JP5264227B2 - ガスバリア性フィルム - Google Patents
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Description
しかし、(1)珪素被膜をコーティングしたガスバリア性フィルムにおいては、フィルムの屈曲・伸縮等の応力により珪素被膜が割れてガスバリア性が低下し易いという問題があり、基材フィルムにプライマー層を設ける必要がある。(2)酸化アルミ被膜をコーティングしたガスバリア性フィルムにおいてはX線による異物検査等が使用できず、また、アルカリ性の内容物と直接触れることにより被膜が剥離するという問題がある。
これらに対して、(3)DLC被膜はプラスチックフィルムの変形に対する追従性・柔軟性が高いためガスバリア性の低下が少なく、X線による異物検査機も使用できる点で優れている。(特許文献1参照)
しかし、DLC被膜は一般に茶色から黒色を呈するという外観、透明性の問題がある。そこで、DLC被膜の膜厚を薄くすると、外観、透明性は解決できるが、ガスバリア性が低下してしまうという問題がある。
さらに、上記(1)の屈曲性・伸縮性向上のため、DLC被膜と珪素被膜を順次積層する方法も検討されているが (特許文献2参照)、DLC被膜と珪素被膜の接着性が悪いという問題があり、被膜間に中間層を形成する必要がある。なお、PETボトル等のプラスチック容器の表面に珪素含有DLC被膜を設けることは知られているが(特許文献3参照)、ガスバリア性フィルムとしての利用は記載されておらず、また検討されていなかった。
1.基材フィルムの少なくとも一方の面に膜厚が5〜100nmの珪素含有ダイヤモンドライクカーボン膜がプラズマCVD法により形成されたガスバリア性フィルムであって、該珪素含有ダイヤモンドライクカーボン膜が、少なくともテトラメチルシラン(TMS)を成膜用珪素原料として使用することにより得られる膜であり、X線光電子分光分析による前記珪素含有ダイヤモンドライクカーボン膜の構成比(C1s/C1s+Si2p)が0.01〜0.3の範囲であるとともに、上記ガスバリア性フィルムの着色度(YI)が2.5〜5.0の範囲であり、かつ、25℃、80%RH条件下での酸素ガス透過率が、1.0cc/m 2 ・24h以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム、
2.前記珪素含有DLC膜に含有される珪素化合物が、SiCx(x=0.1〜1.0)からなることを特徴とする上記1記載のガスバリア性フィルム、
3.全光線透過率が80%以上である上記1又は2に記載のガスバリア性フィルム、
4.前記基材フィルムが、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリエーテルスルホン及び環状オレフィン系樹脂からなる群より選択されるいずれか1つの樹脂からなる未延伸フィルム又は二軸延伸フィルムである上記1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルム、
5.前記基材フィルムの厚みが12〜300μmである上記4に記載のガスバリア性フィルム、
にある。
本発明のガスバリア性フィルムは、合成樹脂によりフィルム状に成形された基材フィルムと、その表面に所定厚みを有する珪素含有DLC膜が被覆された構成を有している。基材フィルムの樹脂材料としては、特に限定されず樹脂成形品に適用される公知の合成樹脂材料が適用される。具体的には、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、シクロオレフィンコポリマ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリ−4−メチルペンテン−1 樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、アイオノマ樹脂、ポリスルホン樹脂及び4−フッ化エチレン樹脂(TFE)、ポリ乳酸樹脂(PLA)等が挙げられる。これらのうちで、珪素含有DLC膜との密着性及び成形性が良好である点、透明性が高く飲食品等の収容容器に好適に使用することができる点よりポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましい。
(a)本発明では、珪素含有DLC膜を構成する元素全体に対する珪素の割合が1〜30%の範囲内となるよう形成することによりガスバリア性を付与した。ここで、珪素含有量が30%を越えると珪素含有DLC膜と基材フィルムの密着性が低下するため1〜30%の範囲内とすることが望ましい。これにより、珪素を含有することによりガスバリア性を維持した状態でガスバリア性フィルムの透明性を高めることができる。
基材フィルムとして、厚さ125μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を使用した。成膜は平行平板型のパルスプラズマCVD装置を用いて行った。先ず、真空チャンバー内を真空ポンプにより0.01Paに減圧した後、アセチレンとテトラメチルシラン(TMS)との混合原料を1:1の流量比において導入して装置内圧力を1Paとして、パルス幅約5μsecの直流単パルス電源により電力を印加してプラズマを発生し、珪素含有DLC膜を形成した。尚、TMSは常温では液体であるため、液体原料の気化システムにより気化した状態において、マスフローコントローラーにより流量の制御を行った。実施例1の得られたダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムについて、酸素透過率、全光線透過率、DLC被膜の膜厚・組成分析、密着性及び黄色度について測定した。各測定及び評価の方法は以下の通りである。なお、以下の実施例、及び比較例も同様の測定及び評価方法にて行なった。測定結果を表1に示す。
予めPETフィルムの成膜面に黒色インキ等でマスキングを行って、DLC被膜を被覆した後、ジエチルエーテル等でマスキングを除去し、米国sloan社製、表面形状測定器「DEKTAK3030」によって膜厚を測定した。
走査型プローブ顕微鏡(セイコーインスツルメンツ社製SPI3800)の非接触モード(ダイナミックフォースモード)で測定した。走査速度、1測定領域中の測定点数、傾斜補正は、表面状態を明確に測定できる条件を選択した。フィルムの表面形状の表面粗さ(Rms)は、走査型プローブ顕微鏡SPI3800付属ソフトの「CROSSSECTION」解析のAREA解析で求めた。
酸素透過測定装置(米国モダンコントロール製、「OX−TRAN2/21」)を使用し、温度25℃、相対湿度80%の条件下で測定した。ダイヤモンドライクカーボン膜コーティングガスバリア性フィルムのガスバリア性は、未コートPETフィルムに対するガスバリア性を倍率にて表した。
色差計(日本電色社製「ZE2000」)により垂直に光を通過させてYIを測定することにより、前記被膜による黄色の程度を評価した。
JISK7105に準じて光度計(日本電色社製「NDH−300A」)を用いて全光線透過率を測定した。
X線光電子分光分析装置(島津製作所製、「ESCA−3400」)を用いて、付属のイオンエッチング装置(イオンガン、電圧2kV、電流20mA、Arガス)でサンプル表面層をクリーニングした。その後、真空度1×10−5P a 、X 線源;ターゲットMg、電圧12kV、電流20mAの条件にてサーベイ(ワイドスキャン)スペクトルで構成元素を確認し、次いでマルチ(ナロースキャン)スペクトルでC1s及びSi2pのピーク強度から(C1s/(C1s+Si2p))を算出した。
DLC被膜形成後のガスバリア性PETフィルムについて、DLC被膜形成面を碁盤の目状にナイフで切り込みを入れ、粘着テープによる剥離試験を行った。1mm×1mmのマス目100個のうち、剥離せずに残ったマス目の個数により下記の判定を行った。
剥離せずに残ったマス目の個数100個;〇、
99〜75個;△、
74〜0個;×として評価した。
原料であるアセチレン、TMSの混合原料を1:3の流量比とした以外は実施例1と同一内容にて、ガスバリア性PETフィルムを得た。
原料であるアセチレン、TMSの混合原料を1:6の流量比とした以外は実施例1と同一内容にて、ガスバリア性PETフィルムを得た。
原料であるアセチレン、TMSの混合原料を2:1の流量比とした以外は実施例1と同一内容にて、ガスバリア性PETフィルムを得た。
原料であるアセチレン、TMSの混合原料を1:0の流量比とした以外は実施例1と同一内容にて、ガスバリア性PETフィルムを得た。
Claims (5)
- 基材フィルムの少なくとも一方の面に膜厚が5〜100nmの珪素含有ダイヤモンドライクカーボン膜がプラズマCVD法により形成されたガスバリア性フィルムであって、
該珪素含有ダイヤモンドライクカーボン膜が、少なくともテトラメチルシラン(TMS)を成膜用珪素原料として使用することにより得られる膜であり、X線光電子分光分析による前記珪素含有ダイヤモンドライクカーボン膜の構成比(C1s/C1s+Si2p)が0.01〜0.3の範囲であるとともに、上記ガスバリア性フィルムの着色度(YI)が2.5〜5.0の範囲であり、かつ、25℃、80%RH条件下での酸素ガス透過率が、1.0cc/m 2 ・24h以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。 - 前記珪素含有ダイヤモンドライクカーボン膜に含有される珪素化合物が、SiCx(x=0.1〜1.0)からなる請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
- 全光線透過率が80%以上である請求項1又は2に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記基材フィルムが、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリエーテルスルホン及び環状オレフィン系樹脂からなる群より選択されるいずれか1つの樹脂からなる未延伸フィルム又は二軸延伸フィルムである請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
- 前記基材フィルムの厚みが12〜300μmである請求項4に記載のガスバリア性フィルム。
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