JP3840080B2 - ガスバリアフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品や医薬品等の包装材料や電子デバイス等のパッケージ材料として主に用いられるガスバリアフィルムに関し、更に詳しくは、エッチングレートが小さな基材を用い、プラズマCVD法又はスパッタリング法により形成されるガスバリアフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスバリアフィルムは、主に、(イ)内容物の品質を変化させる原因となる酸素や水蒸気等の影響を防ぐために、食品や医薬品等の包装材料として用いられたり、(ロ)液晶表示パネルやEL表示パネル等に形成されている素子が、酸素、水蒸気に触れて性能劣化するの避けるために、電子デバイス等のパッケージ材料として用いられている。ガスバリアフィルムには、ガスバリア性を有するフィルムを貼り合わせるものや、ガスバリア性を有する層を湿式成層または乾式成層するものが従来より知られている。
【0003】
ガスバリア性を有する層を高分子樹脂基材上に乾式成層する方法として、プラズマCVD法等の乾式成層法を用いて酸化珪素層(シリカ層)や酸化アルミニウム層(アルミナ層)を形成する方法が知られている。例えば、特開平8−176326号、特開平11−309815号、特開2000−6301等がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、プラズマCVD法によってガスバリアフィルムにおけるガスバリア層やその他の薄層を積層してなる積層体を形成した場合、当該ガスバリアフィルムの基材は、高エネルギーのプラズマに長時間曝されることとなるため、いわゆるプラズマダメージをうけることがあり、基材表面がエッチングされることがあった。このように、基材表面がエッチングされた場合には、フィルム全体のガスバリア性にムラが生じる原因となったり、当該基材上に形成される積層体との密着性が低下する原因となる。また、基材表面が極度にエッチングされた場合においては、基材そのものが有するガスバリア性が低下するために、結果としてガスバリア性を有する積層体を設けても良好なガスバリア性が得られないこともある。
【0005】
さらに、プラズマCVD法やスパッタリング法で形成したガスバリア層を有する従来のガスバリアフィルムは、2cc/m2/day程度の酸素透過率(OTR)や、2g/m2/day程度の水蒸気透過率(WVTR)を有するにすぎず、より高いガスバリア性を有する用途、例えば有機ELの包装用に使用される場合には、未だ不十分なものであった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、プラズマCVD法又はスパッタリング法によりガスバリア層を形成した場合であっても、基材がエッチングされることがなく、ガスバリア性にムラが生じたり、基材とガスバリア層を有する積層体との密着性が低下することがなく、さらに、基材そのもののガスバリア性を損なうことがなく、従来のガスバリアフィルムと比べて、極めて優れたガスバリア性を有するガスバリアフィルムを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に記載するように、基材と、当該基材の片面または両面に位置し、少なくとも、プラズマCVD法またはスパッタリング法によって形成されたガスバリア層を有する積層体と、からなるガスバリアフィルムであって、前記基材は、1Pa〜90Paの圧力下において酸素ガス、または酸素ガスと不活性ガスとの混合ガス導入し、当該ガスにより基材をエッチングした場合のエッチングレートが0.001μm/min〜0.15μm/minの高分子樹脂であることを特徴とするガスバリアフィルムを提供する。
【0008】
この発明によれば、基材と、基材の片面または両面に位置し、少なくともプラズマCVD法またはスパッタリング法によって形成されたガスバリア層を有する積層体と、からなるガスバリアフィルムにおいて、当該基材は、1Pa〜90Paの圧力下において酸素ガス、又は酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを導入し、当該ガスにより基材をエッチングした場合のエッチングレートが0.001μm/min〜0.15μm/minの高分子樹脂であるため、ガスバリア層を形成する際に当該基材が高エネルギーを有するプラズマに曝されても、基材表面がエッチングされることがない。その結果、従来のエッチングされやすい基材に比べて、基材の厚さを薄くすることができるので、よりフレキシブルなガスバリアフィルムとすることができる。また、エッチングされないので、ガスバリア性にムラがなく、基材とガスバリア層を有する積層体との密着性が低下することもない。さらに、基材表面がエッチングされることがないので、基材そのもののガスバリア性が低下することもなく、その結果、良好なガスバリアフィルムを得ることができる。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決するために、請求項2に記載するように、請求項1に記載のガスバリアフィルムにおいて、前記基材が、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂、又はベースとなる任意に選択された樹脂上の少なくとも一方に、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂、のうちから任意に選択される1又は2以上の樹脂が接着されてなる複合樹脂、のいずれかであることを特徴とするガスバリアフィルムを提供する。
【0010】
この発明によれば、ガスバリアフィルムの基材が、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂、又はベースとなる任意に選択された樹脂上の少なくとも一方に、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂、のうちから任意に選択される1又は2以上の樹脂が接着されてなる複合樹脂、のいずれかであるので、これらの基材はエッチングレートが上記範囲内であり、それ故、上記請求項1と同様の作用効果を有するガスバリアフィルムを提供することができる。
【0011】
さらに、本発明は、請求項3に記載するように、請求項1又は請求項2に記載のガスバリアフィルムにおいて、前記積層体がガスバリア層と、撥水性を有する撥水層により構成されていることを特徴とするガスバリアフィルムを提供する。
【0012】
この発明によれば、ガスバリアフィルムの積層体が、ガスバリア層と、撥水性を有する撥水層により構成されているので、積層体の表面の水等に対する吸着性を低下させることができ、これにより全体としてガスバリア性を向上させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のガスバリアフィルムの層構成の一例を示す断面図である。
【0014】
本発明のガスバリアフィルム1は、基材2と、当該基材2の片面または両面に(図1に示すガスバリアフィルム1は片面)に位置し、少なくとも、プラズマCVD法またはスパッタリング法によって形成されたガスバリア層4を有する積層体3と、からなるものである。
【0015】
以下、本発明のガスバリアフィルム1を構成する基材2、および少なくともガスバリア層4を有する積層体3についてそれぞれ説明する。
【0016】
[1]基材
本発明のガスバリアフィルム1における基材2は、1Pa〜90Paの圧力下において酸素ガス、又は酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを導入し、当該ガスにより基材をエッチングした場合のエッチングレートが0.001μm/min〜0.15μm/minの高分子樹脂であることに特徴を有している。このように、基材2としての高分子樹脂のエッチングレートが上記範囲内であることによって、プラズマCVD法やスパッタリング法によりガスバリア層4を形成した場合、つまり高エネルギーのプラズマに基材2の表面が曝された場合であっても、エッチングされることがなく、その結果、当該基材2の厚さを従来のそれよりも薄くすることができる。また、エッチングされないので、ガスバリア性にムラがなく、基材とガスバリア層4を有する積層体3との密着性が低下することもない。さらに、基材自体のガスバリア性が低下することもない。
【0017】
ここで、本発明におけるエッチングレートとは、基材を、1Pa〜90Paの圧力にした密閉容器に載置し、当該容器内に酸素ガス、又は酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを導入した場合において、当該基材が導入されたガスによって単位時間当たりにエッチングされる層厚を測定した際の値である。したがって、例えば、エッチングレートが0.001μm/minの基材とは、上記条件下において1分間に0.001μm(層厚)エッチングされる基材のことを意味する。当該エッチングレートを測定する際に用いられるガスとしては、酸素ガスや酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを挙げることができ、不活性ガスとしては、例えばヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガスなどを挙げることができる。なお、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガスを混合して不活性ガスとして用いることもできる。
【0018】
なお、本発明におけるエッチングレートの下限(0.001μm/min)については、基材がほとんどエッチングされないことを意味し、必ずしも0.001μm/min以上のエッチングレートが要求されるものではなく、それ以下で合ってもよい。しかしながら、通常の測定機器を用いた場合においては、その検出限界が0.001μm/min程度であるため、本発明においては、エッチングレートの下限をこのように規定している。
【0019】
このようなエッチングレートを有する高分子樹脂としては、具体的には、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂、を挙げることができ、さらにベースとなる任意に選択された樹脂上の少なくとも一方に、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂、のうちから任意に選択される1又は2以上の樹脂が接着されてなる複合樹脂であってもよい。
【0020】
ここで、複合樹脂におけるベースとなる任意に選択された樹脂とは、従来公知の樹脂全てを意味し、本発明において特に限定されるものではない。また、ベースとなる任意に選択された樹脂と、上述のエッチングレートを有する高分子樹脂(具体的には、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂)との接着方法については、本発明は特に限定することはなく、従来公知のいかなる接着方法であってもよい。
【0021】
本発明においては、前記基材の中でも特にポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、又はベースとなる樹脂としてポリエチレンテレフタレート樹脂を用いこれにポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂を接着せしめた複合樹脂は、透明性を有しており、比較的に入手が容易であることから好ましい。
【0022】
上述してきた基材2の厚さは特に限定するものではないが、本発明における基材2は、エッチングレートが上記範囲内であることから、高エネルギーのプラズマに曝された場合であってもエッチングされることがないため、従来のガスバリアフィルムにおける基材に比べ、基材2の厚さを薄くすることが可能であり、具体的には12〜100μmとすることが可能である。
【0023】
[2]積層体
本発明のガスバリアフィルム1における積層体3とは、前述した基材2の片面又は両面に位置し、少なくとも、プラズマCVD法又はスパッタリング法により形成されたガスバリア層4を有するものであり、本発明のガスバリアフィルム1にガスバリア性を付与するためのものである。したがって、積層体3は、少なくともガスバリア層4を有していることは必要であるが、その具体的な層構成については特に限定されることはない。よって、例えば、ガスバリア層やその他の作用を奏する薄層などを複数に積層したものであってもよく、一のガスバリア層のみから構成されていてもよい。
【0024】
図1は、本発明のガスバリアフィルム1における積層体3の層構成の一例を示す概略断面図でもある。
【0025】
図1のガスバリアフィルム1における積層体3は、ガスバリア層4と、このガスバリア層4上に形成された撥水層5とから構成されている。以下、このガスバリア層4および撥水層5、さらには、このガスバリアフィルム1の製造方法に分けて、それぞれ説明する。
【0026】
[2−1]ガスバリア層
本発明のガスバリアフィルム1の積層体3を構成するガスバリア層4は、ガスバリア性を付与するためにプラズマCVD法、またはスパッタリング法によって基材上に形成された薄層であり、積層体3に必須の構成である。このガスバリア層4は、ガスバリア層4を有していれば特に限定されるものはなく、透明なものであっても不透明なものであってもよい。
【0027】
ガスバリア層4を透明なものとする場合の層の種類としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化セリウム、酸化カルシウム、酸化カドミウム、酸化銀、酸化金、酸化クロム、酸化珪素、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム・酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化バリウム、等を挙げることができ、これらの酸化物が2種類以上混ざった層であってもよい。また、ITO層なども本発明のガスバリア層として用いることができる。
【0028】
一方、不透明なものとする場合の層の種類としては、アルミニウム、シリコン等を挙げることができ、また金属の薄層は全て、本発明のガスバリア層として用いることができる。
【0029】
本発明においては、例えば包装材として用いる場合等のようにガスバリアフィルムに透明性が要求される用途が多い。したがって、本発明においてはガスバリア層が透明なものであることが好ましく、具体的には上述したような金属酸化物の蒸着層であることが好ましい。
【0030】
本発明においては、中でも酸化珪素層であることが好ましく、特に、Si原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下の成分割合からなり、1055〜1065cm-1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づくIR吸収がある酸化珪素層であることが好ましい。このような特徴を有することにより、ガスバリア性が向上し、表面に撥水層を形成した際のガスバリアフィルムとしてのガスバリア性を極めて高いものとすることができるからである。
【0031】
さらに、このとき、1.45〜1.48の屈折率(λ=633nm)を有するように形成することがより好ましい。このような特性の酸化珪素層を備えるガスバリアフィルムは、極めて優れたガスバリア性を発揮することができるからである。
【0032】
Si、O、Cの各成分割合を、Si原子数100に対してO原子数170〜200およびC原子数30以下にするには、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ等を調節して上記の範囲内に制御することができる。特に、Cの混入を抑制するように制御することが好ましい。例えば、(酸素ガス/有機珪素化合物)の流量比を3〜50程度の範囲で調整することによって、SiO2ライクな層にしてCの混入を抑制したり、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力を大きくすることによって、Si−C結合の切断を容易にして層中へのCの混入を抑制することができる。なお、流量比の上限は便宜上規定したものであり、50を超えても特に問題はない。
【0033】
この範囲の成分組成を有する酸化珪素層は、Si−C結合が少ないので、SiO2ライクな均質層となり、極めて優れたガスバリア性を発揮する。こうした成分割合は、Si、O、Cの各成分を定量的に測定できる装置であればよく、代表的な測定装置としては、ESCA(Electron spectroscopy for chemical analysis)や、RBS(Rutherford back scattering)、オージェ電子分光法によって測定された結果によって評価される。
【0034】
Oの成分割合が170未満となる場合は、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)、の流量比が小さい場合(酸素ガス流量が相対的に少ない場合)や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さい場合にしばしば見られ、結果的にCの成分割合が大きくなる。その結果、層中に多くのSi−C結合を有し、SiO2ライクな均質層ではなくなって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。なお、O原子数は化学量論的に200を超えにくい。また、Cの成分割合が30を超える場合は、Oの成分割合が170未満となる場合と同じ条件、すなわち(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比が小さい場合(酸素ガス流量が相対的に少ない場合)や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さい場合にしばしば見られ、層中にSi−C結合がそのまま残る。その結果、Si−C結合ではなくなって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。一方、Cの成分割合の下限は特に規定しないが、実際の成層工程上の下限値として10に規定することができる。なお、Cの成分割合を10未満とすることは現実問題として容易ではないが、Cの成分割合が10未満であってもよく、SiO2ライクな均質層が得られる。
【0035】
IR測定において、1055〜1065cm-1の間にSi−O−Si伸縮振動に基づく吸収があるようにするには、酸化珪素層をできるだけSiO2ライクな均質層とするように、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比や有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ等を調節して上記の範囲内に制御することができる。例えば、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比を3〜50程度の範囲で調整したり、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力を大きくしてSi−C結合の切断を容易にすることによって、SiO2ライクな層とすることができる。なお、流量比の上限は便宜上規定したものであり、50を超えても特に問題はない。こうしたIR吸収が現れる酸化珪素層は、SiO2ライクな均質層特有のSi−O結合を有するので、極めて優れたガスバリア性を発揮する。
【0036】
IR吸収は、IR測定用の赤外分光光度計で測定して評価される。好ましくは、赤外分光光度計にATR(多重反射)測定装置を取り付けて赤外吸収スペクトルを測定する。このとき、プリズムにはゲルマニウム結晶を用い、入射角45度で測定することが好ましい。
【0037】
この範囲にIR吸収がない場合は、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比が小さい場合(酸素ガス流量が相対的に少ない場合)や有機珪素化合物ガスの]単位流量当たりの投入電力が小さい場合にしばしば見られ、結果的にCの成分割合が大きくなる。その結果、層中にSi−C結合を有することとなって、SiO2ライクな均質層特有のSi−O結合が相対的に少なくなり、上記範囲内にIR吸収が現れない。そうして得られた酸化珪素層は、酸素透過率と水蒸気透過率が大きく、十分なガスバリア性を発揮することができない。
【0038】
酸化珪素層の屈折率を1.45〜1.48にするには、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比や、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力の大きさ等を調節することによって上記範囲内に制御することができる。例えば、(酸素ガス/有機珪素化合物ガス)の流量比を3〜50程度の範囲で調整して制御することができる。なお、流量比の上限は便宜上規定したものであり、50を超えても特に問題はない。この範囲の屈折率を有する酸化珪素層は、繊密で不純物の少ないSiO2ライクな層となり、極めて優れたガスバリア性を発揮する。こうした屈折率は、光学分光器によって測定された透過率と反射率とを測定し、光学干渉法を用いて633nmでの屈折率で評価したものである。
【0039】
屈折率が1.45未満となる場合は、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比が上記の範囲外となる場合や、有機珪素化合物ガスの単位流量当たりの投入電力が小さく、低密度で疎な酸化珪素層が得られる場合にしばしば見られ、成層された酸化珪素層が疎になって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。一方、屈折率が1.48を超える場合は、有機珪素化合物ガスと酸素ガスの流量比が上記の範囲外となる場合や、C(炭素)等の不純物質が混入した場合にしばしば見られ、成層された酸化珪素層が疎に、なって、酸素透過率と水蒸気透過率が大きくなり十分なガスバリア性を発揮することができない。
【0040】
上述した各特性を有する酸化珪素層を5〜300nmの厚さという薄い厚さで形成したガスバリアフィルムは、優れたガスバリア性を発揮することができ、酸化珪素層にクラックが入りづらい。酸化珪素層の厚さが5nm未満の場合は、酸化珪素層が基材の全面を覆うことができないことがあり、ガスバリア性を向上させることができない。一方、酸化珪素層の厚さが300nmを超えると、クラックが入り易くなること、透明性や外観が低下すること、フィルムのカールが増大すること、さらに、量産し難く生産性が低下してコストが増大すること、等の不具合が起こり易くなる。
【0041】
[2−2]撥水層
次に、前記ガスバリア層4上に形成される撥水層5について説明する。本発明に用いられる撥水層は、ガスバリア層4上に形成され、かつ撥水性を有する層であれば特に限定されるものではない。撥水層5を設けることにより、表面に吸着する水や酸素の量を低下させることができ、その結果、ガスバリア性を向上させることができる。
【0042】
本発明に用いられる撥水層5は、その表面の撥水性が、撥水層5表面における水との接触角が、測定温度23℃において、60°以上、特に80°以上となるような撥水性であることが好ましい。水との接触角がこの程度以上あれば、表面に水等が吸着することによるガスバリア性の低下を防止することができるからである。
【0043】
ここで、この水との接触角の測定方法は、協和界面化学社の接触角測定装置(型番CA−Z)を用いて求めた値である。すなわち、被測定対象物の表面上に、純求を一滴(一定量)滴下させ、一定時間経過後、顕微鏡やCCDカメラを用い水滴形状を観察し、物理的に接触角を求める方法を用い、この方法により測定された水との接触角を本発明における水との接触角とすることとする。
【0044】
このような撥水層5は、上述したような撥水性を有する層であればどのような方法により形成されたものであってもよい。具体的には、蒸着法により形成されたものであってもよいし、撥水層形成材料を溶媒に溶解もしくは懸濁させた撥水層形成用塗工液を塗布することにより形成したものであってもよい。また熱可塑性樹脂を用い、この樹脂を溶融させて塗布することにより形成したものや、ドライフィルムを貼り合せる方法等により形成されたものであってもよい。
【0045】
しかしながら、本発明においては、上述したガスバリア層4はプラズマCVD法、またはスパッタリング法により形成されるものであり、同一の真空装置内で連続してガスバリア層4と撥水層5とを形成することができる点、および本発明において用いられる上記基材は長時間プラズマに曝されていてもエッチングされることはない点を考慮すると、プラズマCVD法、またはスパッタリング法により形成された撥水層5が好ましい。
【0046】
なお、従来の撥水性材料をそのまま用いることができる点、またプラズマCVD法またはスパッタリング法に適用できない材料であっても用いることができる点等を考慮すると、上述したような撥水層形成用塗工液を塗布する方法、もしくは熱可塑性樹脂を溶融塗布する方法により形成された撥水層であってもよい。
【0047】
このような撥水層を構成する物質としては、上述したような撥水層の形成方法により大きく異なるものである。具体的には、プラズマCVD法、またはスパッタリング法により撥水層を形成する場合の撥水層を構成する材料としては、金属骨格からなりメチル基を有する有機層、CHのみから構成される有機層、およびFを含む層を挙げることができる。以下、それぞれの層について説明する。
【0048】
1.金属骨格からなりメチル基を有する有機層
このような有機層の金属骨格としては、SiおよびAl等を上げることができる。具体的な材料としては、Six(CH3)yもしくは(SiO)x(CH3)yで示される有機シリコン系材料、またはプラズマCVD法、プラズマ重合法を用いたこれら重合層を挙げることができる。
【0049】
2.CHのみから構成される有機層
具体的には、炭化水素系材料またはその重合層を挙げることができる。このような層の製造方法としては、プラズマCVD法(プラズマ重合法)を用いてもよく、またポリエチレン等のポリオレフィン材料をPVD法により蒸着するようにしたものであってもよい。
【0050】
3.Fを含む層
Fを含む層としては、例えばSixCyF、で示される有機フッ化シリコン材料またはその重合層、SixFyで示されるフッ化シリコン系材料またはその重合層、もしくはCxFyで示されるフッ素含有炭化水素系材料またはその重合層等を挙げることができる。
【0051】
また、上述したような撥水層形成用塗工液を塗布して形成する場合の撥水層を構成する材料としては、フッ素系有機材料、ポリオレフィン系有機材料、メチル基含有珪素材料等を挙げることができる。
【0052】
さらに、熱可塑性樹脂を溶融させて塗布することにより撥水層を形成する場合の材料としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂等のオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
【0053】
その他、例えばフッ素樹脂フィルムやポリエチレンフィルム等ポリオレフィンフィルムを接着剤を用いたドライラミネーション法による貼り合わせることもできる。
【0054】
本発明においては、上述した撥水層を構成する材料の中でも、プラズマCVD法、またはスパッタリング法より形成される場合に用いられる材料が好ましく、特に好ましい材料としては、ヘキサメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルシラン、C2H2、C2H4、CH4、C2H6、CF4、C2F2、C2F4、C2F6、ポリエチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。
【0055】
このような撥水層における好適な層厚は、その製造方法により大きく異なる。具体的には、プラズマCVD法、またはスパッタリング法により撥水層が形成された場合の好ましい層厚としては、1nm〜1000nmの範囲内、特に5nm〜100nmの範囲内が好ましい。一方、他の方法、すなわち撥水層形成用塗工液を塗布することにより形成する方法や、熱可塑性樹脂を溶融させて塗布する方法等における好ましい層厚は、1μm〜100μmの範囲内であり、特に1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0056】
撥水層の厚さが、上記範囲より薄い場合は、例えば撥水層が形成されない部分が生じる等の撥水層としての機能を発揮できない可能性が生じることから好ましくなく、上記範囲より層厚を厚くしても、撥水性に影響を与えないことからコスト面で問題となる可能性があるため好ましくない。
【0057】
また、本発明のガスバリアフィルムは、用途によって透明性を要求される場合がある。したがって、上述した撥水層も透明であることが好ましい。
【0058】
図2は、本発明のガスバリアフィルムの別の実施形態を示す図である。図2に示すように、本発明のガスバリアフィルム1は、基材2と、この基材2上に形成された積層体3とからなり、当該積層体3は、ガスバリア層4および撥水層5がこの順序にそれぞれ4層づつ積層されて形成されて構成されているものである。このようにガスバリア層4と撥水層とを複数層積層することにより、さらにガスバリア性を向上させることができる。
【0059】
本発明においては、このようなガスバリア層4および撥水層の積層が、それぞれ少なくとも2層以上20層以下であることが好ましく、特に2層以上10層以下であることがガスバリア性および製造効率等の観点から好ましいといえる。
【0060】
このような本発明のガスバリアフィルムは、酸素透過率が0.5cc/m2/day以下で水蒸気透過率が0.5g/m2/day以下、より好ましくは酸素透過率が0.1cc/m2/day以下で水蒸気透過率が0.1g/m2/day以下の極めて優れたガスバリア性を発揮する。本発明のガスバリアフィルムは、内容物の品質を変化させる原因となる酸素と水蒸気をほとんど透過させないので、高いガスバリア性が要求される用途、例えば食品や医薬品等の包装材料や電子デバイス等のパッケージ材料用に好ましく用いることができる。また、その高度なガスバリア性および耐衝撃性を共に有する点から、例えば各種ディスプレイ用の基材として用いることが可能である。また、太陽電池のカバーフィルム等にも用いることができる。
【0061】
次に本発明のガスバリアフィルム1の製造方法について説明する。本発明のガスバリアフィルム1は、上述した基材2の片面または両面にプラズマCVD法、またはスパッタリング法により積層体3を形成することにより製造される。
【0062】
ここで、プラズマCVD法とは、一定圧力の原料ガスを放電させてプラズマ状態にし、そのプラズマ中で生成された活性粒子によって基材表面での化学反応を促進して形成する方法である。このプラズマCVD法は、原料ガスの種類・流量、成層圧力、投入電力等によって得られる層の種類や物性を制御できるという利点があり、さらに、本発明のガスバリアフィルム1における基材2は、プラズマに曝されてもエッチングされることがないため、プラズマCVD法を好適に用いることができる。
【0063】
積層体3を構成するガスバリア層4として酸化珪素層を用いる場合においては、プラズマCVD装置の反応室内に、有機珪素化合物ガスと酸素ガスとの混合ガスを所定の流量で供給すると共に、電極に直流電力または低周波から高周波の範囲内での一定周波数を持つ電力を印加してプラズマを発生させ、そのプラズマ中で有機珪素化合物ガスと酸素ガスとが反応することによって、基材2上に所望の酸化珪素層を形成することができる。使用されるプラズマCVD装置のタイプは特に限定されず、種々のタイプのプラズマCVD装置を用いることができる。通常は、長尺の基材2として用い、それを搬送させながら連続的に酸化珪素層を形成することができる連続成層可能な装置が好ましく用いられる。
【0064】
この場合における有機珪素化合物ガスとしては、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシラサンを好ましく用いることができる他、テトラメチルジシロキサン、ノルマルメチルトリメトキシシラン等の従来公知のものを、一種または二種以上用いることができる。キャリアガスとして、ヘリウムガスやアルゴンガスを適宜用いることもできる。
【0065】
また、図1に示すガスバリアフィルム1における撥水層5もプラズマCVD法により形成することが可能であり、この場合の原料ガスとしては、原料ガスとして有機珪素ガス、炭化水素ガス、炭化フッ化ガスのいずれかを用いることが好ましい。
【0066】
そして、このような原料ガスを用いてプラズマCVD法により撥水層を形成する場合においては、さらに、▲1▼メチル基のリッチな薄層を形成する、▲2▼C,Hのみで構成される炭化水素層を形成する、▲3▼フッ素を含む薄層を形成する、のいずれかの方法でより撥水性の高い撥水層を形成できる。以下、これらに用いられる原料ガスについて説明する。
【0067】
▲1▼メチルリッチ有機層形成の場合
有機珪素化合物ガスとしては、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラメチルシラン(TMS)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンを好ましく用いることができる他、テトラメチルジシロキサン、ノルマルメチルトリメトキシシラン等の従来公知のものを、一種または二種以上用いることができる。
【0068】
しかしながら、この場合は、メチルリッチな層を形成する目的から、特に分子内に炭素−珪素結合を多くもつ有機珪素化合物が好適に用いられる。具体的には、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テテトラメチルシラン(TMS)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等を挙げることができ、中でも分子内に炭素−珪素結合を多く有するヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、テトラメチルシランが好ましいといえる。
【0069】
▲2▼炭化水素系材料の場合
炭化水素系材料として、好ましい材料は、CH4、C2H2、C2H4、およびC3H8を挙げることができ、特に好ましくは、C2H2、およびC2H4を挙げることができる。
【0070】
▲3▼フッ素含有有機材料の場合
フッ素含有有機材料としては、CF4、C2F4、C2F6、C3F6、C3F8、CsF8等を挙げることができ、特に、C2F4およびC3F8が特に好ましい。
【0071】
このように、原料ガスのうち有機珪素化合物ガスとして炭素−珪素結合を多く有する有機化合物を用い、さらに上述したような開始時の基材の温度、原料ガスの流量比、さらにはプラズマ発生手段における投入電力、成層圧力を上述した範囲内とすることにより、より優れた撥水層が得られるのは、有機珪素化合物ガスの分解性が低く、層中にメチル基またはフッ素が取り込まれやすくなるから(▲1▼、▲3▼の場合)、もしくは層がCH結合のみで構成される結果として撥水効果の高い層が得られるから(▲2▼の場合)と考えられる。
【0072】
以下に参考例および比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
【0073】
[1]エッチングレート試験
まず、参考例および比較例をより明確にするために、参考例および比較例とは別に、エッチングレート試験を行った。
【0074】
エッチングレート試験は、以下の表1に示す樹脂をそれぞれ試料として用い、これらの試料(試料No.1〜9)について、図3に示す平行平板型プラズマCVD装置(アネルバ製、PED−401)を用いて以下のような手順で行った。
【0075】
【表1】
【0076】
試料20を装置101のチャンバー102内の下部電極114側に装着した。次に装置101のチャンバー102を、油回転ポンプおよびターボ分子ポンプにより、到達真空度3.0×10-5Torr(4.0×10-3Pa)まで減圧した。チャンバー内に酸素ガス(太陽東洋酸素(株)、純度99.9999%以上)12sccm、ヘリウムガス(太陽東洋酸素(株)、純度99.999%以上)30sccmを導入し、真空ポンプ108とチャンバー102との間にあるバルブ113の開閉度を制御することにより、成膜チャンバー内圧力を0.25Torr(33.325Pa)に維持した。この状態で次に、下部電極114に90kHzの周波数を有する電力(投入電力:150W)を印加し、一定時間、試料20を放置し、エッチング処理をした。
【0077】
エッチング処理後にチャンバー102内にガスの供給と真空排気を停止し、大気開放し、エッチング処理された試料20を取り出した。一定時間にエッチングされた膜厚を走査型電子顕微鏡(SEM;日立、S−4500)によって、この試料の厚みを測定し、処理前後の厚みを差し引きすることにより、以下の式でエッチングレートを算出した。
(エッチングレート)=((処理前の基材厚み)−(処理後の基材厚み))/(基材処理時間)
表2に本評価で用いた試料No.1〜9のフィルム基材と得られたエッチングレートの結果を示す。
【0078】
【表2】
【0079】
表2からも明らかなように、試料No.1〜4についてはエッチングレートがいずれも0.001〜0.15μm/minの間であり、優れた耐エッチング性を有していることがわかる。一方、試料No.5〜9についてはエッチングレートが0.15μm/minより大きく、酸素ガスやヘリウムガスによりその表面がエッチングされていることが分かった。
【0080】
[2]ガスバリア性試験
以下に参考例および比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
【0081】
(参考例1)
図3に示す平行平板型プラズマCVD装置(アネルバ製、PED−401)を用い、基材として上記試料No.1の樹脂を準備し、プラズマCVD装置101のチャンバー102内の下部電極114側に装着した。次に、CVD装置101のチャンバー102内を、油回転ポンプおよびターボ分子ポンプにより、到達真空度3.0×10−5Torr(4.0×10−3Pa)まで減圧した。また、原料ガス112として、テトラメトキシシラン(TMOS)ガス(信越化学工業(株)、KBM−04)および酸素ガス(太陽東洋酸素(株)、純度99.9999%以上)、ヘリウムガス(太陽東洋酸素(株)、純度99.999%以上)30sccmを導入を準備した。
【0082】
次に、下部電極114に90kHzの周波数を有する電力(投入電力:300W)を印加した。そして、チャンバー102内の電極近傍に設けられたガス導入口109から、HMDSOガスを1sccm、酸素ガスを5sccm、ヘリウムガスを30sccm導入し、真空ポンプ108とチャンバー102との間にあるバルブ113の開閉度を制御することにより、成膜チャンバー内圧力を0.25Torr(33.325Pa)に保ち、基材上に蒸着膜3としての酸化珪素膜の成膜を行った。ここで、sccmは、standard cubic cm per minuteの略である。膜厚が100nmになるまで成膜を行い、参考例1のガスバリアフィルムを得た。
【0083】
(参考例2)
基材として上記試料No.2の樹脂を用いた以外は、上記参考例1と同様にして参考例2のガスバリアフィルムを得た。
【0084】
(参考例3)
基材として上記試料No.3の樹脂を用いた以外は、上記参考例1と同様にして参考例3のガスバリアフィルムを得た。
【0085】
(参考例4)
基材として上記試料No.4の樹脂を用いた以外は、上記参考例1と同様にして参考例4のガスバリアフィルムを得た。
【0086】
(比較例1)
基材として上記試料No.5の樹脂を用いた以外は、上記参考例1と同様にして比較例1のガスバリアフィルムを得た。
【0087】
(比較例2)
基材として上記試料No.6の樹脂を用いた以外は、上記参考例1と同様にして比較例2のガスバリアフィルムを得た。
【0088】
(比較例3)
基材として上記試料No.7の樹脂を用いた以外は、上記参考例1と同様にして比較例3のガスバリアフィルムを得た。
【0089】
(比較例4)
基材として上記試料No.8の樹脂を用いた以外は、上記参考例1と同様にして比較例4のガスバリアフィルムを得た。
【0090】
(比較例5)
基材として上記試料No.9の樹脂を用いた以外は、上記参考例1と同様にして比較例5のガスバリアフィルムを得た。
【0091】
(ガスバリア性試験の結果)
以下の表3は、上記参考例1〜4及び比較例1〜5のガスバリアフィルムについて酸素透過率(OTR)試験と水蒸気透過率(WVTR)試験の結果を示したものである。
【0092】
なお、酸素透過率は、酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製:OX−TRAN 2/20)を用い、23℃、90%Rhの条件で測定した値である。また、水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製:PERMATRAN−W 3/31)を用い、37.8℃、100%Rhの条件で測定した値である。
【0093】
【表3】
【0094】
通常、ガスバリアフィルムの性能の良否を判断する場合には、酸素透過率が0.5cc/m2/day、水蒸気透過率が0.5g/m2/dayを基準とし、これらの基準以下の場合には、ガスバリア性が優れていると判断される。そうすると、表3からも明らかなように、参考例1〜4のガスバリアフィルムは共に酸素透過率が0.5cc/m2/day以下であり、水蒸気透過率が0.5g/m2/day以下であるのでいずれも優れたガスバリア性を有していることが分かった。
【0095】
一方、比較例1のガスバリアフィルムは、酸素透過率が0.5cc/m2/dayより大きく、水蒸気透過率も0.5g/m2/dayより大きく、参考例に比べガスバリア性が劣っていることが分かった。
【0096】
【発明の効果】
本発明のガスバリアフィルムによれば、1Pa〜90Paの圧力下において酸素ガス、又は酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを導入し、当該ガスによりエッチングした場合のエッチングレートが0.001μm/min〜0.15μm/minの高分子樹脂が基材であるため、ガスバリア層を形成する際に当該基材が高エネルギーを有するプラズマに曝されても、基材表面がエッチングされることがない。その結果、従来のエッチングされやすい基材に比べて、基材の厚さを薄くすることができるので、よりフレキシブルなガスバリアフィルムとすることができる。また、エッチングされないので、ガスバリア性にムラがなく、基材と積層体との密着性が低下することもない。さらに基材そのもののガスバリア性が低下することもないため、優れたガスバリア性を有するガスバリアフィルムを形成することができる。
【0097】
また、積層体中に撥水層を設けることにより、ガスバリア性をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガスバリアフィルムの一例を示す断面構成図である。
【図2】本発明のガスバリアフィルムの他の一例を示す断面構成図である。
【図3】平行平板型プラズマCVD装置の概略図である。
【符号の説明】
1 ガスバリアフィルム
2 基材
3 積層体
4 ガスバリア層
5 撥水層
20 試料
101 平行平板型プラズマCVD装置
Claims (2)
- 基材と、
当該基材の片面または両面に位置し、少なくとも、ガスバリア層と撥水層とを有する積層体と、からなるガスバリアフィルムであって、
前記基材は、1Pa〜90Paの圧力下において酸素ガス、または酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスを導入し、当該ガスにより基材をエッチングした場合のエッチングレートが0.001μm/min〜0.15μm/minの高分子樹脂であり、
前記積層体を構成するガスバリア層は、酸化珪素層であって、プラズマCVD法またはスパッタリング法によって形成されており、また、前記積層体を構成する撥水層は、金属骨格からなりメチル基を有する有機層、CHのみから構成される有機層、またはFを含む層の何れかであって、前記ガスバリア層と同一の方法によって形成されていることを特徴とするガスバリアフィルム。 - 前記基材が、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂、又はベースとなる任意に選択された樹脂上の少なくとも一方に、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、結晶化ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂、のうちから任意に選択される1又は2以上の樹脂が接着されてなる複合樹脂、のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルム。
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