)は均一であり、反応生成物の錯体は析出していなかった。
溶液(1c)を還流しながら、68℃で2時間加熱処理を行った。加熱を開始して約30分後に反応生成物錯体(1d)の析出が見られた。これを採取して、乾燥ヘキサン250mlで6回洗浄し、さらに窒素ガスで乾燥して、反応生成物錯体(1d)19gを回収した。
反応生成物錯体(1d)を分析したところ、Mg14.5重量%、n−ブタノール44.9重量%及びTi0.3重量%を含有しており、その比表面積は、17m/gであった。
次に、反応生成物錯体(1d)4.5gを窒素雰囲気下で攪拌機及び冷却器を取り付けた容量1リットルの三つ口フラスコに採取し、これに乾燥ヘキサン250ml及び四塩化チタン25mlを加えて還流下に68℃で2時間加熱処理を行い、室温まで冷却した後、乾燥ヘキサン250mlで6回洗浄し、窒素ガスで乾燥して固体触媒成分(1e)4.6gを回収した。
この固体触媒成分(1e)を分析したところ、Mg12.5重量%、n−ブタノール17.0重量%及びTi9.0重量%を含有しており、その比表面積は、29m/gであった。この固体触媒成分(1e)をSEMで観察したところ、粒径は均一であり、球に近い形状であった。
<重合体の製造>
第一段反応器として内容積200リットルの第1段重合器に、触媒供給ラインから上記触媒の製造で得られた固体触媒成分(1e)14.3g/hrを、またトリエチルアルミニウム(TEA)を有機金属化合物供給ラインから56mmol/hrの速度にて、連続的に供給して、重合内容物を所要速度で排出しながら、70℃において、重合溶媒(n−ヘキサン)70(l/hr)、水素2.8(mg/hr)、エチレン18.0(kg/hr)、1−ブテン0.67(kg/hr)の速度で供給し、全圧1.3MPa、平均滞留時間1.7Hrの条件下で連続的に第1段共重合を行った。
第1段反応器の重合生成物を一部採取し、重合物を回収して物性を測定した結果を、「成分(a)」として、表に示した。
第一段反応器で生成したスラリー状重合生成物を、そのまま内容積400リットルの第二段反応器へ全量、内径50mmの連続管を通して導入し、重合器内容物を所要速度にて排出しながら、82℃にて、重合溶媒(n−ヘキサン)100(l/hr)、水素34.9(g/hr)、エチレン42.6(kg/hr)の速度で供給し、全圧1.1MPa、平均滞留時間1.2Hrの条件下で、連続的に第2段重合を行った。
第二段反応器から排出される重合生成物をフラッシング槽へ導入し、重合生成物を連続的に抜き出し、脱気ラインから未反応ガスを除去した。
得られた重合体を、スチームストリッピング処理を施した後、ペレタイザーで造粒した後、その物性を評価した。結果を表に示した。
なお、表において、第二段反応器で生成した「成分(b)」の物性は、最終製品であるポリエチレン組成物の物性と第一段反応器で得られた成分(A)の物性とから、加成則に基づく計算により求めた。
得られた成分(a)及び(b)からなる重合体をポリエチレン(I)とした。
<メタロセン系触媒による重合体の製造>
特表2002−535339号公報の実施例3に記載のメタロセン系触媒、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−(2−フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]}ジルコニウムジクロリドを用いて、常法に従い、以下の方法により、成分(c)のエチレン系重合体(II)を製造した。
<担持触媒の調製>
トルエン13.4mlにメチルアルモキサンのトルエン溶液(Albemarle社製、Al濃度 2.93mol/L)8.5mlとジメチルシリレンビス{1,1’−[2−(2−フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]}ジルコニウムジクロリド 70.6mgを添加し、遮光下、室温で30分間撹拌した。
次いで、予め窒素雰囲気下、400℃、8時間焼成したSiO(GRACE社製、948)5.0gをトルエン溶液に添加し、40℃、1時間撹拌した。その後、40℃を維持して真空乾燥を行い、固体触媒を得た。得られた固体触媒は、ヘキサンでスラリー化してエチレン重合に用いた。
<エチレンの重合>
窒素置換した内容積1.5Lのオートクレーブにトリエチルアルミニウムのヘキサン希釈液(Al濃度 0.1mol/L)4mlを添加し、イソブタン800ml導入した。オートクレーブの内温を80℃に昇温し、エチレン分圧が1.4MPaとなるようにエチレンを導入した。固体触媒のヘキサンスラリー(20mg/ml)7mlをオートクレーブに導入し重合を開始した。重合中は、80℃、エチレン分圧1.4MPaを維持した。また、重合中の水素濃度を一定に保つために、オートクレーブ気相部の水素濃度を測定し、適宜、水素を追添しながら重合を継続した。1時間後、オートクレーブの内圧とイソブタンをパージすることにより反応を停止した。
その結果、ポリマー75gを回収した。また、重合中の平均水素濃度は、0.04%であった。得られたポリマーの物性値は、表1に記載した。
<ポリエチレン樹脂組成物の製造>
上記ポリエチレン(I)及びエチレン系重合体(II)を表に示す割合で溶融混合し、ポリエチレン樹脂組成物を製造した。
当該樹脂組成物の物性及び評価結果を表1に示した。得られた組成物は、引張降伏強度、曲げ弾性率、定ひずみESCRなどの機械物性に優れ、なおかつ結晶化時間が短く、成形ハイサイクル性に優れていた。
[実施例2〜6]
表1に示す組成物となるよう条件設定した以外は、実施例1と同様に行った。得られた重合体組成物の評価結果を表1に示した。得られた重合体組成物は、引張降伏強度、曲げ弾性率、定ひずみESCRなどの機械物性に優れ、なおかつ結晶化時間が短く、成形ハイサイクル性に優れていた。
[比較例1〜5]
表2に示す組成物となるよう条件設定した以外は、実施例1と同様に行った。得られた重合体組成物の評価結果を表2に示した。表2より、比較例1、5は、エチレン系重合体(II)を配合していないため、結晶化時間が長く、成形ハイサイクル性などが悪い結果となった。また、比較例2、3においても、エチレン系重合体(II)がチーグラー系触媒で重合されているため、成形ハイサイクル性などが悪い結果となった。
さらに、比較例4は、エチレン系重合体(II)がチーグラー系触媒で重合されているため、HLMFRとGPCにて測定されるMwの式(1)の関係を満たさず、薄肉容器適性が十分ではなかった。
Figure 0005688327
Figure 0005688327
上記表1、2に示す結果から明らかのように、本発明の要件を満たす実施例1〜6では、得られた組成物は、引張降伏強度、曲げ弾性率、定ひずみESCRなどの機械物性に優れ、なおかつ結晶化時間が短く、成形ハイサイクル性に優れていたので、薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物としての総合評価は良好であった。
一方、本発明の要件の一部または全てを満たしていない比較例1〜5では、引張降伏強度、曲げ弾性率、定ひずみESCRなどの機械物性や結晶化時間の面で十分ではなく、かつ成形ハイサイクル性に欠けていたので、薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物としての総合評価は不良であった。
以上から、本発明のポリエチレン樹脂組成物を用いると、成形サイクルを下げずに、薄肉で剛性と低温での耐衝撃性とのバランスに優れた容器が成形できることが判る。
本発明によれば、剛性が高く、低温での耐衝撃性に優れた容器を提供でき、かつ高速成形可能なポリエチレン樹脂組成物を提供することが可能である。
従って、本発明のポリエチレン樹脂組成物は、このような特性を必要とする、容器、薄肉容器等の用途に使用でき、特に、乳飲料、コーヒー飲料、清涼飲料、茶系飲料などの飲料容器やヨーグルト、プリン、ゼリー等のデザート薄肉容器に好適に用いることができ、その意味で産業上の意義が高い。

Claims (5)

  1. (A)チーグラー触媒を用いて製造されたエチレン単独重合体又はエチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が30〜80g/10分であり、密度が0.940〜0.955g/cmであるエチレン系重合体(成分(A))25〜40重量%、及び(B)エチレン単独重合体又はエチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)が150g/10分以上500g/10分以下であり、密度が0.955g/cm以上0.975g/cm以下であるエチレン系重合体(成分(B))60〜75重量%からなるポリエチレン(I)96〜60重量%と、エチレン系重合体(II)4〜40重量%とを含有し、かつ、下記の特性(i)〜(iii)を満足する薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物であって、
    前記エチレン系重合体(II)は、Ti、Zr又はHfを含有するメタロセン触媒を用いて重合され、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.01〜10g/10分であり、密度が0.935〜0.960g/cmであり、温度190℃、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)とGPCにて測定される重量平均分子量(Mw)とが下記の式(1)の関係を満たすことを特徴とする薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物。
    式(1):log[HLMFR]≦−3.85log[Mw/10,000]+6.0
    特性(i):MFRが15〜50g/10分である。
    特性(ii):フローテスターにて測定できるN値が1.5〜2.0である。
    特性(iii):密度が0.955〜0.970g/cmである。
  2. さらに、下記の特性(iv)〜(viii)を満足することを特徴とする請求項1に記載の薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物。
    特性(iv):曲げ弾性率が850MPa以上である。
    特性(v):引張降伏強さが25MPa以上である。
    特性(vi):示差走査熱量計(DSC)にて測定される121.5℃での等温結晶化におけるピークトップ時間が80秒以下である。
    特性(vii):炭化水素揮発分が80ppm以下である。
    特性(viii):静摩擦係数が0.30以下である。
  3. 前記エチレン系重合体(II)は、シクロペンタジエニル環及び複素環式芳香族基を有するメタロセン触媒を用いて重合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物。
  4. 前記エチレン系重合体(II)は、シクロペンタジエニル環及びフルオレニル環を有するメタロセン触媒を用いて重合されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物。
  5. 前記ポリエチレン(I)は、多段重合により製造されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の薄肉容器用ポリエチレン樹脂組成物。
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