実施の形態1.
本実施の形態1の空気調和装置の構成を説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和装置が適用される倉庫の一例を示す外観斜視図である。空気調和装置1は、保管物を保管する倉庫40の空調対象空間を空気調和するものである。本実施の形態1では、倉庫40が冷凍倉庫の場合である。倉庫40内には、3つの保管棚30a〜30cが設置されている。
図1に示すように、空気調和装置1は、倉庫40内の空間を空気調和する負荷側ユニット10と、負荷側ユニット10と冷媒配管で接続される熱源側ユニット20と、リモートコントローラ50とを有する。図1では、負荷側ユニット10と熱源側ユニット20とを接続する冷媒配管を図に示すことを省略している。リモートコントローラ50と負荷側ユニット10および熱源側ユニット20とを接続する信号線を図に示すことを省略している。負荷側ユニット10は倉庫40の壁に取り付けられている。
なお、図1は、倉庫40内に保管棚30a〜30cが設置されている場合を示しているが、保管棚の数は3つの場合に限定されない。保管棚の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。図1は、倉庫40の外郭が箱体である場合を示しているが、倉庫40の外郭形状は箱体に限らない。リモートコントローラ50と負荷側ユニット10および熱源側ユニット20との通信手段は、有線を用いるものであってもよく、無線であってもよい。
図2は、図1に示した空気調和装置の冷媒回路図である。図2に示すように、熱源側ユニット20は、圧縮機21と、熱源側熱交換器22とを有する。負荷側ユニット10は、膨張装置12と、負荷側熱交換器13と、ファン14と、風向調節部15とを有する。圧縮機21と、熱源側熱交換器22と、膨張装置12と、負荷側熱交換器13とが冷媒配管で接続され、冷媒が循環する冷媒回路60が構成される。
圧縮機21は、冷媒回路60を循環する冷媒を圧縮して吐出する。圧縮機21は、例えば、ロータリ圧縮機、スクロール圧縮機、スクリュー圧縮機および往復圧縮機等の圧縮機である。熱源側熱交換器22は、凝縮器として機能する熱交換器である。
膨張装置12は、熱源側熱交換器22から流入する冷媒を膨張させて減圧する。膨張装置12は、例えば、冷媒の流量を調整できる電動膨張弁である。負荷側熱交換器13は、蒸発器として機能する熱交換器である。負荷側熱交換器13は、例えば、フィン・アンド・チューブ型熱交換器である。ファン14は、倉庫40内から空気を吸い込み、負荷側熱交換器13で冷媒と熱交換を行った後の空気を倉庫40内に流出する。ファン14は、例えば、プロペラファンおよびシロッコファン等のファンである。風向調節部15は、ファン14が倉庫40内に送り出す空気の流通方向を調節する。
図2に示す冷媒回路図を参照し、冷却運転時の冷媒の流れを説明する。圧縮機21から吐出した高温高圧の冷媒は、熱源側熱交換器22に流入すると、熱源側熱交換器22において、空気と熱交換を行って放熱することで凝縮される。凝縮されて液化した冷媒は、冷媒配管を経由して、膨張装置12に流入する。膨張装置12において、液冷媒は減圧されて膨張する。続いて、液冷媒は、負荷側熱交換器13に流入すると、倉庫40内の空気と熱交換を行って空気から吸熱する。これにより、倉庫40の空気が冷却される。吸熱した冷媒は蒸発して気体になる。気化した冷媒は、冷媒配管を経由して熱源側ユニット20の圧縮機21に戻る。
図1に示した保管棚30a〜30cの構成を説明する。図3は、図1に示した保管棚の一構成例を示す外観斜視図である。保管棚30a〜30cは同様な構成であるため、ここでは、保管棚30aの構成を説明し、保管棚30bおよび30cの説明を省略する。
保管棚30aは、図3に示すように、4本のポール32と、天板33と、上段、中段および下段の支持板34a〜34cとで構成される。天板33および支持板34a〜34cは、図に示すことを省略しているが、空気が流通する複数の開口が設けられている。保管棚30aには、環境検出センサ36が取り付けられている。支持板34a〜34cの各支持板に、環境検出センサ36として、3つの温度センサ37が等間隔に配置されている。図3では、支持板34aおよび34bに温度センサの符号を付すことを省略している。本実施の形態1では、環境検出センサ36が複数の温度センサ37の場合で説明するが、温度および湿度の両方を検出する複数のセンサであってもよい。
支持板34a〜34cの各支持板には、3つの温度センサ37の位置に対応して、保管物を3つ設置するスペースがある。各温度センサ37が検出する温度を示す空間を、図3に示す区画31と定義する。図3に破線で示す区画31は、支持板34aと支持板34bとの間の空間であって、温度センサ37aによって温度が検出される空間に相当する。
図4は、図1に示した倉庫の上面図である。図5は、図1に示した倉庫の側面図である。各温度センサ37が温度を検出する空間を占める区画31について、区画31の位置と温度センサ37の検出値とを対応付けるために、区画31の識別子として、図に示すX軸、Y軸およびZ軸の3軸を用いた3次元座標で表す。本実施の形態1では、区画31の識別子をアドレスと称する。図1に示す倉庫40の場合、保管棚30a〜30cの各保管棚に9個の温度センサ37が設けられているため、9×3=27個の区画31が倉庫40内に構成される。27個の区画31のアドレスは座標(x1,y1,z1)〜(x3,y3,z3)で表される。図4および図5には、区画31の一部の座標を、区画31毎に表示している。また、このアドレスは温度センサ37を一意に特定するための識別子の役目も果たす。
図6は、図3に示した温度センサが検出した温度データで構築される3次元データを模式的に示した図である。区画31毎にアドレス情報と温度センサ37の検出値とを対応づけることで、図6に示すように、27個の温度センサ37が検出した温度データで3次元の温度分布を示す3次元データが構築される。図6に示す3次元データは、区画31毎に水平面(X軸およびY軸による2次元)の温度分布だけでなく、垂直方向(Z軸矢印方向)の温度分布も示す。
図2に示したリモートコントローラ50の構成を説明する。図7は、図2に示したリモートコントローラの一構成例を示すブロック図である。リモートコントローラ50は、空気調和装置1を制御する制御部51と、倉庫40を利用するユーザが指示を入力するための操作部52と、表示装置53とを有する。
制御部51は、例えば、マイクロコンピュータである。図2に示すように、制御部51は、プログラムを記憶するメモリ54と、プログラムにしたがって処理を実行するCPU(Central Processing Unit)55とを有する。図7に示すように、制御部51は、通信手段56と、冷凍サイクル制御手段57と、時間を計測するタイマー58とを有する。CPU55がプログラムを実行することで、通信手段56および冷凍サイクル制御手段57が空気調和装置1に構成される。
通信手段56は、全ての温度センサ37と通信接続される。接続手段は、有線であってもよく、無線であってもよい。通信手段56は、一定の周期P1で全ての温度センサ37から検出値を取得する。具体的には、通信手段56は、周期P1毎に、周期P1より短い周期P2で各温度センサ37から検出値を取得する。例えば、周期P1=1×60[s]、周期P2=0.1[s]である。
通信手段56は、周期P1毎に取得する複数の検出値をメモリ54に格納する。メモリ54は、アドレスに対応して検出値を記録するテーブルを記憶する。テーブルが記憶する温度データから、図6に示した3次元データが構築される。その際、通信手段56は、温度センサ37から検出値を取得した時刻を、検出時刻を示す時間データとして検出値と一緒にメモリ54に格納してもよい。この場合、各温度データは、検出時を示す時間データを有する。通信手段56は、3次元データを用いて空調対象空間の温度分布を示す画像を生成して表示装置53に表示させてもよい。
図8は、図2に示したメモリが記憶するテーブルの一例を示す図である。図8に示すテーブルは、空調対象空間において、水平方向および垂直方向に区切られた複数の区画31の温度データを含む3次元データの一例である。アドレスAD1〜AD27は区画31の座標(x1,y1,z1)〜(x3,y3,z3)に対応している。テーブルには、アドレス情報に対応して、温度センサ37の検出値を含む温度データが記録されている。図8では、説明のために、温度データがアドレス情報および検出値の他に座標情報を含んでいるが、座標情報を含んでいなくてもよい。例えば、アドレスと座標情報との関係を示す情報を別途、メモリ54が記憶していればよい。
図8のテーブルは、通信手段56が、2018年1月26日の15時30分の時刻から、1番目の温度センサ37から27番目の温度センサ37まで周期P2で順に検出値を取得した場合を示す。通信手段56が各温度センサ37から周期P2=0.1秒で検出値を取得ししても、全取得時間は0.3秒以内なので、同じ時刻で記録されている。
なお、図8に示すテーブルは、温度データが時刻データを有する場合を示すが、時刻データを有していなくてもよい。時刻データをテーブルに持たせてもよい。
冷凍サイクル制御手段57は、通信手段56が生成した3次元データから1つの区画が指定されると、指定区画の温度が目標温度Tsと一定の範囲で一致するように、冷媒回路60の冷凍サイクルを制御する。具体的には、冷凍サイクル制御手段57は、圧縮機21およびファン14の回転数と、膨張装置12の開度と、風向調節部15の風向とのうち、いずれかを制御する。また、冷凍サイクル制御手段57は、指定区画が複数ある場合、複数の指定区画の温度の平均値が目標温度と一定の範囲で一致するように冷凍サイクルを制御する。
表示装置53は、例えば、液晶ディスプレイである。表示装置53は、通信手段56が生成する温度分布の画像を表示する。操作部52は、例えば、タッチパネルである。操作部52は、倉庫40を利用するユーザが保管物を保管する区画31を指定する際に用いられる。
ここで、ユーザが指定する区画に基づいてリモートコントローラ50が目標温度を設定する場合を、2種類の温度分布の例を参照して、説明する。
図9は、図1に示した空気調和装置が空気調和を行う空調対象空間の温度分布のシミュレーション結果の一例を示す上面図である。図9は、図1に示した保管棚30a〜30cにおける最上段の区画31の温度分布を示す。図10は、図9に示した温度分布の側面図である。図10は、図1に示した保管棚30bにおける9個の区画31の温度分布を示す。各区画31をアドレスAD1〜AD27で示す。図9および図10は、負荷側ユニット10が倉庫から吸い込む空気の温度が6[℃]に設定されている場合である。
図9および図10において、空気層301の温度が7.2〜7.6[℃]であり、空気層302の温度が7.6〜8.0[℃]であり、空気層303の温度が8.0〜8.4[℃]である。空気層304の温度が8.4〜8.7[℃]であり、空気層305の温度が8.7〜9.1[℃]であり、空気層306の温度が9.1〜9.5[℃]であり、空気層307の温度が9.5〜9.9[℃]である。
図9を参照して、水平方向の温度分布に注目すると、アドレスAD12、AD15およびAD18の区画31の温度が、アドレスAD3、AD6、AD9、AD21、AD24およびAD27の区画31の温度に比べて低いことがわかる。図10を参照して、Y軸座標がy2の垂直方向の温度分布に注目すると、アドレスAD13、AD14およびAD15の順で温度が低くなっており、区画31の高さが高いほど、温度が低いことがわかる。
図9および図10の温度分布は、アドレスAD12、AD15およびAD18の区画31の温度が他の区画31に比べて低いことを示す。図9および図10から、アドレスAD10、AD13およびAD16のうち、いずれかのアドレスの区画31に保管物を置けば、保管物がより早く冷却されることがわかる。
通信手段56は、アドレスAD12、AD15およびAD18のうち、いずれかのアドレスが示す区画31をユーザが指定区画に設定すると、指定区画のアドレスAD10を冷凍サイクル制御手段57に通知する。冷凍サイクル制御手段57は、指定区画に目標温度を設定する。
図11は、図1に示した負荷側ユニットが2台適用された場合の空調対象空間の温度分布のシミュレーション結果一例を示す上面図である。図12は、図11に示した温度分布の側面図である。図11および図12は、2台の負荷側ユニット10が対向して配置されている場合である。
図11は、図1に示した保管棚30a〜30cにおける最上段の区画31の温度分布を示す。図12は、図1に示した保管棚30bにおける9個の区画31の温度分布を示す。各区画31をアドレスAD1〜AD27で示す。図11および図12は、負荷側ユニット10が倉庫から吸い込む空気の温度が6[℃]に設定されている場合である。
図11および図12において、空気層312の温度が6.4〜6.8[℃]であり、空気層311の温度が6.8〜7.2[℃]であり、空気層301の温度が7.2〜7.6[℃]であり、空気層302の温度が7.6〜8.0[℃]である。空気層303の温度が8.0〜8.4[℃]であり、空気層304の温度が8.4〜8.7[℃]であり、空気層305の温度が8.7〜9.1[℃]であり、空気層306の温度が9.1〜9.5[℃]である。
図11を参照して、水平方向の温度分布に注目すると、アドレスAD12、AD15、AD18およびAD24の区画31の温度が、アドレスAD3、AD6、AD9、AD21およびAD27の区画31の温度に比べて低いことがわかる。図12を参照して、Y軸座標がy2の垂直方向の温度分布に注目すると、アドレスAD13およびAD14よりもアドレスAD15の区画の温度が低くなっており、区画31の高さが高いほど、温度が低いことがわかる。
図11および図12に示す温度分布では、アドレスAD12、AD15およびAD18の区画31の温度が他の区画31に比べて低いことを示す。そのため、図9および図10から、アドレスAD10、AD13およびAD16のうち、いずれかのアドレスの区画31に保管物を置けば、保管物がより早く冷却されることがわかる。
図11および図12の温度分布は、アドレスAD12、AD15およびAD18の区画31の温度が最も低く、これらの区画31の次にアドレスAD13およびAD14の区画31の温度が低いことを示す。図11および図12から、アドレスAD12〜AD15およびAD18のうち、いずれかのアドレスの区画31に保管物を置けば、保管物がより早く冷却されることがわかる。
通信手段56は、アドレスAD12〜AD15およびAD18のうち、いずれかのアドレスが示す区画31をユーザが指定区画に設定すると、指定区画のアドレスAD10を冷凍サイクル制御手段57に通知する。冷凍サイクル制御手段57は、指定区画に目標温度を設定する。
本実施の形態1の空気調和装置1の動作を説明する。図13は、図2に示した表示装置が表示する画像の一例を示す図である。図13は、ユーザが保管物の保管場所を指定する操作画像の一例である。図14は、本発明の実施の形態1に係る空気調和装置の動作手順を示すフローチャートである。
表示装置53が図13に示す操作画像を表示すると、ユーザは、温度分布を参照し、保管場所のアドレスを決める。ユーザが操作部52を介してアドレスの番号を入力すると、通信手段56は、入力されたアドレスの番号に対応する区画31を冷凍サイクル制御手段57に通知する。冷凍サイクル制御手段57は、通信手段56から通知された区画31を指定区画に設定する(ステップS101)。また、通信手段56は、メモリ54が記憶する3次元データを参照し、入力されたアドレスに対応する温度データをメモリ54から読み出して表示装置53に表示させる。
ユーザは、図13に示す操作画像を参照して、アドレスで指定した区画31の現在の温度を確認する。保管場所の現在の温度が保管物の保管温度範囲に属していない場合、ユーザは、操作部52を介して目標温度Tsを入力し、続いて、確定ボタン130を選択する。通信手段56は、入力された目標温度Tsを冷凍サイクル制御手段57に通知する。冷凍サイクル制御手段57は、指定区間に目標温度Tsを設定する(ステップS102)。続いて、冷凍サイクル制御手段57は、冷凍能力と空調対象空間の体積とから、指定区画の温度が目標温度Tsに到達するまでの目標時間tmに到達するまでの目標時間tmを算出する(ステップS103)。メモリ54が空調対象空間の体積を記憶している。
冷凍サイクル制御手段57は、負荷側ユニット10から送出される空気の風向が指定区画に向くように風向調節部15を制御する(ステップS104)。そして、冷凍サイクル制御手段57は、タイマー58を起動して、時間tの計測を開始する(ステップS105)。冷凍サイクル制御手段57は、時間tが目標時間tmまで経過するか否かを判定し(ステップS106)、時間tが目標時間tmに到達すると、ステップS107に進む。
ステップS107において、冷凍サイクル制御手段57は、目標時間tm内に指定区間の温度センサ37の検出値が目標温度Tsに到達したか否かを判定する。ステップS107の判定の結果、指定区画の温度が目標時間tm内に目標温度Tsに到達しない場合、冷凍サイクル制御手段57は、冷凍能力を上げ(ステップS108)、ステップS105に戻る。ステップS108において、冷凍サイクル制御手段57は、例えば、圧縮機21の回転数を上げる。一方、ステップS107の判定の結果、指定区画の温度が目標時間tm内に目標温度Tsに到達した場合、冷凍サイクル制御手段57は、冷凍能力を下げる(ステップS109)。ステップS109において、冷凍サイクル制御手段57は、例えば、圧縮機21の回転数を下げる。
また、図13に示した操作画像において、ユーザは、アドレスで指定した区画31の現在の温度が保管物の保管温度範囲に属している場合、目標温度を入力しなくてもよい。この場合、冷凍サイクル制御手段57は、現在の空調制御の状態を維持すればよい。
ユーザは、3次元データから倉庫内の各区画31の温度を知ることができ、保管に適した温度の区画31に保管物を置くことができる。倉庫内に任意に保管物が置かれる場合に比べて、空気調和装置1が無駄に空気調和を行う必要がない。また、保管物が置かれた区画31の温度が保管温度範囲に属していない場合、空気調和装置1が風向を調節して保管物の区画31の温度を保管温度範囲まで下げることで、冷凍能力を上げる必要がない。さらに、ユーザが保管物の区画31を指定して目標温度を設定した場合、空気調和装置1が保管物の置かれていない区画31に無駄な空調を行うことが抑制される。その結果、空調負荷が軽減するだけでなく、消費電力量を抑制できる。
図13を参照して、表示装置53がユーザに倉庫40内の温度分布を表示する場合を説明したが、ユーザに対する、3次元データの表示形式はこの場合に限らない。例えば、通信手段56は、アドレス情報とアドレス情報に対応する区画31の温度とを組み合わせた情報を一定の時間間隔で表示装置53に表示させてもよい。また、ユーザは、図9〜図12に示す温度分布を知っていれば、複数の区画31のうち、1つの区画31の温度がわかれば、他の区画31の温度を予測して、保管物に適した指定区画を決めてもよい。
なお、図1に示した倉庫40に、風向および風量を調節できる送風機が設けられていてもよい。この場合、図14に示したステップS104において、冷凍サイクル制御手段57が送風機の風量および風向を制御することで、風向調節部15だけの場合よりも、より広範囲に風向および風量を調節できる。倉庫40に設置される送風機の台数は1台に限らない。倉庫40内に設置される送風機の台数は、倉庫40内の保管物エリアの面積に比例した数でもよい。
また、本実施の形態1では、図1を参照して、倉庫40に保管棚30a〜30cが設置されている場合で説明したが、倉庫に保管棚が設置されていなくてもよい。図15は、本発明の実施の形態1に係る空気調和装置が適用される倉庫の別の構成例を示す外観斜視図である。
図15に示すように、倉庫40aには保管棚が設置されていない。保管棚が設置されていない倉庫40aでは、例えば、柱41に温度センサ37が取り付けられていてもよい。図14に示す例では、4本の柱41のそれぞれに垂直方向(Z軸矢印方向)に3つの温度センサ37が等間隔で取り付けられている。この場合でも、12個の温度センサ37が検出した温度データで3次元データが構築される。倉庫内に柱41が設置されていない場合、2つ以上の温度センサ37が垂直方向に等間隔で配置された複数のポールを床面の上に設置してもよい。
図16は、図15とは異なる倉庫の一例を示す上面図である。図16に示す倉庫40bには、全部で7台の負荷側ユニット10が設置されている。具体的には、4台の負荷側ユニット10と3台の負荷側ユニット10とが対向して配置されている。また、倉庫40bには、12本の柱41が空調対象空間内に設けられている。各柱41には、図15に示したように、異なる高さで3つの温度センサ37が取り付けられている。図15および図16に示す倉庫の場合でも、空調対象空間の温度について、図6に示した3次元データが構築される。
また、本実施の形態1において、通信手段56と全ての温度センサ37との通信接続手段に有線を用いる場合で説明したが、通信が無線で行われる場合の一例を説明する。図17は、図3に示した温度センサの検出値を無線で制御部に送信する無線ユニットの一構成例を示すブロック図である。ここでは、通信手段56は無線通信の機能を備えているものとする。無線通信の技術として、例えば、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信技術がある。
図17に示す無線ユニット70が、例えば、保管棚30a〜30cの支持板34a〜34cの各支持板に設けられている。無線ユニット70は、1つの支持板に設置された3つの温度センサ37に接続される3つのバッファメモリ71a〜71cと、タイマー72と、制御回路73と、無線通信回路74と、電源部75とを有する。電源部75は、バッファメモリ71a〜71c、タイマー72、制御回路73および無線通信回路74に電力を供給する。電源部75は、例えば、蓄電池である。
図18は、図17に示すタイマーがバッファメモリおよび制御回路に通知するタイミングを示すタイミングチャートである。タイマー72は、検出値を取得するタイミングTP1を周期P3でバッファメモリ71a〜71cに通知し、温度データを読み込むタイミングTP2を周期P3で制御回路73に通知する。タイマー72は、タイミングTP2がタイミングTP1の後になるように、これらのタイミングをずらしている。バッファメモリ71a〜71cの各メモリは、タイミングTP1に温度センサ37から検出値を取得し、取得した時刻を検出時間として検出値と一緒に記憶する。
制御回路73に設けられた図に示さないメモリは、バッファメモリ71a〜71cに接続される各温度センサ37の区画31のアドレス情報を記憶している。制御回路73は、タイミングTP2に検出値および時間データをバッファメモリ71a〜71cから取得する。そして、制御回路73は、アドレス情報、時間データおよび検出値を含む3つの温度データを温度センサ37毎に生成し、生成した3つの温度データを無線通信回路74に順次、渡す。無線通信回路74は、制御回路73から3つの温度データを順次、受信すると、3つの温度データを通信手段56と共通の通信プロトコルの無線信号に変換し、無線信号を順次、出力する。
複数の温度センサ37が無線通信回路74を共有化する構成とすることで、無線通信手段の数量を低減できる。図17を参照して、支持板34a〜34cの各支持板に1台の無線ユニット70が設けられる場合で説明したが、無線ユニット70の台数はこの場合に限らない。例えば、保管棚30a〜30cの各保管棚に1台の無線ユニット70が設けられてもよい。
倉庫には、フォークリフト等の車両および作業者が移動するものがある。各温度センサ37とリモートコントローラ50とを配線で接続する場合、車両および作業者の移動に邪魔にならないように配線を設置しなければならない。また、倉庫には、柱および棚が設けられ、保管物エリアもあるため、柱、棚および保管物エリアを避けて配線を設置しなければならない。このように、各温度センサ37とリモートコントローラ50とを接続する配線の設置に制約がある。これに対して、図17を参照して説明したように、温度センサ37の検出値のリモートコントローラ50への伝送手段を無線通信にすることで、複数の温度センサ37を倉庫に導入しやすくなる。
例えば、無線ユニット70が、図3に示した上下方向(Z軸矢印方向)に延びる配線を介して、複数の温度センサ37と接続されることが望ましい。この場合、水平方向の配線の長さが抑制されるので、水平面での設置制約を受けなくてすむ。また、無線ユニット70が、例えば、蓄電池で動作する場合、外部から電源ケーブルを無線ユニット70に接続する必要がなく、電源ケーブル設置に関する制約を受けなくてすむ。無線ユニット70に電源ケーブルが接続されていないので、保管物の入出庫を行う車両および作業者は、電源ケーブルに起因する移動制限を受けることがない。さらに、倉庫内のレイアウトを変更する場合、無線ユニット70に電源ケーブルが接続されていないので、自由に保管棚30a〜30cを移動させることができる。
倉庫には、多くの温度センサ37が設けられており、多くの温度センサ37が検出と同時にデータをリモートコントローラ50に送ることは困難である。これに対して、無線ユニット70は、時間を計測するタイマー72を有している。無線ユニット70が、各温度センサ37が温度を検出した時間を示す時間データを温度データに対応づけてリモートコントローラ50に送信している。無線ユニット70が複数ある場合、全ての無線ユニット70は互いにタイマー72の時刻を同期させる。これにより、各温度センサ37が検出する温度の検出時間を同期させることができる。リモートコントローラ50が全ての温度センサ37から取得する検出値は、各温度センサ37が同じタイミングで検出した温度となる。各温度センサ37の検出値が同じ時刻で検出されているため、これらの検出値で構築される3次元データも同じ時刻の温度分布を示すものとなる。そのため、時間変化に対して温度変化が速い空調対象空間であっても、空気調和装置1は、より精度の高い温度分布の情報を取得できる。
また、倉庫が冷蔵倉庫のように保管物エリアが低温で、電源部75が蓄電池である場合、蓄電池の電力の消耗が加速してしまう。そのため、無線ユニット70が自動的にオンおよびオフする機能を備えていてもよい。例えば、蓄電池は制御回路73およびタイマー72に電力供給を継続し、バッファメモリ71a〜71cおよび無線通信回路74が動作する際、制御回路73は、蓄電池に、これらの回路に電力を供給させ、回路動作が終了すると、電力供給を停止させてもよい。これにより、蓄電池の電力の消耗を抑制できる。
また、無線ユニット70が図に示さない表示部を有し、制御回路73が表示部に光で種々の表示をさせてもよい。例えば、蓄電池の容量が少なくなったとき、制御回路73が表示部に光を点滅させて、作業者に電池交換を促すことができる。また、検出値が異常値を示す温度センサ37がある場合、制御回路73は、表示部に光を点滅させて、異常値を検出した温度センサ37があることを作業者に通知することができる。この場合、倉庫に設置された送風機が、カメラ等の受光装置を備え、受光装置が光の点滅を検出すると、検出した光の方向に風向を向けるようにしてもよい。温度センサ37が故障ではなく、温度センサ37が設置された区画31の空気の温度が実際に高い場合、送風機からの送風が、保管物エリア内の温度が高くなってしまうことを抑制する。
また、通信手段56は、複数の無線ユニット70と通信する際、無線ユニット70から受信する信号の電波強度に基づいて各無線ユニット70の位置を検出してもよい。例えば、通信手段56と無線ユニット70との距離が長いほど、電波強度が小さくなる。さらに、各無線ユニット70が自ユニットに接続される複数の温度センサ37から取得する検出値と区画31のアドレスとを決められた順に対応づけて、温度データを通信手段56に送信してもよい。この場合、通信手段56は、無線ユニット70から受信する温度データの電波強度から無線ユニット70の倉庫内の位置を推定する。そして、通信手段56は、無線ユニット70から受信する3つの温度データの各検出値を決められた順のアドレスに対応づけることで、各検出値が検出された保管棚および区画31を特定できる。そのため、無線ユニット70から通信手段56に無線で送信される温度データにアドレスの情報が含まれていなくてもよい。無線通信されるデータ量が少なくてすむので、通信手段56と無線ユニット70との無線通信の負荷が軽減する。
本実施の形態1の空気調和装置1は、空調対象空間が水平方向および垂直方向に区切られた複数の区画に対して、区画毎に温度を検出する環境検出センサ36と、空調対象空間を空気調和する負荷側ユニット10とを有するものである。
本実施の形態1によれば、空調対象空間が水平方向および垂直方向に区切られた複数の区画に対して、区画毎の温度を環境検出センサ36が検出するため、ユーザは倉庫内のうち、保管に適した温度の区画に保管物を置くことができる。ユーザが倉庫内の任意の区画に保管物を置き、保管物の温度が目標温度以下になるように空気調和装置が空調制御を行う場合に比べて、空調負荷が軽減する。保管物の置かれていない区画が必要以上に空気調和されないので、消費電力量を抑制できる。
本実施の形態1において、冷凍サイクル制御手段57は、複数の区画31のうち、指定区画の目標温度を設定する。例えば、冷凍サイクル制御手段57は、指定区画に対する目標温度が入力されない場合、指定区画の現在の温度を目標温度に設定して空調制御を維持する。また、冷凍サイクル制御手段57は、指定区画に対する目標温度が入力された場合、入力された目標温度を指定区画の目標温度に設定する。ユーザは、保管物を保管する区画31の温度が保管に適した温度である場合、自動的に目標温度が設定されるため、目標温度を入力する必要がなく、入力の手間が省ける。
本実施の形態1において、冷凍サイクル制御手段57は、冷凍能力と空調対象空間の体積とから、指定区画の温度が目標温度Tsに到達するまでの目標時間tmを決定してもよい。空気調和装置1が保管物を目標時間tm内に目標温度Tsまで冷却する条件を満たすか否かを判定し、判定の結果、条件を満たさない場合、冷凍能力を上げる制御を行うことで、保管物の温度が目標温度Tsまで低下する時間が長くなることが抑制される。その結果、保管物の品質劣化を防止できる。
本実施の形態1において、複数の温度データは区画毎に位置および温度が対応付けられた3次元データ構造を構成する。3次元データから、空調対象空間において、水平方向および垂直方向に限らず、斜め方向の2つの区画31の間の空間の温度分布も予測することができる。また、倉庫内により多くの温度センサ37を設置すれば、空気調和装置1は、冷気供給の死角となる位置の温度も取得できる。倉庫には、柱、棚および保管物等で冷気供給の死角が発生しやすい。そのため、温度センサ37の設置数が多いほど、空気調和装置1が、温度が上昇する傾向のある場所を見つけやすくなるメリットがある。
また、本実施の形態1において、各温度データが時間データを有していてもよい。複数の温度データが有する複数の時間データが示す時刻が同じ場合、同じ時刻の温度分布を示す3次元データを構築することができる。
また、本実施の形態1において、表示装置53は複数の温度データを複数の区画31に対応して表示してもよい。この場合、ユーザは、各区画31の温度を見て、どの区画31に保管物を置くべきかを判断できる。
実施の形態2.
実施の形態2は、環境検出センサが赤外線センサの場合である。本実施の形態2では、実施の形態1で説明した構成と同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施の形態2の空気調和装置の構成を説明する。図19は、本発明の実施の形態2に係る空気調和装置が適用される倉庫の一例を示す外観斜視図である。本実施の形態2の空気調和装置1aが適用される倉庫40cは、図19に示すように、保管棚が設置されておらず、床43の上に保管物65が積み上げられる倉庫である。倉庫40cの場合、保管物が置かれる空間に保管棚および柱が設けられている倉庫に比べて、保管物の設置に関して自由度がより向上するという利点がある。なお、図19は、保管物65が床43の上に直接に置かれている場合を示しているが、保管物65はパレット等の荷台の上に置かれた状態で倉庫40cに保管されてもよい。
本実施の形態2の空気調和装置1aは、環境検出センサ36として、赤外線センサ38を有する。図19に示す倉庫40cの場合、赤外線センサ38は天井42に取り付けられている。
図20は、本発明の実施の形態2に係る空気調和装置の制御部の一構成例を示すブロック図である。制御部51aは、通信手段56、冷凍サイクル制御手段57および区画判定手段59を有する。赤外線センサ38は、周囲温度に対して温度が一定温度以上異なる物体を検出する。一定温度は、赤外線センサ38の感度によって異なるが、例えば、5[℃]である。赤外線センサ38は、検出した物体の表面温度Tgと、物体のサイズSgと、基準位置から物体までの距離Lgと、基準位置から物体への方向Dgとを検出する。サイズSgは、温度が周囲温度と異なるサイズである。基準位置は、赤外線センサ38の設置位置である。赤外線センサ38は、検出した表面温度Tg、サイズSg、距離Lgおよび方向Dgを、通信手段56を介して区画判定手段59に渡す。
区画判定手段59は、赤外線センサ38から受け取る検出値に基づいて、空調対象空間を複数の区画31に区切り、区画31の座標情報および温度を含む温度データを区画31に対応づけてメモリ54に格納する。本実施の形態2においても、メモリ54に蓄積される複数の温度データによって3次元データが構築される。
ここで、図19を参照して、区画判定手段が3次元データを生成する手順を説明する。例えば、床43の上に保管物が置かれていない状態で、ユーザが保管物65aを床43の上に置いた場合を考える。
このとき、赤外線センサ38が周囲温度と異なる温度の保管物65aを検出すると、保管物65aの表面温度Tg、サイズSg、距離Lgおよび方向Dgの情報を区画判定手段59に渡す。区画判定手段59は、赤外線センサ38から表面温度Tg、サイズSg、距離Lgおよび方向Dgを受け取ると、サイズSgをサイズ閾値Sthと比較することで、検出された物体が人か保管物かを判定する。メモリ54がサイズ閾値Sthを記憶している。
また、区画判定手段59は、検出された物体が保管物65aと判定すると、検出されたサイズSgの2次元形状の中心点を直方体の重心とした区画31を設定する。このときの区画31の直方体の各辺の長さは、予め決められていてもよく、検出されたサイズから区画判定手段59が決められた手順にしたがって推測したものであってもよい。区画31の直方体の各辺の長さが予め決められている場合、メモリ54が各辺の長さを記憶している。
また、区画判定手段59は、赤外線センサ38の設置位置の座標と、検出された距離Lgおよび方向Dgとから、保管物65aの座標情報を算出する。メモリ54は、赤外線センサ38の設置位置の座標を記憶している。さらに、区画判定手段59は、設定した区画31の座標情報および表面温度Tgを含む温度データを、通信手段56を介して、メモリ54に格納する。
保管物65aの表面温度は、一定時間が経過すると、周囲温度に対して一定温度以下の温度になる。続いて、ユーザが図19に示す保管物65bを床43の上に置くと、赤外線センサ38が周囲温度と異なる温度の保管物65bを検出する。区画判定手段59は、保管物65aと同様にして、赤外線センサ38から受け取る検出値に基づいて、保管物65bの区画31を設定し、区画31の温度データをメモリ54に格納する。
図21は、本発明の実施の形態2に係る空気調和装置において、制御部が記憶する3次元データ構造の一例を示す模式図である。図19を参照して説明したように、新たに保管物65が図19に示した倉庫40cの床43または他の保管物の上に置かれる度に、区画判定手段59が、新たに置かれた保管物65の区画31を設定する。そして、区画判定手段59は、設定した区画31の温度データを生成してメモリ54が記憶する3次元データを更新する。その結果、図21に示すような3次元データが構築される。区画判定手段59は、冷凍サイクル制御手段57が実行する空調制御の情報を通信手段56に通知する。通信手段56は、区画判定手段59から通知される空調制御情報に対応して3次元データを管理する。これにより、冷凍サイクル制御手段57が行う空調制御毎に、空調対象空間の温度分布を示す3次元データがメモリ54に蓄積される。
本実施の形態2の空気調和装置1aの動作については、通信手段56が図13に示す操作画像を表示装置53に表示させる際、現在の空調制御情報に対応する温度分布を表示させることを除いて、図14を参照して説明した動作と同様になる。そのため、本実施の形態2では、空気調和装置1aの動作について、その詳細な説明を省略する。
なお、倉庫に設置される赤外線センサ38は1つに限らず、複数でもよい。例えば、赤外線センサ38の位置から既に置かれている保管物を見たとき、赤外線センサ38の死角になる場所に保管物が新しく置かれたとき、赤外線センサ38が検出できない場合がある。そのため、倉庫内に複数の赤外線センサ38を設置して、赤外線センサ38の死角になる場所を極力減らすことが望ましい。倉庫内に複数の赤外線センサ38が設置される場合、メモリ54は各赤外線センサ38の識別子と設置位置の座標情報とを記憶する。区画判定手段59は、複数の赤外線センサ38の座標情報と複数の赤外線センサ38から取得する検出値とを関連付けることで、新たに置かれた1つの保管物を、複数の保管物に誤判定してしまうことを防ぐ。
倉庫には、作業車がフォークリフト等の車両を運転して保管物を入出庫する倉庫もある。この場合、複数の保管棚が設置された倉庫では、隣り合う2つの保管棚の間の通路が狭く、車両が通路を通れない場合がある。また、温度センサ37が取り付けられたポールが倉庫の床面上に設置されている場合、車両がポールに接触してしまうことが起こり得る。ポールが倒れると、温度センサ37が故障してしまうおそれがある。
これに対して、本実施の形態2の空気調和装置1aは、赤外線センサ38の検出値を用いて空間の温度分布を示す3次元データを生成する。本実施の形態2の空気調和装置1aは、倉庫内に複数の温度センサ37を設ける必要がないため、倉庫内に保管棚および柱が設けられてない倉庫、および倉庫内にポールを設置することができない倉庫に、特に有効である。
実施の形態3.
実施の形態3は、実施の形態1で説明した空気調和装置が、他の空気調和装置の空調制御情報を参照して空調制御を行う場合である。本実施の形態3では、実施の形態1で説明した構成と同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本発明の実施の形態3の空気調和装置が適用される空調制御システムの構成を説明する。図22は、本発明の実施の形態3の空気調和装置が適用される空調制御システムの一構成例を示す図である。
空調制御システム200は、空気調和装置1と、サーバ90とを有する。図22に示すように、空気調和装置1は、ネットワーク100を介してサーバ90と接続される。また、サーバ90には、ネットワーク100を介して、他の空気調和装置1201〜120n(nは2以上の整数)が接続される。サーバ90は、空気調和装置1が実行する空調制御を分析し、他の空気調和装置1201〜120nの空調制御情報を含む履歴情報を参照して空気調和装置1に適した空調制御情報を抽出し、抽出した空調制御情報を空気調和装置1に提供するものである。
ネットワーク100は、例えば、インターネットである。空気調和装置1の通信手段56、および空気調和装置1201〜120nの図に示さないリモートコントローラと、サーバ90とは、共通の通信プロトコルで通信する。通信プロトコルは、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)である。
空気調和装置1の通信手段56は、空調環境情報および空調制御情報をメモリ54に格納し、これらの情報が変化すると、メモリ54が記憶する情報を更新する。空気調和装置1の通信手段56および空気調和装置1201〜120nのリモートコントローラは、空調環境情報を一定の周期でネットワーク100を介してサーバ90に送信する。また、空気調和装置1の通信手段56および空気調和装置1201〜120nのリモートコントローラは、空調制御内容を変更したタイミングで空調制御情報を、ネットワーク100を介してサーバ90に送信する。
空調環境情報は、例えば、空気調和装置が適用される倉庫の保管物の種類と、空調対象空間の体積と、温度センサ37毎に保管物と温度センサ37との距離を含む位置関係などの情報を含む。また、倉庫外の温度が倉庫内に影響を及ぼすことがあるので、空調環境情報が外気温度の情報を含んでもよい。空調環境情報は、倉庫に設けられた扉の数および扉の位置の情報を含んでいてもよい。
空調制御情報は、例えば、熱源側ユニット、負荷側ユニットおよび送風機の運転データと、倉庫内の平均温度を一定の温度まで下げるまでにかかった時間と、負荷側ユニットの風向調節の有無および風向の角度などの情報を含む。熱源側ユニットの運転データとは、例えば、圧縮機の回転数である。負荷側ユニットの運転データとは、例えば、膨張装置の開度およびファンの回転数である。送風機の運転データとは、例えば、送風機の台数、ならびに送風機毎の風量および風向である。
図22に示したサーバ90の構成を説明する。図23は、図22に示したサーバの一構成例を示すブロック図である。図23に示すように、サーバ90は、記憶装置91と、制御装置92とを有する。制御装置92は、プログラムを記憶するメモリ93と、プログラムを実行するCPU94とを有する。記憶装置91は、例えば、ハードディスクドライブ装置である。記憶装置91は、空気調和装置1および1201〜120nの各空気調和装置が適用される倉庫に対応して、空調環境情報および空調制御情報の時系列変化を示す履歴情報を記憶する。
制御装置92は、空気調和装置1および1201〜120nの各空気調和装置から受信する空調環境情報および空調制御情報を記憶装置91に格納する。また、制御装置92は、空調環境情報および空調制御情報を含む対応策要求信号を空気調和装置1から受信すると、記憶装置91が記憶する履歴情報を参照する。そして、制御装置92は、対応策要求信号に含まれる空調環境情報および空調制御情報に最も近似した倉庫の空調制御情報を記憶装置91から読み出し、読み出した空調制御情報を補完制御情報として空気調和装置1に送信する。
本実施の形態3の空気調和装置1の動作を説明する。図24は、本発明の実施の形態3に係る空気調和装置の動作手順を示すフローチャートである。図24に示すステップS201〜S206の動作は、図14を参照して説明したステップS101〜S106と同じため、本実施の形態3では、その詳細な説明を省略する。
冷凍サイクル制御手段57は、タイマー58が計測する時間tが目標時間tmに到達したか否かを判定し(ステップS206)、時間tが目標時間tmに到達すると、ステップS207に進む。ステップS207において、冷凍サイクル制御手段57は、目標時間tm内に指定区間の温度センサ37の検出値が目標温度Tsに到達したか否かを判定する。ステップS207の判定の結果、指定区画の温度が目標時間tm内に目標温度Tsに到達しない場合、冷凍サイクル制御手段57は、冷凍能力を上げずに指定区画の温度を目標温度Tsに到達させる対応策をサーバ90に要求することを通信手段56に指示する。
通信手段56は、冷凍サイクル制御手段57からの指示にしたがって、現在の空調環境情報および空調制御情報に近似した倉庫を参照するために(ステップS208)、空調環境情報および空調制御情報を含む対応策要求信号をサーバ90に送信する。サーバ90の制御装置92は、対応策要求信号を空気調和装置1から受信すると、記憶装置91が記憶する履歴情報を参照する。そして、制御装置92は、対応策要求信号に含まれる空調環境情報および空調制御情報に近似した倉庫の履歴情報がある場合、履歴情報から補完制御情報を記憶装置91から読み出して空気調和装置1に送信する。通信手段56は、サーバ90から補完制御情報を受信すると(ステップS209)、受信した補完制御情報を冷凍サイクル制御手段57に渡す。一方、制御装置92は、対応策要求信号に含まれる空調環境情報および空調制御情報に近似した倉庫の履歴情報がない場合、対応策要求信号に対して何も空気調和装置1に返信しない。
図25は、図24に示すステップS208〜S209の動作を説明するための模式図である。ここでは、説明を簡単にするために、空気調和装置1が、倉庫の保管物の種類を検索条件として、補完制御情報を取得する場合で説明する。倉庫40の保管物の種類が保管物Xである場合、空気調和装置1は、図25に示すように、サーバ90が記憶する、保管物A、BおよびC等の各保管物の倉庫の履歴情報を参照し、保管物Xに近似した保管物の倉庫を特定する。保管物Xが保管物Bに近似したものである場合、ステップS209において、空気調和装置1は、保管物Bを保管する倉庫に設置された空気調和装置の空調制御情報をサーバ90が記憶する履歴情報から取得する。
冷凍サイクル制御手段57は、通信手段56から補完制御情報を受け取ると、受け取った補完制御情報にしたがって空調制御内容を変更する(ステップS210)。例えば、倉庫40内に送風機が設置されている場合、冷凍サイクル制御手段57は、送風機の風向を指定区画に向ける制御を行う。冷凍サイクル制御手段57は、ステップS210の後、ステップS205に戻る。
ステップS208の判定の結果、冷凍サイクル制御手段57は、サーバ90から空調制御情報を取得できなかった場合、冷凍能力を上げ(ステップS211)、ステップS205に戻る。ステップS211において、冷凍サイクル制御手段57は、例えば、圧縮機21の回転数を上げる。また、ステップS207の判定の結果、指定区画の温度が目標時間tm内に目標温度Tsに到達した場合、冷凍サイクル制御手段57は、冷凍能力を下げる(ステップS212)。ステップS212において、冷凍サイクル制御手段57は、例えば、圧縮機21の回転数を下げる。
なお、サーバ90の制御装置92は、空気調和装置1から対応策要求信号を受信するか否かに関わらず、記憶装置91が記憶する大量の履歴情報を解析し、最適な空調環境実現のための情報を空気調和装置1に提供してもよい。
例えば、空調環境情報が、倉庫内における、負荷側ユニット、送風機および保管物エリアのレイアウトの情報を含む場合、制御装置92は、他の倉庫のレイアウト情報を利用して、冷却効率のよいレイアウトを空気調和装置1に提供してもよい。また、空調環境情報または空調環境情報が空気調和装置1の稼働時間を含む場合、制御装置92は、稼働時間が買い替えの基準時間に到達している場合、空気調和装置の買い替えを提案する情報を空気調和装置1に提供してもよい。また、空調環境情報が保管物の入出庫の頻度および時間帯等の運用情報を含む場合、制御装置92は、空気調和装置1の現在の運用情報を解析し、保管物を効率よく入出庫する運用情報を空気調和装置1に提供してもよい。
また、制御装置92は、ネットワーク100を介して他のサーバから、倉庫40が設置された地域の天気情報および交通情報を取得してもよい。この場合、制御装置92は、天気情報から外気温度の変化を予測し、交通情報から保管物の入出庫の時間を予測し、これらの予測結果に基づく空調制御を空気調和装置1に提供することができる。
さらに、空気調和装置1は、倉庫内全体の温度分布を示す3次元データをサーバ90に提供してもよい。この場合、制御装置92は、3次元データを解析して、温度管理が重要では無い区画31の温度と温度管理が重要な区画31の温度とが異なるように制御するゾーニング空調制御情報を空気調和装置1に提供する。空気調和装置1は、サーバ90から提供されたゾーニング空調制御情報にしたがって空気調和を実行することで、倉庫のエネルギー管理を高機能化できるだけでなく、低消費電力化を実現できる。
本実施の形態3の空気調和装置1は、他の空気調和装置の空調制御の履歴情報を参照し、履歴情報を用いて空調制御を行って、指定区画の温度を目標温度Tsに近づけるものである。
本実施の形態3によれば、空気調和装置1は、保管物が置かれた指定区画の温度を目標温度Tsに近づける際、冷凍能力を上げる制御の代わりに、空気調和装置1の空調環境に近似した倉庫で過去に実行された空調制御を適用できる。空気調和装置1は、他の空気調和装置の履歴情報を参照し、同じような空調環境で過去に行われた多くの空調制御の実績を活用することで、消費電力量が増加する制御を採用しないですむ。その結果、空気調和装置1は消費電力量の増加を抑制できる。なお、本実施の形態3を実施の形態2に適用してもよい。
実施の形態4.
実施の形態1〜3では、ユーザが保管物を保管する区画を空気調和装置に指定する場合で説明したが、本実施の形態4は、複数の区画毎に物の存在を検出する物体検知センサを有するものである。本実施の形態4では、実施の形態1で説明した構成と同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施の形態4の空気調和装置の構成を説明する。図26は、本発明の実施の形態4に係る空気調和装置が適用される倉庫の保管棚の一構成例を示す外観斜視図である。図27は、本発明の実施の形態4に係る空気調和装置のリモートコントローラの一構成例を示すブロック図である。保管棚30a〜30cは同様な構成であるため、ここでは、保管棚30aの構成を説明し、保管棚30bおよび30cの説明を省略する。
図26に示すように、保管棚30aにおいて、区画31毎に物体検知センサ45が設けられている。物体検知センサ45は、例えば、光センサである。保管棚30a〜30cに設けられた全ての物体検知センサ45は通信手段56と接続されている。物体検知センサ45は、物体を検知すると、オン信号を出力し、物体を検知しないと、オフ信号を出力する。物体検知センサ45と通信手段56との接続手段は、有線であってもよく、無線であってもよい。メモリ54は、全ての物体検知センサ45に対応する区画31のアドレスを記憶している。
通信手段56は、全ての温度センサ37の検出値と全ての物体検知センサ45の検出値とを、アドレスに対応づけてメモリ54に記憶させる。例えば、図8に示したテーブルにおいて、通信手段56は、アドレス情報に対応して、物体検知センサ45の検出値を記録する。また、通信手段56は、検出値がオン信号である物体検知センサ45に対応する区画31を冷凍サイクル制御手段57に通知する。
冷凍サイクル制御手段57は、通信手段56から通知された区画を指定区画に設定する。冷凍サイクル制御手段57は、実施の形態1と同様に、指定区画の温度が目標温度Tsと一定の範囲で一致するように、冷媒回路60の冷凍サイクルを制御する。通信手段56から通知された区画31が複数である場合、冷凍サイクル制御手段57は、通知された複数の区画31を指定区画に設定し、複数の指定区画の温度の平均値が目標温度と一定の範囲で一致するように冷凍サイクルを制御する。
本実施の形態4の空気調和装置1の動作については、図14に示したステップS101において、保管物が置かれた区画31を指定区画に自動的に設定することを除いて、図14を参照して説明した動作と同様になるため、その詳細な説明を省略する。
なお、物体検知センサ45は、RFID(Radio Frequency Identification)読み取り装置であってもよい。この場合、各保管物にRFIDタグが貼り付けられていればよい。
また、本実施の形態4においても、図17に示した無線ユニット70を適用してもよい。この場合、制御回路73に複数の物体検知センサ45が接続され、制御回路73は、一定の周期で物体検知センサ45の検出値を、無線通信回路74を介してリモートコントローラ50に送信する。また、無線ユニット70が図に示さない表示部を有し、制御回路73が表示部に光で種々の表示をさせてもよい。例えば、制御回路73が、物体検知センサ45の検出値から区画31に保管物が置かれていると判定すると、表示部に光を点灯させることで、その区画31に保管物があることを作業者に知らせることができる。
また、倉庫が図19に示した倉庫40cである場合、物の存在を検出する物体検知センサ45aは、複数の物体検知センサ45の代わりに、カメラであってもよい。図28は、本発明の実施の形態4に係る空気調和装置が適用される倉庫の別の構成例を示す外観斜視図である。
物体検知センサ45aは図20に示した制御部51aの通信手段56と接続される。物体検知センサ45aは、一定の周期で撮影し、撮影で取得した画像データを出力する。通信手段56は、物体検知センサ45aから取得する画像データをメモリ54に格納し、一定時間保存する。区画判定手段59は、メモリ54が記憶する複数の画像データを用いて保管物が置かれた位置を判定する。例えば、区画判定手段59は、メモリ54が記憶する複数の画像データのうち、格納された時間が現在時刻に近い2つの画像データを比較し、2つの画像データの違いから保管物が置かれたか否かを判定する。
区画判定手段59は、画像データを用いて保管物の位置を特定すると、保管物が占める空間を指定区画に設定する。そして、区画判定手段59は、指定区画に対応する赤外線センサ38の検出値を読み出し、指定区画の座標情報に対応づけて温度データをメモリ54に記憶させる。なお、区画判定手段59は、物体検知センサ45aから取得する画像データと赤外線センサ38から取得する検出値とを解析して保管物の置かれた位置を判定してもよい。
本実施の形態4では、区画判定手段59は、倉庫内の画像データを解析することで、保管物と作業者との大きさの違いから保管物をより正確に識別することができ、指定区画の判定精度が向上する。また、作業者が保管物を倉庫に運び込んだとき、保管物の温度が倉庫内の周囲温度に近い温度であっても、区画判定手段59は、画像データから保管物が運び込まれたことを認識でき、保管物の検知精度が向上する。
本実施の形態4の空気調和装置1および1aは、保管物が区画31に置かれると物体検知センサ45および45aが、保管物が置かれた区画31を検出するため、ユーザは、操作部を介して保管物を置く位置を入力する必要がない。そのため、ユーザは、入力操作の手間を省くことができる。
また、本実施の形態4の空気調和装置1および1aは、倉庫内の複数の区画31毎に保管物の有無と温度とが検出されるため、倉庫内で保管物が置かれた区画31の温度と、倉庫内に保管物が置かれていない区画31の温度との情報を取得できる。空気調和装置1および1aは、保管物が保管された区画31の温度を管理することで、保管物の冷却管理を確実に行うことができる。その結果、保管物の品質を向上させることができる。また、空気調和装置1および1aは、冷却が不要な区画31の冷却を弱めることで、省エネルギー化を図ることができる。なお、本実施の形態4を、実施の形態1だけでなく、実施の形態2および3に適用してもよい。