JP2016186045A - 薄肉射出成形用ポリエチレン及びそれを用いた成形品 - Google Patents

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圭一 吉本
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Abstract

【課題】成形性、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、特に樹脂の配向方向に平行な割れを引き起こす衝撃に対する衝撃強度と流動性のバランスに優れるポリエチレン及びそれを用いた成形品の提供。【解決手段】成分(A)が1〜50重量%及び成分(B)が99〜50重量%を含み、条件(1)〜(2)を満足する薄肉射出成形用ポリエチレン。成分(A):メタロセン触媒により重合された、MFRが0.1〜100g/10分、密度が0.860〜0.930g/cm3、GPCにて測定される分子量分布が1.0〜5.0であるポリエチレン。成分(B):MFRが10〜500g/10分、密度が0.950〜0.970g/cm3であるポリエチレン。条件(1):MFRが10〜100g/10分である。条件(2):密度が0.920を超え0.968g/cm3以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、薄肉射出成形用ポリエチレン及びそれを用いた成形品に関し、詳しくは、成形性、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、特に流動性と樹脂の配向方向に割れを引き起こす衝撃に対する衝撃強度のバランスに優れるポリエチレン組成物及びそれからなる容器に関する。
さらに詳しくは、射出成形で成形される薄肉のカップ型容器に好適な材料であり、低温、かつ、高速で成形ができ、剛性が高く、カップ型容器で起こりやすい樹脂の配向方向に平行な割れに対する耐衝撃性に優れた清涼飲料、乳飲料等の液体や乳製品等を収容する容器用ポリエチレン及びそれからなる容器に関する。
従来、射出成形で成形される薄肉のカップ型容器は、その形状から材料には、高い流動性が求められ、一般的には、メルトフローレート(MFR)が40g/10分程度の単段重合により製造された高密度ポリエチレン(HDPE)が使用されている。
近年、カップ型容器は、更なる軽量化に向け、これまで以上の容器薄肉化が要求されている。上記のMFRが40g/10分程度の高密度ポリエチレン(HDPE)を用いた容器の薄肉化を行う試みがなされているが、材料の流動性が不足し、ショートショットを起こし、また射出圧力も上昇し、成形が困難となっている。
一般に成形温度を上げて成形を行うと、ショートショットは起こりにくくなるが、成形温度と取り出し温度との温度差が大きくなり、製品収縮が大きく、不均一になり製品が変形してしまうという問題がある。また、ショートショット改良のため、MFRを60g/10分程度に上げた場合には、ショートショットによる不良品や射出圧力の上昇といった問題は低減されるが、実用物性が著しく低下し、実用上、使用することが難しい。
一方、2種類のポリエチレンを順次重合もしくはブレンドすることにより得られるポリエチレン樹脂組成物は、耐ストレスクラック性、常温での耐衝撃性等に優れており、コンテナー、ボトル、フィルム、キャップ、薄肉容器等に使用されている。
例えば、特許文献1(特開2006−160987号公報)には、2種類のポリエチレンを順次重合若しくはブレンドすることにより得られ、成形性、剛性と耐衝撃性とのバランス、低臭気性、食品安全性に優れ、かつ、低温で射出成形可能な高流動性を有した薄肉射出成形容器用ポリエチレンが開示されている。
また、特許文献2(特開2011−153171公報)には、成形性、剛性と低温での耐衝撃性とのバランスを改良した、薄肉容器用ポリエチレンが開示されている。
しかしながら、特許文献2に記載のポリエチレンは、シャルピー衝撃強度の試験法の試験片の厚みが薄肉のカップ型容器の厚みと比較して非常に厚く、必ずしも薄肉容器の耐衝撃性を改良するものとして適当というわけでない。
他方、薄肉カップ型容器は、樹脂成形時にラベルを金型内にあらかじめ挿入しておき、射出成形と同時にラベルの融着を行う、インモールド成形と呼ばれる成形方法で製造されることが多いが、インモールド成形で成形された容器は、容器側面のラベル端部が容器に対してノッチ効果を持つため、衝撃が加わった際にラベル端部に沿って容器の高さ方向にき裂を生じることがある。
特許文献3(特開2014−189705号公報)には、カップ型容器と同程度である厚み1mm以下の試験片を成形した際の引張衝撃強度のMD、TD比が特定の範囲であり、特定の性状を有し、スリップ剤を含有する、成形性、柔軟性、耐衝撃性、透明性に優れ、射出成形容器に好適に用いることが出来る軟質薄肉容器用ポリエチレン組成物が開示されている。
しかしながら、特許文献3に開示されている軟質薄肉容器用ポリエチレン組成物は成形性と耐衝撃性のバランスが良いものの、現状のカップ型容器と比べて非常に軟らかく、輸送時の積み重ね等による荷重で容易に変形するため現状の硬質カップ型容器をそのまま置き換えることが出来ず、流動性と剛性と耐衝撃性がより高いレベルでバランスした硬質カップ型容器用の材料が依然として求められている。
特開2006−160987号公報 特開2011−153171公報 特開2014−189705号公報
本発明の目的は、かかる従来技術の状況に鑑み、成形性、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、特に樹脂の配向方向に平行な割れを引き起こす衝撃に対する衝撃強度と流動性のバランスに優れるポリエチレン及びそれを用いた成形品を提供することにある。特に、射出成形で成形される薄肉のカップ型容器で起こりやすい配向方向に平行な割れに対する耐衝撃性に優れた清涼飲料、乳飲料等の液体や乳製品等を収容する容器に好適な材料及びそれから得られる容器を提供することにある。
本発明者等は、上記のような従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の物性を有するポリエチレン組成物が成形性、剛性、耐衝撃性のバランスに優れ、特に配向方向に平行な割れを引き起こす衝撃に対する衝撃強度と流動性のバランスに優れ、薄肉射出成形容器に好適に用いることが出来るという知見に達し、本発明を完成させるに至った。
本発明の第1の発明によれば、下記のポリエチレン成分(A)が1重量%以上50重量%以下、ポリエチレン成分(B)が50重量%以上99重量%以下含まれ、下記の条件(1)〜(2)を満足する薄肉射出成形用ポリエチレンが提供される。
ポリエチレン成分(A):メタロセン触媒により重合された、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分、密度が0.860〜0.930g/cm、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定される分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜5.0であるポリエチレン。
ポリエチレン成分(B):MFRが10〜500g/10分、密度が0.950〜0.970g/cmであるポリエチレン。
条件(1):MFR)が10〜100g/10分である。
条件(2):密度が0.920を超え0.968g/cm以下である。
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、さらに下記の条件(3)を満足する薄肉射出成形用ポリエチレンが提供される。
条件(3):幅10mm、厚み2mm、最長流路長2,000mmのアルキメデスのスパイラル流路を有する金型で、設定温度190℃、射出圧力75MPa、金型温度40℃で得られるスパイラルフロー長さが30〜200cmである。
本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、さらに下記の条件(4)を満足する薄肉射出成形用ポリエチレンが提供される。
条件(4):射出成形された厚み0.3mm以上1mm以下の平板から溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向を試験片の長さ方向として作成した試験片の23℃でのアイゾット衝撃強度が3kJ/m以上である。
本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、さらに下記の条件(5)を満足する薄肉射出成形用ポリエチレンが提供される。
条件(5):射出成形された厚み0.3mm以上1mm以下の平板から溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向を試験片の長さ方向として作成した試験片の−20℃での引張衝撃強度が30〜100kJ/mである。
本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明の薄肉射出成形用ポリエチレンを射出成形してなる成形品が提供される。
本発明の第5の発明によれば、第4の成形品が容器である成形品が提供される。
本発明によれば、成形性、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、特に樹脂の配向方向に平行な割れを引き起こす衝撃に対する衝撃強度と流動性のバランスに優れるポリエチレン及びそれを用いた成形品を製造することができる。特に、射出成形で成形される薄肉のカップ型容器で起こりやすい配向方向に平行な割れに対する耐衝撃性に優れた清涼飲料、乳飲料等の液体や乳製品等を収容する容器に好適な材料及びそれから得られる容器を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、下記のポリエチレン成分(A)及びポリエチレン成分(B)を含むものである。
1.薄肉射出成形用ポリエチレンの成分
1−1.ポリエチレン成分(A)
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンを構成するポリエチレン成分(A)は、メタロセン触媒により重合された、MFRが0.1〜100g/10分、密度が0.860〜0.930g/cm、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定される分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜5.0である。
ポリエチレン成分(A)は、メタロセン触媒により重合された重合体である。メタロセン触媒としては、シングルサイト系遷移金属化合物と助触媒成分からなるオレフィン重合触媒であるメタロセン触媒が挙げられ、シクロペンタジエン骨格を有する配位子が遷移金属に配位してなる錯体と助触媒とを組み合わせたものが例示される。具体的なメタロセン触媒としては、Ti、Zr、Hf、ランタニド系列などを含む遷移金属に、メチルシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、インデン等のシクロペンタジエン骨格を有する配位子が配位してなる錯体触媒と、助触媒として、アルミノキサン等の周期表第1族〜第3族元素の有機金属化合物とを、組み合わせたものや、これらの錯体触媒をシリカ等の担体に担持させた担持型のものが挙げられる。
中でも、特開昭60−35007号公報等に記載されているようないわゆるメタロセン錯体とアルモキサンとを含んでなるオレフィン重合用の触媒系や、特開平8−34809号公報、特開平8−127613号公報、特開平11−193306号公報、特表2002−515522号公報、等に記載されているようなアルモキサン以外の助触媒成分を使用する触媒系が好適に使用される。なお、ポリエチレン成分(A)の重合触媒は、本発明で規定した重合体の特性の範囲を満たせば、シングルサイト系触媒(公知刊行物:特開昭58−19309号公報、同59−95292号公報、同59−23011号公報、同60−35006号公報、同60−35007号公報、同60−35008号公報、同60−35009号公報、同61−130314号公報、特開平3−163088号公報参照)や、他の触媒を併用したものでも良い。
ポリエチレン成分(A)は、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が、0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、更に好ましくは0.9〜20g/10分、更に好適には1.0〜5.0g/10分である。MFRが0.1g/10分未満では、流動性が不十分となり、高速成形性が低下する傾向がある。一方、MFRが100g/10分より大きいと衝撃強度や耐ストレスクラック性等が不十分となる傾向がある。
本明細書において、MFRは、JIS K6922−2:1997に準じて測定される値である。
MFRは、ポリエチレンの製造において、エチレン重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、所望のものを得ることができる。即ち、例えば、エチレンとα−オレフィンとの重合温度を上げることにより、分子量を下げた結果として、MFRを大きくすることができ、重合温度を下げることにより、分子量を上げた結果として、MFRを小さくすることができる。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合反応において、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を増加させることにより、分子量を下げた結果として、MFRを大きくすることができ、共存させる水素量(連鎖移動剤量)を減少させることにより、分子量を上げた結果として、MFRを小さくすることができる。
ポリエチレン成分(A)は、密度が0.860〜0.930g/cm、好ましくは0.865〜0.925g/cm、更に好ましくは0.870〜0.915g/cmである。密度が0.860g/cm未満では、十分な薄肉射出成形容器の剛性が得られなくなる傾向があり、密度が0.930g/cmを超えると、十分な薄肉射出成形容器の強度が得られなくなる傾向がある。
本明細書において、密度は、JIS K6922−1,2:1997に準じて、測定される値である。
密度は、エチレンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることにより、所望のものを得ることができ、α−オレフィンの量を増加させると小さくすることができる。
ポリエチレン成分(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定される分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜5.0、好ましくは1.2〜4.8、更に好ましくは1.5〜4.5である。Mw/Mnが5.0より大きいと耐衝撃性や耐ストレスクラック性等が不十分となる傾向がある。
本明細書において、Mw/Mnは、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)から計算される値をいう。
Mw/Mnは、主に、重合触媒及び重合条件を選択することにより所定の範囲とすることができる。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量の測定は以下の方法で行うことができる。
即ち、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
装置:WATERS社製150C
カラム:昭和電工社製AD80M/Sを3本
測定温度:140℃
濃度:1mg/1ml
溶媒:o−ジクロロベンゼン
なお、分子量の計算及びカラムの較正は、以下の方法に準拠して行う。
GPCクロマトデータは、1点/秒の頻度でコンピュータに取り込み、森定雄著・共立出版社発行の「サイズ排除クロマトグラフィー」第4章の記載に従ってデータ処理を行い、Mw値を計算する。
カラムの較正は、昭和電工社製単分散ポリスチレン(S−7300、S−3900、S−1950、S―1460、S−1010、S−565、S−152、S−66.0、S−28.5、S−5.05)、n−エイコサン及びn−テトラコンタンの各0.2mg/ml溶液を用いて、一連の単分散ポリスチレンの測定を行い、それらの溶出ピーク時間と分子量の対数の関係を4次多項式でフィットしたものを較正曲線とする。
なお、ポリスチレンの分子量(MPS)は、次式を用いてポリエチレンの分子量(MPE)に換算する。MPE=0.468×MPS
ポリエチレン成分(A)のエチレン系重合体は、エチレンの単独重合、又はエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等との共重合により得ることができる。また、改質を目的とする場合のジエンとの共重合も可能である。このとき使用されるジエン化合物の例としては、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。なお、重合の際のコモノマー含有率は、任意に選択することができるが、例えば、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合の場合には、エチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は、0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%である。
また、ポリエチレン成分(A)の重合体は、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法などの製造プロセスにより製造することができ、好ましくは気相重合法が望ましい。エチレン系重合体の重合条件のうち重合温度としては、0〜300℃の範囲から選択することができる。重合圧力は、大気圧〜約100kg/cmの範囲から選択することができる。
1−2.ポリエチレン成分(B)
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンを構成するポリエチレン成分(B)は、MFRが10〜500g/10分、密度が0.950〜0.970g/cmである。
ポリエチレン成分(B)は、MFRが、10〜500g/10分、好ましくは20〜300g/10分、更に好ましくは30〜200g/10分である。MFRが10g/10分未満では、流動性が不十分となり、高速成形性が低下する傾向がある。一方、MFRが500g/10分より大きいと衝撃強度や耐ストレスクラック性等が不十分となる傾向がある。
本明細書において、MFRは、JIS K6922−2:1997に準じて測定される値である。
MFRは、上記と同様の方法により制御することができる。
ポリエチレン成分(B)は、密度が0.950〜0.970g/cm、好ましくは0.952〜0.968g/cm、更に好ましくは0.955〜0.965である。密度が0.950g/cm未満では、十分な薄肉射出成形容器の剛性が得られなくなる傾向があり、0.970g/cmを超えると、十分な薄肉射出成形容器の強度が得られなくなる傾向がある。
ポリエチレン成分(B)の重合体は、好ましくはエチレンの単独重合、又はエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等との共重合により得ることができる。また、改質を目的とする場合のジエンとの共重合も可能である。このとき使用されるジエン化合物の例としては、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。なお、重合の際のコモノマー含有率は、任意に選択することができるが、例えば、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合の場合には、エチレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量は、0〜40モル%、好ましくは0〜30モル%である。
ポリエチレン成分(B)の重合触媒は特に限定されないが、本発明の範囲におけるMFRと密度のバランスから、好ましくはメタロセン触媒又はチーグラー系触媒が用いられる。
チーグラー系触媒としては、遷移金属化合物と典型金属のアルキル化合物等の組み合わせからなるオレフィン配位重合触媒としてのチーグラー・ナッタ触媒、とりわけマグネシウム化合物にチタニウム化合物を担持させた固体触媒成分と有機アルミニウム化合物を組み合わせたいわゆるMg−Ti系チーグラー触媒(例えば、「触媒活用大辞典;2004年工業調査会発行」、「出願系統図−オレフィン重合触媒の変遷−;1995年発明協会発行」等を参照されたい。)は安価で高活性かつ重合プロセス適性に優れることから好適である。
中でも、特開昭54−142192号公報、特開昭54−148093号公報に記載されているような不活性担体物質担持Mg/Ti触媒、例えば、無水MgClのテトラヒドロフラン溶液とTiClあるいはTiClの均一混合液を、あらかじめトリエチルアルミニウムで処理した多孔質シリカに含浸して乾燥乾固して得られる触媒が挙げられる。
また、特開昭63−117019号公報に記載されているような、有機アルミニウムの存在下でMg/Ti触媒にオレフィン予備重合を施して得られた触媒、例えば、MgClとTi(OnBu)とメチルハイドロジエンポリシロキサンの反応で得られた固体成分にTiClとメチルハイドロジエンポリシロキサンの混合液を導入して得られた触媒をトリエチルアルミニウム存在下、エチレン予備重合して得られた予備重合触媒、等が挙げられる。
また、特開昭60−195108号公報に記載されているようなマグネシウム・アルミニウム複合体と4価のチタン化合物とを反応させて得られた低原子価のチタン原子を含有する触媒成分と有機アルミニウム化合物とを組み合わせたオレフィン重合用触媒、特開昭56−61406号公報等に記載されているようなマグネシウムエトキシド、トリn−ブトキシモノクロルチタン、n−ブタノールの均一混合物にエチルアルミニウムセスキクロライド等を滴下して得られる固体状触媒、特開2001−139635号公報等に記載されているようなマグネシウム、ハロゲン、チタン及び電子供与体を含むオレフィン重合用固体触媒、等が挙げられる。
また、ポリエチレン成分(B)の重合体は、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法などの製造プロセスにより製造することができ、好ましくはスラリー重合法が望ましい。エチレン系重合体の重合条件のうち重合温度としては、0〜300℃の範囲から選択することができる。重合圧力は、大気圧〜約100kg/cmの範囲から選択することができる。
1−3.ポリエチレン成分(A)及びポリエチレン成分(B)の組成割合
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、ポリエチレン成分(A)1重量%以上50重量%以下と、ポリエチレン成分(B)50重量%以上99重量%以下とを含有し、
好ましくはポリエチレン成分(A)2重量%以上45重量%以下と、ポリエチレン成分(B)55重量%以上98重量%以下とを含有し、
更に好ましくはポリエチレン成分(A)を5重量%以上30重量%以下と、ポリエチレン成分(B)70重量%以上95重量%以下とを含有することが好ましい。
ポリエチレン成分(A)が1重量%より少ないと、十分な薄肉射出成形容器の強度が得られない。一方、ポリエチレン成分(A)が50重量%を超えると、十分な薄肉射出成形容器の剛性が得られない。
また、ポリエチレン成分(B)が50重量%未満では、十分な薄肉射出成形容器の剛性が得られない。一方、ポリエチレン成分(B)が99重量%よりも多いと、十分な薄肉射出成形容器の強度が得られない。
2.薄肉射出成形用ポリエチレンの製造方法
薄肉射出成形用ポリエチレンは、複数の成分により構成することが可能である。ポリエチレン成分(A)及びポリエチレン成分(B)は、別々の反応器で重合された重合体を混合してもよいし、1種類の触媒を用いて多段重合反応器にて連続的に重合された重合体でもよく、複数種類の触媒を用いて多段重合反応器にて製造された重合体でもよい。
上記の薄肉射出成形用ポリエチレンは、常法に従い、ペレタイザーやホモジナイザー等による機械的な溶融混合によりペレット化した後、各種成形機により成形を行って所望の成形品とすることができる。
また、上記の方法により得られる薄肉射出成形用ポリエチレンには、常法に従い、他のオレフィン系重合体やゴム等のほか、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色顔料、架橋剤、発泡剤、無機又は有機充填剤、難燃剤等の公知の添加剤を配合することができる。
添加剤として、例えば、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を1種又は2種以上、適宜併用することができる。充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、金属粉(アルミニウム、銅、鉄、鉛など)、珪石、珪藻土、アルミナ、石膏、マイカ、クレー、アスベスト、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタン等が使用可能であり、なかでも炭酸カルシウム、タルク及びマイカ等を用いるのが好ましい。いずれの場合でも、上記ポリエチレン樹脂組成物に、必要に応じ各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。
3.薄肉射出成形用ポリエチレンの特性
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、下記の条件(1)〜(2)を、好ましくは更に条件(3)〜(7)を満足する。
3−1.条件(1):MFR
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、MFRが10〜100g/10分、好ましくは15〜95g/10分、更に好ましくは20〜90g/10分である。
MFRが10g/10分未満では、流動性が不十分となり、高速成形性が低下する傾向がある。一方、MFRが100g/10分より大きいと衝撃強度や耐ストレスクラック性等が不十分となる傾向がある。
本明細書において、MFRは、JIS K6922−2:1997に準じて測定される値である。
MFRは、上記と同様の方法により制御することができるし、組み合わせるポリエチレン成分(A)及びポリエチレン成分(B)のMFR及び配合割合により調整することが可能である。
3−2.条件(2):密度
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、密度が0.920を超え0.968g/cm以下であり、好ましくは0.930g/cm〜0.965g/cmである。密度が0.920g/cm以下では剛性が劣り、容器が座屈、変形しやすく好ましくない。密度が0.968g/cmを超えると、衝撃強度の低下が著しく、剛性と衝撃強度、成形性のバランスをとることが難しくなるため好ましくない。
ここで、密度は、JIS−K6922−1、2に準拠して測定する値である。
密度は、エチレンと共重合させるコモノマーの種類や量を変化させることにより、所望のものを得ることができ、α−オレフィンの量を増加させると小さくすることができるし、組み合せるポリエチレン成分(A)とポリエチレン成分(B)の密度及び配合割合により調整することが可能である。
3−3.条件(3):スパイラルフロー
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、幅10mm、厚み2mm、最長流路長2,000mmのアルキメデスのスパイラル流路を有する金型で、設定温度190℃、射出圧力75MPa、金型温度40℃で得られるスパイラルフロー長さが、好ましくは、30〜200cmであり、更に好ましくは40〜200cm、更に好適には50〜150cmである。スパイラルフローが30cm未満では、薄肉成形品を低温で高速成形することが難しい。スパイラルフローが200cmを越えると、衝撃強度の低下が著しく、剛性と衝撃強度、成形性のバランスをとることが難しくなるため好ましくない。
ここで、スパイラルフローは、ファナック社製ROBOSHOT S−2000i 100B射出成形機を用い、設定温度190℃、射出圧力75MPa、保持圧力75MPa、射出時間5秒、冷却時間10秒、保圧切替え位置7mmの条件で、幅10mm、厚み2mm、最長流路長2,000mmのスパイラル流路を有する金型を用い、金型温度40℃で得られる試料の最長流動長を測定する値である。
スパイラルフローは、薄肉射出成形用ポリエチレンのMFRを大きくすると、大きくすることができる。
3−4.条件(4):アイゾット衝撃強度
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、射出成形された厚み0.3mm以上1mm以下の平板から溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向を試験片の長さ方向として作成した試験片の23℃でのアイゾット衝撃強度が、好ましくは3kJ/m以上であり、更に好ましくは5〜10kJ/mである。アイゾット衝撃強度が3kJ/m未満では、十分な薄肉射出成形容器の強度が得られない。アイゾット衝撃強度が10kJ/mを越えると、剛性と衝撃強度、成形性のバランスをとることが難しくなる。
ここで、アイゾット衝撃強度は、JIS K7110:1999に準じて測定され、ファナック社製ROBOSHOT S−2000i 100B射出成形機を用い、設定温度190℃、金型温度40℃、射出速度50mm/秒、冷却時間10秒、保圧切替え位置5.5mmの条件で、120×120×1mmの平板を成形し、試験片の長さ方向が溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向になる向きにJIS−K7110記載の形状の試験片を作成し、東洋精機社製アイゾット衝撃試験機を使用して測定することができる。ただし、試験片の厚さについては0.3mm以上1mm以下の厚みで行う。これは、射出平板の厚みが1mmを超えると、樹脂の配向が緩和されて流れ方向と垂直方向との強度バランスが変化してしまい、薄肉射出成形容器の配向状態と大きく異なるために、薄肉射出成形容器の強度の指標として不適当になるためである。
射出成形された厚み0.3mm以上1mm以下の平板から溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向を試験片の長さ方向として作成した試験片の23℃でのアイゾット衝撃強度は、容器の高さ方向に割れが生じることが多い薄肉射出成形容器の衝撃強度と、良い相関があると考えられる。これは、溶融樹脂の流れ方向に対する割れの向きが、薄肉射出成形容器に割れが生じる向きと同じであるためと考えられる。
射出成形された厚み0.3mm以上1mm以下の平板から溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向を試験片の長さ方向として作成した試験片の23℃でのアイゾット衝撃強度は、分子の配向が大きいほど低下し、分子の配向は成形時の樹脂流動や冷却速度に大きく影響され、樹脂流動や冷却速度は厚みに大きく影響される。
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンのアイゾット衝撃強度は、ポリエチレン成分(A)及びポリエチレン成分(B)の物性及び配合割合によって制御可能であるが、好ましくは、ポリエチレン成分(B)の密度を低くして、特定のMFRを選定することが好ましい。さらに、ポリエチレン成分(A)として、メタロセン触媒を使用して重合されたポリエチレンを使用することが好ましい。メタロセン触媒を使用して重合されたポリエチレンを使用することにより、ポリエチレンの溶融樹脂の流れ方向の強度と垂直方向の強度が等方的になる傾向があると推定され、溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向を試験片の長さ方向として作成した試験片のアイゾット衝撃強度が改善されるものと推定される。
3−5.条件(5):引張衝撃強度
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、射出成形された厚み0.3mm以上1mm以下の平板から溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向を試験片の長さ方向として作成した試験片の−20℃での引張衝撃強度が、好ましくは、30〜100kJ/mであり、更に好ましくは35〜60kJ/mである。−20℃での引張衝撃強度が30kJ/m未満では、十分な薄肉射出成形容器の強度が得られない。−20℃での引張衝撃強度が100kJ/mを越えると、剛性と衝撃強度、成形性のバランスをとることが難しくなる。
−20℃での引張衝撃強度は、JIS K7111−1:2012に準じて測定され、厚み1mmの射出平板中央部より溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向を試験片の長さ方向として作成した試験片を使用し、ここで、引張衝撃強度は、ファナック社製ROBOSHOT S−2000i 100B射出成形機を用い、設定温度190℃、金型温度40℃、射出速度50mm/秒、冷却時間10秒、保圧切替え位置5.5mmの条件で、120×120×1mmの平板を成形し、試験片の長さ方向が溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向になる向きにASTM D1822−06タイプS型試験片の形状に打ち抜き、東洋精機製引張衝撃試験機を使用して測定することが出来る。試験片の厚さについては、薄肉射出成形容器と近い配向状態を得るため、0.3mm以上1mm以下の厚みで行う。
−20℃での引張衝撃強度は、エチレン系重合体の分子量を上げるか、分子量分布を狭くすることにより、大きくすることができる。
3−6.条件(6):アイゾット衝撃強度とスパイラルフローとの関係
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、厚み0.3mm以上1mmの射出平板中央部より溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向を試験片の長さ方向として作成した試験片の23℃でのアイゾット衝撃強度と、幅10mm、厚み2mm、最長流路長2,000mmのアルキメデスのスパイラル流路を有する金型で、設定温度190℃、射出圧力75MPa、金型温度40℃で得られるスパイラルフロー長さは下記式を満たすことが好ましい。
アイゾット衝撃強度≧−0.605×スパイラルフロー長さ+43 式(1)
この式を満たさないと、十分な剛性、衝撃強度、成形性のバランスが得られない傾向がある。
3−7.条件(7):カップ落下高さとスパイラルフローとの関係
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、高さ109.5mm、底部外径49.0mm、上部外径63.1mm、厚み0.85mmのカップ形状金型を用いて成形したカップを、200mlの純水を入れて上部をフィルム状蓋材でヒートシールした後、常温で底部を下にして0mmの高さから100mm刻みで高さを増しながらコンクリートブロックへ落下させた際に割れが発生する落下高さと、幅10mm、厚み2mm、最長流路長2000mmのアルキメデスのスパイラル流路を有する金型で、設定温度190℃、射出圧力75MPa、金型温度40℃で得られるスパイラルフロー長さが下記式を満たすことが好ましい。
カップ落下高さ>−9.08×スパイラルフロー長さ+630 式(2)
この式を満たさない場合、十分な剛性、衝撃強度、成形性のバランスが得られない傾向がある。
4.薄肉射出成形用ポリエチレンの成形方法及び用途
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、常法に従い、ペレタイザーやホモジナイザー等による機械的な溶融混合によりペレット化した後、各種成形機により成形を行って所望の成形品とすることができる。
また、上記の方法により得られる薄肉射出成形用ポリエチレンは、性能を損なわない範囲で、常法に従い、他のオレフィン系重合体やゴム等のほか、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色顔料、架橋剤、発泡剤、無機又は有機充填剤、難燃剤等の公知の添加剤を配合することができる。
添加剤として、例えば、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を1種又は2種以上、適宜併用することができる。また、充填材(剤)としては、炭酸カルシウム、タルク、金属粉(アルミニウム、銅、鉄、鉛など)、珪石、珪藻土、アルミナ、石膏、マイカ、クレー、アスベスト、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタン等が使用可能であり、なかでも炭酸カルシウム、タルク及びマイカ等を用いるのが好ましい。いずれの場合でも、本発明のポリエチレンに、必要に応じ、各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。ただし、食品容器向けに使用する場合は、添加剤の使用は、極力少なくする方が容器自体の味・臭い、及び内容物の味・臭いに対し影響が少なくなるため、好ましい。
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、主に射出成形法や圧縮成形法などにより成形され、好適には射出成形法により、容器本体などの各種成形品が得られる。
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、各種特性を満足するものであるので、成形性、高流動性、臭い、耐衝撃性、食品安全性、剛性などに優れ、なおかつ耐熱性に優れる。従って、このような特性を必要とする容器などの用途に適する。特に、流動性見合いのアイゾット衝撃強度が相対的に大きく、成形性及び耐衝撃性のバランスが極めて優れている。
また、本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、飲料カップなどの薄肉射出成形容器用に最適に用いられ、当該容器の厚さが通常1mm以下の容器において好適に用いられる。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限りこれらの実施例によって制約を受けるものではない。なお、実施例、比較例で用いたポリエチレン組成物の物性は、以下の方法で測定及び評価した。
1.測定方法
(1)MFR:
JIS K6922−2:1997に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgにて測定した。
(2)密度:
JIS K6922−1,2:1997に準拠して測定した。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定される分子量分布(Mw/Mn):
下記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
装置:WATERS社製150C
カラム:昭和電工社製AD80M/Sを3本
測定温度:140℃
濃度:1mg/1ml
溶媒:o−ジクロロベンゼン
なお、分子量の計算及びカラムの較正は、以下の方法に準拠して行った。
GPCクロマトデータは、1点/秒の頻度でコンピュータに取り込み、森定雄著・共立出版社発行の「サイズ排除クロマトグラフィー」第4章の記載に従ってデータ処理を行い、Mw値を計算した。
カラムの較正は、昭和電工社製単分散ポリスチレン(S−7300、S−3900、S−1950、S−1460、S−1010、S−565、S−152、S−66.0、S−28.5、S−5.05)、n−エイコサン及びn−テトラコンタンの各0.2mg/ml溶液を用いて、一連の単分散ポリスチレンの測定を行い、それらの溶出ピーク時間と分子量の対数の関係を4次多項式でフィットしたものを較正曲線とした。
なお、ポリスチレンの分子量(MPS)は、次式を用いてポリエチレンの分子量(MPE)に換算した。MPE=0.468×MPS
(4)スパイラルフロー長さ:
ファナック社製ROBOSHOT S−2000i 100B射出成形機を用い、設定温度190℃、金型温度40℃、射出速度10mm/秒、射出時間5秒、冷却時間10秒、保圧切替え位置7mm、射出圧力75MPaの条件で、ランナー側ゲート幅4mm、キャビティ側ゲート幅5mm、幅10mm、厚み2mm、最長流路長2,000mmのアルキメデスのスパイラル流路を有する金型を用い、スパイラルフロー長さを測定した。
(5)曲げ弾性率:
試験片として210℃で射出成形した4×10×80mmの板状体を用い、JIS−K6922−2:1997年に準拠して測定した。
(6)23℃でのアイゾット衝撃強度:
JIS K7110:1999に準じて測定した。ファナック社製ROBOSHOT S−2000i 100B射出成形機を用い、設定温度190℃、金型温度40℃、射出速度50mm/秒、冷却時間10秒、保圧切替え位置5.5mmの条件で、120×120×1mmの平板を成形し、試験片の長さ方向が溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向になる向きにJIS−K7110記載の形状の試験片を作成し、東洋精機社製アイゾット衝撃試験機を使用して測定した。ただし、試験片の厚さについては0.3mm以上1mm以下の厚みで行った。
(7)−20℃での引張衝撃強度:
JIS K7111−1:2012に準じて測定し、厚み1mmの射出平板中央部より溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向を試験片の長さ方向として作成した試験片を使用した。ここで、引張衝撃強度は、ファナック社製ROBOSHOT S−2000i 100B射出成形機を用い、設定温度190℃、金型温度40℃、射出速度50mm/秒、冷却時間10秒、保圧切替え位置5.5mmの条件で、120×120×1mmの平板を成形し、試験片の長さ方向が溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向になる向きにASTM D1822−06タイプS型試験片の形状に打ち抜いて作成した。温度23℃、相対湿度50%で16時間以上状態調節の後、−20℃の恒温槽中に1時間以上静置して試験片の温度を−20℃とし、取り出すと同時に、東洋精機製引張衝撃試験機を使用して測定した。試験片の厚さについては、薄肉射出成形容器と近い配向状態を得るため、0.3mm以上1mm以下の厚みで行った。
(8)カップ落下高さ:
高さ109.5mm、底部外径49.0mm、上部外径63.1mm、厚み0.85mmのカップ形状金型を用いて成形したカップを、200mlの純水を入れて上部をフィルム状蓋材でヒートシールした後、常温で底部を下にして0mmの高さから100mm刻みで高さを増しながらコンクリートブロックへ落下させた際に割れが発生する落下高さを測定した。
(9)射出成形性:
上記のスパイラルフロー長さの測定の結果、スパイラルフロー長さが30cm以上のものを射出成形性は良好である「○」とし、30cm未満のものを射出成形性は良好でない「×」とした。
(10)射出成形カップ剛性:
上記の曲げ弾性率の測定の結果、曲げ弾性率が50MPa以上のものを射出成形カップ剛性は良好である「○」とし、50MPa未満のものを射出成形カップ剛性は良好でない「×」とした。
(11)射出成形カップ耐衝撃性:
上記のスパイラルフロー長さ及びアイゾット衝撃強さの測定の結果、下記の式(1)に適合するものを射出成形カップ耐衝撃性は良好である「○」とし、下記の式(1)に適合しないものを射出成形カップ耐衝撃性は良好でない「×」とした。
アイゾット衝撃強度≧−0.605×スパイラルフロー長さ+43 式(1)
また、上記のスパイラルフロー長さ及びカップ落下高さの測定の結果、下記の式(2)に適合するものを射出成形カップ耐衝撃性は良好である「○」とし、下記の式(2)に適合しないものを射出成形カップ耐衝撃性は良好でない「×」とした。
カップ落下高さ>−9.08×スパイラルフロー長さ+630 式(2)
なお、式(1)又は式(2)のいずれか一方が適合しても他方が適合しない場合は、良好でない「×」とした。
(12)総合評価:
射出成形性、射出成形カップ剛性及び射出成形カップ耐衝撃性の評価がいずれも「○」であるものを良好である「○」とし、いずれかが「×」であるものを良好でない「×」とした。
2.使用したポリエチレン
ポリエチレン成分(A)として、以下のポリエチレンを使用した。
A−1:メタロセン触媒を用いて重合された、MFRが2g/10分、密度が0.880g/cmのエチレン・1−ヘキセン共重合体。
A−2:メタロセン触媒を用いて重合された、MFRが1g/10分、密度が0.906g/cmのエチレン・1−ヘキセン共重合体。
A−3:メタロセン触媒を用いて重合された、MFRが2g/10分、密度が0.898g/cmのエチレン・1−ヘキセン共重合体。
A−4:チーグラー触媒を用いて重合された、MFRが3g/10分、密度が0.948g/cmのエチレン・1−ブテン共重合体。
A−5:メタロセン触媒を用いて重合された、MFRが30g/10分、密度が0.880g/cmのエチレン・1−ヘキセン共重合体。
ポリエチレン成分(B)として、以下のポリエチレンを使用した。
B−1:チーグラー触媒を用いて重合された、MFRが50g/10分、密度が0.967g/cmのエチレン重合体。
B−2:チーグラー触媒を用いて重合された、MFRが100/10分、密度が0.969g/cmのエチレン重合体。
B−3:チーグラー触媒を用いて重合された、MFRが42g/10分、密度が0.960g/cmのエチレン・1−ブテン共重合体。
B−4:チーグラー触媒を用いて重合された、MFRが160g/10分、密度が0.969g/cmのエチレン重合体。
B−5:高圧法で重合された、MFRが45g/10分、密度が0.921g/cmのエチレン重合体。
3.実施例及び比較例
(実施例1〜3)
表1に示すポリエチレン成分(A)及びポリエチレン成分(B)をユニオン・プラスチック社製V.USV50−28型押出機を使用してブレンドし、ペレタイザーで造粒した後、その物性を測定した。
得られた薄肉射出成形用ポリエチレンは、表1に示されるように、カップの剛性、耐衝撃性、射出成形性に優れる材料であった。
(比較例1〜3)
表1に示すポリエチレン成分(A)及びポリエチレン成分(B)を実施例1と同様にブレンドし、ペレタイザーで造流した後、その物性を測定した。
得られたポリエチレン組成物は、表1に示されるようにカップの剛性、耐衝撃性、射出成形性のいずれかに劣る材料であった。
Figure 2016186045
[評価]
以上のとおり、表1に示す結果から、実施例1〜3と比較例1〜3とを対比すると、本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンの特定要件を満たす実施例1〜3は、射出成形性、剛性、耐衝撃性が優れていた。
比較例1のポリエチレンは、メタロセン触媒により重合されたポリエチレン成分を含まないため、射出成形カップ剛性及び射出成形カップ耐衝撃性が劣っていた。
比較例2のポリエチレンは、ポリエチレン成分(A)が、メタロセン触媒により重合されたものではなく、かつ密度が大きいため、射出成形カップ耐衝撃性が劣っていた。
比較例3のポリエチレは、ポリエチレン成分(B)の密度が小さいため、薄肉射出成形用ポリエチレン全体としても密度が小さく、射出成形カップ剛性が劣っていた。
本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、剛性、射出成形性、耐衝撃性、が良好であるため、清涼飲料、乳飲料等の液体や乳製品等を収納することができる薄肉容器、特にカップ型容器等で利用可能性が高い。
そして、本発明の薄肉射出成形用ポリエチレンは、物性及び外観が優れた成形体を得ることが可能であり、高度な物性及び外観が要求される分野での用途等に好適に使用できるため、産業上大いに有用である。

Claims (6)

  1. 下記のポリエチレン成分(A)が1重量%以上50重量%以下、ポリエチレン成分(B)が50重量%以上99重量%以下含まれ、下記の条件(1)〜(2)を満足する薄肉射出成形用ポリエチレン。
    ポリエチレン成分(A):メタロセン触媒により重合された、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分、密度が0.860〜0.930g/cm、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定される分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜5.0であるポリエチレン。
    ポリエチレン成分(B):MFRが10〜500g/10分、密度が0.950〜0.970g/cmであるポリエチレン。
    条件(1):MFRが10〜100g/10分である。
    条件(2):密度が0.920を超え0.968g/cm以下である。
  2. さらに下記の条件(3)を満足する請求項1に記載の薄肉射出成形用ポリエチレン。
    条件(3):幅10mm、厚み2mm、最長流路長2,000mmのアルキメデスのスパイラル流路を有する金型で、設定温度190℃、射出圧力75MPa、金型温度40℃で得られるスパイラルフロー長さが30〜200cmである。
  3. さらに下記の条件(4)を満足する請求項1又は2に記載の薄肉射出成形用ポリエチレン。
    条件(4):射出成形された厚み0.3mm以上1mm以下の平板から溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向を試験片の長さ方向として作成した試験片の23℃でのアイゾット衝撃強度が3kJ/m以上である。
  4. さらに下記の条件(5)満足する請求項1〜3のいずれかに記載の薄肉射出成形用ポリエチレン。
    条件(5):射出成形された厚み0.3mm以上1mm以下の平板から溶融樹脂の流れ方向に対して垂直の方向を試験片の長さ方向として作成した試験片の−20℃での引張衝撃強度が30〜100kJ/mである。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄肉射出成形用ポリエチレンを射出成形してなる成形品。
  6. 成形品が、容器であることを特徴とする請求項5に記載の成形品。
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