以下、本発明を記録装置の一種であるインクジェット式複合型プリンタに具体化した一実施形態を図1〜図12を用いて説明する。
図1に示すように、インクジェット式複合型プリンタ(以下、単に「プリンタ11」という)は、一台で、スキャナ、プリンタ、コピーの3つの機能を備えるカラープリンタである。プリンタ11は、原稿の画像を読み取って画像データとして入力するスキャナ部12と、印刷データに基づく画像を所定の記録媒体(メディア)に印刷するプリンタ部13と、操作パネル14とを備えている。コピー機能は、スキャナ部12で読み取った画像データをプリンタ部13で印刷データに変換し、その印刷データに基づく画像をプリンタ部13で印刷することにより実現される。
スキャナ部12はプリンタ部13の上側に配置され、スキャナ部12の上部には、原稿を載置するための原稿台ガラス15と、該原稿台ガラス15を覆う原稿台カバー16とが設けられている。原稿台カバー16は、スキャナ部12に開閉可能に設けられている。
プリンタ11の下部には、プリンタ部13に給送すべき用紙P(記録媒体)を収容する給紙カセット17が取り外し可能な状態で挿着されている。給紙カセット17の上側には、プリンタ部13により印刷された用紙Pを排出するための排出部18が設けられている。本実施形態のプリンタ11には、CD−RやDVD−R等の光ディスク(以下、単に「ディスクD」と呼ぶ)のレーベル面に印刷を行うためにディスクDを載置(セット)するためのディスク保持トレイ(以下、単に「トレイ19」という)が、排出部18の開口から出退可能な状態で設けられている。トレイ19の略四角板状のトレイ本体19aにはディスクDをセットするための略円環状のセット凹部19bが設けられている。なお、図1では、トレイ19がディスクDのセット/取り外しを行うためのセットポジション(排出位置)に配置された状態を示しており、その下側には排出部18に排出された用紙が載置される3段伸縮式の排紙スタッカ20が設けられている。
プリンタ11の前面やや上段寄り位置に配置された操作パネル14は、ユーザが操作するための操作部21と、各種表示を行うための表示部22とを備えている。表示部22は、例えばカラー液晶ディスプレイから構成されている。表示部22には、メニュー画面や、各種モードにおける設定状態、動作状態を示す文字(テキスト)、印刷したい画像の選択や画面上での印刷画像の確認を行うための画像などが表示される。
操作部21には、ユーザが各種操作を行うための操作ボタンが設けられている。例えば、この操作ボタンとしては、電源を投入(ON)/遮断(OFF)するための電源スイッチ23(電源ボタン)や、印刷処理を開始するための印刷開始ボタン24、コピー処理を開始するためのコピーボタン25、トレイ19を出退させるために操作されるトレイ開閉スイッチ26等の他、各種メニューを選択するための選択ボタン、モード選択ボタン等も設けられている。例えばレーベル印刷は、モード選択ボタンによりレーベル印刷モードを選択し、その設定画面で必要な設定項目(CDサイズ,画像の選択等)を選択した後、印刷開始ボタン24を押すことで実行される。
また、プリンタ11の前面右側にはカードスロット27が設けられ、例えばデジタルカメラ等により撮影された画像を保存するメモリカードMCをカードスロット27に挿着することで、メモリカードMCの画像をパーソナルコンピュータ等のホスト装置を介さず印刷することが可能となっている。さらに、プリンタ11はUSBケーブルの端子を接続するためのUSBポート(図示せず)を備え、デジタルカメラからUSBケーブルを介して画像データを直接読み込んで印刷したり、ホスト装置のプリンタドライバからUSBケーブルを介して受信した印刷データに基づいて印刷したりすることも可能となっている。なお、プリンタ11の前部左右下側には、カバー13aに覆われた状態で複数個のインクカートリッジ28が、図示しないカートリッジホルダに接続された状態で収容されている。
次にプリンタ部の構成を説明する。図2はプリンタ部の斜視図である。
図2に示すように、プリンタ部13は、上側及び前側が開放された略四角箱状の本体フレーム29を備えている。本体フレーム29の同図における左右の側壁間には所定長さを有するガイド軸30が架設されており、キャリッジ31はこのガイド軸30に沿って主走査方向Xに往復移動可能に設けられている。キャリッジ31は、本体フレーム29の背板内面に取着された一対のプーリ32に巻き掛けられた無端状のタイミングベルト33に固定されており、図2における右側のプーリ32が駆動軸に取着されたキャリッジモータ(以下、「CRモータ34」という)が正逆転駆動されて、タイミングベルト33が正転・逆転することにより、キャリッジ31は主走査方向Xに往復移動するようになっている。
キャリッジ31の下部には、インクジェット式の記録ヘッド35が設けられており、この記録ヘッド35の下面は、液体としてのインクを噴射する複数列のノズルが開口するノズル形成面35a(図3参照)となっている。
本体フレーム29内の記録ヘッド35と対向する位置には、記録ヘッド35と用紙との間隔を規定するプラテン36が設けられている。また、記録ヘッド35はインク色毎の複数本のインク供給チューブが集束状態に配管されたフレキシブル配管板37を介して複数のインクカートリッジ28と接続され、例えば黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクが各インクカートリッジ28から記録ヘッド35へ個別に供給されるようになっている。なお、フレキシブル配管板37には記録ヘッド35を駆動させるための電気系配線も含まれている。また、キャリッジ31の背面側には、キャリッジ31の移動量に比例する数のパルスを出力するリニアエンコーダ38がガイド軸30に沿って延びるように設けられている。
また、本体フレーム29の図2における右側下部には、紙送りモータ(以下、「PFモータ39」という)が配設されている。PFモータ39の駆動により、プラテン36を搬送方向に挟んだその上流側と下流側にそれぞれ配置された搬送ローラ対40及び排出ローラ対41(図3参照)が回転駆動され、用紙P又はトレイ19が副走査方向Yに搬送される。このとき、トレイ19は、そのトレイ本体19a又はその一対のガイドアーム19L,19Rが搬送ローラ対40に挟持(ニップ)された状態で、PFモータ39が正転/逆転駆動されることで、副走査方向Y(搬送方向)に出退するようになっている。そして、トレイ19は、用紙Pへの印刷時には、後述の用紙搬送経路と干渉しないように搬送ローラ対40より搬送方向上流側の格納ポジション(格納位置)へ退避するようになっている。なお、搬送ローラ対40は、PFモータ39の動力で回転駆動する搬送駆動ローラ40aと、搬送駆動ローラ40aに当接して連れ回りする従動ローラ40bとから構成される。
キャリッジ31を主走査方向Xに往復動させながら記録ヘッド35のノズルから用紙P又はディスクDのレーベル面にインクを吐出する印字動作と、用紙P又はディスクDを副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する送り動作とを交互に繰り返すことで、用紙P又はディスクDに画像やテキスト等の印刷が施される。
また、プリンタ11には、記録ヘッド35とプラテン36との間隔(プラテンギャップ)を調整可能に、キャリッジ31を上下方向に移動させるプラテンギャップ自動調整装置(以下、「APG装置42」と称す)が装備されている。ホスト装置から又は操作パネル14での設定情報から取得した紙種の情報に基づきその紙種に応じた適切なプラテンギャップが確保されるようにAPG装置42は駆動され、キャリッジ31が所定のペーパーギャップ(記録ヘッド35と用紙との間隔)が確保される高さに調整される構成となっている。また、レーベル印刷時においては、ディスクDの厚さに応じた広めのプラテンギャップが確保されるようにAPG装置42は駆動され、キャリッジ31は例えば最上昇位置に配置される。なお、本実施形態では、APG装置42により、ギャップ調整手段が構成される。
図2においてキャリッジ31の移動経路上の同図における右端位置は、記録が行われないときにキャリッジ31が待機するホーム位置(ホームポジション)となっている。ホーム位置に配置されたキャリッジ31の直下には、記録ヘッド35に対してノズルクリーニング等のメンテナンスを行うキャッピング装置44(メンテナンスユニット)が配設されている。
キャッピング装置44は、記録ヘッド35のノズル内のインクが乾燥することを防止する蓋体として機能するキャップ45と、ノズル形成面35aを払拭するためのワイパ46と、キャリッジ31をホーム位置にロックするためのロック部材47と、これらの部材45〜47を昇降させる昇降機構44aと、吸引ポンプ48とを備える。昇降機構44aによって、各部材45〜47は記録ヘッド35と干渉しない退避位置(最下降位置)と、上昇位置との間を昇降する。上昇位置では、キャップ45がノズルを囲む状態で記録ヘッド35のノズル形成面35aに当接するとともにワイパ46がノズル形成面35aを払拭可能な高さに配置され、さらにロック部材47がキャリッジ31の図示しないロック用の凹部に係入されてキャリッジ31をホーム位置にロックするようになっている。
キャップ45は、上記のノズル開口の乾燥を防ぐ目的の蓋体機能(キャッピング機能)の他、記録ヘッド35のノズル形成面35aをキャップしてそのキャップ内空間に吸引ポンプ48からの負圧を与えてノズルからインクを強制的に吸引排出させる液体吸引手段の一部としての機能も備えている。吸引ポンプ48は、例えばチューブポンプからなり、ノズルからキャップ45内へ吸引排出された廃インクはプラテン36の下側に配置された廃液タンク49に排出されるようになっている。
また、キャリッジ31のホーム位置近傍には、動力伝達切換装置50が設けられている。動力伝達切換装置50は、キャリッジ31がホーム位置近傍の切換位置に配置されることで接続から切断の状態に切り換えられ、搬送駆動ローラ40aの回転により接続先(切り換え先)を選択し、キャリッジ31が切換位置から退避することで、PFモータ39の動力伝達経路が、選択された接続先へ接続されるように構成されている。本実施形態では、PFモータ39は、APG装置42、キャッピング装置44、自動給送装置(以下、単に「給送装置52」という)(図3参照)及び媒体排出フレーム(以下、「EJフレーム125」という)の昇降機構127(図9参照)等の共通の動力源となっている。そして、動力伝達切換装置50の切り換えにより、これらの装置42、44,52等のうち一つへの動力伝達経路が選択されるようになっている。なお、PFモータ39から搬送ローラ対40及び排出ローラ対41への動力伝達経路は動力伝達切換装置50の切換位置に関係なく常に接続されるようになっている。
次にプリンタ部13の詳細な構成を説明する。図3は、トレイが格納ポジションに位置する状態におけるプリンタの内部構造の概略を示す側断面図である。プリンタ部13の前面13bの中央下部に多数枚の用紙Pを積畳状態で収容し得る給紙カセット17が着脱可能に装着されている。給紙カセット17内に収容された用紙Pは、給送装置52によって最上位のものから順番に1枚ずつ繰り出されて後述するU字状の湾曲反転経路53に向けて給送されるようになっている。
給送装置52は、給紙カセット17と、ピックアップローラ54と、ガイドローラ55と、分離手段56と、第1中間送りローラ57とを備えている。給紙カセット17には複数枚の用紙Pを積層状態でセット可能であり、図示しないエッジガイドによって収容された用紙Pが給送位置に位置決めされるようになっている。
ピックアップローラ54は、揺動軸58を中心に揺動する揺動部材59に設けられており、PFモータ39(図2)を動力源として、給紙カセット17にセットされた用紙Pの最上位のものと接して回転することにより、最上位の用紙Pを給紙カセット17から送り出す。
ピックアップローラ54の回転により送り出された用紙Pの先端が分離斜面60に摺接しつつ下流側に進むことで、次位以降の用紙Pとの予備的な分離が行われる。分離斜面60の下流側には自由回転可能なガイドローラ55が設けられ、このガイドローラ55の下流側には、分離ローラ61と駆動ローラ62とを備えて構成された分離手段56が設けられている。分離ローラ61は、その弾性材よりなる外周面が駆動ローラ62と圧接し、且つトルクリミッタ機構により、所定の回転抵抗が与えられた状態に設けられている。従って、次位以降の用紙Pが、分離ローラ61と駆動ローラ62との間で止められ、重送が防止されるようになっている。
分離手段56の下流側には、駆動ローラ63と、駆動ローラ63との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラ64とからなる第1中間送りローラ57が設けられており、この第1中間送りローラ57により、用紙Pが更に下流側へと送られる。なお、第1中間送りローラ57の下流側には、用紙Pが湾曲反転経路53を通過する際の負荷を軽減する従動ローラ65が設けられている。
続いて給送装置52(従動ローラ65)の下流側には、駆動ローラ66と、駆動ローラ66との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラ67とからなる第2中間送りローラ68が設けられており、この第2中間送りローラ68により、用紙Pが更に下流側へと送られる。なお、本実施形態では、ピックアップローラ54、ガイドローラ55、分離手段56、第1中間送りローラ57及び第2中間送りローラ68等により、搬送手段が構成される。
第2中間送りローラ68の下流側には、搬送ローラ対40と、記録ヘッド35と、プラテン36と、排出ローラ対41とが設けられている。なお、搬送ローラ対40の上流側近傍には、用紙P又はトレイ19を検出する位置検出器70(紙検出センサ)が設けられている。位置検出器70は、給送される用紙Pの先端あるいは搬送される用紙Pの後端の通過を検出し、またトレイ19が移動するときにトレイ19の基準位置(原点位置)の通過を検出する。本実施形態では、位置検出器70は例えば光学センサにより構成されている。もちろん、位置検出器70を接触式センサとしてもよい。
用紙Pは搬送駆動ローラ40aと従動ローラ40bにニップされてその先端が印刷開始位置に達するまで給送(頭出し)され、印刷開始後の紙送り動作時には下流側へ精密送りされる。
キャリッジ31は主走査方向(図3の紙面直交方向)に延びるガイド軸30にガイドされながら、CRモータ34(図2)によって主走査方向に往復動するように駆動される。なお、キャリッジ31はインクカートリッジを搭載しない所謂オフキャリッジタイプであり、インクカートリッジ28(図1)からフレキシブル配管板37のインク供給チューブ(図示せず)を介して記録ヘッド35へとインクが供給される。
記録ヘッド35と対向する位置にはプラテン36が設けられ、プラテン36によって、用紙Pと記録ヘッド35との間のギャップPGが規定されるようになっている。なお、ギャップPGは、APG装置42(図8に示す)により、本実施形態では4段階に切り換え可能となっている。
プラテン36の搬送方向下流側にある排出ローラ対41は、駆動ローラ41aと、駆動ローラ41aに接して従動回転する従動ローラ41bとを備え、記録ヘッド35によって記録の施された用紙Pは、排出ローラ対41により、装置前方側に設けられた排紙スタッカ20(図1参照)へと排出される。なお、給送装置52を構成するピックアップローラ54、駆動ローラ62,63,66は、PFモータ39の動力により回転駆動される。
また、プリンタ11は、位置検出器70の他、トレイ格納検出器71と、紙幅センサ72とを有する。このうち、トレイ格納検出器71は、接触式である機械式の検出器であり、トレイ19が図3に示す格納ポジションに位置することを検出する。具体的には、トレイ格納検出器71は、格納ポジションに位置するトレイ19の記録時の搬送方向上流側に設けられ、検出用の接触子(図示省略)がトレイ19と当接することによってトレイ19を検知するように構成されている。
また、紙幅センサ72は、光学式のセンサであり、キャリッジ31における記録ヘッド35と隣接する位置に設けられている。そして、キャリッジ31が主走査方向Xへ移動するとき、紙幅センサ72から出射した光の反射光を受光し、その反射率の高低によって用紙P及びトレイ19上のディスクDの有無および端部を検出するように構成されている。これら位置検出器70、トレイ格納検出器71及び紙幅センサ72は、制御装置150へ検出状態を知らせる信号を送信するように設けられている。なお、キャリッジ31の移動方向(主走査方向X)においてホーム位置側を「1桁側」と呼び、反ホーム位置側を「80桁側」と呼ぶ場合がある。
図3に示すように、トレイ19は、湾曲反転経路53を構成する経路構成部材75の内部空間76内に収容される大きさの短寸のサイズに構成されており、トレイ本体19aの後端側にはトレイ19をセットポジションに導くために移動ストロークを拡張する拡張移動機構77が接続されている。また、トレイ19の裏面(下面)を支持する支持部材78が経路構成部材75と一体化された状態で設けられている。
湾曲反転経路53は、プリンタ部13の後部スペースを利用して設けられている。湾曲反転経路53は、その外側案内面53aを形成する上部ハウジング79,80及び搬送案内上81と、下方に位置する下部ハウジング82と、その内側案内面53bを形成する前述の経路構成部材75とにより構成されている。
図4は、格納ポジションにあるトレイ19の周辺を示す平面図である。図4に示すように、トレイ19のトレイ本体19aの上面における幅方向(図4における左右方向)の中央位置の幾分前方(図4では下方)寄りの位置には、ディスクDをセットするためのセット凹部19bと、セットされたディスクDをその中心の孔で保持する保持凸部19eとが設けられている。また、トレイ19にセットできるディスクDとしては、12cm直径あるいは8cm直径のCD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RWあるいは次世代の光ディスクとして注目されているブルーレイディスク等、今後開発されるものを含めた種々の光ディスク等が適用可能である。
図4に示すように、トレイ19の先端部には櫛歯状で前下がり傾斜の案内爪89が形成されており、トレイ19が格納ポジションから前進したときには案内爪89が搬送ローラ対40に間にスムーズに挿入される。また、トレイ19の後端部に接続された拡張移動機構77は、トレイ19に対して回動自在に接続されている折畳み式のガイドアーム19L,19Rと、ガイドアーム19L,19Rの姿勢と移動を案内するガイドレール90L,90Rとを備えている。ガイドアーム19L,19Rは、幅狭で長尺な平板状の部材であり、その基端部はトレイ本体19aの後縁左右端部にそれぞれ回動軸91を介して回転自在に接続されている。
また、ガイドアーム19L,19Rの先端部には、左側のガイドアーム19L側では上方に向けて突出し、右側のガイドアーム19R側では下方に向けて突出するガイドピン92L,92Rが設けられている。そして、ガイドピン92Lが前記経路構成部材75の内周面に刻設されているL字形のガイドレール90Lと係合し、ガイドピン92Rが前記支持部材78の上面に刻設されているL字形で左右対称配置されているガイドレール90Rと係合している。
右側のガイドアーム19Rにはその先端寄り位置に被検出孔95(セットポジション孔)が形成されている。また、トレイ本体19aの前縁右端には、切欠き部96が形成されている。これらの被検出孔95及び切欠き部96は、位置検出器70の被検知対象となる。トレイ19が移動するときに位置検出器70が切欠き部96から外れてトレイ本体19aを検知し、検出信号がオフからオンに切り換わったそのときの位置をトレイ19の基準位置とする。また、位置検出器70が被検出孔95を検知したときの位置が、トレイ19のセットポジションとなるようになっている。
図4に示すローラ駆動軸40cにはPFモータ39(図2)からの動力が伝達され、さらにギヤ輪列86を介して補助搬送機構87に動力が伝達される。補助搬送機構87は、ラック・ピニオン機構により構成され、トレイ本体19aの上面右側側縁部の後部に形成されたラック93と、ローラ駆動軸40cの動力を伝達するギヤ輪列86の終端部に設けられたピニオン94とを有している。
トレイ19の搬送方向Y及び反搬送方向−Yの移動は、補助搬送機構87と、搬送ローラ対40とによって行われる。補助搬送機構87は、格納ポジションに位置しているトレイ19を印刷待機ポジション(図5(c))に受け渡すまでの移動と、印刷待機ポジションに位置しているトレイ19を格納ポジションに格納するまでの移動を担っている。そして、印刷待機ポジション(図5(c))とセットポジション(図1、図2、図5(a))との間におけるトレイ19の移動は、トレイ19をニップする搬送ローラ対40の回転によって行われる。
すなわち、図4の格納ポジションに位置しているトレイ19のラック93にローラ駆動軸40cの動力がギヤ輪列86及びピニオン94を介して伝達されると、トレイ19は前方への移動を開始する。トレイ19先端の案内爪89が搬送ローラ対40のニップ点に至ると、補助搬送機構87からの動力伝達が終了し、トレイ19は搬送ローラ対40から動力を受ける印刷待機ポジション(図5(c))に至る。なお、トレイ19を使用する場合は、ディスクDのレーベル面への印刷時であるので、事前にAPG装置42を作動させて記録ヘッド35とプラテン36間の間隔を上方に拡大し、ディスクD用のギャップPGに設定しておく。
なお、図4に示すように、プラテン36は、支持部材である搬送案内部36aと、搬送案内部36aの上面に形成されているプラテンリブ36bと、記録の実行に使用されなかった余剰のインクを吸収する吸収部材36cが露出するインク回収溝36d(いずれも図4に示す)とを備えている。
図5は、トレイの移動動作を示す模式平面図である。図5(a)は格納ポジション、図5(b)はセットポジション、図5(c)は印刷待機ポジションをそれぞれ示す。図5(a)に示すように、トレイ19が格納ポジションに位置している場合、トレイ19は搬送ローラ対40の上流側に離間している。トレイ19が格納ポジションにある状態では、搬送ローラ対40を搬送される用紙Pとトレイ19は干渉しないので、用紙Pの印刷が可能になっている。
トレイ19が格納ポジションにある状態では、トレイ格納検出器71は、トレイ19と当接してON状態となる。また、位置検出器70は、トレイ19の切欠き部96(図4参照)と対向してOFF状態となる。さらに、紙幅センサ72は、プラテン36上に何もないので、OFF状態となる。なお、格納ポジションへ移動する際、必ず紙幅センサ72によってトレイ19上のディスクDの有無を確認した後に移動するように構成されている。従って、格納ポジションに位置するトレイ19上にディスクDがある場合はない。
図5(c)に示す印刷待機ポジションでは、トレイ格納検出器71は、トレイ19が離間しており、OFF状態となる。また、位置検出器70は、トレイ19と対向しており、ON状態となる。さらに、紙幅センサ72は、反射率が高いディスクDと対向しているので、ON状態となる。
ディスクDをトレイ19にセットする場合や印刷が終了したディスクDをトレイ19から取り出す場合には、トレイ19を一杯に前方に引き出した図5(b)に示すセットポジションにトレイ19が位置する。セットポジションにあるトレイ19は、左右のガイドアーム19L,19Rが搬送ローラ対40に挟持(ニップ)された状態にある。また、トレイ19の移動経路全域において92L,92Rは常にガイドレール90L,90Rに係合した状態になっており、図4、図5(a)に示す折畳み状態から図5(b)に示す伸張状態にガイドアーム19L,19Rの姿勢を連続的に変化させて行く。
トレイ19が図5(b)に示すセットポジションにある場合、トレイ格納検出器71は、トレイ19が離間しており、OFF状態となる。また、位置検出器70は、右側のガイドアーム19Rの被検出孔95と対向しており、OFF状態となる。さらに、紙幅センサ72は、反射率が低いトレイ19と対向しているので、OFF状態となる。なお、電源投入後、はじめてトレイ19が格納ポジションからセットポジションへ移動するときには、位置検出器70の検出対象が切欠き部96からトレイ19に切り換わって、位置検出器70がOFFからONへ切り換わった際のトレイ19の位置を基準位置とし、その基準位置に対する相対位置(カウント値)としてトレイ19の位置を把握するようになっている。
<動力伝達切換装置>
次に動力伝達切換装置50の構成について説明する。まず、図6を参照しながら動力伝達切換装置50の構成について概説する。図6に示すように、プリンタ11は動力源としてPFモータ39とCRモータ34を備え、これら2つのモータは、制御装置150により制御される。PFモータ39は、駆動ローラ40a,41a,54,62,63,66の共通の動力源であるとともに、動力伝達切換装置50を介してその動力伝達先を切り換えることで、給送装置52、APG装置42、キャッピング装置44、補助搬送機構87及び機構A97など、プリンタ11において動力を必要とする種々の被駆動部を駆動する。但し、駆動ローラ40a,41a,54,62,63,66などの用紙搬送経路に設けられるローラは、動力伝達切換装置50を介さずにPFモータ39と一対一で動力伝達可能に連結されており、PFモータ39が回転駆動すると、それに応じて常に回転するようになっている。なお、図6において機構A97は、例えばインクカートリッジ28のインクを記録ヘッド35に加圧供給するインク供給ポンプの被駆動部を示す。インク供給ポンプは、インクカートリッジ28と接続されたカートリッジホルダに内蔵されるか、カートリッジホルダと記録ヘッド35との間のインク供給流路の途中に設けられている。本実施形態では、動力伝達切換装置50の動力伝達先の切り換え数を5つとしているが、複数であればよく例えば6つ以上としてもよい。
図6に示すように、搬送駆動ローラ40aのローラ駆動軸40cには駆動歯車102が一体回転可能な状態で取り付けられている。動力伝達切換装置50は、搬送駆動ローラ40aを動力軸(動力の入力軸)とし、この搬送駆動ローラ40aの駆動歯車102から回転トルクを受け、入力歯車101A〜101Eのうち一つを選択可能に回動するように設けられるとともにその選択した一つの入力歯車に回転トルクを伝達する動力伝達部103を備えている。入力歯車101A〜101Eは、補助搬送機構87、給送装置52、機構A97、APG装置42及びキャッピング装置44が有する入力歯車を示している。これら5つの入力歯車101A〜101Eは、図6に示すように、搬送駆動ローラ40aからそれぞれ等距離の位置で、かつ搬送駆動ローラ40aの軸線と直交する面内において円弧を描くような一列でほぼ等間隔に配置されている。
動力伝達部103は、ローラ駆動軸40cの端部に回動可能な状態で取着されたアーム部材104と、アーム部材104に対して駆動歯車102と噛合可能な位置に回転自在に支持された第1遊星歯車105と、第1遊星歯車105と噛合する状態で回転自在に支持された第2遊星歯車106とを有している。アーム部材104はローラ駆動軸40cを回動軸として相対回動可能かつローラ駆動軸40cのスラスト方向に移動可能な状態で取着されている。図6の紙面手前方向に移動したキャリッジ31がキャリッジ係合部108aを同図紙面手前方向に押し込むことで、動力伝達部103はローラ駆動軸40cに沿ってスラスト方向に第1ポジションから第2ポジションへ移動し、入力歯車101A〜101Eとの噛合が解除されるとともに、ローラ駆動軸40cと一体回転可能な状態に係合される。そして、ローラ駆動軸40cを所定回転量だけ回転させると、アーム部材104が回動し、第2遊星歯車106が噛合しうる一つの入力歯車が選択される。その後、キャリッジ31が図6の紙面直交方向奥側へ退避すると、動力伝達部103が付勢力で同奥側の第1ポジションへ復帰し、第2遊星歯車106が、選択した一つの入力歯車と噛合する。例えば第2遊星歯車106が入力歯車101Aと噛合した状態で回転トルクが伝達されると、補助搬送機構87が駆動するようになっている。
次に動力伝達切換装置50の詳細な構成を図6及び図7を用いて説明する。図7は動力伝達切換装置50の斜視図を示す。なお、図7では、動力伝達部103が入力歯車との噛合が解除された第2ポジションに位置する状態を示す。図6及び図7に示す動力伝達部103は、ローラ駆動軸40cの軸線方向に沿って位置する第1ポジションと第2ポジションとの間を変位可能(ポジション切り換え可能)に設けられている。
アーム部材104は、ローラ駆動軸40cを挿通させる軸孔を有するスリーブ部104aを備え、スリーブ部104aを介して、ローラ駆動軸40cの軸線方向にスライド変位可能に、且つ図6に示すa矢印方向にローラ駆動軸40cを揺動軸として揺動可能に設けられている。図7に示すように、アーム部材104においてスリーブ部104aの端部には、スラスト方向に突出する突歯が周方向に複数配置されてなる第1係合歯部104bが形成されている。
図7に示すように、第1係合歯部104bと対向する位置には、円筒状部材107がローラ駆動軸40cと一体的に回転するよう固定されており、この円筒状部材107において第1係合歯部104bと対向する位置には、第1係合歯部104bと噛み合い可能な複数の突歯を有する第2係合歯部107aが形成されている。
また、図7に示すように、第1係合歯部104bと第2係合歯部107aを内側に収容する円筒形状をなすケース部材108が設けられており、その一方側の開口部から、スリーブ部104aがケース部材108の内側に入り込むように構成されている。このケース部材108は、ローラ駆動軸40c及びアーム部材104がケース部材108に対して相対回転できるように設けられており、アーム部材104が回動しても、ケース部材108は、キャリッジ係合部108aが上方へ突出した状態が維持される姿勢を保つようになっている。
図7に示すように、ローラ駆動軸40cの軸端にはストッパ109が設けられており、このストッパ109とケース部材108との間に介在する第1コイルバネ110の付勢力により、アーム部材104はフレーム部材111に向かう方向(図7の左方向)へ付勢されている。この付勢力によりアーム部材104がフレーム部材111の規制部(図示せず)に当接することで、第1ポジションが保持されるようになっている。
また、ケース部材108の図7における左側内端面と第1係合歯部104bとの間には、第2コイルバネ112が設けられている。キャリッジ31がキャリッジ係合部108aを図7の右方向へ押して、ケース部材108が第1コイルバネ110の付勢力に抗して図7の右方向へ変位すると、第2コイルバネ112を介して第1係合歯部104bが図7の右方向に押され、これと一緒にアーム部材104も右方向に変位する。その結果、アーム部材104の揺動先端側に支持された第2遊星歯車106と入力歯車との噛合が解除される。そして、動力伝達部103が第2ポジションまで移動すると、図7に示すように第1係合歯部104bと第2係合歯部107aとが噛み合うようになっている。
このとき、両係合歯部104b,107aが正しく噛み合わずに両者の歯の先端同士が衝突しても、第2コイルバネ112の弾性力がクッションとなって、破損等が生じないようになっている。そして両者の歯の先端同士が衝突した状態で搬送駆動ローラ40aが所定量回転すれば、図7に示すように両係合歯部104b,107aが正しく噛み合うことが可能となる。そして、図7に示すように動力伝達部103が第2ポジションにあり両係合歯部104b,107aが噛み合った状態で、PFモータ39が所定方向に所定回転量だけ回転駆動されると、ローラ駆動軸40cと共にアーム部材104が回動し、第2遊星歯車106が入力歯車101A〜101Eのうち次の接続先とすべき一つの入力歯車と噛合可能な位置に選択されるようになっている。
そして、図7に示す第2ポジションの状態から、キャリッジ31がキャリッジ係合部108aから離間すると、第1コイルバネ110の付勢力によって、動力伝達部103が第1ポジションへ移動し、第1係合歯部104bと第2係合歯部107aとの噛み合いが解除されるとともに、第2遊星歯車106が、選択された一つの入力歯車と噛合する。
また、フレーム部材111には位置決めピン112A〜112Eが、入力歯車101A〜101Eのそれぞれに対応する近傍位置から垂直に突出形成されている。例えばアーム部材104に設けられた第2遊星歯車106が入力歯車101Eと噛合した状態では、アーム部材104の先端部に形成された孔104cに位置決めピン112Eが入り込むことにより、アーム部材104の揺動動作が拘束され、第2遊星歯車106と入力歯車101Eとの噛合状態が維持されるようになっている。
このように動力伝達部103が第1ポジションにある状態では、第1遊星歯車105が駆動歯車102と噛合し、駆動歯車102→第1遊星歯車105→第2遊星歯車106→入力歯車101A〜101Eのうち選択された一つの入力歯車の順で回転トルクが伝達され、いずれか一つの被駆動部が駆動されるようになっている。なお、図6に示すように、アーム部材104が図6における反時計方向にエンドまで回動したときに当接する位置決めフレーム113が設けられており、アーム部材104が位置決めフレーム113に当接した位置を基準(原点)としてアーム部材104の回動位置は管理される。
また、動力伝達部103は、第1ポジションと第2ポジションとの間の中間ポジションにも配置される。動力伝達部103の第1ポジションと第2ポジションとの間には、中間ポジションが設定されており、且つ保持手段(図示せず)によって、第1コイルバネ110の付勢力に抗して、動力伝達部103がキャリッジ31から独立してその中間ポジションを保持可能となっている。
<APG装置>
次にAPG装置42の構成について説明する。図8はAPG装置の側面図を示す。APG装置42は、記録ヘッド35とプラテン36との間のギャップPGを調整する装置であり、図8に示すようにキャリッジ用のガイド軸30の軸端に取り付けられるPG切換カム121と、このPG切換カム121と係合する規制部材122と、ガイド軸30の軸端に取り付けられる歯車123と、を備えて構成されている。
PG切換カム121は、その周囲のカム面121aが、ガイド軸30の軸心からの距離が周方向に沿って異なるように形成されており、このカム面121aが、規制部材122の規制面122aにより支持された状態となっている。
ガイド軸30は、その軸端がPG調整方向(図8の上下方向:矢印a方向)に延びる長溝124内に遊挿されており、ガイド軸30が回転すると、PG切換カム121が規制部材122に対して回転することにより(同図矢印b方向)、ガイド軸30がPG調整方向に変位するようになっている。なお、歯車123は、動力伝達切換装置50の入力歯車101Dから動力を得る歯車である。
このように構成されたAPG装置42は、ギャップPGをその小さい順から4段階に段階的に切り換えるように構成されている。ここで、PG切換カム121にはストッパ部121bが形成されており、このストッパ部121bが規制部材122に当接してPG切換カム121の回転が止められるようになっている。
従って、ギャップPGを切り換える際には、先ずストッパ部121bが規制部材122に当接してPG切換カム121の回転が止まるまでPG切換カム121を図8の反時計回り方向に回転させ、この状態(PFモータ39の駆動電流値が閾値を超えた状態)からPG切換カム121を図8の時計回り方向に所定の回転量だけ回転させることにより、目的とするギャップPGに設定する。
次に初期化処理時における動作について図9を用いて説明する。電源ON処理時の初期化処理には、キャリッジホームポジションシーク処理(以下、「CRホームシーク処理」という)、PFリセット動作、APGリセット動作、排紙フレームリセット動作(EJフレームリセット動作)、キャッピング動作などの初期化項目がある。図9は、動力伝達切換装置50の切り換えを伴う初期化項目であるAPGリセット動作及び排紙フレームリセット動作を説明する模式正面図である。
図9(a)に示すホーム位置にあるキャリッジ31は、キャリッジ係合部108aと離間し、アーム部材104が第1ポジションに位置して第2遊星歯車106が例えば入力歯車101Eと噛合した状態にある。このとき第1係合歯部104bと第2係合歯部107aとは噛み合っていない。
キャリッジ31がホーム位置よりさらに1桁側の図9(b)に示す切換選択位置まで移動すると、キャリッジ31がキャリッジ係合部108aを押してアーム部材104を第2ポジションに移動させる。その結果、第2遊星歯車106と入力歯車101Eとの噛合が解除されるとともに、第1係合歯部104bが第2係合歯部107aと噛み合う。そして、この状態でPFモータ39が回転駆動されて搬送駆動ローラ40aが回転すると、両係合歯部104b,107aの噛み合いを介してアーム部材104が回動し、第2遊星歯車106が次に接続先とすべきAPG装置42の入力歯車101Dと噛合可能な位置に選択される。そして、キャリッジ31が切換選択位置からホーム位置へ移動すると、図9(c)に示すように、第2遊星歯車106がAPG装置42の入力歯車101Dと噛合する。
この状態で、PFモータ39が回転駆動されると、搬送駆動ローラ40aの回転トルクが動力伝達切換装置50を介して入力歯車101Dに伝達され、APG装置42のPG切換カム121が回動し、ガイド軸30が長溝124に沿って最上昇することで、キャリッジ31が最大のギャップPGとなる最上昇位置に配置され、APG装置42がリセットされる。
このようにキャリッジ31を図9(c)に二点鎖線で示す最上昇位置に配置した後、CRモータ34を逆転駆動してキャリッジ31を1桁側へ少し移動させてキャリッジ係合部108aを半押しすることで、アーム部材104を中間ポジションに配置し、APG装置42への動力伝達を遮断する。次にCRモータ34を正転駆動してキャリッジ31を反ホーム位置まで移動する。反ホーム位置側にはキャリッジ31の側面に突設された係合部31aにより操作されるレバー126が設けられており、反ホーム位置まで移動したキャリッジ31はレバー126を回動操作する。本実施形態では、プリンタ部13の排出口近傍に上下動可能なEJフレーム125が設けられている。EJフレーム125は、用紙Pの印刷が行われるときには、排出口の高さ方向の間隔が用紙Pの厚みに応じた狭めの間隔となるようにEJフレーム125を下降し、一方、レーベル印刷が行われるときには、排出口の高さ方向の間隔がディスクDの厚みに応じた広めの間隔となるようにEJフレーム125を上昇するように構成されている。このEJフレーム125の昇降機構127は、レバー126が図9(c)に実線で示す位置に配置されているときは搬送駆動ローラ40aと動力伝達不能に切断され、レバー126が図9(c)に二点鎖線で示す位置に配置されているときは搬送駆動ローラ40aと動力伝達可能に接続される。このため、キャリッジ31がレバー126を二点鎖線の位置まで操作した状態で、PFモータ39が回転駆動されると、EJフレーム125が図5(c)に二点鎖線で示す下降位置から、実線で示す最上昇位置へ上昇するようになっている。そして、EJフレーム125が図5(c)に実線で示す最上昇位置へ到達することで、EJフレーム125のリセットが行われる。
なお、リセット動作では、原点位置でのリセットに併せて、その後、移動範囲全域の移動が可能かどうかを確認するための往復移動動作を併せて行う。例えばEJフレーム125の原点リセット後、EJフレーム125を最上昇位置から最下降位置の間を往復移動させて移動範囲の途中に移動の障害となる異物などがないことを確認する動作が行われる。また、APG装置42の原点リセット後、キャリッジ31を最上昇位置から最下降位置までの間を往復移動させて移動範囲の途中に移動の障害となる異物などがないことを確認する動作が行われる。
また、PFリセット動作は、搬送経路上に記録媒体の搬送の障害となる異物(例えばジャム用紙)などがないことを保証する処理である。PFリセット動作では、仮に搬送経路上に存在する用紙を搬送経路上から除去するに十分な所定回転量だけ搬送ローラ対40を排紙方向へ回転駆動させる動作と、位置検出器70が、搬送経路上に用紙やトレイ等が存在しない非検知状態にあることを確認する処理とが行われる。なお、CRホームシーク処理などその他の初期化処理については後述する。また、APGリセット動作及びPFリセット動作の電気的処理については後述する。
次にプリンタ11の電気的構成について説明する。図10はプリンタ11の電気的構成を示すブロック図である。図10に示すように、プリンタ11は制御装置150を備える。制御装置150はプリンタ11を統括的に制御する。
制御装置150には、入力系として、操作パネル14を構成する電源スイッチ23をはじめとする各種スイッチ、表示部22、カードリーダ151、リニアエンコーダ38、エンコーダ152、トレイ格納検出器71、位置検出器70及び紙幅センサ72が接続されている。また、制御装置150には、出力系として、スキャナエンジン155、CRモータ34、PFモータ39及び記録ヘッド35が接続されている。
制御装置150は、コンピュータ160(マイクロコンピュータ)、表示ドライバ161、第1モータ駆動回路162、第2モータ駆動回路163、ヘッド制御ユニット164及び電源回路165を備えている。コンピュータ160は、表示ドライバ161を介して表示部22の表示制御を行う。また、コンピュータ160は、第1モータ駆動回路162を介してCRモータ34を駆動制御するとともに、第2モータ駆動回路163を介してPFモータ39を駆動制御する。さらにコンピュータ160は、ヘッド制御ユニット164を介して記録ヘッド35を駆動制御することでインク滴の吐出制御を行う。また、コンピュータ160は、電源スイッチ23からの押下信号に基づいて電源回路165を制御してプリンタ11の電源の投入及び電源の遮断を行う。
また、コンピュータ160は、CPU171、ASIC172(Application SpecificIC)、ROM173、RAM174、不揮発性メモリ175、CRカウンタ181、トレイ位置カウンタ182、PFカウンタ183、アームカウンタ184、PGカウンタ185及びEJカウンタ186を備え、これらはバス188を介して互いに接続されている。また、ASIC172は、スキャナ処理回路191、JPEG解凍回路192及び画像処理回路193を備えている。
ROM173には、CPU171により実行される制御プログラムなどが記憶されている。RAM174には、CPU171の演算結果や制御プログラムを実行して処理する各種データなどが一時的に記憶される。また、RAM174は、CPU171やASIC172内のスキャナ処理回路191及び画像処理回路193における処理の前後の画像データや印刷データが一時的に格納されるバッファとしてその一部が用いられる。本実施形態のRAMに174には、トレイ引込みフラグ176及び初期化完了フラグ177が設定されている。
スキャナエンジン155は、原稿台ガラス15に載置された原稿を光学的に読み取ってCCD(電荷結合素子)に蓄えられた電荷を、A/D変換回路によってA/D変換してスキャナ処理回路191に出力する。スキャナ処理回路191は、CPU171の制御の下、スキャナエンジン155から入力される各ラスタラインデータ(RGBの多階調画像データ)をバッファに蓄えた後、このRGB画像データを画像処理回路193に送る。
JPEG解凍回路192は、JPEG形式の画像データを例えばRGBの多階調画像データに解凍する。例えばデジタルカメラで撮影したJPEG形式の画像データが、メモリカードMCから入力端子151aを介してカードリーダ151によって読み取られASIC172内のJPEG解凍回路192に転送される。JPEG解凍回路192は、JPEG形式の画像データに対して復号化処理を施すことで、画像データから例えばRGBの多階調画像データに解凍(デコード)し、その画像データは画像処理回路193に転送される。
画像処理回路193は、スキャナ処理回路191又はJPEG解凍回路192から、転送されてきた例えばRGB形式の画像データに対して、色変換処理、ハーフトーン処理、マイクロウィーブ(Micro Weave)処理などの公知の画像処理を行い、処理後の画像データをRAM174(バッファ)に転送する。CPU171はバッファに記憶された画像データを基にヘッド駆動データ(印刷データ)を生成し、ヘッド制御ユニット164へ転送する。ヘッド制御ユニット164は、ヘッド駆動データに基づいて記録ヘッド35を駆動し、インク滴の吐出の有無や、吐出するインク滴の量を制御する。
リニアエンコーダ38は、キャリッジ31の移動経路に沿って張設されてその長手方向に一定刻みでスリットが形成された黒系半透明のテープ状の符号板と、該符号板のスリットを検知可能な状態でキャリッジ31の所定位置に固定された光学センサ(いずれも図示せず)とを有する。光学センサは、符号板を挟んで対向配置された一対の発光素子と受光素子とを有し、受光素子が発光素子から発光されて符号板上のスリットを通過した光を受光する。よって、リニアエンコーダ38は、キャリッジ31の移動距離に比例するパルス数で、かつキャリッジ31の移動速度に反比例する周期をもつパルスを出力する。CPU171は、キャリッジ31のホームシーク処理において、キャリッジ31を1桁側に移動させてキャリッジ31が1桁側のエンドに当接して、CRモータ34の駆動電流値が所定の閾値を超えると、CRカウンタ181をリセットし、以後、リニアエンコーダ38からの入力するパルスエッジを計数する。そして、キャリッジ31が80桁側の方向へ移動するときにCRカウンタ181の値をインクリメントし、キャリッジ31が1桁側へ向かう方向に移動するときにCRカウンタ181の値をデクリメントすることで、CPU171はCRカウンタ181の計数値から、キャリッジ31の主走査方向Xにおける位置を把握する構成となっている。
また、エンコーダ152は、PFモータ39と動力伝達可能に連結された軸部(例えば搬送駆動ローラ40aの軸部)の端部に固定された回転式の符号円板と、その符号円板の周方向に一定刻みで形成されたスリットを透過した発光素子からの光を受光素子が受光して90度位相のずれた2つのパルス信号を出力するセンサとを有する。
トレイ位置カウンタ182は、位置検出器70がトレイ19の切欠き部96(図4参照)に対応する前端を検知した時にリセットされる。このリセット後、トレイ位置カウンタ182は、エンコーダ152から入力するパルス信号のパルスエッジを計数する。そして、トレイ19が搬送方向下流側へ移動するときにトレイ位置カウンタ182の値をインクリメントし、トレイ19が搬送方向上流側へ移動するときにトレイ位置カウンタ182の値をデクリメントすることで、CPU171はトレイ位置カウンタ182の計数値から、トレイ19の搬送方向Yにおける位置を把握する構成となっている。
PFカウンタ183は、位置検出器70が用紙Pの先端を検知した時にリセットされ、その後、用紙Pの先端が記録ヘッド35の最上流ノズル位置(基準位置)に達した時に再リセットされる。この再リセット後、PFカウンタ183は、エンコーダ152から入力するパルス信号のパルスエッジを計数することで、CPU171はPFカウンタ183の計数値から基準位置を原点とする用紙Pの搬送位置を把握する構成となっている。
アームカウンタ184は、動力伝達切換装置50のアーム部材104が図6の反時計方向に回動して位置決めフレーム113に当接し、PFモータ39の駆動電流値が所定の閾値を超えるとリセットされる。このリセット後、アームカウンタ184は、エンコーダ152から入力するパルス信号のパルスエッジを計数することで、CPU171はアームカウンタ184の計数値からアーム部材104の位置を把握する構成となっている。
PGカウンタ185は、キャリッジ31が最上昇位置のエンドに達して、PFモータ39の駆動電流値が所定の閾値を超えるとリセットされる。このリセット後、PGカウンタ185は、エンコーダ152から入力するパルス信号のパルスエッジを、キャリッジ31の移動方向に応じてインクリメント又はデクリメントすることで、CPU171はPGカウンタ185の計数値からキャリッジ31の高さ方向の位置(つまりギャップPG)を把握する構成となっている。
EJカウンタ186は、EJフレーム125が最上昇位置のエンドに達して、PFモータ39の駆動電流値が所定の閾値を超えるとリセットされる。このリセット後、EJカウンタ186は、エンコーダ152から入力するパルス信号のパルスエッジを、EJフレーム125の移動方向に応じてインクリメント又はデクリメントすることで、CPU171はEJカウンタ186の計数値からEJフレーム125の高さ方向の位置(つまり排出口広さ)を把握する構成となっている。
ここで、トレイ引込みフラグ176は、電源OFF操作時にセットポジションに位置するトレイ19の引込み動作を行ってよいか否かを判断するためのフラグである。本実施形態では、プリンタ11の停止状態で電源スイッチ23を押下した電源ON操作時に、トレイ19上のディスクの有無を検出し、ディスクありの場合にはトレイ19をセットポジションへ移動して、ディスクDの取り外しをユーザに促すようにしている。これは、トレイ19上にディスクDがあると、キャリッジ31や記録ヘッド35、EJフレーム125等がディスクDと干渉する虞があり、メカニカル初期化処理を行うことができないからである。しかし、その後、ユーザが、トレイ19がセットポジションに配置されたまま、電源OFF操作を行う場合がある。この場合、メカニカル初期化完了前なので、メカニカル終了処理を行うことができず、そのまま電源が遮断されると、トレイ19がセットポジションに配置されたままとなる。そこで、電源ON時にディスクDを検出してトレイ19をセットポジションへ移動させたときには、その後においてメカニカル初期化処理は何も行われないので、そのまま電源OFF操作を行ったときには、そのセットポジションへ移動したときのトレイ19の移動経路がそのまま維持されていることが保証される。このトレイ19の移動経路が維持されていることを記憶しておくためにトレイ引込みフラグ176が用意されている。このため、トレイ引込みフラグ176は、電源ON時にディスクDを検出してトレイ19をセットポジションへ移動させたときにセットされ、電源オン操作時の最初と、セット後にトレイ19の引込み動作が行われるとき、あるいは行われたときにリセットされる。本実施形態では、トレイ引込みフラグのセット/リセットの動作については、後述するメカニカル初期化ルーチン(図11)において規定されている。
また、初期化完了フラグ177は、メカニカル初期化処理が完了しているか否かの情報を記憶するためのフラグである。メカニカル初期化処理が完了していないときには、初期化完了フラグ177はリセットされており、メカニカル初期化処理が完了したときにセットされる。
メカニカル初期化完了前では、トレイ引込みフラグ176がセットであるうちは、トレイ19の移動経路が確保されている。しかし、ディスクDが取り外されてメカニカル初期化処理が開始された後は、初期化動作のためにキャリッジ31の高さ、EJフレーム125の高さなどが変化している可能性があるため、トレイ19の移動経路が確保されていることを保証できない。
不揮発性メモリ175には、図11にフローチャートで示すメカニカル初期化ルーチンのプログラムと、図12にフローチャートで示す電源OFF処理ルーチンのプログラムがそれぞれ記憶されている。CPU171は、プリンタ11の停止中(電源遮断中)に電源スイッチ23が押下された(つまり電源ON操作が行われた)ことを検出したとき、図11に示すメカニカル初期化ルーチンを実行する。ここで、メカニカル初期化ルーチンとは、電源ON時に、CRホームシーク処理、APGリセット、EJフレームリセット及びPFリセットなどを含むプリンタ11のメカニカル初期化動作を行うための処理である。また、CPU171は、プリンタ11の起動中に電源スイッチ23が押下された(つまり電源OFF操作が行われた)ときに、図12に示す電源OFF処理ルーチンを実行する。
ここで、CRホームシーク処理とは、キャリッジ31の主走査方向Xの原点出し及びキャリッジ31がその移動経路全域での移動が可能であることを保証する処理動作である。具体的には、前述のCRカウンタ181をリセットさせてキャリッジ31の主走査方向の原点を設定するリセット動作と、さらにCRモータ34を駆動してキャリッジ31を反ホーム位置側(80桁側)のエンドまで移動させてその主走査方向Xの移動経路全域で何ら障害なく移動できることを確認する動作とを含む。
APGリセットとは、キャリッジ31の高さ方向の原点出し及びキャリッジ31の高さ方向の移動経路全域での移動が可能であることを保証する処理動作である。具体的には、まず動力伝達切換装置50をAPG装置42が選択される切換位置に切り換えた後、PFモータ39を正転駆動させてキャリッジ31を上昇させ、上側エンドに当たってPFモータ39の駆動電流値が閾値を超えた時点で、PGカウンタ185をリセットさせる前述のリセット動作を行う。次にPFモータ39を逆転駆動してPGカウンタ185の計数値に基づきキャリッジ31を下側エンドまで下降させた後、PFモータ39を正転駆動してキャリッジ31を最上昇位置に戻し、高さ方向の移動経路全域で何ら障害なく昇降可能であることを確認する。
さらにEJリセットとは、EJフレーム125の高さ方向の原点出し及びEJフレーム125の昇降経路全域での移動が可能であることを保証する処理動作である。具体的には、まず図9(c)に示すようにキャリッジ31が最上昇位置にある状態から、CRモータ34を逆転駆動してキャリッジ31にキャリッジ係合部108aを半押しさせることで、前述のよう動力伝達切換装置50を中間ポジションに切り換えた後、CRモータ34を正転駆動してキャリッジ31を80桁側へ移動させて反ホーム側に位置するレバー126を操作させる。このレバー操作状態でPFモータ39を正転駆動してEJフレーム125を上昇させ、上側エンドに当たってPFモータ39の駆動電流値が閾値を超えた時点で、EJカウンタ186をリセットするリセット動作を行う。そして、リセット後、PFモータ39を逆転駆動してEJカウンタ186の計数値に基づきEJフレーム125を下側エンドまで下降させて、その昇降経路全域で何ら障害なく昇降可能であることを確認する。
次に、上記のように構成されたプリンタ11においてCPU171が実行するメカニカル初期化処理及び電源OFF処理について、図11及び図12のフローチャートに従って説明する。まずメカニカル初期化処理について説明する。
ユーザが停止中のプリンタ11の電源スイッチ23を押下した押下信号を入力すると、CPU171は、図11のメカニカル初期化ルーチンを実行する。
まずステップS110において、トレイ引込みフラグをリセットする。
次のステップS20では、キャリッジ31のホームシーク処理を実行する。
次のステップS30では、ディスク検出を実行する。すなわち、トレイ19上にディスクDがあるか否かを検出する。このディスク検出は、トレイ19が例えば印刷待機ポジションにある状態下で、キャリッジ31をトレイ19のディスク載置範囲の上方を通るように主走査方向Xに移動させて、そのとき紙幅センサ72の発光部から下向きに出射した光の反射光を受光部で検出する。
そして、ステップS40では、ディスクありか否かを判断する。紙幅センサ72が検出した反射率の高低から判断し、例えば紙幅センサ72が受光した反射光の強度に比例するその出力電圧が閾値を超えると(つまり反射率がその閾値を超えると)、「ディスクあり」と判断する。「ディスクあり」であれば、ステップS50に進んで、トレイ19をセット位置(メディアセット位置)へ移動させる。
次のステップS60では、トレイ引込みフラグをセットにする。
ステップS70では、トレイ開閉スイッチ26が操作(押下)されたか否かを判断する。ここで、トレイ19がセット位置に移動することでユーザにディスクDの取り出しを促しており、通常、ユーザはトレイ19からディスクDを取り外し、その後、トレイ19を収納させるためにトレイ開閉スイッチ26を操作する。なお、この判断処理は割込処理で行っており、実際はトレイ開閉スイッチ26の押下信号を入力したときに割込処理でステップS70の判断処理を行う。このため、トレイ開閉スイッチ26が押下されなくても、CPU171は他の処理(タスクやシーケンス)を実行できる。
トレイ開閉スイッチ26が押下されると、トレイ19の引込み動作を行う。すなわち、CPU171は、PFモータ39を逆転駆動させることでトレイ19を引き込む。このとき、CPU171はトレイ位置カウンタ182の計数値に基づき、トレイ19を例えば印刷待機ポジションまで引き込む。なお、このときのトレイ引込み位置は、キャリッジ31を主走査方向Xへ移動させたときに、紙幅センサ72がトレイ19上のディスクの有無を検出できる位置であることが好ましい。
そして、トレイ引込み動作が終了すると、ステップS10の処理に戻る。すなわち、メカニカル初期化ルーチンを再度はじめから実行する。つまり、トレイ引込みフラグリセット(S10)、CRホームシーク処理(S20)、ディスク検出(S30)及びディスクあり判断(S40)を同様に実行する。今回は、まずステップS30においてディスク検出を行うと、ディスクなしと検出される。そのため、ステップS40の判断では、ディスクありと判断され、今度はステップS90に進むことになる。
ステップS90では、トレイ19を格納位置(格納ポジション)へ移動させる。すなわち、CPU171は、PFモータ39を逆転駆動してトレイ19を反搬送方向−Yへ引込み搬送し、その引込み搬送中において、トレイ格納検出器71の出力信号レベルを監視し、トレイ19が格納ポジションに到達してトレイ格納検出器71からの出力レベルがオフからオンに切り換わると、CPU171はPFモータ39の逆転駆動を停止させる。こうして、トレイ19は格納ポジションに配置される。
次にステップS100では、メカニカル初期化処理を継続する。つまり、メカニカル初期化処理のうちCRホームシーク処理は既に終了しているので、残りのメカニカル初期化処理を実行する。具体的には、PFリセット動作、排紙フレームリセット動作、APGリセット動作、キャッピング及びキャリッジロック(CRロック)などを行う。その他、図11では挙げられていないインクカートリッジ28の挿着の確認、及びCRモータ34のメジャメント処理(パラメータ設定)なども含まれる。インクカートリッジ28には、カートリッジホルダに挿着されたときに、プリンタ11内のCPU171からアクセス可能にカートリッジホルダ側の端子と電気的に接続される端子と、CSIC(Customer Service IC)とが設けられており、CPU171はCSICのメモリから各種インク情報(品番、色情報、インク残量(又はインク消費量)等)を読み込むためにそのメモリにアクセスを試み、アクセスが成功すればインクカートリッジ28が挿着されていると判断する。また、CRモータ34のメジャメント処理では、CRモータ34を駆動してキャリッジ31の設定速度プロファイルでの移動過程における摺動抵抗等に起因するモータ負荷を測定して、摺動抵抗の経年変化等にも対応できるようにその測定されたモータ負荷に応じたモータ駆動用パラメータ(例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御のデューティ値等)を設定する。なお、キャッピング及びCRロックは、各種リセット動作のために、キャリッジ31をホーム位置から移動させるときのキャッピング解除や、ホーム位置へ戻ったときのキャッピングのための動作を指す。
こうしてメカニカル初期化を完了すると、次のステップS110において、初期化完了フラグをセットにする。こうして当該ルーチンは終了する。ところで、ユーザがプリンタ11の電源を遮断すべく電源スイッチ23を操作するタイミングとしては、メカニカル初期化完了前(メカニカル初期化ルーチンの途中)と、メカニカル初期化完了後とがある。
次に電源OFF処理ルーチンについて12に基づいて説明する。プリンタ11の起動中にユーザが電源スイッチ23を押下し、電源スイッチ23から押下信号を入力すると、CPU171はこの電源OFF処理ルーチンを実行する。
まずステップS210において、メカニカル初期化済みであるか否かを判断する。すなわち、CPU171は初期化完了フラグが「セット」であるか否かを判断する。メカニカル初期化済みであれば、ステップS220に進んで、メカニカル終了処理を実行する。ここで、メカニカル終了処理とは、トレイ19やキャリッジ31、EJフレーム125、キャップ45等を所定の終了位置に移動させる動作などを含むメカニカル動作を指す。メカニカル終了処理が正常に終了した場合、例えば、トレイ19が格納ポジション、キャリッジ31がホーム位置かつ最上昇位置(リセット位置)、EJフレーム125が最上昇位置(リセット位置)、キャップ45がキャッピング位置(上昇位置)にそれぞれ配置される。
なお、このメカニカル終了処理においても、まずトレイ19上のディスクDの有無を判断し、ディスクDがあれば、トレイ19をセットポジションへ移動してユーザにディスクDの取り外しを促す。そして、ユーザがディスクDを取り外した後、トレイ19を格納ポジションに移動し、その後、上記のメカニカル終了動作を行ってその終了後、電源を遮断する(ステップS250)。また、ディスクなしの場合は、トレイ19が格納ポジションにあればそのままメカニカル終了動作を行って、その終了後に電源を遮断し、一方、トレイ19が格納ポジション以外の位置にあれば格納ポジションへ移動させてからメカニカル終了処理を行って、その終了後に電源を遮断する(ステップS250)。
一方、ステップS210の判断処理の結果、メカニカル初期化済みでなければ、ステップS230に進んで、トレイ引込みフラグが「セット」であるか否かを判断する。トレイ引込みフラグが「セット」であれば、電源ON時のメカニカル初期化処理ルーチンにおいて、ディスクありが検出され(S40で肯定判定)、ディスク取り外しのためにトレイ19がセットポジションへ移動した(S50)ときの状態で、電源OFF操作が行われたことを意味する。例えば、トレイ19がセットポジションへ移動した後、トレイ開閉スイッチ26が操作された場合は、トレイ引込み動作後に、トレイ引込みフラグがリセットされている(S10)。このため、トレイ引込みフラグが「セット」であれば、大抵の場合、トレイ19はセットポジションにある。
そして、トレイ引込みフラグが「セット」であれば、ステップS240に進んで、トレイ引込み動作を実行する。このときのトレイ引込み動作は、ステップS80の処理動作と同様に行われる。こうして、メカニカル初期化完了前に電源OFF操作された場合は、トレイが印刷待機ポジションに引き込まれ、トレイ19が印刷待機ポジションに格納された状態で電源が遮断される(ステップS250)。ここで、トレイ引込みフラグが「セット」であることは、電源ON時にトレイ19を格納状態(例えば印刷待機ポジション)からセットポジションへ移動させたときのトレイ19の移動経路が維持されていることが保証されている。このため、メカニカル初期化完了前であっても、トレイ19の移動経路上にキャリッジ31やEJフレーム125などの障害となるものが存在しないことが保証されているので、トレイ19の引込み動作を問題なく行うことができる。
一方、トレイ引込みフラグが「リセット」であれば、トレイ19がそのままの位置で電源を遮断する(ステップS250)。ここで、トレイ引込みフラグが「リセット」である場合とは、メカニカル初期化処理が継続して実行されたものの(S100)、その処理途中でエラーが発生したなどの場合である。この場合は、キャリッジ31とEJフレーム125のうち少なくとも一方がトレイ19と干渉する虞のある位置(最上昇位置以外の位置)にある可能性があり、トレイ19の移動経路が確保されていることを保証できない。このような状況下で仮にトレイ19を引き込むと、キャリッジ31やEJフレーム125と接触する虞があり、例えばトレイ19が、記録ヘッド35やEJフレーム125と接触して、記録ヘッドを損傷させたり、ノズル形成面を擦ってノズル内のインクに他色のインクが混色するなどの問題や、トレイ19上にディスクDがあれば、ディスクDを損傷する虞があるので、トレイ19の引き込み動作は行わない。但し、メカニカル初期化実行中は、トレイ19は基本的に格納ポジションに配置されているので、大抵の場合、トレイ19が格納ポジションに配置された状態で、電源が遮断されることになる。
なお、本実施形態では、ステップS30が検出ステップに相当し、ステップS40及びS50がトレイ移動ステップに相当し、さらにステップS60が記憶ステップに相当する。また、ステップS210が第1判断ステップに相当し、ステップS230が第2判断ステップに相当し、さらにステップS250が電源遮断ステップに相当する。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)電源OFF処理時にトレイ引込みフラグが「セット」であればトレイ19を引き込むので、トレイ19を格納した状態で電源を遮断することができる。
(2)初期化完了フラグが「リセット」かつトレイ引込みフラグが「セット」であるときに、トレイ19の引込み動作を行うようにしたので、メカニカル初期化処理の途中でエラーが発生した場合のトレイ19の引込み動作を回避できる。よって、メカニカル初期化処理の途中にエラーが発生して、ユーザによる電源OFF操作が行われたときのように、キャリッジ31とEJフレーム125のうち少なくとも一方がトレイ19と干渉する虞のある高さ位置にあって、トレイ19の移動経路の確保が保証されていない状況下でのトレイ19の引込み動作を回避することができる。
(3)メカニカル初期化処理において、ディスクなしの場合は、トレイ19を格納ポジションに移動させて、メカニカル初期化処理を継続する構成とした。よって、キャリッジ31のX方向移動経路上及び昇降経路上、並びにEJフレーム125の昇降経路上に、トレイ19の一部が存在しない状況の下で、メカニカル初期化処理を実行できる。また、ディスクなしが検出されると、CRホームシーク処理以外の残りのメカニカル初期化を継続して行うので、ディスク検出動作に事前実施が必要なCRホームシーク処理が余分な処理とならず、メカニカル初期化処理を効率よく行うことができる。例えば、トレイ19上のディスク取り外しをユーザに促す処理と、メカニカル初期化処理とを別々のルーチンにすると、それぞれのルーチンでCRホームシーク処理が重複して行われる心配もあるが、本実施形態のルーチンであれば、処理の重複などの無駄を排除できる。
(4)こうしてプリンタ11の電源ON時にディスクDが載置されていたためトレイ19がセットポジションに移動され、ユーザがそのディスクDを取り外さないまま電源OFF操作をしたとしても、トレイ19がプリンタ11内に格納されてから電源が遮断される。よって、プリンタ11の電源が遮断されている間、セットポジションに配置されたトレイ19が、搬送ローラ対40にガイドアーム19L,19Rが挟持された状態のまま長期間に亘って放置される事態を回避できる。このため、搬送ローラ対40の従動ローラ40bにおいてガイドアーム19L,19Rを挟持する局所的な2箇所にトレイ19の荷重が集中し、従動ローラ40bの軸が湾曲状態に撓んだまま放置される不都合を回避できる。従って、トレイ19が格納されることで、トレイ19のうち比較的幅広なトレイ本体19aの部分で搬送ローラ対40がトレイ19を挟持するので、トレイ19及び搬送ローラ対40の双方にかかる負荷を比較的小さく抑えることができる。
前記実施形態は上記に限定されず、以下の態様に変更することもできる。
(変形例1)トレイ上のディスクの有無を検出する検出手段は、トレイ上に固定されたセンサでもよいし、例えばトレイが印刷待機ポジションに配置された状態でトレイ上のディスクの有無を検出可能な装置本体側の位置に設けられたセンサでもよい。これらの構成であれば、ディスク検出の際にキャリッジ31を移動させる必要がないので、トレイ検出前にホームシーク処理を行う必要がない。つまり、初期化処理の実行途中(CRホームシーク処理の後)にディスク検出するのではなく、初期化処理の実行前(CRホームシーク処理の前)にディスク検出を行う構成も採用できる。
(変形例2)電源遮断時におけるトレイ19の格納位置は、トレイ19の幅広な部分であるトレイ本体19aが搬送ローラ対40に挟持される状態であれば、トレイ19の前端部が排出部18から多少突出する位置でもよい。
(変形例3)トレイ19は折畳み式の一対のガイドアーム19L,19Rを有した拡張移動機構77を備える構成としたが、例えば特許文献1のような四角板状のトレイを採用しても構わない。
(変形例4)記憶手段に記憶する情報としてのトレイ引込みフラグ及び初期化完了フラグは、フラグのような1ビットの情報に限定されない。2ビット以上のデータでもよい。また、記憶手段はRAMに限定されず、レジスタでもよい。
(変形例5)前記実施形態ではトレイは記録媒体(硬質の第1記録媒体)としてのディスクDを載置するトレイであったが、記録媒体(軟質の第2記録媒体)としての用紙をセットするトレイであっても構わない。さらにトレイにセットされるべき記録媒体は、樹脂製フィルム、金属製フィルム、布、フィルム基板、樹脂基板などでもよい。
(変形例6)用紙等の第2記録媒体を搬送するための搬送手段を備えないレーベル印刷専用の記録装置に適用してもよい。
(変形例7)メカニカル初期化処理及び電源OFF処理を行う制御手段を、CPU171がプログラムを実行して実現されるソフトウェアにより構成としたが、ハードウェアにより構成してもよい。例えばASIC(Application Specific IC)等の集積回路などによりメカニカル初期化処理及び電源OFF処理を実行させることができる。さらにメカニカル初期化処理及び電源OFF処理を行う制御手段が、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現された構成でもよい。
(変形例8)記録装置はシリアルプリンタに限定されず、ラインプリンタあるいはページプリンタに適用してもよい。また、記録方式についても、インクジェット方式に限定されず、ドットインパクト式プリンタや感熱式プリンタ、レーザープリンタなども採用できる。
前記実施形態及び変形例から把握される技術的思想を以下に記載する。
(1)前記トレイは記録媒体として硬質の第1記録媒体(D)をセットするためのものであり、前記記録媒体として軟質の第2記録媒体(P)を搬送するための搬送手段と、前記トレイと前記搬送手段を駆動させる共通の動力源(39)と、前記第1記録媒体と前記第2記録媒体に対して記録を施す記録手段(31,35)とを備え、前記トレイの移動経路と、前記搬送手段による前記第2記録媒体の搬送経路とが、前記記録手段に至る手前から合流して共通経路を形成しており、前記トレイと前記第2記録媒体とを検出可能な位置に設けられた位置検出手段(70)をさらに備え、前記初期化処理には、前記動力源を駆動して前記搬送手段に排出動作を行わせるとともに当該排出動作によって前記搬送経路が空であることを前記位置検出手段の検出結果に基づき確認する排出リセット動作を含むことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の記録装置。
(2)前記記録手段と前記記録媒体とのギャップを調整すべく当該記録手段を移動させるギャップ調整手段(42)をさらに備え、前記初期化処理には、前記記録手段を前記トレイと干渉しないエンド位置まで退避させる前記ギャップ調整手段のリセット動作が含まれることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の記録装置。
(3)前記記録手段による記録が施された前記記録媒体を排出するための排出口の高さを調整する可動部材(125)を前記記録媒体の厚み方向に移動させる排出口調整手段(127)をさらに備え、前記初期化処理には、前記可動部材を前記トレイと干渉しないエンド位置まで退避させる前記排出口調整手段のリセット動作を含むことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の記録装置。
11…記録装置としてのプリンタ、13…プリンタ部、19…トレイ、19L,19R…ガイドアーム、23…電源スイッチ手段としての電源スイッチ、26…操作手段としてのトレイ開閉スイッチ、31…記録手段を構成するキャリッジ、35…記録手段を構成する記録ヘッド、34…記録駆動手段を構成するCRモータ、39…トレイ駆動手段を構成するとともに動力源としてのPFモータ、40…搬送ローラ対、40a…搬送駆動ローラ、41…排出ローラ対、42…ギャップ調整手段としてのAPG装置、44…キャッピング装置、50…動力伝達切換装置、52…給送装置、54…搬送手段を構成するピックアップローラ、55…搬送手段を構成するガイドローラ、56…搬送手段を構成する分離手段、57…搬送手段を構成する第1中間送りローラ、68…搬送手段を構成する第2中間送りローラ、70…位置検出手段としての位置検出器、71…トレイ位置状態検出手段としてのトレイ格納検出器、72…検出手段としての紙幅センサ、125…排出口調整手段を構成する可動部材としてのEJフレーム、127…排出口調整手段を構成する昇降機構、150…制御装置、160…制御手段としてのコンピュータ、162…記録駆動手段を構成する第1モータ駆動回路、163…トレイ駆動手段を構成する第2モータ駆動回路、171…制御手段及び初期化処理実行手段を構成するCPU、176…情報としてのトレイ引込みフラグ、177…初期化完了フラグ、D…記録媒体及び第1記録媒体としてのディスク、P…記録媒体及び第2記録媒体としての用紙。