(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る型締装置1を示す、一部に断面図を含む側面図である。なお、図1は、型締装置1の型開状態を示すとともに、最大型厚の金型が取り付けられている状態を示している。
型締装置1は、ベース3と、ベース3上に固定された固定ダイプレート5Fと、ベース3上において移動可能な移動ダイプレート5Mと、固定ダイプレート5F及び移動ダイプレート5Mに掛架される下部タイバー7L及び上部タイバー7Uとを有している。なお、以下では、固定ダイプレート5F及び移動ダイプレート5Mを単に「ダイプレート5」といい、これらを区別しないことがある。また、以下、下部タイバー7L及び上部タイバー7Uを単に「タイバー7」といい、これらを区別しないことがある。
固定ダイプレート5Fは、固定金型101Fを保持している。移動ダイプレート5Mは、移動金型101Mを保持している。なお、以下では、固定金型101F及び移動金型101Mを単に「金型101」といい、これらを区別しないことがある。2つのダイプレート5は互いに対向して配置されている。なお、以下では、ダイプレート5の金型101が取り付けられる面(金型取付面)とは反対側を背面側ということがある。
移動ダイプレート5Mは、例えば、ベース3上に設けられたスライダ9に載置されることより、固定ダイプレート5Fに対して近接又は離間する方向(型開閉方向、図1の紙面左右方向)に移動可能である。金型101は、移動ダイプレート5Mの型開閉方向への移動により、型開閉がなされる。なお、ベース3には、移動ダイプレート5Mに対して背面側から当接し、移動ダイプレート5Mの型開き方向への駆動限を規定する位置決め部材11が固定されている。
タイバー7は、型開閉方向に延びている。タイバー7の断面は例えば円形である。タイバー7は、例えば、4本設けられ、型開閉方向に見て金型101に対して概ね左右方向及び上下方向において対称に配置されている。すなわち、下部タイバー7L及び上部タイバー7Uは、2本ずつ設けられている。
型締装置1は、移動ダイプレート5Mを型開閉方向へ駆動する駆動力を生じる型開閉シリンダ13を有している。型開閉シリンダ13は、油圧シリンダにより構成されており、シリンダチューブ13aと、シリンダチューブ13aに収容されたピストン13bと、ピストン13bに固定され、シリンダチューブ13aから延出するピストンロッド13cとを有している。シリンダチューブ13aは、移動ダイプレート5Mに固定されている。ピストン13bは、シリンダチューブ13a内をストロークSで摺動可能である。ピストンロッド13cは、後述する型厚調整装置15を介して下部タイバー7Lの端部に固定されている。従って、下部タイバー7Lを固定ダイプレート5Fに係合させた状態で、型開閉シリンダ13を駆動して、下部タイバー7Lと移動ダイプレート5Mとを相対移動させると、移動ダイプレート5Mは固定ダイプレート5Fに対して型開閉方向へ移動する。
型締装置1は、金型101を型締めする型締力を生じる型締シリンダ17を有している。型締シリンダ17は、固定ダイプレート5Fに設けられたシリンダ室19と、シリンダ室19に一部が収容されたピストン部材21とにより構成された油圧シリンダである。シリンダ室19は、タイバー7が貫通する固定ダイプレート5Fの貫通穴の一部を拡径することにより構成されている。ピストン部材21は、タイバー7が挿通され、固定ダイプレート5Fの貫通穴に挿通される円筒状部分と、当該円筒状部分を拡径して形成され、シリンダ室19に収容されたピストン21aとを有している。ピストン21aは、シリンダ室19を型開閉方向において2つのシリンダ室に区画している。区画された2つのシリンダ室に選択的に作動油が供給されることにより、ピストン21aはシリンダ室19内を摺動する。従って、型接触し(図3参照)、タイバー7を移動ダイプレート5M及びピストン部材21に係合させた状態で、ピストン部材21を固定ダイプレート5Fの背後側へ移動させるように型締シリンダ17を駆動すると、タイバー7が伸長する。そして、伸長量に応じた力が金型101に加えられる。
以上のように、タイバー7は、型開閉シリンダ13のピストンロッド13c及び固定ダイプレート5F(厳密にはピストン部材21)に係合されることにより型開閉に利用され、ピストン21a(厳密にはピストン部材21)及び移動ダイプレート5Mに係合されることにより、型締めに利用される。型締装置1は、上部タイバー7Uとピストン部材21とを係合させる固定側ハーフナット23と、下部タイバー7Lとピストン部材21とを係合させる調整片25と、上部タイバー7Uと移動ダイプレート5Mとを係合させる上部移動側ハーフナット27Uと、下部タイバー7Lと移動ダイプレート5Mとを係合させる下部移動側ハーフナット27Lとを有している。なお、以下では、上部移動側ハーフナット27U及び下部移動側ハーフナット27Lを単に「移動側ハーフナット27」といい、両者を区別しないことがある。
固定側ハーフナット23は、ピストン部材21に対して型開閉方向において係合しており、ピストン部材21とともに型開閉方向へ移動可能である。また、固定側ハーフナット23は、開閉することにより、上部タイバー7Uの端部に形成された固定側被係合部7aに係合可能である。固定側ハーフナット23の内周面及び固定側被係合部7aの外周面には、それぞれ、上部タイバー7Uの長手方向に配列された複数の環状溝が形成されており、固定側ハーフナット23及び固定側被係合部7aは、噛み合うことにより係合する。なお、複数の環状溝は、互いに独立していても、ネジ溝状に連続していてもよい。
固定側ハーフナット23及び固定側被係合部7aは、一方の複数の環状溝と、他方の複数の環状溝間の突条とが、上部タイバー7Uの長手方向において同一位置にあるときに噛み合う。従って、固定側ハーフナット23及び固定側被係合部7aは、上部タイバー7Uの長手方向における相対位置を調整する噛合い調整がなされなければならない。噛合い調整は、1ピッチ(複数の環状溝のピッチP)以下の相対移動により実行可能である。
調整片25は、ピストン部材21の端部と、下部タイバー7Lの端部に設けられたフランジ7fとの間に挟まれ、また、ネジなどによりピストン部材21及びフランジ7fに固定されている。下部タイバー7Lのピストン部材21に対する下部タイバー7Lの長手方向の位置を調整する必要がある場合には、調整片25は、厚さ(下部タイバー7Lの長手方向の大きさ)の異なる他の調整片25に交換される。
なお、下部タイバー7Lが調整片25により係合がなされているのに対し、上部タイバー7Uが固定側ハーフナット23により係合がなされているのは、金型交換において上部タイバー7Uを固定ダイプレート5Fから引き抜くことを容易化するためである。
移動側ハーフナット27は、移動ダイプレート5Mに対して型開閉方向において係合しており、移動ダイプレート5Mとともに型開閉方向へ移動可能である。上部タイバー7Uには、上部移動側ハーフナット27Uと係合する上部移動側被係合部7bUが形成されている。下部タイバー7Lには、下部移動側ハーフナット27Lと係合する下部移動側被係合部7bLが形成されている。なお、以下では、上部移動側被係合部7bU及び下部移動側被係合部7bLを単に「移動側被係合部7b」といい、両者を区別しないことがある。移動側ハーフナット27及び移動側被係合部7bの構成は、固定側ハーフナット23及び固定側被係合部7aの構成と同様である。複数の環状溝のピッチPは、移動側と固定側とで同じでもよいし、異なっていてもよい。
ただし、移動側被係合部7bの、複数の環状溝の配置範囲は、移動側ハーフナット27の複数の環状溝の配置範囲よりも比較的長く設定されている。従って、移動側ハーフナット27及び移動側被係合部7bは、タイバー7と、移動ダイプレート5Mとの係合位置を噛合い調整に必要な調整範囲(1ピッチ)よりも大きい範囲で調整可能である。すなわち、移動側ハーフナット27及び移動側被係合部7bは、複数の係合可能位置において選択的に係合可能である。
固定側ハーフナット23及び移動側ハーフナット27は、ナット用シリンダ35により開閉される。ナット用シリンダ35は油圧シリンダである。なお、固定側ハーフナット23及び移動側ハーフナット27は、電動機などの他の駆動装置によって駆動されてもよい。
型締装置1は、ピストン部材21の固定ダイプレート5Fに対するタイバー7の長手方向の位置を検出する位置センサ29と、各種シリンダに作動油を供給する油圧回路31と、油圧回路の動作を制御する制御装置33とを有している。
型厚調整装置15は、型開閉シリンダ13のピストンロッド13cと下部タイバー7Lとを係合させるとともに、その係合位置をタイバー7の長手方向において調整することにより、型厚調整を可能とするものである。型厚調整装置15は、ピストンロッド13cに固定されたプレート39と、プレート39に設けられ、下部タイバー7Lに係合可能な型厚用ハーフナット37と、型厚用ハーフナット37を駆動するナット用シリンダ35とを有している。
プレート39は、金属等の板状部材により構成され、移動ダイプレート5Mの背面に対向して配置されている。プレート39には、下部タイバー7Lが貫通する貫通穴が形成されている。
型厚用ハーフナット37の構成は、固定側ハーフナット23や移動側ハーフナット27と同様である。型厚用ハーフナット37は、下部移動側被係合部7bLに対して係合する。また、型厚用ハーフナット37は、下部移動側ハーフナット27Lと同様に、下部移動側被係合部7bLとの係合位置をタイバー7の長手方向において調整可能である。
位置センサ29は、例えば、磁気式又は光学式のリニアエンコーダを構成し、ピストン部材21の相対移動に伴うパルス信号、または、当該パルス信号に基づいて演算したピストン部材21の位置等の情報を含む信号を制御装置33に出力する。
油圧回路31は、例えば、ポンプ、アキュムレータ、各種のバルブ等を含んで構成され、型開閉シリンダ13、型締シリンダ17、及び、ナット用シリンダ35への作動液の供給を制御する。
制御装置33は、例えば、CPU、ROM、RAM、外部記憶装置等を含むコンピュータにより構成されている。制御装置33は、ROMや外部記憶装置等に記録されたプログラムや位置センサ29等からの信号に基づいて、油圧回路31等を介して、型開閉シリンダ13、型締シリンダ17、固定側ハーフナット23、移動側ハーフナット27及び型厚用ハーフナット37を制御する。
以上の構成を有する型締装置1の動作を説明する。まず、型締装置1の成形サイクルにおける動作を説明する。
図2は、型締装置1を図1の状態から型閉状態(型接触状態)へ移行する途中の状態において示す、一部に断面図を含む側面図である。図3は、型締装置1を型接触状態において示す、一部に断面図を含む側面図である。図4は、型締装置1の成形サイクルにおける動作を説明するフローチャートを含む図である。図4の紙面左側のフローチャートは、型締装置1の動作を示しており、紙面右側の表は、各ステップにおける、型開閉シリンダ13、型締シリンダ17、移動側ハーフナット27、固定側ハーフナット23及び型厚用ハーフナット37の動作を示している。表において、上向きの矢印は、上段と同じであることを示している。
サイクルのスタート時において、型締装置1は、図1に示す型開状態である。この状態では、型開閉シリンダ13のピストン13bは、ヘッドエンドHEP、すなわち、移動ダイプレート5Mを型開き方向へ駆動するときの駆動限に位置している。なお、最大型厚の金型101が取り付けられている場合、移動ダイプレート5Mは、型開き方向の駆動限、すなわち、位置決め部材11に当接する位置に位置している。また、型開状態においては、型締シリンダ17のピストン21aは、原位置OP、すなわち、型締め時の駆動方向とは反対側の駆動限に位置している。移動側ハーフナット27は開かれている。固定側ハーフナット23及び型厚用ハーフナット37は閉じられている。なお、固定側ハーフナット23及び型厚用ハーフナット37は、後述する型厚調整等において開閉されるものの、複数の成形サイクルに亘って閉じられたままである。
ステップST1では、型締装置1は、移動ダイプレート5Mを型閉じ方向へ移動(前進)させ、型閉じを行う。具体的には、制御装置33は、型開閉シリンダ13のピストン13bをロッドエンドREP側へ移動させる。ピストンロッド13cと下部タイバー7Lとは型厚調整装置15により係合されているから、下部タイバー7Lと移動ダイプレート5Mとは相対移動する。下部タイバー7Lは固定ダイプレート5Fに係合されているから、移動ダイプレート5Mは固定ダイプレート5Fに対して型閉じ方向へ移動する。このとき、型締シリンダ17のピストン21aは原位置OPに位置しているから、型締シリンダ17に作動液を供給しなくても、ピストン21aは移動しない。すなわち、下部タイバー7Lは移動しない。なお、成形サイクルを短縮しつつ、型締装置1各部の負担を軽減するために、型開閉シリンダ13は、比較的低速、比較的高速、比較的低速の順で駆動されることが好ましい。
ステップST2では、図2に示すように、移動ダイプレート5Mが型接触の距離ΔS手前で停止する。これは、型開閉シリンダ13がロッドエンドREPに到達することからである。換言すれば、型厚調整装置15は、型開閉シリンダ13がロッドエンドREPに到達したときに、移動ダイプレート5Mが型接触の距離ΔS手前で停止するように、下部タイバー7Lに対する係合位置が調整されている。
なお、制御装置33は、種々の方法により、型開閉シリンダ13が駆動限(本実施形態ではロッドエンドREP)に到達したことを検知できる。例えば、ピストン13bの位置を検出する位置センサが型締装置1に設けられ、制御装置33は、その位置センサの検出結果に基づいて駆動限への到達を検出してもよい。位置センサは、ピストン13bが駆動限に到達したか否かのみを検出するスイッチのようなものであってもよい。また、例えば、型開閉シリンダ13のシリンダ室の圧力を検出する圧力センサが型締装置1に設けられ、制御装置33は、その圧力センサにより検出される圧力の上昇などにより、駆動限への到達を検出してもよい。制御装置33は、上記のような位置センサや圧力センサの検出結果によらず、型開閉シリンダ13の駆動を開始してから一定の時間が経過したことをもって、駆動限への到達がなされたと判断してもよい。
ステップST3では、制御装置33は、移動側ハーフナット27を閉じて、移動ダイプレート5Mとタイバー7とを係合する。このとき、移動側ハーフナット27と移動側被係合部7bとの噛合い調整は不要である。
下部移動側ハーフナット27Lの噛合い調整が不要であるのは、以下の理由による。型開閉シリンダ13のピストン13bがロッドエンドREPに位置したとき、型厚用ハーフナット37と下部移動側ハーフナット27Lとの距離は常に一定である。一方、型厚用ハーフナット37と下部移動側ハーフナット27Lとの距離が下部移動側被係合部7bLのピッチPの整数倍である場合、型厚用ハーフナット37及び下部移動側ハーフナット27Lの一方が下部移動側被係合部7bLに噛合い可能であるとき、他方も下部移動側被係合部7bLに噛合い可能である。従って、予め、ピストン13bがロッドエンドREPに位置したときの型厚用ハーフナット37と下部移動側ハーフナット27Lとの距離をピッチPの整数倍にしておけば、型厚用ハーフナット37が下部移動側被係合部7bLに係合している以上、下部移動側ハーフナット27Lは、噛合い調整なしで下部移動側被係合部7bLに係合可能である。
上部移動側ハーフナット27Uの噛合い調整が不要であるのは、以下の理由による。上部移動側ハーフナット27Uと下部移動側ハーフナット27Lとの位置関係は一定である。また、型締シリンダ17のピストン21aが一定位置(例えば原位置OP)にあるときの上部移動側被係合部7bUと下部移動側被係合部7bLとの位置関係も一定である。従って、下部移動側ハーフナット27L(型厚用ハーフナット37)が係合可能であるときに、上部移動側ハーフナット27Uも係合可能であるように、上部移動側ハーフナット27U等の位置が設定されていれば、下部移動側ハーフナット27Lが係合可能である以上、上部移動側ハーフナット27Uも係合可能である。
ステップST4では、型締装置1は、移動ダイプレート5Mを再び前進させる。ただし、当該前進は、ステップST1とは駆動方法が異なる。具体的には、制御装置33は、型締シリンダ17のピストン21aを型締め時の駆動方向へ移動させる。ピストン部材21は、固定側ハーフナット23又は調整片25によってタイバー7に係合されており、タイバー7は移動側ハーフナット27によって移動ダイプレート5Mに係合されていることから、移動ダイプレート5Mは、型閉じ方向へ移動する。なお、後述する型接触における衝撃が抑制されるように、このときの型締シリンダ17の圧力は低圧であることが好ましい。
ステップST5では、図3に示すように、型接触がなされる。このとき、型締シリンダ17のピストン21aは、原位置OPから距離ΔS移動している。従って、制御装置33は、予め距離ΔSを記憶しておくことにより、位置センサ29の検出結果に基づいて、型接触したことを検知することができる。
ステップST6では、型締装置1は、型締めを行う。具体的には、制御装置33は、型接触を検知すると、型締シリンダ17の圧力を、所定の型締力が得られるまで上昇させる。なお、型締力は、タイバー7の伸長量によって規定されるから、制御装置33は、位置センサ29の検出結果に基づいて、所定の型締力が得られたことを検知できる。そして、所定の型締力が得られると、型締装置1は、次のステップに進む。
ステップST7では、成形が開始される。具体的には、不図示の射出装置から金型101内に形成された不図示のキャビティに溶湯(溶融状態の金属材料)が射出、充填される。キャビティ内の溶湯は、射出装置により、型締力より低いものの、比較的高圧の圧力が付与される。そして、キャビティ内の溶湯が凝固すると、成形が終了する(ステップST8)。なお、成形開始から成形終了まで、所定の型締力は維持される。
ステップST9では、型締装置1は、圧抜きを行う。すなわち、制御装置33は、型締力を生じさせるための型締シリンダ17への作動液の供給を停止する。型締シリンダ17のピストン21aは、伸長していたタイバー7の復元に伴って、原位置OPから距離ΔS離れた位置まで移動する。すなわち、図3に示す状態に戻る。
ステップST10では、型締装置1は、型開きの初期動作を行う。具体的には、制御装置33は、型締シリンダ17を型締め時の駆動方向とは反対側へ駆動する。すなわち、制御装置33は、型締シリンダ17のピストン21aを原位置OP側へ移動させる。移動ダイプレート5Mは、移動側ハーフナット27及びタイバー7等を介してピストン21aに係合しているから、型開き方向へ移動する。これにより、型開きがなされ、成形品は、固定金型101F及び移動金型101Mの一方から離れ、他方に残る。なお、ステップST10における型締シリンダ17の駆動力は、成形品を離型させるために比較的大きく設定される。また、ピストン21a(移動ダイプレート5M)の移動量は、ΔS以下である。
ステップST11では、型締装置1は、移動側ハーフナット27を開き、タイバー7と移動ダイプレート5Mとの係合を解除する。
ステップST12では、型締装置1は、移動ダイプレート5Mを型開き方向へ移動(後退)させる。具体的には、制御装置33は、型開閉シリンダ13のピストン13bをヘッドエンドHEP側へ移動させる。ピストンロッド13cと下部タイバー7Lとは型厚調整装置15により係合されているから、下部タイバー7Lと移動ダイプレート5Mとは相対移動する。下部タイバー7Lは固定ダイプレート5Fに係合されているから、移動ダイプレート5Mは固定ダイプレート5Fに対して型開き方向へ移動する。なお、成形サイクルを短縮しつつ、型締装置1各部の負担を軽減するために、型開閉シリンダ13は、比較的低速、比較的高速、比較的低速の順で駆動されることが好ましい。ステップST12において、型締シリンダ17は、移動ダイプレート5Mを移動させる反動により原位置OPから離間する方向へ移動しないように作動油の流出や流入が制御されてもよい。
ステップST13では、型開閉シリンダ13のピストン13bがヘッドエンドHEPに到達し、型開きが終了する。なお、上述のように、金型101は最大型厚の金型であるから、移動ダイプレート5Mは、型開き方向の駆動限に到達する。型締シリンダ17は、ピストン21aが原位置OPに復帰するように制御される。なお、原位置OPへの復帰は、ステップST10から次のサイクルのステップST1までの間の適宜な時期に行われてよい。また、ステップST12からステップST13までの間、又は、ステップST13の後においては、不図示の押し出し装置により、成形品が金型101から押し出される。そして、成形サイクルは終了する。
次に、型締装置1の型厚調整における動作を説明する。
図5から図7は、型厚調整中の型締装置1を示す、一部に断面図を含む側面図である。図9は、型締装置1における型厚調整を説明するフローチャートである。
ステップST21では、金型の交換が行われる。金型交換の際には、固定側ハーフナット23が開かれ、上部タイバー7Uは固定ダイプレート5Fから引き抜かれる。そして、新たな金型が取り付けられると、上部タイバー7Uは、再度、固定ダイプレート5Fに挿入され、固定側ハーフナット23が閉じられる。なお、金型交換の前後において、固定側ハーフナット23と上部タイバー7Uとの係合位置は変化しない。上部タイバー7Uの固定ダイプレート5F側の端部は、固定側ハーフナット23の噛合い調整を行わなくてもよいように、固定側ハーフナット23の噛合い位置に上部タイバー7Uを位置させるための位置決め部材に突き当てられる。
図5〜図7では、図1から図3に示した最大型厚の金型101から、最小型厚の固定金型103F及び移動金型103M(以下、単に「金型103」といい、これらを区別しないことがある。)に交換された場合を例示している。
ステップST22では、型締装置1は、金型103を型接触させるために、移動ダイプレート5Mを型閉じ方向へ移動(前進)させる。当該移動は、図4のステップS1と同様に、型開閉シリンダ13のピストンロッド13cと下部タイバー7Lとを型厚調整装置15により係合した状態で、型開閉シリンダ13を駆動して下部タイバー7Lと移動ダイプレート5Mとを相対移動させることにより行われる。
ただし、型厚が大きい金型から型厚が小さい金型へ交換された場合等においては、図4のステップS1と同様の移動だけでは、型接触させることができない。そこで、型締装置1は、下部タイバー7Lとピストンロッド13cとの係合位置を変更する。具体的には、以下のとおりである。
図5は、最大型厚の金型101から最小型厚の金型103に交換された場合において、図4のステップS1と同様に、型開閉シリンダ13をロッドエンドREPまで移動させた状態を示している。なお、図5では、図1における移動側ハーフナット27及び移動ダイプレート5Mの位置を2点鎖線で示している。
金型101が取り付けられていた場合には、図2に示したように、金型101は、距離ΔS離れた位置まで近接した。しかし、金型103は、金型101よりも型厚が小さいので、距離ΔSに、金型101と金型103との型厚の差を加えた距離で離間している。図4のステップS1と同様の移動だけでは、これ以上、移動ダイプレート5Mを前進させることはできない。
そこで、型締装置1は、図6に示すように、型厚用ハーフナット37を開き、ピストンロッド13cと下部タイバー7Lとの係合を解除し、型開閉シリンダ13をヘッドエンドHEPまで移動させる。その後、再度、型厚用ハーフナット37を閉じる。これにより、型締装置1は、再度、型開閉シリンダ13をロッドエンドREP側へ移動させることにより、移動ダイプレート5Mを型閉じ方向へ移動可能となる。なお、型厚用ハーフナット37を閉じる際には、型開閉シリンダ13を駆動して、噛合い調整を行う。
以上のように、ピストンロッド13cと下部タイバー7Lとを係合した状態で型開閉シリンダ13を駆動して移動ダイプレート5Mを移動させるときに、移動ダイプレート5Mが所望の位置まで到達する前に、型開閉シリンダ13が駆動限に到達した場合には、ピストンロッド13cと下部タイバー7Lとの係合を解除して、型開閉シリンダ13を移動ダイプレート5Mを移動させるときとは反対方向へ駆動して、ピストンロッド13cを下部タイバー7Lに対して移動させ、再度、ピストンロッド13cと下部タイバー7Lとを係合させることにより、移動ダイプレート5Mを所望の位置まで移動させることができる。移動ダイプレート5Mを型開き方向へ移動させるときも同様である。
ステップST23では、上述のように移動ダイプレート5Mを前進させた結果、型接触がなされる。型接触することにより、下部タイバー7Lに対する移動ダイプレート5Mの移動は規制され、ひいては、型開閉シリンダ13のピストン13bもストロークS内のいずれかの位置で停止する。
ステップST24では、型締装置1は、型厚用ハーフナット37を開き、ピストンロッド13cと下部タイバー7Lとの係合を解除する。
ステップST25では、型締装置1は、型開閉シリンダ13のピストン13bをロッドエンドREP(型閉じ時の駆動方向の駆動限)まで移動させる。ピストンロッド13cは、下部タイバー7Lとの係合が解除されているから、ピストンロッド13cは、下部タイバー7Lに対して移動ダイプレート5Mの背後側へ移動する。そして、型締装置1は、図7に示す状態となる。
ステップST26では、型締装置1は、型厚用ハーフナット37を閉じ、ピストンロッド13cと下部タイバー7Lとを係合させる。この際、型締装置1は、型締シリンダ17のピストン21aを原位置OPから移動させて、型厚用ハーフナット37の噛合い調整を行う。このときのピストン21aの移動量は、型厚用ハーフナット37及び下部移動側被係合部7bLの複数の環状溝のピッチP以下である。
その後、型締装置1は、型締シリンダ17のピストン21aを原位置OPに復帰させる。また、型締装置1は、型開閉シリンダ13のピストン13bをヘッドエンドHEPへ移動させることにより、移動ダイプレート5Mを型開き方向へ移動させる。これにより、型締装置1は、図1に相当する開状態となり、型厚調整を終了する。
図8は、型厚調整結果を説明する図である。具体的には、図8は、ステップS26の終了時の状態から、型締シリンダ17のピストン21aをステップST26の噛合い調整前の位置(原位置OP)に復帰させ、移動側ハーフナット27を閉じたと仮定した状態を示している。この状態は、図2において移動側ハーフナット27を閉じた状態に相当する。図8及び図2の対比から理解されるように、図2において説明した距離ΔSは、ステップST26の噛合い調整における、型締シリンダ17のピストン21aの移動量と同一である。なお、型厚に応じてステップST26における噛合い調整に必要な移動量は変化するから、距離ΔSの値自体は金型によって異なる。
上述のように、移動側ハーフナット27は、型厚用ハーフナット37が下部タイバー7Lに係合している限り、型開閉シリンダ13のピストン13bがロッドエンドREPに位置するときにタイバー7に係合可能となるように設けられていることから、ステップST26の型厚用ハーフナット37の噛合い調整は、移動側ハーフナット27の噛合い調整を行っていることに相当する。
なお、以上の動作の説明から以下の事項が理解される。
移動側ハーフナット27及び移動側被係合部7bが係合位置を調整可能となっているのは、型厚の変化により、型接触時の移動ダイプレート5Mと固定ダイプレート5Fとの距離が変化し、ひいては、移動側ハーフナット27及び移動側被係合部7bの相対位置が変化したときにおいても、移動側ハーフナット27及び移動側被係合部7bの係合を可能とするためである。すなわち、移動側ハーフナット27及び移動側被係合部7bは、最大型厚の金型を型閉じした場合(図2等参照)と、最小型厚の金型を型閉じした場合(図8等参照)の双方においてタイバー7に係合する必要がある。従って、移動側被係合部7bは、係合位置の調整可能範囲が、最大型厚(Lmax)と最小型厚(Lmin)との差(Ldif=Lmax−Lmin)以上となるように設けられる。好適には、上部移動側被係合部7bUは、噛み合い調整に必要な範囲を1ピッチ(P)としたときに、係合位置の調整可能範囲がLdif+P以下となるように設けられている。
下部移動側被係合部7bLは、下部移動側ハーフナット27Lだけでなく、型厚用ハーフナット37とも係合可能に構成される必要がある。型厚用ハーフナット37は、移動ダイプレート5M(下部移動側ハーフナット27L)よりも背面側に配置されているから、下部移動側被係合部7bLは、型厚用ハーフナット37と係合可能に、上部移動側被係合部7bUよりも背後側に延びている。換言すれば、下部移動側被係合部7bLは、下部移動側ハーフナット27Lとの係合に必要な範囲(Lmax−Lmin)を超えて長く形成されている。具体的には、型厚用ハーフナット37は、移動ダイプレート5Mが型開き方向の駆動限に位置している状態(図1)においても係合可能である必要がある。そこで、下部タイバー7L及び下部移動側被係合部7bLは、移動ダイプレート5Mが型開き方向の駆動限に位置している状態においても、移動ダイプレート5Mの背面側に突出するように長く形成されている。
型厚用ハーフナット37及び下部移動側被係合部7bLは、型厚が変化しても型開閉シリンダ13のストロークの変化を抑制するために、係合位置を調整可能となっている。その調整可能範囲は、好適には、最大型厚と最小型厚との差(Ldif)以上であり、より好適には、Ldif+P以下である。型厚用ハーフナット37及び下部移動側被係合部7bLの係合位置の調整可能範囲は、例えば、型締シリンダ17のストロークよりも大きく、型開閉シリンダ13を駆動しなければ、有効利用が困難な大きさである。
下部移動側ハーフナット27Lの係合位置の調整可能範囲と、型厚用ハーフナット37の係合位置の調整可能範囲とは一部が重複する。具体的には、これらの範囲は、型開閉シリンダ13のピストン13bがヘッドエンドHEPに位置するときの移動側ハーフナット27と型厚用ハーフナット37との距離(Dis:移動側ハーフナット27と型厚用ハーフナット37とが最も近接する時の距離)を係合位置の調整可能範囲(Ldif以上)から差し引いた長さ(例えば、Ldif+P−Dis)で重複する。換言すれば、下部移動側被係合部7bLは、距離Disを小さくするほど、移動側ハーフナット27と型厚用ハーフナット37とに共用される部分が多くなり、小型化が可能となる。
型開閉シリンダ13のストロークSは、型開閉シリンダ13の小型化を図るために、Ldif+P以下であることが好ましい。
以上の第1の実施形態によれば、型締装置1は、固定ダイプレート5Fに係合された下部タイバー7Lと、移動ダイプレート5Mに設けられた型開閉シリンダ13とを有する。型開閉シリンダ13は、シリンダチューブ13a、及び、シリンダチューブ13aに対して型開閉方向へ駆動されるピストンロッド13cを有する。また、型締装置1は、下部タイバー7Lとピストンロッド13cとを係合するとともに、その係合位置をタイバー7の長手方向において調整可能な型厚調整装置15と、型厚調整装置15の係合がなされた状態で型開閉シリンダ13を駆動することにより型開閉を行うように型開閉シリンダ13を制御する制御装置33とを有する。従って、図9を参照して説明したように、型開閉シリンダ13によりピストンロッド13cと下部タイバー7Lとを相対移動させて型厚調整を行うことができる。すなわち、移動ダイプレート5Mを移動させて型開閉を行うための型開閉シリンダ13を型厚調整のための駆動装置としても利用できる。その結果、簡素な構成で型厚調整を行うことができる。
しかも、この型厚調整は、型厚の変化によって型開閉シリンダ13の実質的なストロークが変化することを抑制することが可能である。例えば、図2及び図5の対比から理解されるように、型厚が小さくなるほど、型締装置1は、移動ダイプレート5Mを前進させる必要がある。従って、型開閉シリンダ13のピストンロッド13cと下部タイバー7Lとの係合位置が調整不可能であると仮定すると、最小型厚においても型接触可能とするためには、型開閉シリンダ13はストロークSが大きなものでなければならない。そして、そのような型開閉シリンダ13を設けたとすると、型厚が最小型厚よりも大きい場合には、型開閉シリンダ13のピストン13bは、駆動限(ロッドエンドREP)に到達する前に、型接触によって移動が規制される。すなわち、型厚の増加分だけ、ピストン13bの可動範囲が減少することになってしまう。一方、本実施形態は、ピストンロッド13cと下部タイバー7Lとの位置を調整可能であることから、型開閉シリンダ13をフルストロークで駆動するなど、型開閉シリンダ13の性能を十分に引き出すことができる。その結果、最大型厚と最小型厚との差に対して型開閉シリンダ13を小型化し、装置全体の小型化やコスト低減を図ることができる。
型締装置1は、移動ダイプレート5Mと下部タイバー7Lとを係合可能な下部移動側ハーフナット27Lと、固定ダイプレート5Fに設けられたシリンダ室19に収容されて固定側ハーフナット23や調整片25に係合するピストン21aを有する型締シリンダ17とを有している。また、下部移動側ハーフナット27Lと型開閉シリンダ13のシリンダチューブ13aとの相対位置は一定に維持されている。従って、例えば、後述する、移動側ハーフナット27の噛合い調整を不要とする効果や型厚調整時の噛合い調整に必要な距離ΔSを成形サイクル時における型接触直前の距離に転換する効果が得られる。
制御装置33は、型閉じ時において、型開閉シリンダ13を型閉じ時の駆動方向の駆動限(ロッドエンドREP)まで駆動したところで、移動側ハーフナット27の係合を行うように、型開閉シリンダ13及び移動側ハーフナット27を制御する。従って、型開閉シリンダ13のストロークを有効利用するだけでなく、駆動限を利用することにより噛合い調整を不要とし、成形サイクルを短縮することができる。
制御装置33は、型厚調整において、型接触がなされ、且つ、型厚調整装置15の係合が解除された状態で、型開閉シリンダ13を型閉じ時の駆動限(ロッドエンドREP)まで移動させたところで、型厚調整装置15の係合を行い、その後の複数の成形サイクルに亘って、型厚調整における型厚調整装置15の係合を維持して型開閉を行うように、型厚調整装置15及び型開閉シリンダ13を制御する。従って、上述の、成形サイクルの型閉じ時において型開閉シリンダ13をロッドエンドREPまで駆動させるようにするための型厚調整が簡便になされる。
型厚調整装置15は、一定のピッチ毎に配列された複数の係合位置において選択的に係合可能であり、制御装置33は、型厚調整装置15を係合させるときに、ピストン21aを型開き方向の駆動限(原位置OP)から1ピッチ以内の範囲で移動させて噛合い調整を行うことから、型厚調整において噛合い調整に必要な距離ΔSを成形サイクルにおける型接触直前の距離とすることができる。その結果、型厚調整装置15の噛合い調整に関わらず、成形サイクルにおいて、型開閉シリンダ13をロッドエンドREPまで駆動させて型閉じすることが実現される。
下部タイバー7Lには、移動側ハーフナット27が下部タイバー7Lの長手方向における複数の係合位置において選択的に係合可能に下部移動側被係合部7bLが形成されている。そして、型厚調整装置15は、下部移動側被係合部7bLに対して複数の係合位置において選択的に係合可能である。従って、下部移動側被係合部7bLが、移動側ハーフナット27の係合と、型厚調整装置15の係合とに共用されることになり、装置の簡素化が図られる。
なお、以上の第1の実施形態において、固定金型101F及び固定金型103Fはそれぞれ本発明の固定型の一例であり、移動金型101M及び移動金型103Mはそれぞれ本発明の移動型の一例であり、固定ダイプレート5Fは本発明の一方のダイプレートの一例であり、移動ダイプレート5Mは本発明の他方のダイプレートの一例であり、調整片25は本発明の係合部の一例であり、型開閉シリンダ13は本発明の型開閉駆動装置の一例であり、シリンダチューブ13aは本発明の固定部の一例であり、ピストンロッド13cは本発明の可動部の一例であり、移動側ハーフナット27は本発明の係合装置の一例である。
(第2の実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態に係る型締装置201を示す、一部に断面図を含む側面図である。なお、図10は、第1の実施形態の図2に対応する状態を示している。
型締装置201は、型厚調整装置215がタイバー支持機能を有する点において、第1の実施形態の型締装置1と相違する。具体的には、以下のとおりである。
型厚調整装置215のプレート239は、移動ダイプレート205Mと同様に、ベース3により、型開閉方向に移動可能に支持されている。より詳細には、プレート239は、移動ダイプレート205Mとスライダ9を共用している。なお、スライダ9上における、プレート239及び移動ダイプレート205Mの移動範囲の重複範囲は、上述の下部移動側被係合部7bLにおける、型厚用ハーフナット37及び下部移動側ハーフナット27Lの係合位置の重複範囲と同様に規定される。
また、プレート239は、下部タイバー7Lが貫通する貫通穴239hが、下部タイバー7Lが嵌合する大きさ及び形状に形成されている。従って、下部タイバー7Lは、貫通穴239h内においてプレート239に支持され、貫通穴239hを摺動可能である。下部タイバー7Lの荷重は、プレート239を介してベース3に支持される。
下部タイバー7Lは、型厚調整装置215に支持されることから、移動ダイプレート205Mは、下部タイバー7Lを支持する必要がなくなる。従って、移動ダイプレート205Mの、下部タイバー7Lが貫通する貫通穴205hは、下部タイバー7Lに対して非接触となるように、型締装置1における貫通穴5hよりも大きく形成されている。
型締装置201の、成形サイクル及び型厚調整における動作は、第1の実施形態と同様である。
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、型厚調整に係る構成の簡素化の効果や、成形サイクルにおいて型厚の変化によらず型開閉シリンダ13をフルストロークで利用できる効果等の種々の効果が奏される。
さらに、第2の実施形態では、移動ダイプレート205Mと下部タイバー7Lとの接触部のブシュを省くことができるので、移動ダイプレート205Mの加工精度をラフにすることができる。その結果、加工費が低減される。また、型開閉において移動ダイプレート205Mと下部タイバー7Lとの摺動抵抗が発生せず、型開閉シリンダ13の負担を軽減できる。金型接触時の拘束部が減少することから、金型の接触面積が増加し、鋳張りの減少も図られる。
本願発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
型締装置は、ダイカストマシンに用いられるものに限定されない。例えば、溶融状態の樹脂を成形材料とする射出成形機等の他の成形機に用いられるものであってもよい。また、型締装置は、型開閉用の駆動装置と、型締用の駆動装置とが別個に設けられるものに限定されず、一の駆動装置により型開閉及び型締がなされるものであってもよい。また、型締用の駆動装置が型開閉用の駆動装置とは別個に設けられる場合には、当該型締用の駆動装置は、ダイプレートに内蔵されたピストンをタイバーに係合させるものに限定されない。例えば、ダイプレートを背後から押圧するものであってもよい。
実施形態では、型開閉駆動装置(13)が移動ダイプレートに設けられており、型開閉においてタイバーが固定ダイプレートに係合されている型締装置を例示した。しかし、型開閉駆動装置は、型開閉駆動装置が固定ダイプレートに設けられ、型開閉においてタイバーが移動ダイプレートに係合されるものであってもよい。この型締装置では、型開閉駆動装置を駆動すると、タイバー及び移動ダイプレートが固定ダイプレートに対して移動する。型厚調整装置は、例えば、固定ダイプレートの背後に設けられる。
実施形態では、型開閉駆動装置(13)が設けられるダイプレート(5M)とは異なるダイプレート(5F)に型締用の駆動装置(17)が設けられる場合を例示した。しかし、型締用の駆動装置は、型開閉駆動装置が設けられるダイプレートと同一のダイプレートに設けられてもよい。換言すれば、型締シリンダのピストン(21a)は、係合部(実施形態では調整片25)に係合するものに限定されず、係合装置(実施形態では下部移動側ハーフナット27L)に係合し、係合装置と共に移動するものであってもよい。なお、この場合において、開閉駆動装置の固定部(実施形態ではシリンダチューブ13a)と係合装置(実施形態では下部移動側ハーフナット27L)との相対位置を一定に保つ必要があるときは、固定部は、型締シリンダのピストンと共に移動するように設けられる。例えば、シリンダチューブは、ハーフナットを保持し、ピストン部材に係合する部材に取り付けられる。
タイバーの本数は4本に限定されず、適宜な本数とされてよい。また、型開閉駆動装置と係合されるタイバーは、下部タイバーに限定されない。例えば、4本のタイバーのうち、対角線上に位置する2本のタイバーが型開閉駆動装置に係合されてもよい。型開閉駆動装置と係合されるタイバーの本数と係合されないタイバーの本数との比率も1:1に限定されず、適宜に設定されてよい。例えば、全てのタイバーが型開閉駆動装置と係合されてもよい。
型厚調整装置は、ダイプレートの背後に設けられるものに限定されない。ダイプレートの側方や金型側に設けられてもよい。また、型厚調整装置のタイバーとの係合位置も、ダイプレートの背後に限定されず、ダイプレートの金型側であってもよい。ただし、型厚調整装置をダイプレート背後に設け、型厚調整装置をタイバーの端部に係合させる構成は、型厚調整装置を配置するスペースの確保等が容易である。
型開閉装置が設けられるダイプレート(実施形態では移動ダイプレート)とタイバーとを係合する係合装置(実施形態では移動側ハーフナット27)は、ハーフナットに限定されない。また、型開閉駆動装置が設けられないダイプレート(実施形態では固定ダイプレート)と型開閉駆動装置によって駆動されるタイバー(実施形態では下部タイバー7L)とを係合させる係合部は、調整片(25)に限定されない。例えば、係合部は、ハーフナットであってもよい。
型開閉駆動装置等の駆動装置は、液圧シリンダに限定されない。例えば、駆動装置は、回転式の電動機及び送りネジ機構であってもよいし、リニア式の電動機であってもよい。液圧シリンダは、油圧シリンダに限定されない。例えば、液圧シリンダは、作動液として水を用いるものであってもよい。
型開閉駆動装置において、ダイプレートに固定される固定部及びタイバーと係合される可動部は、適宜に設定されてよい。例えば、実施形態では、シリンダチューブが固定部、ピストンロッドが可動部である場合を例示したが、シリンダチューブが可動部、ピストンロッドが固定部であってもよい。型開閉方向とシリンダの伸縮方向との関係も、シリンダが伸びたときに型閉じされるものに限定されず、シリンダが縮んだときに型閉じされるものであってもよい。液圧シリンダは、タイバーに対して上下方向において並列に配置されるものに限定されない。例えば、液圧シリンダは、タイバーに対して左右方向において並列に配置されてもよい。
駆動限は、物理的に規定される駆動限界である。例えば、駆動装置が液圧シリンダである場合には、ピストンの移動可能な範囲の端部位置である。当該端部位置は、一般には、ピストンがシリンダ室の端部内壁に当接する位置である。また、例えば、駆動装置が送りネジ機構を含むものである場合には、ナットが移動可能な範囲の端部位置である。当該端部位置は、一般には、ナットがネジ溝の端部に到達する位置である。
型締装置は、型開閉において、型開閉駆動装置のフルストロークを利用する必要はない。フルストロークを利用しなくても、金型交換の前後において、型厚の変化量よりも型開閉におけるストロークの変化量を小さくするように型厚調整装置の係合位置が調整されれば、型厚の変化量と同じ変化量で型開閉のストロークが増減した従来技術に比較して、有効に型開閉駆動装置を利用することができる。
実施形態では、型開閉駆動装置が型閉じ時の駆動方向の駆動限まで駆動されたときに、係合装置が噛合うように型厚調整を行う場合を例示した。しかし、駆動限に到達してから、又は、駆動限に到達する前に、噛合い調整が行われてもよい。
型締装置は、タイバー引抜機能を有していてもよい。例えば、型開閉シリンダとタイバーとの間に直列に設けられる引抜シリンダが設けられてもよい。例えば、シリンダチューブが型開閉シリンダのピストンロッドに固定され、ピストンロッドがタイバーに固定された引抜シリンダが設けられてもよい。この場合、引抜シリンダを駆動しなければ、実施形態と同様の成形サイクル及び型厚調整が可能であり、引抜シリンダを駆動することにより、タイバーを引き抜くことができる。このような引抜シリンダは、一のテレスコピックシリンダにより、型開閉シリンダ及び引抜シリンダの双方を構成することにより実現されてもよい。
成形サイクルや型厚調整は、全自動で行われてもよいし、一部が作業者によって行われてもよい。なお、本願発明は、型締方法や型厚調整方法などの方法の発明として捉えられることも可能である。実施形態に例示した成形サイクルを実現するための型厚調整は、実施形態に例示した方法以外の方法により行われてもよい。
1…型締装置、5F…固定ダイプレート(一方のダイプレート)、5M…移動ダイプレート(他方のダイプレート)、7L…下部タイバー(タイバー)、13…型開閉シリンダ(型開閉駆動装置)、13a…シリンダチューブ(固定部)、13c…ピストンロッド(可動部)、15…型厚調整装置、25…調整片(係合部)、33…制御装置、101F…固定金型(固定型)、101M…移動金型(移動型)。