以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる運転操作支援装置及びその動作(運転操作支援方法)について説明する。
〔第1の実施形態〕
始めに、本発明の第1の実施形態となる運転操作支援装置について説明する。
〔運転操作支援装置の構成〕
本発明の第1の実施形態となる運転操作支援装置は、図1に示すように、前輪の操舵量を制御可能な操舵システムを有する車両1に搭載され、ステレオカメラ2a,2b、車速センサ3a,3b、ヨーレートセンサ4、加速度センサ5、操舵角センサ6,音声出力装置7,表示装置8,及びマイクロプロセッサ9を主な構成要素として備える。
ステレオカメラ2a,2bは、車室内前方に設けられ、車両1前方の画像を撮影する。ステレオカメラ2a,2bは、車両1前方の画像に対し画像処理を施すことにより車両1前方の障害物,車両1と障害物間の距離,道路(走行路),道路境界(白線等)等の車両1の外界環境情報を検出し、検出結果をマイクロプロセッサ9に入力する。ステレオカメラ2a,2bは、図2に示す本発明に係る外界環境検出手段21として機能する。
車速センサ3a,3bは、車両1の前左右輪のホイールに取り付けられたロータリーエンコーダにより構成され、ホイール回転に応じて発生するパルス信号に基づいて車速を検出する。車速センサ3a,3bは、検出値をマイクロプロセッサ9に入力する。ヨーレートセンサ4は、水晶振動子や半導体装置等により形成される公知のヨーレート検出装置により構成され、車両1の重心位置に発生するヨーレートを検出する。ヨーレートセンサ4は、検出値をマイクロプロセッサ9に入力する。
加速度センサ5は、圧電素子等により形成される公知の加速度検出装置により構成され、車両1に発生する車幅方向の加速度を検出する。加速度センサ5は、検出値をマイクロプロセッサ9に入力する。操舵角センサ6は、ステアリングコラム内に設けられ、車両1のステアリングの操舵角(回転角度)を検出する。操舵角センサ6は、検出値をマイクロプロセッサ9に入力する。車速センサ3a,3b、ヨーレートセンサ4、加速度センサ5、及び操舵角センサ6は、図2に示す本発明に係る自車状態検出手段22として機能する。
マイクロプロセッサ9は、A/D変換回路,D/A変換回路,中央演算処理装置,メモリ等により形成される集積回路により構成され、車速センサ3a,3b、ヨーレートセンサ4、加速度センサ5、及び操舵角センサ6から入力された情報に基づき図2に示す本発明に係る走行支援手段27として機能する音声出力装置7及び表示装置8を制御する。本実施形態では、マイクロプロセッサ9は、2つの中央演算処理装置を有することにより2つの演算処理を同時に実行可能なように構成されている。マイクロプロセッサ9は、内部のCPUが制御プログラムを実行することにより、図2に示す本発明に係る障害物移動軌跡候補生成手段23,走行経路算出手段24,障害物移動軌跡確率推定手段25,及び走行経路選択手段26として機能する。
〔運転操作支援処理〕
このような構成を有する運転操作支援装置では、マイクロプロセッサ9が以下に示す運転操作支援処理を実行することにより、適切な回避経路を迅速に出力する。以下、図3に示すフローチャートを参照して、この運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作について説明する。
図3に示すフローチャートは、車両1のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられたタイミングで開始となり、運転操作支援処理はステップS1の処理に進む。なお以下では、図4に示すような、車両1が片側1車線の直線道路を走行している時に車両1の走行車線左側前方に左方向から右方向に移動する障害物Oが検出された走行シーンを例として運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作を説明する。
ステップS1の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステレオカメラ2a,2bにより撮影された画像及び各センサの検出値を内部のバッファメモリにロードし、自車両1,障害物O,及び道路境界の位置情報を同じ座標系で記述可能なようにステレオカメラ2a,2bの撮影画像を利用して座標系を設定する。本実施形態では、マイクロプロセッサ9は、図4に示すように車両1の進行方向をX軸、そのX軸と垂直な方向をY軸、車両1の現在位置をX座標の原点、道路の中心線付近をY座標の原点とする座標系を設定する。このような座標系を設定することにより車両1の重心位置を(x,y)といった形で表記することができる。
車両1の走行状態を表す状態量としてはヨー角θ,車速ν,車体すべり角β,ヨーレートγ,及び前輪の転舵角δが重要である。これらの状態量のうち車速νは、非駆動輪の車輪速で近似できるので、非駆動輪に取り付けた車速センサ3a,3bにより検出できる。ヨーレートγはヨーレートセンサ4により検出できる。ヨー角θは、道路が直線であると仮定して道路境界と車両1の向いている方向とのなす角を画像処理により推定する、又は適当な初期値を定めてヨーレートセンサ4の出力値を積分することにより、算出できる。車体すべり角βは、車両前後方向の速度をνx、車幅方向の速度をνyとすれば、以下の数式1により算出できる。
車両前後方向の速度νxを車速νで近似し、車幅方向の速度νyを車両1の横加速度を測定するように設置された加速度センサ5の出力を積分することによって求めれば、後述する数式11式から車体すべり角βの近似値を得ることができる。これ以外にも車速,ヨーレート,横加速度等の信号からオブザーバによってより精度良く車体すべり角βを推定する公知技術も知られているので、そのような手法を用いて車体すべり角βを得てもよい。前輪の転舵角δは操舵角センサ6から取得できる。以上のことから、上記で挙げた車両1の運動状態を記述する状態量は全てセンサの検出信号を処理することにより具体的な値を検出できる。
障害物Oを検出している場合、その中心点の位置座標(xp,yp)及び障害物Oの幅σy,奥行きσxの各値は、ステレオカメラ2a,2bから取得した画像情報を処理することによって算出できる。奥行きσxは撮影方向によっては測定が困難な場合もあるが、その場合には便宜的に幅σyと同じ値を設定しておくとよい。なお障害物Oが検出されなかった場合、障害物Oに関する物理量は算出しない。またステレオカメラ2a,2bによる道路境界検出によって検出された道路の左端及び右端の位置を上記座標系上の値に変換してそれぞれ(0,yL),(0,yR)とする。図4の走行シーンに対し設定した座標系と物理量の例を図5に示す。以上のようにしてマイクロプロセッサ9は、適当な座標系を設定し、車両1,障害物O,及び道路境界に関する情報を設定した座標系上の値として算出する。これにより、ステップS1の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS2の処理に進む。
ステップ2の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS1の処理において障害物Oが検出されたか否かを判別する。判別の結果、障害物Oが検出されなかった場合、マイクロプロセッサ9は一連の運転操作支援処理を終了する。一方、障害物Oが検出された場合には、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS3の処理に進める。なお障害物Oが検出された場合であっても、車両1と障害物O間の距離が所定値以上である場合等、車両1が障害物と接触する可能性が低い場合には、マイクロプロセッサ9は一連の運転操作支援処理を終了するようにしてもよい。
ステップ3の処理では、マイクロプロセッサ9が、障害物Oの移動軌跡を生成する。一般に、障害物Oが今後どのような挙動を取るのかを確実に予測することは困難であるが、周囲の道路状況や障害物の出現位置等を勘案することにより、障害物Oの今後の動き方について幾つかの代表的なパターンを想定できる。例えば図4に示す走行シーンは、直線道路の単路部の道路脇に障害物Oを検出した場面であり、障害物Oが歩行者であれば道路の横断を意図しているとの推測が可能である。その場合、障害物Oの予想される動き方としては、(1)車両1の接近に関わらず横断を続ける場合と(2)車両1の接近に気がついて途中で移動を停止する場合との大別すれば2通りの動き方が考えられる。そしてそれぞれの動き方に対応して、障害物Oの移動軌跡も2通りの代表的な軌跡が考えられる。すなわち(1)に対応する移動軌跡は以下の数式2に示す軌跡であり、(2)に対応する移動軌跡は以下の数式3に示す軌跡である。
なお数式2,3においては、現在時刻t=0とし、現時点で検出されている歩行者の位置をxp(0),yp(0)、y方向の移動速度をνp y としている。またパラメータt1は歩行者が移動を停止する時刻、パラメータyp(t1)は時刻t1における歩行者の予想位置(y座標)を示す。また時刻t1と歩行者の予想位置yp(t1)は以下の数式4に従って設定される。
数式4中、パラメータTSTOPは歩行者が車両1の前を通過した後に車両1の存在に気がついて移動を停止するまでの代表的な経過時間を表す正の値である。図4以外の走行シーンについても、代表的な事故事例に基づいて障害物Oの動き方の代表的なパターンを想定し、対応する移動軌跡を記憶しておくことができる。これにより、マイクロプロセッサ9は、センサの検出値を用いて予め記憶した走行シーンの中から現在の走行シーンに最も近い走行シーンを抽出することにより、障害物Oの移動軌跡を生成することができる。これにより、ステップS3の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS4の処理に進む。
ステップS4の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップ3の処理により生成された障害物Oの複数の移動軌跡それぞれに対して、障害物Oとの接触を回避するための車両1の走行経路を算出する。走行経路の算出にあたっては、走行経路に対する評価関数を障害物Oの移動軌跡や道路状況等に基づいて定義し、評価関数の最適値を達成するという基準で走行経路を算出することにより、障害物Oの移動に適切に対処する走行経路を算出できる。以下に走行経路算出処理の手順を示す。
走行経路を算出する際には、始めに、車両1の運動を記述するモデルを導入する。車両1の運動を記述するモデルとしては、四輪車両の運動を二輪車両の運動で近似する二輪モデルがよく知られている。いま車速が一定であると仮定すると、二輪モデルは以下の数式5〜10に示す微分方程式で記述される。
但し、パラメータm,I,lf,lrはそれぞれ車両質量,車両ヨー慣性モーメント,車両重心から前輪軸までの距離,及び車両重心から後輪軸までの距離を表す。またパラメータYf,Yrはタイヤ横力を表す関数であり、それぞれ前輪すべり角βf、後輪すべり角βrの関数であると仮定している。なお前輪すべり角βfと後輪すべり角βrは以下の数式11,12を用いて計算できる。
タイヤ横力関数Yf,Yrは図6に示すような非線形関数で表現できる。さらに前輪の転舵角δは、転舵速度δνの積分で得られるので、前輪の転舵角δと転舵速度δνは以下の数式13に示す関係を満足する。
以上の数式5〜13をまとめると、前輪転舵速度δνを入力とする以下の数式14に示す微分方程式モデルが得られる。
数式14中、状態ベクトルDは(x,y,θ,β,γ,δ)と定義される。車両1がこの数式14に従って走行すると仮定すると、入力である前輪転舵速度δνの時系列変化が決まれば、数式14を積分することにより状態ベクトルDの時系列変化も決まることになる。状態ベクトルDには位置座標x,yが含まれているので、状態ベクトルDの時系列変化は走行経路の情報を含んでいることになる。すなわち、車両1の走行経路を算出するためには前輪転舵速度δνの時系列変化を算出すればよい。そこで障害物Oを回避する走行経路を得るために、時刻tにおける前輪転舵速度δνの時系列変化を数値的に評価する以下の数式15に示す評価関数J[δν]を導入する。
パラメータTは算出する時間の長さを表すパラメータであり、障害物回避の問題の場合、障害物Oの回避状態から元の直進走行状態に復帰するまでの一連の回避操作を終えられる程度の長さの時間を設定する。またパラメータψは時刻t+Tにおける車両運動状態の望ましさを評価する評価式、パラメータLは時刻tから時刻t+Tまでの間の各時刻における車両運動状態及び操作量の望ましさを評価する評価式、パラメータτは時刻tから時刻t+Tまで変化する積分変数を示す。評価式L及びパラメータψは以下の要請項目(1)〜(4)を反映する評価項を組み合わせることで構成される。
(1)障害物Oに近づきすぎない。
(2)道路境界に近づきすぎない。
(3)前輪舵角を必要以上に切りすぎない。
(4)回避運動終端での車両ヨー角を道路進行方向に近づける。
要請項目(1)は、車両1と障害物O間の距離が近くなればなるほど値が大きくなる関数によって表現する。具体的には以下の数式16に示す関数を利用できる。障害物Oの位置を示すパラメータxP,yPには障害物Oの移動軌跡の情報が割り当てられる。
要請項目(2)は、車両1と道路境界との距離が近くなれば近くなるほど値が大きくなる関数によって表現する。具体的には以下の数式17に示す関数を利用できる。但し、パラメータΔは道路境界への接近の余裕幅を指定するパラメータであり、パラメータΔの値が大きいほど道路境界との接近余裕を大きくとる回避経路が算出される。評価式LP,LRは道路上に障害物Oと道路境界との接触リスクを反映したリスクポテンシャルを定義することになる。評価式LP,LRを足し合わせた関数をXY座標上にプロットした図を図7に示す。中央の山が障害物Oに対応する関数LPによって形成されたポテンシャルであり、両側の山が道路境界に対応する関数LRによって形成されたポテンシャルである。回避経路は、図7に示したリスクポテンシャル場の値の低い領域に可能な限り沿うようにして生成されることになる。
要請項目(3)は、可能な限り小さな転舵速度で回避操作をとることによって効率的な回避を行うことを要請するために導入した項目である。評価式LFとしては以下の数式18に示す関数を利用できる。
以上の3つの評価式に適当な重みをつけて足し合わせた関数を評価式Lとして構成する。すなわちパラメータwP,wR,wFをそれぞれ要項項目(1),(2),(3)に対する重みとすると、評価式Lは以下の数式19のように表される。
要請項目(4)は、回避運動後の車両姿勢を立て直すために導入した要請項目である。直線道路においては時刻t+Tにおける車両ヨー角を評価する関数として以下の数式20に示す関数を用いることができる。そこで数式20に示す関数に適当な重みパラメータwyawをつけて以下の数式21に示すようにすることにより時刻t+Tにおける評価項を構成する。
以上のように評価関数を定義すると、前輪転舵速度δνの時系列変化の計算を数式14に示す制御対象及び数式15に示す評価関数で定義される最適制御問題として定式化することができるので、最適制御問題を数値的に解く公知技術を利用することで前輪転舵速度δνの時系列変化を算出することができる。最適制御問題以上の定式化に基づいて、生成された障害物移動軌跡それぞれに対して順番に車両1の回避経路を前輪転舵速度δνの時系列変化の形で算出することができる。本実施形態では障害物Oの移動軌跡が2つ生成されるので、車両1の走行経路も2つ算出されることになるが、マイクロプロセッサ9に搭載された2つの演算処理ユニットそれぞれで1つずつ走行経路演算を実施することで同時に2つの走行経路を算出することができる。このような処理によれば、走行経路の演算に要する時間を短縮することができる。これにより、ステップS4の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS5の処理に進む。
ステップS5の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS3の処理により生成された障害物Oの移動軌跡の実現確率を評価する。ステップS3の処理では、マイクロプロセッサ9は、予め記憶された走行シーンの中から車両1が置かれた走行シーンに最も近い走行シーンを抽出し、抽出された走行シーンにおいて障害物Oが取り得る代表的な移動軌跡)を列挙しているが、このステップS5の処理では、実際に検出された障害物Oの動き情報に基づいてどの動き方が実際に実現する確率が高いか否かを評価して走行経路を選択する際の判断材料とする。
障害物Oが無生物でない場合、障害物Oの動き方には障害物Oが持つ意思が大きく影響する。障害物Oの意思を直接測定する手段はないが、障害物Oが置かれた状況と障害物Oの動き情報から間接的に障害物の意思に相当する情報を推定することができる。そのような推定を行う枠組みとしてベイジアンネットワークによる確率推論の手法が知られている。ベイジアンネットワークでは事象間の因果関係をモデル化し、因果関係モデルの中の既知の事象をもとに因果関係の連鎖をたどって推論を行い、未知の事象の確率分布を推定することができる。
例えば図4に示す走行シーンで障害物Oの意思が車両1との縦方向距離、自車に対する相対横位置、道路の車線数の3つの要因によって大きく左右されており、障害物Oの意思が障害物Oの動きに大きく影響していると考えた場合、図8に示すようなベイジアンネットワークを構築することができる。ここでは車両1との縦方向の距離を遠・中・近の3段階、車両との横方向の相対位置を左・正面・右の3段階、道路の車線数を車両側1車線・2車線・4車線の3段階に分類し、各事象が生起した場合に障害物意思が移動継続と途中停止のどちらになる傾向があるのかの統計的性質を条件付確率分布の表にまとめておく。
一方、障害物意思が移動継続又は途中停止になった場合、障害物Oの動きがどのように検出されるのかについての因果関係も条件つき確率分布としてまとめておくことができる。実際の推定にあたっては、障害物意思以外の全ての事象が測定可能なので、条件付き確率で規定された因果関係に基づいて、合理的な障害物意思の確率分布を推定することができる。以上の処理により、想定した障害物Oの動き方それぞれに対して、その実現確率と対応する回避経路のペアが作られることになる。これにより、ステップS5の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS6の処理に進む。
ステップS6の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS3及びステップS5の処理結果に基づいて、現時刻において最終的にどの走行経路を回避経路として出力すべきかを選択する。選択ルールとしては様々なものが考えられるが、単純な選択基準として実現確率が高い障害物の移動軌跡に対応する走行経路を選択するというルールが考えられる。これにより、ステップS6の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS7の処理に進む。
ステップS7の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS6の処理により選択された走行経路に基づいて音声出力装置7と表示装置8を駆動する信号を生成する。運転操作支援の方法としては、表示装置8に図9に示すように検出した前方状況の鳥瞰図に走行経路を重ね書きした画面を表示することが考えられる。このような構成によれば、運転者は走行経路を直感的に理解することができる。また障害物Oの移動軌跡の実現確率の高さに応じて、表示に濃淡をつける等の工夫を加えることも可能である。また選択された走行経路に沿って走行するために大きな転舵角速度が必要になっている場合には、音声出力装置7から警告音を出力して運転者に注意を喚起するといった支援を行うこともできる。これにより、ステップS7の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態となる運転操作支援装置によれば、マイクロコンピュータ9が、障害物Oが取り得る移動軌跡の候補を複数生成し、生成された移動軌跡の各候補について、障害物Oが移動軌跡に沿って動いた場合に自車両1が障害物Oに接触することを回避可能な自車両1の走行経路を算出し、算出された複数の走行経路の中から最適な走行経路を選択する。そしてこのような構成によれば、自車両1の走行経路が障害物Oとの接触を回避することを前提として生成されるので、適切な走行経路を迅速に出力することができる。
また本発明の第1の実施形態となる運転操作支援装置によれば、マイクロコンピュータ9が、道路境界を考慮して障害物Oが取り得る移動軌跡の候補を生成し、道路境界内に留まりながら自車両1が障害物Oに接触することを回避可能な走行経路を算出するので、道幅に制約がある道路上においても、障害物Oの移動軌跡を精度高く予測すると共に適切な走行経路を生成することができる。
また本発明の第1の実施形態となる運転操作支援装置によれば、マイクロコンピュータ9が、移動軌跡の各候補の実現確率を推定し、推定された実現確率に基づいて最適な走行経路を選択するので、障害物Oとの接触を回避する確率が高い適切な走行経路を出力することができる。
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態となる運転操作支援装置の構成について説明する。
〔運転操作支援装置の構成〕
本発明の第2の実施形態となる運転操作支援装置は、図10に示すように、前輪の操舵量を制御可能な操舵システムを有する車両1に搭載され、ステレオカメラ2a,2b、車速センサ3a,3b、ヨーレートセンサ4、加速度センサ5、操舵角センサ6,マイクロプロセッサ9、操舵トルクセンサ11、転舵角センサ12、転舵アシストモータ13、及びモータコントローラ14を主な構成要素として備える。なおステレオカメラ2a,2b、車速センサ3a,3b、ヨーレートセンサ4、加速度センサ5、及び操舵角センサ6の構成は上記第1の実施形態と同じであるので、以下ではその説明を省略する。
マイクロプロセッサ9は、A/D変換回路,D/A変換回路,中央演算処理装置,メモリ等により形成される集積回路により構成され、車速センサ3a,3b、ヨーレートセンサ4、加速度センサ5、操舵角センサ6、操舵トルクセンサ11、及び転舵角センサ12から入力された情報に基づき図11に示す本発明に係る走行支援手段27として機能する転舵アシストモータ13及びモータコントローラ14を制御する。本実施形態では、マイクロプロセッサ9は、2つの中央演算処理装置を有することにより2つの演算処理を同時に実行可能なように構成されている。マイクロプロセッサ9は、内部のCPUが制御プログラムを実行することにより、図11に示す本発明に係る障害物移動軌跡候補生成手段23,走行経路算出手段24,障害物移動軌跡確率推定手段25,走行経路選択手段26、運転者行動−障害物移動軌跡整合性評価手段31,及び走行経路リスク評価手段32として機能する。
操舵トルクセンサ11は、ステアリングコラム内に取り付けられ、運転者の操舵トルクを検出する。操舵トルクセンサ11は、検出値をマイクロプロセッサ9に入力する。転舵角センサ12は、転舵角を検出し、検出値をマイクロコンピュータ9に入力する。モータコントローラ14は、転舵アシストモータ13を制御することにより転舵アシストトルクを操舵系に加える。
〔運転操作支援処理〕
このような構成を有する運転操作支援装置では、マイクロプロセッサ9が以下に示す運転操作支援処理を実行することにより、精度の高い回避経路を迅速に出力する。以下、図12に示すフローチャートを参照して、この運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作について説明する。
図12に示すフローチャートは、車両1のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられたタイミングで開始となり、運転操作支援処理はステップS1の処理に進む。なお以下では、図4に示す走行シーンを例として運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作を説明する。またステップS11乃至ステップS13の処理は上記ステップS1乃至ステップS3の処理と同じであるので、以下ではステップS4の処理から説明する。
ステップS14の処理では、マイクロプロセッサ9が、本実施形態では走行支援手段27として転舵アシストモータ13及びモータコントローラ14を用いる構成となっているために、最適制御問題の入力を前輪転舵速度δνから操舵トルク指令値Tsteerに変更した定式化に基づいて走行経路を算出する。具体的には数式5〜13に以下の数式22を加える。
これは操舵系のモデルを以下の数式23に示す2次系で近似したモデルを用いることを意味する。ここでパラメータζ,ω,Kは操舵系モデルのパラメータである。これにより、ステップS4の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS5の処理に進む。
ステップS15の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS14の処理により算出された走行経路の評価値(走行経路評価値)を算出する。走行経路の評価値としては、数式15に示す評価関数をそのまま用いることができるので、算出された操舵トルク指令値Tsteerに対して数式14に示す微分方程式の積分と数式15に示す計算を行うことで走行経路の評価値を得ることができる。また走行経路の評価値として、例えば障害物評価項LPと道路境界評価項LRの和だけを用いる方法や、障害物評価項LPと道路境界評価項LRの最大値(最悪値)を取り出して評価値として使用することもできる。これにより、ステップS15の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS16の処理に進む。
ステップS16の処理では、マイクロプロセッサ9が、障害物の移動軌跡の実現確率を推定する。基本的な処理は第1の実施形態におけるステップS5の処理と同じであるが、本実施形態では、障害物の属性の認識結果を考慮して実現確率の推定精度を上げるための処理が追加される。具体的には、障害物の属性の認識結果を反映させるために、図13に示すように、推定モデルを構成するベイジアンネットワークに障害物属性のノードを追加し、障害物意思の因果関係を表す条件付確率分布が障害物属性によっても変わるモデルを構成する。障害物属性としては、例えば障害物を大人,子供,無生物の3種類に分類し、分類結果をノードに設定することにより、精度の高い推定を行うことができる。なお属性認識によって対象を明確に特定することができない場合であっても、分類の信頼度に応じた確率分布をノードに入力して推論計算を行うことにより、信頼度に応じた精度の向上を期待することができる。これにより、ステップS16の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS17の処理に進む。
ステップS17では、マイクロプロセッサ9が、ステップS13の処理により生成された障害物の移動軌跡と運転者の車両操作とを比較することにより、各移動軌跡が運転者が予想していると推測される移動軌跡と整合性を有しているか否かを指標化(運転者行動−障害物移動軌跡整合性評価値)する。具体的には、図4に示す走行シーンで運転者が右方向に操舵を行っているとすれば、運転者は障害物が途中で停止する又は障害物の移動速度が十分に遅いので右方向に回避できると予測していると推測することができる。逆に右方向への操舵量が小さい又は運転者が左方向に操舵を行っている場合には、障害物が移動し続けるために右方向への回避はリスクを増大させるという予測を行っていると推測することができる。以上のような関係も、移動軌跡の実現確率の推定と同様、ベイジアンネットワークを用いてモデル化することができる。すなわち、運転者の予測は、車両と障害物との距離及び障害物の横方向の移動速度に影響を受けると考えられる。また運転者の予測に応じて操舵及び制動操作が行われると考えられる。以上の因果関係をモデル化すると、図14に示すベイジアンネットワークモデルを構築することができる。図14に示すモデルでは、運転者の予測状態として、「移動継続」と「途中停止」以外に「危険認識なし」という3種類の状態を想定している。このモデルにおいても、運転者の予測状態以外は全て測定可能な情報で構成されているので、各ノードにセンサで検出された情報を設定した上で確率推論を実行することにより、運転者の予測状態の確率分布を算出することができる。ある予測状態の確率が高いということは、運転者がその予測に従って操作している場合に行うであろう操作と現在検出されている操作が類似しているということを意味しているので、算出された確率を移動軌跡に対する運転者行動との整合性指標として利用することができる。これにより、ステップS17の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS18の処理に進む。
ステップS18の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS14の処理により検索された走行経路の中から走行経路を選択する。第1の実施形態では、走行経路に付随する評価指標は移動軌跡の実現確率だけであったが、本実施形態ではステップS15〜ステップS17までの処理により3種類の指標が算出されているので、マイクロプロセッサ9はこれら3種類の指標を総合的に勘案して走行経路を選択する。具体的には、障害物が途中で停止するとした予測に基づく移動軌跡に対する実現確率,走行経路評価値,及び運転者行動−障害物移動軌跡整合性評価値をそれぞれpS,Js,qs、障害物が移動し続けるとした予測に基づく移動軌跡に対する評価値をそれぞれpM,JM,qMとし、マイクロプロセッサ9は、以下の数式24に示す総合スコアを各移動軌跡について算出し、総合スコアの高い移動軌跡に対応する走行経路を選択する。数式24中、パラメータkp,kJ,kqは各指標に対する重みを示す。
なお上記の選択方法以外にも、実現確率pが所定値以下ではないことを条件に運転者行動−障害物移動軌跡整合性評価値qが高い方の走行経路を選択するという選択ルールを構成することにより、運転者の認識ミス(実現確率pが明らかに低い)の疑いが小さければ基本的には運転者操作との整合性が高い走行経路を選択するようにしてもよい。また運転者行動−障害物移動軌跡整合性評価値qがどちらも所定値以下である場合には、実現確率pが高い方の走行経路を選択するという選択ルールを構成することにより、運転者の行動がはっきりしない場合には装置側で実現確率が高いと予測している移動軌跡に対応する走行経路を選択し、運転者の確実性の高い走行経路を取ることを促すようにしてもよい。さらに、実現確率pと運転者行動−障害物移動軌跡整合性評価値qのどちらの値も所定値以下である場合には、運転者も装置も確度の高い予測が難しい状態を意味しているので、当面は走行経路評価値Jの良い(リスクの小さい)走行経路を選択するようにしてもよい。これにより、ステップS18の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS19の処理に進む。
ステップS19の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS8の処理より選択された走行経路に対応する操舵トルク指令値Tsteerを読み出し、運転者の操舵トルクとの偏差分の操舵補助トルクを発生するためのモータ制御指令値を算出する。そしてモータコントローラ14、モーター制御指令値に従って転舵アシストモータ13の動作を制御することにより操舵補助トルクを発生させる。これにより、ステップS19の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
このように本発明の第2の実施形態となる運転操作支援処理によれば、運転者が的確な状況認識と将来予測に基づいて運転を行っている場合には、運転者の意向に沿う形で操舵補助トルクが出力され、運転者の回避操作がスムーズに行われることを支援する。一方、運転者が明らかに不適切な操作を行っていたり、操作が必要な局面で迷う等して回避操作が行われていない場合には、操舵補助トルクによって運転者に適切な走行経路に沿って走行することを促すような動作が行われる。
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロコンピュータ9が、障害物Oの属性を推定し、推定された障害物Oの属性に基づいて障害物Oの移動軌跡の候補を生成するので、上記第1の実施形態となる運転操作支援処理により得られる効果に加えて、障害物Oの移動軌跡を精度高く予測することができる。
また本発明の第2の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロコンピュータ9が、走行経路の評価値を算出し、算出された評価値に基づいて最適な走行経路を選択するので、上記第1の実施形態となる運転操作支援処理により得られる効果に加えて、設定した評価方針に適合した走行経路を出力することができる。
また本発明の第2の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロコンピュータ9が、運転者の行動と移動軌跡の候補との整合性の評価値を算出し、算出された整合性の評価値に基づいて最適な走行経路を選択するので、運転者の主観的な予測に近い障害物の移動軌跡に対応する走行経路を選択し、運転者の思い描いている回避方針に沿った走行経路を出力することができる。
また本発明の第2の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロコンピュータ9が、移動軌跡の候補の実現確率、走行経路の評価値、及び運転者行動−障害物移動軌跡整合性の評価値の3つの要素をうち、少なくとも2つの要素を組み合わせた評価に基づいて最適な走行経路を選択するので、単一の指標だけで選択する場合よりも適切で信頼性が高い走行経路を出力することができる。
また本発明の第2の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロコンピュータ9が、実現確率が所定値以上の移動軌跡の候補の中から整合性の評価値が最も高い移動軌跡に対する走行経路を最適な走行経路として選択するので、運転者の回避方針に沿った実現確率の高い走行経路を出力し、運転者に違和感を与えない確実な回避操作支援を行うことができる。
また本発明の第2の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロコンピュータ9が、運転者行動−障害物移動軌跡整合性の評価値が所定値以上の移動軌跡の候補が存在しない場合、実現確率が最も高い移動軌跡に対応する走行経路を最適な走行経路として選択するので、運転者が明確な回避方針を示さない場合であっても、障害物との接触を回避できる見込みが高い走行経路を出力することができる。
また本発明の第2の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロコンピュータ9が、全ての移動軌跡の候補の実現確率及び運転者行動−障害物移動軌跡整合性の評価値が所定値以下である場合、走行経路の評価値が最も低い移動軌跡に対応する走行経路を最適な走行経路として選択するので、主観的にも客観的にも障害物の移動軌跡の予測が難しい場面において、リスク回避余裕等の走行経路自体の評価を優先した走行経路を出力して回避動作に繋げることができる。
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態となる運転操作支援装置の構成について説明する。
〔運転操作支援装置の構成〕
本発明の第3の実施形態となる運転操作支援装置は、図15に示すように、前輪の操舵量を制御可能な操舵システムを有する車両1に搭載され、ステレオカメラ2a,2b、車速センサ3a,3b、ヨーレートセンサ4、加速度センサ5、操舵角センサ6,マイクロプロセッサ9、転舵角センサ12、転舵モーター15,及び転舵角サーボコントローラ16を主な構成要素として備える。なおステレオカメラ2a,2b、車速センサ3a,3b、ヨーレートセンサ4、加速度センサ5、操舵角センサ6,マイクロプロセッサ9,及び転舵角センサ12の構成は上記第2の実施形態と同じであるので、以下ではその説明を省略する。なお本実施形態では、マイクロプロセッサ9は、上記第1及び第2の実施形態におけるマイクロプロセッサ9とは異なり、演算処理ユニットを1つのみ有する構成になっている。また転舵角サーボコントローラ16は、マイクロプロセッサ9からの転舵角指令値に応じて、転舵角センサ12の検出値に基づいて転舵モーター15を制御することにより操舵系のサーボ制御を行う。
〔運転操作支援処理〕
このような構成を有する運転操作支援装置では、マイクロプロセッサ9が以下に示す運転操作支援処理を実行することにより、精度の高い回避経路を迅速に出力する。以下、図16に示すフローチャートを参照して、この運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作について説明する。
図16に示すフローチャートは、車両1のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられたタイミングで開始となり、運転操作支援処理はステップS21の処理に進む。なお以下では、図4に示す走行シーンを例として運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作を説明する。またステップS21及びステップS22の処理は上記ステップS1及びステップS2の処理と同じであるので、以下ではステップS23の処理から説明する。
ステップS23の処理では、マイクロプロセッサ9が、バッファメモリ内に転舵角指令値が記憶されているか否かを確認することにより(詳しく後述する)、自動回避制御が継続中であるか否かを判別する。判別の結果、自動回避制御が継続中である場合、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS32の処理に進める。一方、自動回避制御が継続中でない場合には、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS24の処理に進める。
ステップS24の処理では、マイクロプロセッサ9が、転舵角を補正すると共に車両1のクラッチ17を締結する指令を出力することにより、運転者の操作で転舵が行われる構成に戻す。これにより、ステップS24の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
ステップS25の処理では、マイクロプロセッサ9が、自動回避制御を実行するために車両1のクラッチ17を切り離す指令を出力する。なお自動回避制御が既に開始されていてクラッチ17が切り離されている場合、マイクロプロセッサ9は切り離し状態を継続する指令を出力する。これにより、ステップS25の処理は終了し、運転操作支援処理はステップS26の処理に進む。なおステップS26〜ステップS28の処理は図12に示すステップS13,ステップS16,及びステップS17の処理と同じであるので、以下ではその説明を省略し、ステップS29の処理から説明する。
ステップS29の処理は、第1の実施形態におけるステップS4及び第2の実施形態におけるステップS14の処理に対応する処理であるが、本実施形態における処理は、第1及び第2の実施形態における処理に対し、(1)出力すべき指令値が異なり、(2)演算処理ユニットを1つしか搭載していないので1制御サイクルの中で1つの走行経路しか算出できないという2つの相違点を有する。そこで本実施形態における処理には第1及び第2の実施形態における処理に対し以下のような変更が加えられている。
すなわち相違点(1)については、操舵系モデルを示す数式13を転舵角サーボ系の近似モデルである以下の数式25,26に置き換える。数式25中、パラメータTsは転舵角サーボ系の応答時定数、パラメータδ*は転舵角指令値を示し、転舵角指令値δ*の時系列変化が最適化計算によって算出される。またこれに伴い評価関数中の転舵評価項(数式18)は以下の数式26のように変更される。
相違点(2)については、どの障害物の移動軌跡に対応する走行経路を算出するかを選択した後、選択された移動軌跡に対する走行経路を算出する構成にする。ここでの選択ルールとしては、1つには単純に移動軌跡に固定された順番を割り当て、割り当てられた順番に従って選択を行っていくという方法が考えられる。例えば移動継続を1番、途中停止を2番として、最初に移動継続に対する走行経路、次に途中停止に対する走行経路、その次は移動継続に対する走行経路と交互に走行経路を算出する方法である。
このように走行経路を算出する時間をずらす処理を行うと、移動軌跡の数に対して演算処理ユニットの数が少ない場合でも複数の走行経路を用意しておくことが可能になるが、走行経路を算出してから実際に制御に用いられるまでの時間差が大きくなるという問題が発生する。一般にこの時間差が大きくなればなるほど制御性能は劣化する可能性が高くなるので、実際に制御に用いられる走行経路を優先的に算出することで実質的な性能劣化の度合いを抑える選択ルールを考えることができる。例えば、選択する走行経路の順番を固定せずランダムに選択するルールを導入する一方で、ステップS27の処理により算出された移動軌跡の実現確率と同じ確率で走行経路を選択する方法が考えられる。また直前の制御周期で選択された走行経路を選択する確率を意図的に高くするという方法も考えることができる。これにより、ステップS29の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS30の処理に進む。なおステップS30の処理は図12に示すステップS15の処理と同じであるので、以下ではその説明を省略し、ステップS31の処理から説明する。
ステップS31の処理では、マイクロプロセッサ9が、第2の実施形態と同様の方法で走行経路の選択を選択した後、選択された走行経路を実現する転舵角指令値の時系列変化の制御指令値を格納するバッファメモリに記憶する。例えば時刻tにおいては、現在時刻tから将来の時刻t+Tまでの転舵角指令値δ*の時系列が算出され、評価区間TをN区間に分割したとすると、バッファメモリには以下の数式27に示す転舵角指令値の時系列変化が記憶される。
走行経路が選択された場合には先頭から順番に転舵角指令値が読み出されていき、読み出された後にバッファメモリ内の各要素が1つずつ左にシフトする操作が行われる。なお選択されなかった走行経路に対しても、以降の制御周期において走行経路として選択される場合に備えて、同様のバッファメモリが用意されて算出された転舵角指令値が記憶される。これにより、ステップS31の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS32の処理に進む。
ステップS32では、マイクロプロセッサ9が、選択された走行経路に対応するバッファメモリから転舵角指令値δ*を読み出し、読み出された転舵角指令値δ*を転舵角サーボコントローラ16に出力する。そして転舵角サーボコントローラ16は、マイクロプロセッサ9からの転舵角指令値に応じて、転舵角センサ12の検出値に基づいて転舵モーター15を制御することにより操舵系のサーボ制御を行う。
このように本発明の第3の実施形態となる運転操作支援処理によれば、運転者の操作は運転者行動−障害物移動軌跡整合性評価手段を通して走行経路選択に反映されるので、運転者が的確な状況認識と状況判断を行っている限りは、運転者の意向に沿った走行が行われる。実際の操舵系の制御は自動化されているので、運転者の技量によらずにほぼ一定の車両運動が再現されるので、より安定した回避運動になることが期待される。一方、運転者の状況認識や状況判断に遅れやミスがあった場合でも装置側で適切な走行経路を生成・選択することで確実性の高い回避制御を実行することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の第3の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9が、障害物の移動軌跡の最新の候補に対応する走行経路を所定時間間隔毎に1つずつ所定の順番に従って更新していくので、上記第1及び第2の実施形態となる運転操作支援装置により得られる効果に加えて、演算処理装置が1つしかない場合であっても、同時に複数の移動軌跡候補に対する走行経路を用意しておくことが可能となり、選択される走行経路が切り替わった場合であっても迅速に新しい走行経路を出力することができる。
また本発明の第3の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9が、走行経路の評価値に基づいて更新を行う走行経路の順番を決定するので、選択されている走行経路又は次に選択される可能性が高い走行経路を優先的に更新し、実際に出力される可能性た高い走行経路の算出時間遅れを短縮することができるので、多くの場合に出力される走行経路の室を向上させることができる。
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態となる運転操作支援装置の構成について説明する。
〔運転操作支援装置の構成〕
本発明の第4の実施形態となる運転操作支援装置は、図17に示すように、前方カメラが1台のみとなり、またレーザレーダ18と後方カメラ19a,19bを有する点が第1の実施形態となる運転操作支援装置の構成と異なる。前方カメラ2aは、車室内前方に取り付けられ、主に車両前方の道路の境界(白線等)を検出する。レーザレーダ18は、車両1前方のに存在する障害物を検出する。後方カメラ19a,19bは、車室内後方に取り付けられ、車両後方の障害物を検出する。後方カメラを2台設置することにより、障害物の方向だけでなく障害物までの距離も検出することができる。
〔運転操作支援処理〕
このような構成を有する運転操作支援装置では、マイクロプロセッサ9が以下に示す運転操作支援処理を実行することにより、精度の高い回避経路を迅速に出力する。以下、図18に示すフローチャートを参照して、この運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作について説明する。
図18に示すフローチャートは、車両1のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられたタイミングで開始となり、運転操作支援処理はステップS41の処理に進む。なお以下では、図19に示すような、片側二車線の道路上を自車両1を含む3台の車両が走行している時に自車両1が右車線へ車線変更を行おうとしている走行シーンを例として運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作を説明する。
ステップS41の処理では、マイクロプロセッサ9が、第1乃至第3の実施形態における処理と同様の処理により、図19に示すように、車両の進行方向に沿ってX軸、X軸に対し垂直な方向にY軸を設定し、各車両のX軸及びY軸方向の位置と速度を算出する。すなわちマイクロプロセッサ9は、以下の数式28に示すように各車両の状態ベクトルをDiと定義し、状態ベクトルDiを構成する各要素の値を算出する。なおインデックスiは車両の種別を表しており、0が自車両1,1が他車両O1,2が他車両O2を表している。これにより、ステップS41の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS42の処理に進む。
ステップS42の処理では、マイクロプロセッサ9が、運転者の車線変更意図の有無を判別する。単純な方法としてはウインカー操作を検出することにより車線変更意図の有無を判別することが考えられるが、支援のための専用のボタンを用意したり、運転者の操舵操作から車線変更意図を推定する方法を用いてもよい。判別の結果、車線変更意図が検出されなかったり、又は車線変更が完了していると判断される場合、マイクロプロセッサ9は一連の運転操作支援処理を終了する。一方、車線変更意図が検出された場合には、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS3の処理に進める。
ステップS43の処理では、マイクロプロセッサ9が、障害物の移動軌跡を算出する。なお図19に示す走行シーンでは、障害物は他車両O1と他車両O2の2台あるので、マイクロプロセッサ9は他車両O1と他車両O2それぞれに対して移動軌跡の候補を用意する必要があるが、簡単のためここでは前方を走る他車両O2は一定速度で走り続けるものと仮定し、自車両1の車線変更操作に大きな影響を与える他車両O1について複数の移動軌跡候補を生成する。ここで他車両O1の予想される挙動は大きく以下の3種類に分類することができる。
(1)自車両1の車線変更を予想して他車両O2との車間距離を広げる。
(2)他車両O2に対して追従走行を続けるために他車両O2との車間距離を縮める。
(3)現在の走行速度を維持して走り続ける。
なおここでも簡単のため他車両O2が左車線に車線変更する可能性については除外して考えることにする。このうち挙動(3)に対応する軌跡は、以下の数式29により容易に生成することができる。ただし、ここでも現在時刻t=0としている。
挙動(1),(2)に対応する移動軌跡を生成するために、ここでは先行車両に対する追従挙動をモデル化した追従モデルを利用する。追従モデルについてはこれまで多くの研究が行われ、様々なモデルが公知となっているが、ここでは以下の数式30に示すモデルに従って移動軌跡を生成する。数式30中、パラメータk1,k2は追従特性を決めるパラメータ、パラメータhは追従時の目標車間時間、インデックスpは他車両O1の追従対象車両を示し、挙動(1)の場合にはp=0、挙動(2)の場合にはp=1に設定する。自車両1及び他車両O2共に一定速度で走行すると仮定すれば、数式30に示す微分方程式を積分することにより他車両O2の移動軌跡を算出することができる。これにより、ステップS43の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS44の処理に進む。
ステップS44の処理は、図3に示すステップS4に相当する処理であり、基本的には第1の実施形態と同様、評価関数に基づいて最適な走行経路を算出する処理が行われるが、定式化の方法が異なるので改めて説明する。まず始めに、自車両1の運動を記述するモデルを導入する。図4に示す走行シーンと比較すると、図19に示す走行シーンではそれほど急激な運動は行われないので、第1の実施形態等で用いた二輪モデルよりも単純な質点モデルでも十分な精度の結果が得られると期待できる。そこで自車両1のモデルとして以下の数式31に示すモデルを使用する。
数式31中、パラメータTyは典型的な車線変更の横方向運動を1次遅れ系で近似した場合の車両の横方向運動応答時定数、パラメータuyは横方向位置の目標値、パラメータuxは加速度方向の目標値を示す。この数式31では横方向位置の目標値uyと加速度方向の目標値uxが制御指令値とみなされる。また横方向位置の目標値uyと加速度方向の目標値uxには以下の数式32,33に示すような制約を課すことにする。数式32,33中、パラメータamaxは加減速度の最大値、パラメータyroadは道路幅を示す。
そして評価関数を以下の数式34に示すように定義し、評価式Lには以下の要請項目(1)〜(4)を反映した評価項を組み込む。
(1)加減速を小さくする。
(2)頻繁な車線変更を行わない。
(2)車両進行方向の指定された区間に移動する、又は指定区間内に位置を保つ。
(4)指定された区間内で右車線に車線変更する。
要請項目(1)は、以下の数式35に示す評価項で表現することができる。数式35中、パラメータwuxは評価重みを示す。
要請項目(2)は、以下の数式36に示す評価項で表現することができる。数式36中、パラメータwuyは評価重みを示す。これは、数式31の2番目の式より(y0の一階微分値)∝(y0−yu)という関係があるので、実質的には(y0の一階微分値)を小さくするという要請になるが、横移動速度を小さくするという要請と頻繁な車線変更を行わないという要請は、ここではほぼ同じ要請と考えて問題ない。
要請項目(3)は車線変更可能なx方向の位置合わせを促す要請である。図19に示す走行シーンでは、実質的には車線変更ができる区間は次の2つの区間のどちらかである。
(A)他車両O1と他車両O2の間
(B)他車両O1の後方
他車両O1の予想される移動軌跡が(1)又は(3)の場合には区間Aを目標にすることが好ましいが、移動軌跡として(2)が予想される場合には区間Bが望ましい。そこで、どちらの移動軌跡に対応するかによって評価関数の構成を切り替えるものとする。すなわち区間Aの場合の評価項は以下の数式37に示すように構成する。一方、区間Bの場合には評価項は以下の数式38に示すように構成する。典型的な評価関数の形状を図20に示す。なお数式37,38中、パラメータwXは評価重みを示す。
要請項目(4)は車線変更を促す評価項であり、以下の数式39に示すように構成する。数式39中、パラメータyRは右車線の中央のy座標を示す。関数aの値は、図21に示すように、指定区間(この場合区間A)外では1となり、指定区間内で他車両から離れるほど値が小さくなる関数となっている。従って、関数LYは指定区間外では平坦な関数になり車線変更を促進する効果がなくなる一方で、指定区間内では右車線の中央に近づくほど値が小さくなる関数となり車線変更を促進する効果を生むことになる。
以上で定義した評価項の和をとることで評価式を構成すると、数式31,34はやはり最適制御問題になるので、最適化計算を行うことにより評価関数を最小にする操作量の時系列を得ることができる。これにより、ステップS44の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS45の処理に進む。
ステップS45の処理は、図12に示すステップS15に相当する処理である。ここでも走行経路評価値として評価関数の値をそのまま流用することもできるし、他車両との距離の最小値を用いて走行経路評価値を構成することもできる。これにより、ステップS45の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS46の処理に進む。
ステップ46の処理は、図12に示すステップS16に相当する処理である。本実施形態でもベイジアンネットワーク等の手法を用いて生成した移動軌跡の実現確率を推定する。本実施形態では、上述した通り(1)〜(3)の3つの移動軌跡が生成される。この場合のベイジアンネットワークとしては、例えば図22に示す因果関係モデルを構築することができる。図22に示すモデルは、他車両O1と他車両O2の関係から他車両O1の他車両O2に対する追従方針を推定し、それが現在の車両速度変化と割り込み許容判断に影響を与えているとモデル化している。また自車両1と他車両O1の関係から、他車両O1が自車両1の車線変更を予想しているかどうかを推定し、予想の有無が割り込み許容判断に同じく影響を与えているとしている。また割り込み許容判断は車両の加減速状態に影響を与えている。因果関係のモデル化により測定可能な情報から確率推論によって直接観測できない状態の確率分布を算出することができるので、割り込み許容判断のノードの確率分布を移動軌跡の実現確率として利用することができる。これにより、ステップS46の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS47の処理に進む。
ステップS47の処理は、図12に示すステップS17に相当する処理である。ここでは運転者の他車移動軌跡の予測と運転者の操作との間の因果関係をモデル化する。運転者は他車両の移動軌跡の予測に基づいてどの区間に車線変更するかを決定していると考えることができる。車線変更する区間が決まると、他車両O1との相対位置関係に基づいて加減速の必要性を判断して、実際のアクセル・ブレーキ操作を行っていると考えられる。以上のような因果関係をベイジアンネットワークを用いてモデル化すると、図23に示すモデルが得られる。図23に示すモデルに基づいて測定可能な情報を用いて確率推論を実行することにより、運転者が予測している移動軌跡の確率分布が得られるので、得られた確率を整合性指標として使用する。これにより、ステップS47の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS48の処理に進む。
ステップS48の処理は、図12に示すステップ18と同じ処理であり、マイクロプロセッサ9は組み込んだ選択ルールに基づいて走行経路を選択する。これにより、ステップS48の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS49の処理に進む。
ステップS49の処理は、図3に示すステップS3と同じ処理であり、マイクロプロセッサ9は、描画情報の作成と警告音の出力の必要性を判定すると共に駆動指令の生成する。描画情報は図9に示すように走行経路を忠実に画面上に描画したものであってもよいし、図24に示すように選択された走行経路の割り込み先の区間を強調表示する画像であってもよい。また、選択された走行経路の評価値が所定値上に高くなっている場合、マイクロプロセッサ9は同時に警告音を出力することにより運転者に注意を喚起することもできる。これにより、ステップS49の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
このように本発明の第4の実施形態となる運転操作支援処理によれば、運転者の車線変更の意図を汲み取りながら実現性の高い車線変更目標を提示することができる。特に、運転者からは自車の後方の状況、特に後方車両との相対速度は正確に把握しづらい情報になっているので、センサによる正確な状況把握と予測計算による的確な走行経路選択を示すことは運転者の認知・判断の負荷を下げることにつながり、特に運転に慣れていない初心者ドライバーに対して車線変更場面における苦手意識の軽減や運転操作の円滑化といった効果を上げることが期待できる。
以上の説明から明らかなように、本発明の第4の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9が、選択した走行経路の情報を運転者に視覚的に提示するので、運転者は走行経路を直感的に理解することができる。
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態となる運転操作支援装置について説明する。
〔運転操作支援装置の構成〕
本発明の第5の実施形態となる運転操作支援装置は、マイクロプロセッサ9が1つの中央演算処理装置のみにより構成されている点が上記第1の実施形態となる運転操作支援装置の構成と異なる。また本実施形態では、マイクロプロセッサ9は、内部のCPUが制御プログラムを実行することにより、図25に示す本発明に係る操作候補生成手段41,運転者行動−走行経路整合性評価手段42,走行経路算出手段24,及び走行経路選択手段26として機能する。
〔運転操作支援処理〕
このような構成を有する運転操作支援装置では、マイクロプロセッサ9が以下に示す運転操作支援処理を実行することにより、精度の高い回避経路を迅速に出力する。以下、図26に示すフローチャートを参照して、この運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作について説明する。
図26に示すフローチャートは、車両1のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられたタイミングで開始となり、運転操作支援処理はステップS51の処理に進む。
ステップS51の処理では、マイクロプロセッサ9が、第1乃至第4の実施形態における処理と同様の処理により、図27に示すように車両1の進行方向に沿ってX軸、X軸に対し垂直な方向にY軸を設定し、車両1,障害物O,及び道路境界に関する情報を設定した座標系上の値として算出する。なお図27に示す走行シーンでは、障害物Oは車両1の直進を阻む静止した障害物である。これにより、ステップS51の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS52の処理に進む。
ステップ52の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS51の処理において障害物Oが検出されたか否かを判別する。判別の結果、障害物Oが検出されなかった場合、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS53の処理に進める。一方、障害物Oが検出された場合には、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS57の処理に進める。
ステップS53の処理では、マイクロプロセッサ9が、表示装置8に走行経路を表示中であるか否かを判別する。判別の結果、走行経路を表示中でない場合、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS55の処理に進める。一方、走行経路を表示中である場合には、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS54の処理に進める。
ステップS54の処理では、マイクロプロセッサ9が、転舵角指令値がバッファメモリに記憶されているか否かを判別する。判別の結果、転舵角指令値が記憶されていない場合、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS55の処理に進める。一方、転舵角指令値が記憶されている場合には、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS56の処理に進める。
ステップS55の処理では、マイクロプロセッサ9が、バッファメモリに記憶されている情報を消去する。これにより、ステップS55の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
ステップS56の処理では、マイクロプロセッサ9が、第1の実施形態と同様の処理により、バッファメモリに記憶されている転舵角指令値を車両モデルに入力することにより走行経路を生成し、生成された走行経路に基づいて音声出力装置7と表示装置8を駆動する信号を生成する。これにより、ステップS56の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
ステップS57の処理では、マイクロプロセッサ9が、運転者の操作候補に関する情報がバッファメモリに格納されているか否かを判別する。運転者の操作候補としては、図27に示すように、一定時間左方向に一定の操舵量を保つ左回避操作LL1、一定時間右方向に一定の操舵量を保つ右回避操作LR1、及び車両1の速度,障害物Oとの相対距離,道路境界までの距離等から決められる横移動量のシングルレーンチェンジを行う正弦波状の左操舵操作LL2及び右操舵操作LR2が想定できる。なおこれらの操作候補以外に制動操作や上記操作候補と制動操作の組み合わせを操作候補として想定することもできる。本実施形態では、左回避操作LL1と右回避操作LR1を運転者の操作候補として想定し、運転者の操作候補に関する情報として、左回避操作LL1と右回避操作LR1に対応する転舵角指令値の時系列変化L1,L2をバッファメモリに格納する。判別の結果、運転者の操作候補に関する情報がバッファメモリに格納されていない場合、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS58の処理に進める。一方、運転者の操作候補に関する情報がバッファメモリに格納されている場合には、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS59の処理に進める。
ステップS58の処理では、マイクロプロセッサ9が、各操作候補に番号を割り当て、左右の操作候補の一方の操作候補に割り当てられた番号を更新指定バッファに格納する。具体的には、本実施形態では、マイクロプロセッサ9は、左回避操作LL1と右回避操作LR1にそれぞれ番号1及び番号2を割り当て、右回避操作R1を最初の更新対象にするために更新指定バッファに番号2を格納する。これにより、ステップS58の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS59の処理に進む。
ステップS59の処理では、マイクロプロセッサ9が、障害物Oを検出した後に運転者が障害物Oとの接触を回避するための操舵操作を行ったか否かを判別する。具体的には、本実施形態では、運転者の操作候補として左回避操作LL1と右回避操作LR1を想定しているので、マイクロプロセッサ9は以下の数式40が満足されるか否かを判別することにより運転者が操舵操作を行ったか否かを判別する。なお数式40中、パラメータδTHは操舵角δの閾値を示す。判別の結果、数式40が満足される場合、マイクロプロセッサ9は、障害物Oを検出した後に運転者が操舵操作を行ったと判断し、運転操作支援処理をステップS60の処理に進める。一方、数式40が満足されない場合には、マイクロプロセッサ9は、障害物Oを検出した後に運転者が操舵操作を行っていないと判断し、運転操作支援処理をステップS63の処理に進める。
ステップS60の処理では、マイクロプロセッサ9が、運転者の操舵方向に合致した操作候補に対応した走行経路を選択するために、更新指定バッファに記憶されている番号をステップS59の処理により検出された実操舵方向に対応する操作候補の番号に設定し、設定した番号を固定する。これにより、ステップS60の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS61の処理に進む。
ステップS61の処理では、マイクロプロセッサ9が、更新指定バッファに記憶されている番号に対応する走行経路を選択,更新する。具体的には、マイクロプロセッサ9は、更新指定バッファに記憶されている番号に対応する転舵角指令値の時系列変化を初期解として最適制御問題を計算し、計算結果を新たな転舵角指令値の時系列変化としてバッファメモリに記憶する。これにより、ステップS61の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS62の処理に進む。
ステップS62の処理では、マイクロプロセッサ9が、第1の実施形態と同様の処理により、バッファメモリに記憶されている転舵角指令値の時系列変化を車両モデルに入力することにより走行経路を生成し、生成された走行経路に基づいて音声出力装置7と表示装置8を駆動する信号を生成する。これにより、ステップS62の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
ステップS63の処理では、マイクロプロセッサ9が、更新指定バッファに記憶されている番号に基づいて左回避操作LL1と右回避操作LR1のどちらが更新指定されているか否かを判別する。判別の結果、更新指定バッファに番号1が記憶されている場合、マイクロプロセッサ9は、運転操作支援処理をステップS64の処理に進める。一方、更新指定バッファに番号2が記憶されている場合には、マイクロプロセッサ9は、運転操作支援処理をステップS66の処理に進める。
ステップS64の処理では、マイクロプロセッサ9が、左回避操作LL1に対応した走行経路を更新する。具体的には、マイクロプロセッサ9は、左回避操作LL1に対応した転舵角指令値の時系列変化を初期解として最適制御問題を計算し、計算結果を新たな左回避操作LL1に対応した転舵角指令値の時系列変化としてバッファメモリに記憶する。これにより、ステップS64の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS65の処理に進む。
ステップS65の処理では、マイクロプロセッサ9が、次回の運転操作支援処理において右回避操作LR1に対応した走行経路を更新するために、更新指定バッファに番号2を格納する。これにより、ステップS65の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
ステップS66の処理では、マイクロプロセッサ9が、右回避操作LR1に対応した走行経路を更新する。具体的には、マイクロプロセッサ9は、右回避操作LR1に対応した転舵角指令値の時系列変化を初期解として最適制御問題を計算し、計算結果を新たな右回避操作LR1に対応した転舵角指令値の時系列変化としてバッファメモリに記憶する。これにより、ステップS66の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS67の処理に進む。
ステップS67の処理では、マイクロプロセッサ9が、次回の運転操作支援処理において左回避操作LL1に対応した走行経路を更新するために、更新指定バッファに番号1を格納する。これにより、ステップS67の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
以上の説明から明らかなように、本発明の第5の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9が、運転者の操舵操作が検出されるまでの間、運転者の操作候補及び障害物の移動軌跡候補に対応する走行経路を逐次更新し、運転者の操舵操作が検出された段階で走行経路を選択する。従って、回避制御を開始する前の比較的長い時間において走行経路の候補を演算して準備するので、運転者の操舵操作を検出した直後に回避制御を開始することができる。また回避制御を開始する前の比較的長い時間において走行経路を逐次更新しているので、回避制御の開始時点である運転者の操舵操作検出時に最も信頼性が高い走行経路を選択し、回避制御の信頼性を向上させることができる。
また本発明の第5の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9が、更新前の走行経路に対する変化分を算出することにより現在の走行シーンに適合した走行経路を生成するので、走行経路全体を計算対象とするよりも効率がよく、その分演算周期を短くすることで走行経路の室を向上させることができる。
また本発明の第5の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9が、障害物検出時から運転者が実際に回避操作を行うまでの間、運転者が取りうる操作候補に対応した走行経路を順番に更新する。このような構成によれば、有限の計算資源を有効活用し、運転者が回避操作を行った時点から回避操作に対応した精度の高い走行経路を出力し、運転操作支援装置として高い状況適応能力を実現することができる。
また本発明の第5の実施形態となる運転操作支援処理では、マイクロプロセッサ9が、右方向操舵操作,左方向操舵操作,制動操作,右方向操舵操作と制動操作の組み合わせ,及び左方向操舵操作と制動操作の組み合わせのうちの少なくとも1つを運転者の操作候補と想定するので、運転者の操作候補が不必要に増えることにより組み合わせの数が膨大となり、大量のシミュレーションが必要になることを抑制できる。
また本発明の第5の実施形態となる運転操作支援処理では、マイクロプロセッサ9が、障害物との相対距離,相対速度,車両1の速度,及び道路情報の少なくとも1つに基づいて操作候補を生成するので、現在の走行シーンから適当と思われる操作に沿った信頼度の高い走行経路を生成することができる。
〔第6の実施形態〕
最後に、本発明の第6の実施形態となる運転操作支援装置について説明する。
〔運転操作支援装置の構成〕
本発明の第6の実施形態となる運転操作支援装置は、マイクロプロセッサ9が1つの中央演算処理装置のみにより構成されている点が上記第2の実施形態となる運転操作支援装置の構成と異なる。また本実施形態では、マイクロプロセッサ9は、内部のCPUが制御プログラムを実行することにより、図28に示す本発明に係る障害物移動軌跡候補生成手段23,走行経路算出手段24,障害物移動軌跡確率推定手段25,走行経路選択手段26、運転者行動−障害物移動軌跡整合性評価手段31,走行経路リスク評価手段32,操作候補生成手段51,及び運転者行動−走行経路整合性評価手段52として機能する。
〔運転操作支援処理〕
このような構成を有する運転操作支援装置では、マイクロプロセッサ9が以下に示す運転操作支援処理を実行することにより、精度の高い回避経路を迅速に出力する。以下、図29に示すフローチャートを参照して、この運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ9の動作について説明する。
図29に示すフローチャートは、車両1のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられたタイミングで開始となり、運転操作支援処理はステップS71の処理に進む。なお以下では、図4に示す走行シーンを想定して運転操作支援処理を具体的に説明する。
ステップS71の処理では、マイクロプロセッサ9が、第1乃至第4の実施形態における処理と同様の処理により、車両1の進行方向に沿ってX軸、X軸に対し垂直な方向にY軸を設定し、車両1,障害物O,及び道路境界に関する情報を設定した座標系上の値として算出する。これにより、ステップS71の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS72の処理に進む。
ステップ72の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS71の処理において障害物Oが検出されたか否かを判別する。判別の結果、障害物Oが検出されなかった場合、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS73の処理に進める。一方、障害物Oが検出された場合には、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS77の処理に進める。
ステップS73の処理では、マイクロプロセッサ9が、回避制御が作動しているか否かを示す制御フラグがオン状態になっているか否かを判別する。判別の結果、制御フラグがオン状態である場合、マイクロプロセッサ9は、回避制御が作動していると判断し、運転操作支援処理をステップS74の処理に進める。一方、制御フラグがオフ状態である場合には、マイクロプロセッサ9は、回避制御が作動していないと判断し、運転操作支援処理をステップS75の処理に進める。
ステップS74の処理では、マイクロプロセッサ9が、転舵角指令値がバッファメモリに記憶されているか否かを判別する。判別の結果、転舵角指令値がバッファメモリに記憶されていない場合、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS75の処理に進める。一方、転舵角指令値がバッファメモリに記憶されている場合には、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS76の処理に進める。
ステップS75の処理では、マイクロプロセッサ9が、バッファメモリに記憶されている情報を消去する。これにより、ステップS75の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
ステップS76の処理では、マイクロプロセッサ9が、第2の実施形態と同様の処理により、バッファメモリに記憶されている転舵角指令値の時系列変化を車両モデルに入力することにより走行経路を生成し、生成された走行経路に基づいて音声出力装置7と表示装置8を駆動する信号を生成する。これにより、ステップS76の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
ステップS77の処理では、マイクロプロセッサ9が、第5の実施形態と同様の処理により、運転者の操作候補に関する情報がバッファメモリに格納されているか否かを判別する。判別の結果、運転者の操作候補に関する情報がバッファメモリに格納されていない場合、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS78の処理に進める。一方、運転者の操作候補に関する情報がバッファメモリに格納されている場合には、マイクロプロセッサ9は運転操作支援処理をステップS81の処理に進める。
ステップS78の処理では、マイクロプロセッサ9が、運転者の操作候補を生成し、生成した操作候補に対応する転舵角指令値の時系列変化をバッファメモリに格納する。これにより、ステップS58の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS79の処理に進む。
ステップ79の処理では、マイクロプロセッサ9が、第2の実施形態と同様の処理により、障害物Oの移動軌跡を生成する。これにより、ステップS79の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS80の処理に進む。
ステップS80の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS78の処理により生成した運転者の操作候補とステップS79の処理により生成した障害物Oの移動軌跡の組み合わせを生成し、生成された各組み合わせに番号を割り振る。具体的には、図30に示すように、障害物Oの移動軌跡候補として、障害物Oが途中で止まる場合と移動し続ける場合の2通り、運転者の操作候補として、右方向への操舵と左方向への操舵の2通りを想定した場合、4つの組み合わせが生成される。そしてマイクロプロセッサ9は、更新指定バッファに番号情報が格納されていない場合には、各組み合わせに割り振られた番号のうちの任意の番号を更新指定バッファに記憶する。これにより、ステップS80の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS81の処理に進む。
ステップS81の処理では、マイクロプロセッサ9が、第1の実施形態と同様の処理により、ステップS79の処理により生成された障害物Oの移動軌跡の実現確率を評価する。これにより、ステップS81の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS82の処理に進む。
ステップS82の処理では、マイクロプロセッサ9が、障害物Oを検出した後に運転者が障害物Oとの接触を回避するための操舵操作を行ったか否かを判別する。具体的には、本実施形態では、マイクロプロセッサ9は以下の数式41が満足されるか否かを判別することにより運転者が操舵操作を行ったか否かを判別する。なお数式40中、パラメータTTHは操舵トルクTsteerの閾値を示す。判別の結果、数式41が満足される場合、マイクロプロセッサ9は、運転者が操舵操作を行ったと判断し、運転操作支援処理をステップS85の処理に進める。一方、数式41が満足されない場合には、マイクロプロセッサ9は、運転者が操舵操作を行っていないと判断し、運転操作支援処理をステップS83の処理に進める。
ステップS83の処理では、マイクロプロセッサ9が、更新指定バッファに格納されている番号に対応する操作候補を実現する転舵角指令値の時系列変化を初期解として最適制御問題を計算し、計算結果を新たな操作候補に対応した転舵角指令値の時系列変化としてバッファメモリに記憶する。これにより、ステップS83の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS84の処理に進む。
ステップS84の処理では、マイクロプロセッサ9が、更新指定バッファに格納されている番号を更新する。更新方法としては、各組み合わせに割り振られた番号の順番に従って設定する方法や第1の実施形態に示したような所定のルールに従って番号を設定する方法等が考えられる。これにより、ステップS84の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
ステップS85の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS17の処理と同様にしてステップS79の処理により生成された障害物の移動軌跡と運転者の車両操作とを比較することにより、各移動軌跡が運転者が予想していると推測される移動軌跡と整合性を有しているか否かを指標化(運転者行動−障害物移動軌跡整合性評価値)する。これにより、ステップS85の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS86の処理に進む。
ステップS86の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS85の処理により算出された運転者行動−障害物移動軌跡整合性評価値に従って運転者の操作候補を選択し、選択された操作候補に対応する転舵角指令値の時系列変化を初期解として最適制御問題を計算し、計算結果を新たな操作候補に対応した転舵角指令値の時系列変化としてバッファメモリに記憶する。具体的には、障害物検出時に図30に示す組み合わせを生成した場合、運転者の操作を検知するまでは原則として全ての組み合わせが更新対象となる。しかしながら障害物検出後に運転者が右に操舵操作を行った場合、左方向操作に対応した組み合わせよりも右方向操作に対応した組み合わせの方が一般的に選択される可能性が高くなる。従ってこのステップS86の処理では、マイクロプロセッサ9は、運転者の車両操作と走行経路の整合性を指標化(運転者行動−走行経路整合性評価値)し、運転者行動−走行経路整合性評価値に従って更新対象となる走行経路を選択する。これにより、ステップS86の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS87の処理に進む。
ステップS87の処理では、マイクロプロセッサ9が、第2の実施形態と同様の処理によりステップS80の処理により生成された各組み合わせに対応する走行経路のリスクを評価する。これにより、ステップS87の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS88の処理に進む。
ステップS88の処理では、マイクロプロセッサ9が、ステップS80の処理により生成された組み合わせの中から最も適当と思われる組み合わせに対応した走行経路を選択する。具体的には、マイクロプロセッサ9は、ステップS80の処理により生成された組み合わせの中から運転者の実際の操作との合致度(運転者−走行経路整合性評価値)が所定値以上の組み合わせを抽出し、障害物の移動軌跡に基づいて抽出された組み合わせの中から最適な組み合わせを選択する。なお単純な例としては、運転者が、右方向に操舵しているか、左方向に操舵しているか、ブレーキをかけているかといった判定で合致度を比較できるが、各組み合わせに対応した経路情報毎にどれだけ操舵しているか、どれだけ制動しているかといった、操作量の観点で合致度を比較することもできる。またマイクロプロセッサ9は、合致度が所定値以上の組み合わせが存在しない場合、その時点で走行経路を選択しないようにしてもよい。これにより、ステップS88の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS89の処理に進む。
ステップS89の処理では、マイクロプロセッサ9が、第2の実施形態と同様の処理により、選択された組み合わせに対応する走行経路を実現するための操舵トルク指令値を読み出し、運転者の操舵トルクとの偏差分の補助トルクを発生するためのモータ制御指令値を算出し、回避制御が作動していることを示す制御フラグをオン状態にする。これにより、ステップS89の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
以上の説明から明らかなように、本発明の第6の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9が、運転者の操作行動との整合性が所定値以上である走行経路を選択するので、障害物の動きと運転者の操作行動の両方を考慮した走行経路に従った回避制御を実行することができる。
また本発明の第6の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ9が、運転者の操作意図との整合性が所定値以上の走行経路が存在しない場合には、その時点では走行経路を選択しないので、不適切な走行経路が選択されることによって運転者が回避制御に対し違和感を感じることを抑制できる。
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。