JP2005105419A - めっき材料とその製造方法、それを用いた電気・電子部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 導電性基体の表面に、Ni,Co,もしくはFeのいずれか1種の金属、または前記金属を主成分とする合金から成る厚み0.05〜2μmの下地めっき層と、CuまたはCu合金からなる厚み0.01〜1μmの中間めっき層と、SnまたはSn合金から成り、中間めっき層の厚みの1.9倍以上の厚みを有する表面めっき層とがこの順序で形成されている積層体の熱処理しためっき材料であって、その熱処理により中間めっき層のCu成分が全てSn−Cu合金間化合物に転化し、かつ、最外層の表面にはSnまたはSn合金が残存しているめっき材料。
【選択図】 図1
Description
このような材料としては、通常、基材の上にCuまたはNiの下地めっきを施したのち、その上に、直接、SnまたはSn合金のめっきを施して製造したものが用いられている。この下地めっき層は、基材成分(CuやZnなどの合金成分)が表面のSnまたはSn合金へ拡散することを抑制するために設けられるものである。とくに、下地めっき層がNiやNi合金から成るめっき層である場合には、高温環境下にあっても表面のSnまたはSn合金への上記した拡散を遅延させる効果が大きい。そのため、長時間に亘って表面におけるSnやSn合金の特性が確保されることになる。
なお、コネクタ端子としては、一般に、Cuのような導電性基材の表面にSnめっきが施されているものが使用されている。この端子の場合、Snは易酸化性材料であるため、大気中では、その表面には、常に、硬質なSn酸化皮膜が形成された状態になっている。
このようなことから、とくに高温環境下においては、高価なAuめっき端子を使用するか、または、表面のSnめっき層の厚みが厚く、またピン数が少ないSnめっき端子しか使用することができないという問題があった。
これらのうち、光沢Snめっきによって形成されためっき層の場合、そのめっき層にはめっき処理時に用いた添加剤成分が多く含有されている。また、めっきSnの結晶粒径は微細になる。そのため、めっき層表面の潤滑性が優れ、かつ、嵌合・摺動時の削れ量も少なくなる。その結果、嵌合時の挿抜性は優れている。しかしながら、結晶粒径が微細であるため、高温環境下で用いられると、基材の成分の、粒界拡散に基づく拡散速度が大きくなって当該基材成分が表面に拡散してくることがある。すなわち、光沢Snめっきの材料は耐熱性に劣る。
例えば、耐熱性の向上を目的として、Snめっき層の下地として、高融点金属、とくにNiのめっき層を形成する方法が開示されている(特許文献1や特許文献2を参照)。この方法によれば、温度領域が100〜120℃程度である場合には、Niめっき層が基材成分(CuやZnなどの合金成分)とSnめっき層のSn成分との反応を抑制し、しかもNiとSnとの反応速度が小さいので耐熱効果が得られる。しかしながら、140℃以上の高温環境下においては、NiとSnとの反応速度が大きくなり、表面Snめっき層の変質が起こり、耐熱効果が得られなくなる。
この方法で形成された表面Snめっき層の場合、嵌合・摺動性における削れ量は低減して挿抜性が良好になる。しかしながら、Snめっき層の厚みが薄いので、小さな熱履歴によっても表面のSnめっき層は基材との間の拡散で合金化して消滅してしまい、相手材との接触抵抗は増大してしまう。
導電性基体の表面に、Ni,Co,もしくはFeのいずれか1種の金属、または前記金属を主成分とする合金から成る厚み0.05〜2μmの下地めっき層と、CuまたはCu合金から成る厚み0.01〜1μmの中間めっき層と、SnまたはSn合金から成り、前記中間めっき層の厚みの1.9倍以上の厚みを有する表面めっき層とがこの順序で形成されている積層体を熱処理しためっき材料であって、前記熱処理により前記中間めっき層のCu成分が全てSn−Cu合金間化合物に転化し、かつ、最外層の表面にはSnまたはSn合金が残存していることを特徴とするめっき材料が提供される。
導電性基体の表面に、Ni,Co,もしくはFeのいずれか1種の金属、または前記金属を主成分とする合金から成る厚み0.05〜2μmの下地めっき層と、CuまたはCu合金から成る厚み0.01〜1μmの中間めっき層と、SnまたはSn合金から成り、前記中間めっき層の厚みの1.9倍以上の厚みを有する表面めっき層とをこの順序で形成し、ついで、温度100〜160℃のエアバスの中に120時間放置する熱処理を行って前記中間めっき層のCu成分を全てSn−Cu金属間化合物に転化し、かつ最外層の表面にはSnまたはSn合金を残存させることを特徴とするめっき材料の製造方法が提供され、好適には、
前記中間めっき層を形成したのち、前記中間めっき層の上に、Snめっき層と、Ag,Bi,Cu,In,PbおよびSbの群から選ばれる少なくとも1種から成るめっき層とをこの順序で形成し、ついでリフロー処理または熱拡散処理を行うめっき材料の製造方法が提供される。
まず、本発明のめっき材料は、図1で示したように、全体として、導電性基材1の上に、後述する下地めっき層2、中間めっき層3、および表面めっき層4がこの順序で形成されている。このめっき材料は、下地めっき層2と表面めっき層4の間に、中間めっき層3が介在し、この中間めっき3が後述する機能を発揮することにより、高温環境下における表面めっき層4の消失が抑制されるところに最大の特徴を有している。
なお、導電性基材1がCu系材料でない場合は、その表面にCuまたはCu合金のめっきを施してから実使用に供すると、めっき膜の密着性や耐食性が更に向上する。
この導電性基材1の上に形成されている下地めっき層2は、基材1と表面めっき層との密着強度を確保するために設けられるとともに、基材の成分が表層側に熱拡散することを防止するバリア層としても機能する。具体的には、価格の点、めっき処理が行いやすい点などから、Ni,Co,Feが好適である。そして、それらを主成分とする合金としては、例えば、Ni−P,Ni−Sn,Co−P,Ni−Co,Ni−Co−P,Ni−Cu,Ni−Cr,Ni−Zn,Ni−Feなどをあげることができる。
なお、上記した下地めっき層は例えばPVD法のようなめっき法によっても形成することができるが、湿式めっき法を適用することの方が好ましい。
この下地めっき層2の厚みが薄すぎると上記した効果は充分に発揮されなくなり、また厚すぎるとめっき歪みが大きくなって基材1から剥離しやくすくなるからである。
また、めっき材料の耐熱性の向上とともに、挿抜性の向上を意図する場合、下地めっき層2の厚みは、格別限定されるものではないが、上記した基材成分の表層側の拡散防止効果を発揮させるためには、0.25μm以上であればよい。しかし、あまり厚くしても無意味であるばかりではなく、端子への加工時に加工割れを起こす場合もあるので、加工性を考慮して、その厚みの上限は概ね0.5〜2μmの範囲内に設定すればよい。
中間めっき層3のCu成分と下地めっき層2の成分(前記した金属またはその合金)との反応速度よりも、上記Cu成分と表面めっき層4のSn成分との反応速度の方が大きい。したがって、このめっき材料が高温環境下に曝されると、表面めっき層4のSn成分の中間めっき層3への熱拡散が進行し、結果として、中間めっき層3は、図2で示したように、Sn−Cu金属間化合物から成る層3’に転化していく。同時に、めっき材料の表面めっき層4のSn成分は、中間めっき層3との界面を起点として中間めっき層3の方へ拡散移動して上記金属間化合物に転化していく。その結果、Sn(またはSn合金)が残存している層であるめっき層4’の厚みは薄くなる。そして、中間めっき層3のCu成分が上層側から拡散してくるSnやSn合金を受容し終わった時点で、SnやSn合金とCuやCu合金間の相互拡散は停止する。
このように、下地めっき層2とSnやSn合金から成る層4’の間に金属間化合物の層3’が介在していることにより、層4’と下地めっき層2の間の反応は抑制されることになる。
Sn−Cu金属間化合物としては、Cu6Sn5やCu3Snがよく知られている。そして、Cu6Sn5の場合、Cuの1体積に対しSnの1.9体積が反応して生成した化合物である。またCu3Snの場合は、Cuの1体積に対しSnの0.8体積が反応して生成した化合物である。
このようにすることにより、そのめっき材料は、高温環境下にあっても、表面めっき層4' は必ずSnまたはSn合金のままであるため、その接触信頼性は確保される。
その場合、中間めっき層3の厚みを薄くしすぎると、例えば中間めっき層3がCuから成る場合には、その層には多数の微細孔が存在している。そのため、下地めっき層2のNi成分やCu成分などがこの微細孔を通って中間めっき層に拡散してくるようになる。
中間めっき層3の形成に用いるCu合金としては、例えば、Cu−Zn、Cu−Sn、Cu−Ni,Ni−Snなどをあげることができる。その場合、Cu成分の量は、上記したCu−Sn系金属間化合物の生成を阻害しない量であることが必要であるが、例えば50質量%以上の値であればよい。
例えば、中間めっき層3の厚みを0.49μm以下とすれば、めっき材料における表面めっき層の厚みを1μm以下にしても、充分な耐熱性を確保した状態で良好な挿抜性を発揮させることができる。また、中間めっき層3の厚みを0.3μm以下とすれば、表面めっき層4の厚みを更に薄い0.6μm程度に設定することができて好適である。
その場合のSn合金としては、例えば、SnにAg,Bi,Cu,In,Pb,Sbの1種または2種以上が含有されているものを好適例とする。これらのSn合金は、いずれも、はんだ付け性が良好で、また、表面めっき層の形成時にウイスカを発生しないからである。
このSn合金めっき層は所定の合金めっき浴を用いて形成することができるが、次のような方法で形成すると製造コストを大幅に低減することができて好適である。
すなわち、基材上に、下地めっき層、中間めっき層を形成したのち、更に、Snめっき層、およびAg,Bi,Cu,In,Pb,Sbの1種または2種以上の金属のめっき層をこの順序で積層する。なお、上記したSnめっき層はSn合金めっき層であってもよい。
黄銅条に、電解脱脂、酸洗を順次行ったのち、下地めっき層、中間めっき層、表面めっき層を順次形成して、表2、表3で示した各種のめっき材料を製造した。
なお、各層形成時のめっき条件は表1に示したとおりである。
残存厚み:めっき材料を温度100〜160℃のエアバスの中に120時間放置したのち、定電流溶解法で測定。
以下の結果を一括して表2および表3に示す。
(1)実施例と比較例を対比すると、実施例は、全体として、環境温度が高温になっても、表面めっき層(Sn)が残存しており、しかも動摩擦係数が小さくなっている。そして、形成した表面めっき層の厚みが厚い実施例のものほど加熱後における表面めっき層(Sn)の残存厚みは厚くなっていて耐熱性を保持している。しかし、他方では、動摩擦係数は、表面めっき層の厚みが薄い実施例の方が小さくなっている。このようなことから、表面めっき層の厚みが薄いものの方が挿抜性の点で有利である。
実施例25〜33、比較例10〜25
実施例3、実施例5、実施例9、実施例12、比較例5、および比較例6のそれぞれの試料から、タブ幅が2.3mmであるオス端子とメス端子を製作した。
なお、嵌合時の挿入は挿入力の速度2mm/secで行い、挿入時のピーク強度を挿入力として測定した。n=5の平均値を求め、結果を表4に示した。
(1)実施例と比較例を対比すると、実施例の場合、全体として嵌合時の挿入力は低く、しかも熱処理後の接触抵抗が低くなっている。
また、各実施例と各比較例における嵌合時の挿入力は概ね5.3〜6.5Nと低い値になっている。そして、オス端子に実施例のものを用いた方が、メス端子に用いた場合よりも挿入力が低くなっている。これは、嵌合時においては、メス端子側は点接触状態となって削れる箇所が1点になるが、オス端子側では線状に接触していくので削れる箇所が線状になるためであると考えられる。
また、実施例において、熱処理後の接触抵抗が低い理由は、熱処理後にあっても本発明の実施例端子は表面めっき層(Sn)が残存していることにより接触信頼性が向上しているためであると考えられる。他方、比較例端子を用いた場合は、熱処理により表面めっき層(Sn)が消滅して接触抵抗が高くなってしまう。
2 下地めっき層
3 中間めっき層
3’ SnとCuとの相互拡散層
4 表面めっき層
4’ Sn残存めっき層
Claims (11)
- 導電性基体の表面に、Ni,Co,もしくはFeのいずれか1種の金属、または前記金属を主成分とする合金から成る厚み0.05〜2μmの下地めっき層と、CuまたはCu合金から成る厚み0.01〜1μmの中間めっき層と、SnまたはSn合金から成り、前記中間めっき層の厚みの1.9倍以上の厚みを有する表面めっき層とがこの順序で形成されている積層体を熱処理しためっき材料であって、前記熱処理により前記中間めっき層のCu成分が全てSn−Cu合金間化合物に転化し、かつ、最外層の表面にはSnまたはSn合金が残存していることを特徴とするめっき材料。
- 前記熱処理が、温度100〜160℃のエアバスの中に120時間放置する処理である請求項1に記載のめっき材料。
- 前記表面めっき層は、リフロー処理された層である請求項1または2に記載のめっき材料。
- 前記Sn合金が、Ag,Bi,Cu,In,Pb,およびSbの群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のめっき材料。
- 前記中間めっき層の厚みが、0.05〜0.49μmである請求項1〜4のいずれかに記載のめっき材料。
- 前記表面めっき層の厚みが、1μm以下である請求項5に記載のめっき材料。
- 前記導電性基材が、CuまたはCu合金から成る請求項1〜6のいずれかに記載のめっき材料。
- 導電性基体の表面に、Ni,Co,もしくはFeのいずれか1種の金属、または前記金属を主成分とする合金から成る厚み0.05〜2μmの下地めっき層と、CuまたはCu合金から成る厚み0.01〜1μmの中間めっき層と、SnまたはSn合金から成り、前記中間めっき層の厚みの1.9倍以上の厚みを有する表面めっき層とをこの順序で形成し、ついで、温度100〜160℃のエアバスの中に120時間放置する熱処理を行って前記中間めっき層のCu成分を全てSn−Cu金属間化合物に転化し、かつ最外層の表面にはSnまたはSn合金を残存させることを特徴とするめっき材料の製造方法。
- 前記中間めっき層の上に、Snめっき層またはSn合金めっき層、ならびに、Ag,Bi,Cu,In,Pb,およびSbの群から選ばれる少なくとも1種から成るめっき層をこの順序で形成し、ついで、温度230〜300℃で5秒以下のリフロー処理または温度100〜120℃で数時間の熱拡散処理を行う請求項8に記載のめっき材料の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のめっき材料から成ることを特徴とする電気・電子部品。
- 前記電気・電子部品が、嵌合型コネクタまたは接触子である請求項10に記載の電気・電子部品。
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