JP2006124426A - グリース組成物,転がり軸受,及び車輪支持用転がり軸受装置 - Google Patents

グリース組成物,転がり軸受,及び車輪支持用転がり軸受装置 Download PDF

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Abstract

【課題】水が混入するような環境下で使用されても優れた耐剥離性を発現するとともに、優れた耐熱性を有するグリース組成物を提供する。また、水が混入するような環境下や高温環境下で使用されても長寿命な転がり軸受及び車輪支持用転がり軸受装置を提供する。【解決手段】車輪支持用転がり軸受装置1は、ハブ2と、内輪3と、外輪4と、二列の転動体5,5と、内部空間13に充填されたグリース組成物と、を備えている。このグリース組成物は、熱伝導性向上剤及びウレア化合物を増ちょう剤として含有している。そして、増ちょう剤の含有量は、グリース組成物全体の5質量%以上30質量%以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、グリース組成物及び転がり軸受に関する。また、本発明は、自動車等の車輪を回転自在に支持する車輪支持用転がり軸受装置に関する。
自動車,鉄道車両等の車輪を回転自在に支持する車輪支持用転がり軸受装置は、通常は屋外において水や塵埃に曝されながら使用される。また、泥水等に水没した状態で使用される場合もある。このような環境下で使用される車輪支持用転がり軸受装置は、シール装置により密封され外部からの水,塵埃等の侵入が抑制されてはいるものの、水の侵入を完全に防止することは困難であった。
車輪支持用転がり軸受装置の内部に水が侵入してグリース組成物(例えば鉱油を基油とし、リチウム石けんを増ちょう剤とするグリース組成物)に混入すると、特許文献1に記載されているように、水が分解して水素が発生し、グリース組成物が分解して発生した水素とともに鋼中に侵入して水素脆性を引き起こすため、水素脆性による白色組織への変化を伴った剥離(以降は白色組織剥離と記すこともある)が生じやすくなる。よって、車輪支持用転がり軸受装置の高負荷条件下での使用に支障が出るおそれがあった。
そこで、封入するグリース組成物を工夫することにより、上記のような白色組織剥離を抑制する方法が提案されている。例えば、亜硝酸ナトリウム等の不動態酸化剤を配合したグリース組成物(特許文献2を参照)、有機アンチモン化合物や有機モリブデン化合物を配合したグリース組成物(特許文献3を参照)、粒径2μm以下の無機系化合物を配合したグリース組成物(特許文献4を参照)等である。これらの方法においては、配合物に由来する被膜が転がり接触部に形成されるため、軸受材料への水素の侵入が抑制される。
しかしながら、上記のような方法は、被膜が形成されるまでの間は水素の侵入を抑制できないという問題点を有していた。また、振動や速度変動により転動体の滑りが生じると、転がり接触部において金属剥離が生じるため、形成した被膜が破壊され、そこから水素が侵入するという問題点も有していた。
また、グリース組成物ではなく軸受材料を工夫することにより、上記のような白色組織剥離を抑制する方法も提案されている。例えば、特許文献5には、軸受材料がステンレス鋼である転がり軸受が提案されており、特許文献6には、転動体をセラミックスで構成した転がり軸受が提案されている。
一般に、転がり軸受の寿命は、潤滑剤中に水分が混入すると大きく低下する。例えば古村らは、潤滑油(#180タービン油)に6%の水が混入すると、混入がない場合に比べて数分の1〜20分の1に転がり疲れ寿命が低下することを報告している(非特許文献1を参照) 。また、Schatzbergらは、潤滑油中にわずか100ppmの水分が混入するだけで、鋼の転がり強さが32〜48%も低下することを報告している(非特許文献2を参照)。
そのため、錆の発生を抑える目的で、グリース組成物を封入する前に、軸受内部に防錆油を塗布することも行われている。この防錆油には、防錆効果を高めるために防錆剤が配合されており、防錆効果の高さからスルホン酸金属塩がよく使用されている。ところが、スルホン酸金属塩は、特許文献2においても指摘されているように、水素の発生を助長するため、白色組織剥離の発生原因となる可能性がある。さらに、スルホン酸金属塩は金属への吸着性が非常に高いため、軸受部品の表面にスルホン酸の吸着膜が容易に形成され、前述した配合物に由来する被膜の形成を阻害するおそれがある。よって、水が侵入するおそれのある転がり軸受への使用は好ましくない場合があった。
一方、車輪支持用転がり軸受装置は、近年の急速な高性能化のため、より高温化する傾向にある。そのため、より耐熱性の高いウレア化合物がグリース組成物の増ちょう剤として使用される場合が多い。また、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP)を添加して、耐摩耗性を高めたグリース組成物が使用される場合もある(特許文献7を参照)。
特開平11−72120号公報 特許第2878749号公報 特再平6−803565号公報 特開平9−169989号公報 特開平3−173747号公報 特開平4−244624号公報 特開2001−254089号公報 特開2003−27080号公報 特開2002−201483号公報 古村恭三郎、城田伸一、平川清,「表面起点および内部起点の転がり疲れについて」,NSK Bearing Journal, No.636, p.1-10,1977 P.Schatzberg,I.M.Felsen,"Effects of water and oxygen during rolling contact Lubrication", wear, 12, p.331-342, 1968
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、水が混入するような環境下で使用されても優れた耐剥離性を発現するとともに、優れた耐熱性を有するグリース組成物を提供することを課題とする。また、水が混入するような環境下や高温環境下で使用されても長寿命な転がり軸受及び車輪支持用転がり軸受装置を提供することを併せて課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1のグリース組成物は、熱伝導性向上剤及びウレア化合物を増ちょう剤として含有し、該増ちょう剤の含有量は5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする。
また、本発明に係る請求項2のグリース組成物は、請求項1に記載のグリース組成物において、前記熱伝導性向上剤が無機粉末であることを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項3の転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内輪及び前記外輪の間に形成される内部空間に配された潤滑剤と、を備える転がり軸受において、前記潤滑剤を請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物としたことを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項4の車輪支持用転がり軸受装置は、外周面に軌道面を有する内方部材と、前記内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内方部材及び前記外方部材の間に形成される内部空間に配された潤滑剤と、を備える車輪支持用転がり軸受装置において、前記潤滑剤を請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物としたことを特徴とする。
本発明のグリース組成物は、水が混入するような環境下で使用されても優れた耐剥離性を発現するとともに、優れた耐熱性を有する。また、本発明の転がり軸受及び車輪支持用転がり軸受装置は、水が混入するような環境下や高温環境下で使用されても長寿命である。
本発明に係るグリース組成物及び車輪支持用転がり軸受装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る車輪支持用転がり軸受装置の一実施形態の構造を示す縦断面図である。なお、以降の説明においては、車輪支持用転がり軸受装置を自動車等の車両に取り付けた状態において、車両の幅方向外側を向いた部分を外端側部分と称し、幅方向中央側を向いた部分を内端側部分と称する。すなわち、図1においては、左側が外端側となり、右側が内端側となる。
図1の車輪支持用転がり軸受装置1は、ハブ2と、内輪3と、外輪4と、二列の転動体5,5と、を備えており、ハブ2の外周面の外端側部分には、図示しない車輪を取り付けるための車輪取り付け用フランジ6が設けられている。
また、ハブ2の内端側部分には外径の小さい段部8が形成されており、該段部8に内輪3が嵌め込まれている。ハブ2の内端側部分には、円筒部10が内輪3よりも内端側に突出して形成されており、該円筒部10の外周面には雄ねじが形成されている。そして、この雄ねじに螺合されたナット11と、段部8の段差面8aとで、内輪3を狭持することにより、内輪3をハブ2に一体的に固定している。なお、内輪3とハブ2とが一体的に固定されたものが、本発明の構成要件である内方部材に相当し、外輪4が本発明の構成要件である外方部材に相当する。
ハブ2の外周面の軸方向中間部及び内輪3の外周面には、それぞれ軌道面が形成され、内輪軌道面20a,20bとされている。また、外輪4の内周面には両内輪軌道面20a,20bに対応する外輪軌道面21a,21bが形成されている。さらに、内輪軌道面20a,20bと外輪軌道面21a,21bとの間には、それぞれ複数の転動体5が転動自在に配置されており、内輪3とハブ2とが一体的に固定されたものが外輪4の内側で回転自在とされている。
なお、各転動体5は、それぞれ保持器16によって転動自在に保持されている。また、乗用車のような比較的軽量の車両用の車輪支持用転がり軸受装置の場合には、転動体として玉が使用されることが多いが、重量が嵩む車両用の車輪支持用転がり軸受装置の場合には、転動体としてころが使用される場合が多い。例えば、大型自動車用の車輪支持用転がり軸受装置の場合には円すいころ、鉄道車両用の車輪支持用転がり軸受装置の場合には円すいころ又は円筒ころが使用される場合が多い。
さらに、外輪4の外端側部分の内周面とハブ2の中間部の外周面との間には、シール装置12が設けられており、内輪3及びハブ2が一体的に固定されたものと外輪4との間で、各転動体5,5が設置され各転動体5,5と外輪軌道面21a,21b及び内輪軌道面20a,20bとの潤滑のためのグリース組成物(図示せず)が充填された内部空間13の端部開口が塞がれている。さらに、外輪4の内端側の開口部はカバー14で塞がれており、内部空間13への水,塵埃等の異物の侵入防止及び内部空間13内のグリース組成物の漏洩防止が図られている。なお、シール装置12に備えられた複数のシールリップ部で囲まれた空隙部分にグリース組成物を充填しておけば、シールリップ部のうち相手部材であるハブ2に接触している部分の摩耗をより抑制することができる。
そして、外輪4の外周面には、車輪取り付け用フランジ6から離間する側の端部に、懸架装置取り付け用フランジ17が設けられている。このような車輪支持用転がり軸受装置1を自動車に組み付けるには、外輪4の外周面に形成した懸架装置取り付け用フランジ17により、外輪4を図示しない懸架装置に固定し、車輪を車輪取り付け用フランジ6に固定する。その結果、車輪支持用転がり軸受装置1によって車輪が懸架装置に対し回転自在に支持される。
ここで、内部空間13内のグリース組成物は、熱伝導性向上剤及びウレア化合物を増ちょう剤として含有するものである。そして、増ちょう剤の含有量(熱伝導性向上剤及びウレア化合物の合計量)は5質量%以上30質量%以下である。このような構成から、グリース組成物は良好な熱伝導性と耐熱性とを有しているので、ハブ2及び外輪4のうち一方の部材に伝わった熱が、グリース組成物を介して他方の部材や内輪3,転動体5,シール装置12に伝達される。よって、車輪支持用転がり軸受装置1から外部に放熱されやすくなるので、車輪支持用転がり軸受装置1は高温下においても損傷が生じにくく長寿命である。また、水が混入するような環境下で使用されても剥離が生じにくく長寿命である。
熱伝導性向上剤のみを増ちょう剤として用いても、含有量を60質量%程度とすれば半固体状のグリースを形成することができるが、潤滑性を考えると、ウレア化合物を併用した方が好ましい。特に、モノアミンとジイソシアネートとから合成されるジウレア化合物が好ましい。増ちょう剤の含有量が5質量%未満であると、半固体状のグリースを形成することが困難となるおそれがあり、30質量%超過であると、基油の量が少なくなるためグリース組成物の潤滑性が不十分となるおそれがある。このような不都合がより生じにくくするためには、増ちょう剤の含有量をグリース組成物全体の8質量%以上25質量%以下とすることがより好ましい。
熱伝導性向上剤の種類は、グリース組成物に良好な熱伝導性を付与できる物質ならば特に限定されるものではないが、以下に例示するような無機化合物の粉末が好ましい。すなわち、酸化アルミニウム,酸化亜鉛,酸化チタン,酸化ベリリウム,酸化マグネシウム等の金属酸化物や、窒化アルミニウム,窒化ホウ素,窒化ケイ素,窒化チタン等の金属窒化物が好ましい。また、炭化ケイ素等の金属炭化物,金属シリコン,ダイヤモンド等も好適である。これらの無機化合物の粉末は、単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
熱伝導性向上剤の含有量は、グリース組成物全体の1質量%以上20質量%以下とすることがより好ましい。熱伝導性向上剤の含有量が1質量%未満であると、グリース組成物の熱伝導性が不十分となるおそれがあり、20質量%超過であると、ウレア化合物の量が少なくなるためグリース組成物の耐熱性が不十分となるおそれがある。このような不都合がより生じにくくするためには、熱伝導性向上剤の含有量をグリース組成物全体の3質量%以上10質量%以下とすることがより好ましい。
グリース組成物の基油の種類は特に限定されるものではなく、グリースや潤滑油の基油として一般的に使用される油であれば、問題なく使用することができる。ただし、鉱油及び合成油の少なくとも一方を基油中に含有していることが好ましい。基油中の鉱油,合成油の割合は、50質量%以上であることが好ましい。50質量%未満であると、潤滑不良が生じるおそれがある。このような不都合がより生じにくくするためには、基油中の鉱油,合成油の割合は80質量%以上であることがより好ましい。
鉱油としては、パラフィン系鉱油,ナフテン系鉱油,及びこれらの混合油等があげられるが、減圧蒸留,溶剤脱れき,溶剤抽出,水素化分解,溶剤脱ろう,硫酸洗浄,白土精製,水素化精製等のうち少なくとも1つにより、精製した鉱油が好ましい。
合成油としては、合成炭化水素油,エステル油,エーテル油,シリコーン油,フッ素油等があげられる。
このうち合成炭化水素油としては、ノルマルパラフィン,イソパラフィン,ポリブテン,ポリイソブチレン,1−デセンオリゴマー,1−デセンとエチレンとのコオリゴマー等のポリα−オレフィン又はその水素化物などがあげられる。また、モノアルキルベンゼン,ジアルキルベンゼン,ポリアルキルベンゼン等のアルキルベンゼンや、モノアルキルナフタレン,ジアルキルナフタレン,ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレンなどもあげられる。
また、エステル油としては、ジブチルセバケート,ジ(2−エチルヘキシル)セバケート,ジオクチルアジペート,ジイソデシルアジペート,ジトリデシルアジペート,ジトリデシルグルタレート,メチルアセチルリシノレート等のジエステル油や、トリオクチルトリメリテート,トリデシルトリメリテート,テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル油があげられる。また、トリメチロールプロパンカプリレート,トリメチロールプロパンペラルゴネート,ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート,ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル油や、一塩基酸及び二塩基酸の混合脂肪酸と多価アルコールとのオリゴエステルであるコンプレックスエステル油などもあげられる。
さらに、エーテル油としては、ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリエチレングリコールモノエーテル,ポリプロピレングリコールモノエーテル等のポリグリコールや、モノアルキルトリフェニルエーテル,アルキルジフェニルエーテル,ジアルキルジフェニルエーテル,テトラフェニルエーテル,ペンタフェニルエーテル,モノアルキルテトラフェニルエーテル,ジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル油などがあげられる。
上記以外の合成油としては、トリクレジルフォスフェート,シリコーン油,パーフルオロアルキルエーテル油などがあげられる。
これらの油は、単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
また、鉱油,合成油の40℃における動粘度は、70mm2 /s以上250mm2 /s以下であることが好ましい。70mm2 /s未満であると、転がり軸受や車輪支持用転がり軸受装置に焼付きが生じるおそれがあり、250mm2 /s超過であると、転がり軸受や車輪支持用転がり軸受装置のトルクが大きくなるおそれがある。このような不都合がより生じにくくするためには、鉱油,合成油の40℃における動粘度は、100mm2 /s以上250mm2 /s以下であることがより好ましい。
さらに、基油全体の40℃における動粘度は、70mm2 /s以上250mm2 /s以下であることが好ましい。70mm2 /s未満であると、水が混入した際にグリース組成物の性能(特に耐剥離性)が低下するおそれがあり、250mm2 /s超過であると、転がり軸受や車輪支持用転がり軸受装置のトルクが大きくなるおそれがある。このような不都合がより生じにくくするためには、基油全体の40℃における動粘度は、100mm2 /s以上250mm2 /s以下であることがより好ましい。
さらに、このグリース組成物には、グリース組成物に一般的に使用される添加剤を必要に応じて添加してもよい。例えば、酸化防止剤,防錆剤,極圧剤,油性剤,及び金属不活性化剤等があげられ、これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。ただし、環境への悪影響を考慮すると重金属を含まないものが好ましい。グリース組成物中の添加剤の含有量は特に限定されるものではないが、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態においては車輪支持用転がり軸受装置の例を示したが、上記のようなグリース組成物が封入された転がり軸受も、車輪支持用転がり軸受装置と同様に、水が混入するような環境下や高温環境下で使用されても長寿命である。転がり軸受の種類は特に限定されるものではなく、例えば、深溝玉軸受,アンギュラ玉軸受,自動調心玉軸受,円すいころ軸受,円筒ころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受等のラジアル形の転がり軸受や、スラスト玉軸受,スラストころ軸受等のスラスト形の転がり軸受に適用可能である。
〔実施例〕
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。構成の異なる8種類のグリース組成物(表1,2を参照)を用意して、その性能を評価した。
Figure 2006124426
Figure 2006124426
まず、グリース組成物の構成について説明する。実施例1〜4のグリース組成物は、表1に示すように、鉱油,ポリα−オレフィン油,及びポリオールエステル油のうちいずれか1種からなる基油と、ジウレア及び熱伝導性向上剤である無機粉末(酸化亜鉛又は酸化アルミニウム)からなる増ちょう剤と、を含有し、さらに添加剤として酸化防止剤及び防錆剤を含有している。
比較例1〜4のグリース組成物は、鉱油,ポリα−オレフィン油,及びポリオールエステル油のうちいずれか1種からなる基油と、添加剤と、を含有している点は実施例1〜4のグリース組成物と同様であるが、比較例1は増ちょう剤がステアリン酸リチウム及び熱伝導性向上剤からなる点が異なっており、比較例2は熱伝導性向上剤の量が好適な範囲から外れている点が異なっている。また、比較例3は熱伝導性向上剤を含有していない点が異なっており、比較例4は増ちょう剤がステアリン酸リチウムのみからなる点が異なっている。
なお、使用した鉱油,ポリα−オレフィン油,ポリオールエステル油,各種ジウレア,ステアリン酸リチウム,酸化亜鉛,酸化アルミニウム,酸化防止剤,及び防錆剤は、以下の通りである。
・鉱油:40℃における動粘度が98.3mm2 /sのもの
・ポリα−オレフィン油:40℃における動粘度が98.7mm2 /sのもの
・ポリオールエステル油:40℃における動粘度が108.3mm2 /sのもの
・脂肪族ジウレア:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとステアリルアミンとを反応させて得られたもの
・脂環式ジウレア:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとシクロヘキシルアミンとを反応させて得られたもの
・芳香族ジウレア:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとp−トルイジンとを反応させて得られたもの
・ステアリン酸リチウム:堺化学工業株式会社製のS−7000
・酸化亜鉛:関東化学株式会社製の試薬
・酸化アルミニウム:関東化学株式会社製の試薬
・酸化防止剤:Vanderbilt社製のVanlube 81
・防錆剤:日本化学産業株式会社製のナフテックス亜鉛
これらのグリース組成物を、日本精工株式会社製の円すいころ軸受(呼び番号HR30205、内径25mm、外径52mm、幅16.25mm)に封入し、雰囲気温度120℃,ラジアル荷重98N,アキシアル荷重1470N,回転速度3500rpmという条件で回転させた。ただし、グリース組成物には1質量%の水を混入させてある。100時間回転させた後に、錆発生の有無及び剥離の有無を確認した。結果を表1,2に示す。
また、上記の各グリース組成物を、日本精工株式会社製の深溝玉軸受(呼び番号6303、内径17mm、外径47mm、幅14mm)に封入した。この深溝玉軸受を196Nの予圧を負荷しつつ電動モータに組み込んで、雰囲気温度100℃,回転速度13000rpmという条件で回転させ(内輪回転)、焼付きが生じるまでの時間(焼付き寿命)を測定した。結果を表1,2に示す。なお、表1,2の焼付き寿命の数値は、比較例3を1とした場合の相対値で示してある。
表1,2から分かるように、実施例1〜4のグリース組成物が封入された軸受は、水が混入するような環境下で使用されても錆及び剥離が生じにくく長寿命であった。また、熱伝導性が良好で且つ耐熱性が優れているため、焼付きが生じにくかった。
本発明に係る車輪支持用転がり軸受装置の一実施形態の構造を示す断面図である。
符号の説明
1 車輪支持用転がり軸受装置
2 ハブ
3 内輪
4 外輪
5 転動体
6 車輪取り付け用フランジ
13 内部空間
17 懸架装置取り付け用フランジ
20a 内輪軌道面
20b 内輪軌道面
21a 外輪軌道面
21b 外輪軌道面

Claims (4)

  1. 熱伝導性向上剤及びウレア化合物を増ちょう剤として含有し、該増ちょう剤の含有量は5質量%以上30質量%以下であることを特徴とするグリース組成物。
  2. 前記熱伝導性向上剤が無機粉末であることを特徴とする請求項1に記載のグリース組成物。
  3. 内輪と、外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内輪及び前記外輪の間に形成される内部空間に配された潤滑剤と、を備える転がり軸受において、前記潤滑剤を請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物としたことを特徴とする転がり軸受。
  4. 外周面に軌道面を有する内方部材と、前記内方部材の軌道面に対向する軌道面を有し前記内方部材の外方に配された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配された複数の転動体と、前記内方部材及び前記外方部材の間に形成される内部空間に配された潤滑剤と、を備える車輪支持用転がり軸受装置において、前記潤滑剤を請求項1又は請求項2に記載のグリース組成物としたことを特徴とする車輪支持用転がり軸受装置。
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