JP2007002978A - 転がり軸受 - Google Patents

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Koichi Tsunoda
耕一 角田
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Abstract

【課題】 嵌合面にかじりが生じ難く、且つ、優れた取り扱い性を有する転がり軸受を提供する。
【解決手段】 内輪2の内径面2b及び外輪3の外径面3bのうち少なくとも一つに、潤滑剤が内包されたマイクロカプセルからなる被膜を形成する。マイクロカプセルからなる被膜は、内輪2の内径面2b及び外輪3の外径面3bのうち少なくとも一つの嵌合面に、複数個のマイクロカプセルを付着させることで形成されている。このマイクロカプセルは、その壁材の有する吸着特性を利用して嵌合面に付着させてもよい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、転がり軸受に関する。
転がり軸受は、内輪や外輪が、挿入又は圧入により軸やハウジングに組み込まれた状態で使用される。このため、転がり軸受を軸やハウジングに組み込む際には、軸やハウジングとの嵌合面となる内輪の内径面や外輪の外径面に、かじりが生じる場合がある。
このようなかじりを防止するために、特許文献1には、内輪の内径面及び外輪の外径面に、潤滑油からなる潤滑剤を塗布する技術が記載されている。
特許第2011221号公報
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術では、嵌合面に潤滑剤を塗布した後の内輪や外輪を取り扱う際にベタツキや汚れが生じるため、取り扱い性の点でさらなる改善の余地があった。
そこで、本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、軸やハウジングとの嵌合面にかじりが生じ難く、且つ、優れた取り扱い性を有する転がり軸受を提供することを課題としている。
上記課題を解決するために、本発明は、内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配設される複数の転動体と、を備えた転がり軸受において、前記内輪の内径面及び前記外輪の外径面のうち少なくとも一つに、潤滑剤が内包されたマイクロカプセルからなる被膜を形成したことを特徴とする転がり軸受を提供する。
以下、本発明で用いるマイクロカプセルからなる被膜について、詳細に説明する。
マイクロカプセルからなる被膜は、内輪の内径面及び外輪の外径面のうち少なくとも一つの嵌合面に、複数個のマイクロカプセルを付着させることで形成されている。このマイクロカプセルは、その壁材の有する吸着特性を利用して嵌合面に付着させてもよいし、接着材を利用して嵌合面に付着させてもよい。
また、本発明で用いるマイクロカプセルからなる被膜は、膜厚が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。ここで、マイクロカプセルからなる被膜の膜厚が0.1μm未満であると、優れた耐かじり性が得られ難くなる。一方、マイクロカプセルからなる被膜の膜厚が100μmよりも大きいと、嵌合面に対する被膜の密着性が不十分となる場合がある。このマイクロカプセルからなる被膜の厚さは、締り嵌めの場合には約0.1μm以上約1μm以下とし、隙間嵌めの場合には径方向隙間の約10%以上約150%以下の厚さとするのが好ましい。
さらに、本発明においては、マイクロカプセルからなる被膜を単独で形成してもよいし、このマイクロカプセルからなる被膜とともに、例えば二硫化モリブデン、PTFE等からなる乾式被膜を形成してもよい。
以下、本発明で用いるマイクロカプセルについて説明する。
本発明で用いるマイクロカプセルは、粒径が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。ここで、マイクロカプセルの直径が0.1μm未満であると、マイクロカプセルに内包される潤滑剤の量が不十分となるため、優れた耐かじり性が得られ難くなる。一方、マイクロカプセルの直径が100μmよりも大きいと、嵌合面への密着性が不十分となる場合がある。
また、本発明で用いるマイクロカプセルは、一種であってもよいし、二種以上のマイクロカプセル(壁材や潤滑剤の異なるマイクロカプセル)を併用してもよい。
さらに、本発明で用いるマイクロカプセルは、壁材と、その内部に内包された潤滑剤と、からなる。
マイクロカプセルの壁材を構成する材料としては、特に限定されないが、嵌合面に対する吸着性を有する樹脂組成物を用いることが好ましい。具体的には、メラミン系樹脂組成物、ポリウレタン系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリアミド系樹脂組成物、ポリウレア系樹脂組成物、フェノール系樹脂組成物、及びポリビニルアルコール系樹脂組成物等が挙げられる。
マイクロカプセルに内包される潤滑剤の種類としては、特に限定されないが、具体的には、基油を主成分とする潤滑油、各種グリース、各種ワックス、及び各種固体潤滑剤粉末等が挙げられる。
潤滑油を構成する基油の種類としては、グリースや潤滑油の基油として一般的に使用される基油であれば、問題なく使用することができるが、40℃における動粘度が1mm2 /s以上であることが好ましく、10mm2 /s以上であることがさらに好ましい。ここで、潤滑油を構成する基油の40℃における動粘度が1mm2 /s未満であると、蒸発等が多くなるため、潤滑油としての効果が得られ難くなる。一方、基油の40℃における動粘度は、基油の剪断抵抗性が大きくなるため、400mm2 /s以下とすることが好ましく、100mm2 /s以下とすることがさらに好ましい。
基油の具体例としては、鉱油、合成油、及び植物油等が挙げられる。これらの基油は単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
鉱油としては、減圧蒸留、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、水素化精製等の方法を適宜組み合わせて、粘度指数が100以上となるように精製した鉱油が好ましく、粘度指数が120以上となるように精製した鉱油(所謂、高精製度鉱油)を用いることがさらに好ましい。具体的には、パラフィン系鉱油等が挙げられる。
合成油としては、合成炭化水素油、エステル油、エーテル油、シリコーン油、フッ素油等が挙げられる。
このうち、合成炭化水素油としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−デセンオリゴマー、1−デセンとエチレンとのコオリゴマー等のポリα−オレフィン又はその水素化物等が挙げられる。また、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、ポリアルキルベンゼン等のアルキルベンゼンや、モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン等も挙げられる。
また、エステル油としては、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチルアセチルリシノレート等のジエステル油や、トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル油や、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−20−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル油や、一塩基酸及び二塩基酸の混合脂肪酸と多価アルコールとのオリゴエステルであるコンプレックスエステル油等が挙げられる。
さらに、エーテル油としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル等のポリグリコールや、モノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル油等が挙げられる。
また、マイクロカプセルに内包される潤滑剤には、一般的に潤滑剤に使用される各種添加剤を添加してもよい。特に、極圧剤、酸化防止剤、防塵剤、及び金属腐食防止剤等を添加することが好ましい。また、潤滑剤には、必要に応じて、泡立ち防止剤、着色剤、固体潤滑剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤等を添加してもよい。これらの添加剤は、単独で用いてもよいし、二種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
このようなマイクロカプセルを製造する方法としては、特に限定されないが、内包する潤滑剤の性質やマイクロカプセルの壁材の性質等を考慮して選択される。具体的には、界面重合法、insitu重合法、相分離法、液中乾燥法、オリフィス法、スプレードライ法、気中懸濁被覆法、及びハイブリダンザー法等があげられる。
また、均一な粒径のマイクロカプセルを製造するためには、マイクロカプセルの製造条件を適宜調整することが好ましいが、粒度分布を有するマイクロカプセルから、遠心分離法やフィルター法によって均一な粒径のマイクロカプセルを分離してもよい。
本発明の転がり軸受によれば、内輪の内径面及び外輪の外径面のうち少なくとも一つに、マイクロカプセルからなる被膜を形成したことによって、転がり軸受の組み込み時に優れた耐かじり特性が得られるとともに、優れた取り扱い性が得られる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る転がり軸受の一例として深溝玉軸受を示す断面図である。
この深溝玉軸受(転がり軸受)1は、図1に示すように、外周面に軌道面2aを有する内輪2と、内周面に軌道面3aを有する外輪3と、両軌道面2a,3a間で転動自在に配設された複数の玉(転動体)4と、玉4を転動可能に保持する保持器5と、から構成されている。そして、内輪2及び外輪3との間に形成され玉4が配設された空隙部6内には、潤滑剤組成物であるグリースが供給されている。
また、内輪2の内径面2bと、外輪3の外径面3bには、潤滑剤が内包されたマイクロカプセルからなる被膜(図示せず)が形成されている。
本実施形態の深溝玉軸受1によれば、内輪2の内径面2aを図示しない軸に嵌め込んだり、外輪3の外径面3aを図示しないハウジングに嵌め込んだりする場合に、内輪2の内径面2aや外輪3の外径面3aに形成されたマイクロカプセルからなる被膜が負荷を受けて、マイクロカプセルが物理的に破壊される。その結果、マイクロカプセルに内包された潤滑剤が放出されて、その嵌合面(内輪2の内径面2bや、外輪3の外径面3b)に供給されるため、深溝玉軸受1を軸やハウジングに組み込む際に、内輪2や外輪3の嵌合面2b,3bにかじりが生じ難くなる。
また、内輪2や外輪3を軸やハウジングに組み込む前には、その嵌合面2b,3bに、潤滑剤がマイクロカプセル内に内包された状態で存在するため、汚れやベタツキが生じ難く、優れた取り扱い性が得られる。
なお、本実施形態では、本発明の転がり軸受の一例としてラジアル軸受である深溝玉軸受1に適用した場合について説明したが、これに限らず、本発明は、例えば、アンギュラ玉軸受、自動調心玉軸受、円筒ころ軸受、円錐ころ軸受、針状ころ軸受、自動調心ころ軸受等その他のラジアル軸受や、各種スラスト軸受にも適用可能である。
また、本実施形態では、軸との嵌合面となる内輪2の内径面2aと、ハウジングとの嵌合面となる外輪3の外径面3aとの両方に、潤滑剤が内包されたマイクロカプセルからなる被膜を形成したが、内輪2及び外輪3のうち少なくとも一つに、本発明の被膜を形成しても構わない。但し、本発明の被膜は、内輪2及び外輪3のうち、軸やハウジングに嵌め込まれる側の軌道輪に形成する必要があるため、内輪2を軸に嵌め込み、且つ、外輪3をハウジングに嵌め込む場合には、本実施形態のように、内輪2の内径面2b及び外輪3の外径面3bの両方に本発明の被膜を形成することが好ましい。
次に、本発明の効果を検証するために、以下に示すようにして耐かじり特性の評価を行った。
まず、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼二種)製の平板(50mm×30mm×5mm)を用意した。そして、表1に示す各種被膜を形成した平板No.1〜No.3と、被膜を形成しない平板No.4を作製した。
なお、表1に示す被膜「エーテル油(15mm2 /s)内包カプセル被膜」は、以下に示す手順で形成した。まず、壁材としてメラミンをpH8の条件下でメチノール化したものに、内包する潤滑剤としてエーテル油(40℃における動粘度:15mm2 /s)と乳化剤とをpH調整剤でpH5になるように調整したものを加えた。次に、これらをホモジナイザーで攪拌しながら加熱して、反応させた。次に、得られた反応物をろ過した後、水洗及び乾燥させることで、潤滑剤が内包されたマイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルの平均粒径は、1μmであった。次に、得られたマイクロカプセルを、その壁材の吸着性を利用して平板上に付着させることで、厚さが約5μmのマイクロカプセルからなる被膜を形成した。
また、表1に示す被膜「エーテル油(100mm2 /s)内包カプセル被膜」は、内包する潤滑剤のみをエーテル油(40℃における動粘度:100mm2 /s)に変更して、上述した「エーテル油(15mm2 /s)内包カプセル被膜」と同様の手順で、平均粒径1μmのマイクロカプセルを形成した。そして、得られたマイクロカプセルを、その壁材の吸着性を利用して平板上に付着させることで、厚さが約5μmのマイクロカプセルからなる被膜を形成した。
さらに、表1に示す被膜「PTFE乾性被膜」は、以下に示す手順で形成した。まず、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)に結合材としてロジンを加えた。次に、これらを室温で乾燥させることで、平板上に厚さが約5μmのPTFE乾性被膜を形成した。
続いて、被膜が形成された平板No.1〜No.3と、被膜が形成されていない平板No.4とを、図2に示す往復動摩擦摩耗試験機に組み込んで、これら平板の耐かじり特性を以下に示す条件で評価した。
往復動摩擦摩耗試験機は、図2に示すように、試験台10の上に試験体である平板20が載置され、この平板20の上にJIS G 5等級の玉軸受用鋼球(株式会社天辻鋼球製作所製)30が配置されるように構成されている。また、玉軸受用鋼球30には、垂直荷重が負荷されるように構成されている。さらに、垂直荷重が負荷されて、平板20に押し付けられた状態の玉軸受用鋼球30を、カム40により平板20上で所定時間水平往復運動させるように構成されている。そして、玉軸受用鋼球30を水平往復運動させた後の平板20に形成された摩耗深さを、ロードセル50により測定することにより、耐かじり特性を評価するように構成されている。なお、図2中の符号60はヒータを示し、符号70は熱電対を示す。この試験結果は、比較例であるNo.3の初期摩擦係数を1とした時の相対値として、表1に併せて示した。
〔耐かじり特性試験条件〕
垂直荷重:70N
往復運動の振幅:8mm
往復運動の周波数:10Hz
雰囲気温度:30℃
試験時間:30秒
Figure 2007002978
表1に示すように、エーテル油内包カプセル被膜を形成したNo.1及びNo.2の平板では、PTFE乾性被膜を形成したNo.3の平板や、被膜を形成していないNo.4の平板と比べて、摩擦係数が小さく、且つ、摩耗量が少なく、優れた耐かじり特性が得られていることが分かる。
以上の結果より、潤滑剤を内包させたマイクロカプセルからなる被膜を形成することにより、優れた耐かじり特性が得られることを確認できた。
本発明に係る転がり軸受の一例として深溝玉軸受を示す断面図である。 実施例で使用した往復動摩擦摩耗試験機の構成図である。
符号の説明
1 深溝玉軸受(転がり軸受)
2 内輪(第一部材)
2a 軌道面
2b 内径面(嵌合面)
3 外輪(第二部材)
3a 軌道面
3b 外径面(嵌合面)
4 玉(転動体)
5 保持器
6 空隙

Claims (1)

  1. 内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配設される複数の転動体と、を備えた転がり軸受において、
    前記内輪の内径面及び前記外輪の外径面のうち少なくとも一つに、潤滑剤が内包されたマイクロカプセルからなる被膜を形成したことを特徴とする転がり軸受。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008248294A (ja) * 2007-03-29 2008-10-16 Furukawa Electric Co Ltd:The 潤滑性粒子を有するめっき材料、その製造方法およびそれを用いた電気・電子部品

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