JP5248094B2 - 光学材料用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
特に、本発明は、光弾性係数の絶対値の小さい光学材料用樹脂組成物および該樹脂組成物からなる光学素子用成形体フィルムに関する。
このような高度な光学特性の一つに複屈折性がある。一般に、高分子は分子主鎖方向とそれに垂直方向とで屈折率が異なるために複屈折を生じる。用途によっては、この複屈折を厳密にコントロールすることが求められている。例えば、液晶の偏光板に用いられる保護フィルムの場合は、全光線透過率が同じであっても複屈折がより小さい高分子材料成形体が必要とされ、トリアセチルセルロースが代表的な材料として用いられる。一方、高分子材料成形体に意識的に複屈折を生じさせ、この複屈折率を利用して、偏光板により偏光された光を円偏光に変えたり(1/4波長板等)、液晶が持つ複屈折を補償する(位相差フィルムなどの光学補償フィルム等)ことも行われている。そして、このような複屈折性光学材料としては、ポリカーボネート等が代表的な材料として知られている。
外力による複屈折の生じやすさは光弾性係数の絶対値によって表されるが、前述のポリカーボネートは光弾性係数の絶対値が大きいため、これに代わる光弾性係数の絶対値が小さい複屈折性材料が求められている。
光弾性係数の絶対値が小さい材料としてはメタクリル酸メチルの単独重合体(PMMA)やアモルファスポリオレフィン(APO)が知られているが(例えば非特許文献1参照)、これらの材料でもまだ光弾性係数の絶対値は満足のいくものではない。
しかし、樹脂又は樹脂組成物を溶融押出法でフィルムに成形する場合、押出機内にて樹脂又は樹脂組成物が劣化し、フィルムが着色や変色する、或いは、光学的に透明フィルムが得られないといった問題がある。さらに架橋生成物などに起因するゲルや、焼け樹脂に起因する褐色或いは黒い点状などの外観欠陥が発生したり、樹脂分解ガスに起因する発泡が発生したり、メヤニなどに起因するダイラインなどのスジ状欠陥が発生するなど外観不良が発生するといった問題がある。
そして、本発明者らは、熱可塑性樹脂の高分子量領域におけるゲル化は、酸化によって引き起こされることに着目し、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、水素キノリン系酸化防止剤をはじめとする様々な酸化防止剤について検討したところ、これらの酸化防止剤の中で、フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤には、極めて優れたゲル化防止効果があることが判明した。
さらに、このようなフェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤のゲル化防止効果は、特に、アクリル系樹脂(A−1)とスチレン系樹脂(A−2)とを含む熱可塑性樹脂組成物との組み合わせにおいて、より顕著に発揮されることが判明した。
また、このようなフェノール系酸化防止剤について検討したところ、フェノール系酸化防止剤の中でも、特に、分子内にアクリレート基を有するフェノール系酸化防止剤が、ゲル化防止効果をより顕著に発揮し、しかも樹脂組成物の光弾性係数に与える影響が小さいことが判明した。
熱可塑性樹脂組成物(A)と、フェノール系酸化防止剤(B−1)及び/又はリン系酸化防止剤(B−2)からなる酸化防止剤(B)を含む光学材料用樹脂組成物である。
まず、酸化防止剤(B)について説明する。
本発明の光学材料用樹脂材料組成物に含まれる酸化防止剤(B)は、フェノール系酸化防止剤(B−1)及び/又はリン酸系酸化防止剤(B−2)からなる。
ここで、フェノール系酸化防止剤(B−1)及び/又はリン系酸化防止剤(B−2)の配合量が0.01質量部未満である場合には、得られる熱可塑性樹脂組成物(A)の高温加工時における熱安定性が乏しくなり異物の発生を十分に抑制できない場合があり、一方、配合量が2質量部を超える場合には、揮発分が多く出てしまい熱可塑性樹脂組成物(A)の加工性を低下させる場合がある。
分子中にアクリレート基を有するフェノール系酸化防止剤としては、例えば下記の一般式で表される化合物が好ましい。
[一般式(1)]
R2は、より好ましくはt−ブチル基、t−アミル基またはt−オクチル基である。R3は、より好ましくはt−ブチル基、t−アミル基である。
[一般式(2)]
本発明において熱可塑性樹脂組成物(A)に限定はないが23℃における未延伸時の光弾性係数が−4×10-12/Pa〜4×10-12/Pa未満であるものが好ましい。
CR[/Pa]=Δn/σR Δn=nx−ny
(式中、CR:光弾性係数、σR:伸張応力[Pa]、Δn:応力付加時の複屈折、nx:伸張方向と平行な方向の屈折率、ny:伸張方向と垂直な方向の屈折率)
光弾性係数の値がゼロに近いほど外力による複屈折の変化が小さいことを示しており、各用途において設計された複屈折の変化が小さいことを意味する。
光弾性係数の値は、−3.5×10-12/Pa〜3.5×10-12/Paであることがさらに好ましく、−3.0×10-12/Pa〜3.0×10-12/Paであることがとりわけ好ましい。
具体例としては、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル、より選ばれる1種以上の単量体を重合したものである。
メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、他のメタリル酸アルキルエステル類;アクリル酸アルキルエステル類;スチレン及びo−メチルスチレン,p−メチルスチレン,2,4−ジメチルスチレン,エチルスチレン,p−tert−ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン;α−メチルスチレン,α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類が挙げられる。これらは一種又は二種以上組み合わせて使用することもできる。
メタクリル酸メチルにアクリル酸アルキルエステル類を共重合させる場合のアクリル酸アルキルエステル類の使用量は、耐熱分解性の観点から0.1重量%以上であることが好ましく、耐熱性の観点から15重量%以下であることが好ましい。
0.2重量%以上14重量%以下であることがさらに好ましく、1重量%以上12重量%以下であることがとりわけ好ましい。
また、本発明においてはアイソタクチックポリメタクリル酸エステルとシンジオタクチックポリメタクリル酸エステルを同時に用いることもできる。
また、アクリル系樹脂(A−1)として、分子量、組成等が異なる2種以上のものを同時に用いることができる。
溶液重合を行う場合には、単量体の混合物をトルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素の溶媒に溶解して調整した溶液を用いることができる。塊状重合により重合させる場合には、通常行われるように加熱により生じる遊離ラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
特に、90℃以上の高温下で重合を行わせる場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上でかつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤などが好ましく、具体的には1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等を挙げることができる。
これらの開始剤は0.005〜5質量%の範囲で用いられる。
重合反応に必要に応じて用いられる分子量調節剤は、一般的なラジカル重合において用いる任意のものが使用され、例えば、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が特に好ましいものとして挙げられる。
これらの分子量調節剤は、アクリル系樹脂(A−1)の重合度が上記の範囲内に制御されるような濃度範囲で添加される。
アクリル系樹脂(A−1)の製造方法は、特公昭63−1964号公報等に記載されている方法等を用いることができる。
ここで、芳香族ビニル系単量体とは、芳香族炭化水素の側鎖にビニル基が結合している単量体をいい、(メタ)アクリル系単量体とは、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの誘導体をいう。
より好ましくは、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が50質量%以上83質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が12質量%以上40質量%以下、上記一般式(4)で表される化合物単位が5質量%以上18質量%以下である。
さらに好ましくは、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が50質量%以上78質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が16質量%以上40質量%以下、上記一般式(4)で表される化合物単位が6質量%以上15質量%以下である。
水系懸濁重合は、無水マレイン酸を単量体成分として用いる場合には、その水溶性が高いため、終始安定な懸濁系を保つことが困難であり、推奨されない。
過酸化系開始剤として、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを使用すると、耐熱アクリル樹脂の着色はないが、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを使用したポリマーは、耐水性が低く、熱水に浸漬した場合の重量増加が大きく、表面が白化することがある。
したがって、メタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体(A−1−1−1)の重合には、ラウロイルパーオキサイドのようなジアシルパーオキサイドを適用することが好ましい。
耐熱アクリル系樹脂(A−1−2)の第一の単量体成分であるメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル及び第二の単量体成分である芳香族ビニル化合物の具体例、その好ましい共重合割合は、前述の耐熱アクリル系樹脂(A−1−1)と同様である。
6員環構造の酸無水物単位を生成するための不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等が挙げられる。
耐熱アクリル系樹脂(A−1−2)は、特公平02−26641号、特開2006−266543号、特開2006−274069号、特開2006−274071号、特開2006−283013公報、特開2005−162835公報に記載の方法を参照して、組成比を決定し、製造、評価することができる。
ここで、スチレン系単量体とは、その構造中にスチレン骨格を有する単量体をいい、例えば、スチレンのほかo−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどの核アルキル置換スチレン;α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンなどのα−アルキル置換スチレンなどのビニル芳香族化合物単量体が挙げられ、代表的なものはスチレンである。
このような他の単量体成分の含量(共重合割合)は、スチレン系樹脂(A−2)に対して50質量%未満であることが好ましい。
また、スチレン−無水マレイン酸共重合体(A−2−1)、スチレン−メタクリル酸共重合体(A−2−2)及びスチレン−アクリロニトリル共重合体(A−2−3)は、アクリル系樹脂(A−1)との相溶性が高いため、透明性が高く、使用中に相分離を起こして透明性が低下することがない成形体を得られることからも好ましい。このような観点からは、特に、アクリル系樹脂(A−1)としてメタクリル酸メチルを単量体成分として含む重合体を用いる場合に特に好ましい。
スチレン−メタクリル酸共重合体(A−2−2)において、共重合体中のメタクリル酸含量は0.1質量%以上50質量%未満であることが好ましい。より好ましい範囲は0.1〜40質量%であり、さらに好ましい範囲は0.1〜30質量%である。共重合体中のメタクリル酸含量が0.1質量%以上であると耐熱性に優れ、50質量%未膜の範囲であれば透明性に優れるので好ましい。
スチレン−アクリロニトリル共重合体(A−2−3)において、共重合体中のアクリロニトリル含量は1〜40質量%であることが好ましい。より好ましい範囲は1〜30質量%であり、さらに好ましい範囲は1〜25%である。共重合体中のアクリロニトリルの含量が1〜40質量%であると、透明性に優れるため好ましい。
また、スチレン系樹脂においては、共役ジエン、スチレン系単量体のベンゼン環の不飽和二重結合が水素添加されていてもよい。水素添加率は核磁気共鳴装置(NMR)によって測定できる。
熱可塑性樹脂組成物(A)におけるアクリル系樹脂(A−1)の割合は、熱可塑性樹脂組成物(A)100重量部に対して20〜80質量部であることが好ましい。スチレン系樹脂(A−2)の割合は、熱可塑性樹脂組成物(A)100重量部に対して20〜80質量部であることが好ましい。
さらに、熱可塑性樹脂組成物(A)におけるアクリル系樹脂(A−1)とスチレン系樹脂(A−2)の質量比((A−1)/(A−2))は、アクリル系樹脂(A−1)、スチレン系樹脂(A−2)の種類にも依存するが、20/80〜80/20であることが好ましく、、30/70〜70/30であることがより好ましい。
光弾性係数の点から、これらの重合体は、熱可塑性樹脂組成物(A)に対して、20重量%以下であることが好ましい。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂組成物(A)100質量部に対して、紫外線吸収剤が0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜2質量部、さらに好ましくは0.1〜1.5質量部以下である。
本発明の光学材料用組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて原料、すなわち、熱可塑性樹脂組成物(A)、酸化防止剤(B)、必要に応じて上記その他の成分等、を添加して溶融混練して樹脂組成物を製造することができる。
光学素子用成形体としてフィルム又はシートを製造する場合は、例えば、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸フィルム、シートを押し出し成形することができる。押し出し成形により成形品を得る場合は、事前に原料を溶融混錬した光学材料用樹脂組成物を用いることもできれば、押し出し成形時に原料の溶融混錬を経て成形することもできる。
また、熱可塑性樹脂組成物(A)、酸化防止剤(B)に共通な良溶媒、例えば、クロロホルム等の溶媒を用いキャスト成形し未延伸フィルム、シートを得ることも可能である。
延伸倍率は、得られた延伸フィルムをガラス転移温度よりも20℃以上高い温度で収縮させ以下の関係式から延伸倍率を決定できる。また、ガラス転移温度はDSC法や粘弾性法により求めることができる。
延伸倍率(%)=[(収縮前の長さ/収縮後の長さ)−1]×100
ここで、黄色度ΔYIとは、成形体の黄色の着色度合い、すなわち、着色、を示す値であり、JIS T7105によって定義され、以下の式によって求められる。
黄色度差ΔYI=YI−YI0
ここで、ΔYI=黄色度差、YI=成形体の黄色度、I0=空気の黄色度である。
ここで、ヘイズとは、成形体の透明性を示す値であり、ASTM D1003によって定義される。
<評価方法>
(1)複屈折、光弾性係数の測定
Macromolecules 2004,37,1062−1066に詳細の記載のある複屈折測定装置を用いた。レーザー光の経路にフィルムの引っ張り装置を配置し、23℃で伸張応力をかけながら複屈折を測定した。伸張時の歪速度は20%/分(チャック間:30mm、チャック移動速度:6mm/分)、試験片幅は7mmで測定を行った。複屈折のΔnと伸張応力(σR)の関係から、最小二乗近似により線形領域の直線の傾きをもとめ光弾性係数(CR)を求めた。
(2)ΔYIの測定
スガ試験機株式会社 多光源分光測定計 MSC−5N−GV5(JISZ8722−C条件の装置)を使用して、JIS T7105(プラスチックの光学的特性試験方法に準拠し、以下の式を用いて黄色度 ΔYIを測定した。ΔYIは、成形体の黄変色の度合いを示し、この値が小さいほど、着色が小さいことを示す。
黄色度差ΔYI=YI−YI0
ΔYI=黄色度差
YI=成形したフィルムの黄色度
YI0=空気の黄色度
(3)ヘイズの測定
フィルムのヘイズ値をASTM D1003に準拠し測定を行った。
(4)分子量及び分子量分布
GPC[東ソー製GPC−8020、検出RI,カラム昭和電工製Shodex K−805,801連結]を用い、溶媒はクロロホルム、測定温度40℃で、市販標準ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。
(5)異物の発生状況の判定
異物の発生状況を、以下の評価基準を用いて評価した。
◎◎: 異物が認められない。
◎ : 異物が特に認められない。
○ : 異物が認められない。
△ : 異物が僅かに認められる。
× : 異物が多く認められる。
××: 異物が非常に多く認められる。
試料となるスチレン−アクリロニトリル共重合体を熱プレス機を用いてフィルムに成形し、日本分光社製FT−410を用いて、フィルムの1603cm-1、2245cm-1におけるアクリロニトリル基に由来する吸光度を測定した。アクリロニトリル含量が既知のスチレン−アクリロニトリル共重合体を用いてあらかじめ求めておいたスチレン−アクリロニトリル共重合体中のアクリロニトリル含量と1603cm-1、2245cm-1の吸光度比との関係を用いて、スチレン−アクリロニトリル共重合体中のアクリロニトリル含量を定量した。
(7)スチレン−無水マレイン酸共重合体中の無水マレイン酸含有量の測定
試料となるスチレン−無水マレイン酸共重合体を重クロロホルムに溶解し、日本電子製1H−NMR(JNM ECA−500)を用い、周波数500MHz、室温にてNMR測定を行なった。測定結果より、スチレン単位中のベンゼン環のプロトンピーク(7ppm付近)と無水マレイン酸単位中のアルキル基のプロトンピーク(1〜3ppm付近)の面積比から、試料中のスチレン単位と無水マレイン酸単位のモル比を求めた。得られたモル比とそれぞれのモノマー単位の質量比(スチレン単位:無水マレイン酸単位=104:98)から、スチレン−無水マレイン酸共重合体中の無水マレイン酸の含量を求めた。
(8)スチレン−メタクリル酸共重合体中のメタクリル酸含有量の測定
試料となるスチレン−メタクリル酸共重合体を重クロロホルムに溶解し、日本電子製1H−NMR(JNM ECA−500)を用い、周波数500MHz、室温にてNMR測定を行なった。測定結果より、スチレン単位中のベンゼン環のプロトンピーク(7ppm付近)とメタクリル酸単位中のアルキル基のプロトンピーク(1〜3ppm付近)の面積比から、試料中のスチレン単位とメタクリル酸単位のモル比を求めた。得られたモル比とそれぞれのモノマー単位の質量比(スチレン単位:メタクリル酸単位=104:86)から、スチレン−メタクリル酸共重合体中のメタクリル酸の含量を求めた。
(9)メタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体中のそれぞれの含有量の測定
試料となるメタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体を重クロロホルムに溶解し、日本電子製1H−NMR(JNM ECA−500)を用い、周波数500MHz、室温にてNMR測定を行なった。測定結果より、スチレン単位中のベンゼン環のプロトンピーク(7ppm付近)と無水マレイン酸単位中のアルキル基のプロトンピーク(1〜3ppm付近)とメタクリル酸メチル単位中のメチル基のプロトンピーク(0.5〜1ppm付近)の面積比から、試料中のスチレン単位と無水マレイン酸単位とメタクリル酸メチル単位のモル比を求めた。得られたモル比とそれぞれのモノマー単位の質量比(スチレン単位:無水マレイン酸単位:メタクリル酸メチル=104:86:100)から、メタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体中のそれぞれの含量を求めた。
1.アクリル系樹脂(A−1)
1−1 メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体1
メタクリル酸メチル89.2質量部、アクリル酸メチル5.8質量部、及びキシレン5質量部からなる単量体混合物に、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,3−トリメチルシクロヘキサン0.0294質量部、及びn−オクチルメルカプタン0.115質量部を添加し、均一に混合した。この溶液を内容積10リットルの密閉耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下に平均温度130℃、平均滞留時間2時間で重合した後、反応器に接続された貯層に連続的に送り出し、一定条件下で揮発分を除去し、さらに押出機に連続的に溶融状態で移送し、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体のペレットを得た。
得られたメタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体のアクリル酸メチル含量は6.0質量%、重量平均分子量は14.5万、ASTM−D1238に準拠して測定した230℃3.8kg荷重のメルトフロー値は1.0g/分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、−5.2×10-12/Paであった。
メタクリル酸メチル93.2質量部、アクリル酸メチル2.3質量部、及びキシレン3.3質量部からなる単量体混合物に、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,3−トリメチルシクロヘキサン0.03質量部、及びn−オクチルメルカプタン0.12質量部を添加し、均一に混合する。この溶液を内容積10Lの密閉耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下に平均温度130℃、平均滞留時間2時間で重合した後、反応器に接続された貯層に連続的に送り出し、一定条件下で揮発分を除去した。さらに押出機に連続的に溶融状態で移送し、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体のペレットを得た。
得られたメタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体のアクリル酸メチル含量は2.0%、質量平均分子量は10.2万、ASTM−D1238に準拠して測定した230℃3.8kg荷重のメルトフロー値は2.0g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、−4.5×10-12/Paであった。
特公昭63−1964号公報に記載の方法で、メタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体を得た。
得られたメタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体(A−1−1−1)
の組成は、メタクリル酸メチル74質量%、無水マレイン酸10質量%、スチレン16質量%であり、質量平均分子量は12.2万、ASTM−D1238に準拠して測定した230℃3.8kg荷重のメルトフロー値は1.6g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、−2.9×10-12/Paであった。
2−1 スチレン−無水マレイン酸共重合体(A−2−1)
装置の全てがステンレス鋼で製作されているものを用いて、連続溶液重合を行った。スチレン91.7質量部、無水マレイン酸8.3質量部の比率で合計100質量部を準備した。(ただし、両者は混合しない。)メチルアルコール5質量部、重合開始剤として1,1−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.03質量部をスチレンに混合し、第1調合液とした。0.95kg/hr.の速度で連続して内容積4リットルのジャケット付き完全混合重合機に供給した。
一方、70℃に加熱した無水マレイン酸を、第二調合液として0.10kg/hr.の速度で同一重合機へ供給し、111℃で重合を行った。重合転化率が54%となったところで、重合液を重合機から連続して取り出し、まず230℃に予熱後、230℃に保温し、20torrに減圧された脱揮器に供給し、平均滞留0.3時間経過後、脱揮器の低部のギヤポンプより連続して排出し、さらに押出機に連続的に溶融状態で移送し、スチレン−無水マレイン酸共重合体(A−2−1)のペレットを得た。
得られたスチレン−無水マレイン酸共重合体は無色透明で、中和滴定による組成分析の結果、そのスチレン含量は85質量%、無水マレイン酸含量15質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート値は2.0g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、4.1×10-12/Paであった。
装置の全てがステンレス鋼で製作されているものを用いて、連続溶液重合を行った。スチレン75.2質量%、メタクリル酸4.8質量%、エチルベンゼン20質量%を調合液とし、重合開始剤として1,1−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを用いた。この調合液を1L/hr.の速度で連続して、内容積2Lの攪拌機付きの完全混合重合器へ供給し、136℃で重合を行った。
固形分49%を含有する重合液を連続して取り出し、まず230℃に予熱後、230℃に保温し、20torrに減圧された脱揮器に供給し、平均滞留0.3時間経過後、脱揮器の低部のギヤポンプより連続して排出した。
得られたスチレン−メタクリル酸共重合体(A−2−2)は無色透明で、中和滴定による組成分析の結果、スチレン含量92質量%、メタクリル酸含量8質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、3.8kg荷重のメルトフローレート値は5.2g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、4.8×10-12/Paであった。
攪拌機付き完全混合型反応機に、スチレン72質量%、アクリロニトリル13質量%、エチルベンゼン15質量%からなる単量体混合物を連続的にフイードし、150℃、滞留時間2時間で重合反応を行った。
得られた重合溶液を押出機に連続的に供給し、押出機で未反応単量体、溶媒を回収し、スチレン−アクリロニトリル共重合体(A−2−3)のペレットを得た。
得られたスチレン−アクリロニトリル共重合体(A−2−3)は無色透明で、中和滴定による組成分析の結果、スチレン含量80質量%、アクリロニトリル含量20質量%であり、ASTM−D1238に準拠した220℃、10kg荷重のメルトフローレート値は13g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、5.0×10-12/Paであった。
比較のため、シクロオレフィン系樹脂(日本ゼオン株式会社製 Zeonor1420R)を用いた。
(4−1)フェノール系酸化防止剤:IRGANOX1010(B−1−1)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤であるチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製IRGANOX1010(融点(Tm):110−125℃)を用いた。
(4−2)フェノール系酸化防止剤:IRGANOX1076(B−1−2)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤であるチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製IRGANOX1076(融点(Tm):50−55℃)を用いた。
(4−3)フェノール系酸化防止剤:IRGANOX1098(B−1−3)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤であるチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製IRGANOX1098(融点(Tm):156−161℃)を用いた。
(4−4)フェノール系酸化防止剤:IRGANOX3790(B−1−4)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤であるチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製IRGANOX3790(融点(Tm):157.6−161.8℃)を用いた。
(4−5)フェノール系酸化防止剤:スミライザ− GS(B−1−5)
アクリレート基を有するフェノール系酸化防止剤である住友化学(株)社製スミライザ− GS(融点(Tm):≧115℃)を用いた。
(4−6)リン系酸化防止剤:IRGAFOS 168(B−2−1)
リン系酸化防止剤であるチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)IRGAFOS 168(融点(Tm):183−186℃)を用いた。
(4−7)リン系酸化防止剤:スミライザ− GP(B−2−2)
リン系酸化防止剤である住友化学(株)社製スミライザ− GP(融点(Tm):>115℃)を用いた。
(4−8)比較の酸化防止剤1(B’−1)
ラクトン系酸化防止剤であるチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製)HP−136(融点(Tm):99℃及び124℃)を用いた。
(4−9)比較の酸化防止剤2(B’−2)
ヒドロキシルアミン系酸化防止剤であるチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製IRGASTAB FS 042(融点(Tm):56−92℃)を用いた。
(4−10)比較の酸化防止剤3(B’−3)
イオウ系酸化防止剤であるチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製IRGANOX PS 800 FL(融点(Tm):39−41℃)を用いた。
(5−1)アデカスタブLA−31
比較例として、紫外線吸収剤である旭電化(株)社製アデカスタブLA−31(融点(Tm):195℃)を用いた。
(5−2)チヌビンP
比較例として、紫外線吸収剤であるチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製TinuvinP(融点(Tm):128℃)を用いた。
表1に記載の配合比の樹脂組成物を、プラスチック工学研究所製Tダイ装着押し出し機(BT−30−C−36−L型/幅400mmTダイ装着/リップ厚0.8mm)を用いて、スクリュー回転数、押し出し機のシリンダー内樹脂温度、Tダイの温度を調整し押し出し成形をすることにより実施例1〜7、比較例1〜7の未延伸フィルムを得た。
を表1に示す。なお、比較例4〜7については、酸化防止剤によると思われる測定試料の着色がひどく、ΔYIの測定を実施することができなかった。
一方、酸化防止剤の配合のない比較例1は光弾性係数の絶対値は小さいものの、成形加工時の加熱による異物の発生が著しかった。また、その他の酸化防止剤である、ラクトン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤又は硫黄系酸化防止剤を配合した比較例2〜7の樹脂組成物は、成形加工時の加熱による異物の発生が多少改善されているものもあるものの、その程度は十分でなく、また、黄変(着色)、着色の点で低いレベルにあった。
実施例2、3、比較例1、4の樹脂組成物中の分子について、GPCを用い分子量分布を測定した。また、対照として、アクリル系樹脂(A−1)とスチレン系樹脂(A−2)とが40/60の割合(質量部)となるようそれぞれのペレットを混合したものを用意し、この混合物中の分子について同様にして分子量分布を測定した。その測定結果を図1及び図2に示す。
図1、2において、横軸は分子量の常用対数、縦軸は分子量Mの分子の重量分率であり、図2は、図1の高分子量付近の拡大図である。
実施例2及び3のフイルムにおいては、その中の高分子は原料ペレットの分子と全く同様の分子量分布曲線を示すのに対し、比較例1及び4のフィルムにおいては、高分子量領域の重量分率が高くなり、且つ、高分子量側に分子量分布曲線がシフトしていた。
以上より、比較例1及び4のフイルムにおいては、熱劣化が起こり、その中に含まれる分子の高分子量化やゲル化現象が生じ、これにより異物が発生していると推測される。
これに対し、酸化防止剤(B)を含有する実施例2及び3のフイルムにおいては、かかる熱劣化が抑制され、それに伴い高分子量化やゲル化の動きが防止され、異物の発生が抑制されたと推測される。
表2及び表3に記載の配合比の樹脂組成物を、プラスチック工学研究所製Tダイ装着押し出し機(BT−30−C−36−L型/幅400mmTダイ装着/リップ厚0.8mm)を用いて、スクリュー回転数、押し出し機のシリンダー内樹脂温度、Tダイの温度を調整し押し出し成形をすることにより実施例8〜27、比較例8〜25の未延伸フィルムを得た。
各未延伸フィルムのフィルム特性(光弾性係数の絶対値、ΔYI、ヘイズ、色、異物)
を表2及び表3に示す。
なお、比較例11と比較例12との比較、比較例10と比較例13との比較、比較例8と比較例14との比較等から、紫外線吸収剤は、熱可塑性樹脂組成物(A)の光弾性係数を増加させる傾向を有することが確認できた。
特に、本発明の光学材料用樹脂組成物は、高い複屈折性と低い光弾性係数が要求される光学素子用、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる偏光板保護フィルムや位相差フィルムを製造するための光学材料として好適に用いることができる。
また、本発明の位相差フィルムは、偏光板と貼合して円偏光板とすることにより、反射型液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置の内部反射を低減することができ、有用である。
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂組成物(A)(ただし、紫外線吸収性単量体単位を有する熱可塑性樹脂を除く)と、フェノール系酸化防止剤(B−1)及び/又はリン系酸化防止剤(B−2)からなる酸化防止剤(B)を含む光学材料用樹脂組成物からなる光学素子用成形体フィルムであって、
前記熱可塑性樹脂組成物(A)が、アクリル系樹脂(A−1)及びスチレン系樹脂(A−2)を含み、
前記アクリル系樹脂(A−1)が、メタクリル酸メチルの単独重合体;アクリル酸アルキルエステル単位が0.1質量%以上15質量%以下である、メタクリル酸メチル−アクリル酸アルキルエステル共重合体;並びに;メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が50質量%以上90質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が5質量%以上40質量%以下、下記一般式(4)で表される化合物単位が5質量%以上20質量%以下である、耐熱アクリル系樹脂(A−1−1)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記スチレン系樹脂(A−2)が、無水マレイン酸含量が0.1〜50質量%であるスチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル含量が1〜40質量%であるスチレン−アクリロニトリル共重合体、及びメタクリル酸含量が1〜50質量%であるスチレン−メタクリル酸共重合体からなる群から選択される少なくとも1つの共重合体である、光学素子用成形体フィルム。
[一般式(4)]
- 前記酸化防止剤(B)を、前記熱可塑性樹脂組成物(A)100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下含む請求項1記載の光学素子用成形体フィルム。
- 前記熱可塑性樹脂組成物(A)中のアクリル系樹脂(A−1)とスチレン系樹脂(A−2)の含有量の合計が熱可塑性樹脂組成物(A)全体に対して80質量%以上であり、前記熱可塑性樹脂組成物(A)中のアクリル系樹脂(A−1)とスチレン系樹脂(A−2)の質量比((A−1)/(A−2))が20/80〜80/20である請求項1または請求項2に記載の光学素子用成形体フィルム。
- 光弾性係数が、−4×10-12〜4×10-12/Paである請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光学素子用成形体フィルム。
- 黄色度ΔYI値が1.5以下であり、ヘイズ値が2%以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光学素子用成形体フィルム。
- 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光学素子用成形体フィルムからなる偏光板保護フィルム。
- 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光学素子用成形体フィルムからなる位相差フィルム。
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