JP5253541B2 - 空気調和システム及び遠隔監視装置 - Google Patents

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Description

本発明は室外機と複数の室内機を備えた空気調和システム及び遠隔監視装置に関する。
複数の室内機を備えた多室形空気調和装置において、「室内機のそれぞれに、希望する室内温度を設定可能な室内温度設定手段と室内温度を検出する室内温度検出手段とを設け、この室内温度設定手段と室内温度検出手段とから設定室内温度と室内温度との差温を算出する差温算出手段」を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、「室内の環境状態を測定するための少なくとも2つ以上であるn個のセンサーと、前記室内における指定された指定箇所の環境状態を推定するために、前記n個のセンサーのうちn個よりも少ないm個の前記センサーを選択するセンサー選択手段と、前記センサー選択手段により選択された前記m個のセンサーの測定結果に基いて、前記指定箇所の環境状態を推定する環境状態推定手段とを備えた」空調用センサーシステムを有する空調システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許第2730381号公報(第4頁、図2) 特開2008−075973号公報(第4頁、図1)
上記特許文献1に記載の技術によれば、各部屋の要求能力の総和に応じて圧縮機の周波数を制御し、かつ各部屋ごとの負荷に応じて各電動膨張弁の開度比を決定して、必要な能力を必要な部屋に配分するとされている。しかし、室内温度検出手段は室内機に設置されているので、実際に人が存在する場所とは異なる場所の温度を検出することとなる。したがって、人の快適性を向上させる適切な制御ができない可能性がある。
また、上記特許文献2に記載の技術によれば、空調エリア内の環境状態を推定しているが、空調機の制御に関しては冷房、暖房、又は除湿を行うとするのみであり、人の快適性を考慮した能力制御はできていなかった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、空調エリアや空調対象物の快適性を向上させるとともに、消費電力を低減することのできる空気調和システム及び遠隔監視装置を提供するものである。
本発明に係る空気調和システムは、容量可変形圧縮機、冷媒流路切換手段、及び室外熱交換器を備えた一又は複数の室外機と、減圧手段及び室内熱交換器を備えた複数の室内機とが冷媒配管接続された空気調和装置を備え、前記室内機の空調エリアの代表室温と前記室内機の設定温度との温度差に基づいて前記空気調査装置を制御する制御手段、前記各室内機の空調エリアに1台以上設置されるように複数台設置され、温度検出手段を備えた無線計測端末とを有し、前記代表室温を、前記各室内機の空調エリアに設置された前記無線計測端末の前記室内機を基準とする位置座標と、該無線計測端末の計測結果との関係に基づく近似式を用いて算出し、複数の前記空調エリアの代表室温の平均値と、各前記空調エリアの代表室温との差異に基づいて、各空調エリアがペリメーターゾーンであるか否かを判断し、ペリメーターゾーンであると判断した場合には、その空調エリアの代表室温と設定温度との温度差を補正するものである。
本発明によれば、空調エリアや空調対象物の温度を検知し、検知した温度に基づいて空気調和装置の能力や気流を制御する。このため、空調の能力過多を抑制して温度ムラを低減させて快適性を向上させるとともに、消費電力量を削減することができる。
実施の形態1に係る空気調和装置の冷媒回路図である。 実施の形態1に係る空気調和システムの側面配置図である。 実施の形態1に係る空気調和システムの機能ブロック図である。 実施の形態1に係る空気調和システムの他の例の機能ブロック図である。 実施の形態1に係る温度差ΔTaと冷房能力の関係を示す図である。 実施の形態1に係る温度差ΔTaと冷房能力の変更量の関係を示す図である。 実施の形態1に係る温度差ΔTaと冷媒流量の変更量の関係を示す図である。 実施の形態1に係る温度差ΔTaと膨張弁の開度の変更量の関係を示す図である。 実施の形態1に係る温度差ΔTaと目標過熱度SHaの関係を示す図である。 実施の形態1に係る目標過熱度SHaとエンタルピー差Δheaの関係を示す図である。 実施の形態1に係る温度差ΔTaと圧縮機の周波数Fzの関係を示す図である。 実施の形態1に係る空調エリアの上面配置図である。 実施の形態1に係る代表室温Tn、設定温度Tm、及び温度差ΔTの関係を示す図である。 実施の形態2に係る代表室温Tn、設定温度Tm、及び温度差ΔTの関係を示す図である。 実施の形態2に係る空調エリアの上面配置図である。 実施の形態3に係る空調エリアの上面配置図である。 実施の形態3に係る代表室温Tn、設定温度Tm、及び温度差ΔTの関係を示す図である。 実施の形態4に係る空調エリアの上面配置図である。 実施の形態5に係る空調エリアの上面配置図である。 実施の形態6に係る空気調和装置の冷媒回路図である。 実施の形態6に係る空気調和システムの機能ブロック図である。 実施の形態6に係る空調エリアの上面配置図である。 実施の形態6に係る代表室温Tn、設定温度Tm、及び温度差ΔTの関係を示す図である。 実施の形態7に係る代表室温Tn、設定温度Tm、及び温度差ΔTの関係を示す図である。 実施の形態10に係る空調エリアの上面配置図である。 実施の形態12に係る空調エリアの上面配置図である。 実施の形態15に係る空気調和システムの機能ブロック図である。
実施の形態1.
本実施の形態1では、1台の室外機に2台の室内機を接続した多室形の空気調和装置を備えた空気調和システムを例に説明する。なお、以降の説明において、同一あるいは相当する構成要素には同一符号を付し、各実施の形態では相違点を中心に説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る多室形の空気調和装置の冷媒回路図である。
図1において、多室形の空気調和装置200は、1台の室外機1と、2台の室内機2a、2bが接続されて構成されている。この多室形の空気調和装置200は、室外機1に設けられたアキュムレータ3、圧縮機4、四方弁5、室外熱交換器6と、室内機2a、2bにそれぞれ設けられた膨張弁7a、7b、室内熱交換器8a、8bとを順次配管接続することによって冷媒回路を構成している。
圧縮機4は、インバータ駆動の容量可変形の圧縮機である。四方弁5は、冷房運転と暖房運転とで冷媒の流れ方向を切り換える冷媒流路切換手段である。室外熱交換器6は、冷房運転時には凝縮器として、暖房運転時には蒸発器として動作して、冷媒と空気との熱交換を行う。また、室外機1には、室外熱交換器6に空気を送風するための図示しない送風機が設けられている。
膨張弁7a、7bは、ステッピングモータを用いて弁開度をパルス制御可能とした膨張弁である。室内熱交換器8a、8bは、冷房運転時には蒸発器として、暖房運転時には凝縮器として動作して、冷媒と空気との熱交換を行う。また、室内機2a、2bには、図示しない空気吸込口から吸込んだ空気を、室内熱交換器8a、8bに送風するための図示しない送風機が設けられている。
室外機1と室内機2a、2bは、液側主管9より分岐した液側分岐管10a、10b及びガス側主管11より分岐したガス側分岐管12a、12bとで接続されている。
また、室外機1には外気温を計測する外気温センサー17と、圧縮機4の吐出側に設けられて冷媒の吐出圧力を検出する吐出圧力センサー19と、圧縮機4の吸入側に設けられて冷媒の吸入圧力を検出する吸入圧力センサー20が設けられている。外気温センサー17、吐出圧力センサー19、吸入圧力センサー20は、検出結果を制御部18に出力し、制御部18はこれらの検出結果に基づいて後述する室内機2a、2bの制御部16a、16bと協働して空気調和装置200の制御を行う。
また、室内機2a、2bには、液側分岐管10a、10bの温度を検出する液管温度センサー14a、14bと、ガス側分岐管12a、12bの温度を検出するガス管温度センサー15a、15bが設けられている。液管温度センサー14a、14b、ガス管温度センサー15a、15bは、検出結果を制御部16a、16bに出力し、制御部16a、16bはこれらの検出結果に基づいて室外機1の制御部18と協働して空気調和装置200の制御を行う。
図2は空気調和装置200を備えた空気調和システム300の側面配置図である。図2では、天井裏22と床25を有するとともに机26が配置された部屋27を空調対象とする場合を例に説明する。
図2において、空気調和システム300は、室外機1と、室内機2a、2bと、設定端末23a、23bと、無線計測端末24a、24bと、監視装置100と、遠隔監視装置101とを備える。
また、図2では、室内機2a、2bが空調対象とする領域を空調エリア21a、21bとして、一点鎖線で表記している。空調エリア21aは室内機2aからの気流が0.25m/s以上となる領域であり、空調エリア21bは室内機2bからの気流が0.25m/s以上となる領域である。そして、空調エリア21aと空調エリア21bが重なる範囲を、共通空調エリア21abと称する。この共通空調エリア21abは、室内機2a、2bがともに空調対象とする領域である。空調エリアは、室内機の種類や風量、風向に基づいて決定する。なお、以後の説明において、空調エリア21a、21b、共通空調エリア21abを、空調エリア21と総称する場合がある。
室外機1は建物の屋上などに設置され、室内機2a、2bは天井裏22に設置されている。室外機1と室内機2a、2bは液側主管9とガス側主管11で配管接続されている。
設定端末23a、23bは、冷房運転/暖房運転の切換や温度設定などを行う設定端末であり、壁や柱などに設置されている。設定端末23a、23bは、設定内容をそれぞれ室内機2a、2bに対して伝送線28a、28bを介して伝送する。
無線計測端末24a、24bは、室温を計測する温度センサーを内蔵しており、計測結果を室内機2a、2bにそれぞれ無線通信で送信する。無線計測端末24a、24bは、室内機2a、2bの空調エリア21a、21b内で人が滞在する場所に設置される。より具体的には、建物の壁、柱、天井から30cm以上離した状態で、机や棚などの上に設置される。本実施の形態1では、無線計測端末24aは空調エリア21aに設置され、無線計測端末24bは共通空調エリア21abに設置されている。
監視装置100は、空気調和装置200の運転状態や故障状態などを監視する装置であり、例えばパーソナルコンピュータ等からなる。監視装置は、室外機1、室内機2a、2bを通信接続する通信線30を介して空気調和装置200に接続されている。
遠隔監視装置101は、空気調和装置200から地理的に離れた場所から空気調和装置200の運転状態や故障状態などを監視する装置であり、例えばパーソナルコンピュータ等からなる。遠隔監視装置101は、電話回線やLANなどの通信手段102を介して監視装置100に接続されている。
図3は、空気調和装置200、設定端末23a、23b、無線計測端末24a、24bの制御機能及び通信機能に関する機能ブロック図である。
設定端末23a、23bは、室内機2a、2bの運転停止を設定する運転停止設定部231、冷房や暖房などの運転モードを設置する運転モード設定部232、風量設定部233、室温設定部234、を備える。また、運転停止設定部231、運転モード設定部232、風量設定部233、室温設定部234により設定された情報を一時的あるいは長期的に格納する設定保存部235を備える。設定端末23a、23bは、空気調和装置200の室内機2a、2bと伝送線28a、28bで接続されており、設定保存部235に格納されたデータは室内機2a、2bへ送信される。
無線計測端末24a、24bは、室内温度を検出する温度センサー241、電池残量検出部242、対象物との距離を計測する距離計測部243、各種データを保存するデータ保存部244、及び空気調和装置200と通信する通信部245を備える。
本実施の形態では、無線計測端末24a、24bが電池により電源を得る場合を例に説明するが、電源を得る方法はこれに限定されるものではない。例えば、無線計測端末24a、24bは、電源アダプタを用いて建物の電源コンセントから電源を得る、あるいはUSBでパソコンと接続するなどの方式により電力を得るものであってもよい。また、パソコンを用いて無線通信(あるいは有線通信)により、設定温度、設定風量、「暑い」/「寒い」などの温冷感、快適性などを無線計測端末24a、24bに入力可能としてもよい。
無線計測端末24a、24bでは、温度センサー241で測定した温度をデータ保存部244に格納し、通信部245にて室内機2a、2bへと所定時間間隔で送信する。無線計測端末24a、24bは通信の時間間隔を制限することによって消費電力を抑制でき、電池交換や充電のメンテナンス回数が削減できる。
また、無線計測端末24a、24bは電池残量検出部242により電池残量を検出し、検出した電池残量を室内機2a、2bに伝送する。電池が無くなった場合、あるいは電池残量が所定値より少なくなった場合は、監視装置100へ通報し、監視装置100から遠隔監視装置101へと通報する。
また、無線計測端末24a、24bは、自身の設置位置を示す情報を、所定周期で監視装置100に送信する。無線計測端末24a、24bの設置位置が異常な値を示した場合は、監視装置100は遠隔監視装置101へと通報する。
このように電池寿命や設置位置に関する情報を遠隔監視装置101に送信することで、無線計測端末24a、24bの電池寿命や設置位置の管理やメンテナンスを確実に実施することができる。なお、遠隔監視装置101の設置場所は、電話線やLANなどの通信手段102によって通信可能な場所であればよく、空調エリア21内であるか否かを問わない。
空気調和装置200は、無線計測端末24a、24bとの間で通信を行う通信部201、Tn演算部202、膨張弁開度演算回路203a、203b、膨張弁制御部204a、204b、圧縮機周波数演算回路205、及び圧縮機制御部206を備える。
Tn演算部202は、空調エリア21の代表室温Tnを演算するものであり、例えば中央演算処理装置(CPU)や専用機能回路で構成される。なお、代表室温Tnの演算処理については後述する。
膨張弁開度演算回路203a、203bは、膨張弁7a、7bの弁開度を演算する専用機能回路である。膨張弁制御部204a、204bは、膨張弁開度演算回路203a、203bの演算結果に基づいて、膨張弁7a、7bの弁開度を制御する。
圧縮機周波数演算回路205は、圧縮機4の周波数を演算する専用機能回路である。圧縮機制御部206は、圧縮機周波数演算回路205の演算結果に基づいて、圧縮機4の周波数を制御する。
通信部201とTn演算部202は、室内機2a、2bの制御部16a、16bのいずれかに設けてもよいが、室内機2a、2bに外付けしてもよい。
また、膨張弁開度演算回路203a、203b、膨張弁制御部204a、204b、圧縮機周波数演算回路205、及び圧縮機制御部206は、制御部18、制御部16a、16bのいずれかに設ける。
また、図4は、図3で示した機能ブロック図の他の構成例である。図3では通信部201を室内機2a、2bに設けていたが、図4では室内機2a、2bには通信手段を設けず、設定端末23a、23bに通信部236を設けている。そして、無線計測端末24aと設定端末23aとが無線通信を行い、無線計測端末24bと設定端末23bとが無線通信を行う。無線計測端末24a、24bが計測した情報は、無線通信により設定端末23a、23bに送信され、設定端末23a、23bから伝送線を介して室内機2a、2bへと送信される。このような構成とすることで、既存の空気調和装置200に無線計測端末24a、24bを追加してシステムを構成することができる。そして、既存の空気調和機に本システムを適用する場合、室内機2a、2bに通信部を設置するよりも設定端末23a、23bに設置する方が容易であり、メンテナンスも行いやすい。
なお、室外機と室内機の台数は上記の構成例に限らず、上記空調システムを複数組み合わせて例えば1台の室外機に4台の室内機が接続した空気調和システムと別の室外機1台に6台の室内機が接続した空気調和システムを組み合わせることもできる。この場合、複数の空気調和システムを通信線30により接続して通信可能とする。
次に、上記のように構成された空気調和装置200の動作について説明する。まず、冷房運転時の動作を説明する。
図1において、冷房運転時は、圧縮機4から吐出された冷媒は、四方弁5を経由して室外熱交換器6へと流入し、空気と熱交換する。空気と熱交換して凝縮液化した冷媒は、液側主管9より液側分岐管10a、10bへと分岐する。そして、空調運転の負荷に見合うように弁開度が制御された膨張弁7a、7bを通過した冷媒は、負荷に応じた流量で室内熱交換器8a、8bに流入し、空気から熱を受けて蒸発する。蒸発したガス化した冷媒は、ガス側分岐管12a、12bからガス側主管11に合流し、四方弁5、アキュムレータ3を通過して再び圧縮機4に吸入される。
次に、冷房運転時における圧縮機4の周波数と膨張弁7aの弁開度の制御についてさらに説明する。なお、以降の説明において使用する符号の意味は以下の通りである。
設定温度Tma:設定端末23aにより設定された空調エリア21aの設定温度。
代表室温Tna:空調エリア21aの代表室温。
温度差ΔTa:代表室温Tnaと設定温度Tmaの温度差。
冷房能力Qea:室内機2aの冷房能力。
熱負荷QLa:代表室温Tnaが設定温度Tmaで安定するときの負荷。
図5は、温度差ΔTaと冷房能力Qeaの関係を示す図である。ΔTaは次式で表される。
ΔTa=Tna−Tma・・・・・・(式1)
ΔTaが正の値の場合、すなわち、設定温度Tmaに対して代表室温Tnaが高い場合には、熱負荷QLaに対して冷房能力Qeaが不足していることを示す。
他方、ΔTaが負の値の場合、すなわち、設定温度Tmaに対して代表室温Tnaが低い場合には、熱負荷QLaに対して冷房能力Qeaが過多状態であることを示す。
以降は、ΔTaが正の値をとる場合を例に説明する。
図6は、温度差ΔTaと冷房能力の変更量ΔQeaの関係を示す図である。温度差ΔTaが正の値をとる場合には冷房能力Qeaが不足しているので、冷房能力を増加させる必要がある。冷房能力の変更量ΔQeaは、熱負荷QLaと現在の冷房能力Qeaとの差分によって求められる。温度差ΔTaが正の値をとる場合はΔQea>0となる。
図7は、温度差ΔTaと冷媒流量の変更量の関係を示す図である。冷房能力Qeaを増加させるには、室内機2aの冷媒流量Graを増加させる必要がある。図7では、温度差ΔTaが大きいほど、冷媒流量の変更量ΔGraを大きくする必要があることを示している。冷房能力Qeaを増加させる場合はΔGra>0となる。
図8は、温度差ΔTaと膨張弁7aの弁開度の関係を示す図である。室内機2aの冷媒流量Graを増加させる場合には、膨張弁7aの弁開度を大きくする必要がある。図8では、温度差ΔTaが大きいほど、膨張弁7aの弁開度を変更するためのパルス数の変更量Δpulseを大きくする必要があることを示している。
図9は、温度差ΔTaと室内熱交換器8aの目標過熱度SHaの関係を示す図である。室内熱交換器8aの過熱度は、室内熱交換器8aの出口側であるガス管温度センサー15aの検出値と、入口側である液管温度センサー14aの検出値の差分により算出される。室内熱交換器8aの過熱度が所定の目標過熱度SHaとなるように膨張弁7aの開度が制御される。図9では、ΔTaが正の値のとき(膨張弁7aの弁開度を大きくする場合)には、目標過熱度SHaの目標値を減少させることを示している。
図10は、目標過熱度SHaと室内熱交換器8aの出口側と入口側とのエンタルピー差Δheaの関係を示す図である。目標過熱度SHaを減少させると、エンタルピー差Δheaが減少することを示している。
膨張弁7aの開度を大きくすると、室内熱交換器8a、8bの圧力(吸入圧力センサー20の検出値)が増加して蒸発温度が上昇するので、蒸発温度と吸込み空気温度との温度差が減少する。
ここで、室内熱交換器8aの冷房能力Qeaは、次式で示す通り冷媒流量Graとエンタルピー差Δheaの積で求めることができる。
Qea=Gra・Δhea・・・・・・(式2)
図7で示したように冷房能力が不足している場合には冷媒流量ΔGraを増加させるが、Δheaが減少するので、全体として室内熱交換器8aの冷房能力は増加は少ない。また、室内熱交換器8bの冷房能力も減少傾向となる。
そこで、圧縮機4の周波数を増加させることにより、室内熱交換器8a、8bの冷房能力を増加させる。
図11は、温度差ΔTaと圧縮機4の周波数Fzの関係を示す図である。ΔTaが正の値の場合(冷房能力が不足している場合)には、圧縮機4の周波数を増加させ、室内熱交換器8aを通過する冷媒が目標の蒸発温度となるよう調節する。
以上、図5〜図11で述べたように、設定温度Tmaと代表室温Tnaの温度差ΔTaに基づいて、圧縮機4の周波数を制御する。
なお、ΔTaが負の値をとる場合には、上記とは逆の制御となる。
次に、暖房運転時の動作を説明する。暖房運転時には、四方弁5は図1とは逆の方向に切り換えられた状態となっている。圧縮機4から吐出された冷媒は、四方弁5を経由してガス側主管11よりガス側分岐管12a、12bへと分岐して室内熱交換器8a、8bへと流入し、空気に放熱して熱交換する。空気と熱交換して凝縮液化した冷媒は、膨張弁7a、7bで減圧される。膨張弁7a、7bの弁開度は、冷房運転時と同様、各負荷に見合った開度になるよう制御される。冷媒はそれぞれの負荷に応じた流量で室内熱交換器8a、8bを流れて空気に熱を伝えることができる。膨張弁7a、7bで減圧された冷媒は、液側分岐管10a、10bを経由して液側主管9へと進み、室外熱交換器6へ流入して
空気から熱を奪って蒸発した後、四方弁5とアキュムレータ3を通過して再び圧縮機4に吸入される。
暖房運転時に温度差ΔTaが負の値をとる場合は、暖房能力が不足しているものとして目標の過冷却度SCaを小さくして膨張弁7aの開度を大きくするよう調節する。そして、圧縮機4の周波数を増加させて目標の凝縮温度になるよう調節する。
他方、暖房運転時に温度差ΔTaが正の値をとる場合は、温度差ΔTaが負の値をとる場合と逆の制御を行う。
以上説明したように、空気調和装置200は、代表室温Tnaと設定温度Tmaの温度差ΔTの値に基づいて、膨張弁7a、7bの開度と圧縮機4の周波数の制御を行う。したがって、代表室温Tnaをどのように定めるかにより、空調制御の内容が決定される。
次に、代表室温Tnaの算出方法について説明する。
図12は、図2で示した空調エリア21を上面から見た上面配置図である。図12では、室内機2a、2bの場所を破線で表記している。また、室内機2a、2bの空調エリア21a、21bは一点鎖線で表記している。室内機2aの空調エリア21aには無線計測端末24a、24bが、室内機2bの空調エリア21bには無線計測端末24bが設置されている。また、図12では空調エリア21aの中央座標(x2a,y2a)、空調エリア21bの中央座標(x2b,y2b)を図示している。
室内機2aの空調エリア21aの代表室温Tnaは、空調エリア21a内に設置されている無線計測端末であって室内機2aとの距離が最短のものが計測した計測温度Tlとする。
同様に、室内機2bの空調エリア21bの代表室温Tnbは、空調エリア21b内に設置されている無線計測端末であって室内機2bとの距離が最短のものが計測した計測温度Tlとする。
ここで、室内機2a、2bとの距離が最短の無線計測端末は、手動あるいは自動で特定することができる。
まず、手動で特定する場合の例を説明する。予め、無線計測端末24a、24bに、固有の番号、記号、及び設置位置などの識別情報を、直接あるいはパソコン経由で入力しておく。そして、無線計測端末24a、24bは、測定した温度データを空気調和装置200へ送信する際に、上記識別情報も併せて送信する。これらの情報を受信した空気調和装置200は、Tn演算部202により室内機2a、2bとそれぞれ最短距離にある無線計測端末を特定し、その無線計測端末が測定した測定温度Tla、Tlbを代表室温Tna、Tnbとする。
次に、自動で特定する場合の例を説明する。予め、位置が既知の固定通信基地局(図示せず)を設けておく。そして、この固定通信基地局と各無線計測端末との距離を、受信電波強度や電波伝播遅延時間などにより算出し、三角測量によって無線計測端末の位置を特定することができる。この場合、室内機2a、2bの位置座標を予め設定しておく、あるいは室内機2a、2b通信手段を設けて固定通信基地局との距離を通信で計測することで、室内機2a、2bと無線計測端末24a、24bをすべて同一上で管理することができる。なお、室内機2a、2bに通信手段を設ける場合は、室内機2a、2bから無線計測端末24a、24bの相対位置座標を検知することができる(特開2006−90868号公報参照)。
また、無線計測端末が3台以上設置されている場合には、位置が既知の固定通信基地局を設けず、無線計測端末間の距離に基づいて各端末の位置を決定することもできる(特開2002−281468号公報参照)。
このようにして、室内機2a、2bとそれぞれ最短距離にある無線計測端末を特定し、その無線計測端末が測定した測定温度Tla、Tlbを代表室温Tna、Tnbとする。
本実施の形態1では、室内機2aの空調エリア21a内には、無線計測端末24a、24bの2台が設置されている。このうち、室内機2aとの距離が最短である無線計測端末24aが計測した計測温度Tlaを、室内機2aの代表室温Tnaとする。
また、室内機2bの空調エリア21b内には、無線計測端末24bのみが設置されている。この場合、無線計測端末24bが計測した計測温度Tlbを、室内機2bの代表室温Tnbとする。
Tna=Tla・・・・・・(式3)
Tnb=Tlb・・・・・・(式4)
図13は、代表室温Tna、Tnb、計測温度Tla、Tlb、温度差ΔTa、Tbの関係を示す図である。
図13で示す符号の意味を以下に示す。
計測温度Tla:無線計測端末24aが計測した計測温度。
計測温度Tlb:無線計測端末24bが計測した計測温度。
設定温度Tma:設定端末23aにより設定された空調エリア21aの設定温度。
設定温度Tmb:設定端末23bにより設定された空調エリア21bの設定温度。
代表室温Tna:空調エリア21aの代表室温。
代表室温Tnb:空調エリア21bの代表室温。
温度差ΔTa:設定温度Tmaと代表室温Tnaの温度差。
温度差ΔTb:設定温度Tmbと代表室温Tnbの温度差。
また、この例では、設定温度TmaとTmbは同じ温度が設定されているものとする。
なお、本実施の形態及び以降の説明では、設定温度TmaとTmbを合わせて設定温度Tm、代表室温TnaとTnaを合わせて代表室温Tn、計測温度TlaとTlbを合わせて計測温度Tlと、温度差ΔTaとΔTbを合わせて温度差ΔTと称する場合がある。
図13に示すように、室内機2aの代表室温Tnaと設定温度Tmaの差分をとることにより、温度差ΔTaが算出できる。同様に、室内機2bの代表室温Tnbと設定温度Tmbの差分をとることにより、温度差ΔTbが算出できる。
前述の図5〜図11で説明したように、ΔTaから室内機2aに必要な能力が予測でき、ΔTbから室内機2bに必要な能力が予測できる。例えば冷房運転時は、代表室温Tna、Tnbが設定温度Tma、Tmbより高くなってΔTa、ΔTbが大きくなるほど、必要な能力が増加する。したがって、室内機2aの必要能力を得るために膨張弁7aの開度を制御し、また、室内機2bの必要能力を得るために膨張弁7bの開度を制御する。そして、室内機2a、2bの合計能力に基づいて、圧縮機4の周波数を演算して制御する。
以上のように本実施の形態1に係る空気調和システム300によれば、無線計測端末24aの検出温度に基づいて室内機2aの代表室温Tnaを求め、設定室温Tmaと代表室温Tnaの温度差ΔTaに基づいて室内機2aの空調能力を制御するようにした。このため、居室全体の冷やし過ぎや暖め過ぎを抑制することができる。
また、室内機に無線の通信手段を設けて無線計測端末と通信可能としたので、室内機と無線計測端末の位置関係を検出することができる。また、設定端末23a、23bに無線の通信部を備え、無線計測端末24a、24bと通信可能としたので、設置が容易でメンテナンス性が向上する。
また、室内機2a、2bの代表室温Tna、Tnbを、室内機2a、2bから最も距離が近い無線計測端末の延出温度Tla、Tlbとしたので、各室内機が担う空調エリアの温度を正確に捉えることができる。また、膨張弁や圧縮機の制御も容易となり、室内機が複数の部屋に分かれて設置されていてそれぞれ異なる温度帯にある場合でも、制御可能である。
また、室内機と無線計測端末の距離を自動的に計測して互いを対応付けるようにしたので、室内機の設置場所によらず無線計測端末の設置や設定の作業を容易に行うことができる。
また、大きなフロアなどを空調する場合には、複数の室外機にそれぞれ複数の室内機を接続した空気調和システムを用いることができる。複数の空気調和システムを通信線30で接続し制御することで、空調エリアの温度分布に対して様々な室内機の組み合わせが可能となり、快適性向上と消費電力削減が見込まれる。
実施の形態2.
前述の実施の形態1では、室内機2a、2bと無線計測端末24a、24bを1対1で対応させ、無線計測端末24aの計測温度Tlaを代表室温Tnaとし、無線計測端末24bの計測温度Tlbを代表室温Tnbとする場合について説明した。
本実施の形態2では、任意の位置に設置した無線計測端末24a、24bの検出温度Tla、Tlbに基づいて、代表室温Tna、Tnbを演算により算出する場合の例を説明する。
本実施の形態2においては、図2、図12で示したのと同様に、空調エリア21aには無線計測端末24a、24bが、空調エリア21bには無線計測端末24bが設置されているものとする。
図14は、代表室温Tna、Tnb、設定温度Tma、Tmb、及び温度差ΔTa、ΔTbの関係を示す図である。
図14を参照しつつ、代表室温Tna、Tnbの算出方法を説明する。
室内機2aの下方でかつ床25から1mの位置を基準座標(0,0)とすると、無線計測端末24aの座標は(xa、xb)、無線計測端末24bの座標は(xb、yb)と表現できる。
ここで、空気調和装置200の通信部201は、室内機2a、2bに設置されているものとする。室内機2aは、無線計測端末24a、24bと通信を行い、無線計測端末24a、24bのx座標、y座標と計測温度Tla、Tlbを取得する。
そして、x座標とy座標を説明変数とし、計測温度Tla、Tlbを目的変数として最小二乗法などで回帰分析を行い、次の近似式Tを得る。
T=α+β・x+γ・y・・・・・・(式5)
ここでα、β、γは回帰係数である。
そして、空調エリア21aの中央座標(x2a,y2a)を代表座標として近似式Tに代入し、代表室温Tnaを次式のようにして求めることができる。
また、空調エリア21bの中央座標(x2b,y2b)を代表座標として近似式Tに代入し、代表室温Tnbを次式のようにして求めることができる。
Tna=α+β・x2a+γ・y2a・・・・・・(式6)
Tnb=α+β・x2b+γ・y2b・・・・・・(式7)
室内機2a、2bの空調エリア21a、21bの両方の温度近似式Tを演算すれば、無線計測端末24a、24bを空調エリア内のどこに設置しても代表室温が求められ、安定した制御が可能になる。なお、座標は高さ方向zを含めて式を立ててもよく、近似式Tの次数は上記に限るものではない。
このように、温度の近似式Tを算出し、この近似式に空調エリア21a、21bのそれぞれの代表座標を代入することにより代表室温Tna、Tnbを算出することができる。
また、1箇所の代表座標に基づいて代表室温Tna、Tnbを算出するのではなく、複数の座標に基づいて代表室温Tna、Tnbを算出することもできる。
図15は、空調エリア21の上面配置図である。図15では、白抜きの丸印で示す複数の計算点を設定している。そして、上記近似式Tに各計算点の座標を代入して各計算点の温度を算出し、算出したすべての温度の平均値を求め、これを代表室温Tnaあるいは代表室温Tnbとすることができる。
なお、無線計測端末と室内機の数はそれぞれ2台ずつに限定せず、無線計測端末2台で求めた近似式Tを用いて3台以上の室内機の各代表室温Tnを演算することもできる。また、無線計測端末3台以上で求めた近似式Tを用いて2台の室内機の各代表室温Tnを演算することもできる。
上記のようにして算出した代表室温Tna、Tnbと、設定温度Tma、Tmbに基づいて温度差ΔTa、ΔTbを算出し、前述の実施の形態1で説明したように膨張弁7a、7bの開度及び圧縮機4の周波数を制御する。
以上のように本実施の形態2に係る空調システムによれば、室内機2a、2bの空調エリア21a、21bに設置された無線計測端末24a、24bの計測温度Tla、Tlbに基づいて、温度の近似式Tを算出した。そして、近似式Tを用いて室内機2a、2bの代表室温Tna、Tnbを算出するようにした。このため、無線計測端末24a、24bを空調エリア21内のどの位置に設置した場合でも、代表室温Tna、Tnbを算出することができる。したがって、無線計測端末24a、24bの設置場所を任意の位置に設置することができ、使い勝手が向上する。また、複数の計測温度に基づいて代表室温を算出し、これに基づいた制御を行うことができるので、安定した制御が可能となる。
実施の形態3.
本実施の形態3では、空調エリアに複数の無線計測端末を設置した場合の、代表室温の算出例について説明する。
図16は、本発明の実施の形態3に係る空調エリアの上面配置図である。
図16において、空調エリア21には、4台の無線計測端末24a〜24dが設置されている。無線計測端末24a、24b、24cは空調エリア21aに、無線計測端末24b、24c、24dは空調エリア21bに設置されている。なお、無線計測端末24b、24cは、空調エリア21aと空調エリア21bとが重複する共通空調エリア21abに設置されている。
次に、空調エリア21a、21bの代表室温Tna、Tnbを算出する方法を説明する。
図17(A)は、代表室温Tna、設定温度Tma、及び温度差ΔTaの関係を示す図、図17(B)は、代表室温Tnb、設定温度Tmb、及び温度差ΔTbの関係を示す図である。
図17で示す符号の意味を以下に示す。なお、本実施の形態で特有のもののみ記載する。
計測温度Tlc:無線計測端末24cが計測した計測温度。
計測温度Tld:無線計測端末24dが計測した計測温度。
まず、図17(A)に基づいて室内機2aの代表室温Tnaの算出方法を説明する。
室内機2aの下方でかつ床25から1mの位置を基準座標(0,0)とすると、無線計測端末24aの座標は(xa,ya)、無線計測端末24bの座標は(xb,yb)、無線計測端末24cの座標は(xc,yc)、無線計測端末24dの座標は(xd,yd)と表現できる。
また、無線計測端末24aの計測温度はTla、無線計測端末24bの計測温度はTlb、無線計測端末24cの計測温度はTlc、無線計測端末24dの計測温度はTldと計測される。
ここで、空気調和装置200の通信部201は、室内機2a、2bに設置されているものとする。
代表室温Tnaを算出する際には、室内機2aは、無線計測端末24a〜24dと通信を行い、これらの中から室内機2aの空調エリア21a内にある無線計測端末24a、24b、24cを自動的に選択する。そして、無線計測端末24a、24b、24cのx座標とy座標を説明変数とし、計測温度Tla、Tlb、Tlcを目的変数として最小二乗法などで回帰分析をすることで、次の近似式Taを得る。
Ta=αa+βa・x+γa・y・・・・・・(式8)
ここでαa、βa、γaは回帰係数である。上記式では、室内機2aの真下を原点とするxy座標系で表現される。
空調エリア21aの中央座標(x2a,y2a)を代表座標とすれば、代表室温Tnaは次式のように計算できる。
Tna=αa+βa・x2a+γa・y2a・・・・・・(式9)
同様にして、室内機2bの代表室温Tnaを算出する。室内機2bは、まず、複数の無線計測端末24a〜24dの中から、室内機2bの空調エリア21b内にある無線計測端末24b、24c、24dを自動的に選択する。そして、無線計測端末24b、24c、24dのx’座標とy’座標を説明変数とし、計測温度Tlb、Tlc、Tldを目的変数として最小二乗法などで回帰分析をすることで、次の近似式Tbを得ることができる。
Tb=αb+βb・x’+γb・y’ ・・・・・・(式10)
上記式では、室内機2bの真下を原点とするx’y’座標系で表現される。
空調エリア21bの中央座標(x’2b,y’2b)を代表座標とすれば、代表室温Tnbは次式のように計算できる。
Tnb=αb+βb・x’2b+γb・y’2b・・・・・・(式11)
なお、高さ方向z、z’を含めた座標を用いてもよく、一つの室内機が演算に使用する無線計測端末の数も3個に限らず、近似式Ta、Tbの関数の次数も上記に限らない。
このように、温度の近似式Ta、Tbを算出し、この近似式に空調エリア21a、21bのそれぞれの代表座標を代入することにより代表室温Tna、Tnbを算出することができる。
また、1箇所の代表座標に基づいて代表室温Tna、Tnbを算出するのではなく、複数の座標に基づいて代表室温Tna、Tnbを算出することもできる。
図16で示すように、空調エリア内に複数の計算点を設定し上記近似式Ta、Tbに各計算点の座標を代入して各計算点の温度を算出し、算出したすべての温度の平均値を求め、これを代表室温Tnaあるいは代表温度Tnbとすることもできる。
上記のようにして算出した代表室温Tna、Tnbと、設定温度Tma、Tmbに基づいて温度差ΔTa、ΔTbを算出し、前述の実施の形態1で説明したように膨張弁7a、7bの開度及び圧縮機4の周波数を制御する。
以上のように本実施の形態3に係る空調システムによれば、無線計測端末を、室内機の空調エリア内に複数設け、室内機ごとに温度場の近似式をそれぞれ求め、この近似式に基づいて代表室温を算出するようにした。このため、代表室温の計算精度を向上させることができる。
実施の形態4.
本実施の形態4では、空調エリア内に複数の無線計測端末を設置した場合の、代表室温を算出する他の例について説明する。
図18は、本発明の実施の形態4に係る空調エリアの上面配置図である。空調エリア21には、4台の無線計測端末24a〜24dが設置されている。無線計測端末24a、24b、24cは空調エリア21aに、無線計測端末24b、24c、24dは空調エリア21bに設置されている。なお、無線計測端末24b、24cは、空調エリア21aと空調エリア21bとが重複する共通空調エリア21abに設置されている。
まず、室内機2aの代表室温Tnaの算出方法を説明する。空調エリア21a内に設置された無線計測端末24a、24b、24cと室内機2aの空調エリア21aの中央座標(x2a,y2a)との距離La、Lb、Lcを計測する。そして、距離La、Lb、Lcの逆数で重み付けした無線計測端末24a、24b、24cの計測温度Tla、Tlb、Tlcを、代表室温Tnaとする。
また、室内機2bの代表室温Tnbも同様に、無線計測端末24b、24c、24dの距離Lb、Lc、Ldに基づいて代表室温Tnbを算出する。
Tna=(Tla・Ia+Tlb・Ib+Tlc・Ic)/(Ia+Ib+Ic)・・・・・・(式12)
Tnb=(Tlb・Ib+Tlc・Ic+Tld・Id)/(Ib+Ic+Id)・・・・・・(式13)
Ia=1/La
Ib=1/Lb
Ic=1/Lc
Id=1/Ld
上記のようにして算出した代表室温Tna、Tnbと、設定温度Tma、Tmbに基づいて温度差ΔTa、ΔTbを算出し、前述の実施の形態1で説明したように膨張弁7a、7bの開度及び圧縮機4の周波数を制御する。
以上のように本実施の形態4によれば、統計的に妥当な値を代表室温Tnとして算出することができる。
実施の形態5.
本実施の形態5では、ユーザの居場所を検知するための人感センサーを設け、人感センサーの検出結果に応じて空調制御を行う場合の実施の形態について説明する。本実施の形態5では、前述の実施の形態1〜4と同様、空調エリア21内に複数の無線計測端末を設置しているものとする。
図19は、実施の形態5に係る空調エリアの上面配置図である。図19では、人感センサー41a、41bを空調エリア21a、21b内にそれぞれ配置している。また、人40a、40bの位置を図示している。
人感センサー41a、41bは、人の居場所を検知するためのセンサーである。人感センサーの種類としては、サーモパイル、パイロ、ボロメータなどを用いることができる。この場合、複数の固定素子を縦横に並べて空調エリアの温度を2次元で計測するか、あるいは素子の向きをステッピングモータなどで回転駆動させて空調エリアの温度を計測してもよい。人は周囲の壁や床よりも高温のため、居場所を判別することができる。
図19の構成において、人感センサー41aが人40aを検知すると、人40aの居場所に最も近い無線計測端末24aの温度Tlaを、代表室温Tnaとする。そして、設定端末23aの設定温度Tmaと代表室温Tnaとの温度差ΔTaに基づいて、膨張弁7aの開度と圧縮機4の周波数を制御する。
人感センサー41aが複数の人を検知した場合には、それぞれの人に近い無線計測端末を抽出し、複数の無線計測端末の位置座標とその計測温度に基づいて、温度近似式を立てるなどして代表室温Tnaを算出する。そして、代表室温Tnaと設定温度Tmaの温度差ΔTaに基づいて空調制御する。
以上のように本実施の形態5に係る空調システムによれば、空調エリア内に人感センサーを設置し、人感センサーが人を検出した場所に最も近い無線計測端末の計測温度に基づいて代表室温Tnを算出するようにした。このため、人の居場所付近に対して集中的に空調能力を制御することができる。したがって、人の不在領域に対して無駄に空調を行うのを避けることができ、消費電力量を低減することができる。また、人の居場所を重点的に空調することができるので、設定温度に到達するまでの時間を短縮することができ、快適性を向上させることができる。
実施の形態6.
前述の実施の形態1〜実施の形態5では、空調エリアに複数の無線計測端末を設置し,無線計測端末の計測温度に基づいて代表室温を算出する場合の例について説明した。本実施の形態6では、無線計測端末を1台設置するとともに、各室内機に吸込み温度センサーを設けて、代表室温を算出する場合の例について説明する。
図20は、実施の形態6に係る多室形の空気調和装置の冷媒回路図である。前述の実施の形態1の図1で述べた冷媒回路図とほぼ同じであるが、吸込み空気温度センサー13a、13bを設けた点が異なる。
吸込み空気温度センサー13a、13bは、室内機2a、2bが吸い込む空気の温度を検出する温度検出手段であり、室内機2a、2bの空気吸込口の近傍に設置されている。
図21は、空気調和装置200、設定端末23a、23b、無線計測端末24aの制御機能及び通信機能に関する機能ブロック図である。前述の実施の形態1の図3で述べた図とほぼ同じであるが、無線計測端末24aが1台のみである点、空気調和装置200が吸込み空気温度センサー13a、13bを備えている点が異なる。
吸込み空気温度センサー13a、13bが検出した温度は、Tn演算部202に出力される。Tn演算部202は、吸込み空気温度センサー13a、13bの出力温度に基づいて、後述する方法により室内機2a、2bの代表室温Tna、Tnbを算出する。
図22は、室内機2a、2bの空調エリア21を上面から見た上面配置図である。前述の実施の形態1の図12で述べた上面配置図とほぼ同じであるが、無線計測端末24aが1台のみ設置されている点が異なる。無線計測端末24aは、室内機2aの空調エリア21a内に設置されている。
次に、空調エリア21a、21bの代表室温Tna、Tnbの算出方法について説明する。
図23は、代表室温Tna、Tnb、設定温度Tma、Tmb、及び温度差ΔTa、ΔTbの関係を示す図である。
図23で示す符号の意味を以下に示す。なお、本実施の形態で特有のもののみ記載する。
吸込み空気温度Tka:吸込み空気温度センサー13aが計測した吸込み空気温度。
吸込み空気温度Tkb:吸込み空気温度センサー13bが計測した吸込み空気温度。
温度差ΔTua:計測温度Tlaと吸込み温度Tkaの温度差。
まず、室内機2aの空調エリア21aの代表室温Tnaの算出方法について説明する。
代表室温Tnaは、空調エリア21aに設置されている無線計測端末24aの計測温度Tlaをそのまま用いる。すなわち、代表室温Tnaは次式で表される。
Tna=Tla・・・・・・(式14)
次に、室内機2bの空調エリア21bの代表室温Tnbの算出方法について説明する。
まず、無線計測端末24aの計測温度Tlaと、室内機2aの吸込み空気温度センサー13aが検出した吸込み空気温度Tkaとの温度差ΔTuaを求める。
ΔTua=Tka−Tla・・・・・・(式15)
そして、室内機2bの代表室温Tnbは、次式で表すように、吸込み空気温度センサー13bが検出した吸込み空気温度TkbからΔTuaを引いた値とする。
Tnb=Tkb−ΔTua・・・・・・(式16)
すなわち、空調エリア21bに無線計測端末を配置して温度を計測したとすると、その計測温度と吸込み温度Tkbとの間には、温度差ΔTuaと同じ温度差が生じると仮定して、代表室温Tnbを算出するのである。
なお、温度差ΔTuaは自然対流の影響や室内機の吹き出し口の形状、風量、空調エリアに滞在する人数、OA機器や照明、窓からの日射、室内機の設置状況に応じて変化する。
上記のようにして算出した代表室温Tna、Tnbと、設定温度Tma、Tmbに基づいて温度差ΔTa、ΔTbを算出し、前述の実施の形態1で説明したように膨張弁7a、7bの開度及び圧縮機4の周波数を制御する。
以上のように本実施の形態6に係る空気調和システムによれば、1台の無線計測端末と、室内機の吸込み空気温度に基づいて、複数の室内機の空調エリアの代表室温を求めた。無線計測端末は1台でよいので、設置が容易であるとともに設置費用を低廉に抑えることができる。
また、1台の室内機の吸込み空気温度と無線計測端末の検出温度との温度差に基づいて、他の室内機の空調エリアの代表室温を算出するようにした。この方法は、演算量が少ないため、Tn演算部202を簡易で安価な構成とすることができる。
実施の形態7.
本実施の形態7では、無線計測端末を1台設置するとともに、各室内機に吸込み温度センサーを設けて、代表室温を算出する場合の他の例について説明する。本実施の形態7では、吸込み空気温度センサー13a、13bのxy座標と、吸込み空気温度センサー13a、13bが検出した吸込み空気温度Tka、Tkbの温度に基づいて、空調エリア21a、21bの代表室温Tna、Tnbを算出する。
図24は、代表室温Tna、Tnb、設定温度Tma、Tmb、温度差ΔTa、ΔTb、及び吸込み空気温度Tka、Tkbの関係を示す図である。
図24で示す符号の意味を以下に示す。なお、本実施の形態で特有のもののみ記載する。
吸込み空気温度Tka:吸込み空気温度センサー13aが計測した吸込み空気温度。
吸込み空気温度Tkb:吸込み空気温度センサー13bが計測した吸込み空気温度。
温度T13la:近似式T13(後述する)により算出した無線計測端末24aの情報の温度。
温度差ΔTua:計測温度Tlaと温度T13laの温度差。
代表室温Tna、Tnbの算出方法を説明する。
まず、吸込み空気温度センサー13a、13bにより吸込み温度Tka、Tkbを計測する。
吸込み空気温度センサー13aの位置を原点とするxy座標系において、吸込み空気温度センサー13a、13bの位置座標を説明変数、吸込み空気温度Tka、Tkbを目的変数として最小二乗法などで回帰分析を行い、次の近似式T13を得る。
T13=α13+β13・x+γ13・y・・・・・・(式17)
次に、無線計測端末24aの直上の座標の温度T13laを求める。具体的には、吸込み空気温度センサー13aの位置を原点とするxy座標系における無線計測端末24aの座標を、上記近似式T13に代入する。
T13la=α13+β13・xa+γ13・ya・・・・・・・(式18)
そして、T131aと無線計測端末24aの計測温度Tlaとの差を、ΔTuaとする。
ΔTua=T13la−Tla・・・・・・(式19)
そして、代表室温Tna、Tnbは、吸込み空気温度センサー13aが検出した吸込み空気温度Tka、Tkbから、ΔTuaを引いて次式により算出する。
Tna=Tka−ΔTua・・・・・・(式20)
Tnb=Tkb−ΔTua・・・・・・(式21)
このようにすることで、無線計測端末24aの計測温度Tla、及び吸込み空気温度Tka、Tkbに基づいて代表室温Tna、Tnbを算出することができる。
あるいは、上記近似式T13からΔTuaを引いた以下の第二の近似式T13’を求める。
T13’=α13+β13・x+γ13・y−ΔTua・・・・・・(式22)
そして、この第二の近似式T13’に代表座標(空調エリア21aの中央座標(x2a,y2a)、空調エリア21bの中央座標(x2b,y2b))の座標を代入して次式により代表室温Tna、Tnbを算出することもできる。
Tna=α13+β13・x2a+γ13・y2a−ΔTua・・・・・・(式23)
Tnb=α13+β13・x2b+γ13・y2b−ΔTua・・・・・・(式24)
上記のようにして算出した代表室温Tna、Tnbと、設定温度Tma、Tmbに基づいて温度差ΔTa、ΔTbを算出し、前述の実施の形態1で説明したように膨張弁7a、7bの開度及び圧縮機4の周波数を制御する。
以上のように本実施の形態7によれば、吸込み空気温度の近似式を求め、この近似式に基づいて空調エリアの代表室温を算出するようにした。このため、さまざまな場所に代表座標を設定しても代表室温を算出することができ、算出精度を向上させることができる。
実施の形態8.
本実施の形態8では、空気調和システム300の運用開始前の段階で各空調エリアにおける無線計測端末による温度計測を行っておき、運用開始後は前記温度計測の結果に基づいて代表室温を算出する例を説明する。なお、本実施の形態8及び本発明において、空気調和システムの「運用開始前」とは、室外機1や室内機2a、2bなどの空気調和システムを構成する構成要素を設置して試運転を行っている状態をいうものとする。
本実施の形態8では、前述の実施の形態7と同様に、1台の無線計測端末24aを用いるとともに、室内機2a、2bの空気吸込口の近傍には吸込み空気温度センサー13a、13bが設置されているものとする。
空調システムの運用開始前の段階において、無線計測端末24aを室内機2aの空調エリア21aに設置して計測温度Tlaを計測するとともに、吸込み空気温度Tkaを計測し、両者の温度差ΔTua’を次式により算出する。そして、同じ条件で、室内機2bの空調エリア21bに無線計測端末24aを設置して検出温度Tlaを得るとともに、吸込み空気温度Tkbを得て、両者の温度差ΔTub’を次式により算出しておく。
ΔTua’=Tla−Tka・・・・・・(式25)
ΔTub’=Tlb−Tkb・・・・・・(式26)
そして、空調システムの運用を開始する際は、無線計測端末24aを空調エリア21aの所定の位置に設置して、無線計測端末24aが空調エリア21aの温度を検出するようにする。
空調システムの通常運転を開始した後は、空調エリア21aの代表室温Tnaは、前述の実施の形態6又は実施の形態7で述べたいずれかの方法により算出する。
空調エリア21bの代表室温Tnbは、予め算出した上述のΔTua’とΔTub’の関係式と、吸込み空気温度センサー13bの吸込み空気温度Tkbに基づいて、次式により算出する。
ΔTub=ΔTua・ΔTub’/ΔTua’・・・・・・(式27)
Tnb=Tkb−ΔTub・・・・・・(式28)
なお、ΔTubの算出方法は、上記式に限定されるものではなく、ΔTuaとΔTua’、ΔTub’の関係を表す演算式により算出することができる。
上記のようにして算出した代表室温Tna、Tnbと、設定温度Tma、Tmbに基づいて温度差ΔTa、ΔTbを算出し、前述の実施の形態1で説明したように膨張弁7a、7bの開度及び圧縮機4の周波数を制御する。
以上のように本実施の形態8によれば、予め無線計測端末により各空調エリアの温度と吸込み温度を計測して両者の温度差を求め、運用時にはその温度差に基づいて無線計測端末が設置されていない空調エリアの代表室温を算出するようにした。このため、運用時には1台の無線計測端末しか用いなくとも、各室内機の代表室温を算出することができる。無線計測端末の計測温度と吸込み温度の温度差は、建物の構造や室内機の設置場所によって異なるが、このような場合でも、予め実測した値に基づいて代表室温を補正するので、代表室温の算出精度を高めることができる。
実施の形態9.
本実施の形態9では、前述の実施の形態1〜実施の形態8で説明したいずれかの方法で空調エリア21a、21bの代表室温Tna、Tnbを算出しているものとして、快適な空調を実現するための制御方法について説明する。特に本実施の形態9では、空調エリアがペリメーターゾーンであるか否かを考慮して空調制御を行う例を説明する。なお、本実施の形態9は、前述の実施の形態1〜実施の形態8と組み合わせて実施することができる。
まず、すべての空調エリアの代表室温の平均値を求める。そして、各空調エリアの代表室温が、平均値から所定値以上離れているか否かにより、ペリメーターゾーンを特定する。例えば、空調エリア21bの代表室温Tnbが、代表室温の平均値よりも所定値以上高温であれば、日射などの影響を受けて高温となっているペリメーターゾーンであると判断できる。
日射を受ける面は熱放射で高温になるので、実測される気温以上に人は暖かく感じる。このため、冷房運転時は、設定温度Tmbと代表室温Tnbの温度差ΔTbに基づいて求めた空調能力よりも能力を増加させることにより涼しくする必要がある。他方、暖房運転時には、温度差ΔTbに基づいて求めた空調能力よりも能力を減少させても足りる。
空調能力を調節するため、温度差ΔTbに、冷房運転時と暖房運転時とでそれぞれ所定の補正係数C1、C2を掛け、次式により温度差ΔTbを補正する。
冷房運転時:ΔTb=C1(Tnb−Tmb)・・・・・・(式29)
暖房運転時:ΔTb=C2(Tnb−Tmb)・・・・・・(式30)
ただし、C1>1、0≦C2≦1。
また、各室内機の空調エリアの代表室温を比較して日射の有無(ペリメーターゾーンか否か)を判定するので、無線計測端末の個数に関係なく判定することができる。
なお、前述の実施の形態6〜実施の形態8で述べたように吸込み空気温度センサー13a、13bを用いる場合には、代表室温Tnbの代わりに、吸込み空気温度Tkbを用いて上記温度差ΔTbを算出してもよい。
また、前述の実施の形態3、実施の形態4のように各室内機の空調エリアに複数の無線計測端末を設置する場合には、各室内機の空調エリア内に設置された無線計測端末の計測温度が、無線計測端末の計測温度の平均値より所定値以上離れているか否かによりペリメーターゾーンを特定してもよい。例えば、室内機2bの空調エリア21bに設置された無線計測端末24b、24dの検出温度Tlb、Tldが、無線計測端末24a〜24dの検出温度Tla〜Tldの平均値よりも所定値以上高温であれば、空調エリア21bがペリメーターゾーンであると判断する。
このように、空調エリア内に複数設置された無線計測端末の検出温度に基づいて日射の有無(ペリメーターゾーンか否か)を判定するので、判定精度が高い。また、無線計測端末の設置数を増加させることにより、より精度の高い判定を行うことができる。
また、前述の実施の形態2、実施の形態3、実施の形態7で述べたように、温度の近似式を用いて代表室温Tna、Tnbを算出する場合には、その近似式を用いて高温部を求め、ペリメーターゾーンであるか否かを判定することもできる。
また、時刻や天気情報と、無線計測端末の検出温度を同期させて、ペリメーターゾーンを判定することもできる。例えば、晴天の昼間に無線計測端末の温度や吸込み空気温度が所定値以上の高温であれば、その無線計測端末もしくは吸込み空気温度センサーが設置された空調エリアがペリメーターゾーンであると判定する。
また、実施の形態1〜実施の形態5で述べたように空調エリア21に複数の無線計測端末を設置する場合には、無線計測端末に日射センサーを設け、日射センサーの検出結果に基づいてペリメーターゾーンであるか否かを判定することもできる。
このようにして特定したペリメーターゾーンに該当する空調エリアについては、温度差ΔTの補正を行うようにする。そして、このように補正して得た温度差ΔTbに基づいて、膨張弁7a、7bの弁開度及び圧縮機4の周波数を制御することにより空調能力を制御する。
また、ペリメーターゾーンとなる空調エリアに対応する室内機を判別した場合には、温度差ΔTを補正するだけでなく、風量を増加するよう運転制御してもよい。あるいは、風向をペリメーターゾーンに向けるよう運転制御してもよい。
以上のように本実施の形態9に係る空調システムによれば、無線計測端末の計測温度もしくは吸込み空気温度に基づいて、空調エリアにペリメーターゾーンが存在するか否かを判定するようにした。そして、ペリメーターゾーンがある場合には、暖房運転時と冷房運転時とでそれぞれ所定の補正係数を温度差ΔTに掛けてΔTを補正し、温度差ΔTに基づいて運転制御を行うこととした。このため、日射を考慮した空調能力の補正ができユーザの快適性を向上させることができる。
実施の形態10.
本実施の形態10では、前述の実施の形態9で説明したペリメーターゾーンのように、設定温度Tmに対して適切な温度調節ができていない場所が存在する場合において、代表室温Tna、Tnbを算出する方法を説明する。なお、前述の実施の形態9で述べた方法により、ペリメーターゾーンを特定しているものとする。また、前述の実施の形態6〜実施の形態8で説明したのと同様に、無線計測端末を1台設置するとともに、各室内機に吸込み温度センサーを設けているものとして説明する。
図25は、本実施の形態10に係る空調エリア21の上面配置図である。図25では、空調エリア21aがペリメーターゾーンであるものとする。
無線計測端末24aは、温度調節が適切に行えていないペリメーターゾーンに設置する。
そして、無線計測端末24aと空調エリア21aの代表座標との距離をL1、無線計測端末24aと空調エリア21bの代表座標との距離をL2とする。なお、本実施の形態10では、代表座標は空調エリアの中央座標とする。
そして、距離L1と所定の基準値Lとを比較し、0≦L1≦Lであれば次式により代表室温Tnaを算出する。
同様に、距離L2と所定の基準値Lとを比較し、0≦L2≦Lであれば次式により代表室温Tnbを算出する。
[0≦L1≦L の場合]
Tna=Tla(1−L1/L)+Tka(L1/L)・・・・・・(式31)
[0≦L2≦L の場合]
Tnb=Tla(1−L2/L)+Tkb(L2/L)・・・・・・(式32)
また、L1>L、あるいはL2>Lであれば、次式により代表室温Tna、Tnbを算出する。
[L1>L の場合]
Tna=Tka・・・・・・(式33)
[L2>L の場合]
Tnb=Tkb・・・・・・(式34)
上記のようにすると、無線計測端末24aと室内機の距離L1、L2が小さい場合には、代表室温Tna、Tnbは無線計測端末24aの温度に近づく。他方、距離L1、L2が離れるほど代表室温Tna、Tnbは室内機の吸込み空気温度Tka、Tkbに近づくこととなる。
上記のようにして算出した代表室温Tna、Tnbと、設定温度Tma、Tmbに基づいて温度差ΔTa、Tbを算出し、前述の実施の形態1で説明したように膨張弁7a、7bの開度及び圧縮機4の周波数を制御する。
温度調節が適切でない箇所(室内機の吸込み空気温度が居室の温度と異なっている箇所)に無線計測端末24aを設置すれば、無線計測端末24a近辺が重点的に能力補正され、その他のエリアは通常制御を維持することができる。
以上のように本実施の形態10によれば、空調制御が適切でない場所に無線計測端末を設置し、無線計測端末と空調エリアの中心点からの距離に応じて代表室温を算出するようにした。このため、ペリメーターゾーンなど空調制御が適切でない場所は重点的に能力補正して空調制御するとともに、他の領域は通常制御で運転することができる。したがって、無駄な空調を省き、消費電力量を削減することができるとともに快適性を向上させることができる。
実施の形態11.
本実施の形態11では、空調エリア21aと空調エリア21bが重複する領域である共通空調エリア21abの空調制御について説明する。
まず、共通空調エリア21abの代表温度Tnabの算出方法について説明する。
前述の実施の形態1〜実施の形態5で述べたように空調エリア21内に複数の無線計測端末を設置する場合には、共通空調エリア21ab内に設置された無線計測端末(図16の例では無線計測端末24b、24c)の計測温度の平均値を、次式により代表温度Tnabとすることができる。
Tnab=(Tlb+Tlc)/2・・・・・・(式35)
また、前述の実施の形態2、実施の形態3、実施の形態7で述べたように温度場の近似式を用いて代表室温Tna、Tnbを算出する場合には、その近似式に共通空調エリア21abの代表座標(xab,yab)を代入して求めた計算温度を、代表温度Tnabとすることができる。
ただし、室内機2a側の近似式と室内機2b側の近似式とは異なる座標軸であるため、各近似式に代入する代表座標(xab,yab)の値は、座標軸に合わせた値をそれぞれ算出する必要がある。また、室内機2a側の近似式と室内機2b側の近似式とにより求めた計算温度が異なる場合には、両者の平均値を代表温度Tnabとすることができる。
[近似式Tを用いて算出する場合]
Tnab=T(xab,yab)=α+β・xab+γ・yab・・・・・・(式36)
[近似式Ta、Tbを用いて算出する場合]
Tnab=Ta(xab,yab)=αa+βa・xab+γa・yab・・・・・・(式37)
Tnab=Tb(xab,yab)=αb+βb・xab+γb・yab・・・・・・(式38)
[近似式T13’を用いて算出する場合]
Tnab=T13’(xab,yab)=α13+β13・xab+γ13・yab− ΔTua・・・・・・(式39)
また、空調エリア21aの代表室温Tnaと、空調エリア21bの代表室温Tnbの平均値を、次式により代表温度Tnabとすることができる。
Tnab=(Tna+Tnb)/2・・・・・・(式40)
また、前述の実施の形態6〜実施の形態8で述べたように空調エリア21内に1台の無線計測端末を設置する場合には、共通空調エリア21abに設置し、その無線計測端末の計測温度を、代表温度Tnabとすることができる。
次に、共通空調エリア21abの設定温度Tmabについて説明する。
共通空調エリア21abの設定温度Tmabは、次式に示すように室内機2aの設定温度Tmaと室内機2bの設定温度Tmbの平均値とする。
Tmab=(Tma+Tmb)/2・・・・・・(式41)
そして、代表温度Tnabと設定温度Tmabの温度差を、ΔTabとする。
ΔTab=Tnab−Tmab・・・・・・(式42)
ここまでの説明で、共通空調エリア21abの代表温度Tnab、設定温度Tmab、両者の温度差ΔTabを求めた。
次に、共通空調エリア21abの空調制御について説明する。
室内機2a、2bの空気吹出口には、上下左右の気流方向や風量を調整するためのモータ駆動のルーバーやベーン(図示せず)を設ける。
冷房運転時において、ΔTabが所定値以下に低下した場合には、室内機2a、2bの風向きを制御して、共通空調エリア21abに到達する風量を低下させる。もしくは、風向きは変えずに室内機2a、2bの風量を減少させる。このようにすることで、冷房運転時における共通空調エリア21abの過度な温度低下を抑制することができる。
また、冷房運転時において、ΔTabが所定値以上に上昇した場合には、室内機2a、2bの風向きを略水平にして、共通空調エリア21abに到達する風量を増加させる。もしくは、風向きは変えずに室内機2a、2bの風量を増加させる。このようにすることで、共通空調エリア21abの気温を低下させることができる。
また、暖房運転時において、ΔTabが所定値以下に低下した場合には、室内機2a、2bの風向きを略水平にして、共通空調エリア21abに到達する風量を増加させる。もしくは、風向きは変えずに室内機2a、2bの風量を増加させる。このようにすることで、共通空調エリア21abの気温を上昇させることができる。
また、暖房運転時において、ΔTabが所定値以上に上昇した場合には、室内機2a、2bの風向きを制御して、共通空調エリア21abに到達する風量を低下させる。もしくは、風向きは変えずに室内機2a、2bの風量を減少させる。このようにすることで、共通空調エリア21abの過度な温度上昇を抑制することができる。
このように、冷房運転時及び暖房運転時において、ΔTabの値に応じて室内機2a、2bの風向もしくは風量を制御することで、代表温度Tnabと設定温度Tmabを近づけることができる。このため、ユーザの快適性を向上させることができる。
以上のように実施の形態11に係る空調システムによれば、複数の室内機の空調エリアが重複する領域については、その複数の室内機の風向や風量を制御して空調を行うようにした。このため、重複する領域の温度分布のばらつきを効率よく縮小することができ、ユーザの快適性を向上させることができる。
実施の形態12.
本実施の形態12では、隣接する2つの空調エリアにおいて、空調エリアの温度状態に応じて各室内機の運転状態を制御する場合の動作を説明する。なお、本実施の形態12は、前述の実施の形態1〜実施の形態11と組み合わせて実施することができる。
隣接する空調エリア21a、21bにおいて、室内機2a、2bが同じ大きさの能力で冷房運転を行っている場合を想定する。
ここで、空調エリア21bの空気温度の方が空調エリア21aの空気温度よりも大きくなった場合、すなわちΔTbがΔTaよりも所定値以上大きい場合には、室内機2aの冷房能力Qeaよりも室内機2bの冷房能力Qebの比率の方が増加することとなる。
このようにΔTbが増加すると、室内熱交換器8bの冷媒流量は増加するが、室内熱交換器8bの大きさと室内熱交換器8bに送風される風量によって冷媒が蒸発しきることのできる冷媒流量には限界がある。すなわち、室内機2bの冷房能力Qebだけで空調エリア21bの空調を行うには限界があり、長時間を要する場合がある。このため、室内機2aの冷房能力Qeaによって、空調エリア21bの空調を補う。
具体的には、室内機2a側の室内熱交換器8aの冷媒流量を増加させる。このようにすることで、圧縮機4の冷媒流量を増加させることができ、圧縮機4の吸入SHを減少し冷凍サイクルのCOPが向上する。
室内機2a、2bの定格能力をQea0、Qeb0とすると、室内機2a、2bの能力比率Ra、Rbは次式のように表すことができる。
Ra=Qea/Qea0・・・・・・(式43)
Rb=Qeb/Qeb0・・・・・・(式44)
ここで、空気調和装置200全体で冷房能力Qeを得ようとする場合、冷房能力Qeは次式で表すことができる。
Qe=Qea+Qeb・・・・・・(式45)
所定の冷房能力Qeを出す際、能力比率Ra、Rbに偏りがある運転状態よりも能力比率Ra、Rbが同程度の運転状態の方が効率がよい。
したがって、ΔTbがΔTaより所定値以上大きい場合、室内機2aの空気吹き出し口を水平向きにするなど制御して、空調エリア21aを空調エリア21b側に拡大し、室内機2bは空気吹き出し口を下向きにするなど制御して空調エリア21bを縮小する。
図26は、空調エリア21aを拡大し、空調エリア21bを縮小した場合の上面配置図である。図26に示すように、空調エリア21aを拡大することにより、室内機2aはより広い範囲を空調対象とする。
空調エリア21bはその領域が縮小されるので、室内機2bは狭い空間に冷気を流せばよい。このため、空調エリア21bは冷えやすくなり、段階的にΔTbは減少する。同時に、空調エリア21aは領域が拡大されるので、室内機2aは広い空間に冷気を流さなくてはならない。このため、空調エリア21aは空調エリア21bと比較して冷えにくくなり、全体的に温度が上昇傾向となってΔTaが増加する。
そして、ΔTaとΔTbの差が所定値以下となったら、室内機2a、2bの空気吹出口の風向を元の状態に戻し、空調エリア21a、21bの領域を初期状態に戻す。
次に、空調エリア21aと空調エリア21bの重複領域である共通空調エリア21abの空調制御について説明する。
室内機2aの代表室温Tnaが設定温度Tmaに達していても、ΔTbが所定値以上大
きい場合であって、共通空調エリア21abの代表温度Tnabが設定値Tmabに未達な場合には、室内機2aを強制的に運転し、共通空調エリア21abの空調を補助してもよい。このとき、室内機2aの気流を共通空調エリア21abに向けると、代表室温Tnbが設定温度mbに達するまでの時間を短縮することができるとともに、室内機2aの近傍エリアが能力過多となるのを抑制することができる。
以上のように本実施の形態12に係る空調システムによれば、隣接する室内機が連動して空調エリアの空調を行うようにした。このため、高負荷な空調エリアに対して急速に温度調節することができるので、快適性を向上させることができる。また、ある負荷を1台の室内機の熱交換器と風量で処理するよりも、複数台分の熱交換器と風量で処理する方が、冷凍サイクルの効率が高い。複数の室内機を同時に運転すると運転中の入力は増加することとなるが、この入力増加以上に運転効率を向上させることができるので、空調システム全体の消費電力量を削減することができる。
実施の形態13.
本実施の形態13では、各室内機の空調エリア内において、その空調エリア内における高温部と低温部を探索し、探索結果に基づいて空調制御を行う動作例を説明する。
まず、高温部と低温部の探索方法を説明する。
前述の実施の形態1〜実施の形態5で述べたように空調エリア21内に複数の無線計測端末を設置する場合には、各室内機の空調エリア内に設置された無線計測端末の計測温度と所定の閾値とを比較して高温部と低温部を探索する。例えば、冷房運転時において、無線計測端末24cの計測温度Tlcが所定の閾値以上であれば、無線計測端末24cの位置を高温部として特定する。
また、空調エリア21を複数に分割し、分割した領域ごとの無線計測端末の計測温度の平均値を算出する。そして、空調エリア21全体の平均温度と、分割した領域ごとの平均温度とを比較し、両者の差分に応じて高温部と低温部を特定することもできる。
また、複数の無線計測端末の中で最高温度を検出した無線計測端末が設置された場所を高温部とし、最低温度を検出した無線計測端末が設置された場所を低温部とすることもできる。
また、前述の実施の形態2、実施の形態3、実施の形態7で述べたように温度場の近似式を用いて代表室温Tna、Tnbを算出する場合には、その近似式に基づいて高温部と低温部を探索することもできる。
温度の近似式に、空調エリア内の任意の計算点の座標を代入して温度を計算し、各計算点の温度の中から最高温度と最低温度を抽出することによって、高温部と低温部を探索することができる。
また、各計算点の温度の平均値を求め、平均値よりも所定値以上高い計算温度の計算点の座標を高温部とし、平均値よりも所定値以上低い計算温度の計算点の座標を低温部とすることもできる。
また、空調エリアを複数に分割し、分割した領域ごとの計算点の計算温度の平均値を算出する。そして、空調エリア21全体の計算温度の平均温度とを比較し、両者の差分に応じて高温部と低温部を特定することもできる。
上記のようにして高温部と低温部を探索した後は、探索結果に応じて風量及び/又は風向の制御を行う。
冷房運転時において、探索した高温部の温度が閾値よりも所定値以上高い場合には、無線計測端末24cの方向に気流を向けるよう制御する。逆に、探索した低温部の温度が閾値よりも所定値以上低い場合には、無線計測端末24c方向へ気流が行かないように制御する。
また、暖房運転時において、探索した高温部の温度が閾値よりも所定値以上高い場合には、無線計測端末24cの方向に気流を向けないよう制御する。逆に、探索した低温部の温度が閾値よりも所定値以上低い場合には、無線計測端末24c方向へ気流を向けるよう制御する。
また、室内機の吹出口が、水平四方向、あるいはラウンド状に吹き出す方式の場合には、無線計測端末24cの方向の吹出口を広く開け、その他の吹出口を狭くすることで、優先的に無線計測端末24cの方向に風量を送ることができる。
空調エリア内の温度勾配が緩やかな場合は風向エリアを広く設定し、温度勾配が急な場合は風向エリアを狭く設定してもよい。
以上のように本実施の形態13に係る空調システムによれば、空調エリア内における高温部と低温部を推定し、その結果に応じて風向や風量を制御するようにした。このため、空調エリア内の特定の箇所を局所的に空調制御できるので、ユーザの快適性を向上させることができる。また、空調状態に応じて局所的に空調制御するので、無駄な空調を低減させることができ、消費電力量を削減することができる。
実施の形態14.
本実施の形態14では、前述の実施の形態6〜実施の形態8で述べたように吸込み空気温度を検出する場合において、吸込み空気温度Tkと代表室温Tnとに基づいて、空調エリアの上下方向における空調制御を行う場合の動作例を説明する。なお、本実施の形態14は、前述の実施の形態6〜8と組み合わせて実施することができる。
まず、空調エリア21a、21bにおける、上下方向(天井側と床側)の温度差を検出する方法を説明する。
空気調和装置200は、室内機2aの空調エリア21aにおける吸込み空気温度Tkaと代表室温Tnaの温度差ΔTua及び、室内機2bの空調エリア21bにおける吸込み空気温度Tkbと代表室温Tnbの温度差ΔTubを次式により所定周期で算出する。
ΔTua=Tka−Tna・・・・・・(式46)
ΔTub=Tkb−Tnb・・・・・・(式47)
冷房運転時において、例えばΔTuaが所定値以下に低下した場合には、吸込み空気温度センサー13aが設置された場所、すなわち、室内機2aが設置された天井付近が冷えていると判断できる。この場合には、室内機2aの空気吹出口からの気流方向を下に向けて下方向に風を送ることで、空調エリア21a内の上下方向の温度差を解消することができる。室内機2bの風向制御も同様にΔTubに基づいて行うことができる。
また、暖房運転時において、例えばΔTuaが所定値以上に上昇した場合には、吸込み空気温度センサー13aが設置された場所、すなわち、室内機2aが設置された天井付近が暖まっていると判断できる。この場合には、室内機2aの空気吹出口からの気流方向を下方向に向けて風を送ることで、空調エリア21a内の上下方向の温度差を解消することができる。室内機2bの風向制御も同様にΔTubに基づいて行うことができる。
また、冷房運転時及び暖房運転時において、ΔTua、ΔTubの値が所定値以下の場合には、上下方向に温度のばらつきが少ないと判断できる。この場合は、天井付近に向けて送風するよう室内機の風向を制御してもよい。このようにすることで、ユーザに直接風が当たりにくくすることができるので、ユーザの快適性を向上させることができる。
以上のように本実施の形態14によれば、吸込み空気温度と代表室温との温度差に応じて空調エリアの上下方向の温度差を検出し、この温度差に応じて室内機の吹き出し方向を制御するようにした。このため、天井近傍に滞留した冷気や暖気を、ユーザがいる空間へ効率的に送風することができる。したがって、空調効率を高めることができ、省エネルギー効果を向上させることができる。また、上下方向の温度差が少ない場合には天井付近に気流を吹き出すようにすることで、ユーザに直接気流を当てることがなく、ユーザの快適性を向上させることができる。
実施の形態15.
本実施の形態15では、無線計測端末内に、温度センサーだけでなく、湿度センサー、風速センサー、グローブ温度計、日射センサーを設けて、これらセンサーの検出結果に応じて空調制御を行う場合の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態15は、前述の実施の形態1〜14と組み合わせて実施することができる。
図27は、本発明の実施の形態15に係る空調システムの、空気調和装置200、設定端末23a、23b、無線計測端末24a、24bの制御機能及び通信機能に関する機能ブロック図である。図27では、無線計測端末に湿度センサー246、風速センサー247、グローブ温度計248、日射センサー249を設けている。
このような構成において、快適性指標SET* やPMVを演算する。快適性指標SET* やPMVを求めるには人の周囲温度、湿度、風速、平均放射温度、代謝熱生産量、着衣量が必要である。
温度と湿度と風速はセンサーの値をそのまま使用し、平均放射温度はグローブ温度計の値から求め、着衣量は室外機1の外気温センサー17で計測された外気温を使って空調エリア内の人の着衣量を推算する。代謝熱生産量は通常のオフィスでの活動量から予測して1met程度の値を用いる。
そして、演算した快適性指標SET* やPMVに基づき、SET* やPMVが快適な範囲(SET* は22から26℃、PMVは±0.5)に収まるように室内機の風向きや風量、温度、湿度を制御する。
あるいは、着衣量は標準条件に置き換えずに実在環境の値のままで、その他はSET* の導出と同じ標準条件で温度T’を計算し、T’と設定端末23aの設定温度との温度差から室内機の送風量や風向きと膨張弁7aと圧縮機4の周波数を制御してもよい。
さらに、前述の実施の形態5で述べた人感センサーを併用することもできる。人感センサーを併用する場合は、検知した人の近くにある無線計測端末の計測値を使用してSET* 、PMVを計算し空調機を制御する。
また、ペリメーターゾーンでは日射の影響を受けて体感温度が上昇するため、無線計測端末の日射センサーの値が増加した場合はSET* 、PMV、温度T’も上昇するように補正演算回路を設けるとさらに体感を考慮した空調制御が実現でき快適性が向上する。夏場は夕方になると日射が減り涼しく感じるため、日射センサー値が減少したら冷やし過ぎ防止で能力抑制するような制御も可能になり消費電力削減に効果がある。
以上のように本実施の形態15に係る空調システムによれば、湿度センサー、風速センサー、グローブ温度計、日射センサーを設けて、これらセンサーの検出結果に応じて空調制御を行うようにした。このため、空気温度以外のパラメータ(湿度、風速、着衣、代謝熱生産量、平均放射温度)から人が受ける温冷感を反映して空調制御を行うことができ、快適性を向上させることができる。
なお、上記説明では、空調システムの空調対象が人である場合を例に説明したが、サーバーや食品、薬品のような物を空調対象とする空調システムに本発明を適用することもできる。この場合には、空調対象物そのものあるいはその近傍に無線計測端末を設置して温度を測定してもよい。
このように、サーバーや食品、薬品のような温度管理対象物を空調対象とする場合には、対象物の温度を直接計測して空調管理することで周囲空気の冷やし過ぎや暖め過ぎを抑制することができる。このため、消費電力量を削減でき、温度管理対象物の品質管理も改善することができる。
また、遠隔監視装置への通報機能を備え、温度管理対象物が異常温度を示した場合は遠隔監視装置へ通報してもよい。また、監視装置100か遠隔監視装置101の中に無線計測端末で検知した温度をグラフ表示する機能やデータ保存する機能を設けることもできる。
このように、遠隔監視装置への通報機能を備えることによって、温度管理対象物に被害が出る前に異常温度を検知できる。また、無線計測端末に設けた電池残量計測手段から電池残量がある一定値より減少した場合に通報する機能を備えればメンテナンスが確実に実施できる。監視装置100か遠隔監視装置101の中に無線計測端末で検知した温度をグラフ表示する機能やデータ保存する機能を設けることで、異常原因の分析に役立つ。
1 室外機、2a、2b 室内機、3 アキュムレータ、4 圧縮機、5 四方弁、6 室外熱交換器、7a、7b 膨張弁、8a、8b 室内熱交換器、9 液側主管、10a、10b 液側分岐管、11 ガス側主管、12a、12b ガス側分岐管、13a、13b 空気温度センサー、14a、14b 液管温度センサー、15a、15b ガス管温度センサー、16a、16b 制御部、17 外気温センサー、18 制御部、19 吐出圧力センサー、20 吸入圧力センサー、21 空調エリア、21a 空調エリア、21b 空調エリア、21ab 共通空調エリア、22 天井裏、23a、23b 設定端末、24a、24b、24c、24d 無線計測端末、25 床、26 机、27 部屋、28a、28b 伝送線、30 通信線、40a、40b 人、41a、40b 人感センサー、100 監視装置、101 遠隔監視装置、102 通信手段、200 空気調和装置、201 通信部、202 演算部、203a、203b 膨張弁開度演算回路、204a、204b 膨張弁制御部、205 圧縮機周波数演算回路、206 圧縮機制御部、231 運転停止設定部、232 運転モード設定部、233 風量設定部、234 室温設定部、235 設定保存部、236 通信部、241 温度センサー、242 電池残量検出部、243 距離計測部、244 データ保存部、245 通信部、246 湿度センサー、247 風速センサー、248 グローブ温度計、249 日射センサー、300 空気調和システム。

Claims (12)

  1. 容量可変形圧縮機、冷媒流路切換手段、及び室外熱交換器を備えた一又は複数の室外機と、
    減圧手段及び室内熱交換器を備えた複数の室内機とが冷媒配管接続された空気調和装置を備え、
    前記室内機の空調エリアの代表室温と前記室内機の設定温度との温度差に基づいて前記空気調和装置を制御する制御手段
    前記各室内機の空調エリアに1台以上設置されるように複数台設置され、温度検出手段を備えた無線計測端末とを有し、
    前記代表室温を、
    前記各室内機の空調エリアに設置された前記無線計測端末の前記室内機を基準とする位置座標と、該無線計測端末の計測結果との関係に基づく近似式を用いて算出し、
    複数の前記空調エリアの代表室温の平均値と、各前記空調エリアの代表室温との差異に基づいて、各空調エリアがペリメーターゾーンであるか否かを判断し、ペリメーターゾーンであると判断した場合には、その空調エリアの代表室温と設定温度との温度差を補正する
    ことを特徴とする空気調和システム。
  2. 容量可変形圧縮機、冷媒流路切換手段、及び室外熱交換器を備えた一又は複数の室外機と、
    減圧手段及び室内熱交換器を備えた複数の室内機とが冷媒配管接続された空気調和装置を備え、
    前記室内機の空調エリアの代表室温と前記室内機の設定温度との温度差に基づいて前記空気調和装置を制御する制御手段と、
    前記各室内機の空調エリアに1台以上設置されるように複数台設置され、温度検出手段を備えた無線計測端末とを有し、
    前記代表室温を、
    前記各室内機の空調エリアに設置された前記無線計測端末の前記室内機を基準とする位置座標と、該無線計測端末の計測結果との関係に基づく近似式を用いて算出し、
    複数の前記無線計測端末の計測結果の平均値と、前記各空調エリア内に設置された前記各無線計測端末の計測結果との差異に基づいて、各空調エリアがペリメーターゾーンであるか否かを判断し、ペリメーターゾーンであると判断した場合には、その空調エリアの代表室温と設定温度との温度差を補正する
    ことを特徴とする空気調和システム。
  3. 前記複数の室内機が共通して空調対象とする共通空調エリアにおいて、
    該共通空調エリアに設置された前記無線計測端末の計測結果の平均値、もしくは、近似式に基づいて算出した前記室内機の空調エリアの代表座標の温度、もしくは、前記共通空調エリアと重複する空調エリアの代表室温の平均値を、前記共通空調エリアの代表温度とし、
    前記共通空調エリアの設定温度は、該共通空調エリアに対して空調を行う前記室内機の設定温度の平均値とし、
    前記共通空調エリアの代表温度と前記共通空調エリアの設定温度の差分をΔTabとし、
    前記共通空調エリアの空調制御においては、
    冷房時に前記ΔTabが所定値以下となる場合には前記共通空調エリアへの風量を低下させ、前記ΔTabが所定値を超える場合には前記共通空調エリアへの風量を増加させ、
    暖房時に前記ΔTabが所定値以下となる場合には前記共通空調エリアへの風量を増加させ、前記ΔTabが所定値を超える場合には前記共通空調エリアへの風量を低下させる
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気調和システム。
  4. 前記複数の室内機が共通して空調対象とする共通空調エリアにおいて、
    該共通空調エリアの代表温度が、該共通空調エリアの設定室温に対して所定値以上未達である場合には、該共通空調エリアを空調対象とする複数の室内機のうちの一の室内機を強制的に運転させる
    ことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか記載の空気調和システム。
  5. 前記室内機の吹出口に、気流の向きと風量のいずれか又は両方を変更可能な風向風量調節手段を設け、
    前記無線計測端末の計測結果、もしくは、近似式に基づいて、前記室内機の空調エリアの高温部と低温部とを特定し、
    冷房時には、前記風向風量調節手段により前記高温部に気流を向け、
    暖房時には、前記風向風量調節手段により前記低温部に気流を向ける
    ことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか記載の空気調和システム。
  6. 前記室内機に無線通信手段を設け、前記無線計測端末と通信可能とした
    ことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか記載の空気調和システム。
  7. 前記無線計測端末と通信可能な無線通信手段を備え、前記設定温度を設定可能な設定端末を備えた
    ことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか記載の空気調和システム。
  8. 無線信号の受信電波強度測定手段、もしくは、無線信号の伝播遅延時間測定手段を備え、前記無線計測端末の座標を、前記受信電波強度測定手段もしくは伝播遅延時間測定手段の測定結果に基づいて算出する
    ことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか記載の空気調和システム。
  9. 湿度検出手段、風速検出手段、グローブ温度計、日射検出手段のうちいずれか1以上を前記無線計測端末に設け、
    SET* あるいはPMVを演算する演算手段を設け、
    前記演算手段の演算結果に基づいて、前記圧縮機の周波数及び/又は前記室内機の気流方向を制御する
    ことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか記載の空気調和システム。
  10. 前記無線計測端末は、電池残量計測手段を備え、電池残量が所定値以下となった場合には、遠隔監視装置に通報する
    ことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか記載の空気調和システム。
  11. 前記無線計測端末は、計測結果が異常値を示した場合には、遠隔監視装置に通報する
    ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか記載の空気調和システム。
  12. 請求項10または請求項11記載の空気調和システムの遠隔監視装置であって、
    前記無線計測端末からの通報に関する情報を管理する
    ことを特徴とする遠隔監視装置。
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