JP5196519B2 - 機械的性質及び熱的性質に優れる光学フィルム - Google Patents
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Description
しかし、アクリル系樹脂を含むフィルムには、機械的強度に劣るという問題がある。例えば、光学フィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光フィルムに積層する必要があるが、その際に様々な機械的応力を受けるため、光学フィルムの機械的強度が小さいと損傷してしまう。
アクリル系樹脂を含むフィルムの機械的強度を上げる方法としては、フィルムを延伸加工することが知られている。しかし、延伸加工を受けたフィルムには、製品製造工程や、製品の使用時に、周囲の高い温度雰囲気により、熱収縮による寸法変化を起こすという別の問題が発生する。
まず、アクリル系樹脂(A)について説明する。
本発明においてアクリル系樹脂(A)とは、(メタ)アクリル系単量体を単量体成分として含む重合体をいう。ここで、(メタ)アクリル系単量体とは、アクリル酸、メタクリル酸又はこれらの誘導体をいい、(メタ)アクリル系単量体の共重合割合は40質量%以上であることが好ましい。
アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸酸アルキルエステルと共重合可能なメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル以外の単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類等が挙げられる。これらは一種又は二種以上組み合わせて使用することもできる。
メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル以外の単量体成分を共重合する場合、その共重合割合は、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルに対して、60質量%未満であることが好ましい。さらに好ましくは50質量%以下であり、とりわけ好ましくは40質量%以下である。60質量%未満であると全光線透過率などの光学特性に優れるため好ましい。
溶液重合を行う場合には、単量体の混合物をトルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素の溶媒に溶解して調製した溶液を用いることができる。塊状重合により重合させる場合には、通常行われるように加熱により生じる遊離ラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
特に、90℃以上の高温下で重合を行わせる場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤などが好ましい。具体的には、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等を挙げることができる。
これらの開始剤は、例えば、0.005〜5質量%の範囲で用いることが好ましい。
これらの分子量調節剤は、アクリル系樹脂(A)の重合度が好ましい範囲内に制御されるような濃度範囲で添加する。
メタクリル酸メチルと共重合させる単量体としては、特にアクリル酸アルキルエステル類が、耐熱分解性に優れ、これを共重合させて得られるメタクリル系樹脂の成形加工時の流動性が高いため好ましい。メタクリル酸メチルにアクリル酸アルキルエステル類を共重合させる場合のアクリル酸アルキルエステル類の使用量は、耐熱分解性の観点から0.1質量%以上であることが好ましく、耐熱性の観点から15質量%以下であることが好ましい。0.2質量%以上14質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以上12質量%以下であることがとりわけ好ましい。
アクリル酸アルキルエステル類の中でも、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルが、少量メタクリル酸メチルと共重合させるだけでも前述の成形加工時の流動性の改良効果が著しく得られるため好ましい。
メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルと共重合させる他の単量体成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン及びp−t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド等のマレイミド類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル及び(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル等の不飽和カルボン酸アルキルエステルが挙げられる
より好ましくは、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が42質量%以上83質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が12質量%以上40質量%以下、上記一般式[1]で表される化合物単位が5質量%以上18質量%以下である。
さらに好ましくは、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が45質量%以上78質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が16質量%以上40質量%以下、上記一般式[1]で表される化合物単位が6質量%以上15質量%以下である。
ここで用いられる共重合可能な他の単量体として、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体;1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐1,3‐ブタジエン(イソプレン)、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエン、1,3‐ヘキサジエン等の共役ジエン等が挙げられ、これらの2種以上を共重合することも可能である。
水系懸濁重合は、無水マレイン酸を単量体成分として用いる場合には、その水溶性が高いため、終始安定な懸濁系を保つことが困難であり、推奨されない。
過酸化系開始剤としてラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを使用すると、耐熱アクリル樹脂(A−2−1)の着色はない。もっとも、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを使用したポリマーは、耐水性が低く、熱水に浸漬した場合の重量増加が大きく、表面が白化することがある。
したがって、耐熱アクリル系樹脂(A−2−1)の重合には、ラウロイルパーオキサイドのようなジアシルパーオキサイドを適用することが好ましい。
この6員環構造の酸無水物単位を含む共重合体(A−2−2)の第一の単量体成分であるメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル、第二の単量体成分である芳香族ビニル化合物の具体例としては、前述の耐熱アクリル系樹脂(A−2−1)において例示したものを用いることができる。
また、6員環構造の酸無水物単位を含む共重合体(A−2−2)の第三の単位である6員環構造の酸無水物単位は、不飽和カルボン酸単量体及び、必要に応じて不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体と、その他の単量体成分と重合させ、共重合体とした後、かかる共重合体を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し、脱アルコール及び/又は脱水による分子内環化反応を行わせることにより生成することができる。この場合、典型的には共重合体を加熱することにより2単位の不飽和カルボン酸単位のカルボキシル基が脱水されて、あるいは隣接する不飽和カルボン酸単位と不飽和カルボン酸アルキルエステル単位からアルコールの脱離により1単位の6員環構造の酸無水物単位が生成される。
6員環構造の酸無水物単位を生成するための不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル等が挙げられる。
6員環構造の酸無水物単位を含む共重合体(A−2−2)は、特公平02−26641号、特開2006−266543号、特開2006−274069号、特開2006−274071号、特開2006−283013公報、特開2005−162835公報に記載の方法を参照して、組成比を決定し、製造、評価することができる。
本発明において、スチレン系樹脂(B)とは、少なくともスチレン系単量体を単量体成分として含む重合体をいう。ここで、スチレン系単量体とは、その構造中にスチレン骨格を有する単量体をいう。
このような他の単量体成分の共重合割合は、スチレン系単量体成分に対して、50質量%以下であることが好ましい。
また、スチレン−アクリロニトリル共重合体(B−1)、スチレン−メタクリル酸共重合体(B−2)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−3)は、メタクリル酸メチルを単量体成分として含む重合体との相溶性が高いことから、アクリル系樹脂(A)としてメタクリル酸メチルを単量体成分として含む重合体を用いる場合に特に好ましい。
これらの中でも、耐熱性の観点から、スチレン−メタクリル酸共重合体(B−2)、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−3)が特に好ましい。
スチレン系樹脂(B)は、公知のアニオン、塊状、懸濁、乳化又は溶液重合方法により得ることができる。また、スチレン系樹脂(B)は、共役ジエンやスチレン系単量体のベンゼン環の不飽和二重結合が水素添加されていてもよい。水素添加率は核磁気共鳴装置(NMR)によって測定できる。
混合する他の重合体の割合は、光学フィルムを構成する重合体の合計100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以下であり、さらに好ましくは0質量部である。
混合することができる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
紫外線吸収剤が、23℃から260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の紫外線吸収剤の重量減少率が50%以下である場合に成形加工性に優れ好ましい。さらに好ましい範囲は重量減少率が15%以下であり、とりわけ好ましい範囲は重量減少率が2%以下である。
例えば、二酸化珪素等の無機充填剤、酸化鉄等の顔料、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤、離型剤、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン,ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤,ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、難燃剤、帯電防止剤有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤などが挙げられる。
光学フィルムが、アクリル樹脂(A)とスチレン樹脂(B)からなる場合や、その他の重合体、紫外線吸収剤等の添加剤を含む場合には、予めこれらの材料を溶融混錬して樹脂組成物を製造し、その後、フィルムに成形することができる。
樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて、アクリル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)、必要に応じてその他の成分を添加して溶融混練して樹脂組成物を製造することができる。
押し出し成形により光学フィルムを製造する場合は、アクリル樹脂(A)、スチレン樹脂(B)、その他の重合体、紫外線吸収剤等の添加剤を含む樹脂組成物を事前に製造する代わりに、押し出し成形時に溶融混錬して成形することもできる。
また、アクリル系樹脂(A)の溶媒、又はアクリル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)に共通な溶媒、例えば、クロロホルム、二塩化メチレン等の溶媒を用いて、樹脂を溶解後、キャスト乾燥固化することにより未延伸フィルムをキャスト成形もすることができる。
好ましいフィルム製膜方法は、金型にTダイを用いる溶融押出法である。Tダイから吐出されたフィルムは金属ロール、ゴムロール、金属ベルト等により片面又は両面を冷却しつつ引取りながら製膜する。
二軸延伸方法としては、例えば、ロール延伸とテンター延伸の逐次二軸延伸法、テンター延伸による同時二軸延伸法、チューブラー延伸による二軸延伸法等が挙げられる。
また、光学フィルムがアクリル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)からなる場合には、延伸温度は90℃乃至160℃であることが好ましく、より好ましくは100℃乃至150℃、さらに好ましくは115℃乃至135℃である。
また、光学フィルムがアクリル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)からなる場合には、30%以上150%以下であり、40%以上140%以下であることが好ましく、50%以上120%以下であることがとりわけ好ましい。
延伸倍率をこの範囲にすることにより、優れた耐折強度及び熱収縮率を有する一軸延伸光学フィルムが得られる。
また、光学フィルムがアクリル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)からなる場合には、MD方向、TD方向の延伸倍率は、共に、30%以上150%以下であり、40%以上140%以下であることが好ましく、50%以上120%以下であることがとりわけ好ましい。
延伸倍率をこの範囲にすることにより、優れた耐折強度及び熱収縮率を有する二軸延伸フィルムが得られる。
光学フィルムの耐折強度は、延伸倍率を本発明で規定する範囲にすることによって制御することができる。
ここで、耐折強度とは、フィルムの機械的強度を示す指標であり、以下の式で表される。
耐折強度=Logn
nは、JIS P 8115で規定される耐折強さ試験方法に従って測定した耐折回数である。
延伸倍率(%)=[(収縮前の長さ/収縮後の長さ)−1]×100
光学フィルムの熱収縮率は、延伸倍率を本発明で規定する範囲にすることによって制御することができる。
ここで、熱収縮率とは、ISO 7823−1で規定される、フィルムの加熱による収縮のし易さを示す指標であり、以下の式で表される。
熱収縮率(%)=(Lo−L1/Lo)×100
(ここで、Loは加熱前のフィルムの長さ、L1は加熱後の長さである。)
Re=(nx−ny)×d、
Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
(式中、nx:成形体面内において屈折率が最大となる方向をxとした場合のx方向の主屈折率、ny:成形体面内においてx方向に垂直な方向をyとした場合のy方向の主屈折率、nz:成形体厚み方向の主屈折率、d:成形体の厚み(nm)である。)
本発明及び実施例で用いた評価法を説明する。
(1)評価方法
GPC(東ソー(株)製GPC−8020、検出RI、カラム昭和電工製Shodex K−805、801連結)を用い、溶媒はクロロホルム、測定温度40℃で、市販標準ポリスチレン換算で質量平均分子量を求める。
(面内レタデーション(Re)の測定)
シックネスゲージを用いてフィルムの厚さd(nm)を測定する。この値を大塚電子(株)社製複屈折測定装置RETS−100に入力し、測定面が測定光と垂直になるように試料を配置し、23℃で回転検光子法により面内レタデーション(Re)を測定・算出する。
(厚み方向レタデーション(Rth)
Metricon社製レーザー屈折計Model2010を用いて、23℃で光学フィルムの平均屈折率nを測定する。そして、平均屈折率nとフィルム厚さd(nm)を大塚電子(株)社製複屈折測定装置RETS−100に入力し、23℃で厚み方向レタデーション(Rth)を測定・算出する。
長さ110mm×幅15mmに裁断したサンプルを用い、JIS P 8115(国際標準化機構:ISO5626)に従って、そのMD、TD方向の耐折回数を測定し、その平均値nから、フィルムの耐折強度Lognを求めた。下記に試験条件を記載する。
(試験条件)
試験機:MIT耐揉試験機(東洋製機製作所)
荷重:4.9N (=500g)
折り曲げ角度:±135°
折り曲げ速度:175cpm
試験片つかみ具
先端半径:R=0.38mm
開き:0.25mm
長さ120mm×幅120mmに裁断したサンプルを用い、ISO 7823−1に従って、そのMD方向、TD方向の熱収縮率を測定した。具体的な手順を示す。
サンプルの中心に縦と横に線を引き、その交点から左右、上下50mmの位置に票点を印した。80℃に加熱された循環型熱風機(ESPEC社 PHH−101)に無重力状態で吊るして140時間保持した。その後、サンプルを取り出して放冷後、上記の票点間の長さを読み取って加熱後の長さ(mm)とした。
熱収縮率を以下の式に従って算出した。
熱収縮率(%)=(Lo−L1/Lo)×100
(ここで、Loは、加熱前の長さ(100mm)、L1は加熱後の長さ(mm)である。)
i)アクリル系樹脂(A−2−1)の準備
特公昭63−1964に記載の方法で、メタクリル酸メチル−スチレン−無水マレイン酸共重合体を得た。得られた共重合体の組成は、メタクリル酸メチル74質量%、スチレン16質量%、無水マレイン酸10質量%であり、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は1.6g/10分であった。
メタクリル酸メチル89.2重量部、アクリル酸メチル5.8重量部、及びキシレン5重量部からなる単量体混合物に、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,3−トリメチルシクロヘキサン0.0294重量部、及びn−オクチルメルカプタン0.115重量部を添加し、均一に混合した。この溶液を内容積10リットルの密閉耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下に平均温度130℃、平均滞留時間2時間で重合した後、反応器に接続された貯層に連続的に送り出し、一定条件下で揮発分を除去し、さらに押出機に連続的に溶融状態で移送し、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体(B−1)のペレットを得た。得られた共重合体のアクリル酸メチルの共重合割合は6.0%、重量平均分子量は145,000、ASTM−D1238に準拠して測定した230℃3.8kg荷重のメルトフロー値は1.0g/分であった。
i)スチレン−メタクリル酸共重合体(B−2)
装置の全てがステンレス鋼で製作されているものを用いて、連続溶液重合を行った。スチレン75.2質量%、メタクリル酸4.8質量%、エチルベンゼン20質量%を調合液とし、重合開始剤として1,1−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを用いた。この調合液を1L/hr.の速度で連続して、内容積2Lの攪拌機付きの完全混合重合器へ供給し、136℃で重合を行った。
固形分49%を含有する重合液を連続して取り出し、まず230℃に予熱後、230℃に保温し、20torrに減圧された脱揮器に供給し、平均滞留0.3時間経過後、脱揮器の低部のギヤポンプより連続して排出した。
得られたスチレン−メタクリル酸共重合体(B−2)は無色透明で、中和滴定による組成分析の結果、スチレンの共重合割合92質量%、メタクリル酸の共重合割合8質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、3.8kg荷重のメルトフローレート値は5.2g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、4.8×10-12Pa-1であり、固有複屈折は負であった。
装置の全てがステンレス鋼で製作されているものを用いて、連続溶液重合を行った。スチレン91.7質量部、無水マレイン酸8.3質量部の比率で合計100質量部を準備した。(ただし、両者は混合しない。)メチルアルコール5質量部、重合開始剤として1,1−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.03質量部をスチレンに混合し、第1調合液とした。0.95kg/hr.の速度で連続して内容積4Lのジャケット付き完全混合重合機に供給した。
一方、70℃に加熱した無水マレイン酸を、第二調合液として0.10kg/hr.の速度で同一重合機へ供給し、111℃で重合を行った。重合転化率が54%となったところで、重合液を重合機から連続して取り出し、まず230℃に予熱後、230℃に保温し、20torrに減圧された脱揮器に供給し、平均滞留0.3時間経過後、脱揮器の低部のギヤポンプより連続して排出し、スチレン−無水マレイン酸共重合体(B−3)を得た。
得られたスチレン−無水マレイン酸共重合体(B−3)は無色透明で、中和滴定による組成分析の結果、スチレンの共重合割合は85質量%、無水マレイン酸単位の共重合割合は15質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート値は2.0g/10分であった。また、その光弾性係数(未延伸)は、4.1×10-12Pa-1であり、固有複屈折は負であった。
紫外線吸収剤として、ベンゾトリアゾール系化合物(旭電化(株)社製、アデカスタブLA−31(融点(Tm):195℃)を用いた。理学電気(株)社製、ThermoPlus TG8120を用いて、23℃から260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の質量減少率を測定したところ、0.03%であった。
表1、表2に記載のアクリル系樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)を用い、テクノベル製Tダイ装着押し出し機(KZW15TW−25MG−NH型/幅150mmTダイ装着/リップ厚0.5mm)を用いて、表1、表2に示す条件に調整し押し出し成形をすることにより未延伸フィルムを得た。
そして、未延伸フィルムを幅が50mmになるように切り出し、表1、表2に示す条件で一軸延伸(チャック間:50mm、チャック移動速度:500mm/分)を引っ張り試験機を用いて行い、実施例A1、A2、B1、B2、B5、B6、比較例A1、B2、B5の一軸延伸フィルムを得た。
さらに、一軸延伸フィルムを幅が50mmになるように切り出し、表2に示す条件で一軸延伸(チャック間:50mm、チャック移動速度:500mm/分)を引っ張り試験機を用いて行い、実施例A3〜A5、B3、B4、B7〜9、比較例A2、3、B1、B3、B4、B6の二軸延伸フィルムを得た。
このようにして製造したフィルムの組成、押し出し成形条件、フィルムの厚み、面内レタデーション(Re)、厚み方向レタデーション(Rth)、耐折強度、熱収縮率の絶対値を表1、表2に示す。
また、同様の傾向が二軸延伸フィルムについても確認できた。
すなわち、延伸倍率が本発明の範囲より大きい比較例A2、B1、B4、B6のフィルムは、その延伸方向において、耐折強度は優れているが、熱収縮率の絶対値が大きかった。逆に、延伸倍率が本発明の範囲より小さい比較例A3、B3、B6のフィルムは、その延伸方向において、熱収縮率の絶対値は小さいが、耐折強度は劣っていた。
そして、このような傾向は、光学フィルムが、アクリル系樹脂からなる場合とアクリル系樹脂とスチレン系樹脂からなる場合とに共通して確認できた。
さらに、このような傾向は、光学フィルムが、アクリル系樹脂とスチレン系樹脂からなる場合において、スチレン系樹脂がスチレン−メタクリル酸共重合体(B−2)である場合とスチレン−無水マレイン酸共重合体(B−3)である場合とに共通して確認できた。
特に、本発明の光学フィルムは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる偏光板保護フィルムや、1/4波長板、1/2波長板等の位相差板、視野角制御フィルム等の液晶光学補償フィルムを製造するために好適に用いることができる。
とりわけ、本発明の光学フィルムは、厚み方向レタデーション(Rth)が負の値であることが望まれるIPSモードの液晶表示装置用の偏光板保護フィルムや位相差フィルムを製造するために好適に用いることができる。具体的には、本発明の光学フィルムは、テレビ、パソコン、携帯電話、カーナビゲーション、医療機器、産業機器等の各種ディスプレイに用いられるIPSモードの液晶表示装置の画質向上に有用である。
Claims (5)
- メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が40質量%以上90質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が5質量%以上40質量%以下、及び下記一般式[1]で表される化合物単位が5質量%以上20質量%以下である共重合体を含む耐熱アクリル系樹脂(A)と、スチレン−アクリロニトリル共重合体(B−1)、スチレン−メタクリル酸共重合体(B−2)、又はスチレン−無水マレイン酸共重合体(B−3)から選択されるスチレン系樹脂(B)からなり、機械的流れ方向(MD方向)又は機械的流れ方向に直交する方向(TD方向)に一軸延伸された光学フィルムであって、延伸倍率が30%〜150%の範囲内にある光学フィルム。
- メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位が40質量%以上90質量%以下、芳香族ビニル化合物単位が5質量%以上40質量%以下、及び下記一般式[1]で表される化合物単位が5質量%以上20質量%以下である共重合体を含む耐熱アクリル系樹脂(A)と、スチレン−アクリロニトリル共重合体(B−1)、スチレン−メタクリル酸共重合体(B−2)、又はスチレン−無水マレイン酸共重合体(B−3)から選択されるスチレン系樹脂(B)からなり、機械的流れ方向(MD方向)及び機械的流れ方向に直交する方向(TD方向)に二軸延伸された光学フィルムであって、縦延伸(MD)方向、横延伸(TD)方向の延伸倍率が共に30%〜150%の範囲内にある光学フィルム。
- 延伸を施した方向において、耐折強度が1.0以上であり、80℃で140時間加熱したときの熱収縮率の絶対値が0.2%以下である請求項1又は2に記載の光学フィルム。
- 請求項1から3いずれか1項に記載の光学フィルムからなる偏光板保護フィルム。
- 請求項1から3いずれか1項に記載の光学フィルムからなる位相差フィルム。
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