JP5246081B2 - 半導体発光素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体発光素子の製造方法およびランプ、電子機器、機械装置に関し、特に、大電流が印加される場合に好適に用いられ、大電流が印加されることにより高い発光出力が得られる半導体発光素子の製造方法およびこの製造方法を用いて製造された半導体発光素子を備えるランプ、電子機器、機械装置に関する。
従来から、発光ダイオードなどに用いられる半導体発光素子として、基板上に、n型半導体層と発光層とp型半導体層とを順次積層してなるものがある。このような半導体発光素子を製造する方法として、サファイア単結晶などからなる基板上に、有機金属化学気相成長法(MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition )法)によってn型半導体層と発光層とp型半導体層とを連続して順次積層する方法がある。
しかしながら、基板上に、n型半導体層と発光層とp型半導体層とを連続して順次積層する場合、これらの層が同一の成長室内で形成されるので、n型半導体層を形成する際に用いたドーパントがp型半導体層の形成に支障を来たして、抵抗率の十分に低いp型半導体層が得られない場合があった。
このような問題を解決する技術として、例えば、特許文献1には、所定の基板上に、少なくとも第1導電形の半導体層と第2導電形の半導体層とを順次成膜して化合物半導体装置を製造するに際し、前記それぞれの導電形の半導体層を、導電形に対応した異なる複数の独立した成長室で成膜するようにして成る化合物半導体装置の製造方法が提案されている。
また、最近、半導体発光素子の発光出力を向上させるために、半導体発光素子に大電流が印加される場合が多くなってきている。
特開平7−45538号公報
しかしながら、n型半導体層を形成する成長室とp型半導体層を形成する成長室とを別々にすると、得られた半導体発光素子の発光出力が不十分となる場合があった。
また、従来の半導体発光素子の発光出力は、印加する電流を大きくすると高くなるが、印加する電流を大きくすることによる発光出力を向上させる効果は、印加する電流を大きくするのに伴って小さくなる。したがって、半導体発光素子に大電流を印加する場合、印加する電流を大きくすることによる発光出力の向上効果は不十分であった。このため、半導体発光素子として、大電流を印加することによって効果的に発光出力を向上させることができ、大電流が印加される場合に好適に用いられるものが要求されていた。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、大電流が印加されることにより高い発光出力が得られる半導体発光素子を製造できる半導体発光素子の製造方法、およびこの製造方法を用いて製造された半導体発光素子を備えるランプ、電子機器、機械装置を提供することを課題とする。
本発明者は、上記問題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成した。即ち、本発明は以下に関する。
(1) 第1有機金属化学気相成長装置において、基板上に、第1n型半導体層を積層する第1工程と、第2有機金属化学気相成長装置において、前記第1n型半導体層上に、前記第1n型半導体層の再成長層と第2n型半導体層と発光層とp型半導体層とを順次積層する第2工程とを具備し、前記第2工程において、前記第2有機金属化学気相成長装置の成長室内の圧力を500mbar〜1013mbar(大気圧下)として前記発光層を成長させることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
(2) 前記成長室に流量30SLM〜100SLMの第1キャリアガスとともにIII族元素を含むIII族原料を供給すると同時に、前記成長室に第2キャリアガスとともに窒素または窒素化合物を含む窒素原料を供給して、III族窒化物半導体層からなる前記発光層を成長させる工程を含むことを特徴とする(1)に記載の半導体発光素子の製造方法。
本発明の半導体発光素子の製造方法では、第2工程において、第1n型半導体層上に、第1n型半導体層の再成長層を形成してから第2n型半導体層を積層するので、再成長層上に結晶性の良好な第2n型半導体層が形成される。さらに、本発明の半導体発光素子の製造方法では、第2工程において、第2有機金属化学気相成長装置の成長室内の圧力を500mbar〜1013mbar(大気圧下)として発光層を成長させるので、結晶性の良好な第2n型半導体上に結晶性の良好な発光層が形成されることになる。その結果、本発明の半導体発光素子の製造方法によれば、大電流が印加された場合に、従来と比較して高い発光出力が得られる半導体発光素子が得られる。
しかも、本発明の半導体発光素子の製造方法では、第1工程において第2工程に比べ圧倒的に厚く形成される第1n型半導体層が、第2工程において形成されるp型半導体層とは別の成長室内で形成されることになる。したがって、本発明の半導体発光素子の製造方法によれば、n型半導体層を形成する際に用いたドーパントに起因するp型半導体層の不良を防ぐことができ、収率面で大幅な生産性向上を図ることができる。
図1は、本発明の半導体発光素子の製造方法を用いて製造された半導体発光素子の一例を示した断面模式図である。 図2は、図1に示す半導体発光素子を製造する工程を説明するための断面模式図である。 図3は、図1に示した半導体発光素子を備えるランプの一例を示した断面模式図である。 図4は、実施例1の基板を分割する前の段階の半導体発光素子において、基板の直径に沿う一端から他端までの距離と、発光強度との関係を示したグラフである。 図5は、実施例3の基板を分割する前の段階の半導体発光素子において、基板の直径に沿う一端から他端までの距離と、発光強度との関係を示したグラフである。
以下、半導体発光素子の製造方法について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、本発明を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の半導体発光素子やランプ等の寸法関係とは異なっている。
『半導体発光素子』
図1は、本発明の半導体発光素子の製造方法を用いて製造された半導体発光素子の一例を示した断面模式図である。
図1に示す本実施形態の半導体発光素子1は、基板11と、基板11上に積層された積層半導体層20と、積層半導体層20の上面に積層された透光性電極15と、透光性電極15上に積層されたp型ボンディングパッド電極16と、積層半導体層20の露出面20a上に積層されたn型電極17とを具備している。
積層半導体層20は、基板11側から、n型半導体層12、発光層13、p型半導体層14がこの順に積層されて構成されている。図1に示すように、n型半導体層12、発光層13、p型半導体層14は、その一部がエッチング等の手段によって除去されており、除去された部分からn型半導体層12の一部が露出されている。そして、n型半導体層12の露出面20aには、n型電極17が積層されている。
また、p型半導体層14の上面には、透光性電極15及びp型ボンディングパッド電極16が積層されている。これら、透光性電極15及びp型ボンディングパッド電極16によって、p型電極18が構成されている。
n型半導体層12、発光層13およびp型半導体層14を構成する半導体としては、III族窒化物半導体を用いることが好ましく、窒化ガリウム系化合物半導体を用いることがより好ましい。本発明におけるn型半導体層12、発光層13およびp型半導体層14を構成する窒化ガリウム系化合物半導体としては、一般式AlInGa1−x−yN(0≦x<1,0≦y<1,0≦x+y<1)で表わされる各種組成の半導体を何ら制限なく用いることができる。
本実施形態の半導体発光素子1は、p型電極18とn型電極17との間に電流を通じることで、積層半導体層20を構成する発光層13から発光を発せられるようになっており、発光層13からの光を、p型ボンディングパッド電極16の形成された側から取り出すフェイスアップマウント型の発光素子である。なお、本発明の半導体発光素子は、フリップチップ型の発光素子であってもよい。
(基板)
基板11としては、例えば、サファイア、SiC、シリコン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン亜鉛鉄、酸化マグネシウムアルミニウム、ホウ化ジルコニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン、ハフニウム、タングステン、モリブデン等からなる基板を用いることができる。上記基板の中でも、特に、c面を主面とするサファイア基板を用いることが好ましい。
なお、上記基板の内、高温でアンモニアに接触することで化学的な変性を引き起こすことが知られている酸化物基板や金属基板等を用い、アンモニアを使用せずに後述するバッファ層21を成膜するとともに、アンモニアを使用する方法で後述する下地層22を成膜した場合には、バッファ層21がコート層として作用するので、基板11の化学的な変質を防ぐ点で効果的である。
(バッファ層)
バッファ層21は、設けられていなくてもよいが、基板11と下地層22との格子定数の違いを緩和して、基板11の(0001)C面上にC軸配向した単結晶層の形成を容易にするために、設けられていることが好ましい。バッファ層21の上に単結晶の下地層22を積層すると、より一層結晶性の良い下地層22が積層できる。
バッファ層21は、多結晶のAlGa1−xN(0≦x≦1)からなるものが好ましく、単結晶のAlGa1−xN(0≦x≦1)からなるものがより好ましい。
バッファ層21は、例えば、多結晶のAlGa1−xN(0≦x≦1)からなる厚さ0.01〜0.5μmのものとすることができる。バッファ層21の厚みが0.01μm未満であると、バッファ層21により基板11と下地層22との格子定数の違い緩和する効果が十分に得られない場合がある。また、バッファ層21の厚みが0.5μmを超えると、バッファ層21としての機能には変化が無いのにも関わらず、バッファ層21の成膜処理時間が長くなり、生産性が低下する問題がある。
バッファ層21としては、一例としてIII族窒化物半導体からなる六方晶系の結晶構造を持つものが挙げられる。バッファ層21をなすIII族窒化物半導体の結晶は、単結晶構造を有するものであることが好ましい。III族窒化物半導体の結晶は、成長条件を制御することにより、上方向だけでなく、面内方向にも成長して単結晶構造を形成する。このため、バッファ層21の成膜条件を制御することにより、単結晶構造のIII族窒化物半導体の結晶からなるバッファ層21とすることができる。このような単結晶構造を有するバッファ層21を基板11上に成膜した場合、バッファ層21のバッファ機能が有効に作用するため、その上に成膜されたIII族窒化物半導体は良好な配向性及び結晶性を有する結晶膜となる。
また、バッファ層21をなすIII族窒化物半導体の結晶は、成膜条件をコントロールすることにより、六角柱を基本とした集合組織からなる柱状結晶(多結晶)とすることも可能である。なお、ここでの集合組織からなる柱状結晶とは、隣接する結晶粒との間に結晶粒界を形成して隔てられており、それ自体は縦断面形状として柱状になっている結晶のことをいう。
(下地層)
下地層22としては、AlGaInN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)が挙げられるが、AlGa1−xN(0≦x<1)を用いると結晶性の良い下地層22を形成できるため好ましい。
下地層22の膜厚は0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。この膜厚以上にした方が結晶性の良好なAlGa1−xN層が得られやすい。また、下地層22の膜厚は10μm以下が好ましい。
下地層22の結晶性を良くするために、下地層22には不純物をドーピングしない方が望ましい。しかし、p型あるいはn型の導電性が必要な場合には、下地層22にアクセプター不純物あるいはドナー不純物を添加することが出来る。
「積層半導体層」
(n型半導体層)
n型半導体層12は、nコンタクト層12a(第1n型半導体層及び再成長層)と、nクラッド層12b(第2n型半導体層)とから構成されている。
nコンタクト層12aは、n型電極17を設けるための層であり、後述する第1工程において形成された第1n型半導体層(第1工程成長層12cとも言う)と、後述する第2工程において形成された再成長層12dとからなる。第1工程成長層12cと再成長層12dとは、好ましくは同一の材料からなるものがよく、第1工程成長層12cの厚みが、再成長層12dの厚みよりも厚くなっている。
また、本実施形態においては、図1に示すように、第1工程成長層12cにn型電極17を設けるための露出面20aが形成されている。なお、n型電極17を設けるための露出面20aは、再成長層12dに形成されていてもよい。
nコンタクト層12aは、AlGa1−xN層(0≦x<1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましく、n型不純物(ドーパント)がドープされている。nコンタクト層12aにn型不純物が1×1017〜1×1020/cm、好ましくは1×1018〜1×1019/cmの濃度で含有されている場合、n型電極17との良好なオーミック接触の維持の点で好ましい。nコンタクト層12aに用いられるn型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、Ge、Sn等が挙げられ、SiおよびGeが好ましく、Siが最も好ましい。
nコンタクト層12aを構成する第1工程成長層12cの膜厚は、0.5〜5μmであることが好ましく、2μm〜4μmの範囲であることがより好ましい。第1工程成長層12cの膜厚が上記範囲内であると、半導体の結晶性が良好に維持される。
また、再成長層12dの膜厚は、0.05〜2μmであることが好ましく、0.2μm〜1μmであることがより好ましい。再成長層12dの膜厚が0.2μm以上であると、後述するように、nコンタクト層12aを形成している途中の段階でnコンタクト層12aの成長を中断し、成長室内から取り出して別の装置の成長室に移動し、その後nコンタクト層12aの成長を再開したことによるnコンタクト層12aの結晶性への影響を少なくすることができ、半導体発光素子の出力を向上させる効果がより顕著となる。また、再成長層12dの膜厚が2μmを超えると、p型半導体層14を形成する際に用いられる第2有機金属化学気相成長装置の成長室内に、n型半導体層12を形成した後に残されるドーパントや堆積物の量が多くなり、n型半導体層12を形成する際に用いたドーパントや堆積物に起因するp型半導体層14の不良が生じやすくなる。さらに再成長層12dの成膜処理時間が長くなり、生産性が低下する問題がある。
nクラッド層12bは、nコンタクト層12aと発光層13との間に設けられている。nクラッド層12bは、発光層13へのキャリアの注入とキャリアの閉じ込めを行なう層であり、再成長層12dと発光層13との結晶格子の不整合を緩和する発光層13のバッファ層としても機能するものである。nクラッド層12bはAlGaN、GaN、GaInNなどで形成することが可能である。なお、明細書中各元素の組成比を省略してAlGaN、GaN、GaInNと記述する場合がある。nクラッド層12bをGaInNで形成する場合には、発光層13のGaInNのバンドギャップよりも大きくすることが望ましいことは言うまでもない。
nクラッド層12bが単層からなるものである場合、nクラッド層12bの膜厚は、5〜500nmであることが好ましく、より好ましくは5〜100nmである。また、nクラッド層12bのn型ドープ濃度は1×1017〜1×1020/cmであることが好ましく、より好ましくは1×1018〜1×1019/cmである。ドープ濃度がこの範囲である場合、良好な結晶性の維持および発光素子の動作電圧低減の点で好ましい。
本実施形態においては、nクラッド層12bは、単層であってもよいが、組成の異なる2つの薄膜層を繰り返し成長させて10ペア数(20層)〜40ペア数(80層)からなる超格子構造であることが好ましい。nクラッド層12bが超格子構造からなるものである場合、薄膜層の積層数が20層以上であると、再成長層12dと発光層13との結晶格子の不整合をより効果的に緩和することができ、半導体発光素子の出力を向上させる効果がより顕著となる。しかし、薄膜層の積層数が80層を超えると、超格子構造が乱れやすくなる場合もあり、発光層13に悪影響を来たす恐れが生じる。さらに、nクラッド層12bの成膜処理時間が長くなり、生産性が低下する問題がある。
nクラッド層12bを構成する超格子構造は、III族窒化物半導体からなるn側第1層と、該n側第1層と組成が異なるIII族窒化物半導体からなるn側第2層とが積層されたものであることが好ましく、n側第1層とn側第2層とが交互に繰返し積層された構造を含むものであることがより好ましい。
nクラッド層12bの超格子構造を構成するn側第1層及びn側第2層は、GaInN/GaNの交互構造、AlGaN/GaNの交互構造、GaInN/AlGaNの交互構造、組成の異なるGaInN/GaInNの交互構造(本発明における“組成の異なる”との説明は、各元素組成比が異なることを指す)、組成の異なるAlGaN/AlGaNの交互構造とすることができ、GaInN/GaNの交互構造又は組成の異なるGaInN/GaInNの交互構造であることが好ましい。
n側第1層及びn側第2層の厚みは、それぞれ100オングストローム以下であることが好ましく、60オングストローム以下であることがより好ましく、40オングストローム以下であることがさらに好ましく、それぞれ10オングストローム〜40オングストロームの範囲であることが最も好ましい。超格子層を形成するn側第1層および/またはn側第2層の膜厚が100オングストローム超であると、結晶欠陥が入りやすくなるため好ましくない。
上記n側第1層及びn側第2層は、それぞれドープした構造であってもよく、また、ドープ構造/未ドープ構造の組み合わせであってもよい。ドープされる不純物としては、上記材料組成に対して従来公知のものを、何ら制限無く適用できる。例えば、nクラッド層12bとして、GaInN/GaNの交互構造又は組成の異なるGaInN/GaInNの交互構造を有する超格子構造を用いた場合には、不純物としてSiが好適である。また、超格子構造を構成するn側第1層及びn側第2層は、GaInNやAlGaN、GaNで代表される組成が同じであって、ドープ構造/未ドープ構造を組み合わせたものであってもよい。
(発光層)
発光層13は、障壁層13aと井戸層13bとが交互に複数積層された多重量子井戸構造からなる。多重量子井戸構造における積層数は3層から10層であることが好ましく、4層から7層であることがさらに好ましい。
井戸層13bの厚みは、15オングストローム以上50オングストローム以下の範囲であることが好ましい。井戸層13bの厚みが上記範囲であると、より高い発光出力が得られる。
井戸層13bは、Inを含む窒化ガリウム系化合物半導体であることが好ましい。Inを含む窒化ガリウム系化合物半導体は、青色の波長領域の強い光を発光するものであるため、好ましい。また、井戸層13bには、不純物をドープすることができる。ドーパントとしては、発光強度を増進するものであるSi、Geを用いることが好ましい。ドープ量は1×1017cm−3〜1×1018cm−3程度が好適である。ドープ量が上記範囲である場合、より発光強度の強いものとなる。
障壁層13aの膜厚は、20オングストローム以上100オングストローム未満の範囲であることが好ましい。障壁層13aの膜厚が薄すぎると、障壁層13a上面の平坦化を阻害し、発光効率の低下やエージング特性の低下を引き起こす。また、障壁層13aの膜厚が厚すぎると、駆動電圧の上昇や発光の低下を引き起こす。このため、障壁層13aの膜厚は70オングストローム以下であることがより好ましい。
また、障壁層13aは、GaNやAlGaNのほか、井戸層を構成するInGaNよりもIn比率の小さいInGaNで形成することができる。中でも、GaNが好適である。
(p型半導体層)
p型半導体層14は、通常、pクラッド層14aおよびpコンタクト層14bから構成される。また、pコンタクト層14bがpクラッド層14aを兼ねることも可能である。
pクラッド層14aは、発光層13へのキャリアの閉じ込めとキャリアの注入を行なう層である。pクラッド層14aとしては、発光層13のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成であり、発光層13へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、AlGa1−xN(0<x≦0.4)からなるものであることが好ましい。pクラッド層14aが、このようなAlGaNからなるものである場合、発光層13へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。
pクラッド層14aの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜400nmであり、より好ましくは5〜100nmである。pクラッド層14aのp型ドープ濃度は、1×1018〜1×1021/cmであることが好ましく、より好ましくは1×1019〜1×1020/cmである。p型ドープ濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。また、pクラッド層14aは、薄膜を複数回積層してなる超格子構造であってもよい。
pクラッド層14aが超格子構造を含むものである場合には、III族窒化物半導体からなるp側第1層と、該p側第1層と組成が異なるIII族窒化物半導体からなるp側第2層とが積層されたものとすることができる。pクラッド層14aが超格子構造を含むものである場合、p側第1層とp側第2層とが交互に繰返し積層された構造を含んだものであっても良い。
pクラッド層14aの超格子構造を構成するp側第1層及びp側第2層は、それぞれ異なる組成、例えば、AlGaN、GaInN又はGaNのうちの何れの組成であっても良く、GaInN/GaNの交互構造、AlGaN/GaNの交互構造、又はGaInN/AlGaNの交互構造であっても良い。本発明においては、p側第1層及びp側第2層は、AlGaN/AlGaN又はAlGaN/GaNの交互構造であることが好ましい。
p側第1層及びp側第2層の厚みは、それぞれ100オングストローム以下であることが好ましく、60オングストローム以下であることがより好ましく、40オングストローム以下であることがさらに好ましく、それぞれ10オングストローム〜40オングストロームの範囲であることが最も好ましい。超格子層を形成するp側第1層とp側第2層の膜厚が100オングストローム超であると、結晶欠陥が入りやすくなるため好ましくない。
p側第1層及びp側第2層は、それぞれドープした構造であっても良く、また、ドープ構造/未ドープ構造の組み合わせであっても良い。ドープされる不純物としては、上記材料組成に対して従来公知のものを、何ら制限無く適用できる。例えば、pクラッド層として、AlGaN/GaNの交互構造又は組成の異なるAlGaN/AlGaNの交互構造を有する超格子構造を用いた場合には、不純物としてMgが好適である。また、超格子構造を構成するp側第1層及びp側第2は、GaInNやAlGaN、GaNで代表される組成が同じであって、ドープ構造/未ドープ構造を組み合わせたものであってもよい。
pコンタクト層14bは、正極を設けるための層である。pコンタクト層14bは、AlGa1−xN(0≦x≦0.4)からなるものであることが、良好な結晶性の維持およびpオーミック電極との良好なオーミック接触の点で好ましい。また、pコンタクト層14bがp型不純物(ドーパント)を1×1018〜1×1021/cmを5×1019〜5×1020/cmの濃度で含有しているものである場合、良好なオーミック接触の維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持の点で好ましい。p型不純物としては、特に限定されないが、例えばMgを用いることが好ましい。pコンタクト層14bの膜厚は、特に限定されないが、0.01〜0.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.2μmである。pコンタクト層14bの膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
(n型電極)
n型電極17は、ボンディングパットを兼ねており、積層半導体層20のn型半導体層12に接するように形成されている。このため、n型電極17を形成する際には、少なくとも発光層13およびp半導体層14の一部を除去してn型半導体層12を露出させ、n型半導体層12の露出面20a上にボンディングパッドを兼ねるn型電極17を形成する。n型電極17としては、各種組成や構造が周知であり、これら周知の組成や構造を何ら制限無く用いることができ、この技術分野でよく知られた慣用の手段で設けることができる。
(透光性電極)
透光性電極15は、p型半導体層14の上に積層されるものであり、p型半導体層14との接触抵抗が小さいものであることが好ましい。また、透光性電極15は、発光層13からの光を効率良く半導体発光素子1の外部に取り出すために、光透過性に優れたものであることが好ましい。また、透光性電極15は、p型半導体層14の全面に渡って均一に電流を拡散させるために、優れた導電性を有していることが好ましい。
透光性電極15の構成材料としては、In、Zn、Al、Ga、Ti、Bi、Mg、W、Ceのいずれか一種を含む導電性の酸化物、硫化亜鉛または硫化クロムのうちいずれか一種からなる群より選ばれる透光性の導電性材料が挙げられる。導電性の酸化物としては、ITO(酸化インジウム錫(In−SnO))、IZO(酸化インジウム亜鉛(In−ZnO))、AZO(酸化アルミニウム亜鉛(ZnO−Al))、GZO(酸化ガリウム亜鉛(ZnO−Ga))、フッ素ドープ酸化錫、酸化チタン等があげられる。
また、透光性電極15の構造は、従来公知の構造を含めて如何なる構造であってもよい。また、透光性電極15は、p型半導体層14のほぼ全面を覆うように形成してもよいし、隙間を開けて格子状や樹形状に形成してもよい。
(p型ボンディングパッド電極)
p型ボンディングパッド電極16はボンディングパットを兼ねており、透光性電極15の上に積層されている。p型ボンディングパッド電極16としては、各種組成や構造が周知であり、これら周知の組成や構造を何ら制限無く用いることができ、この技術分野でよく知られた慣用の手段で設けることができる。
p型ボンディングパッド電極16は、透光性電極15上であれば、どこへでも形成することができる。例えばn型電極17から最も遠い位置に形成してもよいし、半導体発光素子1の中心などに形成してもよい。しかし、あまりにもn型電極17に近接した位置に形成すると、ボンディングした際にワイヤ間、ボール間のショートを生じてしまうため好ましくない。
また、p型ボンディングパッド電極16の電極面積としては、できるだけ大きいほうがボンディング作業はしやすいが、発光の取り出しの妨げになる。例えば、チップ面の面積の半分を超える広い面積を覆った場合、発光の取り出しの妨げとなり、出力が著しく低下する。逆に、p型ボンディングパッド電極16の電極面積が小さすぎると、ボンディング作業がしにくくなり、製品の収率を低下させる。具体的には、ボンディングボールの直径よりもわずかに大きい程度が好ましく、直径100μmの円形程度であることが一般的である。
(保護膜層)
保護膜層は、必要に応じて透光性電極15の上面及び側面と、n型半導体層12の露出面20a、発光層13およびp型半導体層14の側面、n型電極17およびp型ボンディングパッド電極16の側面や周辺部を覆うよう形成される。保護膜層を形成することにより、半導体発光素子1の内部への水分等の浸入を防止でき、半導体発光素子1の劣化を抑制できる。
保護膜層としては、絶縁性を有し、300〜550nmの範囲の波長において80%以上の透過率を有する材料を用いることが好ましく、例えば、酸化シリコン(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ニオブ(Nb)、酸化タンタル(Ta)、窒化シリコン(Si)、窒化アルミニウム(AlN)等を用いることができる。このうちSiO、Alは、CVD成膜で緻密な膜が容易に作製でき、より好ましい。
『半導体発光素子の製造方法』
図1に示す半導体発光素子1を製造するには、まず、図2に示す積層半導体層20を製造する。図2に示す積層半導体層20を製造するには、はじめに、サファイア基板等の基板11を用意する。
次に、基板11を第1MOCVD(有機金属化学気相成長)装置の成長室内に設置し、MOCVD法によって、基板11上に、バッファ層21と、下地層22と、nコンタクト層12aの一部を構成する第1工程成長層12c(第1n型半導体層)とを順次積層する(第1工程)。
第1工程成長層12cを成長させる際には、水素雰囲気で、基板11の温度を1000℃〜1100℃の範囲とすることが好ましい。
第1工程成長層12cを成長させる原料としては、トリメチルガリウム(TMG)などのIII族金属の有機金属原料とアンモニア(NH)などの窒素原料とを用い、熱分解によりバッファ層上にIII族窒化物半導体層を堆積させる。MOCVD装置の成長室内の圧力は15〜80kPaとすることが好ましく、15〜60kPaとすることがより好ましい。キャリアガスは水素ガスのみであってもよいし、水素ガスと窒素ガスとの混合ガスであってもよい。
その後、第1MOCVD装置の成長室内からnコンタクト層12aの第1工程成長層12cまでの各層の形成された基板11を取り出す。
次に、第1工程成長層12cまでの各層の形成された基板11を第2MOCVD装置の成長室内に設置し、MOCVD法によって、第1工程成長層12c上に、nコンタクト層12aの再成長層12dとnクラッド層12b(第2n型半導体層)と発光層13とp型半導体層14とを順次積層する(第2工程)。
本実施形態においては、第2工程において、再成長層12dを形成する前に、第1工程成長層12cまでの各層の形成された基板11を、窒素とアンモニアを含む雰囲気で熱処理温度500℃〜1000℃の熱処理を行うことが好ましい。熱処理の雰囲気は、窒素とアンモニアを含む雰囲気に代えて、例えば、窒素のみの雰囲気としてもよい。なお、水素のみの雰囲気では第1工程成長層12cが昇華し、結晶性の悪化を招くため好ましくない。また、MOCVD装置の成長室内の圧力は15〜100kPaとすることが好ましく、60〜95kPaとすることがより好ましい。
このような熱処理を行った場合、第1工程終了後、nコンタクト層12aの第1工程成長層12cまでの各層の形成された基板11が、第1MOCVD装置の成長室内から取り出されることにより、第1工程成長層12cの表面が汚染されたとしても、再成長層12dを形成する前に汚染物質を除去することができる。その結果、再成長層12dの結晶性が向上して、再成長層12d上に形成されるnクラッド層12bや発光層13の結晶性がより一層良好なものとなる。なお、第1工程成長層12cの表面が汚染されたままである場合、逆方向電流(IR)が十分に低くならなかったり、静電気放電(ESD)耐圧が不足したりする恐れがあり、半導体発光素子1の信頼性が低下する。
また、本実施形態においては、第1工程における第1工程成長層12cの成長条件と、第2工程における再成長層12dの成長条件とを同一とすることが好ましい。この場合、第1MOCVD装置と第2MOCVD装置の2つの装置を用い、第1MOCVD装置においてnコンタクト層12aを形成している途中の段階でnコンタクト層12aの成長を中断し、成長室内から取り出して第2MOCVD装置の成長室に移動し、その後nコンタクト層12aの成長を再開したことによるnコンタクト層12aの結晶性への影響を少なくすることができるので、第1工程成長層12cと再成長層12dとからなるnコンタクト層12aの結晶性が良好なものとなる。
また、本実施形態においては、再成長層12dの厚みを0.05μm〜2μmとすることが好ましい。
また、再成長層12dを成長させる際には、基板11の温度を1000℃〜1100℃の範囲とすることが好ましい。再成長層12dを成長させるときの基板11の温度を上記範囲とすることで、第1工程成長層12cまでの各層の形成された基板11が、第1MOCVD装置の成長室内から取り出されることにより、nコンタクト層12aの第1工程成長層12cの表面が汚染されていたとしても、再成長層12dを形成する際に汚染物質を除去することができる。その結果、再成長層12d上に形成されるnクラッド層12bや発光層13の結晶性をより一層良好なものとすることができる。これに対し、再成長層12dを成長させるときの基板11の温度が1000℃未満である場合、逆方向電流(IR)が十分に低くならなかったり、静電気放電(ESD)耐圧が不足したりする恐れがある。また、再成長層12dを成長させるときの基板11の温度が1100℃を超える場合、半導体発光素子1の出力が不十分となる恐れがある。
また、第2工程において、組成の異なる2つの薄膜層を繰り返し成長させて20層〜80層成長させてなる超格子構造からなるnクラッド層12bを形成することが好ましい。なお、nクラッド層12bを超格子構造とする場合、膜厚100オングストローム以下のIII族窒化物半導体からなるn側第1層と、n側第1層と組成が異なる膜厚100オングストローム以下のIII族窒化物半導体からなるn側第2層とを、交互に繰り返し積層し、薄膜層が20層〜80層となるように形成することが好ましい。
また、発光層13は、障壁層13aと井戸層13bとを交互に繰り返して積層し、且つ、n型半導体層12側及びp型半導体層14側に障壁層13aが配されるように順に積層すればよい。井戸層13bおよび障壁層13aの組成や膜厚は、所定の発光波長になるように設定される。なお、井戸層13bおよび障壁層13aを成長させる際における成長室の圧力やキャリアガスの流量などの条件は同じとすることができる。
本実施形態においては、発光層13を成長させる際の第2MOCVD装置の成長室の圧力を500mbar〜1013mbar(大気圧下)とする。第2MOCVD装置の成長室の圧力は、600mbar以上とすることがより好ましい。また、第2MOCVD装置の成長室の圧力は、900mbar以下とすることが好ましく、800mbar以下とすることがより好ましい。成長室の圧力を500mbar以上とすることで、発光層13の結晶性がより一層良好なものとなり、結晶性の良好なnクラッド層12b上に結晶性の良好な発光層13が形成されることになり、大電流が印加された場合に、従来と比較して高い発光出力が得られる半導体発光素子1が得られる。この効果は、70mA以上の大電流が印加された場合に一層顕著となる。また、成長室の圧力を1013mbar以下とすることで、基板11を分割(チップ化)する前の基板11面内における発光強度のバラツキが十分に小さいものとなり、得られた半導体発光素子1の品質が均一なものとなる。
また、本実施形態においては、発光層13を成長させる際に、第2MOCVD装置の成長室に流量30SLM〜100SLMの第1キャリアガスとともにIII族元素を含むIII族原料を供給すると同時に、成長室に第2キャリアガスとともに窒素または窒素化合物を含む窒素原料を供給して、III族窒化物半導体層からなる発光層13を成長させることが好ましい。
第1キャリアガスとしては、窒素ガスを用いることが好ましい。また、III族元素としては、例えばGaが挙げられる。また、第2キャリアガスとしては、窒素ガスを用いることが好ましい。窒素化合物としては、アンモニア(NH)が挙げられる。
また、発光層13の成長温度は600〜900℃とすることが好ましい。
減圧CVD装置を用いて発光層13を成長させる際の成長室の圧力は、通常400mbar程度である。本実施形態においては、発光層13を成長させる際の成長室の圧力を500mbar以上としているので、発光層13の結晶性は良好となるが、圧力を400mbarとした場合と比較して、基板11を分割(チップ化)する前の基板11面内における発光強度のバラツキが大きくなり、得られた半導体発光素子1の品質のバラツキが大きくなる傾向がある。
上述したように、成長室に流量30SLM〜100SLMの第1キャリアガスとともにIII族元素を含むIII族原料を供給した場合、第1キャリアガスの流量が適切であるため、成長室内でのIII族原料と窒素原料との反応が進む前に、分割(チップ化)する前の基板11の全面にIII族原料が均一にいきわたりやすくなる。その結果、基板11を分割(チップ化)する前の基板11面内における発光強度のバラツキを、より効果的に抑制できる。
成長室に供給する第1キャリアガスの流量は、40SLM以上であることがより好ましい。また、成長室に供給する第1キャリアガスの流量は、70SLM以下であることがより好ましい。
p型半導体層14は、pクラッド層14aと、pコンタクト層14bとを順次積層すればよい。なお、pクラッド層14aを、超格子構造を含む層とする場合には、膜厚100オングストローム以下のIII族窒化物半導体からなるp側第1層と、p側第1層と組成が異なる膜厚100オングストローム以下III族窒化物半導体からなるp側第2層とを交互に繰返し積層すればよい。
以上のようにして、図2に示す積層半導体層20が製造される。
このように、本発明において、第2工程において積層される再成長層12d〜p型層半導体層14までの膜厚は、第1工程において積層されるバッファ層21〜第1工程成長層12cまたは下地層22〜第1工程成長層12cまでの膜厚に比べ圧倒的に薄く形成されるので、1つのMOCVD(有機金属化学気相成長)装置の成長室内で全ての半導体層を形成するのに比べ、n型半導体層を形成する際に用いたドーパントに起因するp型半導体層の不良を防ぐことができる。
その後、積層半導体層20のp型半導体層14上に透光性電極15となる透明材料層を積層し、例えば一般に知られたフォトリソグラフィーの手法によって所定の領域以外の透明材料層を除去し、透光性電極15とする。
続いて、例えばフォトリソグラフィーの手法によりパターニングして、所定の領域の積層半導体層20の一部をエッチングしてnコンタクト層12aの第1工程成長層12cの一部を露出させ、nコンタクト層12aの露出面20aにn型電極17を形成する。
次いで、透光性電極15の上にp型ボンディングパッド電極16を形成する。
その後、基板11を分割(チップ化)することにより、図1に示す半導体発光素子1が製造される。
本実施形態の半導体発光素子1の製造方法では、第2工程において、nコンタクト層12a上に、nコンタクト層12aの再成長層12dを形成してからnクラッド層12bを積層するので、再成長層12d上に結晶性の良好なnクラッド層12bが形成される。さらに、本実施形態においては、第2工程において、第2MOCVD装置の成長室内の圧力を500mbar〜1013mbarとして発光層13を成長させるので、結晶性の良好なnクラッド層12b上に結晶性の良好な発光層13が形成される。その結果、本実施形態の半導体発光素子1の製造方法によれば、大電流が印加されることにより高い発光出力が得られる半導体発光素子1が得られる。
また、本実施形態の半導体発光素子1の製造方法によれば、第1MOCVD装置において、基板11上に、nコンタクト層12aの第1工程成長層12cを積層する第1工程と、第2MOCVD装置において、第1工程成長層12c上に、nコンタクト層12aの再成長層12dとnクラッド層12bと発光層13とp型半導体層14とを順次積層する第2工程とを具備しているので、第1工程において形成される第1工程成長層12cが、第2工程において形成されるp型半導体層14とは別の成長室内で形成されることになる。このため、本実施形態の半導体発光素子1の製造方法によれば、n型半導体層12を形成する際に用いたドーパントに起因するp型半導体層14の不良を生じにくくすることができ、逆方向電流(IR)が十分に低く、静電気放電(ESD)耐圧に優れたものが得られる。
『ランプ』
本実施形態のランプは、本発明の半導体発光素子を備えるものであり、上記の半導体発光素子と蛍光体とを組み合わせてなるものである。本実施形態のランプは、当業者周知の手段によって当業者周知の構成とすることができる。例えば、本実施形態のランプにおいては、半導体発光素子と蛍光体と組み合わせることによって発光色を変える技術を何ら制限されることなく採用できる。
図3は、図1に示した半導体発光素子1を備えるランプの一例を示した断面模式図である。図3に示すランプ3は、砲弾型のものであり、図1に示す半導体発光素子1が用いられている。図3に示すように、半導体発光素子1のp型ボンディングパッド電極16がワイヤー33で2本のフレーム31、32の内の一方(図3ではフレーム31)に接着され、半導体発光素子1のn型電極17(ボンディングパッド)がワイヤー34で他方のフレーム32に接合されることにより、半導体発光素子1が実装されている。また、半導体発光素子1の周辺は、透明な樹脂からなるモールド35で封止されている。
本実施形態のランプ3は、上記の半導体発光素子1が用いられてなるものであるので、高い発光出力が得られるものとなる。
また、本実施形態のランプ3を組み込んだバックライト、携帯電話、ディスプレイ、各種パネル類、コンピュータ、ゲーム機、照明などの電子機器や、それらの電子機器を組み込んだ自動車などの機械装置は、高い発光出力が得られる半導体発光素子1を備えたものとなる。特に、バックライト、携帯電話、ディスプレイ、ゲーム機、照明などのバッテリ駆動させる電子機器において、高い発光出力が得られる半導体発光素子1を具備した優れた製品を提供することができ、好ましい。
(実施例1)
以下に示す方法により、図1に示す半導体発光素子1を製造した。
実施例1の半導体発光素子1を製造するために、はじめに、サファイアからなる平面視円形の基板11上に、AlNからなるバッファ層21、厚さ5μmのアンドープGaNからなる下地層22、厚さ3μmのSiドープn型GaNからなる第1工程成長層12cと厚さ0.2μmのSiドープn型GaNからなる再成長層12dとからなる厚さ3.2μmのnコンタクト層12a、GaInNからなる厚さ2nmのn側第1層と、GaNからなる厚さ2nmのn側第2層とからなる薄膜層を20層繰り返し成長させてなる厚さ80nmの超格子構造のnクラッド層12b、厚さ5nmのSiドープGaN障壁層および厚さ3.5nmのIn0.15Ga0.85N井戸層を6回積層し、最後に障壁層を設けた多重量子井戸構造の発光層13、厚さ10nmのMgドープ単層Al0.07Ga0.93Nからなるpクラッド層14a、厚さ150nmのMgドープp型GaNからなるpコンタクト層14bとを順に積層した。
なお、実施例1の半導体発光素子1では、バッファ層21、下地層22、第1工程成長層12cは、第1MOCVD装置を用いて積層(第1工程)し、再成長層12d、nクラッド層12b、発光層13、pクラッド層14a、pコンタクト層14bは、第2MOCVD装置を用いて積層(第2工程)した。また、発光層13は、以下に示す成長条件で成長させた。
「発光層13の成膜条件」
基板の温度を770℃とし、成長室内の圧力を600mbarとし、成長室に第1キャリアガスである流量39SLMの窒素ガスとともにIII族原料であるトリメチルガリウム(TMGa)を供給すると同時に、成長室に第2キャリアガスである流量20SLMの窒素ガスとともに窒素原料であるアンモニア(NH)を供給して、発光層を成長させた。成長圧力およびキャリアガス流量は井戸層と障壁層とで同じ条件とした。
その後、pコンタクト層14b上に、厚さ200nmのITOからなる透光性電極15を一般に知られたフォトリソグラフィの手法により形成した。
次に、フォトリソグラフィの手法を用いてエッチングを施し、所望の領域にnコンタクト層12aの第1工程成長層12cを露出させ、nコンタクト層12aの露出面20aに上にTi/Auの二層構造のn型電極17を形成した。
また、透光性電極15の上に、200nmのAlからなる金属反射層と80nmのTiからなるバリア層と1100nmのAuからなるボンディング層とからなる3層構造のp型ボンディングパッド構造16を、フォトリソグラフィの手法を用いて形成した。
その後、基板11を分割(チップ化)して、図1に示す実施例1の半導体発光素子1を得た。
このようにして得られた実施例1の半導体発光素子1において、第1工程成長層12cおよび再成長層12dのキャリア濃度は8×1018cm−3であり、nクラッド層12bのキャリア濃度は5×1018cm−3であり、pコンタクト層14bのキャリア濃度は5×1018cm−3であり、pクラッド層14aのMgドープ量は5×1019cm−3であった。
(実施例2)
発光層13を成長させる際の成長室内の圧力を800mbarとしたこと以外は実施例1と同様にして半導体発光素子1を得た。
(比較例1)
発光層13を成長させる際の成長室内の圧力を200mbarとしたこと以外は実施例1と同様にして半導体発光素子1を得た。
(比較例2)
発光層13を成長させる際の成長室内の圧力を400mbarとしたこと以外は実施例1と同様にして半導体発光素子1を得た。
このようにして得られた実施例1および実施例2、比較例1および比較例2の半導体発光素子について、TO−18缶パッケージに実装し、テスターによって印加電流0〜100mAの範囲における発光出力(Po)を測定した。その結果を表1および表2に示す。
Figure 0005246081
Figure 0005246081
また、実施例1および実施例2、比較例1および比較例2の半導体発光素子について、プローブ針による通電で電流印加値20mAにおける順方向電圧を測定した。
また、実施例1および実施例2、比較例1および比較例2の半導体発光素子について、LED素子に逆方向20V電圧を印加した時の素子に流れる電流(逆方向電流IR)を測定した。
実施例1および実施例2、比較例1および比較例2の半導体発光素子の順方向電圧、逆方向電流(IR)の結果を表1に示す。
また、順方向電圧と印加電流と発光出力とを用いて電力効率(%){発光出力(mW)/(順方向電圧(V)×印加電流(mA))}を算出した。その結果を表3に示す。表3は、実施例1および実施例2、比較例1および比較例2の半導体発光素子の印加電流と電力効率との関係を示したものである。
また、実施例1および実施例2、比較例1および比較例2の半導体発光素子の出射光のピーク波長を調べた。その結果を表1に示す。
Figure 0005246081
表1に示すように、実施例1および実施例2は、逆方向電流(IR)が十分に低く、印加電流20mAのときの発光出力(Po)が21mW以上となり、高輝度で低消費電力であった。一方、発光層13を成長させる際の成長室内の圧力を500mbar未満とした比較例1および比較例2では、実施例1および実施例2と比較して印加電流20mAのときの発光出力(Po)が低かった。
また、表2に示すように、実施例1および実施例2、比較例1および比較例2では、印加電流を大きくするのに伴って、発光出力(Po)が大きくなっている。しかし、比較例1および比較例2では、印加電流を大きくすることによる発光出力の向上効果が、印加電流を大きくするのに伴って小さくなっており、印加電流が大きいほど実施例1および実施例2と比較例1および比較例2との発光出力(Po)の差が大きくなっている。
また、表3に示すように、実施例1および実施例2、比較例1および比較例2では、印加電流が通常用いられる印加電流20mAよりも大きい場合、印加電流を大きくするのに伴って電力効率が小さくなっている。しかし、電力効率は、比較例1および比較例2よりも実施例1および実施例2の方が高く、印加電流が大きいほど実施例1および実施例2と比較例1および比較例2との電力効率の差が大きくなっている。
表2および表3より、実施例1および実施例2の半導体発光素子は、大電流を印加することによって効果的に発光出力を向上させることができ、比較例1および比較例2の半導体発光素子と比較して、大電流が印加されることにより高い発光出力が得られることが確認できた。
(実施例3)
発光層13を成長させる際の成長室に流量50SLMで第1キャリアガスを供給したこと以外は実施例1と同様にして、基板11を分割(チップ化)する前の段階まで半導体発光素子1の製造工程を行った。
このようにして得られた基板11を分割(チップ化)する前の段階の実施例3の半導体発光素子と、基板11を分割(チップ化)する前の段階の実施例1の半導体発光素子について、平面視円形である基板11の直径に沿う一端から他端までの発光強度を調べ、基板11面内における発光強度のバラツキを調べた。その結果を図4および図5に示す。
図4は、実施例1の基板11を分割(チップ化)する前の段階の半導体発光素子において、基板の直径に沿う一端から他端までの距離と、発光強度(PL発光強度;単位は任意)との関係を示したグラフである。また、図5は、実施例3の基板11を分割(チップ化)する前の段階の半導体発光素子において、基板の直径に沿う一端から他端までの距離と、発光強度(PL発光強度;単位は任意)との関係を示したグラフである。
図4および図5に示すように、発光層13を成長させる際の成長室に流量50SLMで第1キャリアガスを供給した図5に示す実施例3においては、発光層13を成長させる際の成長室に流量39SLMで第1キャリアガスを供給した図4に示す実施例1と比較して、全体的に発光強度が高くなっているが、特に基板の外縁部における発光強度が高くなっており、基板11を分割(チップ化)する前の基板11面内における発光強度のバラツキが小さくなっていることが分かる。
1…半導体発光素子、3…ランプ、12…n型半導体層、12a…nコンタクト層(第1n型半導体層)、12b…nクラッド層(第2n型半導体層)、12c…第1工程で成長する第1n型半導体層、12d…再成長層、13…発光層、14…p型半導体層。

Claims (2)

  1. 第1有機金属化学気相成長装置において、基板上に、第1n型半導体層を積層する第1工程と、
    第2有機金属化学気相成長装置において、前記第1n型半導体層上に、前記第1n型半導体層の再成長層と第2n型半導体層と発光層とp型半導体層とを順次積層する第2工程とを具備し、
    前記第2工程において、前記第2有機金属化学気相成長装置の成長室内の圧力を500mbar〜1013mbar(大気圧下)として前記発光層を成長させることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
  2. 前記成長室に流量30SLM〜100SLMの第1キャリアガスとともにIII族元素を含むIII族原料を供給すると同時に、前記成長室に第2キャリアガスとともに窒素または窒素化合物を含む窒素原料を供給して、III族窒化物半導体層からなる前記発光層を成長させる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
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