JP5556029B2 - 運転操作支援装置及び運転操作支援方法 - Google Patents

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Description

本発明は、障害物との接触を回避するべく運転者が行う車両操作を支援する運転操作支援装置及び運転操作支援方法に関する。
従来より、運転者が自車両前方に存在する障害物との接触を回避しようとしている走行シーンにおいて、自車両の目標横移動量を算出し、算出された目標横移動量を実現するように電動パワーステアリング装置を制御することにより自車両が障害物と接触することを回避するための回避制御を実行する装置が知られている。
特開2008−168784号公報
従来の装置は、障害物を回避するために最低限必要な自車両の横移動量の推定値に運転者の操舵トルクに基づいて決められた付加的な横移動量を加算することにより自車両の目標移動量を算出する。しかしながら目標横移動量を実現するために必要な操舵速度や操舵トルクはその時刻における運転者の車両操作による操舵速度や操舵トルクと必ずしも一致しない。このため従来の装置によれば、回避制御が起動された際、操舵トルクや操舵トルクが突然変化することにより、回避制御に対し運転者が違和感を感じる可能性がある。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は回避制御に対し運転者が感じる違和感を低減可能な運転操作支援装置及び運転操作支援方法を提供することにある。
本発明に係る運転操作支援装置及び運転操作支援方法は、回避制御を実行するべきと判定した時点における自車両の操舵輪の操舵速度に基づいて操舵速度が操舵速度変化に関する正の閾値を超える場合に操舵速度と正の値をとる操作速度の第1補正幅とを加算して操舵速度制限値とし、操舵速度が前記正の閾値以下である場合に操舵速度を操舵速度制限値とし、操舵速度が前記正の閾値を反転した負の閾値未満である場合に操舵速度と正の値をとる操作速度の第2補正幅とを加算して操舵速度制限値とし、前記操舵速度制限値と、車両速度に応じて許容される操舵速度の最高値との小さい方の値を実際の操舵速度制限値に設定することにより回避制御の動作範囲を設定し、設定された回避制御の動作範囲内で自車両が障害物と接触することを回避する走行経路を回避経路として算出し、算出した回避経路に沿って走行するように運転者の車両操作を支援する。
本発明に係る運転操作支援装置及び運転操作支援方法によれば、個々の運転者によって異なる車両操作の許容範囲を反映した回避制御を実行するので、回避制御に対し運転者が感じる違和感を低減できる。
本発明の第1の実施形態となる運転操作支援装置の構成を示すブロック図である。 図1に示す運転操作支援装置の機能ブロック図である。 本発明の第1の実施形態となる運転操作支援処理の流れを示すフローチャート図である。 車両が片側1車線の直線道路を走行している時に車両の走行車線左側前方に左方向から右方向に移動する障害物が検出された走行シーンを示す図である。 図4に示す走行シーンにおいて導入した座標系と物理量を示す図である。 タイヤ横力関数Y,Yを示す図である。 評価式L,Lを足し合わせた関数をXY座標上にプロットした図を示す。 転舵速度目標値の算出結果の一例を示す図である。 障害物との接触を回避するための自車両の回避経路の一例を示す図である。 本発明の第2の実施形態となる運転操作支援装置の構成を示すブロック図である。 操舵角が制御起動条件に達するまでの操作履歴の一例を示す。 操舵角が制御起動条件に達するまでの操作履歴の一例を示す。 本発明の第6の実施形態となる運転操作支援処理の流れを示すフローチャート図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となる運転操作支援装置及びその動作(運転操作支援方法)について説明する。
〔第1の実施形態〕
始めに、本発明の第1の実施形態となる運転操作支援装置の構成について説明する。
〔運転操作支援装置の構成〕
本発明の第1の実施形態となる運転操作支援装置は、図1に示すように、前輪の操舵量を制御可能な操舵システムを有する車両1に搭載され、ステレオカメラ2a,2b、車速センサ3a,3b、ヨーレートセンサ4、加速度センサ5、操舵角センサ6,操舵トルクセンサ7,転舵アシストモータ8,モータコントローラ9,及びマイクロプロセッサ10を主な構成要素として備える。
ステレオカメラ2a,2bは、車室内前方に設けられ、車両1前方の画像を撮影する。ステレオカメラ2a,2bは、車両1前方の画像に対し画像処理を施すことにより車両1前方の障害物,障害物までの距離,道路,道路境界(白線等)等の車両1の外界環境情報を検出し、検出結果をマイクロプロセッサ10に入力する。ステレオカメラ2a,2bは、図2に示す本発明に係る外界環境検出手段21として機能する。
車速センサ3a,3bは、車両1の前左右輪のホイール回転に応じて発生するパルス信号に基づいて前左右輪の回転数を測定することにより車速を検出し、検出値をマイクロプロセッサ10に入力する。ヨーレートセンサ4は、水晶振動子や半導体装置等により形成される公知のヨーレート検出装置により構成され、車両1の重心位置に発生するヨーレートを検出する。ヨーレートセンサ4は、検出値をマイクロプロセッサ10に入力する。加速度センサ5は、圧電素子等により形成される公知の加速度検出装置により構成され、車両1に発生する車幅方向の加速度を検出する。
加速度センサ5は、車両1の加速度を検出し、検出値をマイクロプロセッサ10に入力する。操舵角センサ6は、ステアリングコラム内に取り付けられ、ステアリングホイールの操舵角(回転角度)を検出する。操舵角センサ6は、検出値をマイクロプロセッサ10に入力する。操舵トルクセンサ7は、ステアリングコラム内に取り付けられ、運転者の操舵トルクを検出する。操舵トルクセンサ7は、検出値をマイクロプロセッサ10に入力する。車速センサ3a,3b、ヨーレートセンサ4、加速度センサ5、操舵角センサ6、及び操舵トルクセンサ7は、図2に示す本発明に係る自車状態検出手段22として機能する。
マイクロプロセッサ10は、A/D変換回路,D/A変換回路,中央演算処理装置,メモリ等により形成される集積回路により構成され、車速センサ3a,3b、ヨーレートセンサ4、加速度センサ5、操舵角センサ6、及び操舵トルクセンサ7から入力された情報に基づき図2に示す本発明に係る回避操作支援手段26として機能する転舵アシストモータ8及びモータコントローラ9を制御することにより転舵アシストトルクを操舵系に加える。本実施形態では、マイクロプロセッサ9は、2つの中央演算処理装置を有することにより2つの演算処理を同時に実行可能なように構成されている。マイクロプロセッサ10は、内部のCPUが制御プログラムを実行することにより、図2に示す本発明に係る制御起動判定手段23,制御範囲設定手段24,及び回避経路算出手段25として機能する。
〔運転操作支援処理〕
このような構成を有する運転操作支援装置では、マイクロプロセッサ10が以下に示す運転操作支援処理を実行することにより、回避制御に対し運転者が感じる違和感を低減する。以下、図3に示すフローチャートを参照して、運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ10の動作について説明する。
図3に示すフローチャートは、車両1のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられたタイミングで開始となり、運転操作支援処理はステップS1の処理に進む。なお以下では、図4に示すような、車両1が片側1車線の直線道路を走行している時に車両1の走行車線左側前方に左方向から右方向に移動する障害物Oが検出された走行シーンを例として運転操作支援処理を実行する際のマイクロプロセッサ10の動作を説明する。またマイクロプロセッサ10は以下に説明する一連の運転操作支援処理を所定の制御周期毎に繰り返し実行するものとする。
ステップS1の処理では、マイクロプロセッサ10が、ステレオカメラ2a,2bの撮影画像及び各センサの検出値を内部のメモリにロードし、自車両1,障害物O,及び道路境界の位置情報を同じ座標系で記述可能なように、ステレオカメラ2a,2bにより撮影された画像を利用して座標系を設定する。本実施形態では、マイクロプロセッサ10は、図4に示すように、道路の進行方向をX軸、そのX軸と垂直な方向をY軸、車両1の現在位置をX座標の原点、道路の中心線付近をY座標の原点とする座標系を設定する。このような座標系を設定することにより、車両1の中心座標(x,y)を表記することができる。
車両1の走行状態を表す状態量としては、ヨー角θ,車速ν,車体すべり角β,ヨーレートγ,及び前輪転舵角δが重要な量である。これらの物理量のうち、車速νに関しては非駆動輪の車輪速で近似できるので、非駆動輪にとりつけた車速センサ3a,3bの測定値を利用することができる。ヨーレートγはヨーレートセンサ4から得ることができる。ヨー角θは、道路が直線であると仮定して道路境界と車両1の向いている方向とのなす角を画像処理によって推定する、又は適当な初期値を定めてヨーレートセンサ4の出力値を積分することにより、算出できる。車体すべり角βは、車両前後方向の速度をν、車幅方向の速度をνとすれば、以下の数式1により算出できる。
なお車両前後方向の速度νを車速νで近似し、車幅方向の速度νを車両1の横加速度を測定するように設置された加速度センサ5の出力を積分することによって算出することにより、後述する数式11式から車体すべり角βの近似値を得ることができる。これ以外にも車速,ヨーレート,横加速度等の信号からオブザーバによってより精度良く車体すべり角βを推定する公知技術も知られているので、そのような手法を用いて車体すべり角βを得てもよい。前輪転舵角δは操舵角センサ6から取得した操舵角θと操舵系のギア比Kを用いて以下の数式2により算出できる。従って上記で挙げた車両1の運動状態を記述する状態量はすべてセンサの検出信号を処理することにより具体的な値を算出できる。
障害物Oを検出している場合、その中心点の位置座標(x,y)及び障害物Oの幅σ,奥行きσの各値はステレオカメラ2a,2bから取得した画像情報を処理することによって算出できる。奥行きσは撮影方向によっては測定が困難な場合もあるが、その場合には便宜的に幅σと同じ値を設定しておくとよい。なお障害物Oが検出されなかった場合、障害物Oに関する物理量は算出しない。またステレオカメラ2a,2bによる道路境界検出によって検出された道路の左端及び右端の位置を上記座標系上の値に変換してそれぞれ(0,y),(0,y)とする。図4に示す走行シーンにおいて導入した座標系と物理量を図5に示す。以上のようにして、マイクロプロセッサ10は、適当な座標系を設定し、車両1,障害物O,及び道路境界に関する情報を設定した座標系上の値として算出する。これにより、ステップS1の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS2の処理に進む。
ステップ2の処理では、マイクロプロセッサ10が、それ以前の時刻において既に回避支援制御が起動しているか否かを判別する。判別の結果、回避支援制御が起動している場合、マイクロプロセッサ10は運転操作支援処理をステップS8の処理に進める。一方、回避支援制御が起動していない場合には、マイクロプロセッサ10は運転操作支援処理をステップS3の処理に進める。
ステップ3の処理では、マイクロプロセッサ10が、ステップS1の処理において障害物Oが検出されたか否かを判別する。判別の結果、障害物Oが検出されなかった場合、マイクロプロセッサ10は一連の運転操作支援処理を終了する。一方、障害物Oが検出された場合には、マイクロプロセッサ10は運転操作支援処理をステップS4の処理に進める。
ステップ4の処理では、マイクロプロセッサ10が、回避支援制御の必要性の有無と運転者の回避操作の有無に基づいて回避支援制御を起動すべきか否かを判定する。回避支援制御の必要性は以下の数式3により定義される車両1が障害物Oと接触するまでの時間TTCによって判定される。すなわち時間TTCが所定閾値TTCthr(例えば3.0秒程度)よりも小さい場合、マイクロプロセッサ10は回避支援制御の必要性があると判定する。
一方、運転者の回避操作の有無については操舵角θの大きさが所定の閾値θthr以上である場合に回避操作が行われていると判定する。すなわち以下の数式4,5に示す2つの条件が両方とも成立した場合に回避支援制御を起動するべきとの判断が行われる。これにより、ステップS4の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS5の処理に進む。
ステップS5の処理では、マイクロプロセッサ10が、ステップS4の処理結果に基づいて回避支援制御を起動するか否かを判別する。判別の結果、回避支援制御を起動しない場合、マイクロプロセッサ10は一連の運転操作支援処理を終了する。一方、回避支援制御を起動する場合には、マイクロプロセッサ10は運転操作支援処理をステップS6の処理に進める。
ステップ6の処理では、マイクロプロセッサ10が、回避支援制御における操作量に対する制約条件を設定する。本実施形態では前輪舵角の転舵速度が操作量になるので、転舵速度に対する制約条件を課す例を記述する。始めにマイクロプロセッサ10は、回避支援制御を起動するべきとの判定が行われた時点における操舵速度θν を算出する。操舵速度θν は例えば操舵角の検出値θとそれ以前の処理サイクルにおいて得た操舵角の検出値の差分を取ることにより算出できる。操舵角θと前輪転舵角δとの間には数式2に示す関係があるので、以下の数式6より操舵速度θν から前輪転舵速度δν を算出できる。
回避操作においては、一般に初動段階における操舵操作が最も急激に行われることが多い。従って、回避支援制御の起動判定が行われた時点における操舵速度θν が運転者が今後行う回避操作においても最も大きな値を示すことが予想される。そこで回避経路の算出において、数式6に示す前輪転舵速度δν を前輪転舵速度δνに対する制約条件として課すことにすれば、運転者の操作感覚と大きな乖離のない回避経路が得られる。このことから、前輪転舵速度δνの制約条件として以下の数式7が得られる。これにより、ステップS6の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS7の処理に進む。
ステップS7の処理では、マイクロプロセッサ10が、障害物Oを回避する走行経路を算出する。具体的には、マイクロプロセッサ10は、任意の走行経路に対する数値評価を行う評価関数を障害物位置や道路状況等に基づいて定義し、評価関数の値が最も良くなる走行経路を回避経路として算出する方法を用いる。以下に回避経路算出処理の手順を示す。走行経路を算出する際には、始めに、車両1の運動を記述するモデルを導入する。車両1の運動を記述するモデルとしては、四輪車両の運動を二輪車両の運動で近似する二輪モデルがよく知られている。いま車速が一定であると仮定すると、二輪モデルは以下の数式8〜13に示す微分方程式で記述される。
数式中、パラメータm,I,l,lはそれぞれ車両質量,車両ヨー慣性モーメント,車両重心から前輪軸までの距離,及び車両重心から後輪軸までの距離を表す。またパラメータY,Yはタイヤ横力をあらわす関数であり、それぞれ前輪すべり角β、後輪すべり角βの関数であると仮定している。なお前輪すべり角βと後輪すべり角βは以下の数式14,15を用いて計算できる。
数式中、パラメータδは前輪の転舵角を示す。タイヤ横力関数Y,Yは図6に示すような非線形関数で表現できる。さらに前輪の転舵角δは転舵速度δνの積分で得られるので、パラメータδとパラメータδνは以下の数式16に示す関係を満足する。
以上の数式8〜16をまとめると、前輪転舵速度δνを入力とする以下の数式17に示す微分方程式モデルが得られる。
数式17中、状態ベクトルDは(x,y,θ,β,γ,δ)と定義される。車両1がこの数式17に従って走行すると仮定すると、入力である前輪転舵速度δνの時系列変化を決めれば、数式17を積分することにより状態ベクトルDの時系列変化も決まることになる。状態ベクトルDには位置座標x,yが含まれているので、状態ベクトルDの時系列変化は走行経路の情報を含んでいることになる。すなわち、車両1の走行経路を算出するためには前輪転舵速度δνの時系列変化を算出すればよい。そこで障害物Oを回避する走行経路を得るために、時刻tにおける前輪転舵速度δνの時系列変化を数値的に評価する以下の数式18に示す評価関数J[δν]を導入する。
ここで、パラメータTは算出する時系列の長さを表すパラメータであり、障害物回避の問題の場合、障害物Oに対する回避動作から元の直進走行状態に復帰するまでの一連の回避操作を終えられる程度の長さの値を設定する。またパラメータψは時刻t+Tにおける車両運動状態の望ましさを評価する評価式、パラメータLは時刻tから時刻t+Tまでの間の各時刻における車両運動状態及び操作量の望ましさを評価する評価式、パラメータτは時刻tから時刻t+Tまで変化する積分変数を示す。評価式L及びパラメータψは以下の要請項目(1)〜(4)を反映する評価項を組み合わせることで構成する。
(1)障害物Oに近づきすぎない
(2)道路境界に近づきすぎない
(3)前輪舵角を必要以上に切りすぎない
(4)回避運動終端での車両ヨー角を道路進行方向に近づける
要請項目(1)は、車両1と障害物Oとの距離が近くなればなるほど値が大きくなる関数によって表現される。具体的には以下の数式19に示す関数を利用できる。障害物Oの位置を示すパラメータx,yには障害物Oの移動軌跡の情報が割り当てられる。
要請項目(2)は、車両1と道路境界との距離が近くなればなるほど値が大きくなる関数によって表現される。具体的には以下の数式20に示す関数を利用できる。数式中、パラメータΔは道路境界への接近の余裕幅を指定するパラメータであり、パラメータΔの値が大きいほど道路境界との接近余裕を大きくとる回避経路が算出される。評価式L,Lは道路上に障害物Oと道路境界との接触リスクを反映したリスクポテンシャルを定義することになる。評価式L,Lを足し合わせた関数をXY座標上にプロットした図を図7に示す。中央の山が障害物Oに対応する関数Lによって形成されたポテンシャルであり、両側の山が道路境界に対応する関数Lによって形成されたポテンシャルである。回避経路は、図7に示したリスクポテンシャル場の値の低い領域に可能な限り沿うようにして生成されることになる。
要請項目(3)は、可能な限り小さな転舵速度で回避操作をとることによって効率的な回避を行うことを要請するために導入した項目である。評価式Lとしては以下の数式21に示す関数を利用できる。
以上の3つの評価式に適当な重みをつけて足し合わせた関数を評価式Lとして構成する。すなわちパラメータw,w,wをそれぞれ要項項目(1),(2),(3)に対する重みとすると、評価式Lは以下の数式22のように表される。
要請項目(4)は、回避運動後の車両姿勢を立て直すために導入した要請項目である。直線道路においては、時刻t+Tにおける車両ヨー角を評価する関数として以下の数式23に示す関数を用いることができる。そして数式23に示す関数に適当な重みパラメータwyawをつけて以下の数式24に示すようにすることにより時刻t+Tにおける評価項が構成される。
以上のように評価関数を定義すると、前輪転舵速度δνの時系列変化の計算を数式7に示す制約条件が課された数式17に示す制御対象及び数式18に示す評価関数で定義される最適制御問題として定式化することができるので、最適制御問題を数値的に解く公知技術を利用することで前輪転舵速度δνの時系列変化を算出することができる。前輪転舵速度δνの時系列変化は、適当なサンプリング周期Δtで離散化され、(δν(t),δν(t+ΔT),…,δν(t+T))というベクトルの形で得られる。このベクトルが各時刻における転舵速度目標値となるので、マイクロプロセッサ10はバッファメモリに算出された転舵速度目標値ベクトルを書き込む。これにより、ステップS7の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS8の処理に進む。
ステップS8の処理では、マイクロプロセッサ10が、バッファメモリに書き込まれた時系列の転舵速度目標値の中から先頭の転舵速度目標値を読み出し、転舵速度目標値の読み出し後にシフト操作を行ってバッファメモリの内容を更新する。すなわちマイクロプロセッサ10は、ステップ8を実行する前にバッファメモリが以下の数式25に示す状態であった場合、転舵速度目標値としてδν(1)を読み出し、転舵速度目標値δν(1)を読み出した後にバッファメモリが以下の数式26に示す状態になるようにシフト操作を行う。これにより、ステップS8の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS9の処理に進む。
ステップS9の処理では、マイクロプロセッサ10が、ステップS8の処理により読み出された転舵速度目標値を転舵アシストモーター8を制御するモーターコントローラ9に出力する。転舵速度目標値を受け取ったモーターコントローラ9は、転舵速度目標値を操舵速度目標値に換算して操舵速度が目標値に追従するように転舵アシストモーター8を制御する。転舵アシストモーター8の回転速度を目標値に追従させる制御則については多くの公知例があるので、ここでは詳細な説明は省略する。図8に転舵速度目標値の算出結果の一例を示す。この例では時刻t=0において数式4,5に示す回避支援制御の起動条件が成立し、その時点における転舵速度δν を上限値とした転舵速度目標値の時系列変化が生成される。回避支援制御の起動時の転舵速度目標値偏差が0になるので、回避支援制御の起動に伴う操舵感の変化を最小限に留めることができる。また課された転舵速度制限は障害物を回避するための初動段階における操舵だけでなく、道路境界内に車を留めるための切り返し操舵の際にも有効になる制約であり、この制約により切り返しの際の転舵速度もその大きさが転舵速度δν で抑えられるため、運転者の操作以上に急激な操舵は行われないので、操舵誘導に対し運転者が感じる違和感を低減できる。この結果、図9に示すような回避経路が得られることになり、これに沿って走行することによって適切な障害物回避操作を行うことができる。これにより、ステップS9の処理は完了し、一連の運転操作支援処理は終了する。
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ10が、回避制御を実行するべきと判定した時点における自車両1の運転者の車両操作量に基づいて回避制御の動作範囲を設定し、設定された回避制御の動作範囲内で自車両1が障害物Oと接触することを回避する走行経路を回避経路として算出し、算出された回避経路に沿って走行するように運転者の車両操作を支援する。そしてこのような構成によれば、個々の運転者によって異なる回避操作の許容範囲を反映した回避制御を行うことができるので、運転者が回避制御に対して感じる違和感を低減することができる。
また本発明の第1の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ10が、自車両1の転舵速度が設定された動作範囲内に収まることを制約条件として回避経路を算出する。そしてこのような構成によれば、運転者が許容する回避操作の大きさを反映した回避経路を算出することができるので、受容性の高い回避制御を実現することができる。
また本発明の第1の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ10が、回避制御を実行するべきと判定した時点における操舵輪の転舵速度の大きさを回避制御において許容される転舵速度の上限値として設定する。そしてこのような構成によれば、回避制御起動の前後における転舵速度の連続性が保たれるので、回避制御起動時に発生する転舵速度の不連続的な変化によって運転者が違和感を感じることを抑制できる。
また本発明の第1の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ10が、道路境界の内側に留まりながら障害物を回避する走行経路を回避経路として算出する。そしてこのような構成によれば、障害物を回避する際の初期操舵だけでなく、車両姿勢を立て直す際の切り返し操舵も含めた回避操作支援を行うことができるので、回避操作支援の範囲を広げることができる。
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態となる運転操作支援装置の構成について説明する。
〔運転操作支援装置の構成〕
本発明の第2の実施形態となる運転操作支援装置は、図10に示すように、前輪の操舵量を制御可能な操舵システムを有する車両1に搭載され、ステレオカメラ2a,2b、車速センサ3a,3b、ヨーレートセンサ4、加速度センサ5、操舵角センサ6,マイクロプロセッサ10、転舵モータ31,転舵角サーボコントローラ32,及び転舵角センサ33を主な構成要素として備える。なおステレオカメラ2a,2b、車速センサ3a,3b、ヨーレートセンサ4、加速度センサ5、操舵角センサ6,及びマイクロプロセッサ10の構成は上記第1の実施形態と同じであるので、以下ではその説明を省略する。但し、本実施形態では、マイクロプロセッサ10は、上記第1及び第2の実施形態におけるマイクロプロセッサ9とは異なり、演算処理ユニットを1つのみ有する構成になっている。また転舵角サーボコントローラ32は、マイクロプロセッサ10からの転舵角指令値に応じて、転舵角センサ33の検出値に基づいて転舵アシストモータ31を制御することにより操舵系のサーボ制御を行う。
〔運転操作支援処理〕
本実施形態における運転操作支援装置は、上記第1の実施形態における運転操作支援処理とほぼ同じである。相違点は、回避支援制御の起動条件を満たした時に、転舵速度制限の設定処理と共にクラッチの切り離し指令を生成する処理が追加されることである。転舵速度目標値はマイクロプロセッサ10から転舵角サーボコントローラ32に伝達され、転舵角サーボコントローラ32はクラッチ34の切り離しによって運転者操作と独立に制御可能になった操舵輪の転舵速度を制御目標値に追従させる制御が実行される。
〔第3の実施形態〕
〔運転操作支援装置の構成〕
本発明の第3の実施形態となる運転操作支援装置の構成及び運転操作支援処理の流れは、上記第1の実施形態となる運転操作支援装置の構成及び運転操作支援処理の流れと同じである。但し上記第1の実施形態では、運転者の操舵角測定値から操舵速度及び前輪舵角の転舵速度を算出し、制御起動時の転舵速度の計測値を回避経路算出における転舵速度制限値として課す構成について説明していた。しかしながら回避経路演算において制限を課す対象は転舵速度に限られるものではなく、別の操作量に対して制限を課すこともできる。そこで本実施形態では、運転者の操舵トルクに対して制約を課す。
この場合、ステップS6の処理では、マイクロプロセッサ10は、転舵速度に対する制限値を算出するのではなく、操舵系に取り付けられた操舵トルクセンサ7の計測値を読み込み、回避支援制御の起動条件が満たされた時点における操舵トルクの大きさを制約条件として設定する。すなわち操舵系に加わる操舵トルクをT、回避支援制御の起動条件が満たされた時点における操舵トルクの測定値をT として、以下の数式27に示す制約条件を課す。
ステップS7の処理では、マイクロプロセッサ10は、第1の実施形態で使用した数式8〜16に示す車両モデルに操舵系の近似モデルである以下の数式28に示すモデルを追加して使用する。数式28中、パラメータζ,ωは操舵系の特性を表現するパラメータを示す。数式28を追加することにより、車両モデルは操舵トルクTを入力とし、第1の実施形態で定義した状態ベクトルに転舵速度δνを加えた状態ベクトルによって記述されるモデルに修正される。
評価関数については数式18の形で記述される関数を使用するが、要請項目(3)として挙げた「前輪舵角を必要以上に切り過ぎない」という要請は「操舵トルクをなるべく小さくする」という要請で置き換えられ、その評価式も数式21の代わりに以下の数式29で置き換えられる。
以上の定式化に従って最適制御問題を解くと操舵トルクに関する制御目標値の時系列変化が得られることになる。制御目標量が転舵速度から操舵トルクに変わっても、転舵アシストモーター31の制御則を置き換えることにより、第1の実施形態と同様の回避支援制御を実現することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の第3の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ10が、自車両1の操舵系に加わる操舵トルクが設定された動作範囲内に収まることを制約条件として回避経路を算出する。そしてこのような構成によれば、運転者が許容する回避操作の大きさを反映した回避経路を算出することができるので、受容性の高い回避制御を実現することができる。
また本発明の第3の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ10が、回避制御を実行するべきと判定した時点において検出された操舵トルクの大きさを回避支援制御において許容される操舵トルクの上限値として設定する。そしてこのような構成によれば、回避制御起動前後における操舵トルクの連続性が保たれるように回避支援制御が起動されるので、回避制御起動時に発生する操舵トルクの不連続的な変化により運転者が違和感を感じることを抑制できる。
〔第4の実施形態〕
〔運転操作支援装置の構成〕
本発明の第4の実施形態となる運転操作支援装置の構成及び運転操作支援処理の流れは、上記第1の実施形態となる運転操作支援装置の構成及び運転操作支援処理の流れと同じである。本実施形態では、マイクロプロセッサ10は操舵輪の転舵速度ではなく転舵角に対して制約を課す。なお以下では、回避初動段階における運転者操舵挙動として以下の数式30に示すモデルを想定する。数式中、パラメータωは操舵操作の速さを表すパラメータ、θ maxは操舵角最大値の推定値を示す。
この場合、ステップS6の処理では、マイクロプロセッサ10は、パラメータω,θ maxを回避支援制御の起動判定が行われた時点における操舵角及び操舵速度に基づいて推定する。パラメータωは、一般的な運転者が行う回避操作のデータを収集,解析することにより、その取り得る値の範囲を以下の数式31に示すように限定できる。数式31中、パラメータω ,ω はそれぞれパラメータωの下限値と上限値を示す。
またパラメータθ maxは、運転者がステアリングホイールを持つ手を持ち変えることなく回せる操舵角θ を上限値の候補の1つとみなせる。そこでマイクロプロセッサ10は、実際の運転者の操作を数式30に適用することにより、パラメータω,θ maxを推定する。いま操舵角が正の方向に切られているものと仮定して、数式30を書き換えると以下の数式32に示すようになる。
ここで、θ max=θ と仮定した場合に算出されるパラメータωの値、すなわち以下に示す数式33が数式31を満たす場合、θ max=θ ,と設定すると共にパラメータωの値を数式33により算出される値に設定する。
一方、数式33が数式31を満たさない場合には、パラメータω とパラメータω のうち、数式33によって求められたパラメータωの値に近い方のパラメータの値をパラメータωとして設定した上で以下の数式34のように設定する。
以上のようにして算出されたパラメータθ maxから前輪転舵角に対する制約条件を以下の数式35に示すように設定することができる。
ステップS7の処理では、第1の実施形態で示した数式8〜15に示す二輪モデルに以下の数式36に示す前輪転舵角のモデルを追加したモデルを車両モデルとして構成する。数式中、パラメータδは転舵角目標値を示す。
ここで数式35に示す制約条件は以下の数式37に示す条件と等価であり、パラメータωの値はステップS6の処理で算出されたものを用いる。
評価関数については、第1の実施形態と同様、数式18に示す形で記述される関数を使用するが、要請項目(3)として挙げた「前輪舵角を必要以上に切り過ぎない」という要請の評価式は、数式21の代わりに以下に示す数式38に置き換えられる。
以上の定式化に従って最適制御問題を解くと転舵角に関する制御目標値の時系列データが得られることになる。制御目標量が転舵速度から転舵角に変わっても、転舵アシストモータの制御則を置き換えることにより、第1の実施形態と同様の回避支援制御を実現することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の第4の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ10が、自車両1の操舵輪の転舵角が設定された動作範囲内に収まることを制約条件として回避経路を算出する。そしてこのような構成によれば、運転者が許容する回避操作の大きさを反映した回避経路を算出することができるので、受容性の高い回避制御を実現することができる。
また本発明の第4の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ10が、回避制御を実行するべきと判定した時点における操舵輪の転舵角の大きさを回避制御において許容される転舵角の上限値として設定する。そしてこのような構成によれば、回避制御起動の前後における転舵角の連続性が保たれるので、回避制御起動時に発生する角の不連続的な変化によって運転者が違和感を感じることを抑制できる。
〔第5の実施形態〕
本発明の第5の実施形態となる運転操作支援装置の構成及び運転操作支援処理の流れは、上記第1の実施形態となる運転操作支援装置の構成及び運転操作支援処理の流れと同じである。第1の実施形態では、運転者の操舵角測定値から操舵速度及び前輪舵角の転舵速度を算出し、制御起動時の転舵速度の計測値を回避経路算出における転舵速度制限値として課す構成について説明した。これに対して本実施形態では、他の方法により転舵速度制限値を設定する。具体的には、第1の実施形態では、ステップS6の処理において、制御起動時の転舵速度の計測値をそのまま転舵速度制限値に設定していた。これに対して本実施形態では、制御起動時の計測値だけでなく、制御起動時までの転舵速度の変化にも着目して転舵速度制限値を設定する。
図11,12に操舵角が制御起動条件に達するまでの操作履歴に関する例を示す。図11に示す例は、操舵角が閾値θ に到達した時刻tにおいて操舵速度がなお増加傾向にあるケースを示している。このような場合には、操舵速度の制限値を時刻tにおける操舵速度θν(t)に設定すると、運転者が望む操舵速度の最高値よりも低い値に操舵速度制限値が設定されてしまう可能性がある。一方、図12に示す例は、操舵角が閾値θ に到達した時刻tにおいて、操舵速度が既に減少傾向に転じているケースを示している。このような場合にも、操舵速度制限値を操舵速度θν(t)に設定すると運転者の許容する操舵速度よりも低い値に操舵速度制限値が設定されてしまう可能性がある。
そこで操舵速度に関する制約を以下の数式39,40のように設定する。但し以下ではθ>0の方向に回避する場合について示す。θ<0の方向に回避する場合についても同様の方法で制約を設定する。数式中、パラメータΔθν ,Δθν は正の値をとる操舵速度の補正幅、パラメータθ は操舵速度変化(すなわち操舵加速度)に関する閾値を表すパラメータを示す。
そして回避経路算出処理においては、車両モデルが前輪転舵角を用いて表現されたモデルになっているので、数式39に示す制約条件を以下の数式41に示すように転舵速度δνに関する制約条件に変換して利用する。
以上、運転者の操舵傾向に基づいて操舵速度制限値を補正する方法を示したが、これ以外に車両の運動状態に応じて操舵速度制限値を補正することが考えられる。例えば、車両挙動の安定性を確保するためには、車両速度が高いほど操舵速度に関する制限を厳しくしていく必要があると思われる。そこで、車速に応じて許容される操舵速度の最高値を示す関数を予め用意しておき、数式40により計算される制限値とこの関数とを比較することにより、値が低い方を実際の制限値Sνとして課すという方法がある。
以上の説明から明らかなように、本発明の第5の実施形態となる運転操作支援処理に寄れば、マイクロプロセッサ10が、回避制御を実行するべきと判定した時点までに検出された運転者の車両操作量の履歴に基づいて、動作範囲の上限値を補正するので、運転者の操作量が増加傾向にある場合や減少傾向にある場合に回避制御が起動された場合であっても、運転者が許容する回避操作量の大きさを精度よく把握して適切な回避制御の動作範囲を設定することができる。
また本発明の第5の実施形態となる運転操作支援処理に寄れば、マイクロプロセッサ10が、回避制御を実行するべきと判定した時点までに検出された自車両の運動状態に基づいて、動作範囲の上限値を補正するので、運転者操作量に基づいて設定された回避制御の動作範囲で制御を行うと車両挙動が乱れる可能性がある場面において、回避支援制御の動作範囲を通常よりも小さく補正することで、車両挙動を乱す恐れがない範囲で適切な回避制御を行うことができる。
〔第6の実施形態〕
本発明の第6の実施形態となる運転操作支援装置の構成は、上記第1の実施形態となる運転操作支援装置と同じである。そこで以下では、図13に示すフローチャートを参照して、本実施形態における運転操作支援処理の流れについてのみ説明する。なお本実施形態におけるステップS11乃至ステップS19の処理は第1の実施形態におけるステップS1乃至ステップS9の処理と同じであるので、以下ではステップS20の処理から説明する。
ステップS20の処理では、マイクロプロセッサ10が、現在設定されている回避経路を評価する。具体的には、マイクロプロセッサ10は、現在設定されている回避経路で障害物が適切に回避できるか否かを最新のセンサ検出値に基づいて検証する。最新のセンサ検出値に基づく状態ベクトルを初期条件として、バッファメモリに記憶されている制御目標値の時系列変化を用いて数式8〜16に示す車両モデルを積分すると、現在から時間Tまで先の状態ベクトルの時系列が得られる。ここで得られた各将来時刻における状態ベクトル予測値と障害物位置との距離を計算すると、現在設定されている回避経路を辿った場合に自車がどれくらい障害物に接近するのかを予測できる。
例えば自車両と障害物との間の距離で接近度合いを評価することにした場合、距離が全ての時刻において所定の閾値よりも大きければ現在の回避経路は概ね適切なものであると判断できる。しかしながら、距離が閾値を下回る時刻がある場合、早急に回避経路を修正する必要があると判断される。なお自車両と障害物との間の距離は以下の数式42により算出することができる。また閾値については、車両及び障害物の大きさと確保したい余裕距離に基づいて適当に定めることができる。これにより、ステップS20の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS21の処理に進む。
ステップS21の処理では、マイクロプロセッサ10が、ステップS20の算出結果に基づいて、自車両と障害物との間の距離が閾値を下回る時刻があるか否かを判別する。判別の結果、距離が閾値を下回る時刻がある場合、マイクロプロセッサ10は運転操作支援処理をステップS22の処理に進める。一方、距離が閾値を下回る時刻がない場合には、マイクロプロセッサ10は運転操作支援処理をステップS23の処理に進める。
ステップS22の処理では、マイクロプロセッサ10は、現在課されている転舵速度制限の下では適切な回避ができない可能性があるので、転舵速度制限を緩めた上で回避経路を再計算する。具体的には、数式7に示すような転舵速度制限が課されていた場合には、マイクロプロセッサ10は、以下の数式43に示す新たな転舵速度制限を設定する。数式中、パラメータはΔδνは制限の緩和幅を示す。この緩和幅として大きな値を設定すると新たな回避経路に基づく回避支援制御に切り替えた場合に制御目標値が大きく変化して運転者が違和感を感じる可能性があるので、運転者が違和感を感じない程度の値を設定する。一度の修正で十分な回避余裕距離を達成できない場合には、回避経路の更新を何度も繰り返すことで最終的には適切な回避余裕距離を確保できるようになる。これにより、ステップS22の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS23の処理に進む。
ステップS23の処理では、マイクロプロセッサ10が、最新のセンサ検出情報及び最新の転舵速度制約に基づいて回避経路を算出処理する。条件が変わるだけで経路演算の処理自体は第1の実施形態で説明した処理と同一である。回避経路演算の結果、転舵速度の時系列変化が得られるので、マイクロプロセッサ10は、バッファメモリに保持していた転舵速度時系列をクリアした上で、今回の演算で得られた転舵速度の時系列データを書き込む。これにより、ステップS23の処理は完了し、運転操作支援処理はステップS18の処理に進む。
このように本発明の第6の実施形態となる運転操作支援処理によれば、所定の制御周期毎に最新の情報に基づいた回避経路が設定される。運転者の回避操作が不十分な場合には段階的に転舵速度が大きくなりながら回避支援制御が行われることになり、目標値の不連続変化による違和感の発生を抑えつつ、障害物回避に十分な操作へと誘導することができる。また、最新情報に基づいて回避経路が更新されることで、モデル化誤差等に伴う制御誤差も逐次補正されることになるので、回避支援制御の精度を向上させることができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の第6の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ10が、所定時間間隔毎に回避経路を更新するので、回避制御中に障害物挙動が変化したり、自車両1の走行経路が当初の回避経路とは異なるものになった場合であっても、回避経路を補正することで適切な回避制御を継続することができる。
また本発明の第6の実施形態となる運転操作支援処理によれば、マイクロプロセッサ10が、算出された回避経路に沿って走行した場合の自車両1の障害物Oとの接近距離を算出し、算出された接近距離が所定値以下である場合、回避制御の動作範囲が現在設定されている動作範囲より広くなるように補正する。そしてこのような構成によれば、運転者の回避操作の大きさが不十分である場合、回避制御の大きさを段階的に引き上げていくことにより、急激な目標操作量の変化によって運転者が違和感を感じることを抑制しながら、障害物との接触を回避するために十分な操作を行うことを促すことで、適切な回避操作支援を行うことができる。
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
1:運転操作支援装置
2a,2b:ステレオカメラ
3a,3b:車速センサ
4:ヨーレートセンサ
5:加速度センサ
6:操舵角センサ
7:操舵トルクセンサ
8:転舵アシストモータ
9:モータコントローラ
10:マイクロプロセッサ
21:外界環境検出手段
22:自車状態検出手段
23:制御起動判定手段
24:制御範囲設定手段
25:回避経路算出手段
26:回避操作支援手段

Claims (12)

  1. 自車両周囲に存在する障害物の位置情報を含む自車両の外界環境に関する情報を検出する外界環境検出手段と、
    自車両の運転者の車両操作量を含む自車両の走行状態を検出する自車状態検出手段と、
    前記外界環境検出手段により検出された外界環境に関する情報及び前記自車状態検出手段により検出された自車両の走行状態とに基づいて、前記外界環境検出手段により検出された障害物に自車両が接触することを回避するための回避制御を実行するべきか否かを判定する制御起動判定手段と、
    前記制御起動判定手段が前記回避制御を実行するべきと判定した時点における自車両の運転者の車両操作量に基づいて回避制御の動作範囲を設定する制御範囲設定手段と、
    前記制御範囲設定手段により設定された回避制御の動作範囲内で自車両が障害物と接触することを回避する走行経路を回避経路として算出する回避経路算出手段と、
    前記回避経路算出手段により算出された回避経路に沿って走行するように運転者の車両操作を支援する回避操作支援手段と、
    を備え、
    前記制御範囲設定手段は、前記制御起動判定手段が前記回避制御を実行するべきと判定した時点において前記自車状態検出手段により検出された自車両の操舵輪の操舵速度に基づいて、操舵速度が操舵速度変化に関する正の閾値を超える場合に操舵速度と正の値をとる操作速度の第1補正幅とを加算して操舵速度制限値とし、操舵速度が前記正の閾値以下である場合に操舵速度を操舵速度制限値とし、操舵速度が前記正の閾値を反転した負の閾値未満である場合に操舵速度と正の値をとる操作速度の第2補正幅とを加算して操舵速度制限値とし、前記操舵速度制限値と、車両速度に応じて許容される操舵速度の最高値との小さい方の値を実際の操舵速度制限値に設定することを特徴とする運転操作支援装置。
  2. 請求項1に記載の運転操作支援装置において、
    前記回避経路算出手段は、自車両の操舵輪の転舵速度が前記制御範囲設定手段により設定された動作範囲内に収まることを制約条件として回避経路を算出することを特徴とする運転操作支援装置。
  3. 請求項1に記載の運転操作支援装置において、
    前記回避経路算出手段は、自車両の操舵系に加わる操舵トルクが前記制御範囲設定手段により設定された動作範囲内に収まることを制約条件として回避経路を算出することを特徴とする運転操作支援装置。
  4. 請求項1に記載の運転操作支援装置において、
    前記回避経路算出手段は、自車両の操舵輪の転舵角が前記制御範囲設定手段により設定された動作範囲内に収まることを制約条件として回避経路を算出することを特徴とする運転操作支援装置。
  5. 請求項2に記載の運転操作支援装置において、
    前記制御範囲設定手段は、前記制御起動判定手段が前記回避制御を実行するべきと判定した時点において前記自車状態検出手段により検出された操舵速度から操舵輪の転舵速度を算出し、算出された操舵輪の転舵速度の大きさを回避制御において許容される転舵速度の上限値として設定することを特徴とする運転操作支援装置。
  6. 請求項3に記載の運転操作支援装置において、
    前記制御範囲設定手段は、前記制御起動判定手段が前記回避制御を実行するべきと判定した時点において前記自車状態検出手段により検出された操舵トルクの大きさを回避支援制御において許容される操舵トルクの上限値として設定することを特徴とする運転操作支援装置。
  7. 請求項4に記載の運転操作支援装置において、
    前記制御範囲設定手段は、前記制御起動判定手段が前記回避制御を実行するべきと判定した時点において前記自車状態検出手段により検出された運転者の車両操作量から、運転者が操作すると予想される最大操舵角を推定し、推定された最大操舵角から算出される操舵輪の転舵角の最大値を回避制御において許容される転舵角の上限値として設定することを特徴とする運転操作支援装置。
  8. 請求項1乃至請求項7のうち、いずれか1項に記載の運転操作支援装置において、
    前記制御範囲設定手段は、前記制御起動判定手段が前記回避制御を実行するべきと判定した時点までに前記自車状態検出手段により検出された運転者の車両操作量の履歴に基づいて、前記動作範囲の上限値を補正することを特徴とする運転操作支援装置。
  9. 請求項1乃至請求項8のうち、いずれか1項に記載の運転操作支援装置において、
    前記外界環境検出手段は、自車両が走行可能な道路の境界を検出し、
    前記回避経路算出手段は、前記外界環境検出手段により検出された道路境界の内側に留まりながら障害物を回避する走行経路を回避経路として算出する
    ことを特徴とする運転操作支援装置。
  10. 請求項1乃至請求項9のうち、いずれか1項に記載の運転操作支援装置において、
    前記回避経路算出手段は、所定時間間隔毎に回避経路を更新することを特徴とする運転操作支援装置。
  11. 請求項10に記載の運転操作支援装置において、
    前記回避経路算出手段は、算出された回避経路に沿って走行した場合の自車両の障害物との接近距離を算出し、
    前記制御範囲設定手段は、前記回避経路算出手段により算出された接近距離が所定値以下である場合、回避制御の動作範囲が現在設定されている動作範囲より広くなるように補正する
    ことを特徴とする運転操作支援装置。
  12. 自車両の外界環境と走行状態とに基づいて、自車両の周囲に存在する障害物に自車両が接触することを回避するための回避制御を実行するべきか否かを判定する処理と、
    前記回避制御を実行するべきと判定した時点における自車両の運転者の車両操作量に基づいて回避制御の動作範囲を設定する処理と、
    設定された回避制御の動作範囲内で自車両が障害物と接触することを回避する走行経路を回避経路として算出する処理と、
    算出された回避経路に沿って走行するように運転者の車両操作を支援する処理と、
    を有し、
    前記回避制御を実行するべきと判定した時点において自車両の操舵輪の操舵速度に基づいて、操舵速度が操舵速度変化に関する正の閾値を超える場合に操舵速度と正の値をとる操作速度の第1補正幅とを加算して操舵速度制限値とし、操舵速度が前記正の閾値以下である場合に操舵速度を操舵速度制限値とし、操舵速度が前記正の閾値を反転した負の閾値未満である場合に操舵速度と正の値をとる操作速度の第2補正幅とを加算して操舵速度制限値とし、前記操舵速度制限値と、車両速度に応じて許容される操舵速度の最高値との小さい方の値を実際の操舵速度制限値に設定することを特徴とする運転操作支援方法。
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