JP5255225B2 - 潤滑性粒子を有するめっき材料、その製造方法およびそれを用いた電気・電子部品 - Google Patents
潤滑性粒子を有するめっき材料、その製造方法およびそれを用いた電気・電子部品 Download PDFInfo
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Description
このような材料としては、導電性基材の上に直接、あるいはCuまたはNiなどの下地めっきを施した上に、SnまたはSn合金のめっきを表面めっき層として施して製造したものが用いられている。この下地層は、基材成分(CuやZnなどの合金成分)が表面のSnまたはSn合金へ拡散することを抑制するために設けられるものである。
下地層がNiやNi合金からなる場合には、高温環境下にあっても表面めっき層のSnまたはSn合金への上記した拡散を遅延させる効果が大きい。そのため、長時間に亘って表面におけるSnやSn合金の特性が確保されることになる。
多数の端子を同時に嵌合するコネクタ(嵌合型コネクタ)では、オス端子とメス端子を嵌合して電気的接続をとっている。近年では、電子制御化の進展に伴う伝送情報の多量化に対応すべく、嵌合型コネクタの端子数を増加させる多極化が進んでいる。この場合、ピン数の増加した分だけコネクタ全体での挿入力が増加することとなり、コネクタの組み付け作業に支障をきたすため、コネクタ用端子に対しては、その挿入力を低減させることが強く要望されている。
挿入力を低減させる要望に応えるコネクタ用端子としては、例えば、SnまたはSn合金からなる表面めっき層の厚さを薄くしたものがあげられる。SnまたはSn合金からなる表面めっき層の厚さが薄い場合には、嵌合時に発生するめっき層の削れ量が減少するため、この端子を用いたコネクタの挿入力は低減される。
しかしながら、SnまたはSn合金からなる表面めっき層が薄い場合には、そのめっき層全体が酸化皮膜化するため、嵌合時に当該酸化皮膜が破れにくくなる。しかも、製造時や実使用時の高温環境において、表面めっき層のSn成分と基材もしくは下地層の成分とが反応して基材もしくは下地層の成分が表面に露出し、表面にはそれら成分の酸化皮膜が形成される。その結果、接触抵抗が上昇して相手材との接触信頼性を喪失してしまうといった欠点がある。
しかしながら、接触圧が低い場合には、実使用時において振動を受けた際に端子の接触部分で微摺動が発生しやすくなり、めっき層の削れによる新生面の露出と酸化とが繰り返される微摺動腐食(フレッティングコロージョン)が発生し、微摺動部にはSnの酸化皮膜が厚く形成される。その結果、相手材との接触信頼性を喪失してしまう。
この方法で形成されたSnめっき層の場合、嵌合・摺動性における削れ量は低減して挿抜性が良好になる。しかしながら、Snめっき層の厚みが薄いので、熱履歴を受けることによって表面のSnめっき層は基材との間の拡散で合金化して消滅してしまい、相手材との接触抵抗は増大してしまう。
この方法で形成されためっき皮膜の場合、基材とめっき皮膜との界面やめっき皮膜中にも潤滑性粒子が存在しており、めっき後の材料にプレス加工や成形加工を施す際に、めっき皮膜の密着性や曲げ加工性などが低下してしまうとともに、端子使用時に必要な導電性や耐熱剥離性も低下してしまう。
このように、表面にSnまたはSn合金からなるめっき層を形成した従来のめっき材料の場合、その挿抜性と耐熱性との両立が困難であることや、製造方法が限定されるという問題があった。
更に、本発明は、上記しためっき材料の製造方法、およびそのめっき材料を用いた電気・電子部品、例えば挿抜型や嵌合型の端子、コネクタの提供を目的とする。
すなわち本発明は、
(1)導電性基材の表面に、SnまたはSn合金からなる厚み0.5〜10μmの表面錫めっき層が形成され、該導電性基材と該表面錫めっき層の間に、Cu、Ni、CoもしくはFe、またはこれらの元素を含む合金からなる少なくとも1層の厚み0.1〜2μmの下地層を有し、当該表面錫めっき層の表層部に潤滑性粒子を有し、該潤滑性粒子が、パラフィン系もしくはオレフィン系の鉱物油または合成油、高級アルコールもしくは多価アルコールまたはこれらのエーテル類、高級脂肪酸もしくはそのエステル類、液状もしくは固形ワックスから選択される潤滑剤を内包する有機高分子の粒径3μm以下のカプセルであり、該カプセルが当該表面錫めっき層の(a)表層部の面積被覆率10〜15%で表面を被覆するか、または(b)当該表面錫めっき層中に共析量5〜15体積%で含有されることを特徴とする特徴とする錫めっき材料、
(2)前記表面錫めっき層の上部の表層部が、前記潤滑性粒子を分散したSnまたはSn合金からなる複合錫めっき層であることを特徴とする(1)項に記載の錫めっき材料、
(3)前記表面錫めっき層が、その表層に近いほど前記潤滑性粒子の分散濃度が高いSnまたはSn合金からなる複合めっき層であることを特徴とする(1)項に記載の錫めっき材料、
(4)前記表面錫めっき層の表層部に、前記潤滑性粒子が付着されたことを特徴とする(1)項に記載の錫めっき材料、
(5)前記表面錫めっき層の少なくとも表層部に有する前記潤滑性粒子が、前記潤滑性粒子を界面活性剤で分散して共析されてなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の錫めっき材料、
(6)前記潤滑剤が、揮発性の潤滑剤であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の錫めっき材料、
(7)前記表面錫めっき層の表層部に、前記潤滑性粒子に加えて、メルカプト類、ジスルフィド類、エステル基を有するフェノール化合物もしくは多価アルコール、およびホスファイト類から選択される耐酸化剤を有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の錫めっき材料、
(8)導電性基材上にSnまたはSn合金に潤滑性粒子を分散した複合錫めっき層を有し、該導電性基材と該複合錫めっき層の間に、少なくとも1層の下地層を有し、該複合錫めっき層を、電気めっきにより形成する錫めっき材料の製造方法であって、該下地層が、厚さが0.1〜2μmであって、かつCu、Ni、CoもしくはFe、またはこれらの元素を含む合金からなり、該複合錫めっき層の厚さが0.5〜10μmであって、該潤滑性粒子が、パラフィン系もしくはオレフィン系の鉱物油または合成油、高級アルコールもしくは多価アルコールまたはこれらのエーテル類、高級脂肪酸もしくはそのエステル類、液状もしくは固形ワックスから選択される潤滑剤を内包する有機高分子で粒径が3μm以下であるカプセルであり、該潤滑性微粒子を該表面錫めっき層の表層部に有し、かつ該カプセルを共析量5〜15体積%で該複合錫めっき層中に含有することを特徴とする錫めっき材料の製造方法、
(9)前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の錫めっき材料を用いて形成されたことを特徴とする電気・電子部品、および、
(10)前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の錫めっき材料を用いて形成されたことを特徴とする挿抜型もしくは嵌合型の端子またはコネクタ
を提供するものである。
このような特性を有しているため、例えば挿抜型や嵌合型の端子・コネクタの材料として好適なめっき材料である。
本発明のめっき材料は、導電性基材の表面に、SnまたはSn合金からなる表面錫めっき層(以下、単に表面めっきと称す)が形成され、その少なくとも表層部に潤滑性粒子を有するものである。
本発明の好ましい実施態様のめっき材料は、導電性基材の上に形成された表面めっき層の上部を、潤滑性粒子を分散した複合めっき層としたものまたは表面めっき層の表層に潤滑性粒子の被覆層が形成されている。ここで、表層部とは、その範囲が特に限定されるものではないが、外表面から表面めっき層2全体の50%未満の厚さの部分であることが好ましく、外表面から表面めっき層2全体の30%未満の厚さの部分であることがさらに好ましい。
なお、本発明では、導電性基材と表面めっき層との間には、下地層が少なくとも1層形成されている。なお、図1〜3は、いずれも、この下地層は、明示されていないが、導電性基材と上記めっき層の間に下地層が存在する。
図1は、導電性基材1の表面に形成された表面めっき層2の上部を、潤滑性粒子4を分散した複合めっき層3としためっき材料の断面を示す模式図である。
また、図2は導電性基材1の表面に、表面めっき層の表層近くで潤滑性粒子4の分散濃度が高い複合めっき層3としためっき材料の断面を示す模式図である。
さらに、図3は導電性基材1の表面に、表面めっき層2が形成され、その表層に、潤滑性粒子4を付着させた被覆層が設けられためっき材料の断面を示す模式図である。
また、導電性基材の形状としては、条材や線材などのいずれの形状でもよい。
これらの材料のうち、CuまたはCu合金が好適である。なお、導電性基材1がCu系材料でない場合は、その表面にCuまたはCu合金のめっきを施してから実使用に供すると、めっき膜の密着性や耐食性が更に向上する。
なお、表面めっき層または複合めっき層の厚さがあまり薄すぎては高温環境下における接触信頼性が低下し、あまり厚すぎてはコストの上昇をもたらす。このため、表面めっき層(複合めっき層を含まない)および複合めっき層の厚さは、本発明においては、それぞれ0.5〜10μmであり、好ましくは1〜5μmである。
このようなめっき材料は、例えば導電性基材1に表面めっき層2を形成した後に、潤滑性粒子4を分散したSnまたはSn合金めっき液中においてめっきを施すことにより、複合めっき層3を形成して得られる。
このようなめっき材料は、例えば潤滑性粒子4を分散したSnまたはSn合金めっき液中において導電性基材1の表面にめっき層を施す際に、単一のめっき槽中で撹拌速度や電流密度などのめっき条件を連続的に変化させることや、潤滑性粒子4の濃度が異なる複数のめっき槽を用いて連続的にめっきすることにより、潤滑性粒子4の分散濃度が異なる複合めっき層を形成して得られる。
このようなめっき材料は、例えば導電性基材1に表面めっき層2を施し、必要に応じて熱処理を施した後に、潤滑性粒子を分散させた溶液中に浸漬することや、潤滑性粒子を分散させた溶液を表層に塗布するなどの方法により、被覆層を形成して得られる。
潤滑性粒子4は表面めっき層2の表面を、面積被覆率1〜30%で被覆することが好ましく、10〜15%で被覆することがさらに好ましく、本発明では10〜15%で被覆する。
このため、表面めっき層の表層全面に潤滑剤を塗布する場合と比べて、潤滑剤成分の経時的な品質劣化が抑制されるとともに、潤滑剤の供給量を制御して必要量の潤滑剤を摺動時にのみ放出することができる。
本発明におけるカプセルの外壁を構成する材料は、有機高分子であれば特に限定されるものではないが、めっき液中で安定して使用できるものとして、耐酸、耐アルカリ性に優れ、めっき液温度(例えば、20〜90℃)以上の融点を有する有機高分子を用いることが望ましい。
このような材料としては、例えば、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリスチレン系などの有機高分子が好適である。
このような潤滑剤としては、例えば、パラフィン系やオレフィン系の鉱物油や合成油、高級アルコールや多価アルコールやこれらのエーテル類、高級脂肪酸やそのエステル類、液状または固形ワックスなどから選ぶことができ、本発明ではこれらから選択される。
また、本発明におけるカプセルに内包される潤滑剤として、揮発性の潤滑剤を用いると、摺動後に潤滑剤がめっき層の表層に残留することによって接触抵抗が上昇することを防止することができ、特に好適である。
このような揮発性の潤滑剤としては、パラフィン系揮発性油などを挙げることができる。
めっき浴中に分散させるカプセルの粒径が大きくなると、めっき皮膜中に安定して分散させることが困難となり、かつ、めっき皮膜中に共析した場合に導電性などのめっき皮膜の特性が低下するため、カプセルの粒径は、本発明では3μm以下である。
ただし、複合めっき層の厚さが3μmよりも薄い場合には、めっき皮膜中における分散状態やめっき皮膜特性への影響を考慮し、カプセル粒径を1μm以下とすることが特に望ましい。
また、上記のカプセルの粒径は、球状以外の形状のもの、例えば、楕円体状のものでは長径を意味する。
このうち、めっき皮膜への共析が容易となる微細なカプセルが得やすい、界面重合法や液中乾燥法が好適である。
本発明においては、複合めっき層中に共析されるカプセルの共析量は、めっき液中のカプセル濃度の他に、電流密度、撹拌速度、界面活性剤の濃度により調節することができる。また、表面めっき層へ被覆されるカプセルの被覆面積率は、例えば塗布する溶液中のカプセル濃度により調節することができる。
この耐酸化剤の粒子は、潤滑性粒子と別の粒子としてもよく、潤滑性と耐酸化性とを兼ね備えた一つの粒子としてもよい。また、潤滑性粒子と同様に、耐酸化剤の粒子も耐酸化剤を内包するカプセルとすることが望ましい。
このような耐酸化剤としては、例えば、メルカプタン類やジスルフィド類のような硫黄化合物、エステル基を有するフェノール化合物や多価アルコール、ホスファイト類のようなリン化合物が挙げられる。
このような耐酸化剤は、それぞれ単独で用いてもよいが、2種類以上のものを併用するとさらに好ましい。特に、フェノール化合物とリン化合物、またはフェノール化合物と硫黄化合物を組み合わせて用いることにより好適な効果が得られる。
高融点金属のうち、価格の点やめっき処理が行いやすい点などから、Cu、Ni、Co、Feが好適である。また、これらの元素を含む合金めっき層やめっき後に熱処理して合金化した化合物層も同様に有効であり、例えば、Cu−Sn、Ni−Sn、Ni−P、Co−P、Ni−Co、Ni−Co−P、Ni−Cu、Ni−Feなどを挙げることができる。
なお、本発明において、下地層は、上記のCu、Ni、CoもしくはFe、または、これらの元素を含む合金からなる。
このようなめっき材料では潤滑性粒子の摺動性に加えて、表面めっき層の下に硬い合金層が存在するために、さらなる摺動性の向上が得られる。
下地層のうちCu−Sn層については、下地層としてCu層を形成してから表面めっき層としてSn層を形成し、その後に非酸化性雰囲気中で走間焼鈍することやリフロー処理する等の加熱処理を用いて熱拡散により形成することができる。このようなCu−Sn層上への複合めっき層の形成はめっきライン中にインラインで行ってもよく、また加熱処理後にオフラインにて行っても構わない。
Cu−Sn層を設ける方法として、下地層としてCu層を形成してからSnまたはSn合金を形成し、その後に熱処理してCu層をCu−Sn層に転化させる方法を用いてもよい。
上記した基材成分の表層側への拡散防止効果を十分に発揮させるためには、下地層の厚さは特に0.25μm以上が望ましい。しかし、厚い場合には成型加工時に加工割れを起こす場合もあるため、加工性を考慮して厚みを特に1μm以下とすることが望ましい。
各実施例で作製した各めっき材料について、端子特性として、摩擦係数、接触抵抗の評価を実施した。また、めっき特性として密着性、曲げ加工性、耐熱剥離性の評価を実施した。評価方法は次の通りである。
バウデン型摩擦試験機を用いて、導電性基材の圧延方向と直角に摺動させた際の動摩擦係数を評価した。測定条件は、荷重2.94N、摺動距離10mm、摺動速度100mm/分、摺動回数1回とした。相手材は板厚0.25mmの黄銅条にリフローSnめっき(1μm)した材料とし、0.5mmRの張り出し加工をしたものを用いた。
(b)接触抵抗:
定電流通電時の電圧を測定することにより評価した。先端が5mmRのAgプローブを用いて、10mA通電時の電圧を測定し、n=10の平均値より接触抵抗を算出した。なお、測定は初期および160℃×120時間加熱後に実施した。
一部のめっき材料では、微摺動時における接触抵抗の測定として、摺動距離20μm、荷重2Nで1000回摺動する間における接触抵抗の最大値を評価した。
めっき表面からクロスカットを施し、テープピール試験により評価した。クロスカット後のめっき表面に、粘着テープ(寺岡製作所631S)を貼り付けて引き剥がした際に、めっき皮膜の剥離が見られないものを○、剥離が見られたものを×として評価した。
(d)曲げ加工性:
導電性基材の圧延方向と直角に90°曲げ(0.2R)を施し、曲げ部におけるめっき皮膜の割れにより評価した。曲げ部について500倍で走査型電子顕微鏡(SEM)観察し、めっき皮膜に割れが見られないものを「○」、割れが見られたものを「×」として評価した。
(e)耐熱剥離性:
160℃において120時間の熱処理を施した後に、導電性基材の圧延方向と直角に180°曲げを施し、テープピール試験により評価した。曲げ戻した後のめっき表面に、粘着テープ(寺岡製作所631S)を貼り付けて引き剥がした際に、めっき皮膜の剥離が見られないものを「○」、剥離が見られたものを「×」として評価した。
本発明例(No.13〜16)、参考例(No.1〜12、17〜19)、比較例No.1〜7
表1に示す化学成分組成の銅または銅合金を鋳造、圧延、焼鈍を行い厚さ0.2mmの純銅(C1020:基材A)、黄銅(C2600:基材B)、リン青銅(C5210:基材C)、コルソン系合金(Cu−Ni−Si:基材D)を作製した。
これらの基材にめっき前処理として脱脂処理および酸洗処理を順次施し、その後必要に応じて下地層の形成を行い、表面めっき層および複合めっき層の形成を順次施して、図1に示すようなめっき材料を作製した。各層を形成する際のめっき種およびめっき条件については表2に、作製しためっき材料については表3−1、表3−2に示した。
なお、Cu−Sn下地層については、下地層としてCu層を形成した上に表面めっき層としてSn層を形成し、700℃で4秒間のリフロー処理により形成した。この際、Cu層およびSn層のめっき厚さは、リフロー処理後にCu−Sn層およびSn層の厚さが所定厚さとなるように設定した。
なお、本実施例では、潤滑性粒子を含有しない表面めっき層を単に「表面めっき層」と表記し、潤滑性粒子が分散された表面めっき層である「複合めっき層」とは区別して表記する。
複合めっき層の形成においては、表2のSnめっき浴に潤滑性粒子を表3−1、3−2に示す共析量に対応させた量を添加しためっき液を用い、同様のめっき条件にてめっきを施した。なお、めっき液中において潤滑性粒子を安定して分散させるために、非イオン性の界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)を適宜用いた。
潤滑性粒子としては、界面重合法によりポリアミド系の外壁を形成し、内部にパラフィン系潤滑剤を内包するカプセルを用いた。一部のカプセルでは、潤滑剤に加えて耐酸化剤(2−メルカプトベンズイミダゾール)を合わせて内包するものとした。
これに対して、表層部に潤滑性粒子を有しない比較例No.1では、摩擦係数が高く、接触信頼性に劣るものであった。また、表面めっき層の厚さが薄すぎる比較例No.2では熱処理後の接触抵抗が劣るものとなった。マイクロカプセルの粒径が大きすぎる比較例3では接触抵抗値、密着性、耐熱剥離性に劣るものとなった。マイクロカプセルの共析量が少なすぎる比較例No.4では摩擦係数が高いものとなった。マイクロカプセルの共析量が多すぎる比較例No.5では接触抵抗値、密着性、曲げ加工性、耐熱剥離性が劣るものとなった。下地層の厚さが薄すぎる比較例No.6では熱処理後の接触抵抗値が下地層を形成しない場合と同程度であった。下地層の厚さが厚すぎる比較例No.7では曲げ加工性に劣るものであった。
なお、比較例No.2は、表面めっき層の厚みが0.5〜10μmに係る発明の、比較例No.3は、潤滑剤を内包するカプセルの粒径が0.3μm以下に係る発明の、比較例No.4および5は、潤滑剤を内包するカプセルの複合めっき層中の共析量に係る発明の、比較例No.6および7は、下地層の厚さが0.1〜2μmに係る発明の、それぞれ比較例である。
本発明例(No.33〜36)、参考例(No.21〜32、37〜39)、比較例No.11〜18
表1に示す化学成分組成の銅または銅合金を鋳造、圧延、焼鈍を行い厚さ0.2mmの純銅(C1020:基材A)、黄銅(C2600:基材B)、リン青銅(C5210:基材C)、コルソン系合金(Cu−Ni−Si:基材D)を作製した。これらの基材にめっき前処理として脱脂処理および酸洗処理を順次施し、その後必要に応じて下地層の形成を行い、表1に示したSnまたはSn合金のめっき浴に潤滑性粒子を添加しためっき浴中において電流密度を連続的に変化させてめっきを施し、図2に示すような複合めっき層を形成しためっき材料を作製した。各層を形成する際のめっき種およびめっき条件については表2に、作製しためっき材料については表5−1、表5−2に示した。
なお、めっき前処理や複合めっきの方法、カプセルの作製方法については実施例1と同様にした。
作製した各めっき材料について、実施例1と同様端子特性として、摩擦係数、接触抵抗の評価を、また、めっき特性として密着性、曲げ加工性、耐熱剥離性の評価を実施した。一部のめっき材料においては、微摺動試験後にも接触抵抗の測定を行い、耐フレッティング性の評価を実施した。これらの評価結果を表6に示す。
これに対して、表層部に潤滑性粒子を有しない比較例No.11では、摩擦係数が高く、接触信頼性におとるものであった。また、複合めっき層の厚さが薄すぎる比較例No.12では熱処理後の接触抵抗が高いものとなった。マイクロカプセルの粒径が大きすぎる比較例No.13では接触抵抗値、密着性、耐熱剥離性に劣るものとなった。マイクロカプセルの共析量が少なすぎる比較例No.14では摩擦係数が高いものとなった。マイクロカプセルの共析量が多すぎる比較例No.15では、接触抵抗値、密着性、曲げ加工性、耐熱剥性が劣るものと成った。マイクロカプセルの共析量が表層および最下層で変わらない比較例16では、密着性、曲げ加工性、耐熱剥性が劣るものであった。下地層の厚さが薄すぎた比較例No.17では熱処理後の接触抵抗値が下地層を形成しない場合と同程度であった。下地層の厚さが厚すぎた比較例No.18では曲げ加工性に劣るものであった。
なお、比較例No.12は、表面めっき層の厚さが0.5〜10μmに係る発明の、比較例No.13は、潤滑剤を内包するカプセルの粒径が3μm以下に係る発明の、比較例No.14および15は、潤滑剤を内包するカプセルの複合めっき層中の共析量に係る発明の、比較例No.16は、表面めっき層の表層に近いほど潤滑性粒子の分散濃度が高いSnまたはSn合金からなる複合めっき層にも係るに発明の、比較例No.17および18は、下地層の厚さが0.1〜2μmに係る発明の、それぞれ比較例である。
本発明例(No.52〜56)、参考例(No.41〜51、57〜59)、比較例No.21〜26
表1に示す化学成分組成の銅または銅合金を鋳造、圧延、焼鈍を行い厚さ0.2mmの純銅(C1020:基材A)、黄銅(C2600:基材B)、リン青銅(C5210:基材C)、コルソン系合金(Cu−Ni−Si:基材D)を作製した。これらの導電性基材にめっき前処理として脱脂処理および酸洗処理を順次施し、その後必要に応じて下地層の形成を行い、表面めっき層を形成してから、必要に応じて炉内温度700℃で4秒間のリフロー処理を施した後に、さらに潤滑性粒子を分散させた溶液中への浸漬処理を施し、図3に示すようなめっき材料を作製した。
各層を形成する際のめっき種およびめっき条件については表2に、作製しためっき材料については表7に示した。なお、めっき前処理の方法やカプセルの作製方法については実施例1と同様にした。
作製した各めっき材料について、めっき特性として密着性、曲げ加工性、耐熱剥離性の評価を実施、また、端子特性として、摩擦係数、接触抵抗の評価を実施した。一部のめっき材料においては、微摺動試験後にも接触抵抗の測定を行い、耐フレッティング性の評価を実施した。これらの評価結果を表8に示す。
これに対して、表層に潤滑性粒子が被覆されていない比較例No.21では、摩擦係数が高く、接触信頼性に劣るものであった。マイクロカプセルの粒径が大きすぎる比較例No.22では加熱後の接触抵抗が高いものとなった。マイクロカプセルの被覆面積率が小さすぎる比較例No.23では摩擦係数が高いものとなった。マイクロカプセルの被覆面積率が大きすぎる比較例No.24では、接触信頼性に劣るものであった。下地層の厚さが薄すぎた比較例No.25では熱処理後の接触抵抗値が下地層を形成しない場合と同程度であった。下地層の厚さが厚すぎた比較例No.26では曲げ加工性に劣るものであった。
なお、比較例No.22は、潤滑剤を内包するカプセルの粒径が3μm以下に係る発明の、比較例No.23および24は、表面めっき層の表層に潤滑性粒子の面積被覆率に係る発明の、比較例No.25および26は、下地層の厚さが0.1〜2μmに係る発明の、それぞれ比較例である。
2 表面めっき層
3 複合めっき層
4 潤滑性粒子
Claims (10)
- 導電性基材の表面に、SnまたはSn合金からなる厚み0.5〜10μmの表面錫めっき層が形成され、該導電性基材と該表面錫めっき層の間に、Cu、Ni、CoもしくはFe、またはこれらの元素を含む合金からなる少なくとも1層の厚み0.1〜2μmの下地層を有し、当該表面錫めっき層の表層部に潤滑性粒子を有し、該潤滑性粒子が、パラフィン系もしくはオレフィン系の鉱物油または合成油、高級アルコールもしくは多価アルコールまたはこれらのエーテル類、高級脂肪酸もしくはそのエステル類、液状もしくは固形ワックスから選択される潤滑剤を内包する有機高分子の粒径3μm以下のカプセルであり、該カプセルが当該表面錫めっき層の(a)表層部の面積被覆率10〜15%で表面を被覆するか、または(b)当該表面錫めっき層中に共析量5〜15体積%で含有されることを特徴とする錫めっき材料。
- 前記表面錫めっき層の上部の表層部が、前記潤滑性粒子を分散したSnまたはSn合金からなる複合めっき層であることを特徴とする請求項1に記載の錫めっき材料。
- 前記表面錫めっき層が、その表層に近いほど前記潤滑性粒子の分散濃度が高いSnまたはSn合金からなる複合めっき層であることを特徴とする請求項1に記載の錫めっき材料。
- 前記表面錫めっき層の表層部に、前記潤滑性粒子が付着されたことを特徴とする請求項1に記載の錫めっき材料。
- 前記表面錫めっき層の少なくとも表層部に有する前記潤滑性粒子が、前記潤滑性粒子を界面活性剤で分散して共析されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の錫めっき材料。
- 前記潤滑剤が、揮発性の潤滑剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の錫めっき材料。
- 前記表面錫めっき層の表層部に、前記潤滑性粒子に加えて、メルカプト類、ジスルフィド類、エステル基を有するフェノール化合物もしくは多価アルコール、およびホスファイト類から選択される耐酸化剤を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の錫めっき材料。
- 導電性基材上にSnまたはSn合金に潤滑性粒子を分散した複合錫めっき層を有し、該導電性基材と該複合錫めっき層の間に、少なくとも1層の下地層を有し、該複合錫めっき層を、電気めっきにより形成する錫めっき材料の製造方法であって、該下地層が、厚さが0.1〜2μmであって、かつCu、Ni、CoもしくはFe、またはこれらの元素を含む合金からなり、該複合錫めっき層の厚さが0.5〜10μmであって、該潤滑性粒子が、パラフィン系もしくはオレフィン系の鉱物油または合成油、高級アルコールもしくは多価アルコールまたはこれらのエーテル類、高級脂肪酸もしくはそのエステル類、液状もしくは固形ワックスから選択される潤滑剤を内包する有機高分子で粒径が3μm以下であるカプセルであり、該潤滑性微粒子を該表面錫めっき層の表層部に有し、かつ該カプセルを共析量5〜15体積%で該複合錫めっき層中に含有することを特徴とする錫めっき材料の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の錫めっき材料を用いて形成されたことを特徴とする電気・電子部品。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の錫めっき材料を用いて形成されたことを特徴とする挿抜型もしくは嵌合型の端子またはコネクタ。
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