JP2008262182A - 位相差フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】光弾性係数の絶対値が小さく、全光透過率、耐折強度及び表面硬度にも優れた位相差フィルムを提供する。
【解決手段】アクリル系樹脂(A)を含む樹脂組成物を成形してなる位相差フィルムであって、光弾性係数の絶対値が0〜5×10−12/Pa、全光線透過率が80%以上、フィルム耐折強度が0.5以上である、位相差フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、光弾性係数の絶対値が小さく、全光透過率、耐折強度及び表面硬度に優れた位相差フィルムに関する。
最近、ディスプレイ市場の拡大に伴い、ディスプレイの中でも、柔軟性があり、曲面に配置することのできるフレキシブルディスプレイが検討されている。このようなフレキシブルディスプレイにおいては、より画像を鮮明にみたいという要求が高まっているため、フレキシブルディスプレイに用いる光学材料としては、単なる透明材料ではなく、より高度な光学特性が付与されかつフレキシブルな材料が求められている。このような高度な光学特性が付与された光学材料の一例としては、位相差フィルムが挙げられる。位相差フィルムは、液晶表示装置の色補償、視野角拡大等の問題を解決するために用いられ、高い複屈折性(高いレタデーション値)が要求される。位相差フィルムの材料としては、一般にポリカーボネートフィルムやポリスルホンフィルムのような高いレタデーション値を持つポリマーフィルムが用いられている。
最近はディスプレイが大型化し、それに伴い位相差フィルムの大型化も必要となってきている。位相差フィルムを大型化すると外力の偏りが生じるため、位相差フィルムが外力による複屈折変化を生じやすい材料からなる場合、複屈折の分布が生じ、コントラストが不均一となるという問題がある。外力による複屈折変化の生じやすさは、光弾性係数の絶対値によって表されるところ、現在、位相差フィルムとして一般的に用いられているポリカーボネートやポリスルホンは光弾性係数の絶対値が大きく、これに代わる光弾性係数の小さな複屈折性光学材料が切望されている。
光弾性係数の小さな材料としては、メタクリル酸メチルの単独重合体(PMMA)やアモルファスポリオレフィン(APO)が知られている(非特許文献1参照)。しかし、これらの材料でもまだ外力による複屈折変化が大きく、位相差フィルムとして十分な光学特性を有しているとは言えない。また、上記材料に関しては、フレキシブルディスプレイとして用いた場合に要求される、充分な柔軟性を有していないのが実情である。さらには、位相差フィルムをフレキシブルディスプレイに用いる場合、繰り返し貼り合わされて使用されることも想定されるところ、その表面が損傷しないような硬さを有することも必要とされる。
化学総説、No.39、1998(学会出版センター発行)
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、光弾性係数の絶対値が小さく、全光透過率、耐折強度及び表面硬度にも優れた位相差フィルムを提供することである。
そこで、本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究を行った結果、位相差フィルムとしてアクリル系樹脂含む樹脂組成物の成形体を用いることにより、光弾性係数の絶対値が小さく、全光透過率で評価される透明性、耐折強度及び表面硬度に優れた位相差フィルムが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)アクリル系樹脂(A)を含む樹脂組成物を成形してなる位相差フィルムであって、光弾性係数の絶対値が0〜5×10−12/Pa、全光線透過率が80%以上、フィルム耐折強度が0.5以上である、位相差フィルム。
(2)前記アクリル系樹脂(A)が、メタクリル系単量体及び/又はアクリル系単量体及び芳香族ビニル化合物を含む単量体混合物を共重合してなる共重合体である、上記(1)記載の位相差フィルム。
(3)前記アクリル系樹脂(A)が、5員環又は6員環構造を有する単位を含む耐熱アクリル系樹脂である、上記(1)又は(2)に記載の位相差フィルム。
(4)前記アクリル系樹脂(A)が、メタクリル酸アルキルエステル単位及び/又はアクリル酸アルキルエステル単位、芳香族ビニル化合物単位及び下記一般式(1)で表される化合物単位を含む耐熱アクリル系樹脂(A−1)である、上記(1)〜(3)のいずれか記載の位相差フィルム。
Figure 2008262182


(式中、Xは、OまたはN−Rを示し、Oは酸素原子、Nは窒素原子、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はシクロアルキル基を示す)
(5)前記耐熱アクリル系樹脂(A−1)が、メタクリル酸アルキルエステル単位及び/又はアクリル酸アルキルエステル単位を40質量%以上90質量%以下、芳香族ビニル化合物単位を5質量%以上40質量%以下、一般式(1)で表される化合物単位を5質量%以上20質量%以下含む、上記(4)記載の位相差フィルム。
(6)前記一般式(1)で表される化合物単位の共重合割合に対する前記芳香族ビニル化合物単位の共重合割合(芳香族ビニル化合物単位の共重合割合/一般式(1)で表される化合物単位の共重合割合)が1倍以上3倍以下である、上記(4)又は(5)に記載の位相差フィルム。
(7)前記樹脂組成物が、スチレン系樹脂(B)をさらに含む、上記(1)〜(6)のいずれか記載の位相差フィルム。
(8)前記スチレン系樹脂(B)が、スチレン−アクリロニトリル共重合体(B−1)である、上記(7)記載の位相差フィルム。
(9)前記スチレン系樹脂(B)が、スチレン−メタクリル酸共重合体(B−2)である、上記(7)記載の位相差フィルム。
(10)前記スチレン−メタクリル酸共重合体中のメタクリル酸の含量が、0.1〜50質量%である、上記(9)記載の位相差フィルム。
(11)前記スチレン系樹脂(B)が、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−3)である、上記(7)記載の位相差フィルム。
(12)前記スチレン−無水マレイン酸共重合体中の無水マレイン酸の含量が、0.1〜50質量%である、上記(11)記載の位相差フィルム。
(13)表面硬度が鉛筆硬度でH以上である、(1)〜(12)のいずれか記載の位相差フィルム。
(14)ガラス転移温度が120℃以上である、上記(1)〜(13)のいずれか記載の位相差フィルム。
(15)フレキシブルディスプレイ用である、上記(1)〜(14)のいずれか記載の位相差フィルム。
本発明によれば、位相差フィルムとしてアクリル系樹脂含む樹脂組成物の成形体を用いることにより、光弾性係数の絶対値が小さく、全光透過率、耐折強度及び表面硬度に優れた位相差フィルムが得られる。本発明の位相差フィルムは、高いレタデーション値を有すると共に、優れた透明性、柔軟性及び表面の硬さを併せ持っているため、液晶テレビ等の薄型ディスプレイ、特に、フレキシブルディスプレイ用の位相差フィルムとして好適に用いることが可能である。
以下、本発明を、望ましい実施の形態とともに詳細に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
本発明の位相差フィルムは、アクリル系樹脂(A)を含む樹脂組成物を成形することによって得られる位相差フィルムであって、光弾性係数の絶対値が0〜5×10−12/Pa、全光線透過率が80%以上、フィルム耐折強度が0.5以上である。
アクリル系樹脂(A)
本発明においてアクリル系樹脂(A)とは、アクリル酸、メタクリル酸及び/又はこれらの誘導体を単量体成分として含む重合体を意味する。アクリル系樹脂(A)としては、特に限定されず、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステルより選ばれる1種以上の単量体を重合したものが挙げられる。
これらの中でも、メタクリル酸メチルを単量体成分として含む重合体は、後述するスチレン系樹脂(B)の好適例である、スチレン−アクリロニトリル共重合体(B−1)、スチレン−メタクリル酸共重合体(B−2)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−3)との相溶性が高いため好ましい。
メタクリル酸メチルを単量体成分として含む重合体としては、メタクリル酸メチルの単独重合体でも、メタクリル酸メチルと他の単量体との共重合体であってもよい。メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル以外のメタリル酸アルキルエステル類;アクリル酸アルキルエステル類;スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレンやα−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;無水マレイン酸、無水グルタコン酸(グルタコン酸無水物)等の不飽和カルボン酸無水物類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類;グルタコンイミド類;環内に炭素間二重結合を有するラクトン類等が挙げられる。これらの単量体は、1種又は2種以上組み合わせて使用することもできる。このような他の単量体成分の共重合割合は、メタクリル酸メチルに対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
これらのメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の中でも、特にアクリル酸アルキルエステル類が、これを共重合させて得られるアクリル系樹脂の耐熱分解性に優れ、成形加工時の流動性が高くなる傾向にあるため好ましい。なお、ここでの耐熱分解性とは、高温時でのアクリル系樹脂の分解のし難さを意味する。
メタクリル酸メチルにアクリル酸アルキルエステル類を共重合させる場合のアクリル酸アルキルエステル類の使用量は、耐熱分解性の観点から、単量体混合物全体に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、耐熱性の観点から15質量%以下であることが好ましい。0.2質量%以上14質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上12質量%以下であることがさらに好ましい。
アクリル酸アルキルエステル類の中でも、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルが、少量のメタクリル酸メチルと共重合させるだけでも、前述の成形加工時の流動性に関して著しい改善効果が得られるため好ましい。
また、位相差フィルムの透明性、柔軟性及び表面の硬さを一層優れたものとする観点から、アクリル系樹脂(A)が、5員環又は6員環構造を有する単位を含む耐熱アクリル系樹脂であると好ましい。ここで、5員環構造としては、例えばマレイミド環、無水マレイン酸構造等が挙げられ、中でも無水マレイン酸構造が好ましい。また、6員環構造としては、ピラン環、ラクトン環、グルタルイミド環、無水グルタル酸構造等が挙げられ、中でも無水グルタル酸構造が好ましい。
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、成形体の強度の観点から、好ましくは5万以上、より好ましくは7万以上であり、成形加工性、流動性の観点から、好ましくは20万以下、より好ましくは15万以下である。なお、ここでの重量平均分子量は、アクリル系樹脂(A)が下記の2種以上の混合物である場合には、その平均値を意味する。
アクリル系樹脂(A)としては、組成、分子量などの異なる2種以上のアクリル系樹脂の混合物であってもよい。
また、アクリル系樹脂(A)として、アイソタクチックポリメタクリル酸エステルとシンジオタクチックポリメタクリル酸エステルを同時に用いることもできる。
アクリル系樹脂(A)を製造する方法としては、例えばキャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、アニオン重合等の一般に行われている重合方法を用いることができる。中でも、光学用途としては不都合な微小異物の混入を低減することが可能であるため、懸濁剤や乳化剤を用いない塊状重合や溶液重合が好ましい。
溶液重合を行う場合には、単量体の混合物をトルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素の溶媒に溶解して調製した溶液を用いることができる。塊状重合により重合させる場合には、通常行われるように加熱により生じる遊離ラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
重合反応に用いられる開始剤としては、ラジカル重合において用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えば、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を用いることができる。
特に、90℃以上の高温下で重合を行う場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤などが好ましい。具体的には、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等を挙げることができる。これらの開始剤は、例えば、全体のモノマー100質量%に対して、0.005〜5質量%の範囲で用いることが好ましい。
重合反応に必要に応じて用いられる分子量調節剤としては、ラジカル重合において一般に用いられる任意のものが使用でき、例えば、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が特に好ましいものとして挙げられる。これらの分子量調節剤は、アクリル系樹脂(A)の分子量が、上記の好ましい範囲内に制御されるような濃度範囲で添加する。
アクリル系樹脂(A)の具体的な製造方法としては、例えば、特公昭63−1964号公報等に記載されている方法等を用いることができる。
また、本発明においては、アクリル系樹脂(A)として、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルと、他の少なくとも1種類以上の単量体成分とを共重合させた3元以上の共重合体が挙げられる。
メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステルと共重合させる他の単量体成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン及びp−t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリル等の(メタ)アクリルアミド等;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル及び(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル等の不飽和カルボン酸アルキルエステル類等が挙げられる。
3元以上の共重合体の中でも特に好適なものとして、以下に記載する耐熱アクリル系樹脂(A−1)が挙げられる。
本発明において、耐熱アクリル系樹脂(A−1)とは、メタクリル酸アルキルエステル及び/又はアクリル酸アルキルエステル単位、芳香族ビニル化合物単位及び下記一般式(1)で表される化合物単位を含む共重合体である。
一般式(1)
Figure 2008262182

(式中、XはOまたは、N−Rを示し、Oは酸素原子、Nは窒素原子、Rは水素原子またはアルキル基またはアリール基またはシクロアルキル基を示す)
耐熱アクリル系樹脂(A−1)の第一の単量体成分であるメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルの具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。なかでも、メタクリル酸メチルが好ましい。
耐熱アクリル系樹脂(A−1)の第二の単量体成分である芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどの核アルキル置換スチレン;α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンなどのα−アルキル置換スチレン等が挙げられる。なかでも、スチレンが好ましい。
耐熱アクリル系樹脂(A−1)の第三の単量体成分である一般式(1)で表される単位のうち、XがOであるものとしては、無水マレイン酸、イタコン酸、エチルマレイン酸、メチルイタコン酸、クロルマレイン酸などの無水物である不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位が挙げられる。これらのなかでも、無水マレイン酸がより好ましい。また、XがN−Rであるものとしては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド単量体が挙げられる。
耐熱アクリル系樹脂(A−1)を構成する単量体単位の共重合割合は、耐熱性、光弾性係数の点から、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が40質量%以上90質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が5質量%以上40質量%以下、上記一般式(1)で表される化合物単位が5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が42質量%以上83質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が12質量%以上40質量%以下、上記一般式(1)で表される化合物単位が5質量%以上18質量%以下であり、さらに好ましくは、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が45質量%以上78質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が16質量%以上40質量%以下、上記一般式(1)で表される化合物単位が6質量%以上15質量%以下である。
また、上記一般式(1)で表される単量体単位の共重合割合に対する芳香族ビニル化合物単位の割合が1倍以上3倍以下であることが好ましい。この割合が、上記範囲よりも小さいと添加の効果が得られ難くなる傾向があり、上記範囲よりも大きいとモノマー配合相への溶解が困難になり、樹脂の強度が低くなる傾向がある。
耐熱アクリル系樹脂(A−1)には、上記の必須構成単量体成分に加え、必要に応じ共重合可能な他の単量体を共重合して得られた耐熱アクリル樹脂も包含される。ここで用いられる共重合可能な他の単量体として、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン単量体等が挙げられ、これらの2種以上を共重合することも可能である。
耐熱アクリル系樹脂(A−1)を製造する方法としては、ラジカル開始剤を使用した塊状重合が適した方法であるが、溶液重合、乳化重合を用いることも可能である。
また、過酸化物系開始剤としてラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを使用すると、耐熱アクリル樹脂(A−1)の着色は起こらないので好ましい。したがって、耐熱アクリル系樹脂(A−1)の重合には、ラウロイルパーオキサイドのようなジアシルパーオキサイドを適用することが好ましい。
耐熱アクリル系樹脂(A−1)の好ましい重合方法としては、例えば、特公昭63−1964号公報に記載の方法が挙げられる。
耐熱アクリル系樹脂(A−1)のメルトインデックス(ASTM D1238;I条件)は、樹脂組成物成形体の強度の観点から10g/10分以下であることが好ましく、より好ましくは6g/10分以下、さらに好ましくは3g/10分以下である。
また、3元以上の共重合体の別の好適な例として、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位、芳香族ビニル化合物単位及び6員環構造を有する酸無水物単位を含む共重合体(A−2)が挙げられる。この6員環構造を有する酸無水物単位を含む共重合体(A−2)は、耐熱性に優れると共に、これから得られる成形体のレタデーション設計が容易であることから、光学材料に適している。
この6員環構造を有する酸無水物単位を含む共重合体(A−2)の第一の単量体成分であるメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルの具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。なかでも、メタクリル酸メチルが好ましい。また、この6員環構造を有する酸無水物単位を含む共重合体(A−2)の第二の単量体成分である芳香族ビニル化合物の具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどの核アルキル置換スチレン;α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンなどのα−アルキル置換スチレン等が挙げられる。なかでも、スチレンが好ましい。
6員環構造を有する単位としては、その単位中に6員環構造を有するものであれば、本発明の目的を損なわない限りいかなる単位であってもよい。6員環構造としては、ピラン環、ラクトン環、グルタルイミド環、無水グルタル酸構造等の6員環構造が挙げられ、中でも無水グルタル酸構造が好ましい。
また、6員環構造を有する酸無水物単位を含む共重合体(A−2)の第三の単位である6員環構造を有する酸無水物単位は、不飽和カルボン酸単量体及び、必要に応じて不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体と、その他の単量体成分と重合させ、共重合体とした後、かかる共重合体を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し、脱アルコール及び/又は脱水による分子内環化反応を行わせることにより生成することができる。この場合、典型的には共重合体を加熱することにより2単位の不飽和カルボン酸単位のカルボキシル基が脱水されて、あるいは隣接する不飽和カルボン酸単位と不飽和カルボン酸アルキルエステル単位からアルコールの脱離により1単位の6員環構造を有する酸無水物単位が生成される。
6員環構造を有する酸無水物単位を含む共重合体(A−2)(以下、単に「耐熱アクリル系樹脂(A−2)ともいう。)は、特公平02−26641号、特開2006−266543号、特開2006−274069号、特開2006−274071号、特開2006−283013公報、特開2005−162835公報に記載の方法を参照して、組成比を決定し、製造、評価することができる。
6員環構造を有する酸無水物単位としては、熱安定性、耐熱性に優れると共に、これから得られる成形体のレタデーション設計が容易であることから、下記一般式(2)で表される6員環構造を有する酸無水物単位であることが好ましい。
Figure 2008262182

(式中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
このような分子内環化反応を起こす方法は、特に制限されないが、例えば、ベント口を有する押出機を用いる方法や、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下若しくは減圧下で脱揮タンクを用いる方法等が挙げられる。
分子内環化反応を起こすために用いる装置としては、例えば、フラッシュタンク、二軸押出機、単軸押出機、二軸・単軸複合型連続混練押出機、三軸以上の多軸押出機、ニーダー等が挙げられ、これらは一種又は二種以上を併用してもよい。
分子内環化反応を加熱脱揮により起こす場合、その温度は、所望する共重合体組成、未反応単量体の量や溶媒量の多少に応じて適宜設定することができ、分子内環化反応が起こる温度であれば特に制限されないが、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜300℃、更に好ましくは200〜280℃、特に好ましくは220〜280℃である。
また、加熱脱揮及び/又は環化反応を行う場合の加熱時間は、所望する共重合体組成に応じて適宜設定することが可能であり、通常1〜240分、好ましくは1〜150分、より好ましくは1〜120分、特に好ましくは2〜90分、特に好ましくは3〜60分であり、とりわけ好ましくは5〜60分である。
押出機を用いる場合、加熱時間を確保するために、スクリュー直径(D)とスクリュー長さ(L)の比はL/D=20以上であることが好ましく、より好ましくは30以上、特に好ましくは40以上とすることが好ましい。また、実用的にはL/Dが120以下であることが好ましい。
加熱脱揮及び/又は環化反応を減圧下で行う場合、脱揮効率などを考慮すると、200Torr以下であることが好ましく、より好ましくは150Torr以下、更に好ましくは100Torr以下、とりわけ好ましくは50Torr以下である。また、実用的には1Torr以上であることが好ましい。
耐熱アクリル系樹脂(A−2)において、一般式(2)で表される6員環構造を有する酸無水物単位を形成する際には、環化反応を促進するために、触媒として、酸、アルカリ、塩から選ばれる少なくとも一種を添加することができる。環化触媒の添加量は、本発明願の目的を損なわない範囲であれば特に限定されないが、得られる共重合体の透明性、機械強度などの観点から、より少ない方が好ましい。具体的には、1質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下である。
好適に使用される触媒の一例を挙げると、酸触媒としては塩酸、硫酸、リン酸、亜リン酸、p−トルエンスルホン酸、フェニルホスホン酸等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルカリ土類金属誘導体等が挙げられる。また、塩系触媒としては、炭酸金属塩、硫酸金属塩、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩等が挙げられる。
環化反応の反応促進効果、共重合体の透明性、着色性の観点から、塩基性触媒、塩系触媒等を好適に用いることができる。上記環化触媒は単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用することもできる。
上記一般式(2)で表される6員環構造を有する酸無水物単位を生成するための不飽和カルボン酸単量体の具体例としては、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2008262182
(式中、Rは水素原子又は炭素数が1〜6の置換又は非置換のアルキル基を表し、該アルキル基は、例えば、水酸基を有していてもよい。)
この化合物としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等が挙げられる。また、上記一般式(2)で表される6員環構造を有する酸無水物単位を生成するための不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等が挙げられる。これらの中では、好適には、メタクリル酸又はアクリル酸を用いることができ、より好ましくはメタクリル酸を用いることができる。
これらの単量体は、単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用することもできる。
上記一般式(2)で表される6員環構造を有する酸無水物単位を生成するための不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の合計の仕込み量は、耐熱アクリル系樹脂(A−2)に求められる耐熱性、加工性、光学特性や、生産性等を考慮すると、重合の際に用いる全単量体の量を100質量部とした場合、1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以上40質量部以下、更に好ましくは10質量部以上40質量部以下、とりわけ好ましくは10質量部以上35質量部以下、特に好ましくは15質量部以上35質量部以下、最も好ましくは20質量部以上30質量部以下である。
耐熱アクリル系樹脂(A−2)の各構造単位の共重合割合は、高い耐熱性と本願の用途に求められる光学特性とをバランス良く高度に付与する必要がある場合には、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単量体単位が15質量%以上64質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上57質量%以下、更に好ましくは20質量%以上51質量%以下、特に好ましくは20質量%以上48質量%以下であり、一般式(2)で表される6員環構造を有する酸無水物単位が15質量%以上35質量%以下であることが好ましく、より好ましくは17質量%以上33質量%以下、更に好ましくは17質量%以上30質量%以下であり、芳香族ビニル化合物単位が1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは25質量%以上50質量%以下である。
更に、耐熱アクリル系樹脂(A−2)が不飽和カルボン酸単量体単位を含有する場合、その含量はすべての単量体単位の総量を100質量%とした時に10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以上10質量%以下、とりわけ好ましくは4質量%以上8質量%以下である。
また、高い耐熱性及びより好ましい位相差フィルム用の高い複屈折性を有するには、共重合体中のメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が19質量%以上45質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が20質量%以上48質量%以下、6員環を有する酸無水物単位が10質量%以上30質量%以下、カルボン酸単量体単位が3質量%以上15質量%以下であると好ましく、より好ましくは、共重合体中のメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が24質量%以上44質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が31質量%以上42質量%以下、6員環を有する酸無水物単位が17質量%以上30質量%以下、カルボン酸単量体単位が4質量%以上8質量%以下である。
耐熱アクリル系樹脂(A−2)の各化合物単位の共重合割合は、NMR法、中和滴定、IR法等で求めることができる。
耐熱アクリル系樹脂(A−2)を製造する方法としては、例えばキャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、沈殿重合、アニオン重合等の一般に行われている重合方法を用いることができる。中でも、光学用途としては不都合な微小な異物の混入を低減することが好ましく、このような観点から可能であるため、懸濁剤や乳化剤を用いない塊状重合や溶液重合が好ましい。
溶液重合を行う場合には、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素の溶媒;メタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イシソブチルケトン等のケトン類の溶媒を用いることができ、アルコール類が共重合体の溶解性の観点から好ましい。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、2−エチルシクロヘキサノール、3−エチルシクロヘキサノール、4−エチルシクロヘキサノール、2,3−ジメチルシクロヘキサノール、2,4−ジメチルシクロヘキサノール、2,5−ジメチルシクロヘキサノール、2、6−ジメチルシクロヘキサノール、3、4−ジメチルシクロヘキサノール、3,5−ジメチルシクロヘキサノール等の水酸基を一つ有するアルコール類;エチレングリコール、グリセリン等の水酸基を複数含有するアルコール類;メチルセロソルブ等のエーテル結合含有アルコール等が挙げられる。
アルコール類の中でも環状構造を有するアルコール類を用いることが好ましい。そのなかでも不飽和カルボン酸単量体との混合性に優れるシクロヘキサノールは、有機酸である不飽和カルボン酸単量体類による反応装置等の金属腐食を防止することができ、このようなの観点からも特に好ましい。
塊状重合により重合させる場合には、通常行われるように加熱により生じる遊離ラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
重合反応に用いられる開始剤としては、ラジカル重合において用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えば、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を用いることができる。
特に、90℃以上の高温下で重合を行う場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤などが好ましい。具体的には、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等を挙げることができる。これらの開始剤は、例えば、全体の単量体100質量%に対して、0.005〜5質量%の範囲で用いることが好ましい。
重合反応に必要に応じて用いられる分子量調節剤としては、ラジカル重合において一般に用いられる任意のものが使用でき、例えば、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が特に好ましいものとして挙げられる。
耐熱アクリル系樹脂(A−2)の重合時に、収率、性能向上を目的として、色々な条件で重合することがより好適である。そのような条件としては、例えば、重合時の熱履歴を抑えるために熱的処理時間を短くすること、重合時に重合系内に存在する酸素量を低減すること、低分子量物の脱揮時の真空度を高くすること及び、これらの方法で得た樹脂に熱安定剤を加える等である。
得られた耐熱アクリル系樹脂(A−2)は、ブロックポリマーであってもランダムポリマーであってもよいが、耐熱性や剛性やリサイクル性の点では、統計的ランダムポリマーであることが好ましい。
耐熱アクリル系樹脂(A−2)の分子量分布の範囲は、フィルム加工性と機械物性のバランスを考慮すると、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.6〜4.0の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、1.7〜3.7であり、更に好ましくは1.8〜3.5の範囲である。
Mw/Mnの制御方法としては、例えば、連続重合法により反応器内の撹拌羽根の回転数を制御する方法が挙げられる。これにより、Mw/Mnを1.6〜2.3の間に制御すされた共重合体を得ることができる。また、高分子量体成分を溶液または溶融ブレンドすることによっても、Mw/Mnを2.0〜4.0の間に制御することができる。
本発明において、上記の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリメタクリル酸メチル換算によって求めた値のことである。
耐熱アクリル系樹脂(A−2)のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5万〜50万、より好ましくは7〜35万、更に好ましくは8〜30万、特に好ましくは8〜25万である。この重量平均分子量が50万以下である耐熱アクリル系樹脂(A−2)を用いることで、押出し延伸加工にさらに必要十分な流動性が得られ、これにより溶融押出、延伸成膜を大きな支障がなく行うことができる。また、この受領平均分子量が5万以上である共重合体を用いることで、位相差フィルムに延伸安定性とフィルムにした際に十分な配向度とを与えることができる。
実用上、耐熱アクリル系樹脂(A−1、A−2)のTg(ガラス転移温度)は120℃以上が好ましく、125℃以上が更に好ましく、130℃以上が最も好ましい。
アクリル系樹脂(A)の未延伸時の光弾性係数は、好ましくは−5×10−12Pa−1以上、より好ましくは−4×10−12Pa−1以上、さらに好ましくは−3×10−12Pa−1以上である。アクリル系樹脂(A)の光弾性係数が上記範囲内であると、本発明の位相差フィルムの光弾性係数の絶対値を小さくすることができ、かつ、所望の厚み方向レタデーション(Rth)を付与することが可能となるため好ましい。
本発明における「光弾性係数」とは、外力による複屈折の変化の生じやすさを表す係数で、これに関しては種々の文献に記載があり(例えば化学総説、No.39、1998(学会出版センター発行))、下式により定義される係数である。
[Pa−1]=Δn/σ Δn=nx−ny
(式中、C:光弾性係数、σ:伸張応力[Pa]、Δn:応力付加時の複屈折、nx:伸張方向と平行な方向の屈折率、ny:伸張方向と垂直な方向の屈折率)
光弾性係数の値がゼロに近いほど、外力による複屈折の変化が小さく、光学特性に優れていることを意味する。
本発明においては、樹脂組成物に上記アクリル系樹脂(A)に加え、さらにスチレン系樹脂(B)を含有させると、成形して得られる位相差フィルムに関して、光弾性係数の絶対値が小さくなる傾向にあり、さらに、面内レタデーション(Re)が付きやすくなる傾向があるため好ましい。
スチレン系樹脂(B)とは、少なくともスチレン系単量体を単量体成分として含む重合体を意味する。ここで、スチレン系単量体とは、その構造中にスチレン骨格を有する単量体を意味する。
スチレン系単量体としては、その構造中にスチレン骨格を有する単量体であれば特に限定されず、例えば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン;α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物単量体が挙げられ、中でも、スチレンが好ましい。
スチレン系樹脂(B)は、スチレン系単量体の単独重合体でも、スチレン系単量体と他の単量体成分との共重合体であってもよい。スチレン系単量体と共重合可能な単量体成分としては、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルフェニルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート等のアルキルメタクリレート単量体、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート単量体等の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸、イタコン酸、エチルマレイン酸、メチルイタコン酸、クロルマレイン酸などの無水物である不飽和ジカルボン酸無水物単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン単量体などが挙げられ、これらの2種以上を共重合してもよい。このような他の単量体成分の共重合割合は、スチレン系単量体に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
スチレン系樹脂(B)としては、特に、スチレン−アクリロニトリル共重合体(B−1)、スチレン−メタクリル酸共重合体(B−2)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−3)が、耐熱性、透明性等の光学材料に求められる特性に関して、特に優れているため好ましい。
スチレン−アクリロニトリル共重合体(B−1)の場合、共重合体中のアクリロニトリルの共重合割合は、好ましくは1〜40質量%であり、より好ましくは1〜30質量%であり、さらに好ましくは1〜25質量%である。共重合体中のアクリロニトリルの共重合割合が1〜40質量%の範囲内である場合、透明性に優れた共重合体が得られる傾向にあるため好ましい。
スチレン−メタクリル酸共重合体(B―2)の場合、共重合体中のメタクリル酸の共重合割合は、好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは0.1〜40質量%であり、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。共重合体中のメタクリル酸の共重合割合が0.1質量%以上であると耐熱性に優れた共重合体が得られる傾向にあり、50質量%以下であれば透明性に優れた共重合体が得られる傾向にあるため好ましい。
スチレン−無水マレイン酸共重合体(B―3)の場合、共重合体中の無水マレイン酸の共重合割合は、好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは0.1〜40質量%であり、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。共重合体中の無水マレイン酸の共重合割合が0.1質量%以上であると耐熱性に優れた共重合体が得られる傾向にあり、50質量%以下であれば透明性に優れた共重合体が得られる傾向にあるため好ましい。
スチレン系樹脂(B)の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上であり、樹脂組成物の成形加工性、流動性の観点から、好ましくは80万以下、より好ましくは50万以下である。なお、ここでの重量平均分子量は、スチレン系樹脂(B)が下記の2種以上の混合物である場合には、その平均値を意味する。
スチレン系樹脂(B)としては、組成、分子量などの異なる2種以上のスチレン系樹脂の混合物であってもよい。
また、スチレン系樹脂(B)は、共役ジエン単量体やスチレン系単量体のベンゼン環の不飽和二重結合が水素添加されていてもよい。その際の水素添加率は核磁気共鳴装置(NMR)によって測定できる。
スチレン系樹脂(B)の製造方法としては、特に限定されず、公知のアニオン、塊状、懸濁、乳化または溶液重合法を採用することができる。中でも、光学用途としては不都合な微小異物の混入を低減することが可能であるため、懸濁剤や乳化剤を用いない塊状重合や溶液重合法が好ましい。
スチレン系樹脂(B)の未延伸時の光弾性係数は、好ましくは10×10−12Pa−1以下であり、より好ましくは8×10−12Pa−1以下であり、さらに好ましくは6×10−12Pa−1以下である。スチレン系樹脂(B)の光弾性係数が上記範囲内であると、本発明の位相差フィルムの光弾性係数を小さくすることができ、かつ、所望の厚み方向レタデーション(Rth)を付与することが可能となるため好ましい。
また、後述の樹脂組成物がアクリル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)とを含む場合、その未延伸時の光弾性係数の絶対値は、好ましくは5×10−12Pa−1以下であり、より好ましくは4×10−12Pa−1以下であり、さらに好ましくは3×10−12Pa−1以下である。
本発明の樹脂組成物として、アクリル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)とを含む樹脂組成物を用いた場合、アクリル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)の質量比((A)/(B))は、透湿度及び光学特性の観点から、好ましくは20/80〜60/40であり、より好ましくは30/70〜50/50である。
本発明の樹脂組成物は、アクリル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)の質量比((A)/(B))を大きくすると、成形体の吸水率が大きくなる傾向を示し、逆に、質量比((A)/(B))を小さくすると、成形体の吸水率が小さくなる傾向を示す。従って、樹脂の質量比((A)/(B))を調整することにより、所望の吸水率を有する位相差フィルムを容易に製造することができる。
また、本発明においては、樹脂組成物中に、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリル系樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)以外の重合体を混合することができる。そのような重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂;及びフェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられ、これらの1種以上を混合することができる。混合する他の重合体の割合は、樹脂組成物100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましい。
さらに、本発明の効果を損なわない範囲内で、樹脂組成物中に、各種目的に応じて任意の添加剤を1種又は2種以上配合することができる。配合することができる添加剤としては、樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。
このような添加剤としては、例えば、二酸化珪素等の無機充填剤;酸化鉄等の顔料;ステアリン酸,ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;離型剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤;リン系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤;難燃剤;帯電防止剤;有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤;着色剤;ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、ラクトン系化合物等の紫外線吸収剤;その他添加剤或いはこれらの混合物等が挙げられる。これら添加剤の添加量は、アクリル系樹脂(A)を含む樹脂組成物100質量部に対して0.01質量部以上50質量部以下であることが好ましい。
上記各種添加剤の中でも、特に、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、ラクトン系化合物等の紫外線吸収剤は、これを添加した樹脂組成物の光弾性係数の絶対値を小さくする効果を有しているため好ましい。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物がより好ましい。これらは、単独で用いても、2種以上併用してもよい。
添加剤は、その20℃における蒸気圧(P)が1.0×10−4Pa以下である場合に、得られる樹脂組成物の成形加工性に優れるため好ましい。蒸気圧(P)のより好ましい範囲は1.0×10−6Pa以下であり、さらに好ましい範囲は1.0×10−8Pa以下である。ここで、成形加工性に優れるとは、例えばフィルム成形時に、添加剤のロールへの付着が少ないことなどを示す。添加剤がロールへ付着すると、例えば成形体表面へ付着し外観、光学特性を悪化させるため、光学用材料として好ましくないものとなるおそれがある。
また、添加剤は、融点(Tm)が80℃以上である場合に、得られる樹脂組成物の成形加工性に優れるため好ましい。融点(Tm)のより好ましい範囲は130℃以上であり、さらに好ましい範囲は160℃以上である。
さらに、添加剤は、23℃から260℃まで20℃/分の速度で昇温した場合の重量減少率が50%以下である場合に、得られる樹脂組成物の成形加工性に優れるため好ましい。重量減少率のより好ましい範囲は15%以下であり、さらに好ましい範囲は2%以下である。
本発明の位相差フィルムは、380nmにおける分光透過率が5%以下かつ400nmにおける分光透過率が65%以上であることが好ましい。紫外領域である380nmの分光透過率が低いほど偏光子や液晶素子の劣化を防ぎ、可視領域である400nm分光透過率が高いほど色再現性に優れるため、光学フィルムとして好ましく用いることができる。この範囲内に設計するには、紫外線吸収剤の量が、樹脂組成物に対して0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。0.1質量部以上であると、得られる位相差フィルムの380nmにおける分光透過率が小さくなり、10質量%以下であると、得られる位相差フィルムの光弾性係数の増加が小さく、成形加工性、機械強度も向上するため好ましい。紫外線吸収剤の量のより好ましい範囲は、0.3質量部以上8質量部以下、さらに好ましい範囲は0.5質量部以上5質量部以下である。
紫外線吸収剤の量は、核磁気共鳴装置(NMR)によりプロトンNMRを測定し、ピークシグナルの積分値の比から求める方法、または良溶媒を用い樹脂から抽出後、ガスクロマトグラフ(GC)で測定する方法等により定量できる。
また、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工安定剤等の酸化防止剤等が挙げられ、好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤である。具体的には、ペンタエリスリトールテラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリン)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミン)フェノール等が挙げられる。好ましくは、ペンタエリスリトールテラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートである。
本発明の位相差フィルム用の樹脂組成物の製造方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて、樹脂成分、必要に応じて耐加水分解抑制剤や上記その他の成分を添加して溶融混練して製造することができる。
本発明の位相差フィルムの製造方法の製造方法としては、特に限定されず、例えば、上記樹脂組成物を、射出成形、シート成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形、押し出し成形、発泡成形等、公知の方法で成形することによって製造することでき、圧空成形、真空成形等の二次加工成形法を用いることもできる。
本発明の位相差フィルムの製造方法としては、例えば、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸フィルムを押し出し成形することができる。押し出し成形により成形体を得る場合は、事前に各樹脂成分を溶融混錬してもよいが、押し出し成形時に溶融混錬を経て成形することもできる。また各樹脂成分に共通の良溶媒、例えば、クロロホルム等の溶媒を用いキャスト成形し未延伸フィルム、シートを得ることも可能である。
さらに必要に応じて、未延伸フィルム、シートを機械的流れ方向(MD)に縦一軸延伸、機械的流れ方向に直行する方向(TD)に横一軸延伸することができる。例えば、工業的には、ロール延伸またはテンター延伸による一軸延伸法、ロール延伸とテンター延伸の組み合わせによる逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸フィルムを製造することができる。
延伸倍率は、少なくともどちらか一方向に、好ましくは0.1%以上300%以下であり、より好ましくは1%以上200%以下であり、さらに好ましくは2%以上100%以下である。延伸倍率を上記範囲に設計することにより、複屈折、強度の観点で好ましい延伸成形体(フィルム)が得られる傾向にある。
延伸倍率は、得られた延伸フィルムをガラス転移温度よりも20℃以上高い温度で収縮させ以下の関係式から決定できる。また、ガラス転移温度はDSC法や粘弾性法により求めることができる。
延伸倍率(%)=[(収縮前の長さ/収縮後の長さ)−1]×100
また、実用上、本発明の位相差フィルムのTg(ガラス転移温度)は、上記未延伸フィルムの状態で120℃以上が好ましく、125℃以上が更に好ましく、130℃以上が最も好ましい。
本発明において、フィルムとは厚さが300μm以下のものを意味し、シートとは厚さが300μmを超えるものを意味する。また、本発明において、フィルムの厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、シートの厚さは、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。
本発明の位相差フィルムは、光弾性係数の絶対値が0〜5×10−12/Pa、好ましくは0〜3×10−12/Pa、より好ましくは0〜2×10−12/Paである。位相差フィルムの光弾性係数が上記範囲内であれば、外力による複屈折の変化が少ないため、これを大型の液晶表示装置等に使用した場合にコントラストや画面の均一性に優れたものとなる。光弾性係数は、樹脂成分の質量比、組成比を調整することや、低分子化合物を添加することにより、所望の範囲に調整することが可能である。
本発明の位相差フィルムは、全光線透過率が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは87%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は、樹脂成分を相溶させる際の、樹脂成分の組成、配合比率、混練温度、混練圧力、冷却温度、冷却速度などを調整することにより、所望の範囲に調整することが可能である。
本発明の位相差フィルムは、耐折強度が0.5以上、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.3以上である。ここで耐折強度とは、JIS P 8115(国際標準化機構:ISO5626)に従って求めた耐折回数をLogでとった値をいう。耐折強度は、芳香族ビニル単位を増やす、又はアクリル系樹脂とスチレン系樹脂の樹脂組成物である場合にはスチレン系樹脂の質量比を増やす、あるいは延伸倍率を調整することにより、所望の範囲に調整することが可能である。
また、本発明の位相差フィルムをフレキシブルディスプレイに用いる場合、繰返し折り曲げて使用されることも想定されるため、特に耐折れ性に優れていることが好ましい。耐折強度が0.5以上であると、フィルムを筐体に組み込んだり、取り扱い時にぶつけるなどの衝撃でも割れてしまうことがない。
さらに、本発明の位相差フィルムをフレキシブルディスプレイに用いる場合、繰り返し貼り合わされて使用されることも想定されるため、特に表面硬度に優れていることが好ましい。具体的には、その表面硬度が鉛筆硬度でH以上、すなわちH、2H、…、9Hであると好ましい。これにより、フィルムを筐体に組み込む際、取り扱い時、特に再度の貼り合わせを行う際に、フィルム表面にキズがついてしまうことが低減できる。
ここで、表面硬度は、JIS K−5400に準じて測定した鉛筆硬度を意味する。
本発明の位相差フィルムにおいては、樹脂組成物の組成やアクリル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)の質量比、フィルムの厚み、及び延伸倍率等を好ましい範囲内に設計することにより、面内レタデーション(Re)と厚み方向レタデーション(Rth)を制御することができる。ここで、面内レタデーション(Re)と厚み方向レタデーション(Rth)は下式により定義される。
Re =(nx−ny)×d
Rth=((nx+ny)/2)−nz)×d
(式中、nx:成形体面内において屈折率が最大となる方向をxとした場合のx方向の主屈折率、ny:成形体面内においてx方向に垂直な方向をyとした場合のy方向の主屈折率、nz:成形体厚み方向の主屈折率、d:成形体の厚み(nm)である。)
本発明の位相差フィルムにおける、面内レタデーション(Re)の値は、好ましくは0〜400nm、より好ましくは5〜350nm、さらに好ましくは20〜350nmである。
本発明の位相差フィルムを1/4波長板として用いる場合、そのReの絶対値は、好ましくは100nm以上180nm以下、より好ましくは120nm以上160nm以下、さらに好ましくは130nm以上150nm以下である。
また、本発明の位相差フィルムを1/2波長板として用いる場合、そのReの絶対値は、好ましくは240以上320nm以下、より好ましくは260以上300nm以下、さらに好ましくは270以上290nm以下である。
本発明の位相差フィルムの、厚み方向レタデーション(Rth)の値は、好ましくは−400nm〜−1nm、より好ましくは−350nm〜−5nm、さらに好ましくは−300nm〜−10nmである。Rthの値は、MD、TD方向の延伸倍率、フィルム厚さ、アクリル系樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)の質量比により調整することができる。
本発明の位相差フィルムは、高度な光学特性と共に、優れた透明性及び柔軟性を併せ持っているため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のフレキシブルディスプレイに用いられる偏光板保護フィルム;1/4波長板、1/2波長板等の位相差板;視野角制御フィルム等の液晶光学補償フィルム;ディスプレイ前面板;ディスプレイ基板;ソフトレンズ等に好適に用いることができる。
本発明の位相差フィルムには、例えば反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理等の表面機能化処理を適宜施してもよい。
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に記載の実施例
によって限定されるものではない。
(1)測定方法
本明細書中の各物性等の測定方法は次の通りである。
(I)光弾性係数の測定及び固有複屈折の正負の判断
Macromolecules 2004,37,1062−1066で詳細に記載された複屈折測定装置を用いる。レーザー光の経路にフィルムの引っ張り装置を配置し、幅7mmの樹脂組成物成形体(位相差フィルム)の試験片に23℃で伸張応力をかけながら、その複屈折を測定する。伸張時の歪速度は20%/分(チャック間:30mm、チャック移動速度:6mm/分)とする。
このようにして測定した値について、複屈折(Δn)をy軸、伸張応力(σ)をx軸としてプロットし、その関係から、最小二乗近似により初期線形領域の直線の傾きを求め、光弾性係数(C)を算出する。傾きの絶対値が小さいほど光弾性係数が0に近く、光学特性に優れていることを示す。
(II)全光線透過率の測定
ASTM D1003に準拠し測定を行う。
(III)分子量の測定
GPC(東ソー(株)製GPC−8020、検出RI、カラム昭和電工株式会社製Shodex K−805、801連結)を用い、溶媒はクロロホルム、測定温度40℃で、市販標準ポリスチレン換算で重量平均分子量を求める。
(IV)アクリロニトリル含量の測定
スチレン−アクリロニトリル共重合体を熱プレス機を用いてフィルムに成形し、日本分光社製FT−410を用いて、フィルムの1603cm−1、2245cm−1における吸光度を測定する。あらかじめ求められている、スチレン−アクリロニトリル共重合体中のアクリロニトリル量と1603cm−1、2245cm−1の吸光度比の関係を用いて、スチレン−アクリロニトリル共重合体中のアクリロニトリル含量を定量する。
(V)面内レタデーション(Re)、厚み方向レタデーション(Rth)
(面内レタデーション(Re)の測定)
シックネスゲージを用いてフィルムの厚さd(nm)を測定する。この値を大塚電子(株)社製複屈折測定装置RETS−100に入力し、測定面が測定光と垂直になるように試料を配置し、23℃で回転検光子法により面内レタデーション(Re)を測定・算出する。
(厚み方向レタデーション(Rth)の測定)
Metricon社製レーザー屈折計Model2010を用いて、23℃で光学フィルムの平均屈折率nを測定する。そして、平均屈折率nとフィルム厚さd(nm)を大塚電子(株)社製複屈折測定装置RETS−100に入力し、23℃で厚み方向レタデーション(Rth)を測定・算出する。
(VI)耐折強度の測定
長さ110mm×幅15mmに裁断したサンプルをJIS P 8115(国際標準化機構:ISO5626)に従ってMD及びTD方向に垂直な方向の耐折回数を測定し、その平均値を示した。下記に試験条件を記載する。
試験条件 試験機:MIT耐揉試験機(株式会社東洋精機製作所製)
荷重:4.9N ( = 500g)
折り曲げ角度:±135°
折り曲げ速度:175cpm
試験片つかみ具
先端半径:R= 0.38mm
開き:0.25mm
当該耐折試験の結果は、耐折強度をもって表示する。
耐折強度は次の式で算出される。
耐折強度 = Log n
(式中、nは試験片が損傷(折れ破壊)にいたる試験回数を示す)
(VII)ガラス転移温度(Tg)測定
DSC−7型(株式会社パーキンエルマー社製)を用い、室温から200℃までの昇温測定において、昇温速度20℃/分で未延伸フィルムサンプル質量8.0〜10mgのTgを測定した。
(VIII)表面硬度試験
鉛筆硬度試験機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、フィルム表面の鉛筆硬度を1kg荷重下、JIS K−5400に準じて測定して、表面硬度を評価した。
(2)原料の準備
(I)アクリル系樹脂(A)
i)アクリル系樹脂(A−0)
メタクリル酸メチル89.2重量部、アクリル酸メチル5.8重量部、及びキシレン5重量部からなる単量体混合物に、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,3−トリメチルシクロヘキサン0.0294重量部、及びn−オクチルメルカプタン0.115重量部を添加し、均一に混合した。この溶液を内容積10リットルの密閉耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下に平均温度130℃、平均滞留時間2時間で重合した後、反応器に接続された貯層に連続的に送り出し、一定条件下で揮発分を除去し、さらに押出機に連続的に溶融状態で移送し、アクリル系樹脂であるメタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体ペレットを得た。得られた共重合体のアクリル酸メチル含量は6.0%、重量平均分子量は145,000、ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、3.8kg荷重のメルトフロー値は1.0g/分であった。
ii)耐熱アクリル系樹脂(A−1−1)
特公昭63−1964に記載の方法で、メタクリル酸メチル−スチレン−無水マレイン酸共重合体を得た。得られた共重合体の組成は、メタクリル酸メチル72質量%、スチレン16質量%、無水マレイン酸12質量%であり、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は1.5g/10分であった。
iii)耐熱アクリル系樹脂(A−1−2)
特公昭63−1964に記載の方法で、メタクリル酸メチル−スチレン−無水マレイン酸共重合体を得た。得られた共重合体の組成は、メタクリル酸メチル74質量%、スチレン10質量%、無水マレイン酸16質量%であり、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は1.2g/10分であった。
iv)耐熱アクリル系樹脂(A−2−1)
まず、メタクリル酸メチル34質量部、スチレン26質量部、メタクリル酸20質量部、キシレン20質量部、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン50ppm(上記単量体成分の全質量を基準として)、n−オクチルメルカプタン1200ppm(上記単量体成分の全質量を基準として)からなる混合液を調製した。この混合液を1.5L/hrの速度で連続して内容量3Lのジャケット付き完全混合反応器に供給した後、125℃の温度で重合を行った。得られた重合体は完全に溶解しており、その重合溶液中に含まれる重合体の固形分量は44質量%となった。さらに、重合溶液を260℃に設定した高温脱揮装置へ連続して供給し、2時間滞留、脱揮環化させ未反応物の除去と6員環構造を有する酸無水物単位の生成とを行った。
得られた共重合体の組成は、メタクリル酸メチル単位45質量%、スチレン単位32質量%、6員環構造を有する酸無水物単位17質量%、メタクリル酸単位6質量%であった。得られた共重合体のメルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は、0.7g/10分であり、Tg=134℃であった。
v)耐熱アクリル系樹脂(A−2−2)
メタクリル酸メチル27質量部、スチレン25質量部、メタクリル酸18質量部、シクロヘキサノール30質量部、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン50ppm(上記単量体成分の全質量を基準として)、n−オクチルメルカプタン1350ppm(上記単量体成分の全質量を基準として)からなる混合液を調製した。この混合液を1.5L/hrの速度で連続して内容量3Lのジャケット付き完全混合反応器に供給した後、135℃の温度で重合を行った。得られた重合体は完全に溶解しており、その重合溶液中に含まれる重合体の固形分量は41質量%となった。さらに、重合溶液を直ちに加熱器に通して、バレル温度255℃に設定し、25Torrに減圧したベント付き二軸押出機に連続的に供給した。これにより、未反応単量体類及び溶媒の除去と6員環構造を有する酸無水物単位の生成とを行った。未反応単量体類及び溶媒は回収ラインを通じて回収した。得られた重合体を、さらに、50Torrに減圧したベント付き二軸押出機(L/D=67)に通して、未反応単量体類及び溶媒の除去と6員環構造を有する酸無水物単位の生成とを完結させた。
得られた共重合体の組成は、メタクリル酸メチル単位35質量%、スチレン単位40質量%、6員環構造を有する酸無水物単位18質量%、メタクリル酸単位7質量%であった。得られた共重合体のメルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は、0.65g/10分であり、Tg=133℃であった。
(II)スチレン系樹脂(B)
i)スチレン−アクリロニトリル共重合体(B−1)
攪拌機付き完全混合型反応機に、スチレン72質量部、アクリロニトリル13質量部、エチルベンゼン15質量部からなる単量体混合物を連続的にフィードし、150℃、滞留時間2時間で重合反応を行った。
得られた重合溶液を押出機に連続的に供給し、押出機で未反応単量体、溶媒を回収し、スチレン−アクリロニトリル共重合体(B−1)のペレットを得た。
得られたスチレン−アクリロニトリル共重合体(B−1)は無色透明で、中和滴定による組成分析の結果、スチレン含量80質量%、アクリロニトリル含量20質量%であり、ASTM−D1238に準拠した220℃、10kg荷重のメルトフローレート値は13g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、5.0×10−12Pa−1であり、固有複屈折は負であった。
ii)スチレン−メタクリル酸共重合体(B−2)
装置の全てがステンレス鋼で製作されているものを用いて、連続溶液重合を行った。スチレン75.2質量部、メタクリル酸4.8質量部、エチルベンゼン20質量部を調合液とし、重合開始剤として1,1−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを用いる。この調合液を1L/hr.の速度で連続して、内容積2Lの攪拌機付きの完全混合重合器へ供給し、136℃で重合を行った。
固形分49%を含有する重合液を連続して取り出し、まず230℃に予熱後、230℃に保温し、20torrに減圧された脱揮器に供給し、平均滞留0.3時間経過後、脱揮器の低部のギヤポンプより連続して排出した。
得られたスチレン−メタクリル酸共重合体(B−2)は無色透明で、中和滴定による組成分析の結果、スチレン含量92質量%、メタクリル酸含量8質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、3.8kg荷重のメルトフローレート値は5.2g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、4.8×10−12Pa−1であり、固有複屈折は負であった。
iii)スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−3)
装置の全てがステンレス鋼で製作されているものを用いて、連続溶液重合を行った。スチレン91.7質量部、無水マレイン酸8.3質量部の比率で合計100質量部を準備した。(ただし、両者は混合しない。)メチルアルコール5質量部、重合開始剤として1,1−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.03質量部をスチレンに混合し、第1調合液とした。0.95kg/hr.の速度で連続して内容積4Lのジャケット付き完全混合重合機に供給した。
一方、70℃に加熱した無水マレイン酸を、第二調合液として0.10kg/hr.の速度で同一重合機へ供給し、111℃で重合を行う。重合転化率が54%となったところで、重合液を重合機から連続して取り出し、まず230℃に予熱後、230℃に保温し、20torrに減圧された脱揮器に供給し、平均滞留0.3時間経過後、脱揮器の低部のギヤポンプより連続して排出し、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−3)を得た。
得られたスチレン−無水マレイン酸共重合体(B−3)は無色透明で、中和滴定による組成分析の結果、スチレン含量85質量%、無水マレイン酸単位15質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート値は2.0g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、4.1×10−12Pa−1であり、固有複屈折は負であった。
(III)ポリスチレン(PS)
比較例に用いたポリスチレンには、PSジャパン(株)製GPPSを用いた。
(IV)ポリメタクリル酸メチル(PMMA)
比較例に用いたポリメタクリル酸メチルには、旭化成ケミカルズ(株)製80N、メルトフローレート値(ASTM−D1238準拠):2.0g/分、屈折率:1.49のポリマーペレットを用いた。
(V)ポリカーボネート(PC)
比較例に用いたポリカーボネートには、旭美化成(株)製、商品名「WONDERLITE PC−110」を使用した。
(VI)環状オレフィンポリマー(COP)
比較例に用いた環状オレフィンポリマーには、日本ゼオン(株)社製のフィルム(商品名「ゼオノアフィルム ZF−14」)をMD方向に100%延伸して得られた一軸延伸フィルムを用いた。
(VII)紫外線吸収剤
ベンゾトリアゾール系化合物(旭電化(株)社製、アデカスタブLA−31(B−1)(融点(Tm):195℃)を用いた。理学電機(株)社製、商品名「ThermoPlus TG8120」を用いて、23℃から260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の質量減少率を測定したところ、0.03%であった。
(3)位相差フィルムの製造
表1〜3に記載された配合比の樹脂組成物を用い、テクノベル製Tダイ装着押し出し機(KZW15TW−25MG−NH型/幅150mmTダイ装着/リップ厚0.5mm)を用いて、スクリュー回転数、押し出し機のシリンダー内樹脂温度、Tダイの温度を表1〜3に示す条件に調整し押し出し成形をすることにより未延伸フィルムを得た。フィルムの流れ(押し出し方向)をMD方向、MD方向に垂直な方向をTD方向とした。なお、(VII)の紫外線吸収剤を用いた場合、その添加剤を樹脂組成物にドライブレンドにて混合した後、上記押し出し成形を行った。
そして、未延伸フィルムを幅が50mmになるように切り出し、表1〜3に示す条件で1軸延伸(チャック間:50mm、チャック移動速度:500mm/分)を引っ張り試験機を用いて行い、1軸延伸フィルムを得た。
さらに、1軸延伸フィルムを幅が50mmになるように切り出し、表1〜3に示す条件で1軸延伸(チャック間:50mm、チャック移動速度:500mm/分)を引っ張り試験機を用いて行い、実施例1〜21及び比較例1〜4の2軸延伸フィルムを得た。
フィルムの組成、押し出し成形条件、フィルムの厚み、面内レタデーション(Re)、厚み方向レタデーション(Rth)、全光線透過率、光弾性係数、耐折強度を表1〜3に示す。
Figure 2008262182
Figure 2008262182
Figure 2008262182
表1〜3に示した結果から明らかなように、本発明の1〜21の位相差フィルムは、光弾性係数の絶対値が小さく、優れた全光透過率及び耐折強度を有していた。また、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上であるため耐熱性にも優れており、面内リタデーション(Re)の値から、1/2及び1/4波長板に適していることが確認できた。特に実施例10〜14においては、130℃以下のTgを有し、実施例1〜9と同等の延伸倍率でより十分な複屈折性を得ることができ、さらに位相差フィルムに適していることが確認できた。
これに対して、比較例1のスチレン単独重合体のフィルムは、光弾性係数の絶対値が大きく、位相差フィルムに適しているとは言い難かった。
また、一般的な光学材料である比較例2のメタクリル酸メチル重合体のフィルムは、光弾性係数の絶対値は比較的小さいものの、耐熱性及び耐折強度に劣り、位相差フィルム(特にフレキシブルディスプレイ用)には適さないものであった。
さらに、別の一般的な光学材料である比較例3のポリカーボネートフィルムは、光弾性係数の絶対値が大きく、位相差フィルムには適さないものであった。
また、比較例4の環状オレフィンポリマーのフィルムは、表面硬度に劣り、位相差フィルムには適さないものであった。
本発明の位相差フィルムは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のフレキシブルディスプレイに用いられる偏光板保護フィルム;1/4波長板、1/2波長板等の位相差板;視野角制御フィルム等の液晶光学補償フィルム;ディスプレイ前面板;ディスプレイ基板;ソフトレンズ等に好適に用いることができる。

Claims (15)

  1. アクリル系樹脂(A)を含む樹脂組成物を成形してなる位相差フィルムであって、光弾性係数の絶対値が0〜5×10−12/Pa、全光線透過率が80%以上、フィルム耐折強度が0.5以上である、位相差フィルム。
  2. 前記アクリル系樹脂(A)が、メタクリル系単量体及び/又はアクリル系単量体及び芳香族ビニル化合物を含む単量体混合物を共重合してなる共重合体である、請求項1記載の位相差フィルム。
  3. 前記アクリル系樹脂(A)が、5員環又は6員環構造を有する単位を含む耐熱アクリル系樹脂である、請求項1又は2に記載の位相差フィルム。
  4. 前記アクリル系樹脂(A)が、メタクリル酸アルキルエステル単位及び/又はアクリル酸アルキルエステル単位、芳香族ビニル化合物単位及び下記一般式(1)で表される化合物単位を含む耐熱アクリル系樹脂(A−1)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
    Figure 2008262182


    (式中、Xは、OまたはN−Rを示し、Oは酸素原子、Nは窒素原子、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はシクロアルキル基を示す)
  5. 前記耐熱アクリル系樹脂(A−1)が、メタクリル酸アルキルエステル単位及び/又はアクリル酸アルキルエステル単位を40質量%以上90質量%以下、芳香族ビニル化合物単位を5質量%以上40質量%以下、一般式(1)で表される化合物単位を5質量%以上20質量%以下含む、請求項4記載の位相差フィルム。
  6. 前記一般式(1)で表される化合物単位の共重合割合に対する前記芳香族ビニル化合物単位の共重合割合(芳香族ビニル化合物単位の共重合割合/一般式(1)で表される化合物単位の共重合割合)が1倍以上3倍以下である、請求項4又は5に記載の位相差フィルム。
  7. 前記樹脂組成物が、スチレン系樹脂(B)をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
  8. 前記スチレン系樹脂(B)が、スチレン−アクリロニトリル共重合体(B−1)である、請求項7記載の位相差フィルム。
  9. 前記スチレン系樹脂(B)が、スチレン−メタクリル酸共重合体(B−2)である、請求項7記載の位相差フィルム。
  10. 前記スチレン−メタクリル酸共重合体中のメタクリル酸の含量が、0.1〜50質量%である、請求項9記載の位相差フィルム。
  11. 前記スチレン系樹脂(B)が、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−3)である、請求項7記載の位相差フィルム。
  12. 前記スチレン−無水マレイン酸共重合体中の無水マレイン酸の含量が、0.1〜50質量%である、請求項11記載の位相差フィルム。
  13. 表面硬度が鉛筆硬度でH以上である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
  14. ガラス転移温度が120℃以上である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
  15. フレキシブルディスプレイ用である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
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